学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2008年5月


36000658
Characterization of boron carbonitride (BCN) thin films deposited by radiofrequency and microwave plasma enhanced chemical vapor deposition
Mannan, M. A.*; 永野 正光*; 重住 和也*; 木田 徹也*; 平尾 法恵*; 馬場 祐治
American Journal of Applied Sciences 5(6), p.736-741(2008) ; (JAEA-J 03917)
 ホウ素,炭素,窒素を含む有機分子であるトリメチルアミンボランを原料物質として用いた高周波プラズマ誘起気相化学蒸着法により、シリコン単結晶基板上に4ミクロンの厚みのホウ素-炭素-窒素薄膜(BCN薄膜)を作成し、その構造を調べた。作成したBCN薄膜とシリコン基板の密着性は極めて良好で、試料を機械的に破壊したのちでもBCN薄膜はシリコン基板表面に強固に結合していることがわかった。X線回折及び電界放出走査型電子顕微鏡の測定結果によれば、作成したBCN薄膜は非晶質であり、不均一なミクロ構造を持つ。また、フーリエ変換赤外分光スペクトルの測定結果は、BCN薄膜が六方晶構造をとることを示唆した。さらに、X線光電子分光法によりB 1s, C 1s, N 1s光電子ピークを詳細に測定した結果、B, C, N原子はさまざまな結合状態、すなわちB-N結合,B-C結合、C-N結合をとることがわかり、これらの割合を定量的に解析しBCN薄膜の結合状態を明らかにした。

36000659
Development of a chirped pulse amplification laser with zigzag slab Nd:glass amplifiers dedicated to X-ray laser research
越智 義浩; 長谷川 登; 河内 哲哉; 永島 圭介
Applied Optics 46(9), p.1500-1506(2007) ; (JAEA-J 03918)
 X線レーザー研究のためのジグザグスラブ型Nd:ガラス増幅器を用いたチャープパルス増幅(CPA)レーザーを開発した。ジグザグスラブ型増幅器によるレーザー光の主増幅はシステムのコンパクト性,経済性を考慮して2段階で行う設計とした。第1段階では断面形状が10×10mm2のレーザービームをイメージ転送を行いつつマルチパス増幅することにより、数mJから数Jまで増幅する。第2段階では、レーザービームを10×90mm2へ拡大した後、さらに>10Jまでの増幅を行う。最終的にはパルス圧縮後でパルス幅1.6ps,エネルギー約7Jのレーザー光を繰り返し周波数0.1Hzで出力することに成功した。このレーザーシステムを励起源として用いることにより、ニッケル様銀のX線レーザー(波長13.9nm)を飽和増幅することに成功した。

36000660
Characterization of a high-brilliance soft X-ray laser at 13.9 nm by use of an oscillator-amplifier configuration
錦野 将元; 長谷川 登; 河内 哲哉; 山谷 寛; 助川 鋼太; 永島 圭介
Applied Optics 47(8), p.1129-1134(2008) ; (JAEA-J 03919)
 We have demonstrated an X-ray laser with highly peak brilliance and highly spatial coherence at 13.9 nm. In order to generate the highly brilliant X-ray laser by using the oscillator-amplifier configuration, a seeding X-ray laser beam is amplified by a medium plasma with the high gain coefficient. The amplified X-ray laser with highly output is affected by the refraction in the gain medium plasma. However the amplified X-ray laser has very high peak brilliance of 5×1026 photons/(s·mm2·mrad2·0.01%bandwidth) and large photon flux of 6.5×1010 photons/pulse.

36000661
Integrated ELM simulation with edge MHD stability and transport of SOL-divertor plasmas
林 伸彦; 滝塚 知典; 相羽 信行; 小関 隆久; 大山 直幸
Contributions to Plasma Physics 48(1-3), p.196-200(2008) ; (JAEA-J 03921)
 周辺部局在モード(ELM)により引き起こされるエネルギー損失に対する圧力分布の効果を、統合コードTOPICS-IBを用いて調べた。TOPICS-IBは、輸送コードに基づき、ピーリング-バルーニングモード安定性コードとスクレイプオフ層-ダイバータプラズマモデルを統合したものである。ペデスタル頂上内側の急峻な圧力勾配が、不安定性の固有関数を広げることによりELMで増幅される輸送の範囲を広げて、ELMによるエネルギー損失を増倍させることを明らかにした。シミュレーションで得られたエネルギー損失は、多装置の実験データベースに示されるように、ペデスタルエネルギーの15%以上になる。

36000662
Effect of radial transport loss on the asymmetry of ELM heat flux
滝塚 知典; 大山 直幸; 細川 哲成*
Contributions to Plasma Physics 48(1-3), p.207-211(2008) ; (JAEA-J 03922)
 トカマクプラズマ中のELMの崩壊後のSOL-ダイバータプラズマの動的挙動を1次元PARASOLシミュレーションにより研究した。特にELMの熱流の非対称性について調べた。ELMの崩壊位置が非対称なので、両側ダイバータ板へのELM熱流は非対称になり、ダイバータ板への熱流のピーク値の非対称性は連結長の比に従って増加する。しかし、ダイバータ板への熱流入量の非対称性は小さい。径方向輸送損失があれば、熱流入量にも非対称性が生じるが、それでも損失が相当大きくてもその非対称性は大きくない。SOL電流によって運ばれる電子熱流と非対称的SOL流が運ぶ対流熱が熱流入量の非対称性を大きくしない原因である。

36000663
Effect of oblieque magnetic field on release conditions of dust particle from plasma-facing wall
冨田 幸博*; Smirnov, R. D.*; 滝塚 知典; Tskhakaya, D.*
Contributions to Plasma Physics 48(1-3), p.285-289(2008) ; (JAEA-J 03923)
 球形ダスト粒子がプラズマ対向壁から離脱するときの条件に対する斜め磁場の効果を解析的に調べた。解析では、プラズマの磁気プレシースとデバイシースを取り入れた。デバイシース電位降下が大きいとき、壁から離脱するダスト粒子の半径は、磁場の壁入射角度が浅くなるほど、大きくなることがわかった。この半径より小さいダストだけが壁から離脱できる。一方電位降下が小さいとき、磁場の壁入射角度によっては、すべてのサイズのダスト粒子が離脱できなくなることがわかった。この解析結果は、壁から離脱するダストのサイズを、プラズマ密度,温度又は壁バイアス電位で制御できる可能性を示した。

36000664
Recognition of lysine residues on protein surfaces using calixarenes and its application
大島 達也*; 馬場 由成*; 下条 晃司郎; 後藤 雅宏*
Current Drug Discovery Technologies 4(4), p.220-228(2007) ; (JAEA-J 03924)
 大環状化合物カリックス[6]アレーン酢酸誘導体はリジン残基を多く含むタンパク質を認識し、水相から有機相への抽出を可能にする。本論文ではカリックスアレーンによるタンパク質抽出とその応用の可能性について解説する。このタンパク質抽出プロセスは最適な条件にてタンパク質の分離・精製技術へと応用可能である。また、有機相に抽出されたタンパク質シトクロムcはまるで酵素のような触媒活性を示すことが明らかとなった。このように超分子錯形成によるタンパク質の表面認識は新規な生体分子の化学修飾法として期待できる。

36000665
Modulatory effect of ionizing radiation on food-NaCl associative learning; The Role of γ subunit of G protein in Caenorhabditis elegans
坂下 哲哉; 浜田 信行*; 池田 大祐*; 簗瀬 澄乃*; 鈴木 芳代; 石井 直明*; 小林 泰彦
FASEB Journal 22(3), p.713-720(2008) ; (JAEA-J 03927)
 神経系のモデル生物として知られる線虫(C. elegans)を用いて、food-NaCl連合学習に対するγ線照射の影響を調べた。その結果、連合学習の能力は、比較的高線量(約550Gy)の放射線を照射しても有意な影響を受けないが、条件付けの最中に放射線を照射した場合には、照射直後の化学走性が有意に付加的に低下することを発見した。また、条件付け時(4hr.)に低線量率(0.4Gy/min)にて線虫を曝露し続けると、化学走性が負の値、すなわちNaClを忌避する応答を示した。さらに、これらの放射線照射に対する応答が、gpc-1変異体において有意に抑制されることを見いだした。これらの結果は、線虫の化学走性学習に対する放射線照射の影響が、特定の感覚神経に局在するGPC-1を介して修飾的に働く可能性を示唆する。さらに、food-NaCl連合学習の条件付けを行っている線虫にγ線を照射し、benzaldehyde, cAMPとlysineに対する化学走性を調べた結果、cAMPのみ有意な影響が観察された。以上の結果は、放射線が神経系に対して特異的に作用することを示唆する。

36000666
Residue 134 determines the dimer-tetramer assembly of nucleoside diphosphate kinase from moderately halophilic bacteria
徳永 廣子*; 石橋 松二郎*; 有坂 文雄*; 新井 栄揮; 黒木 良太; 荒川 力*; 徳永 正雄*
FEBS Letters 582(7), p.1049-1054(2008) ; (JAEA-J 03928)
 ヌクレオシド二リン酸化キナーゼ(NDK)は、中度好塩菌Halomonas由来HaNDKの場合は2量体を形成し、通常細菌Pseudomonas由来PaNDKの場合は4量体を形成する。しかし、HaNDKのGlu134にAlaを変異導入すると4量体を形成するようになり、PaNDKのAla134にGluを変異導入すると2量体を形成するようになった。この結果は、134番目のアミノ酸一残基のみの置換でNDKの複合体構造を変換できることを意味する。中度好塩菌Myxococcus由来NDKの結晶構造に基づいて作製したHaNDKとPaNDKの分子モデルからは、Glu134による反発的相互作用が4量体中の2量体-2量体間の分裂を促すことが判明した。

36000667
Impact of Auger recombination on charge collection of a 6H-SiC diode by heavy ions
小野田 忍; 大島 武; 平尾 敏雄; 三島 健太; 菱木 繁臣; 岩本 直也; 河野 勝泰*
IEEE Transactions on Nuclear Science 54(6), p.2706-2713(2007) ; (JAEA-J 03929)
 高エネルギー物理学における粒子検出器開発の観点から軽イオン等が半導体素子に入射した時の電荷収集効率(CCE:Charge Collection Efficiency)に関する研究が盛んに行われている中、われわれは、材料開発で使用する加速器用の粒子検出器、さらには宇宙でのシングルイベント効果の理解にも重要となる重イオンが半導体素子に入射した時のCCEに関する研究を進めた。その結果、既存の理論モデル(Gunnモデル)によって重イオンが半導体素子に誘起するCCEの電圧依存性を説明できないことがわかった。本研究では、重イオンにより誘起された電子及び正孔がオージェ過程を経て再結合する可能性を半導体デバイスシミュレータ(TCAD:Technology Computer Aided Design)により検討した。その結果、オージェ再結合によりCCEが低下することを明らかにし、その係数がおよそ6×10-30cm6/sであることを示した。

