学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2008年2月


36000149
AsS: Bulk inorganic molecular-based chalcogenide glass
Brazhkin, V. V. *; Gavrilyuk, A. G.*; Lyapin, A. G.*; Timofeev, Yu. A.*; 片山 芳則; 小原 真司*
Applied Physics Letters 91(3), p.031912_1-031912_3(2007) ; (JAEA-J 03477)
 AsSの組成のバルクのカルコゲナイドガラスの高圧合成法が開発された。得られたガラスの構造,光学的性質と安定性が調べられた。このガラスは濃い赤色で、Eg≈1.75eVの光学擬ギャップ, WU≈120meVの幅広いアーバック吸収端を持つ。また、130℃まで熱的に安定である。このAsSガラスは光結晶化を含む光誘起変化を起こす。ガラスの構造は、分子的なAs4S4ユニットが部分的につながって高分子化したものと考えることができ、無機の分子がユニットとなったガラスの一例である。

36000150
Dynamic process of dendrite fragmentation in solidification from undercooled Si melt using time-resolved X-ray diffraction
長汐 晃輔*; 野崎 潔*; 栗林 一彦*; 片山 芳則
Applied Physics Letters 91(6), p.061916_1-061916_3(2007) ; (JAEA-J 03478)
 過冷却Si融液からの凝固時における自発的なデンドライト断片化を放射光を用いた時分割2次元X線回折法によって調べた。過冷却温度Δ T=261Kで凝固した試料では、リカレッセンスから1ms後に複数の回折スポットが現れ、その後約25ms以内でスポットからリングへの変化が起きた。この結果は、断片化はリカレッセンス後に起きるが、それはプラトー領域のごく初期の段階で起きることがわかった。本実験は、断片化を起こす原因がプラトー領域の毛管現象降下であることを指示するが、断片化の時間スケールは現在の定量的な予言とは異なっている。

36000151
Hydrothermal method grown large-sized zinc oxide single crystal as fast scintillator for future extreme ultraviolet lithography
田中 桃子; 錦野 将元; 山谷 寛; 永島 圭介; 木村 豊秋; 古川 裕介*; 村上 英利*; 斎藤 繁喜*; 猿倉 信彦*; 西村 博明*; 三間 圀興*; 鏡谷 勇二*; Ehrentraut, D.*; 福田 承生*
Applied Physics Letters 91(23), p.231117_1-231117_3(2007) ; (JAEA-J 03479)
 短パルス極端紫外(EUV)レーザー光を用いてZnO結晶のEUV光に対する光応答を評価した。380nm付近のエキシトン発光の寿命は1.1nsであり、紫外励起の場合と同程度であった。この値は数ナノ秒程度の時間幅を持つEUVリソグラフィー用光源の評価を行うのに十分であり、ZnOがEUV領域までのシンチレーターとして有用であることを示している。

36000152
Plasma-assisted laser ablation of tungsten; Reduction in ablation power threshold due to bursting of holes/bubbles
梶田 信; 大野 哲靖*; 高村 秀一*; 坂口 亙*; 西島 大*
Applied Physics Letters 91(26), p.261501_1-261501_3(2007) ; (JAEA-J 03480)
 ヘリウム照射損傷を受けたタングステンのナノ秒レーザーを用いたアブレーションを、分光法を用いて調べた。表面温度が十分に高い状態(≥1500〜1600K)で、タングステンにヘリウムプラズマを照射すると表面にサブマイクロサイズのホール/バブルの形成が確認された。損傷なしのタングステンからは1J/cm-2以下では発光が観測されないが、ヘリウム照射を行ったタングステンからの発光は閾値が〜0.2J/cm-2と著しく減少した。レーザー照射によるホール/バブルの破裂が、アブレーション閾値の減少を生む原因となっていると考えられる。

36000153
Bias temperature instability characterization of advanced gate stacks
藤枝 信次*; 寺井 真之*; 西藤 哲史*; 戸田 昭夫*; 三浦 喜直*; Liu, Z.*; 寺岡 有殿; 吉越 章隆; Wilde, M.*; 福谷 克之*
ECS Transactions 6(3), p.185-202(2007) ; (JAEA-J 03482)
 先端CMOSのバイアス温度不安定性に関する著者らの研究成果を招待講演で紹介する。25-nm SiO2から1.8-nmプラズマ窒化SiON, 1.6-nm HfSiON high-k, 1.5-nm Ni-full-silicide/HfSiONまでというようにゲートスタックがスケーリングされるにつれ、負/正バイアス温度不安定性の原因として不純物,界面ストイキオメトリ,応力等の新しい化学的・物理的要因が現れてきたことを指摘する。

36000154
Synthesis of pinguisane-type sesquiterpenoids acutifolone A, pinguisenol, and bisacutifolones by a Diels-Alder dimerization reaction
椎名 淳一*; 及川 雅隆; 中村 建介; 小畠 りか*; 西山 繁*
European Journal of Organic Chemistry 2007(31), p.5190-5197(2007) ; (JAEA-J 03483)
 中期計画において推進されているDNA修復機構の解明が進展した段階で、DNA修復機構に働きかける薬物の合成が重要となる。このような生理機能に作用する化学物質の合成を効率よく行うためには理論科学計算による反応生成物の推定が有効な手段となる。この論文ではPinguisane型のセスキテルペノイド、acutifolone A, pinguisenolから向山アルドール反応をキーステップとし、分子間ディールスアルダー反応により、bisacutifolone A及び、Bが合成された。理論化学計算によりこの2量化プロセスは最も低い遷移状態を経由して立体選択的に進行しており、実験的な生成物が的確に予測された。

36000155
Prospective performances in JT-60SA towards the ITER and DEMO relevant plasmas
玉井 広史; 藤田 隆明; 菊池 満; 木津 要; 栗田 源一; 正木 圭; 松川 誠; 三浦 幸俊; 櫻井 真治; 助川 篤彦; 鈴木 優; 高瀬 雄一*; 土屋 勝彦; Campbell, D.*; Romanelli, F.*
Fusion Engineering and Design 82(5-14), p.541-547(2007) ; (JAEA-J 03484)
 JT-60SAはITERサテライトトカマクとして位置づけられ、ITER支援研究とITER補完研究の二つの使命を併せ持ち、日本とEUとが共同で設計・建設・実験を実施する装置である。昨年度実施された基本的な装置仕様にかかわる検討を経て、ITERへの貢献を高める観点から加熱入力が41MW,100秒間に増強された。この加熱入力で実現可能なプラズマ性能を検討するために、プラズマ解析コードを用いて予測評価を行った。その結果、完全非誘導電流駆動の運転シナリオが高密度領域において拡張されるとともに、高い等価エネルギー増倍率と高い規格化ベータ値の同時達成の裕度が拡張されるなど、ITER及び原型炉を指向した研究を展開するにふさわしい装置性能を有することが示された。

36000156
Burn control simulation experiments in JT-60U
下村 浩司*; 竹永 秀信; 筒井 広明*; 三又 秀行*; 飯尾 俊二*; 三浦 幸俊; 谷 啓二; 久保 博孝; 坂本 宜照; 平塚 一; 市毛 尚志; 末岡 通治; 川俣 陽一; 坂本 隆一*; 小林 進二*; 嶋田 隆一*
Fusion Engineering and Design 82(5-14), p.953-960(2007) ; (JAEA-J 03485)
 燃焼プラズマの制御性を明らかにするために、JT-60Uにおいて自己加熱模擬用と外部加熱模擬用の2つのNBグループを用いた燃焼制御模擬実験を行った。自己加熱模擬用では、中性子発生率に比例して加熱パワーを入射した。外部加熱模擬用では、蓄積エネルギー帰還制御を適用した。ELMy Hモード及び負磁気シアプラズマとも、自己加熱模擬用NBパワーが増加した場合には、外部加熱模擬用NBパワーが減少することにより蓄積エネルギーは一定に維持された。しかしながら、負磁気シアプラズマでは、ELMy Hモードプラズマと比べて外部加熱模擬用NBパワーの変動は大きく、制御裕度を大きくとる必要がある。両プラズマでの違いの原因を明らかにするために、非定常輸送解析コードTOPICSに燃焼制御模擬ロジックを組み込んだ。実験データから評価された実効的な粒子拡散係数と熱拡散係数を用いて計算を行った結果、負磁気シアプラズマで外部加熱模擬用NBパワーの振動が大きくなることは再現できなかった。また、熱拡散係数が温度依存性を持つと仮定した場合でも、外部加熱模擬用NBパワーの振動が大きくなることは観測されなかった。拡散係数の違い及びその温度依存性では両プラズマでの実験結果の違いを説明できないと考えられる。

36000157
Improvement of data processing system for advanced diagnostics in JT-60U
大島 貴幸; 清野 公広; 坂田 信也; 佐藤 稔; 戸塚 俊之; 射場 克幸*; 小関 隆久; 平山 俊雄
Fusion Engineering and Design 82(5-14), p.1210-1215(2007) ; (JAEA-J 03486)
 MSPをOSとするショット間処理計算機MSP-ISP(MSP OS-Inter Shot Processor)はJT-60U計測用データ処理設備の中心として約20年間運用されてきた。MSP-ISPは、放電時間の伸長(15秒から65秒へ)による計測データの増加,ネットワーク接続性が不十分,周辺機器と拡張が非合理,応用ソフトウェアが古く、周辺機器接続のための改造が容易ではない等の旧式化となった。約4年をかけて2005年に新しいUNIXをOSとするISP UNIX-ISP(UNIX OS-Inter Shot Processor)に完全に移行した。MSP-ISPでは各機能が一極に集中していたので、UNIX標準装備のネットワーク技術を使い、機能を分散化することで負荷軽減を図った。また、実際の実験シーケンスでの総合負荷試験や物理量変換プログラムで計算機の性能評価を行った。さらに、他の研究機関から核融合研究のエキスパートを結集し、JT-60Uを遠隔地から実験参加するシステム(RES)を安全に通信できるようITBL(IT-Based Laboratory)のセキュリティを用いて開発した。遠隔地の大学から、このたび開発した原子力機構那珂のRMVSVR(Remote Server)にアクセスし、放電条件設定,放電状態表示,実験放電結果データ表示等の検証を行った。

36000158
Evaluation of bending strain dependence of critical current of Nb3Al conductor for coils with react-and-wind method
木津 要; 土屋 勝彦; 島田 勝弘; 安藤 俊就*; 菱沼 良光*; 小泉 徳潔; 松川 誠; 三浦 友史*; 西村 新*; 奥野 清; 妹尾 和威*; 高畑 一也*; 玉井 広史; 山田 修一*
Fusion Engineering and Design 82(5-14), p.1493-1499(2007) ; (JAEA-J 03487)
 大型超伝導コイルでは、大きな電磁力が発生するので、電磁力支持,電気絶縁の観点から、超伝導素線を数百本撚り合わせたケーブルを、金属製の鞘(コンジット)に納めたケーブル・イン・コンジット(CIC)型の超伝導導体を使用している。CIC型導体では冷却によるコンジットとケーブルとの熱収縮差に起因する熱歪,導体の曲げによる曲げ歪の影響が問題となる。しかしながら、超伝導コイルでは熱歪や曲げ歪を変化させることはできないので、コイル試験では、超伝導工学上重要な、臨界電流値と熱歪・曲げ歪の関係を幅広い領域で評価することは困難であった。そこで、本研究では、液体ヘリウムにより冷却されたCIC導体サンプルに、クライオスタット外部からシャフトを介してねじりを加えることを可能にする試験装置を開発した。この新しい試験装置に、ねじりばね状のNb3Al CIC導体サンプルを取り付け、ねじることにより、サンプルに引張り・圧縮歪、及び曲げ歪を連続的に印加し、臨界電流と歪の関係を測定することに成功した。また、本研究の結果より、CIC型導体中の撚り線の歪緩和機構が存在することが明らかとなった。

36000159
A Control method of matrix converter for plasma control coil power supply
島田 勝弘; 伊東 淳一*; 松川 誠; 栗原 研一
Fusion Engineering and Design 82(5-14), p.1513-1518(2007) ; (JAEA-J 03488)
 プラズマ不安定抑制のための電源の候補の一つとして次世代の変換器として期待されているマトリックスコンバータを考え、その制御手法に関してシミュレーションにより評価した。一般的なマトリックスコンバータとは異なる電源構成のマトリックスコンバータを提案し、波形歪みを低減できる3相スイッチング方式を、制御手法として採用した。PSCAD/EMTDCを用いて、提案するマトリックスコンバータモデルを作成し、シミュレーションを行った。その結果、電流整定時間が約100μsで制御できることを確認した。また、過渡応答に対しても、追従性よく制御でき、マトリックスコンバータをプラズマ制御電源に適用できる見通しを得ることができた。

36000160
Neutronics experiment on a helium cooled pebble bed (HCPB) breeder blanket mock-up
Batistoni, P.*; Angelone, M.*; Bettinali, L.*; Carconi, P.*; Fischer, U.*; Kodeli, I.*; Leichtle, D.*; 落合 謙太郎; Perel, R.*; Pillon, M.*; Schäfer, I.*; Seidel, K.*; Verzilov, Y.*; Villari, R.*; Zappa, G.*
Fusion Engineering and Design 82(15-24), p.2095-2104(2007) ; (JAEA-J 03489)
 ヨーロッパ核融合技術プログラムにおいて、EUが提案している核融合テストブランケットモジュール模擬体系の核融合中性子工学実験をイタリアENEAの核融合中性子源FNGで実施した。ヘリウム冷却型ぺブルベッドタイプを模擬した体系内に生成するトリチウム量を炭酸リチウムペレットによる液体シンチレーションカウンター法でイタリア,ドイツ及び日本と共同して測定した。またモンテカルロ計算によるトリチウム生成量の評価も同時に実施し、計算値が誤差9%程度で一致することを確認した。

36000161
In-pile tritium permeation through F82H steel with and without a ceramic coating of Cr2O3-SiO2 Including CrPO4
中道 勝; Kulsartov, T. V.*; 林 君夫; Afanasyev, S. E.*; Shestakov, V. P.*; Chikhray, Y. V.*; Kenzhin, E. A.*; Kolbaenkov, A. N.*
Fusion Engineering and Design 82(15-24), p.2246-2251(2007) ; (JAEA-J 03490)
 本件は、ISTC(国際科学技術センター)による国際協力として行った研究の成果である。核融合原型炉のトリチウム回収・処理システムの妥当な設計を実現するためには、トリチウムの透過低減機能を有する、ブランケット構造材料への皮膜の開発が必要である。原子力機構では、CrPO4を含むCr2O3-SiO2のセラミック材料を用いて、高性能の皮膜を開発した。以前に行った600℃における炉外重水素透過実験においては、フェライト鋼(F82H)製の円筒状拡散セルの内面への皮膜について、約300という大きな透過低減係数(PRF)が得られた。本研究では、カザフスタンの試験炉IGV-1Mを用いて、同皮膜がある場合とない場合のF82鋼について、トリチウム透過に関する炉内実験を行った。液体のリチウム鉛(Pb17Li)をトリチウム源として用いた。照射時間は約4時間であり、高速中性子照射量は約2×1021n/m2(E>1.1MeV)であった。皮膜がある場合とない場合のF82鋼製の拡散セルについて、トリチウムの透過曲線から透過低減係数を求めたところ、600℃及び500℃について、それぞれ292及び30であった。これらの値は、上記の炉外実験において、600℃及び500℃について得られた値である307及び45に近い値であった。