36000668
The Cost benefit of a light water reactor safety study in JAERI
柳澤 和章
International Journal of Nuclear Governance, Economy and Ecology 2(2), p.212-223(2008) ; (JAEA-J 03931)
 原研による42年間の研究開発の結果生まれた、原子力に関する費用対便益効果を研究した。それは、LWR安全性研究に関連したもので、事故リスクを低減することによって生じた原子力損害賠償保険額の低減効果である。経済学的な分類の仕方によれば、本件は機会損失低減効果と称される。我が国にある52基の原発で生じた原子力損害賠償保険額の低減と、その低減に効果を及ぼした原研軽水炉安全性研究の貢献につき論じる。

36000669
Solidus and liquidus of plutonium and uranium mixed oxide
加藤 正人; 森本 恭一; 菅田 博正*; 小無 健司*; 鹿志村 元明; 安部 智之
Journal of Alloys and Compounds 452(1), p.48-53(2008) ; (JAEA-J 03932)
 プルトニウム-ウラン混合酸化物(MOX)は、高速炉燃料として開発が進められてきた。燃料の最高温度は、燃料の溶融を防ぐために設計上、融点以下に抑える必要があり、そのための研究は古くから行われている。本研究では、サーマルアレスト法によりMOXの融点(固相線温度)を測定した。固相線は、Pu含有率が増加するほど低下し、20%と30%Puの間で、急に低下することが観察された。30%及び40%Puを含むMOXは、測定後に金属Wとプルトニウム酸化物が観察され、30%Pu以上のMOXのサーマルアレストは、融点ではない反応によるものであると考えられる。UO2, 12%, 20%Pu-MOXの固相温度が決定され、O/Mが低下するほど、わずかに上昇することが確認できた。

36000670
Thermal conductivity of (U,Pu,Am)O2 solid solutions
森本 恭一; 加藤 正人; 小笠原 誠洋*; 鹿志村 元明; 安部 智之
Journal of Alloys and Compounds 452(1), p.54-60(2008) ; (JAEA-J 03933)
 再処理から燃料製造までの期間のPu原料粉の保管期間が長期化することによってMOX製品中のAm含有率が数%にまで増加する。本研究では、熱物性に対するAmの効果を明確に示すことの一環としてAmを含有したMOX燃料の熱伝導率を調査した。Amが約0.7. 2, 3%含有した3種類のペレットを用意し、O/M=2.00の条件で熱拡散率を測定した。試料の熱伝導率を求めるために必要な比熱容量はUO2, PuO2, AmO2の比熱容量よりKopp-Neumann則を用いて算出した。試料の熱拡散率,比熱容量,密度より熱伝導率を求め、Am含有MOXの熱伝導率のAm含有率依存性及び温度依存性について評価した。

36000671
Structural studies of lanthanide nitrate-N,N'-dimethyl-N,N'-diphenylpyridine-2,6-dicarboxyamide complexes
藤原 亜佐子; 仲野 義晴*; 矢板 毅; 奥野 健二*
Journal of Alloys and Compounds 456(1-2), p.429-435(2008) ; (JAEA-J 03934)
 抽出剤N,N'-dimethyl-N,N'-diphenylpyridine-2,6-dicarboxyamide(DMDPhPDA)は放射性廃液から3価のアクチノイド元素とランタノイド元素を選択的に抽出することが期待されている。この抽出のメカニズム解明の一助とするべく、DMDPhPDAとその硝酸ランタン錯体の結晶構造と、DMDPhPDAと硝酸ランタノイドの錯形成定数などを調べた。その結果、DMDPhPDAは2つまでランタノイドイオンの内圏に配位できる可能性が高く、また、外圏に存在するDMDPhPDAと交換していることが示唆された。

36000672
The Search for magnetic order in δ-Pu metal using muon spin relaxation
Heffner, R. H.; 大石 一城; Fluss, M. J.*; Morris, G. D.*; MacLaughlin, D. E.*; Shu, L.*; Chung, B. W.*; McCall, S. K.*; Bauer, E. D.*; Sarrao, J. L.*; 伊藤 孝; 髭本 亘
Journal of Alloys and Compounds 444-445, p.80-83(2007) ; (JAEA-J 03936)
 ミュオンスピン緩和法(μSR)を用いたα-Pu, δ-Pu及び超伝導体PuCoGa5の研究について報告する。Pu金属においては特に高温相であるδ-Puにおいて磁気秩序が存在するかどうかが大きな問題となっていた。われわれはμSR法を用いて磁気秩序の探索を行った。その結果磁気秩序は観測されず、仮に磁気秩序があった場合でもその磁気モーメントの大きさの上限を10-3μB以下であると決定することができた。またPuCoGa5では作成直後の試料と自己照射効果を見るため作成後400日経過した試料において超伝導磁場侵入長λ(T)の測定を行った。その結果超伝導ギャップにラインノードがあることを示すλ(T)∝Tなる振る舞いが見られた。特にλ(T)の傾向には自己照射後でも大きな変化がないことを見いだした。

36000673
NMR studies of actinide dioxides
徳永 陽; 酒井 宏典; 藤本 達也; 神戸 振作; Walstedt, R. E.*; 生嶋 健司*; 安岡 弘志; 青木 大*; 本間 佳哉*; 芳賀 芳範; 松田 達磨; 池田 修悟; 山本 悦嗣; 中村 彰夫; 塩川 佳伸*; 中島 邦久; 荒井 康夫; 大貫 惇睦
Journal of Alloys and Compounds 444-445, p.241-245(2007) ; (JAEA-J 03937)
 本論文ではわれわれが最近行っているネプツニウム及びプルトニウム化合物についての核磁気共鳴法(NMR)による研究結果を紹介する。NpO2ではこの物質で見られる新規な多極子秩序相の本質を探るため、世界初となるNMR法による測定を行った。その結果、NMR法を用いることにより従来の方法では難しかった多極子秩序変数の直接観測が可能であることを見いだした。さらに得られた結果はf電子系における多極子秩序の様子を微視的観点から明らかにするものとなった。またPuRhGa5においては単結晶試料を用いて69,71Ga-NMR/NQR測定を行った。超伝導状態におけるスピン-格子緩和時間の測定からこの物質が異方的な超伝導ギャップ(2Δ(0)=5KBTc)を持つことを示した。さらにナイトシフトが超伝導状態で減少することを見いだし、この物質がスピン一重項超伝導であることも明らかにした。

36000674
Study on valence of Pu, Np and Tc in nitric acid after electrolytic reduction
星 陽崇*; Wei, Y.-Z.*; 熊谷 幹郎*; 朝倉 俊英; 森田 泰治
Journal of Alloys and Compounds 444-445, p.663-667(2007) ; (JAEA-J 03938)
 核燃料サイクル開発において、再処理プロセスの経済性の向上は最も重要な課題の一つである。とりわけ将来の高速炉燃料再処理システムの確立には、現行のピュレックスシステムに比べ機器設備が少なく、廃棄物の発生量が少ない新規再処理プロセスの開発が望まれる。著者らは、使用済FBR-MOX燃料を対象とした新規の湿式再処理プロセス「ERIXプロセス」を提案している。本プロセスでは、アクチノイド元素の原子価をフロー型電解槽を用いて調整し、陰イオン交換体カラムを用いて高度に分離回収する。本報告では、高濃度硝酸中で電解還元されたプルトニウム,ネプツニウム及びテクネチウムの原子価を評価した。紫外・可視吸収スペクトル測定の結果、プルトニウムは3価に、ネプツニウムは4価に還元されることが明らかになった。また、陰イオン交換体カラムを用いた分析の結果、テクネチウムは4価又は2価に還元されることがわかった。還元したプルトニウムの再酸化に対する共存元素の影響を調べた結果、長期的にはテクネチウムにより定量的に再酸化されること、及び短期的にはルテニウムの影響が大きいことが明らかになった。

36000675
Dynamical thermal conductivity of argon crystal
蕪木 英雄; Li, J.*; Yip, S.*; 君塚 肇*
Journal of Applied Physics 102(4), p.043514_1-043514_6(2007) ; (JAEA-J 03939)
 グリーン-久保の線形応答理論に基づいた平衡分子動力学法を用いて希ガス結晶アルゴンの熱伝導率を計算した。原子間相互作用の計算には、カットオフ距離を十分に長く取ったレナード・ジョーンズポテンシャルを用いた。この方法により、固体から液体までの熱伝導率の絶対値を予測するとともに、熱流束の相関関数の時間依存性から熱伝導の動的過程について考察した。その結果、低温において相関関数が2つの緩和過程から構成されていることを示すとともに、短時間の緩和が局所的な単一粒子運動、長時間の緩和が原子の集団運動であるフォノンに対応していることを示した。温度が上昇するに従い長時間の相関は短時間の相関に比較して速く減少することを見いだし、これが固体において位相にコヒーレントなフォノン輸送から位相にインコヒーレントな原子間エネルギーへの遷移に対応していることを示した。

36000676
Optimization of the parallel finite element method for the earth simulator
櫛田 慶幸; 奥田 洋司*
Journal of Computational Science and Technology (Internet) 2(1), p.81-91(2008) ; (JAEA-J 03941)
 地球シミュレータは、8個のベクトルプロセッサーを持つ共有メモリ計算ノードを、ネットワークにより640個接続した、階層構造を持つ並列計算機である。このため、その性能を発揮するために、3段階の並列化を考慮する必要がある。すなわち、ノード間並列,ノード内並列,ベクトル化である。本研究では、ノード間並列機能を持つ有限要素法コードに対し、ノード内並列,ベクトル化機能を追加し、その性能向上を評価した。その結果、もとの性能に比較して、最大で30倍の高速化を達成した。また、ユーザーが利用可能な範囲で最大のプロセッサー数である4,096プロセッサーを使用したときに、10テラフロップスを超える性能を達成することができた。これは、理論性能の約30%である。

36000677
Solid-phase grain growth of In2O3 at high pressures and temperatures
齋藤 寛之; 内海 渉; 青木 勝敏
Journal of Crystal Growth 310(7-9), p.2295-2297(2008) ; (JAEA-J 03942)
 We determined the pressure-temperature diagram at pressures up to 10 GPa and temperatures of 20-2000 ℃ by in situ X-ray diffraction measurement. The decomposition temperature rose from 1250 to 1700 ℃ as the pressure increased from 2.0 to 4.0 GPa. It remained at about 1700 ℃ at higher pressures. The cubic structure transformed into a rhombohedral corundum structure at 4.0 GPa and 1600 ℃. The phase boundary had a slightly negative slope and its extrapolation provided an estimated transition pressure of 12 GPa at room temperature. Rapid grain growth was observed near the phase boundary in the rhombohedral region at temperatures around 1000 ℃ still sufficiently below the decomposition temperature. The single crystals of the high-pressure rhombohedral phase were recovered at ambient conditions. The size of the chunk crystals was about 100 μm.

36000678
Postcollisional exhumation history of the Tanzawa Tonalite Complex, inferred from (U-Th)/He thermochronology and fission track analysis
山田 国見; 田上 高広*
Journal of Geophysical Research 113(3), p.B03402_1-B03402_10(2008) ; (JAEA-J 03943)
 新たな熱年代学的手法により島弧島弧衝突による丹沢トーナル岩複合岩体の削剥史を調査した。(U-Th)/He年代はアパタイトで2.0±0.2Ma,ジルコンで3.3±0.2Ma,ジルコンのフィッショントラック年代は4.5-6.9Maで、地温勾配を40℃/kmとすると削剥史は∼7-3.3Ma: 0.5-1.5mm/yr; 3.3-2.0Ma: ∼2mm/yr; 2.0-0Ma: ∼0.8mm/yrであった。7Maごろ以降、丹沢山地周辺のテクトニクス条件の変化にもかかわらず、削剥速度は大きな変化を受けていないことが明らかになった。

36000679
Protein expression of Saccharomyces cerevisiae in response to uranium exposure
坂本 文徳; 南川 卓也; 香西 直文; 藤井 力*; 家藤 治幸*; Francis, A. J.; 大貫 敏彦
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences 8(2), p.133-136(2007) ; (JAEA-J 03944)
 238U(VI)と233U(VI)を含む培地で培養したSaccharomyces cerevisiaeの発現タンパク質を二次元電気泳動で分析した。S. cerevisiaeBY4743株を5.0 × 10-4M濃度の238U又は2.5 × 10-6 (2.0 × 10-4M濃度の238Uより350倍放射能が強い)と5.0 × 10-6M濃度の233Uを含む培地で、30℃で112時間培養した上記培地での酵母の生育度はコントロール> 2.5 × 10-6M 233U > 2.0 × 10-4M 238U > 5.0 × 10-6M 233U > 5.0 × 10-4M 238Uの順であった。この結果は、ウランの放射線効果だけでなく化学的効果が酵母の生育に影響していることを示唆している。培地溶液中の238U又は233Uの濃度が減少していることからウランが酵母細胞に濃集していることを示している。238U又は233Uに暴露させた酵母タンパク質の二次元電気泳動解析では、ウランが存在しないコントロールでは見られないスポットが確認された。この結果は、ウラン存在下の酵母が特異的なタンパク質を発現していることを示している。

36000680
EXAFS and XANES studies of americium dioxide with fluorite structure
西 剛史; 中田 正美; 伊藤 昭憲; 鈴木 知史; 平田 勝; 赤堀 光雄
Journal of Nuclear Materials 374(3), p.339-343(2008) ; (JAEA-J 03945)
 蛍石型構造を持つ二酸化アメリシウムのEXAFS及びXANES解析を行った。二酸化アメリシウムのアメリシウムL3吸収端に対するEXAFSの結果はX線回折測定で得られた構造データと良い一致を示した。二酸化アメリシウムのXANESを用いた電子構造の理論計算は相対論DV-Xα分子軌道法により行った。計算で得られたXANESスペクトルは実験で得られたスペクトルと良い一致を示した。XANESスペクトルの計算に基づく電子状態の評価は今後の核燃料サイクルにおけるマイナーアクチノイド(MA)含有MOX燃料の開発に非常に有用である。

36000681
Thermal conductivities of hypostoichiometric (U, Pu, Am)O2-x oxide
森本 恭一; 加藤 正人; 小笠原 誠洋*; 鹿志村 元明
Journal of Nuclear Materials 374(3), p.378-385(2008) ; (JAEA-J 03946)
 (U0.68Pu0.3Am0.02)O2-x固溶体(x=0.0-0.1)の熱伝導率について900∼1773Kの温度範囲で研究した。熱伝導率はレーザーフラッシュ法によって測定された熱拡散率より算出した。約1400Kまでの熱伝導率の実験値は次のようなフォノン輸送モデルで記述することができた。λ=(A+BT)-1, A(x)=2.89×x+2.24×10-2(m K/W), B(x)=(-6.70×x+2.48)×10-4(m/W)。実験的に得られたA値は計算値と良い一致を示した。実験的に得られたB値はx<0.04では計算値と一致するが、x>0.04では計算値とは合わなかった。この理由については明確になっていないが、計算に使用される試料の融点の不確かさによるものと思われる。

36000682
Water corrosion resistance of ODS ferritic-martensitic steel tubes
成田 健; 鵜飼 重治; 皆藤 威二; 大塚 智史; 松田 恭司*
Journal of Nuclear Science and Technology 45(2), p.99-102(2008) ; (JAEA-J 03947)
 酸化物分散強化(ODS)フェライト/マルテンサイト鋼は実用化段階の高速炉燃料被覆管の高燃焼度化や核融合炉の冷却材温度の高温化を達成する材料として開発が進められている。ODSフェライト/マルテンサイト鋼のアルカリ水環境における水腐食挙動評価するために腐食試験を行い、従来材の17mass%Crのオーステナイト系ステンレス鋼(PNC316),11mass%Crのフェライト/マルテンサイト系ステンレス鋼(PNC-FMS)と比較した。その結果、9Cr-ODSマルテンサイト鋼及び12Cr-ODSフェライト鋼は、pH8.4, 10, 12の333K×1,000h環境においてPNC316, PNC-FMSと同等の良好な耐食性を有することが確認された。

36000683
Measurement and analysis of neutron-induced alpha particle emission double-differential cross section of carbon at 14.2 MeV
近藤 恵太郎; 村田 勲*; 落合 謙太郎; 久保田 直義*; 宮丸 広幸*; 今野 力; 西谷 健夫
Journal of Nuclear Science and Technology 45(2), p.103-115(2008) ; (JAEA-J 03948)
 炭素は核融合炉の候補材の構成元素として重要であるが、核発熱や材料損傷の計算に必要なα粒子放出二重微分断面積の測定値が過去1例しか存在していなかった。本研究では核融合中性子工学用中性子源施設FNSにおいて、14.2MeV中性子入射による炭素からのα粒子放出二重微分断面積の詳細な測定を行った。DT中性子ビームとカウンターテレスコープ法の利用によって優れたS/N比,高い角度・エネルギー分解能,幅広い測定エネルギー範囲を実現した。得られた12C(n,α0)9Be(ground state)反応断面積は過去の測定値及び評価済み核データと良い一致を示した。12C(n,n'+3α)反応のα粒子放出角度微分断面積は強い前方性を示し、直接過程の寄与が大きいことを示唆する結果を得た。12C(n,n'+3α)反応に寄与する多くの反応チャンネルへの分岐比を推定するため、放出粒子のスペクトルを運動学に基づいたモンテカルロ法によって計算することを試みた。解析の結果、12C(n,α)9Be*反応チャンネルが放出粒子の二重微分断面積を再現するうえで重要であることを明らかにした。本研究では12C(n,n'+3α)反応における12C(n,α)9Be*チャンネルへの分岐比をおよそ40%程度と推定したが、これは過去の研究で示唆されたものよりかなり大きい値である。

36000684
Development of irradiation capsules in liquid metal environment in Joyo and their application to irradiation creep measurement of vanadium alloys
福元 謙一*; 鳴井 実*; 松井 秀樹*; 伊藤 和寛; 矢野 康英
Journal of Nuclear Science and Technology 45(2), p.171-178(2008) ; (JAEA-J 03949)
 原子炉内の液体金属環境下における照射試験を実施するため、ナトリウムボンド型照射キャプセルを用いた照射技術を開発し、高速実験炉「常陽」で一連の照射試験を実施した。この研究を通して、ナトリウムボンド型照射キャプセルの設計・製作,キャプセルへのナトリウムの充填,「常陽」へのキャプセルの装荷,照射,照射済みキャプセルの取り出し,ナトリウムで満たされたキャプセルからの照射済み試料の取り出し及び照射済み試料のナトリウム洗浄が確立された。この照射温度が均一化されたナトリウムボンド型照射キャプセルを用いて、高純度のV-4Cr-4Ti合金(NIFS-Heat)の照射試験を実施し、その合金の照射クリープの挙動に関する知見を得た。

36000685
Sorption of U(VI) on the 4-mercaptopyridine self-assembled monolayer
南川 卓也; 鈴木 義規; 尾崎 卓郎; Francis, A. J.; 大貫 敏彦
Journal of Nuclear Science and Technology 45(3), p.251-256(2008) ; (JAEA-J 03950)
 金薄膜上に形成したピリジン自己組織化単分子へのU(VI)の吸着を実験により検討した。pH4のU(VI)溶液にピリジン自己組織化単分子を付加した金電極を作用極として電位-電流曲線を測定し、U(VI)の還元電流を検知できたことから、ピリジン自己組織化単分子へのU(VI)の吸着が確認された。酢酸及びシュウ酸溶液を用いてU(VI)の吸着を電位-電流曲線により調べた結果、U(VI)とピリジン自己組織化単分子との錯形成能は、酢酸とシュウ酸の中間にあることがわかった。

36000686
Development of a performance analysis code for vibro-packed MOX fuels
石井 徹哉; 根本 潤一*; 浅賀 健男; 佐藤 正知*; Mayorshin, A.*; Shishalov, O.*; Kryukov, F.*
Journal of Nuclear Science and Technology 45(4), p.263-273(2008) ; (JAEA-J 03951)
 高速炉用MOXバイパック燃料の照射挙動解析コードを開発するため、炉外試験等で得られた知見をもとにバイパック燃料用挙動評価モデル群を構築し、それらをペレット型燃料用挙動解析コードCEDARに導入し、CEDAR-VIPAC版を整備した。このCEDAR-VIPAC版の解析機能を検証するためにロシアで照射されたMOXバイパック燃料の照射挙動解析を実施した結果、モデル化が適切に行えていることを確認できた。

36000687
Prediction accuracy improvement of neutronic characteristics of a breeding light water reactor core by extended bias factor methods with use of FCA-XXII-1 critical experiments
久語 輝彦; 安藤 真樹; 小嶋 健介; 福島 昌宏; 森 貴正; 中野 佳洋; 岡嶋 成晃; 北田 孝典*; 竹田 敏一*
Journal of Nuclear Science and Technology 45(4), p.288-303(2008) ; (JAEA-J 03952)
 拡張バイアス因子法(PE法及びLC法)の有効性をFCA-XXII-1臨界実験を用いて水冷却増殖炉心に適用することにより調査した。拡張バイアス因子法の特徴が数値的に以下の通り確認できた。活用できる実験をすべて活用すれば最も設計予測値の持つ誤差を低減できる。PE法はどのような実験の組合せを用いても設計計算値の持つ誤差を低減することができる。PE法がLC法に比べて設計予測精度が向上する。また、本研究の結果、以下のことがわかった。実機炉心の238U捕獲率対239Pu核分裂率比(C28/F49)に対して、LC法では予測精度の向上は見られないが、PE法では、実効増倍率(keff)に関する実験結果がC28/F49に関する実験結果より効果的で予測精度が向上する。実機炉心の冷却材ボイド反応度に対して、単一実験結果を使用する場合はPE法ではボイド反応度に関する実験結果がkeffに関する実験結果より効果的で予測精度は向上するが、複数の実験結果を使用する場合は、両手法ともkeffに関する実験結果の組合せがボイド反応度に関する実験結果の組合せより効果的で、PE法による単一実験結果を使用したときよりも予測精度が向上する。これらから、実機核特性(keff, C28/F49及びボイド反応度)に対して、keffに関する実験結果がそのほかの実験結果よりも効果的であると結論できる。これらの結果から、PE法は複数のベンチマーク実験結果を用いることによりモックアップ実験の補完する有望な手段であると結論できる。