36000162
Non-stoichiometory and vaporization characteristic of Li2.1TiO3.05 in hydrogen atmosphere
星野 毅; 安本 勝*; 土谷 邦彦; 林 君夫; 西村 秀俊*; 鈴木 晶大*; 寺井 隆幸*
Fusion Engineering and Design 82(15-24), p.2269-2273(2007) ; (JAEA-J 03491)
 チタン酸リチウム(Li2TiO3)は、核融合炉ブランケット用トリチウム増殖材料の第1候補材料である。Li2TiO3は水素により還元されるため、トリチウムを回収する際のスイープガス中に含まれる水素により還元されにくいLi2TiO3の開発は重要である。本研究では、水素により還元されにくい増殖材料として期待できる、Li2.1TiO3.05を製作し、非化学量論性及び蒸発特性を調べた。定比のLi2TiO3(Li2O/TiO2=1.00)よりLi量を多くしたLi2.1TiO3.05(Li2O/TiO2=1.05)を製作した結果、水素還元による酸素欠損がほとんどなく、Liを含む蒸発蒸気種の平衡蒸気圧への影響も少ないことから、高温・長時間使用時における試料の結晶構造の変化が小さくなり、化学的に安定して使用できることがわかった。

36000163
Pressurizing behavior on ingress of coolant into pebble bed of blanket of fusion DEMO reactor
鶴 大悟; 榎枝 幹男; 秋場 真人
Fusion Engineering and Design 82(15-24), p.2274-2281(2007) ; (JAEA-J 03492)
 固体増殖増倍型増殖ブランケットにおいて、ブランケット内への冷却材漏洩事故時の対処のため、圧力逃がし機構を設ける必要がある。その設計のための基礎データ取得のため、事故時の流動を模擬した体系において、ペブルを充填した領域に高圧でガスを噴出した際の圧力損失を測定した。測定値と、一般的に知られている多孔体内の圧力損失評価式であるErgunの式による予測値との比較を実施し、相違があることを発見した。この相違は、全く変形のない多孔体と、局所的に多少動きうるペブル充てん領域との相違に起因すると考えられる。

36000164
Verification of nuclear data for DT neutron induced charged-particle emission reaction of light nuclei
近藤 恵太郎; 村田 勲*; 落合 謙太郎; 久保田 直義; 宮丸 広幸*; 高木 智史*; 志度 彰一*; 今野 力; 西谷 健夫
Fusion Engineering and Design 82(15-24), p.2786-2793(2007) ; (JAEA-J 03493)
 中性子入射による荷電粒子放出反応は発電炉を見据えた核融合炉開発において極めて重要である。核反応で放出された荷電粒子は材料中で直ちに停止するため局所的な核発熱を引き起こす。また材料の損傷や多量のガス放出の原因となる。これらの物理量を正確に評価するためには全反応断面積だけではなく、放出エネルギーと角度に対する微分情報、すなわち二重微分断面積が必要である。しかし、二次中性子に関する二重微分断面積に比べて二次荷電粒子に関する二重微分断面積は測定の困難さのために実験データの蓄積が進んでいない。筆者らは、特に核融合炉で多く用いられる軽元素について高精度で二重微分断面積を測定することを目指し、ビーム状中性子源を利用した荷電粒子測定手法を開発した。われわれはこれまでに十分な測定がなされていない軽元素に対する系統的な測定を進めている。特に提案されているブランケット及び第一壁の構成材料であるリチウム,ベリリウム,カーボン,酸素,フッ素,シリコンは重要度が高いと考えられる。われわれはこれまでにベリリウム,カーボン,フッ素についての測定を完了し、引き続きリチウム7のDDXc測定を計画中である。本会議では、われわれの測定データと3つの主要な評価済み核データ(JEF-3.1, ENDF-B/VI, JENDL-3.3)の現状と比較結果を示す。また、今後測定が必要と思われる元素についても評価済み核データの現状について簡単なレビューを述べる。

36000165
Thin slit streaming experiment for ITER by using D-T neutron source
落合 謙太郎; 佐藤 聡; 和田 政行*; 久保田 直義; 近藤 恵太郎; 山内 通則; 阿部 雄一; 西谷 健夫; 今野 力
Fusion Engineering and Design 82(15-24), p.2794-2798(2007) ; (JAEA-J 03494)
 JAEA-FNSではITER/ITAタスク73-10に基づき、ITER計測ポート周辺のスリット領域を模擬した鉄体系によるDT中性子ストリーミング実験を行い、モンテカルロ計算コードMCNPによる計算結果と実験値との比較から中性子輸送計算精度の検証を行った。奥行き55cm,横幅100cm,縦幅30cmの鉄ブロック2つを用いて、スリット幅2cmのストリーミング体系を組み立て、FNS-DT中性子源(点線源)で照射した。U-238及びU-235マイクロフィッションチャンバーを用い、深さ方向に対するスリット中の核分裂率を測定した。輸送計算コードはMCNP-4cを用い、U-238, U-235による核分裂率を計算した。実験結果から以下のことが明らかとなった。(1)U-238フィッションチャンバーの結果から、距離の効果及び鉄遮蔽による減衰効果を反映し、高速中性子束は体系表面からスリット内深さ50cmで0.1%まで減衰することを明らかにした。(2)U-235フィッションチャンバーの結果から10keV以下の中性子束は深さ50cmで体系表面での10%程度であることを明らかにした。(3)計算結果と実験結果の比(C/E)はU-238の場合1.10-1.22, U-235の場合は1.10-1.23となり、わずかに過大評価する傾向を示した。

36000166
Safety design of radiation shielding for JT-60SA
助川 篤彦; 櫻井 真治; 正木 圭; 木津 要; 土屋 勝彦; 芝間 祐介; 林 孝夫; 玉井 広史; 松川 誠
Fusion Engineering and Design 82(15-24), p.2799-2804(2007) ; (JAEA-J 03495)
 JT-60超伝導化改修装置(JT-60SA)の放射線遮へいに関する安全設計について報告する。JT-60SAでは、現在のJT-60Uプラズマに対して年間中性子発生量が約130倍に増加するため、真空容器とクライオスタットで放射線遮へいを行い、JT-60敷地境界での線量限度未満とすることを設計方針として、それぞれ遮へい厚の設計検討を行った。放射線遮へい評価には、ANSIN, DOT3.5を用いた。また、超伝導コイルの安定運転のためには、コイル部での核発熱量を評価することが重要である。真空容器をステンレス厚24mmの2重壁とし、その2重壁内に140mm厚のボロン水を充填する構造として遮へい計算を行った結果、クライオスタットまでの十分な遮へい性能を確保するとともに、TFコイルの核発熱量は、設計目標値である0.3mW/cc未満となることを明らかにした。

36000167
Tokamak and spherical tokamak research in Japan
高瀬 雄一*; 菊池 満; 前川 孝*; 松川 誠; 永田 正義*; 西尾 敏; 小野 靖*; 佐藤 浩之助*; 飛田 健次
Fusion Science and Technology 51(2T), p.46-51(2007) ; (JAEA-J 03496)
 本論文は、日本のトカマクと球状トカマク(ST)研究プログラムについて述べるものである。Tokamak研究については、ITERとDEMOを支援するJT-60SA(以前のNCT)の定常高ベータ研究(βN=3.5-5.5)に焦点を当てる。JT-60SAは、日本とEUによるブローダアプローチのフレームワークの下で、ITERのサテライト装置としても意義付けられる。他方、我が国のST研究は、超高ベータ及び超長時間放電の研究という創造的で革新的な研究を目指して、「全日本ST研究プログラム」として再編成した。本論文では、プラズマ立ち上げ,RF加熱、及びプラズママージングと再接続実験の結果をまとめて述べる。核融合エネルギー開発に対する、低アスペクト比トカマクの貢献の予想についても言及する。

36000168
Wave excitation in magnetically confined plasmas with an anisotropic velocity distribution
市村 真*; 檜垣 浩之*; 柿本 真吾*; 山口 裕資*; 根本 健樹*; 片野 誠*; 小澤 功*; 室 大志*; 石川 正男; 森山 伸一; 鈴木 隆博; 渡辺 二太*; 長 照二*
Fusion Science and Technology 51(2T), p.150-153(2007) ; (JAEA-J 03497)
 磁場によって閉じ込められたプラズマ中では、非熱的エネルギーを持ったイオンの存在により、イオンサイクロトロン周波数帯の揺動が自発的に励起される。GAMMA10においては、磁力線方向と垂直に加熱されたプラズマの温度非等方性に起因するアルベンイオンサイクロトロン(AIC)波動が観測されている。一方、核燃焼プラズマにおいては、局所的なミラー磁場配位に捕捉される高温イオンの存在に起因すると考えられる静電波動の励起やイオンサイクロトロン放射(ICE)が観測されている。これらの不安定揺動を総合的に理解することを目的として実験的観測と波動励起の計算を行った。実験では、JT-60Uに設置されているICRFアンテナをピックアップループとして用い、ICRF領域の揺動の計測とその空間構造の測定を行った。垂直NBIに起因する揺動と核融合反応生成イオンに起因する揺動を観測し、その磁力線方向の波数測定から揺動の分散関係を明らかとした。AIC波動との関連を議論する。

36000169
Progress of high-power-gyrotron development for fusion research
坂本 慶司
Fusion Science and Technology 52(2), p.145-153(2007) ; (JAEA-J 03498)
 核融合研究のためのジャイロトロン開発の現状について述べたものである。1990年代に幾つかのジャイロトロン基礎技術に関するブレークスルーが得られた後、続く2000年代には、特に84GHzから170GHzに渡る広い周波数範囲において、「ジャイロトロンの長パルス化」に関し大きな進展が得られた。また、先進ジャイロトロンに関する活動として、同軸ジャイロトロンや多周波数ジャイロトロンについても大きな進歩が見られた。これらの進展には、高効率モード変換器や高帯域出力窓などのジャイロトロン用機器の改良が大きな役割を果たした。開発されたジャイロトロンは、加熱やMHD制御用として主要な核融合装置に適用されている。さらに現在では、国際熱核融合実験炉ITERの自己点火やプラズマ維持に使用できる1MWクラスの連続出力ジャイロトロンの開発にも見通しが得られている。

36000170
Spectral effects of activation for liquid blanket relevant materials induced by D-T neutron irradiation
Li, Z.*; 田中 照也*; 室賀 健夫*; 佐藤 聡; 西谷 健夫
Fusion Science and Technology 52(4), p.817-820(2007) ; (JAEA-J 03499)
 FNSのDT中性子源を用いて、Li/V-alloy及びFlibe/V-alloy先進液体金属冷却ブランケットシステムに用いられる主要材料の放射化特性評価を実施した。V合金構造材,MHD効果低減用電気絶縁被覆材Er2O3及び溶融塩Flibeの放射能を評価するために、各々V-4Cr-4Ti箔,金属Er箔及びテフロンシートを照射試料とした。特に、放射化特性の中性子スペクトル依存性を検証する目的で、14MeV単色中性子照射に加えて、ベリリウム及び固体リチウムブロックで構築した3種類のモックアップ内における照射を行い、試料の誘導放射能をGe検出器により測定した。測定結果は、MCNP, JENDL3.3による中性子輸送計算及び群定数が315群のFISPACT-2001, EAF-2001による誘導放射能計算結果と比較し、14MeV単色中性子及びモックアップ内における照射では7核種について、両者は〜20%以内で一致した。また、誘導放射能計算におけるエネルギー群数と計算精度の関係も調べ、一部の核種で175群における計算結果が315群における計算結果と比較して10-50%過大評価となることを示した。

36000171
Effects of tube drawing on structural material for ITER test blanket module
廣瀬 貴規; 谷川 博康; 榎枝 幹男; 秋場 真人
Fusion Science and Technology 52(4), p.839-843(2007) ; (JAEA-J 03500)
 ITERテストブランケットモジュール(TBM)製作技術開発の一環として、低放射化鋼製第一壁用矩形冷却管製作法を検討した。今回採用した冷間加工法では、第一壁構造物を溶接なしで製作し得る□11mm×1.5T×3500Lmmの矩形管の製作に成功した。第一壁の製造法である熱間等方圧加圧法(HIP)では、接合不良回避の観点から、高精度の表面粗さ及び角部の曲率が要求されるが、本研究ではそれぞれ1μm及び1.4mmと精度良い製品が得られた。製品のミクロ組織は典型的な圧延組織を呈したが、HIP相当の熱履歴により、等方的な組織に回復することが得られた。これにより、TBM部材のうち最も製作が困難な薄肉矩形管を製管できる見通しを得た。

36000172
Recombination centers in as-grown and electron-irradiated ZnO substrates
Son, N. T.*; Ivanov, G.*; Kuznetsov, A.*; Svensson, B. G.*; Zhao, Q. X.*; Willander, M.*; 森下 憲雄; 大島 武; 伊藤 久義; 磯谷 順一*; Janzén, E.*; Yakimova, R.*
Journal of Applied Physics 102(9), p.093504_1-093504_5(2007) ; (JAEA-J 03502)
 室温にて3MeV電子線照射したZnO中に発生する欠陥をODMR(Optical detection of magnetic resonance)を用いて調べた。その結果、キャリアの再結合中心として働くZn空孔に起因する欠陥及びその他幾つかの空孔型欠陥が観測された(LU1〜LU6センター)。また、電子線未照射のZnOに関しても併せてODMR測定を行ったところ、電子線照射ZnOで観測された欠陥のうち、Zn空孔及びその他の空孔に起因する欠陥であるLU3及びLU4センターが観測された。このことから、LU3及びLU4センターはキャリア再結合中心として働く真性欠陥であることが結論できた。

36000173
Helium isotopes as geochemical indicators of a serpentinized fore-arc mantle wedge
梅田 浩司; McCrank, G. E.*; 二ノ宮 淳
Journal of Geophysical Research 112(B10), p.B10206_1-B10206_10(2007) ; (JAEA-J 03503)
 西南日本の前弧域(非火山地帯)におけるヘリウム同位体比の空間分布を把握するため、九州東部の温泉ガスのヘリウム同位体比を測定するとともに、ほかの地域の温泉ガスのデータを含めて同位体比のデータのコンパイルを行った。その結果、九州,四国及び紀伊半島では、ヘリウム同位体比に系統的な違いが認められた。また、高いヘリウム同位体比の分布域には、非火山性の低周波微動が発生している。これらのことから、ヘリウム同位体比の分布は、地殻及びマントルの構造及びスラブ起源の流体のフラックスに起因していることが示唆される。

36000174
Synthesis of endohedral 133Xe-fullerenol by using higher fullerene
渡辺 智; 片渕 竜也*; 石岡 典子; 松橋 信平
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences 8(2), p.105-107(2007) ; (JAEA-J 03504)
 Hydrophilic endohedral 133Xe-fullerenols [133Xe@C76(OH)x and 133Xe@C84(OH)x] were synthesized from hydrophobic endohedral 133Xe-fullerenes. The yields were found to depend on the solubility of endohedral 133Xe-fullerenols in o-dichlorobenzene and water phases, reflecting the number of OH groups of the product. The endohedral 133Xe-fullerenols stored in 0.9 % NaCl solution were stable enough for the use in nuclear medicine.

36000175
Surface studies of tungsten erosion and deposition in JT-60U
上田 良夫*; 福本 正勝*; 西川 雅弘*; 田辺 哲朗*; 宮 直之; 新井 貴; 正木 圭; 石本 祐樹*; 都筑 和泰*; 朝倉 伸幸
Journal of Nuclear Materials 363-365, p.66-71(2007) ; (JAEA-J 03505)
 JT-60Uの外側ダイバータ部分に、タングステンをコーティングしたCFCグラファイトタイルを13枚設置し、タングステンタイルの健全性や損耗されたタングステンの輸送・再堆積特性を調べた。タングステンの再堆積分布については、EDXやXPSを用いて測定を行った。タングステンタイルには最大6MW/m2の熱負荷が加わったが、特に目立った損傷は観測されなかった。Wタイルに隣接したCFCグラファイトタイル上には、タングステンが損耗・電離後、磁力線に沿って移動して堆積した厚い堆積層が局所的に存在した。また、タングステンタイルと同じセクションにおけるタングステンのポロイダル方向の再堆積分布を調べたところ、内側ダイバータストライク点近傍と外側ウイング下部に多くの堆積が見られた。これらの分布を、13Cの再堆積分布と比較したところ、内側ダイバータではほぼ同様の分布を観測したが、ドームの内側ウイングと外側ウイングでは、異なった堆積傾向が見られた。

36000176
A New fast velocity-diffusion modelling for impurity transport in integrated edge plasma simulation
清水 勝宏; 滝塚 知典; 川島 寿人
Journal of Nuclear Materials 363-365, p.426-431(2007) ; (JAEA-J 03506)
 ダイバータでの強い放射損失と、高い閉じ込め性能を持った主プラズマとが両立するには、不純物をダイバータ領域に留めておく制御方法を確立する必要がある。われわれは、シミュレーションコードIMPMCを用いて、不純物の挙動を調べている。速度空間における散乱過程をモンテカルロ法で模擬するとき、これまでのモンテカルロ法では時間ステップ幅が減速時間に強く制限される欠点があった。そのため非接触プラズマでは計算効率が著しく悪くなった。われわれは、この拡散過程に対して、Langevinの解析解を用いる新しい拡散モデルを開発した。これによって、プラズマと不純物の輸送を自己無撞着に解くモデル開発の見通しを得た。この統合コード(SONIC)により、MARFEにおける不純物輸送を明らかにすることを目的として、JT-60UでのX点MARFEのシミュレーション解析を行った。プライベイト領域から化学スパッタリングで発生したメタンが、X点まで深く侵入した結果、X点近傍の強い放射損失をもたらすことを明らかにした。

36000177
Ion beam analysis of H and D retention in the near surface layers of JT-60U plasma facing wall tiles
杉山 一慶*; 林 孝夫; Krieger, K.*; Mayer, M.*; 正木 圭; 宮 直之; 田辺 哲朗*
Journal of Nuclear Materials 363-365, p.949-954(2007) ; (JAEA-J 03507)
 プラズマ対向壁中へのトリチウムを含む水素同位体の蓄積は、ITER等次世代炉の第一壁設計において重要な課題となる。JT-60Uでは動作ガスとして軽水素(H),重水素(D)を用いていることから、本研究ではJT-60Uプラズマ対向壁タイル中に蓄積されたH, Dの水素同位体蓄積に関する知見を得ることを目的として分析研究を実施した。分析はJT-60Uの第一壁サンプルタイルをドイツのマックスプランク研究所に運んで実施した。高エネルギー4Heビームを用いた反跳粒子検出法により、タイル試料の表面層(〜2μm)のH, Dの深さ分布及び定量分析を行った。プラズマ対向表面の深さ分布を見ると、表面近傍(〜1μm)は主としてHが蓄積されており、Dがそれより少し深い部分より蓄積量が増加することが観測された。これはJT-60Uにおいて表面のトリチウム除去のために真空容器解放前(すなわち試料の取り出し直前)に実施されるH放電により、ごく表面にて、DとHとの同位体置換を生じた結果を示している。

36000178
Comparison of boronized wall in LHD and JT-60U
芦川 直子*; 木津 要; 柳生 純一; 中畑 俊彦*; 信太 祐二; 西村 清彦*; 吉河 朗*; 石本 祐樹*; 大矢 恭久*; 奥野 健二*; 宮 直之; 日野 友明*; 増崎 貴*; 相良 明男*; 大藪 修義*; LHD実験グループ*
Journal of Nuclear Materials 363-365, p.1352-1357(2007) ; (JAEA-J 03508)
 LHD真空容器内で主放電6081ショット,ボロニゼイション3回に曝された。ステンレス(SS316)サンプル、及び同様にJT-60U真空容器ポート内で主放電1896ショット,ボロニゼイション2回に曝された。SS316サンプル表面の元素分布状態をX線光電子分光装置(XPS)を用いて分析し、LHDとJT-60Uの結果を比較した。(1)LHDでは最表面において炭素が20%,酸素が45%であり、それ以降基板界面に至るまで80%のボロン膜が保持されている。JT-60Uでは最表面において炭素が60%であり、その後55%程度のボロン膜が保持されている。このようにLHDと比較するとJT-60Uでは壁材による堆積層が顕著である。(2)JT-60Uでのボロン膜上の堆積層はトーラス方向に非均一であり、C1s及びO1sのXPSスペクトルピークシフトの結果においても場所により異なる傾向を示す。これはトーラス方向の酸素捕捉能力が非均一であることを示唆している。(3)ボロン膜厚は、LHDではグロー電極の位置に依存するが、JT-60Uではそのような傾向は見受けられなかった。理由の一つとして炭素による堆積層がトーラス方向に非均一であることが考えられる。(4)ボロン膜の厚みは実験サイクル中十分に保持されているため、ボロン化壁による酸素軽減効果はおもにボロン膜の最表面の特性に起因すると考えられる。

36000179
Search for luminescent materials under 14 MeV neutron irradiation
藤 健太郎*; 四竃 樹男*; 永田 晋二*; 土屋 文*; 山内 通則; 西谷 健夫
Journal of Nuclear Materials 367-370(2), p.1128-1132(2007) ; (JAEA-J 03509)
 国際熱核融合実験炉(ITER)等の炉心近傍は放射線,電磁場等により非常に苛酷な環境にあり、この環境で作動する計測システムの開発は重要である。光学ファイバーや照射誘起発光材料は電磁力に不感であり照射誘起起電力等の電気的効果の影響がなく、上記のシステムに使用するために有利な条件を備えている。本研究ではその材料として数種類の市販のシンチレータと長寿命蛍光体(LLP)に着目し、高速中性子照射による発光特性を実験的に評価した。照射には日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)の核融合中性子源(FNS)を利用し、2.6×109n/cm2/sの中性子フルエンスまで照射を実施した。その結果、試験したすべての材料に対して照射による発光現象を検知し、発光までの時間差が生じる仕組み,照射フルエンスや中性子エネルギーと発光現象との関係や発光現象に対する不純物の影響等を明らかにした。それにより、光学的計測材料としてはLLPが有力な候補材であることを確認した。

36000180
Neutron elastic recoil detection for hydrogen isotope analysis in fusion materials
久保田 直義; 近藤 恵太郎; 落合 謙太郎; 西谷 健夫
Journal of Nuclear Materials 367-370(2), p.1596-1600(2007) ; (JAEA-J 03510)
 水素同位体分布分析の限界深さを数100μmまで拡張するために、中性子ビームを使った中性子弾性反跳粒子検出法(NERDA)を示した。日本原子力機構の核融合中性子源で生成された14.1MeV中性子ビームは試料の法線方向から入射する。試料から放出された粒子は、ΔE-E検出器で計測される。入射中性子のフルエンスは真空容器後方に設置した核分裂計数管でモニターした。まず、重水素密度が既知である、厚さ100μmの重水素化ポリエチレンを標準試料として原理検証実験を行った。その結果、ポリエチレンの分析限界深さ801μmの12%に相当する、99μmの深さ分解能が得られた。これは、炭素で構成されるプラズマ対向壁の試料分析に対しては、61μmの深さ分解能が期待でき、再堆積層全深さ領域にわたって水素同位体分布を得ることができる。さらに応用例として、NERDAを用いたJT-60Uプラズマ対向壁内の水素同位体分布分析を行った。

36000181
Research and development of minor actinide-containing fuel and target in a future integrated closed cycle system
逢坂 正彦; 芹澤 弘幸; 加藤 正人; 中島 邦久; 舘 義昭; 北村 了一; 三輪 周平; 岩井 孝; 田中 健哉; 井上 賢紀; 荒井 康夫
Journal of Nuclear Science and Technology 44(3), p.309-316(2007) ; (JAEA-J 03511)
 高速炉及び加速器駆動未臨界システムを含む将来の統合された閉サイクルシステムにおけるマイナーアクチニド含有燃料及びターゲット、(Pu,Am)O2-MgO, (Pu,Np)O2-MgO, (U,Pu,Np)O2, (U,Pu,Np)N, (Pu,Np,Zr)Nの研究開発が進行中である。本論文では、試料作製試験及び特性測定に関しての現状を報告する。母材の選択を含む酸化物ターゲットの設計コンセプトについて述べる。燃料-被覆管機械的相互作用の評価に資することを目的として高温機械的特性測定装置が新たに導入された。Npを含有する2種類の高速炉用燃料については、その開発の歴史と将来展望について述べる。加速器駆動未臨界システム用の新しい窒化物ターゲットの予備試験結果を紹介する。最後に、高速実験炉常陽における照射試験について簡潔に紹介する。

36000182
Numerical study on tritium behavior by using isotope exchange reactions in thermochemical water-splitting iodine-sulfur process
大橋 弘史; 坂場 成昭; 西原 哲夫; 稲垣 嘉之; 國富 一彦
Journal of Nuclear Science and Technology 44(11), p.1407-1420(2007) ; (JAEA-J 03512)
 高温ガス炉水素製造システムにおいて、伝熱管透過による1次冷却系から製品水素へのトリチウム混入は重要な課題である。また、トリチウムの水素製造設備内循環化学物質への蓄積は、水素製造設備(熱化学法ISプロセス)の非原子力施設化における課題である。本研究では、トリチウムとISプロセスの循環物質(H2O, H2SO4, HI)との同位体交換反応を考慮した物質収支に関する数値モデルを作成し、HTTR-ISシステムを対象としてISプロセス内におけるトリチウム濃度評価を行った。この結果、同位体交換反応を考慮することによって製品水素中トリチウム濃度が増加することを明らかにするとともに、濃度が1.51×10-3Bq/cm3(STP)(=16.8Bq/g-H2)であることを示した。さらに、不確定性を有する変数の影響評価を行い、トリチウム濃度の変数に対する依存性及び内包するトリチウム濃度が最大となる機器を明らかにした。

36000183
Releases of cesium and poorly volatile elements from UO2 and MOX fuels under severe accident conditions
工藤 保; 木田 美津子; 中村 武彦; 永瀬 文久; 更田 豊志
Journal of Nuclear Science and Technology 44(11), p.1421-1427(2007) ; (JAEA-J 03513)
 シビアアクシデント時の燃料からの放射性物質の放出挙動を調べるVEGA計画において、照射済のPWR-及びBWR-UO2, ATR-MOX燃料をほぼ同一条件で試験した結果を報告する。1770K以下の燃料温度におけるセシウムの放出は、照射中の燃料内移行の違いに影響されることを示した。1770K以上でのセシウム、及び試験温度におけるウラン,プルトニウム,ストロンチウム,モリブデンの低揮発性元素の放出速度に関しては、燃料による違いは見られなかった。3130Kの温度においてプルトニウムの放出が増大したが、これは燃料の還元によるPu化合物の分圧上昇が原因と考えられる。ストロンチウムにおいても3130Kで放出が増大し、モリブデンに関しては2310K以上で放出が低くなった。これらは、ストロンチウム及びモリブデンの酸化物が還元して金属となったためと考えられる。

36000184
Effects of fuel oxidation and dissolution on volatile fission product release under severe accident conditions
工藤 保; 木田 美津子; 中村 武彦; 永瀬 文久; 更田 豊志
Journal of Nuclear Science and Technology 44(11), p.1428-1435(2007) ; (JAEA-J 03514)
 シビアアクシデント条件における高燃焼度燃料からの揮発性核分裂生成物の放出に関し、VEGA計画において水蒸気雰囲気下で実験を行った。不活性,水素及び水蒸気雰囲気での実験と比較することにより燃料の酸化及び溶融の核分裂生成物放出に及ぼす影響について調べた。水蒸気雰囲気では燃料の酸化によりセシウムとクリプトンの放出が増加した。しかしながら、溶融ジルカロイによる燃料の還元のため、ジルカロイの融点である約2030K以上の温度では放出増加は顕著ではなくなった。水素雰囲気では燃料は2300K以上で急激に溶融し、その結果セシウムの急激な放出増加が見られるが、水蒸気雰囲気では実験温度範囲内において急激な放出増加は示さなかった。水蒸気雰囲気では、溶融速度は水素雰囲気に比べておよそ1/1000になると評価した。

36000185
Environmental tritium in the vicinity of Tokai Reprocessing Plant
藤田 博喜; 國分 祐司; 小嵐 淳
Journal of Nuclear Science and Technology 44(11), p.1474-1480(2007) ; (JAEA-J 03515)
 1990年から2004年の東海再処理施設周辺の大気中,葉菜中及び土壌中トリチウム濃度のモニタリング結果をまとめた。大気中HTO及びHTの年間平均濃度は、それぞれ12-40mBqm-3, 14-51mBqm-3であり、大気中HTO濃度は、季節変化を示した。再処理施設からの距離とともにその濃度が減少する傾向を示し、5km地点ではほぼバックグラウンド濃度となった。これらの観測結果は、再処理施設からのトリチウムの放出量と実気象データをもとにシミュレーションした結果とほぼ一致するものであった。葉菜中及び土壌中のトリチウム濃度は、大気中HTO濃度とほぼ同じレベルであり、大気-土壌-葉菜間ではトリチウム濃度が比較的早く平衡に達することが示唆された。

36000186
Simple estimation of fission yields with selective channel scission model
太田 雅之; 中村 詔司
Journal of Nuclear Science and Technology 44(12), p.1491-1499(2007) ; (JAEA-J 03516)
 核分裂収率を計算するために、選択チャンネル核分裂モデルを提案している。今回の研究では、チャンネル依存の核分裂障壁について、以下の仮定に基づいて、核分裂収率の質量分布を計算した。まず、(1)チャンネル依存の核分裂障壁は、Q値と分裂片間のクーロンポテンシャルの差で与えられるとした。すなわち、分裂片間のクーロンポテンシャルは、基底状態での2つの分裂片の半径と、その分裂片の間の核力相互作用の距離の和で求められるとした。ここでは、核の基底状態での形状は、KTUY質量公式における報告値を用いた。また、(2)鞍点附近のポテンシャルは、簡単のため二次曲線で近似した。今回、232Th, 233U, 235U, 236U, 238U, 237Np, 239Pu, 240Pu, 241Pu, 242Puの中性子誘起核分裂,241Am, 243Amの自発核分裂、及び106Pdと197Auの核分裂に対する収率の質量分布を求めた。分裂片質量A=135-150(及びA=80-95)の領域において差がみられるものの、報告値と大まかな一致を示した。