36000688
Existence and origin of compensation layer thickness in Tb20Co80/Pd multilayered films
田中 真人*; 朝日 透*; 安居院 あかね; 水牧 仁一朗*; 佐山 淳一*; 逢坂 哲彌*
Journal of Physics D; Applied Physics 41(5), p.055003_1-055003_4(2008) ; (JAEA-J 03955)
 本研究は垂直磁気記録材料の候補の一つであるTbCo/Pd多層膜の示す複雑な垂直磁気異方性の起源を軟X線吸収スペクトル(XAS),磁気円二色性(MCD)の層厚変化を測定した。その結果、補償層厚前後でCoからTbへ優勢モーメントが反転すること、補償層厚においてもMCDは観測され、CoとTbでほぼ同じ強度で向きが反対の磁気モーメントを持つためにマクロでは磁性を有しないように見えること、層厚によってはESMHループとマクロな磁化曲線の形状が異なることなどが明らかになった。

36000689
Field-induced incommensurate order in frustrated spin ladder
坂井 徹; 岡本 清美*
Journal of Physics; Condensed Matter 19(14), p.145231_1-145231_5(2007) ; (JAEA-J 03956)
 フラストレーションのあるスピン1/2スピンラダー系について、数値的厳密対角化と有限サイズスケーリングを用いて理論的に解析した。その結果、フラストレーションが十分強い場合には、磁場中で非整合長距離秩序を持つ新しい相が出現する可能性のあることが判明した。

36000690
Structural and electronic properties of liquid InAs under pressure
下條 冬樹*; 宮田 恭尚*; 菅原 崇行*; 服部 高典; 辻 和彦*
Journal of Physics; Conference Series 98, p.042016_1-042016_4(2008) ; (JAEA-J 03958)
 高圧下における液体InAsの構造と化学結合状態を、第一原理分子動力学計算によって調べた。計算された液体の構造因子は、過去にX線散乱実験によって得られたものと広い圧力領域に渡ってよく一致した。その結果、二体分布関数の圧力変化は、共有結合の強さの違いを反映し、着目するイオンペアによって異なることがわかった。また、二体分布関数を詳細に解析した結果、6∼10GPaで高圧挙動が変化するのが見られた。このような挙動は、加圧に伴う共有結合性減少と関係していることが示された。

36000691
Chemical-state-selective observations on Si-SiOx at nanometer scale by photoelectron emission microscopy combined with synchrotron radiation
馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖; 本田 充紀; 平尾 法恵*; Deng, J.; 成田 あゆみ
Journal of Physics; Conference Series 100, p.012015_1-012015_4(2008) ; (JAEA-J 03959)
 放射光軟X線と光電子顕微鏡を組合せることにより、ナノメートルスケールの化学結合状態分布を観察するための装置を開発し、シリコン化合物に応用した。試料には、7.5ミクロン周期のパターンを持つシリコン酸化物,シリコン窒化物,有機シリコン化合物を用いた。Si K-吸収端付近で放射光のエネルギーを掃引することにより、化学結合状態(シリコンの原子価状態)に依存した画像をナノメートルスケールで観察することに成功した。また、SiとSiO2が交互に並んだマイクロパターン試料について、加熱による化学結合状態変化を観察した。その結果、700度から酸素原子の横方向の拡散が始まることがわかった。拡散の途中でSiとSiO2界面の化学結合状態を詳細に観察したところ、界面にSiOなどの中間の原子価状態は存在せず、酸素の拡散はSi原子が一気に4個の酸素原子と配位することにより起こることがわかった。発表では固体表面上に作成した有機シリコン化合物(シリコンフタロシアニン塩化物)の化学結合状態観察と加熱による横方向の拡散についても報告する。

36000692
Reduction of hydrogen content in pure Ti
荻原 徳男; 菅沼 和明; 引地 裕輔; 神谷 潤一郎; 金正 倫計; 祐延 悟*
Journal of Physics; Conference Series 100, p.092024_1-092024_5(2008) ; (JAEA-J 03960)
 J-PARC 3GeVシンクロトン用のダクト・ベローズには、残留放射能が少ないことから純Tiを採用している。陽子加速器ではイオン衝撃による水素の放出が主なガス放出機構である。このイオン誘起脱離の抑制には、バルク中の水素濃度を低減することが有効なはずなので、Ti中の水素濃度を真空脱ガス処理により低減させることとした。熱脱離特性及び水素濃度変化の測定から、550℃以上での脱ガスが有効であることが判明した。また、高温での結晶粒の成長による機械強度の劣化が懸念されるが、750℃で12hの熱処理でも機械強度の劣化はおよそ10%であり、問題とならない。以上に基づき、実機RCSではTi材を高温で脱ガス処理した。

36000693
Numerical investigation of cross flow phenomena in a tight-lattice rod bundle using advanced interface tracking method
Zhang, W.; 吉田 啓之; 小瀬 裕男*; 大貫 晃; 秋本 肇; 堀田 亮年*; 藤村 研*
Journal of Power and Energy Systems (Internet) 2(2), p.456-466(2008) ; (JAEA-J 03961)
 In relation to the design of an innovative FLexible-fuel-cycle Water Reactor (FLWR), investigation of thermal-hydraulic performance in tight-lattice rod bundles of the FLWR is being carried out at Japan Atomic Energy Agency (JAEA). The FLWR core adopts a tight triangular lattice arrangement with about 1 mm gap clearance between adjacent fuel rods. In view of importance of accurate prediction of cross flow between subchannels in the evaluation of the boiling transition (BT) in the FLWR core, this study presents a statistical evaluation of numerical simulation results obtained by a detailed two-phase flow simulation code, TPFIT, which employs an advanced interface tracking method. In order to clarify mechanisms of cross flow in such tight lattice rod bundles, the TPFIT is applied to simulate water-steam two-phase flow in two modeled subchannels. Attention is focused on instantaneous fluctuation characteristics of cross flow. With the calculation of correlation coefficients between differential pressure and gas/liquid mixing coefficients, time scales of cross flow are evaluated, and effects of mixing section length, flow pattern and gap spacing on correlation coefficients are investigated. Differences in mechanism between gas and liquid cross flows are pointed out.

36000694
Development of fast reactor structural integrity monitoring technology using optical fiber sensors
松場 賢一; 伊藤 主税; 川原 啓孝; 青山 卓史
Journal of Power and Energy Systems (Internet) 2(2), p.545-556(2008) ; (JAEA-J 03962)
 ナトリウム冷却型高速炉では、運転時の原子炉出口温度が高温で、原子炉出入口温度差も大きいため、1次冷却系配管に有意な熱応力が発生する。このため、プラント各部の温度,ひずみ,変位及び振動を高精度で測定することが構造健全性監視上重要である。構造健全性監視技術を高度化する手段として、温度やひずみの連続分布,変位や振動を測定可能な光ファイバを適用することが有効である。高速実験炉「常陽」では、高速炉の構造健全性監視への光ファイバの適用性実証を目的として、FBGセンサを用いた1次系配管の変位及び振動の測定を実施している。原子炉運転に伴う高放射線量率環境下で測定を行い、原子炉運転約120日分に相当する積算γ線量4×104Gyまでの照射では、反射光強度の低下による測定への有意な影響はなかった。また、1次系配管サポートの変位測定結果は、当該部の温度変化量に線膨張係数を乗じて求めた熱変位量の計算値とおおむね一致した。さらに、配管サポートの振動スペクトルの主なピーク周波数が加速度計による測定結果とおおむね一致した。これらの測定結果は、高放射線環境下の変位や振動監視への光ファイバの適用性を示すものである。

36000695
Experimental method of in-pile creep rupture behavior of ODS cladding materials in the experimental fast reactor Joyo
伊藤 主税; 籠田 栄一; 青山 卓史
Journal of Power and Energy Systems (Internet) 2(2), p.620-632(2008) ; (JAEA-J 03963)
 「常陽」では、照射試料を装填しているキャプセルの内部温度をオンラインで制御できるオンライン温度制御型材料照射装置(MARICO)を開発し、炉内クリープ破断試験を実施している。MARICO2号機(MARICO-2)では、混合ガス置換型温度制御キャプセルの温度制御方法の改善,電気ヒータ型温度制御キャプセルの新設,クリープ破断試料の検知・同定方法の高度化等の改良を行った。このMARICO-2を用いて、平成18年4月より、高速炉燃料被覆管材料の候補材である酸化物分散強化型(ODS)フェライト鋼の炉内クリープ破断試験を開始し、MARICO-1を超える750℃の温度条件においても目標温度±4℃以内での温度制御を達成した。また、熱電対の温度ゆらぎ及びカバーガスの放射能測定により試料のクリープ破断を検知するとともに、レーザ共鳴イオン化質量分析法を用いて破断した試料の同定に成功した。

36000696
Irradiation test of fuel containing minor actinides in the experimental fast reactor Joyo
曽我 知則; 関根 隆; 田中 康介; 北村 了一; 青山 卓史
Journal of Power and Energy Systems (Internet) 2(2), p.692-702(2008) ; (JAEA-J 03964)
 原子力機構では、「常陽」を用いたマイナーアクチニド含有混合酸化物燃料の照射試験を進めている。2回の照射試験が、「常陽」MK-III炉心の第3サイクルにおいて実施された。試験用燃料ピンは、Amを含むMOX燃料(Am-MOX)、又はAm及びNp含むMOX燃料(Np/Am-MOX)を装填した6本である。燃料溶融の有無を確認するため、約430W/cmの高線出力密度で10分間保持する最初の試験が2006年5月に実施された。本試験の後、試験用集合体内の1本のAm-MOX燃料ピンと1本のNp/Am-MOX燃料ピンがダミーピンに交換された。残り4本の試験燃料ピンは2006年8月にMAの再分布挙動を確認するため、「常陽」において24時間再照射された。各試験燃料ピンの線出力密度は、モンテカルロ計算コードMCNPを用いて解析し、その解析値をMK-III炉心で測定されたドシメータの反応率により補正した。これらの試験燃料ピンの燃料溶融の有無,MAの再分布を確認する照射後試験が進行中である。

36000697
Core dynamics analysis for reactivity insertion and loss of coolant flow tests using the high temperature engineering test reactor
高松 邦吉; 中川 繁昭; 武田 哲明
Journal of Power and Energy Systems (Internet) 2(2), p.790-803(2008) ; (JAEA-J 03965)
 高温工学試験研究炉(HTTR)における安全性実証試験は、高温ガス炉(HTGR)に関する固有の安全性の実証,安全技術及び設計手法の検証のために実施中である。安全性実証試験の一つである反応度添加試験は、原子炉出力制御系を作動させない状態で制御棒を引き抜くことにより、原子炉出力の急激な上昇を模擬する。一方、冷却材流量喪失試験は、循環機3台中の1台又は2台を停止することにより、原子炉出力の急激な減少を模擬する。これらの試験は、高温ガス炉の固有の安全性及び負の反応度フィードバック効果を明らかにできる。数値解析コード(ACCORD)は4チャンネル、20温度係数を用いており、HTTR炉心の流動現象を含む炉心動特性を解析できる。さらに新たな炉心解析モデルを統合させ、冷却材流量喪失試験における燃料チャンネルと炉心の熱伝導を模擬する。本報告は、試験結果を用いた改良後の解析コードの評価について述べ、さらに改良効果について定式化して説明する。最後に、循環機3台停止試験の事前解析結果についても述べる。

36000698
Characterization of homoionic Fe2+-type montmorillonite; Potential chemical species of iron contaminant
香西 直文; 稲田 貢一*; 安達 美総*; 川村 幸*; 樫本 裕輔*; 小崎 完*; 佐藤 正知*; 大貫 敏彦; 酒井 卓郎; 佐藤 隆博; 及川 将一*; 江坂 文孝; 三田村 久吉
Journal of Solid State Chemistry 180(8), p.2279-2289(2007) ; (JAEA-J 03966)
 陽イオン交換サイトにFe2+イオンを吸着しているFe2+型モンモリロナイトは、ベントナイト緩衝材の理想的な変質生成物である。著者らは既報において、不活性ガス雰囲気でFeCl2水溶液を用いることによって、ほぼすべての陽イオン交換サイトにFe2+イオンを吸着させたFe2+型モンモリロナイトを調製した。本研究では調製した試料中に生成した可能性がある鉄の不純物化学種について検討した。試料全体に少量の塩素イオンが残留していることがわかった。これは、FeCl2溶液中でFeCl+が粘土に吸着したこと、さらに過剰塩除去処理中にFeCl+から解離するはずのCl-が粘土中に閉じこめられたためと考えられる。後者については、次の2つの理由が考えられる。まず、Fe2+の吸着によって閉じた粘土層間からのCl-拡散速度が遅いこと、あるいは残留したFeCl+の一部が溶解度の低い水酸化物に変化したことである。

36000699
Synthesis and characterization of bulky mesoporous silica Pd-MCM-41
永田 英純*; 平尾 法恵*; 小野木 伯薫*; 馬場 祐治; 山崎 友紀*; 中平 敦*
Journal of the Ceramic Society of Japan 116(1350), p.216-219(2008) ; (JAEA-J 03967)
 熱水加熱ポットプレス法を用いて、メゾポーラスシリカ(Mobil社のMCM-41)にパラジウムを担持することにより大表面積のパラジウム触媒(パラジウムバルク体)を合成することに成功した。加熱前後のパラジウムバルク体の構造はX線回折(XRD),X線吸収端微細構造法(XANES)及び透過型電子顕微鏡(TEM)により調べ、これらの解析結果に基づいてバルク体のミクロ構造とメゾポーラス特性について検討した。その結果、合成したパラジウムバルク体は1000m2/g以上の表面積を持つこと、また、パラジウムの電子状態は、金属パラジウムに近いことを明らかにした。

36000700
Magnetic and superconducting properties of LaIrSi3 and CeIrSi3 with the non-centrosymmetric crystal structure
奥田 悠介*; 宮内 裕一朗*; 伊田 勇輝*; 武田 勇司*; 戸野広 智絵*; 大槌 泰弘*; 山田 勉*; Nguyen, D.; 松田 達磨; 芳賀 芳範; 竹内 徹也*; 萩原 政幸*; 金道 浩一*; 播磨 尚朝*; 杉山 清寛*; 摂待 力生*; 大貫 惇睦*
Journal of the Physical Society of Japan 76(4), p.044708_1-044708_11(2007) ; (JAEA-J 03971)
 反転中心を持たない超伝導体CeIrSi3及びLaIrSi3の単結晶育成に成功し、磁性,超伝導及びFermi面を明らかにした。LaIrSi3のフェルミ面は、反転中心がないことを反映し、スピン軌道相互作用による分裂が明確に観測される。一方圧力により、反強磁性体CeIrSi3は超伝導体へと変化する。そこでの上部臨界磁場は異方的である。これは、反転中心がない場合の理論的予測と一致する。

36000701
Magnetic properties and crystalline electric field scheme in RRhIn5 (R: Rare earth)
Hieu, N. V.*; 竹内 徹也*; 宍戸 寛明*; 戸野広 智絵*; 山田 勉*; 中島 弘*; 杉山 清寛*; 摂待 力生*; 松田 達磨; 芳賀 芳範; 萩原 政幸*; 金道 浩一*; 荒木 新吾*; 野末 泰夫*; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 76(6), p.064702_1-064702_16(2007) ; (JAEA-J 03972)
 A seriese of ternary compounds RRhIn5 (R: rare earth) has been grown in the single crystalline form by means of the flux method. Most of these compounds order antiferromagnetically at low temperatures, except R = Y, La, Pr and Yb. The magnetic properties are discussed on the basis of the crystalline-field parameters.

36000702
Single-component molecular metals as multiband π-d systems
妹尾 仁嗣; 石橋 章司*; 岡野 芳則*; 小林 速男*; 小林 昭子*; 福山 秀敏*; 寺倉 清之*
Journal of the Physical Society of Japan 77(2), p.023714_1-023714_4(2008) ; (JAEA-J 03973)
 単一成分分子性金属M(tmdt)2(M=Ni,Au)の電子状態を理論的に研究した。それぞれの物質に対する有効3バンドモデルを、第1原理計算に数値フィッティング及び孤立分子に対する分子軌道計算をもとに構築した。このモデルは分子あたり2種類の基底軌道からなりその間に混成が存在する。すなわち、それぞれのtmdt配位子に対するπ軌道と、金属サイトを中心とする、M=Niに対してはpdπ軌道、M=Auに対してはpdσ軌道である。これらのことは、この物質群が新規な多軌道π-d系であることを示唆する。Ni(tmdt)2においては両軌道とも金属状態を実現するのに重要な寄与を果たしていることがわかった。また、Au(tmdt)2で観測されている反強磁性転移に関してもこのモデルをもとに議論した。

36000703
Single crystal growth and the fermi surface property in LuCoGa5
松田 達磨; 芳賀 芳範; 酒井 宏典; 青木 大*; 池田 修悟; 山本 悦嗣; 宍戸 寛明*; 摂待 力生*; 播磨 尚朝*; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 77(2), p.024704_1-024704_6(2008) ; (JAEA-J 03974)
 HoCoGa5-型正方晶をとるLuCoGa5の純良単結晶育成に成功した。得られた単結晶を用いて、結晶構造パラメータを決定し、さらに抵抗,比熱,ドハース・ファンアルフェン効果測定を行った。フェルミ面は、シリンダー状に近いトポロジーを有しており、これらの特徴はFLAPW法によるエネルギーバンド計算によって非常によく説明できることが明らかとなった。

36000704
Soft X-ray magnetic circular dichroism study of uranium monochalcogenides at uranium N4,5 absorption edges
岡根 哲夫; 竹田 幸治; 岡本 淳*; 間宮 一敏*; 大河内 拓雄; 藤森 伸一; 斎藤 祐児; 山上 浩志; 藤森 淳; 落合 明*; 田中 新*
Journal of the Physical Society of Japan 77(2), p.024706_1-024706_6(2008) ; (JAEA-J 03975)
 X-ray magnetic circular dichroism (XMCD) was measured for the ferromagnetic uranium monochalcogenides US and USe at U N4,5 absorption edges in the soft X-ray region. The obtained N4,5 XMCD signal of US was comparable to the M4,5 XMCD signal obtained in previous studies. From the sum-rule analysis of XMCD data, it was shown that the estimated ratios of orbital magnetic moment to spin magnetic moment were almost the same for US and USe. The analysis of the XAS branching ratio indicated an increase in 5f electron occupation number from US to USe.

36000705
Cylindrical domains of block copolymers developed via ordering under moving temperature gradient
三田 一樹*; 田中 宏和*; 西条 賢次*; 竹中 幹人*; 橋本 竹治
Macromolecules 40(16), p.5923-5933(2007) ; (JAEA-J 03976)
 外場のないときにシリンダー状ナノ秩序構造を形成するブロック共重合体高分子を、ゾーン加熱法を用いて、無秩序-秩序相転移を経て秩序構造を形成することを世界で初めて試みた。その結果、シリンダーグレインは温度勾配軸方向に伸びた円柱グレインを形成し、グレイン内部ではシリンダー軸は常に温度勾配の軸と垂直に配向するという特徴あるシリンダーグレイン構造の創製に初めて成功した。

36000706
Control of self-assembling processes of polyamidoamine dendrimers and Pd nanoparticles
田中 宏和*; 橋本 竹治; 小泉 智; 伊東 秀明*; 中 建介*; 中條 善樹*
Macromolecules 41(5), p.1815-1824(2008) ; (JAEA-J 03977)
 ポリアミンデンドリマーのメタノール溶液と酢酸パラジウムのDMF溶液を混合した際に生ずるデンドリマーの分子集合体の自己組織化機構及び同集合体をテンプレートとしてその中に形成されるパラジウムナノ微粒子の自己組織化機構を解明するとともに、これら自己組織化構造のデンドリマーの世代数及びデンドリマーの濃度依存性を解明した。

36000707
Temporally distinct response of irradiated normal human fibroblasts and their bystander cells to energetic heavy ions
浜田 信行*; Ni, M.*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 小林 泰彦
Mutation Research; Fundamental and Molecular Mechanisms of Mutagenesis 639(1-2), p.35-44(2008) ; (JAEA-J 03978)
 ヒト正常線維芽細胞における重粒子線照射後誘導蛋白質を定量的ウェスタンブロット法によって解析した。12Cイオン(220MeV)又は20Neイオン(260MeV)をD10相当線量、すなわちCでは1.3Gy(7.6×106p/cm2)、Neでは1.9Gy(2.7×106p/cm2)をブロードビームで照射した細胞では、p53蛋白質Ser15部位でのリン酸化レベルが、照射後2時間と6時間とで変化せず高いレベルを保持していた。一方、高密度培養した細胞シャーレ内の1∼25か所に1か所あたり10粒子照射した場合の、細胞シャーレ内の圧倒的多数をしめるバイスタンダー細胞では、照射後2時間よりも6時間で上昇することがわかった。この結果は、直接の重イオン照射細胞と非照射のバイスタンダー細胞における分子応答機構の違いを示唆している。

36000708
Itinerant to localized transition of f electrons in the antiferromagnetic superconductor UPd2Al3
藤森 伸一; 斎藤 祐児; 岡根 哲夫; 藤森 淳*; 山上 浩志*; 芳賀 芳範; 山本 悦嗣; 大貫 惇睦*
Nature Physics 3(9), p.618-622(2007) ; (JAEA-J 03979)
 重い電子系において、f電子は温度によって遍歴・局在の両者の性質を示す。特性温度T*以上では、磁性は完全に局在したf電子モデルによって記述される。一方、T*以下の温度では、フェルミ面が遍歴したf電子モデルによって説明される。この二つのモデルは完全に異なるf電子を仮定しており、f電子がどのようにしてその二重性を示すのかは理解されてこなかった。この研究では、重い電子系超伝導化合物UPd2Al3のバンド構造を角度分解光電子分光によってT*の上下で測定し、低温でフェルミ面を形成していたf電子が高温でフェルミ準位から排除されることを見いだした。この結果は、f電子がどのようにして遍歴から局在へと変化するかを電子状態の立場から示すものである。

36000709
Quasiparticle interference and superconducting gap in Ca2-xNaxCuO2Cl2
花栗 哲郎*; 幸坂 祐生*; Davis, J. C.*; Lupien, C.*; 山田 幾也*; 東 正樹*; 高野 幹夫*; 大石 一城; 小野 雅紀*; 高木 英典*
Nature Physics 3(12), p.865-871(2007) ; (JAEA-J 03980)
 High-transition-temperature (high-Tc) superconductivity is ubiquitous in the cuprates containing CuO2 planes, but each cuprate has its own character. The study of the material dependence of the d-wave superconducting gap (SG) should provide important insights into the mechanism of high-Tc superconductivity. However, because of the "pseudogap" phenomenon, it is often unclear whether the energy gaps observed by spectroscopic techniques really represent the SG. Here, we use scanning tunnelling spectroscopy to image nearly optimally doped Ca2-xNaxCuO2Cl2 (Na-CCOC) with Tc=25 ∼ 28 K. It enables us to observe the quasiparticle interference effect in this material, through which we obtain unambiguous information on the SG. Our analysis of quasiparticle interference in Na-CCOC reveals that the SG dispersion near the gap node is almost identical to that of Bi2Sr2CaCu2Oy (Bi2212) at the same doping level, despite the Tc of Bi2212 being three times higher than that of Na-CCOC. We also find that the SG in Na-CCOC is confined in narrower energy and momentum ranges than Bi2212, which explains - at least in part - the remarkable material dependence of Tc.