36000187
Thermal-neutron capture cross section and resonance integral of Americium-241
中村 詔司; 太田 雅之; 原田 秀郎; 藤井 俊行*; 山名 元*
Journal of Nuclear Science and Technology 44(12), p.1500-1508(2007) ; (JAEA-J 03517)
 242Amの基底状態を生成する熱中性子捕獲断面積(σ0,g)及び共鳴積分(I0,g)を、放射化法を用いて測定した。Westcottのconventionに基づいて解析を行い、σ0,gを628±22b、I0,gを3.5±0.3kbと求めた。

36000188
Effects of fast reactor irradiation conditions on tensile and transient burst properties of ferritic/martensitic steel claddings
矢野 康英; 吉武 庸光; 山下 真一郎; 赤坂 尚昭; 小野瀬 庄二; 渡辺 精一*; 高橋 平七郎
Journal of Nuclear Science and Technology 44(12), p.1535-1542(2007) ; (JAEA-J 03518)
 高速実験炉「常陽」で燃料照射をした高強度フェライト/マルテンサイト鋼(PNC-FMS)及びHT9M被覆管の照射後強度試験、具体的には、引張及び急速加熱バースト試験を実施し、両鋼の照射後強度特性評価を行った。

36000189
Molecular dynamics study on defect structure of gadolinia-doped thoria
逢坂 正彦; 安達 淳*; 黒崎 健*; 宇埜 正美*; 山中 伸介*
Journal of Nuclear Science and Technology 44(12), p.1543-1549(2007) ; (JAEA-J 03519)
 ガドリニアをドープしたトリアの欠陥構造に関して、分子動力学法を用いて評価を行った。Th, Gd及びOイオンに部分イオン性二体ポテンシャルを用い、パラメータは経験的に決定した。欠陥構造を仮定し、格子定数へ与える影響を評価した。Gd濃度が0〜45%、温度が1200Kまでの分子動力学計算により格子定数の変化を求めた。また1273Kにおける酸素の拡散係数を計算した。計算結果を実験と比較・検討することにより、Gd-酸素空孔-Gd型のクラスターが欠陥構造として最も確からしいことがわかった。

36000190
μSR study of the effects of Ce dilution on the development of the heavy-fermion state in (Ce,La)2IrIn8
大石 一城; Heffner, R. H.; 伊藤 孝; 髭本 亘; Morris, G. D.*; Hur, N.*; Bauer, E. D.*; Sarrao, J. L.*; Thompson, J. D.*; MacLaughlin, D. E.*; Shu, L.*
Journal of Physics and Chemistry of Solids 68(11), p.2068-2071(2007) ; (JAEA-J 03520)
 正方晶Ho2CoGa8型結晶構造を有するCe2IrIn8は電子比熱係数γ〜700mJ/molK2の重い電子系物質として知られており、0.6K以下で微小磁気モーメントによるスピングラス的磁性を示す。単結晶試料Ce2IrIn8H=1T|| cの条件で行われたミュオンナイトシフト測定の結果、K-χプロットにおいてT*=24(1)K以下で直線的な振る舞いからのずれが観測された。この振る舞いはT*以下で発達する遍歴成分による磁化率χHFに起因すると考えられ、T*以下でχHF(1-T/T)log(T*/T)に従う。今回、われわれはCe2IrIn8におけるT*及びχHFのLa置換効果を調べるため、H=1T|| cの条件でミュオンナイトシフト測定を行った。その結果、Ce2IrIn8で観測されていたシフトがLa置換により二つに分裂し、新たに出現したシフトの強度はLa置換により増大した。また、T*はLa置換量が増加するに連れて減少していくことから、La置換によりf電子間の相関が弱められていることを確認した。

36000191
Local neutron transmutation doping using isotopically enriched silicon film
山田 洋一; 山本 博之; 大場 弘則; 笹瀬 雅人*; 江坂 文孝; 山口 憲司; 鵜殿 治彦*; 社本 真一; 横山 淳; 北條 喜一
Journal of Physics and Chemistry of Solids 68(11), p.2204-2208(2007) ; (JAEA-J 03521)
 シリコン同位体濃縮材料は、同位体の純度を上げることによる熱伝導性の向上、29Siの核スピンを利用した量子素子の作製など、ユニークな物性の期待されるものが少なくない。この中で、30Siは熱中性子により31Pに核変換することからドーパントとして機能することが知られている。本研究ではこの現象を応用し、原子力機構において開発された高効率な同位体濃縮法により得られた30Si濃縮SiF4を原料として用い、高精度ドーピング手法の開発を目指して30Si濃縮薄膜を作製した。薄膜の質量分析の結果から天然同位体存在比の約2倍の30Si: 7.1%であることがわかった。また組成解析の結果から不純物のFは約0.6%以下であった。これらの結果と併せて薄膜及び界面の構造,中性子照射に伴う電気特性の変化についても議論する。

36000192
Molecular-network-ionic structure transitions in liquid AlCl3 and ZnCl2 halogenides under pressure
Brazhkin, V. V. *; Lyapin, A. G.*; Popova, S. V.*; 片山 芳則; 齋藤 寛之; 内海 渉
Journal of Physics; Condensed Matter 19(24), p.246104_1-246104_10(2007) ; (JAEA-J 03522)
 液体AlCl3及びZnCl2ハロゲン化物を高温高圧その場観察X線回折法によって研究した。これらのハロゲン化物は液体で分子的なネットワーク構造を持つ。すなわち、これらは純粋な共有結合性融体とイオン性融体の中間的な性質を持つ。本研究の結果は、比較的低圧で四面体ネットワーク的な中距離秩序が消滅し、その後イオン性液体に類似した近距離秩序を持つ構造に急激に転移することを示している。本研究で見いだされた高圧下におけるこのような2段階の構造変化は、多くの共有結合的なハロゲン化物を含む広い範囲の単純融体の一般的な特徴であると考えられる。

36000193
Rapid determination of 89Sr and 90Sr in radioactive waste using Sr extraction disk and beta-ray spectrometer
亀尾 裕; 片山 淳; 藤原 亜佐子; 原賀 智子; 中島 幹雄
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 274(1), p.71-78(2007) ; (JAEA-J 03523)
 放射性廃棄物に含まれる89Sr及び90Srを迅速に定量するため、ディスク状の固相抽出剤とβ線スペクトロメトリを組合せた分析法を開発した。種々の割合で89Sr, 90Sr及び90Yを吸着させたディスクを作製し、β線スペクトロメトリにより定量したところ、89Sr/90Srの比が0.3から45の範囲であれば、30%以下の不確かさ(2σ)で定量可能であった。原子力機構から発生した放射性廃液に対して本迅速分析法を適用した結果、その定量値は従来法により得られた値とよく一致した。

36000194
TEM/STEM observation of ZrC-coating layer for advanced high-temperature gas-cooled reactor fuel
相原 純; 植田 祥平; 安田 淳; 石橋 英春; 高山 智生; 沢 和弘; 本橋 嘉信*
Journal of the American Ceramic Society 90(12), p.3968-3972(2007) ; (JAEA-J 03524)
 日本原子力研究開発機構は革新的高温ガス炉用燃料としてZrC被覆燃料粒子の開発を開始した。本報告はおもに、開発初期におけるZrCと当方性高密度熱分解炭素(PyC)被覆層の微細構造に焦点を当てたものである。ZrC層中の遊離炭素領域はZrC結晶粒界にc面が沿ったような構造をとっているようであった。特にこのような構造をとる遊離炭素層は、ZrC層の機械的強度に加えて核分裂生成物閉じ込め性能を損なうことが予測される。PyC被覆層は中距離秩序を持った非晶質構造をとっていた。

36000195
Protonation states of buried histidine residues in human deoxyhemoglobin revealed by neutron crystallography
茶竹 俊行*; 柴山 修哉*; Park, S.-Y.*; 栗原 和男; 玉田 太郎; 田中 伊知朗*; 新村 信雄*; 黒木 良太; 森本 幸生*
Journal of the American Chemical Society 129(48), p.14840-14841(2007) ; (JAEA-J 03525)
 A large crystal of human deoxy hemoglobin (Hb) was grown from D2O solution (pD 6.3). The preliminary neutron diffraction experiment was carried out at the KUR reactor in RRI of Kyoto University, and the diffraction data set to 2.1 Å resolution was collected at JRR-3 reactor in JAEA using the BIX-3. The neutron crystal structure of Hb reveals that both the α- and β-distal histidines (Hisα58 and Hisβ63) adopt fully (doubly) protonated form. This finding sharply contrasts with existing results on R (relaxed) state liganded Hbs where such full protonation can never occur. This results suggest an interesting possibility that the both histidines could contribute to the T (tense) state Bohr effect of Hb. Indeed, the protonation/deprotonation of each distal histidine may have a direct impact on the oxygen affinity of the nearby heme group through sterical hindrance and/or polarity change in the heme pocket without affecting the allosteric equilibrium of Hb.

36000196
Strong-coupling superconductivity of CeIrSi3 with He non-centrosymmetric crystal structure
立岩 尚之; 芳賀 芳範; 松田 達磨; 池田 修悟; 山本 悦嗣; 奥田 悠介*; 宮内 裕一郎*; 摂待 力生*; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 76(8), p.083706_1-083706_4(2007) ; (JAEA-J 03526)
 結晶構造に反転対称性のないCeIrSi3の高圧研究を行った。電気抵抗測定と比熱測定を同一試料で行った。反強磁性状態の臨界圧力は2.25GPaと決定された。超伝導状態は3.5GPaまで存在し、2.5〜2.7GPa近辺で超伝導転移温度は最大値Tsc=1.6Kを示す。2.58GPaでは超伝導転移温度で転移に伴う巨大な比熱異常が観測された。比熱の飛びの大きさΔCac/Cac(Tsc)は5.7である。この値は過去報告された超伝導物質の中でも最大値を示し、強結合超伝導状態が実現していることが示唆される。

36000197
Gelation-induced phase separation of poly(vinyl alcohol) in mixed solvents of dimethyl sulfoxide and water
高橋 伸明; 金谷 利治; 西田 幸次*; 梶 慶輔*
Macromolecules 40(24), p.8750-8755(2007) ; (JAEA-J 03527)
 ジメチルスルホキシド/水を混合溶媒とするポリビニルアルコール溶液を100℃から25℃にクエンチし、その物理ゲル化過程において時間分割光散乱測定を行った。ある待機時間(tm)を経た後、散乱プロファイルには液-液相分離に起因する幅広いピークが現れ、そのピーク位置(Qm)は時間とともに高Q側へシフトした。この実験結果は、これまで常識的に議論されてきた通常の相分離過程の理論予測や実験結果に反していた。われわれはこれがゲル化(ネットワーク形成)による相分離への影響を示唆していると考え、このピーク位置(Qm)の異常発展現象をゲル化誘起相分離によるものであると結論付け、その構造形成過程について議論した。

36000198
Structure of nano-size oxides in ODS steels and its stability under electron irradiation
岡 桂一朗*; 大貫 惣明*; 山下 真一郎; 赤坂 尚昭; 大塚 智史; 谷川 博康
Materials Transactions 48(10), p.2563-2566(2007) ; (JAEA-J 03528)
 ナノサイズ酸化物粒子の微細構造上の詳細を把握するために、超高圧電子顕微鏡(HVEM),エネルギー分散型X線分光法(EDS),アトムプローブ電界イオン顕微鏡(AP-FIM)等の各種手段により3種類の異なるODSフェライト鋼及びODSオーステナイト鋼を調査した。酸化物はイットリウム(Y),チタン(Ti)及び酸素(O)などの成分を含んでおり、粒子の内側と外側で組成が異なる殻状の複層構造(以下、シェル状構造と称す)になっていることが示された。シェル状構造は、製造段階における母相の結晶構造と因果関係のあることが示唆された。酸化物粒子の照射下安定性を評価するために実施した電子照射試験(照射温度:室温923K,照射量47dpa)の結果からは、酸化物粒子の明確なサイズ変化は認められなかった。本研究で取得した実験結果をほかの研究成果と比較・検討し、酸化物の照射下安定性は酸化物の化学組成によって大きく異なることが明らかとなった。

36000199
Density limit in discharges with high internal inductance on JT-60U
山田 弘司*; 竹永 秀信; 鈴木 隆博; 藤田 隆明; 滝塚 知典; 鎌田 裕; 朝倉 伸幸; 津田 孝; 武智 学; 松永 剛; 坂本 隆一*; 三浦 幸俊
Nuclear Fusion 47(11), p.1418-1424(2007) ; (JAEA-J 03529)
 プラズマ電流のランプダウンにより、周辺部の磁気シアの指標である内部インダクタンス(liを2.8まで高めたJT-60UのLモードプラズマにおいて、グリーンワルド限界を1.7倍超える高密度を実現した。同プラズマでは、グリーンワルド限界を超える高い密度でもLモード閉じ込め比例則より1.5倍高い閉じ込め性能を維持しており、周辺温度も高く維持されている。これまでの研究で、高li放電は高い閉じ込め性能が得られることが示されていたが、本研究ではそれに加えて高い周辺温度と関連して密度限界に対しても高li放電は裕度が大きいことを明らかにした。ダイバータ領域のDα発光強度の急激な減少で特徴づけられる非接触現象が起こる密度も高li放電では高い。以上の結果から、高li放電では周辺部の熱及び粒子輸送が改善し、密度限界が緩和したことを示唆した。このような高li放電は通常のトカマク運転領域からは外れているものの、周辺部の磁気シアが密度限界の物理機構を明らかにするための重要な鍵になっていることを示している。

36000200
Volume recombination of C4+ in detached divertor plasmas of JT-60U
仲野 友英; 久保 博孝; 朝倉 伸幸; 清水 勝宏; 木島 滋; 藤本 加代子; 川島 寿人; 東島 智
Nuclear Fusion 47(11), p.1458-1467(2007) ; (JAEA-J 03530)
 JT-60UのX点MARFEを伴う非接触プラズマにおいて、4本のC3+イオンのスペクトル線を同時に2方向から空間分解能1cmで測定した。そのスペクトル線の強度比を衝突放射モデルで解析した結果、C3+イオンはC4+イオンと電子の体積再結合によって生成することを初めて明らかにした。コンピュータトモグラフィ手法により再構築されたC3+スペクトル線の発光の2次元空間分布から、この体積再結合はX点の直上で発生することが明らかにされ、そこでは電子温度及び電子密度はそれぞれ1.6eV及び1.6×1021m-3と評価された。この体積再結合によって生成したC3+イオンからの放射パワーは全放射パワーの約20%を占めることが示された。