36000710
Effect of toroidal field ripple on plasma rotation in JET
de Vries, P. C.*; Salmi, A.*; Parail, V.*; Giroud, C.*; Andrew, Y.*; Biewer, T. M.*; Crombé, K.*; Jenkins, I.*; Johnson, T.*; Kiptily, V.*; Loarte, A.*; Lönnroth, J.*; Meigs, A.*; 大山 直幸; Sartori, R.*; Saibene, G.*; 浦野 創; Zastrow, K.-D.*; JET-EFDA Contributors
Nuclear Fusion 48(3), p.035007_1-035007_6(2008) ; (JAEA-J 03981)
 JETにおいてトロイダル磁場リップルがトカマクプラズマの性能に与える影響を調べた結果、トロイダル磁場リップルがプラズマの回転に大きな影響を及ぼすことがわかった。回転速度を熱速度で規格化したマッハ数(M)は、トロイダル磁場リップル強度の関数として減少する。プラズマ中心部のMは、JETの通常の運転におけるリップル率0.08%におけるM=0.4-0.55に対し、0.5%ではM=0.25-0.40、1%ではM=0.1-0.3と減少する。プラズマ電流と同じ方向の中性粒子ビーム入射を用いる通常の実験では、プラズマ電流と同じ方向にプラズマが回転する。しかし、トロイダル磁場リップルが大きい場合(∼1%)、プラズマ中心部ではプラズマ電流と同じ方向に回転するものの、プラズマ周辺部ではプラズマ電流と逆方向に回転することがわかった。

36000711
Recovery of U-Pu alloy from MOX using a pyroprocess series
北脇 慎一; 篠崎 忠宏; 福嶋 峰夫; 宇佐見 剛*; 矢作 昇*; 倉田 正輝*
Nuclear Technology 162(2), p.118-123(2008) ; (JAEA-J 03983)
 もんじゅペレットを用いて、U, Pu合金を回収するための乾式再処理の一連の試験を実施した。Li還元試験では、MOXの還元挙動がUO2と同様であることを確認した。還元物を陽極としたCd陰極電解試験では、UとPuの分離係数が5.7であることを確認した。これは、既往研究成果と同様であった。物質収支については、電極及び塩中から、陽極装荷量に対してU:98%, Pu:103%の回収が確認された。これは、分析誤差を考慮すれば妥当な値である。陽極に残留したU濃度(Puに対する比率)は、装荷時に比べ若干増加しており、再酸化の可能性が示唆された。電解で得られたU-Pu合金を用いたCd蒸留によって、U-Puインゴットを生成した。

36000712
Cyclic voltammetry behavior of americium at a liquid cadmium electrode in LiCl-KCl eutectic melts
林 博和; 赤堀 光雄; 湊 和生
Nuclear Technology 162(2), p.129-134(2008) ; (JAEA-J 03984)
 AmCl3-(LiCl-KCl)eut.系のサイクリックボルタンメトリ測定を723K及び773Kにおいてモリブデン(Mo)電極及び液体カドミウム(Cd)を作用極として行った。Mo電極ではAm(III)/Am(II)及びAm(II)/Am(0)に相当する信号が観測されたのに対し、Cd電極ではAm(III)/Am(0)(in Cd)に相当するピークのみが観測された。Cd電極を作用極としたサイクリックボルタングラムから導出したAm(III)/Am(0)(in Cd)の酸化還元電位はMo電極を作用極としたサイクリックボルタングラムから導出したAm(III)/Am(0)の酸化還元電位よりも貴であった。これはAm-Cd金属間化合物が生成することによってAmの活量が低下するためであると考えられる。上記の酸化還元電位の差から計算したAm-Cd金属間化合物の生成自由エネルギーは723Kにおいて-119kJ/mol,773Kにおいて-113kJ/molである。

36000713
Influence of self-irradiation on the magnitude of the superfluid density in PuCoGa5 probed by muon spin rotation
大石 一城; Heffner, R. H.; 伊藤 孝; 髭本 亘; Morris, G. D.*; Bauer, E. D.*; Graf, M. J.*; Zhu, J.-X.*; Morales, L. A.*; Sarrao, J. L.*; Fluss, M. J.*; MacLaughlin, D. E.*; Shu, L.*
Physica B; Condensed Matter 403(5-9), p.1013-1014(2008) ; (JAEA-J 03985)
 PuCoGa5Tc=18.5Kの超伝導体として知られている。本系の特徴として、Puの崩壊により自発的に試料内に欠陥を作成する自己照射効果のため、超伝導転移温度が経時変化とともに減少することが報告されている。われわれは試料作成から25日及び400日経過した同一単結晶試料を用いてμSR実験を行い、磁場侵入長λ(1/λ2∝ρs, ρsは超伝導電流密度)の温度依存性を観測した。その結果、作成後25日の試料に比べ、約400日経った試料では自己照射効果によりTcは約20%減少した一方で、超伝導電流密度ρsは約70%も減少することがわかった。不純物によるTcの減少を予測したAbrikosov-Gorkov(AG)理論によれば、ρsが70%減少した場合、Tcは約50%減少することが期待されるが、PuCoGa5ではTcの減少は20%に抑制された。Franzらによれば、このTcの抑制はコヒーレンス長ξが不純物間距離に比べ短い場合に生じることが理論的に予測されている。このモデルを用いてρsの温度依存性を計算した結果、実験結果を非常によく再現することから、PuCoGa5ではξ∼2nmと短いコヒーレンス長がこのTcの抑制に寄与していると考えられる。

36000714
First-principles electron dynamics simulation for optical breakdown of dielectrics under an intense laser field
乙部 智仁; 山極 満; 岩田 潤一*; 矢花 一浩*; 中務 孝*; Bertsch, G. F.*
Physical Review B 77(16), p.165104_1-165104_5(2008) ; (JAEA-J 03988)
 われわれは誘電体の光絶縁破壊の第一原理シミュレーションを初めて行った。計算は時間依存密度汎関数法(TD-DFT)の基礎方程式である時間依存Kohn-Sham方程式を実時間実空間法を用いて解くことで行った。計算結果から7×1014W/cm2辺りのレーザー強度から電子の応答が大きく変わることがわかった。またレーザー照射後に励起電子によるプラズマ振動が残ることがわかった。

36000715
Z dependence of the N = 152 deformed shell gap; In-beam γ-ray spectroscopy of neutron-rich 245, 246Pu
牧井 宏之; 石井 哲朗; 浅井 雅人; 塚田 和明; 豊嶋 厚史; 松田 誠; 牧嶋 章泰*; 金子 順一*; 當銘 勇人*; 市川 進一; 重松 宗一郎*; 河野 俊之*; 小川 雅生*
Physical Review C 76(6), p.061301_1-061301_5(2007) ; (JAEA-J 03994)
 244Pu標的と162MeVの18Oビームによる(18O, 16O), (18O, 17O)中性子移行反応を用いたインビームγ線分光により、246Pu152245Pu151の脱励起γ線の測定に初めて成功した。246Pu152については基底状態バンドをスピン12まで確立し、慣性能率の系統性から中性子数N = 152の変形閉殻が94Pu同位体では消滅していることを見いだした。245Pu151の脱励起γ線の測定によりN = 152を挟む中性子軌道のエネルギー差が小さくなっていることを確認した。この結果からも94Pu同位体でN = 152の変形閉殻が消滅していることを裏付けた。

36000716
Origin of spin-orbit splitting for monolayers of Au and Ag on W(110) and Mo(110)
Shikin, A. M.*; Varykhalov, A.*; Prudnikova, G. V.*; Usachov, D.*; Adamchuk, V. K.*; 山田 洋一; Riley, J. D.*; Rader, O.*
Physical Review Letters 100(5), p.057601_1-057601_4(2008) ; (JAEA-J 03996)
 スピン-軌道相互作用は、強磁性体や、外部磁場を必要とせず、電子状態のスピン分裂を生じさせる。われわれはW(110)上のAu及びAgの単原子層において、顕著にスピン分裂した表面電子状態を作製した。スピン分裂は表面単原子層を構成する元素の原子量によらず、基板に依存することを明らかにした。本研究では、角度分解、及びスピン分解の光電子分光によるフェルミ面計測から、表面原子層の電子状態が、スピンに依存した基板-原子層の電子状態の混成を介して、スピン分極に至ることを明らかにした。

36000717
Role of pressure gradient on Intrinsic toroidal rotation in tokamak plasmas
吉田 麻衣子; 鎌田 裕; 竹永 秀信; 坂本 宜照; 浦野 創; 大山 直幸; 松永 剛; JT-60チーム
Physical Review Letters 100(10), p.105002_1-105002_4(2008) ; (JAEA-J 03997)
 核融合炉の実現のためには、高閉じ込めで、かつ高圧力を有するプラズマを維持する必要がある。プラズマの閉じ込め性能は輸送特性で、圧力の限界はMHD安定性で決まっている。最近、プラズマ回転分布が、この輸送や安定性を決める重要な役割をしていることがわかってきた。本研究では、JT-60のtype-I ELMy Hモードプラズマにおいて、摂動輸送解析を用いることで、トロイダル回転速度分布決定機構における運動量輸送と圧力勾配の役割を発見した。圧力勾配が大きい領域では、摂動輸送で求めた輸送係数から予想される回転分布と実際の分布は一致していない結果から、プラズマの圧力勾配はプラズマ電流と逆方向の回転を引き起こす(自発回転)ことを見いだした。また、運動量輸送係数の非拡散項である対流速度は、構造的にも局所的にもトロイダル回転シアに関係していることがわかった。

36000718
Observation of the 3n evaporation channel in the complete hot-fusion reaction 26Mg + 248Cm leading to the new superheavy nuclide 271Hs
Dvorak, J.*; Brüchle, W.*; Chelnokov, M.*; Düllmann, Ch. E.*; Dvorakova, Z.*; Eberhardt, K.*; Jäger, E.*; Krücken, R.*; Kuznetsov, A.*; 永目 諭一郎; Nebel, F.*; 西尾 勝久; Perego, R.*; Qin, Z.*; Schädel, M.*; Schausten, B.*; Schimpf, E.*; Schuber, R.*; Semchenkov, A.*; Thörle, P.*; Türler, A.*; Wegrzecki, M.*; Wierczinski, B.*; Yakushev, A.*; Yeremin, A.*
Physical Review Letters 100(13), p.132503_1-132503_4(2008) ; (JAEA-J 03998)
 248Cm+26Mg反応で生成する108番元素ハッシウム(Hs)同位体の生成断面積を迅速気相化学分離装置COMPACTを用いて測定した。入射重イオン26Mgのエネルギーを変化させ248Cm(26Mg, xn)反応の励起関数を求めたところ、比較的軽い重イオンとアクチノイドターゲットを組合せた反応、いわゆるHot-fusion反応での3n蒸発過程が初めて観測された。この蒸発過程で生成する新しい超重核種271Hsを同定することに成功した。

36000719
Tunable high-energy ion source via oblique laser pulse incident on a double-layer target
守田 利昌; Esirkepov, T. Z.; Bulanov, S. V.; Koga, J. K.; 山極 満
Physical Review Letters 100(14), p.145001_1-145001_4(2008) ; (JAEA-J 03999)
 レーザー加速による高品質プロトンビーム生成において、ターゲットに対してレーザーを斜めに入射した場合について3次元PICシミュレーションにより調査した。ターゲットは重い原子の表面に薄く水素を配置したダブルレイヤーターゲットを用いた。斜め照射において生成プロトンのエネルギーはある角度で最大値を示し、その値は垂直にレーザーを入射したケースよりはるかに大きな値となることを示す。また、生成されたプロトンはターゲットの垂直方向に対して少しの角度を有しており、この角度は生成プロトンのエネルギーとターゲットの傾斜角度で表わされることを示す。

36000720
Reply to "Comment on 'Uniformization of the transverse beam profile by means of nonlinear focusing method' "
百合 庸介; 宮脇 信正; 神谷 富裕; 横田 渉; 荒川 和夫; 福田 光宏*
Physical Review Special Topics; Accelerators and Beams 11(3), p.039002_1-039002_2(2008) ; (JAEA-J 04000)
 We received the Comment on our recent publication [Y. Yuri et al., Phys. Rev. ST Accel. Beams 10, 104001 (2007)] on the nonlinear focusing method to uniformize the transverse beam profile. The Comment describes that the development done at Los Alamos National Laboratory (LANL) included our work. In order to clarify the difference of outcomes between our recent work and the LANL work outlined in the Comment, we briefly summarize the former progress of the research and development on beam uniformization by means of the nonlinear focusing method, and insist on the newness of our recent publication in this Reply.

36000721
Optimization of the viewing chord arrangement of the ITER poloidal polarimeter
山口 太樹; 河野 康則; 藤枝 浩文; 栗原 研一; 杉原 正芳*; 草間 義紀
Plasma Physics and Controlled Fusion 50(4), p.045004_1-045004_15(2008) ; (JAEA-J 04001)
 国際熱核融合実験炉(ITER)における安全係数の分布計測にポロイダル偏光計測装置が用いられる。ポロイダル偏光計測装置は、レーザー光をプラズマ中に入射し、透過レーザー光の偏光面のファラデー回転角を検出するものであるが、ポート部の幾何学的な形状からレーザー視線数は15チャンネル程度に制限される。本研究では、十分な精度で安全係数分布を得るため、限られた視線数の最適配置に関する研究を行った。最外殻磁気面形状とポロイダル偏光計測装置のみの情報から安全係数分布を同定可能な平衡再構築コードを開発し、ITER運転シナリオとして予測されている平衡に対し再構築を行った。その結果、誘導運転シナリオの燃焼フェーズを解析対象とした場合、プラズマ周辺に視線がない場合には磁気軸での安全係数に35%の誤差が生じたが、上部ポートの視線をプラズマ周辺領域に配置することにより、3%の誤差にまで改善した。この視線配置を非誘導運転シナリオの燃焼フェーズ及び誘導運転シナリオのプラズマ電流3.5MAフェーズに適用した場合にも、大きな精度の劣化が生じないことを示した。

36000722
Core characteristics of fast reactor cycle with simple dry pyrochemical processing
池上 哲雄
Progress in Nuclear Energy 50(2-6), p.206-211(2008) ; (JAEA-J 04002)
 高速炉使用済燃料を複合処理燃料サイクルの簡易熱処理に適用した場合の高速炉炉心概念と炉心核特性の検討を行った。核特性解析の結果、簡易熱処理を経た燃料が炉心への装荷燃料の半分を占める大型炉心の場合、高速炉の使用済燃料を1回リサイクルし、径方向ブランケットなしで増殖比1.01を達成可能なことが判明した。リサイクル燃料として、ウラン酸化物の軽水炉使用済燃料,混合酸化物の軽水炉使用済燃料、及び高速炉使用済燃料の3者について比較を行い、リサイクル燃料はそれらの初期燃料組成にかかわらず、リサイクル終了後は平衡状態に達すること、また、リサイクルした高速炉使用済燃料は3者のなかで放射化量が最も低く、発熱量は他の2者と同じレベルであった。

36000723
On a fast reactor cycle scheme that incorporates a thoria-based minor actinide-containing cermet fuel
逢坂 正彦; 高野 渉*; 山根 義宏*; 三澤 毅*
Progress in Nuclear Energy 50(2-6), p.212-218(2008) ; (JAEA-J 04003)
 トリアベースのマイナーアクチニド含有サーメット燃料を組み込んだ高速炉サイクル概念について述べる。このサーメット燃料はThとマイナーアクチニド酸化物固溶体とMo不活性母材からなる。専用のサイクルプロセスからなる小さな独立したサイクル内で使用される。サーメット燃料は粉末冶金に基づく簡易な方法により作製される。サーメット燃料の再処理として二段階の方法が提案された。それはMo不活性母材の事前除去とアクチニドの回収からなる。模擬サーメット燃料を用いたMo不活性母材の事前除去のための予備試験が行われた。これは室温で硝酸を用いて溶解するものである。試験の結果、Mo不活性母材はほとんど溶解した一方、酸化物は溶けなかった。サーメット燃料を装荷した高速炉炉心の燃焼特性が核的計算コードを用いて評価された。Mo不活性母材を内側及び外側炉心領域で非均質な組成とすることにより、効率的な核変換と出力密度の平坦化ができることがわかった。本サーメット燃料は高速炉用高性能核変換デバイスとして有望なものとなる可能性がある。

36000724
Extraction separation of trivalent minor actinides from lanthanides with hydrophobic derivatives of TPEN
松村 達郎; 竹下 健二*
Progress in Nuclear Energy 50(2-6), p.470-475(2008) ; (JAEA-J 04004)
 分離変換技術への適用を目的として、TPEN誘導体を応用した新規なMA/Ln分離プロセスの開発を進めている。TPENは六座配位子であり、金属イオンを包み込む包接型の配位子である。TPENは良好なAm(III), Ln(III)分離性能を有しており、MA分離プロセス構築の可能性を持っている。しかし、実プロセスへの適用性の観点からは重要な問題があり、特にTPENが水溶性であることは、処理溶液のAm(III)の濃度が高い場合には非常に大きな問題となりうる。本研究では、TPENの疎水性をアルキル基の導入によって向上させ、Am(III), Eu(III)分離性能への効果を確認した。疎水化誘導体の合成を試み、3種類の誘導体の合成に成功した。これらの誘導体について、Am(III)とEu(III)の抽出性能と分離性能を実験によって評価した。これらの誘導体のうち、tpdbenは良好な分離性能を示し、SFAm/Euは最大で35であった。

36000725
A New back-end cycle strategy for enhancing separation, transmutation and utilization of materials (Adv.-ORIENT cycle)
小澤 正基; 鈴木 達也*; 小山 真一; 赤塚 洋*; 三村 均*; 藤井 靖彦*
Progress in Nuclear Energy 50(2-6), p.476-482(2008) ; (JAEA-J 04005)
 放射姓物質の分離・核変換・利用研究を「三位一体」で進めるための研究開発戦略(先進オリエントサイクル)を提案する。研究の意義/目的,目標,研究手法など、構想の全容を概説し、3級ピリジン樹脂を用いたIXC法によるf-元素(Am, Cm, Pu, Ln他)の精密分離・個別回収,極性希釈剤による同時一括抽出分離,触媒的電解採取法(CEE)による希少金属FP(Tc, Ru他)の電解分離と水素エネルギー利用,固体吸着法によるSr, CsのIXC分離と固定,利用,レーザー化学法等による長寿命FP(Cs, Sn他)の同位体分離研究など、先進オリエントサイクルを構成する主要要素技術の研究開発の現状と計画を述べる。

36000726
Long-term Nuclear Knowledge Management (NKM) of Innovative Nuclear Energy Systems (INES); A Case study of the Japan Atomic Energy Research Institute (JAERI)
柳澤 和章; Bezdek, R. H.*; 澤田 哲生*
Progress in Nuclear Energy 50(2-6), p.683-687(2008) ; (JAEA-J 04006)
 原子力機構45年の軽水炉研究活動に投資された資金は研究費が4.2十億ドル、人件費が3.4十億ドル(34,718人口)である。この間旧日本原子力研究所から国民に還元された資金は6.3十億ドルであり、費用対効果は1.5となる。原子力機構は一種の国立研究機関であってリスクが高くて高度な業務をこなしてきたことを鑑みるとこの数値は十分に高いものと看做せる。将来的には、高温ガス炉発電による売上げは全体で年間0.36十億ドル、原子力機構の研究開発貢献度は年間0.018十億ドルとなる。将来予測では、2050年に核融合炉が商業化された後は2050∼2100年の間に1,687十億ドルの電力売上げが予想されるが現行の軽水炉よりも大きな売上げである。しかし、予測に際しては多くの不確実な前提条件が設けられている。長期にわたって革新的な原子力エネルギーシステムを構築していくためには、本研究で示したように持続性のあるシナリオを打ちたて長期に壮健な原子力知識管理を行っていく必要がある。

36000727
Physics and biology of protein
郷 信広
Progress of Theoretical Physics Supplement (170), p.198-213(2008) ; (JAEA-J 04007)
 This is a record of my lecture given at the occasion of Yukawa-Tomonaga Centennial Symposium. At first I will mention very briefly how Yukawa contributed to the development of biophysics in Japan. Then I will be concerned with the relationship between physics and biology by discussing various aspects of protein. How far and in what sense can physics approach the essence of protein? In what aspects are something beyond physics important?