36000201
Controllability of large bootstrap current fraction plasmas in JT-60U
坂本 宜照; 竹永 秀信; 藤田 隆明; 井手 俊介; 鈴木 隆博; 武智 学; 鎌田 裕; 大山 直幸; 諌山 明彦; 小出 芳彦; JT-60チーム
Nuclear Fusion 47(11), p.1506-1511(2007) ; (JAEA-J 03531)
 JT-60Uにおいて、電流分布と圧力分布が相互に強く関連する自律系として特徴付けられる高自発電流割合プラズマの制御性について調べた。回転分布制御により圧力分布を制御したときにダイナミックな電流分布の変化が観測された。この電流分布の変化は自発電流割合が高いほど顕著である。また、中性粒子ビームによる周辺部電流駆動に対する高自発電流割合プラズマの応答を調べた結果、全電流分布と周辺部駆動電流分布のピークの位置の差異に起因して、安全係数の極小値の位置が変化するとともに内部輸送障壁の位置が変化し、周辺部電流駆動による高自発電流割合プラズマの制御性を示した。さらに、電子サイクロトロン波による電流駆動を電流ホールのない負磁気シアプラズマに行ったところ、内部輸送障壁構造の大きな変化なしに、中心領域の電流分布を弱磁気シアまで大きく制御できることがわかった。

36000202
Studies on the behavior of tritium in components and structure materials of tritium confinement and detritiation systems of ITER
小林 和容; 磯部 兼嗣; 岩井 保則; 林 巧; 洲 亘; 中村 博文; 河村 繕範; 山田 正行; 鈴木 卓美; 三浦 秀徳*; 鵜澤 将行*; 西川 正史*; 山西 敏彦
Nuclear Fusion 47(12), p.1645-1651(2007) ; (JAEA-J 03532)
 トリチウム閉じ込め・除去は、核融合炉の安全性の要となる重要な課題である。本研究では、上記閉じ込め・除去システムの機器及び構造材料におけるトリチウムの挙動に関する基礎実験研究を行い、(1)トリチウムのコンクリート壁中の浸透挙動,(2)異常時の触媒性能における放出の恐れのあるSF6ガスのトリチウム除去設備に対する触媒被毒効果の影響,(3)除去設備の再生水を処理するシステムの主要機器である電解セルの対放射線耐久性を明らかにした。

36000203
Radiation-induced grafting of dimethylaminoethylmethacrylate onto PE/PP nonwoven fabric
Kavakli, P. A.*; Kavakli, C.*; 瀬古 典明; 玉田 正男; Güven, O.*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 265(1), p.204-207(2007) ; (JAEA-J 03533)
 近年環境汚染の原因に挙げられる窒素やリン酸イオンを除去するために、ポリエチレン製の不織布に放射線グラフト重合により、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DEMAEMA)を導入した。DEMAEMA型の吸着材を用いてリン酸イオンに対する吸着試験を行ったところ、空間速度100(h-1)において、10ppbのリン酸イオン含有の処理液を吸着材体積の2000倍まで通液可能なことがわかった。

36000204
High-energy, high-contrast, multiterawatt laser pulses by optical parametric chirped-pulse amplification
桐山 博光; 森 道昭; 中井 善基; 山本 洋一*; 田上 学*; 圷 敦; 下村 拓也*; 近藤 修司; 金沢 修平; 大道 博行; 木村 豊秋; 宮永 憲明*
Optics Letters 32(16), p.2315-2317(2007) ; (JAEA-J 03534)
 小型で高信頼性,高出力,高コントラスト動作が可能な非平行光パラメトリックチャープパルス増幅器(OPCPA)の開発を行った。広スペクトル帯域チタンサファイアレーザー発振器からの出力光をシード光とし、このシード光を回折格子を用いたパルス拡張器によりパルス幅を伸張し、タイプI位相整合のBBO-OPCPAに入射した。OPCPAにより、0.1nJのシード光を10Hzの繰り返し動作で10億倍以上の高い利得で122mJにまで増幅した。最後にパルス圧縮を行うことにより、19fsのパルス幅を得た。ピークパワーで3.2TW、平均出力で0.62Wを得た。また、ピコ秒の時間領域において、8桁以上の高いコントラストを達成した。

36000205
Condition for the existence of complex modes in a trapped Bose-Einstein condensate with a highly quantized vortex
福山 絵里子*; 峰 真如*; 奥村 雅彦; 須永 知夏*; 山中 由也*
Physical Review A 76(4), p.043608_1-043608_11(2007) ; (JAEA-J 03535)
 中性原子気体ボース・アインシュタイン凝縮系において、高次量子化渦を持つ凝縮体は不安定であり、その崩壊が実験で確かめられていた。一方、高次量子渦度を持つ凝縮体において複素励起モードが現れるという数値計算の結果が数例報告されており、それが高次量子化渦の崩壊率に関係しているのではないかと指摘されていた。しかし、複素励起モードに関する理論は発展途上であり、どのような条件下で複素励起モードが現れるのかもわかっていなかった。本論文は、複素励起モードの出現条件を相互作用定数が小さい場合に解析的に求め、さらに、凝縮体が2以上の任意の渦度を持つ場合に必ず複素励起モードが現れることを示した。

36000206
Single-domain Si(110)-16×2 surface fabricated by electromigration
山田 洋一; Girard, A.*; 朝岡 秀人; 山本 博之; 社本 真一
Physical Review B 76(15), p.153309_1-153309_4(2007) ; (JAEA-J 03536)
 広大なSi(110)の単一ドメインを作製した。エレクトロマイグレーションにより表面再構成列を並べることができることを示した。この発見はSi(110)の清浄表面の良い準備手法を与えるだけでなく、低次元ナノ構造作製の新たなテンプレートへの応用を拓く。

36000207
Neutron capture cross sections of 186Os, 187Os, and 189Os for the Re-Os chronology
瀬川 麻里子; 正木 智広*; 永井 泰樹*; 天満 康之*; 嶋 達志*; 三島 賢二*; 井頭 政之*; Goriely, S.*; Koning, A.*; Hilaire, S.*
Physical Review C 76(2), p.022802_1-022802_5(2007) ; (JAEA-J 03537)
 宇宙の年齢を決定する最も誤差の少ない方法の一つであるRe/Os核時計を用いて宇宙年齢を推定するにはOs同位体の中性子捕獲反応断面積を精度よく求める必要がある。そこでわれわれは186Os, 187Os及び189Os(n, γ)反応断面積を測定した。本実験は、東工大ペレトロン加速器で加速された陽子の7Li(p,n)反応で生成されたkeV中性子の捕獲反応から放出される即発γ線を大立体角を持つコンプトン抑制型γ線検出器で精度よく測定し、186,187,189Os(n,γ)からの不連続及び連続γ線スペクトラムを得ることに成功した初めての実験である。このような即発γ線を高精度で測定するという点において、本実験手法であるパルス化中性子を用いた即発γ線測定及びγ線・中性子線に対する遮蔽技術は中性子のエネルギーによらずγ線スペクトロスコピー分野での広い応用が期待される。

36000208
Charge radii in macroscopic-microscopic mass models of axial asymmetry
飯村 秀紀; Buchinger, F.*
Physical Review C 76(5), p.057302_1-057302_4(2007) ; (JAEA-J 03538)
 非軸対称な変形が予想される多数の原子核の荷電半径を、Finite Range Droplet模型に非軸対称性を取り入れて計算したところ、実験値との良い一致が得られた。この改善の原因は、非軸対称性を含んだ質量計算から得られる四重極変形パラメータβ2を用いたことが主であり、荷電半径の計算に直接現れる非軸対称変形パラメータγにはほとんど依存しないことがわかった。

36000209
Nonviscous metallic liquid Se
Brazhkin, V. V. *; 舟越 賢一*; 神崎 正美*; 片山 芳則
Physical Review Letters 99(24), p.245901_1-245901_4(2007) ; (JAEA-J 03539)
 粘性は液体の基本的な物理的性質の一つである。液体の種類によって非常に広い範囲の値を示す。セレンは加圧によって液体の状態で半導体から金属への変化が起きることが最初に見いだされた物質の一つである。実時間ラジオグラフィーを用いた直接測定によって、高圧下での液体セレンの粘性が500分の1まで低下し、8mPa sという非常に低い値になることが示された。これは、比較的粘性の高い半導体状態と低粘性の液体状態の両方に対して、粘性測定が行われた初めての例である。セレンの粘性は、融解曲線に沿った加圧によって、半導体領域で大きく低下し、金属化によってさらに低下する。このような現象はさまざまなカルコゲナイド,ハロゲナイド,酸化物液体で期待される。

36000210
Research and development of imaging bolometers
Peterson, B. J.*; 木島 滋; Kostryukov, A. Y.*; Seo, D. C.*; Liu, Y.*; Miroshnikov, I. V.*; 芦川 直子*; Parchamy, H.*; 川島 寿人; 岩間 尚文*; 金子 昌司*; LHDチーム*; JT-60Uチーム
Plasma and Fusion Research (Internet) 2, p.S1018_1-S1018_4(2007) ; (JAEA-J 03541)
 イメージングボロメータの核融合炉への適用性展望と開発研究の概要を報告する。磁場閉じ込めの高温プラズマが放射や中性粒子を通じて失う損失パワーの測定は、これまで伝統的に1次元に配列した抵抗型ボロメータを用いて行われてきた。抵抗型ボロメータは、プラズマ放射を受けて変化した吸収薄膜の温度を抵抗線の抵抗値の温度依存性を利用して電気的に検出する方法である。多数の信号線を必要とする抵抗型ボロメータの場合、真空境界での取り合いや容器内の接続部で接触不良を生じる恐れのあることが核融合炉レベルの中性子照射試験により明らかとなった。一方、赤外イメージングボロメータは、金属吸収薄膜の放出する赤外放射を真空窓を経て中性子遮蔽の外まで信号を伝送する。抵抗型ボロメータ数百チャンネル分に相当する画像測定が可能で、将来の代替計測として期待される測定法である。核融合炉環境下での有効性を実証するためにイメージングボロメータを試作してJT-60Uトカマクに設置した。JT-60Uプラズマ放射の映像データと併せて核融合炉計測としての開発計画を示す。また、較正方法,トモグラフィー処理,新しい薄膜の開発やその他の応用などについても述べる。

36000211
Spatial variation of the foil parameters from in situ calibration of the JT-60U imaging bolometer foil
Araghy, H. P.*; Peterson, B. J.*; 林 浩己*; 木島 滋; 芦川 直子*; Seo, D. C.*; JT-60Uチーム
Plasma and Fusion Research (Internet) 2, p.S1116_1-S1116_4(2007) ; (JAEA-J 03542)
 JT-60Uイメージングボロメータの受光薄膜の較正実験を行い、黒化処理した厚さ2.5ミクロン,有効面積9cm×7cmの金薄膜について、膜面各点での熱拡散係数や膜厚と熱伝導率との積などパワー算出やトモグラフィー解析に必要な物性値を求めた。較正実験は真空窓の外からHe-Neレーザーを用いて薄膜を局所加熱し、その赤外放射像を赤外カメラで測定する「その場試験」で行った。膜の各点の物性値は、有限要素法を用いた各点の温度分布モデルと実測値が整合するように決定した。ここでは求めた物性値の膜面内の変化について報告する。レーザー照射による温度上昇の測定データが膜面各点で比較的大きく変化しているため膜厚と熱伝導率との積が一様でない結果を得た。黒化処理に用いた炭素皮膜あるいは金薄膜自身の不均一を示唆するものであるが、現在原因の分析と併せて詳しい解析を行っている。

36000212
Application of tomographic imaging to multi-pixel bolometric measurements
Liu, Y.*; 田村 直樹*; Peterson, B. J.*; 岩間 尚文*; 木島 滋; LHD実験グループ*; JT-60実験チーム
Plasma and Fusion Research (Internet) 2, p.S1124_1-S1124_4(2007) ; (JAEA-J 03543)
 最小限の仮定でできるだけ多くの情報を得るため、ここで述べる多素子2次元データの解析では線形のTikhonov-Phillips法と非線形の最大エントロピー法の2種類の拘束条件をトモグラフィーアルゴリズムの改善策として用いた。これらの方法は平滑化により対称性を仮定せずに少数データの放射分布再構成ができる特徴を持っている。さらに今回のような接線計測においては視線に沿う強度の変化が特に大きいため、視線の幅も考慮して視野の3次元構造を厳密に取扱った。これまで模擬放射分布を使ってアルゴリズムの試験を行った。核融合科学研究所のLHDでの2台の軟X線素子カメラによる測定と日本原子力研究開発機構のJT-60Uでの赤外イメージングボロメータカメラによる測定データについて行ったトモグラフィー解析の結果を報告する。

36000213
Quantum beam studies on polymer crystallization under flow
金谷 利治; 松葉 豪*; 荻野 慈子*; 高橋 伸明; 西田 幸次*
Polymer Journal 39(11), p.1085-1097(2007) ; (JAEA-J 03544)
 高分子科学分野における積年の問題の一つとして、流動場下における高分子の結晶化、特にいわゆる、シシ-ケバブ構造形成が挙げられる。最近の量子ビームテクノロジーの進歩がシシ-ケバブ構造形成の本質の理解に光明を投じた。本論文では、われわれの最近の研究成果である、流動場下における結晶化過程における、0.1nmから数十ミクロンまでの広範囲な実空間スケールにおける時間分割偏光解消光散乱,小角・広角X線散乱,小角中性子散乱測定結果について概説した。

36000214
"Crystal lattice engineering", an approach to engineer protein crystal contacts by creating intermolecular symmetry; Crystallization and structure determination of a mutant human RNase 1 with a hydrophobic interface of leucines
山田 秀徳*; 玉田 太郎; 小坂 恵*; 宮田 幸平*; 藤木 伸哉*; 田納 優*; 守屋 雅之*; 山西 守*; 本庄 栄二郎; 多田 宏子*; 井野 剛文*; 山口 宏*; 二見 淳一郎*; 妹尾 昌治*; 野本 貴志*; 平田 知子*; 吉村 元伸*; 黒木 良太
Protein Science 16(7), p.1389-1397(2007) ; (JAEA-J 03545)
 タンパク質の結晶格子は分子表面同士の相互作用からなっている。結晶格子内へのタンパク質の導入のため、ロイシンジッパー様の疎水的な相互作用をヒト膵臓RNase1のへリックス2へ導入した。野生型ヒトRNase1の結晶化はまだ報告をされていないが、4残基のロイシンを導入したRNase1では複数の結晶化条件で結晶を得た。そのX線結晶構造をウシRNaseAの立体構造を用いて分子置換法により決定した。こうして決定されたヒトRNase1の立体構造は、ウシRNaseAの立体構造と大変似ており、導入したロイシン残基を介して2分子のRNase1が疎水的なパッキングしていた。ロイシン導入の効果をさらに検討するために、導入したロイシン残基の数を3残基,2残基と減らした変異体を調製し結晶化を行った。これらの場合もロイシン残基による疎水的なパッキングが形成されていた。一方、ロイシン残基をヒトRNase1の別のへリックス(へリックス3)に導入し、効果を検証した。その結果、4残基のロイシンを導入した変異体でも結晶化し、4分子のRNase1が導入したロイシン残基を介してパッキングをしていることがわかった。これらの結果は、適切なロイシン導入により分子内対称性が生じ、より効果的に結晶化を促進する可能性を示す。

36000215
高分子の放射線加工
玉田 正男
原子力eye 53(1), p.9-12(2007) ; (JAEA-J 03547)
 高分子の放射線加工であるグラフト重合,橋かけ反応,分解反応の紹介とその応用例を示した。高分子に高エネルギーの放射線を照射して生成したラジカルを起点にして重合が開始すると、高分子鎖(グラフト鎖)が導入される。また、生じたラジカルの再結合により橋かけ反応が起こる。グラフト重合で作製した高性能の金属捕集材は、海産加工の廃棄物の飼料や肥料への有効利用をめざし、カドミウムの除去に応用されている。また、海水中のウランや温泉水のスカンジウムの回収にも有効である。橋かけ反応で作製されたゲルは擦過傷(すり傷)や火傷を湿潤環境下で治療する創傷被覆材として実用化された。生分解性のゲルの場合は、床ずれを防止するマットの充填剤として実用化され、家畜の糞尿処理にも活用されている。ポリ乳酸は橋かけにより200℃でも不融になり、生分解性の家電筐体等への応用が期待されている。ワカメや昆布などの海藻に含まれるアルギン酸は照射して分子鎖を切断すると、植物の生長促進作用が発現する。

36000216
植物のカドミウム吸収・輸送; 植物ポジトロンイメージング技術による可視化
松橋 信平
Isotope News (634), p.7-9(2007) ; (JAEA-J 03548)
 工業活動などにより環境中に排出される有害重金属カドミウムによるコメなど農作物の汚染は、食の安全確保のために早急に解決しなければならない課題である。この課題を本質的に解決するためには、植物がカドミウムを吸収する機構の解明が不可欠であるが、従来の研究手法では生きた植物体内におけるカドミウムの動態を観察することができなかった。原子力機構では、カドミウムのポジトロン放出核種(107Cd)の製造法を開発し、イネによるカドミウムの吸収の様子のその場観察に世界で初めて成功した。

36000217
Wettability effect on bubble formation at orifice type nozzle
Bucheeri, A.; 粉川 広行; 直江 崇; 二川 正敏; 前川 克廣*
実験力学 7(4), p.331-336(2007) ; (JAEA-J 03549)
 J-PARCには、水銀をターゲット材に用いた核破砕中性子源が設置される。高出力の陽子線が水銀に入射すると、圧力波によってキャビテーションが誘発される。キャビテーション損傷を抑制するために、直径50-200μm程度のマイクロバブルを水銀中へ注入することを検討している。しかしながら、水銀は濡れ性が悪いため、水銀中における気泡の生成は困難である。また、水銀は不透明であるため、水銀中における気泡生成の観察は困難である。そこで、濡れ性が悪い条件における気泡生成挙動を再現するために、濡れ性を人工的に変化させて水中で気泡生成実験を行った。穴径100μmのオリフィスからの気泡の成長過程を高速度ビデオカメラにより観察した。さらに、オリフィスからの気泡の成長に濡れ性が及ぼす影響を調べるために、数値解析を行った。その結果、生成される気泡直径は接触角に依存し、濡れ性が悪くなるに従い気泡直径は増大した。

36000218
放射線治療の高度化のための超並列シミュレーションシステム
斎藤 公明; 齋藤 秀敏*; 国枝 悦夫*; 成田 雄一郎*; 明上山 温*; 藤崎 達也*; 川瀬 貴嗣*; 金子 勝太郎*; 尾嵜 真浩*; Deloar, H. M.*; 平井 正明*; 奥 洋平*; 田島 俊樹; 山極 満; Koga, J. K.; Esirkepov, T. Z.; Bulanov, S. V.; 宮島 悟史*; 岡崎 良子*; 伊達 広行*; Sutherland, K.*; 菱川 良夫*; 村上 昌雄*
情報処理 48(10), p.1081-1088(2007) ; (JAEA-J 03550)
 科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業CRESTの一環として、外部の大学,医療機関,民間企業とチームを組織し、超並列シミュレーション計算を利用して放射線治療の高度化に貢献するための研究開発を行ってきた。この中で、現在広く行われているX線治療に関して、詳細人体モデルとモンテカルロ計算を利用して高精度線量を短時間に行い、ネットワークを介して医療現場を支援するシステムを開発してきた。さらに、これからの治療として期待される陽子線治療に関して、レーザーにより発生する陽子線を利用して小型で安価な陽子線治療装置を開発するための基礎的な研究を行ってきた。平成14年に開始した本プロジェクトはそれぞれのサブテーマについて成果を挙げ、平成19年度に終了する予定である。これらのプロジェクト研究の全容についてまとめて紹介する。

36000219
大線量域の放射線計測とその応用
小嶋 拓治; 清藤 一
計測標準と計量管理 57(3), p.23-28(2007) ; (JAEA-J 03551)
 放射線滅菌や高分子材料の改質などの放射線加工における工程・品質管理、原子力発電施設や高エネルギー加速器あるいは観測・通信衛星などにおいて放射線環境下で用いられる材料・機器類の耐放射線性試験・寿命評価などでは、Gy以上のいわゆる大線量域の線量測定が行われている。ほかの計量と同様に、信頼性,経済性,貿易などの観点から、計測の品質(信頼性)を保証するために、現場で使用する線量計の持つ不確かさが国家・国際的標準に遡って明示できること、いわゆるトレーサビリティが不可欠である。欧米に比べて遅れたが、現在、日本でも大線量域におけるトレーサビリティ制度の整備が進められている。ここでは、原子力機構における大線量率の照射・計測システムに関する成果を含め、放射線利用又は試験・研究における大線量域の線量計測・トレーサビリティについて、その目的,国内・国際的な線量標準化の経緯・現状などの概要を述べる。

36000220
TRUリサイクルが可能な革新的水冷却炉(FLWR)
大久保 努; 大貫 晃
混相流 21(4), p.366-372(2007) ; (JAEA-J 03552)
 経験と実績が豊富な軽水炉技術を発展させてエネルギー供給の観点からサステイナビリティーを確保するために、TRU(PuやMA)の多重リサイクルを可能とする革新的水冷却炉(FLWR)に関する設計研究が着実に進められている。それに関連する研究課題の中で、稠密炉心における除熱性能の確認は、重要な研究項目の一つである。使用済燃料中のTRUを燃料としてリサイクル利用することは、それらが廃棄物として環境に与える負荷を大幅に低減する観点からも有効である。このことと併せて、自らが排出するPuの多重リサイクルが単独で可能であれば、親物質であるU-238が存在する限り持続的なエネルギー供給が可能で、サステイナビリティーを有するものとなる。これまでの研究により、FLWR炉心概念の確立とともに、除熱性能等の基本性能の確認などの成果が得られており、FLWRは次世代軽水炉技術における有用なオプションの一つであると考えている。

36000221
プルトニウム抽出残液からのアメリシウムの分離及び酸化物転換
杉川 進; 中崎 正人; 木村 明博; 木田 孝*; 木原 武弘*; 赤堀 光雄; 湊 和生; 須田 和浩*; 近沢 孝弘*
日本原子力学会和文論文誌 6(4), p.476-483(2007) ; (JAEA-J 03553)
 プルトニウム抽出残液からのAmの分離回収のために、TODGA吸着材カラムを用いた単一のクロマト分離法の開発を行ってきた。抽出残液には、Am(〜620mg/l)のほかに、Np(〜107mg/l), Ag(〜2000mg/l), Fe(〜290mg/l), Cr(〜38mg/l), Ni(〜52mg/l)及び微量TBPを含んでいた。NUCEFにおいて分離試験及び酸化物転換試験を行った結果、小規模分離試験でのAmの収率及び純度がそれぞれ83〜92%及び97〜98%、スケールアップ分離試験でのAmの収率及び純度がそれぞれ85〜95%及び98〜99%であった。また、回収されたAm溶液をシュウ酸沈殿法により、Am酸化物に転換するための酸化物転換試験を行った結果、小規模酸化物転換試験での収率が89〜100%及びスケールアップ酸化物転換試験での収率が85〜96%であった。本試験を通して、6リットルの抽残液から約1.8グラムのAm酸化物が回収され、TRU高温化学研究の試料として使用された。

36000222
非常に稠密度の高い燃料集合体の除熱性能を実証; 高温高圧条件での大規模熱特性試験の実施
玉井 秀定
日本原子力学会誌 49(11-12), p.745-749(2007) ; (JAEA-J 03554)
 第39回日本原子力学会論文賞を受賞した論文に関する解説記事である。水冷却増殖炉では、燃料棒間隔を極端に狭くして稠密度の高い燃料集合体を採用しているため、少ない水でどこまで燃料棒を冷やすことができるかが、炉心設計における重要な課題となっている。これを調べるために、水冷却増殖炉の燃料集合体を模擬した試験体を用いて、設計炉心と同じ高温高圧条件下で、伝熱的・流動的限界を確認する試験を行った。その結果、限界出力の試験結果は30パーセント以上の熱余裕があることを示しており、水冷却増殖炉の熱的成立性に問題のないこと、及び構築した評価手法により稠密度の高い燃料集合体における圧力損失を良好に予測できることなどを確認した。

36000223
日本の高速炉開発の歴史,1
伊藤 和元; 鈴木 惣十
日本原子力学会誌 50(1), p.44-49(2008) ; (JAEA-J 03556)
 日本原子力学会誌の連載講座「高速炉の変遷と現状」の第6回「日本の高速炉開発の歴史(I)」として、高速実験炉「常陽」に関して寄稿するものである。本稿では、日本最初のナトリウム冷却型高速炉である「常陽」の設計,建設,運転,高度化計画,技術開発について紹介するとともに、これからの「常陽」への期待と役割について述べる。

36000224
転位ループ群生成力学モデルに基づくナノインデンテーション下の変位バースト現象の検討
都留 智仁; 渋谷 陽二*
日本機械学会論文集,A 73(732), p.877-882(2007) ; (JAEA-J 03557)
 結晶材料のナノインデンテーションにおいて、弾性変形から押込み変位が不安定に増大する変位バーストと呼ばれる現象が発現することが広く知られている。そのメカニズムについて、転位の運動や酸化皮膜などの考えがあるものの、明確な原因は未だわかっていない。本研究では、押込みにより生じる弾性ひずみエネルギーが、転位の自己及び相互作用エネルギーに変換される理想的な数理モデルを構築した。そして、押込み下では、転位の自己エネルギーよりも相互作用エネルギーが支配的となる高密度な転位群が生成されることを示した。また、変位バーストは同時に数百もの多数の転位が生成され、生成される転位双極子による表面ステップによって引き起こされることを明らかにした。

36000225
プラズマを用いたレーザー加速の新展開; cmでGeV
田島 俊樹
パリティ 23(1), p.9-10(2008) ; (JAEA-J 03558)
 強い光の短パルスをガス中に入射することで「航跡場」という強い加速場を形成することができる。光は光速で走るのでこの加速場も光速で走る。この性質を上手く用いることで、粒子の加速を集団的かつコヒーレントに行うことができる。これが相対論的コヒーレンスの考え方であり、これを援用すると「相対論工学」という新領域を切り拓くことができる。

36000226
PMMA線量計(Radix RN-15)の数kGy領域への応用
清藤 一; 市川 達也*; 渡辺 宏*; 小嶋 拓治
Radioisotopes 56(12), p.777-785(2007) ; (JAEA-J 03561)
 透明及び着色PMMA線量計は5〜50kGyの線量範囲の測定を行う方法であり、医療機器の滅菌をはじめとする放射線プロセスで広く用いられている。食品照射や医療機器の滅菌における線量保証及び線量を決定するための検定線量を評価するのに必要な線量範囲1〜10kGyへの適用拡大を目的として透明PMMA線量計(Radix RN-15)の特性試験を行った。波長が短い領域(270〜320nm)における線量応答特性,照射後の安定性,照射中の温度影響について調べた。短い読み取り波長の線量応答値は、長い読み取り波長の線量応答値よりも大きい。これから、従来の読み取り波長320nmよりも短い280nmで測ることにより、1〜10kGyの線量測定可能範囲が得られた。照射後の吸光度安定性については照射後24時間以内において4〜5%以内となった。-40〜40℃の範囲における温度依存性試験では20℃まで線量応答は線形的であり、20℃を超えると応答値は減少した。20℃における線量応答に対して+0.25%/℃の温度補正係数を持つことがわかった。

36000227
加速器質量分析法を利用する放射性廃棄物中の129Iの分析
片山 淳; 亀尾 裕; 中島 幹雄
Radioisotopes 56(12), p.787-793(2007) ; (JAEA-J 03562)
 129Iの廃棄物中濃度の測定は、廃棄物処分や環境問題の観点から重要である。本研究において、加速器質量分析法(AMS)による放射性廃棄物中の129I/127I同位体比から129Iの定量を行う方法について検討を行った。AMSにて測定を行うために必要なターゲット試料を作成するため、放射性廃棄物からのヨウ素の化学分離に固相抽出ディスク(Anion-SR)を使用した。この方法は、従来法の溶媒抽出法による手法と比較すると、試料溶液からヨウ化物イオンを迅速に分離することが可能であった。作業環境中からの129I汚染を考慮して、129I/127I同位体比のバックグラウンド値をできる限り低く保つ適切な127Iヨウ素担体量を求めた。本法を実験室標準及び実試料として日本原子力研究開発機構の原子力施設から排出された放射性廃液に適用することができた。

36000228
高度なセキュリティーで遠隔地からの核融合実験を実現
小関 隆久
RIST News (44), p.3-8(2007) ; (JAEA-J 03563)
 核融合研究分野では、実験装置の大型化・集約化に伴い、遠隔地の多数の研究者が大型装置の実験に参加する研究協力が推進されている。しかしながら、インターネットを利用した遠隔研究システムにおいては、不正侵入による大型施設のセキュリティーが課題となっていた。そこで、IT Based Laboratory(ITBL)の基盤技術とWeb技術を応用することにより、高度なセキュリティーを保ちつつ遠隔地からインターネットを用いて臨界プラズマ試験装置(JT-60)の実験を行うシステムを開発し、京都大学から安全かつ実用的なJT-60実験に成功した。これは、遠隔地の研究者が大型の核融合実験装置を用いた実験をオンサイト研究者とほぼ同等な環境で実施できることを世界で初めて実証したものであり、国際熱核融合実験炉ITERの遠隔実験の実現に向けて世界を先導する成果である。

36000229
日本原子力研究開発機構システム計算科学センターにおけるグリッド・コンピューティング技術の研究開発
鈴木 喜雄
RIST News (44), p.9-16(2007) ; (JAEA-J 03564)
 独立行政法人日本原子力研究開発機構システム計算科学センターでは、シミュレーションを行っている研究者へ複数のコンピュータを効果的・効率的に利用できる環境を提供する技術の研究開発を平成7年より開始した。本稿では当センターで実施してきたグリッド・コンピューティング技術に関連する研究開発として、平成7年度より12年度まで実施したSTA(Seamless Thinking Aid),平成13年度より平成17年度まで国家プロジェクトとして実施し、プロジェクト終了後も継続運用しているITBL(Information Technology Based Laboratory),平成18年度より開始された国家プロジェクト「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」の中で実施しているグリッドミドル利活用研究,原子力分野のためのグリッド基盤の研究開発AEGIS(Atomic Energy Grid InfraStructure)について述べる。

36000230
Effect of γ-ray irradiation on enzymatic hydrolysis of spent corncob substrates from edible mushroom, enokitake(Flammulina velutipes) cultivation
下川 知子*; 中村 雅哉*; 長澤 尚胤; 玉田 正男; 石原 光朗*
森林総合研究所研究報告 6(1), p.27-34(2007) ; (JAEA-J 03565)
 コーンコブ,米ぬかを主原料とした菌床栽培により生じるエノキタケ廃菌床の、酵素分解処理におけるγ線照射の影響について検討を行った。菌床の全重量は培養過程で34%減少していたが、リグニンは残存していた。廃菌床の主な糖組成はグルコースとキシロースであった。500kGyのγ線照射処理により廃菌床の酵素糖化率はほぼ倍になり、一定時間のブレンダー処理によって生じる細粒子の量も増加した。照射処理によって廃菌床中のホロセルロースは明らかに低分子化しており、試料がもろくなった原因と考えられた。また、照射によって、キシラン由来の糖成分の水溶解性が高まった。そのため、セルラーゼのほかに、キシラナーゼ,キシロシダーゼが含まれているトリコデルマ由来の酵素製剤セルロシンTP25を用いることで、酵素糖化率は48%から80%にまで上昇した。

36000231
冬季雷活動時における高エネルギー放射線挙動の観測
鳥居 建男; 杉田 武志*; 村木 綏*
大気電気学会誌 1(2), p.73-74(2007) ; (JAEA-J 03566)
 冬季雷活動時に環境放射線モニタの線量率が上昇する事象が観測されることがある。この放射線の特徴を把握するために、異なる遮へい材を使用した比例計数管を用いて、冬季雷活動時に観測される高エネルギー放射線挙動について調査した。その結果、雷放電前に緩やかな上昇を示し、雷放電とほぼ同時に放射線バーストが発生する事象が観測された。前者のエネルギーは1-3MeV、後者は10MeV超であった。

36000232
低酸素濃度下におけるチタンオーバーパックの長期水素吸収挙動と水素脆化の検討
谷口 直樹; 鈴木 宏幸*; 中西 智明*; 中山 武典*; 舛形 剛*; 建石 剛*
材料と環境 56(12), p.576-584(2007) ; (JAEA-J 03567)
 高レベル放射性廃棄物の地層処分におけるオーバーパック候補材料の一つであるチタンの長期水素吸収挙動と水素脆化の可能性を検討した。定電流カソード分極試験結果より、電荷量が同じ場合、電流密度が低いほど多くの水素が吸収されるとともに、より内部まで水素が浸入した。低酸素濃度条件での腐食速度2.8×10-2μm/yに相当する電流密度での水素吸収率はほぼ100%と推定され、1000年間で約400ppmの水素を吸収すると評価された。水素を吸収したチタンの機械的特性は水素濃度と水素濃度分布形態によって異なり、水素がチタン内部まで均一に分布したものほど脆化の程度が大きいことが確認された。1000年間で約400ppmの水素を均一に吸収した6mm厚のチタンオーバーパックにおいて、破壊が生じうるのは降伏応力相当の応力条件に対して亀裂寸法が約2〜3mm以上の場合と推定された。

36000233
Numerical analysis of the hydrogen atom density in a negative ion source
高戸 直之; 花谷 純次*; 水野 貴敏*; 畑山 明聖*; 戸張 博之; 花田 磨砂也; 井上 多加志; 谷口 正樹; 大楽 正幸; 柏木 美恵子; 渡邊 和弘; 坂本 慶司
AIP Conference Proceedings 925 , p.38-45(2007) ; (JAEA-J 03568)
 水素負イオン源内における原子密度を得るため、水素原子生成・輸送過程の数値解析を行った。モンテカルロ法を用いた3次元輸送コードを、セシウム添加状態のJAEA10アンペア負イオン源に適用した。本研究においては、水素原子生成レートをラングミュアプローブのプローブ特性から推定した。加えて、水素原子のエネルギー緩和過程も考慮した原子の輸送計算を行った。その結果、高速電子及びエネルギー緩和過程は水素原子密度に強い影響を与えることが明らかとなった。

36000234
Comparison of SCC growth rate between in-core and EX-core tests in BWR simulated high temperature water
加治 芳行; 宇賀地 弘和; 塚田 隆; 松井 義典; 近江 正男; 永田 暢秋*; 堂崎 浩二*; 瀧口 英樹*
Proceedings of 13th International Conference on Environmental Degradation of Materials in Nuclear Power Systems (CD-ROM) , 12p.(2007) ; (JAEA-J 03569)
 照射誘起応力腐食割れ(IASCC)は、軽水炉のステンレス鋼製構造物の高経年化における課題の1つである。中性子照射量1×1025n/m2まで予備照射した304系ステンレス鋼のCT試験片を用いて、沸騰水型軽水炉(BWR)模擬環境水質条件で材料試験炉(JMTR)において炉内IASCC進展試験を実施した。SCC進展速度に及ぼす中性子/γ線照射,応力,水環境の同時作用効果について検討するために、同じ腐食電位条件下で種々の溶存酸素濃度あるいは過酸化水素添加環境での照射後試験(PIE)を実施した。本論文では、炉内SCC進展試験結果をIASCCに及ぼす同時作用効果の観点からPIEの結果と比較検討した。その結果、SCC進展速度に及ぼす照射の同時作用効果は、腐食電位(ECP)条件がほぼ同等の照射下試験データとDO=32ppm条件での照射後試験データがほぼ一致することから、これまでに取得されたデータの範囲内ではほとんどないことがわかった。

36000235
Degradation modeling of InGaP/GaAs/Ge triple junction solar cells irradiated with various energy protons
佐藤 真一郎; 宮本 晴基; 今泉 充*; 島崎 一紀*; 森岡 千晴*; 河野 勝泰*; 大島 武
Proceedings of 17th International Photovoltaic Science and Engineering Conference (PVSEC-17) (CD-ROM) , p.502-503(2007) ; (JAEA-J 03570)
 1次元光デバイスシミュレータ(PC1D)を用いて宇宙用InGaP/GaAs/Ge三接合太陽電池の寿命予測技術開発のため、放射線による電気特性劣化のモデリングを行った。30keV, 150keV, 3MeV及び10MeVの陽子線照射によって劣化した三接合太陽電池の量子効率をフィッティングし、短絡電流と開放電圧をシミュレートした。また、各サブセルにおいて少数キャリア拡散長の損傷係数及びベース層のキャリア除去係数を見積もった。その結果、シミュレーションによって得られた短絡電流と開放電圧は実験値と良い一致を示した。これらの結果より、本劣化モデリングの有効性が実証された。

36000236
Structural study on (Al)InGaP single-junction solar cell for performance improvement of triple-junction solar cells
森岡 千晴*; 今泉 充*; 杉本 広紀*; 佐藤 真一郎; 大島 武; 田島 道夫*
Proceedings of 17th International Photovoltaic Science and Engineering Conference (PVSEC-17) (CD-ROM) , p.504-505(2007) ; (JAEA-J 03571)
 実宇宙の超高効率太陽電池開発の一環として、(Al)InGaP太陽電池の放射線耐性について調べた。ベース層の厚さは1μmで統一し、アルミの組成比及びベース層におけるキャリア濃度を変化させたセルを作製し、3MeV陽子線を1×1014cm-2まで照射した。その結果、短絡電流及び開放電圧の保存率は、組成がAl0.2In0.5Ga0.3PのセルとIn0.5Ga0.5Pのセルの間で有意な差がみられなかったことから、AlInGaPセルについてはベース層キャリア濃度に勾配をつけた構造は放射線耐性に有効ではないことがわかった。

36000237
Effects of irradiation temperature on degradation of electrical characteristics of InGaP solar cells
宮本 晴基; 佐藤 真一郎; 大島 武; 森岡 千晴*; 今泉 充*; 河野 勝泰*
Proceedings of 17th International Photovoltaic Science and Engineering Conference (PVSEC-17) (CD-ROM) , p.961-962(2007) ; (JAEA-J 03572)
 室温または低温環境下で、InGaP及びSi太陽電池に10MeV陽子線を1×1013cm-2まで照射し、その電気特性の劣化を調べたところ、低温で照射した場合の開放電圧は、室温で照射した場合よりも高い保存率を示し、開放電圧についてはその逆の結果となった。また、照射後の開放電圧の温度係数は照射前に比べて大きくなったが、短絡電流の温度係数については照射前後で変化がなかった。1次元光デバイスシミュレータ(PC1D)を用いて解析を行ったところ、これら電気特性の劣化は少数キャリア拡散長の減少が主たる原因であることが判明した。

36000238
Nuclear data needs for fast reactors
千葉 豪
Proceedings of 2006 Symposium on Nuclear Data (CD-ROM) , 6p.(2007) ; (JAEA-J 03573)
 本論文では、微分データと積分データを利用することにより、現在の高速炉設計で見込まれている核設計精度が妥当であることを示した。ただし、この結論は断面積共分散が適切に評価されていることが前提となる。JENDL-3.3の共分散データをロスアラモス研究所で取得された積分データに適用してみたところ、U-238の弾性散乱断面積のP1係数の不確かさが小さく評価されている可能性が示唆された。

36000239
Cosmic-ray transport simulation in the atmosphere
佐藤 達彦; 仁井田 浩二*
Proceedings of 2006 Symposium on Nuclear Data (CD-ROM) , 6p.(2007) ; (JAEA-J 03574)
 大気中における宇宙線由来の中性子エネルギースペクトルは、航空機乗務員の被ばく線量評価だけでなく、地表面における半導体ソフトエラー発生率推定の際に、極めて重要となる。そのため、大気中における宇宙線由来の中性子スペクトルを予測することは、近年、重要な研究課題として認識されている。しかし、従来の予測モデルでは、宇宙線が引き起こす大気中の窒素や酸素との核反応を計算するモデルの精度が不十分なため、地表面から航空機高度まで幅広い高度範囲における測定値を再現することが困難であった。そこで、われわれは、最新の核反応モデルを組み込んだ放射線輸送計算コードPHITSと、最新の核データライブラリJENDL高エネルギーファイルを組合せて大気中における宇宙線挙動を模擬し、大気中の任意地点における中性子スペクトルを精度よく予測することに成功した。本報告では、その宇宙線輸送計算におけるJENDL高エネルギーファイルの役割について重点的に解説する。

36000240
Atomistic investigation of structural changes and reaction energy induced by dislocation-grain boundary interaction process in fcc aluminum and bcc iron
都留 智仁; 渋谷 陽二*; 加治 芳行
Proceedings of 3rd Asian-Pacific Congress on Computational Mechanics (APCOM '07) & 11th International Conference on Enhancement and Promotion of Computational Method in Engineering and Science (EPMESC-11) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 03575)
 金属材料において、結晶粒の微細化によって転位の運動を阻害することがマクロな結晶金属の強化の方法として広く行われてきた。その一方で、粒界部の転位の蓄積によって生じる応力集中は応力腐食割れ(SCC)の大きな要因となるといわれている。しかしながら、その変形メカニズムについての詳細な説明はなされておらず、実験によって転位の運動を直接観察することは困難である。また、変形に対する粒界の影響は結晶粒径だけでなく結晶粒の形状や粒界の種類によって異なるため、転位と粒界の相互作用の基礎的なメカニズムを理解することはますます重要になると考えられる。本研究では、Σ 3 〜 Σ 99までの対応粒界について粒界エネルギーを原子論的手法を用いて詳細に評価し、状態遷移弾性バンド法によってΣ 3 (111)[110]傾角粒界を対象に転位と粒界の相互作用に関するエネルギー的評価を行った。その結果、各対応粒界における粒界エネルギーと粒界による堆積増分に相関関係があり、転位は粒界と相互作用する際にPeierlsポテンシャルに比べて非常に大きな活性化エネルギーを必要とすることがわかった。

36000241
Recent activities on aqueous partitioning at JAEA
木村 貴海; 小巻 順; 森田 泰治
Proceedings of 9th OECD/NEA Information Exchange Meeting on Actinide and Fission Product Partitioning and Transmutation , p.151-158(2007) ; (JAEA-J 03576)
 日本原子力研究開発機構において進められている分離に関する研究開発の概要について、次世代原子力システム研究開発部門におけるNEXTプロセス開発、及び原子力基礎工学研究部門における分離要素技術開発の現状を中心に報告する。

36000242
Development of low-loss millimeter-wave antennas on fluorine substrate using electro-fine-forming fabrication
伊藤 直樹*; 間瀬 淳*; 瀬古 典明; 玉田 正男; 坂田 栄二*; 近木 祐一郎*
Proceedings of Asia-Pacific Microwave Conference 2006 (APMC 2006), Vol.1 (CD-ROM) , p.2031-2033(2006) ; (JAEA-J 03577)
 Poly(tetrafluoroethylene)(PTFE)は、誘電率が小さく電気的特性が優れ、ミリ波アンテナ材料として有望な材料である。しかし、さまざまな金属に対して接着力が弱いという性質を併せ持つ。そこで、放射線グラフト重合によりPTFEの材料表面の改質を図った。その結果、反応前後の誘電率が未処理の2.1に対し2.2となり、フッ素樹脂基板の誘電特性を損なわないことがわかった。また、銅を蒸着したPTFE膜の接着強度は未処理の3.9N/cmから10.3N/cmに向上することがわかった。

36000243
A Comparative analysis of CABRI CIP0-1 and NSRR VA-2 reactivity initiated accident tests
Petit, M.*; Georgenthum, V.*; 杉山 智之; Quecedo, M.*; Desquines, J.*
Proceedings of EUROSAFE Forum 2007 (Internet) , 9p.(2007) ; (JAEA-J 03578)
 Zirlo is an improved fuel cladding material that was developed to accommodate constraints associated with increasing burnups in a more severe duty operation. The behavior of Zirlo irradiated above 75 GWd/t under RIA conditions was studied in CABRI CIP0-1 and NSRR VA-2 tests. The samples were initially similar but VA-2 failed at relatively low enthalpy whereas CIP0-1 did not fail. Because test conditions were different in terms of initial temperature, coolant nature and power pulse width, it is necessary to use a transient fuel code to compare the two results. Using SCANAIR and CLARIS it was shown that the concentration of hydrogen precipitates at the temperature of the test is of primary importance to assess both experiments in a consistent manner. The analysis demonstrated that room temperature is a testing condition much more severe than that expected at typical PWR conditions.

36000244
Stress corrosion cracking of zirconium used in the reprocessing plant
加藤 千明; 本岡 隆文; 山本 正弘
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycles and Systems (Global 2007) (CD-ROM) , p.245-250(2007) ; (JAEA-J 03579)
 ジルコニウムの応力腐食割れに関する検討を燃料溶解槽を模擬した定荷重試験と小型試験体を用いて検討した。放射性物質であるPuやNpの代わりに、安定同位体であるVを用いたコールド模擬液を用いて試験を行った。定荷重試験の結果より、150MPaの荷重条件では、およそ3%の歪み量となる900時間後においても割れは観察されなかったが、200MPaの荷重条件では、20%以上の歪み量で割れが観察された。腐食条件が厳しくなる沸騰伝熱部においては応力腐食割れ感受性が高まった。ジルコニウムの応力腐食割れはクリープ変形によって生じていると考えられた。また、燃料溶解槽を模擬した小型試験体を用いた腐食試験を約5万時間行った。その結果、溶解槽条件においてジルコニウムは長時間の腐食試験においても優れた耐食性を示し、応力腐食割れが発生しないことが明らかになった。

36000245
Calculation of the pressure vessel failure fraction of fuel particle of gas turbine high temperature reactor 300C
相原 純; 植田 祥平; 茂住 泰寛; 佐藤 博之; 本橋 嘉信*; 沢 和弘
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycles and Systems (Global 2007) (CD-ROM) , p.416-422(2007) ; (JAEA-J 03580)
 高温ガス炉においては被覆粒子が燃料として使用される。高温ガス炉技術の進歩のために、現在第3層として使われているSiC被覆層は、より高温安定性と核分裂生成物のパラジウムに対する耐性に優れたZrC被覆層に置き換えられる可能性がある。ZrC層は高温では塑性変形をする可能性がある。そこで日本原子力研究開発機構では、ZrC被覆粒子の照射下破損率を予測するために既存の内圧破損率計算コードを改良して第3層の塑性変形を取り扱えるようにした。各被覆層の応力を計算するために有限要素法が適用された。このコードでGTHTR300Cの通常運転時の被覆粒子破損率を計算したところ、わずか3.5×10-6であった。

36000246
Fundamental study on electrolyte recycle process by phosphate conversion technique
天本 一平; 小藤 博英; 明珍 宗孝; 寺井 隆幸*
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycles and Systems (Global 2007) (CD-ROM) , p.748-757(2007) ; (JAEA-J 03581)
 金属電解法による乾式再処理プロセス(以下、金属電解法)から発生する使用済電解質(以下、廃塩)の再生利用を図るべく、リン酸塩転換法の適用性について理論考察を行い、今後の研究開発の基礎となる予備的なプロセス概念を構築した。すなわち、金属電解法の運転で生じる廃塩(LiCl-KCl)は、各種高レベル放射性FP塩化物を含有しているため、HLW発生量抑制の観点から、FPを分離する必要がある。この取組みの一環として、リン酸塩転換法の適用性に関する検討を行うべく、これまでの研究成果を活用してリン酸塩転換法の評価をするための概念ブロックフローを構築した。次に、本研究の解析に必要とされる熱力学的諸量について、理論計算による取得を行い、データベースを充実させた。これをもとに、理論解析を中心とした予備的な検討を、ブロックフローの各工程について行い、得られた成果から、予備的なプロセス概念を構築し、各工程の操作条件を明確化し、今後の開発の足がかりとした。

36000247
Intergranular corrosion mechanism of ultra-low carbon type 304 stainless steel in a nuclear reprocessing plant
上野 文義; 加藤 千明; 本岡 隆文; 市川 史郎*; 山本 正弘
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycles and Systems (Global 2007) (CD-ROM) , p.1389-1393(2007) ; (JAEA-J 03582)
 本研究は、再処理施設の機器の寿命評価技術開発や腐食機構の解明を目的として、極低炭素ステンレス鋼340ULC製の減圧運転条件の蒸発缶の伝熱管の腐食挙動について検討した。モックアップ試験体を製作して長時間の試験を行った。試験の結果、腐食速度は試験開始から増加するが、約25,000時間を越えると一定に達した。粒界腐食深さを測定した結果、粒界腐食は一つの粒の周囲の粒界すべてを進行した後、溶液中に脱粒しながら進行すると考えられた。

36000248
Basic knowledge on treating various wastes generated from practical operation of metal pyro-reprocessing
仲吉 彬; 北脇 慎一; 福嶋 峰夫; 倉田 正輝*; 矢作 昇*
Proceedings of International Symposium on EcoTopia Science 2007 (ISETS '07) (CD-ROM) , p.1062-1066(2007) ; (JAEA-J 03583)
 金属電解法再処理成立のための課題の1つとして、環境負荷の低減のためアクチニド元素を高速炉サイクルに閉じ込める必要がある。このため、実用条件での乾式再処理試験の主工程だけでなく周辺工程からも発生する、アクチニド元素を含む廃棄物を適切に処理しなければならない。さらに乾式再処理試験より発生する廃棄物には塩素等の腐食性物質を含むため廃棄するためにはこれらの成分濃度を低減させる必要がある。本研究では固体廃棄物は塩化処理することにより主工程でアクチニド元素を再利用し、液体廃棄物は蒸発分離することにより廃液成分と水分を分離し減容することを提案し、実用条件に適するかの試験を行ったものである。

36000249
逆転層を有する対流境界層中の濃度変動に関するLES解析
安部 諭*; 中山 浩成; 田村 哲郎*
第21回数値流体力学シンポジウム講演要旨集(CD-ROM) , 7p.(2007) ; (JAEA-J 03585)
 都市大気中に危険性の拡散物質が放出された場合、周囲の環境影響評価のため平均濃度,変動濃度特性の評価が行える危険予測モデルの開発が重要である。従来では中立状態での拡散予測が行われてきたものの、実際の大気は日射による浮力の影響が存在するため境界層の構造が複雑になり、温度成層性の効果を伴う危険物質の濃度変動の評価が必要になる。そこで、本研究では、よく晴れた日中の状態である上空に逆転層を有した対流境界層中を考慮した流れ場の中でLES(ラージエディシミュレーション)大気拡散解析を行い、放出源高さの違いによる大気拡散特性を検討した。

36000250
TBM施工における掘削ずりと二次破砕の評価
津坂 仁和; 谷本 親伯*; 中根 達人*; 上野 宇顕*; 小泉 悠*
第37回岩盤力学に関するシンポジウム講演論文集(CD-ROM) , p.31-36(2008) ; (JAEA-J 03586)
 TBM(Tunnel Boring Machine)によるトンネル掘削は、掘削に伴う地山の緩みを極力抑えた坑道が要求されている高レベル放射性廃棄物の処分場の建設において、極めて有用な工法の一つである。しかし、地山中の割れ目に起因する二次破砕現象のために、その施工が難渋した事例が多く報告されており、そのため、二次破砕現象を定量的に評価できる施工管理指標が必要とされている。TBM掘削で生じる掘削ずりの形状は、その掘削状況や地山性状を表す指標の一つとして認識されている。筆者等は、花崗岩地山での施工事例を対象として、施工に伴って連続的に観察される典型的なずりの形状を6つに分類した。そして、各形状を新たに提案した扁平度なる指標で表し、掘削ずりの形状と二次破砕の関係を考察した。その結果、これまでに筆者らが提案したTBM掘削指数による二次破砕率が30%前後となる良好に掘削が行われている状態での掘削ずりの形状は、粒径が40mm以上、扁平度が3.5以上であることを明らかにし、TBM施工の管理基準の一つとして提案した。

36000251
単一亀裂を対象とした光学的手法によるトレーサー移行計測データに基づく物質移行評価
佐藤 久; 澤田 淳
第37回岩盤力学に関するシンポジウム講演論文集(CD-ROM) , p.263-268(2008) ; (JAEA-J 03587)
 不均質な開口幅分布が透水物質移行現象に与える影響検討を目的に、岩石亀裂のレプリカ試料を用いた光学的手法による高解像度で定量的な亀裂開口幅とトレーサー濃度分布データを取得した。光学的手法により得られた開口幅データを用いて、局所的には三乗則が成立することを仮定して透水係数に換算することにより2次元浸透流解析を行った。その結果、透水試験で得られた透水量の1.6倍と過大評価される結果となった。その一方でトレーサー濃度の定量的なデータから破過曲線を算出しトレーサー移行特性について評価を行った。平均移行時間と透水量から算出されるマスバランス開口幅は、開口幅の平均値と等しくなったことから、トレーサー試験結果から亀裂内の体積の推定が可能であることを示した。

36000252
土岐花崗岩を対象とした応力-ひずみ構成式の時間依存性パラメータの室内試験による決定
平野 享; 瀬野 康弘; 中間 茂雄; 大久保 誠介*
第37回岩盤力学に関するシンポジウム講演論文集(CD-ROM) , p.397-402(2008) ; (JAEA-J 03588)
 本研究は、長期間の安定性が要求される高レベル放射性廃棄物の地層処分にかかわる処分坑道の設計手法の確立に資するため、時間依存性を考慮した岩石の応力-ひずみ関係の構成式を得ることを目的としている。構成式は既往の研究で提案された岩石の一次クリープと三次クリープを表現できるものであり、室内試験により求まるパラメータを含んでいる。本研究では、土岐花崗岩を対象とし、現地計測に比べて制約の少ない小型サンプルでの室内試験方法として、2種類のひずみ速度を載荷中に交互に切換える一軸圧縮試験により、三次クリープを表現するパラメータを得る方法を試行した。その結果、強度破壊点以降と三次クリープを記述する項に含まれるパラメータが得られることを確かめた。

36000253
高速増殖炉サイクルの早期実現にむけて
向 和夫
原子力総合シンポジウム2007講演論文集 , p.111-118(2007) ; (JAEA-J 03589)
 国は高速増殖炉サイクルの実用化調査研究フェーズ2の成果を評価し、ナトリウム冷却高速炉(酸化物燃料),先進湿式法再処理,簡素化ペレット法燃料製造の組合せを主概念に選定した。今後、原子力機構は、主概念に開発資源を集中的に投資し、高速増殖炉サイクル実用化研究開発(FaCT)としてその実用化を目指す。FaCTプロジェクトでは、2010年に革新的な技術の採否判断が行われる。2015年には技術体系を整備し、実証施設及び実用施設の概念設計を提示する。その成果によって2025年に実証炉が運転開始されるよう、FaCTプロジェクトは国際協力を活用しながら進められる。

36000254
最近の核融合研究の進展; ITER建設段階に入り
池田 佳隆
日本原子力学会第39回炉物理夏期セミナー「炉物理試験の基礎と実践」テキスト , p.160-177(2007) ; (JAEA-J 03590)
 最近の核融合プラズマの進展を報告する。分布計測や大規模シミュレーション法の開発により、自律的なプラズマの特性が解明しつつある。この成果は、ITERの性能をより精度よく予測可能とするものである。核融合が経済的に魅力のあるエネルギー源であることを実証するための原型炉に向けたプラズマ研究の課題についても報告する。

36000255
統計解析手法による稠密炉心内流体混合特性の評価
Zhang, W.; 吉田 啓之; 小瀬 裕男*; 大貫 晃; 秋本 肇
日本機械学会2007年度年次大会講演論文集, Vol.3 , p.145-146(2007) ; (JAEA-J 03591)
 稠密炉心サブチャンネル間のクロスフローの機構を明らかにし、適用範囲が広く高精度なクロスフロー現象に対する構成方程式を開発することを目的として、界面追跡法を用いた二相流詳細解析コードTPFITによる統計解析手法を開発し、同手法により稠密炉心サブチャンネル間のクロスフロー機構を明らかにした。統計解析においては、サブチャンネル間の差圧,気相混合係数と液相混合係数間の相関関数を求めるとともに、サブチャンネル間流体混合現象を支配する時間スケールを評価した。また、相関関数に与える、混合部の入口,出口,サンプリング時間及び燃料棒ギャップ幅の影響を検討した。その結果、液相混合の時間遅れは気相より小さく、その値は1-2msの範囲であることがわかった。差圧と液相の混合係数の間に強い相関があり、局所・瞬時の差圧による流体の移動が、液相混合の主なメカニズムであることが推測された。さらに、差圧と気・液相混合係数間の局所的な相関関数は、燃料ギャップ幅の影響を受けないことが判明した。

36000256
異なるグリッド環境の相互接続法
櫛田 慶幸; 鈴木 喜雄; 南 貴博; 青柳 哲雄; 中島 憲宏
全NEC C&Cシステムユーザー会平成19年度論文集(CD-ROM) , 10p.(2007) ; (JAEA-J 03592)
 異なる研究機関・大学をまたがったコンピュータ資源の分配を、シームレスかつセキュアに行うためにGRID環境が構築されてきた。しかしながら、GRID環境を構築するためのソフトウェア(GRIDミドルウェア)がさまざまな研究機関により、互いに互換性を持たず構築されてきたため、導入したミドルウェアの違いにより相互に接続できない研究機関の組合せが存在する。そのため、本論文では連携サーバーと呼ばれる仲介サーバーを構築し、二種類のGRIDをシームレスかつセキュアに接続することに成功した。

36000257
Incorporating the electromagnetic field in the EGS5 code
鳥居 建男; 杉田 武志*
KEK Proceedings 2007-5 , p.43-49(2007) ; (JAEA-J 03599)
 In recent years, radiation bursts called terrestrial γ-ray flashes (TGFs) have been observed over thunderclouds by X- and γ-ray observation satellites. Accordingly, a set of modules designed to analyze the effects of electrons on the thundercloud electric field and global electric fields was developed, and the subroutine ELECTR was modified. These modules and the modified subroutine were then incorporated into the EGS5 code. Furthermore, in the EGS5 the density of substances was set for each computational region, but the code was modified to allow the density to be changed continuously by simulating the global atmosphere. The magnetic field was compared with the user code UCBEND and it was confirmed to agree well.

36000258
Development of dose assessment method for high-energy neutrons using intelligent neutron monitor
佐藤 大樹; 佐藤 達彦; 遠藤 章; 高田 真志*; 松藤 成弘*; 佐藤 眞二*
NIRS-M-203 (CD-ROM) , p.198-199(2007) ; (JAEA-J 03600)
 インテリジェント中性子モニタDARWINの実証試験として、加速器を用いて生成した数100MeV領域の高エネルギー中性子場における中性子線量を測定した。また基準線量として、飛行時間法により中性子場のエネルギースペクトルを測定し、これに線量換算係数を乗じて中性子線量を導出した。DARWINによる測定値は、基準線量値と6%以内で良い一致を示した。これにより、数100MeV中性子に対しても、DARWINを用い適切に線量評価が可能であると確認された。

36000259
Improvement of analytical activities in the Tokai reprocessing plant, Japan, by measuring destructive and non-destructive assays
駿河谷 直樹; 田口 茂郎; 黒沢 明; 綿引 優
STI/PUB/1298 (CD-ROM) , p.673-679(2007) ; (JAEA-J 03601)
 1977年以降東海パイロットプラントにおいて核物質にかかわる分析が実施されてきた。ウランとプルトニウムのような核物質を精確に分析するため、著者らは種々の測定技術を開発し、核物質計量システムにおける保障措置分析に効果的なものを実用化してきた。パイロットプラントとしての役割のうちの1つが、分析活動の貢献によって達成されたといえる。今後、東海プラントにおいて積まれた経験を六ヶ所の大規模な商業プラントに移すことが期待されている。本論文は著者らが近年に適用した分析技術及びそれらから得られた測定結果について報告する。

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