36000728
Polyvinyl butyral films containing Leuco-Malachite Green as low-dose dosimeters
Hoang, H. M.*; Solomon, H. M.*; 田口 光正; 小嶋 拓治
Radiation Physics and Chemistry 77(4), p.457-462(2008) ; (JAEA-J 04008)
 数百Gyレベルの低線量域の測定のため、ロイコマラカイトグリーン(LMG)含有ポリビニルブチラル(PVB)フィルムを開発した。このフィルムは、可視領域における顕著な色変化を示し、また、抱水クロラールあるいは2,2,2-トリクロロエタノールなどの化合物を添加することにより吸収線量に対する感度が高くなった。このフィルムは、例えば食品照射や環境放射線防護などにおける線量測定に有用と考えられる。

36000729
Application of voxel phantoms and Monte Carlo method to whole-body counter calibrations
木名瀬 栄; 高木 俊治*; 野口 宏; 斎藤 公明
Radiation Protection Dosimetry 125(1-4), p.189-193(2007) ; (JAEA-J 04009)
 全身カウンタの校正において、ボクセルファントムとモンテカルロ法を用いた数学的校正手法の適用を行った。ボクセルファントムとモンテカルロ法を用いた全身カウンタの数学的校正手法による結果は、実測による校正結果と良い一致を示し、その妥当性が確認された。

36000730
Development of a quasi-monoenergetic neutron field using the 7Li(p,n)7Be reaction in the energy range from 250 to 390 MeV at RCNP
谷口 真吾*; 中尾 徳晶*; 中村 尚司*; 八島 浩*; 岩元 洋介; 佐藤 大樹; 中根 佳弘; 中島 宏; 糸賀 俊朗*; 民井 淳*; 畑中 吉治*
Radiation Protection Dosimetry 126(1-4), p.23-27(2007) ; (JAEA-J 04010)
 250∼390MeVのエネルギー領域における7Li(p,n)7Be反応を用いた準単色中性子場の開発を大阪大学核物理研究センター(RCNP)で行った。250, 350, 392MeV陽子入射による10mm厚Liターゲットからの0°方向に生成された中性子を10cm×12cm,長さ150cmのコリメータを通して100m長さのTOF室へ導いた。中性子エネルギーは直径,厚さが12.7cmのNE213液体有機シンチレータを用いて飛行時間法で導出した。また、生成された7Beからの478keVのγ線測定を用いて絶対ピーク中性子収量を導出した。高エネルギー領域の中性子を用いた実験データは非常に少ないので、この中性子場は大変有効であり、既に中性子遮蔽実験やNE213の応答関数測定に用いられている。また、この中性子場を用いて、中性子断面積測定や照射効果の検証なども計画されている。

36000731
DARWIN: Dose monitoring system applicable to various radiations with wide energy ranges
佐藤 達彦; 佐藤 大樹; 遠藤 章; 山口 恭弘
Radiation Protection Dosimetry 126(1-4), p.501-505(2007) ; (JAEA-J 04011)
 高エネルギー加速器施設の作業環境,環境中のバッグランドに存在する中性子,光子,ミューオンによる線量を高感度に測定できる線量測定システムDARWIN(Dose monitoring system Applicable to various Radiations with WIde energy ranges)を開発した。DARWINは、以下に示す4つの特徴を有する。(1)1台で幅広いエネルギーかつ複数の放射線による線量を同時にリアルタイムで測定可能,(2)高精度及び従来の中性子モニタと比べて10倍以上の高感度,(3)ユーザーフレンドリーなインターフェイスによる高い操作性,(4)軽量。本論文では、DARWINの測定原理に関して詳細に説明するとともに、幾つかの加速器施設において行った応答特性試験結果について述べる。

36000732
Determination of deuterium location in Ba3Ca1.18Nb1.82O8.73
下山 智隆*; 東條 壮男*; 川路 均*; 阿竹 徹*; 井川 直樹; 石井 慶信*
Solid State Ionics 179(7-8), p.231-235(2008) ; (JAEA-J 04012)
 Ba3Ca1.18Nb1.82O8.73中のプロトン位置を明らかにするため300Kにおいて中性子回折実験を行った。得られた回折データをリートベルト法及び最大エントロピー法によって解析した結果、本試料は空間群がFm-3mである立方晶構造であり、酸化物イオンは24eサイトに重水素は96jサイトに位置することがわかった。その距離は0.072nmであり、一般的なOD間距離に比べて短くなっている。これは結晶中へのプロトンの導入によって結晶の配列に一部歪みが生じ、重水素はCa/Nbサイト方向へ、酸素は重水素とは逆方向へ少しシフトしているためと考えられる。

36000733
Nuclear field shift effect of chromium(III) in repeated extraction using a crown ether
藤井 俊行*; 鈴木 大輔; 山名 元*
Solvent Extraction and Ion Exchange 26(2), p.100-112(2008) ; (JAEA-J 04013)
 ジシクロヘキサノ-18-クラウン-6を抽出剤として用いた連続抽出法により、クロムの同位体を分離した。この実験系は同位体効果を水相に蓄積するように設計されたものである。約2週間の長期的な抽出実験を行い、抽残水相のクロム同位体比を、トータルエバポレーション法を用いた表面電離質量分析法により精密に分析した。質量に依存しない同位体分別の存在が確認された。この質量に依存しない同位体分別挙動は、バッチ抽出法を用いて得られた結果と一致した。本研究の連続抽出系において、同位体のマスバランスは保たれていた。本研究により得られたクロムの同位体効果は、Bigeleisenが1996年報告している同位体効果の理論によって説明可能であり、その質量に依存しない同位体効果はフィールドシフト効果であると考えられる。

36000734
原子力の持続的発展のための基盤強化の取り組み
中塚 亨
電気評論 92(7), p.32-37(2007) ; (JAEA-J 04015)
 我が国の原子力利用が,エネルギー安定供給や産業の振興,国民の生活水準の向上に寄与し、今後も人類社会の持続可能な発展に貢献していくためには、安全確保を大前提に、原子力研究開発ポテンシャルを中長期に渡って維持していくことが必須である。本稿では、人材育成,施設整備,知財管理など我が国における原子力基盤強化のための原子力機構の役割とそのための取り組みについて、概要を紹介する。

36000735
ウラン資源の見通しと課題
小林 孝男
電気評論 92(11), p.16-20(2007) ; (JAEA-J 04016)
 ウランスポット価格が乱高下しているが、小規模の取引で決まるスポット価格は必ずしもウラン需給状況の実態を反映しておらず、ウラン資源の長期的将来を見通すためには、原子力発電容量の見通し、世界のウラン資源量,探鉱・開発動向,二次供給ウランなどの本質的な要因を分析することが必要である。レッドブックやWNAによると、原子力発電容量は今後2030年頃まで着実に成長すると予想されており、2025年のウラン需要は現在の6.7万tU/年から10万tU/年に増大すると見込まれている。レッドブック2005は世界の発見ウラン資源量は474万tUと報告しており、量的には十分であるが、さらなる資源発見の努力が必要である。現在、ウラン探鉱開発活動は世界中で活発に行われており、2015年頃までにはウラン需要と同じ規模まで生産容量が拡大する見通しである。しかし、実際の生産規模は生産容量の9割以下なので、当分のあいだ二次供給ウランが必要な状況は継続する。2020年以降は次々と主要な既存鉱山の鉱量枯渇が始まるので、将来を見通して新しい鉱床を追加発見し、タイムリーにウラン資源開発を行っていくことが不可欠である。

36000736
日本原子力研究開発機構における研究開発の現状
経営企画部
電気評論 93(2), p.73-91(2008) ; (JAEA-J 04017)
 独立行政法人日本原子力研究開発機構が日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構が2005年10月1日に統合することにより設立されてから2年が経過し、第1期中期目標期間(2005年10月1日∼2010年3月31日)の半ばに差し掛かった。我が国の総合的原子力研究開発機関として、世界的にその重要性が再認識されつつある原子力エネルギーに関する研究開発を始めとして、原子力による新しい科学技術や産業の創出を目指し、基礎研究から応用研究に至るまで幅広い研究開発を行っている。原子力機構における2007年度の研究開発の主な成果を中心に、現状と動向を紹介する。

36000737
グリッド環境利用のためのアプリケーションプログラミングインタフェースの研究開発
鈴木 喜雄
FUJITSUファミリ会論文集(Internet) , 15p.(2008) ; (JAEA-J 04018)
 「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクトにおいて、ITBL(IT Based Laboratory)プロジェクトの資産であるグリッドアプリケーションを次世代スパコンを頂点とする次世代ナショナルグリッドインフラに継承可能とし、グリッドアプリケーションの創生を醸成するため、グリッド環境利用のためのアプリケーションプログラミングインターフェース(API)を研究開発している。ITBLプロジェクトの中で開発された種々のグリッドアプリケーションのグリッド環境の利用形態を分析し、APIの機能を体系的に定義することにより、APIのプロトタイプを開発した。その結果、従来よりも簡便にグリッド環境を利用可能なシステムやツールを開発すること、システム及びツールの変更なく異なるグリッド環境を利用すること、グリッドミドルウェアの変更なく異なるグリッド環境を接続することが可能となった。

36000738
地層処分研究開発の最近の進捗状況
河田 東海夫
原子力システムニュース 18(4), p.18-25(2008) ; (JAEA-J 04019)
 地層処分研究開発の最近の進捗状況について、事業段階における研究開発の全体的な枠組みを概説するとともに、「第2次取りまとめ」以降に実施してきた研究開発の内容を、深地層の科学的研究と処分場の工学技術の観点から述べた。

36000739
使いやすいJ-PARC利用システムの構築を目指して
池田 裕二郎
波紋 18(1), p.27-31(2008) ; (JAEA-J 04020)
 J-PARC利用運転を1年以内に開始するにあたり、利用システムにかかわる基本方針,課題審査,利用料金,成果の取り扱い,知的財産保護などについて包括的に検討を進めている。本稿では、現時点までにまとめられた利用プログラムの概念を紹介する。

36000740
ネットワークによる原子力教育の新しい試み
長谷川 信; 中西 孝*; 藤井 靖彦*; 小高 知宏*
放射化学ニュース (17), p.29-35(2008) ; (JAEA-J 04021)
 近年の原子力人材育成に関する諸課題の解決は、横断的な教育環境のネットワーク化が糸口になる可能性がある。その実践的な試みとして、原子力機構と連携大学院を締結している金沢大学,東京工業大学及び福井大学の4者間がネットワークで結び、新しい教育体系による原子力人材育成の試みとして「原子力教育大学連携ネットワーク」という名称で推進している。本ネットワークの活動は、(1)遠隔講義による共通講座の実施,(2)実学としての学生実習の実施,(3)ネットワークの連携・協力強化の推進という、3つのミッションで進められている。また、原子力教育のネットワーク化は、原子力機構の中期目標として掲げられている重要なミッションの一つであり、今後とも各大学と緊密な協力・連携のもとネットワークの充実を図り、原子力人材育成で抱えている諸課題の解決のため、模索していく必要がある。

36000741
長崎原爆により放出されたプルトニウムの時間的及び空間的分布
國分 陽子
放射化学ニュース (17), p.49-50(2008) ; (JAEA-J 04022)
 本記事は、学位論文の要約を示したものである。学位論文では、放出源の情報を持つプルトニウム同位体比、240Pu/239Pu比を用いて原爆由来成分と核実験由来成分を区別し、長崎周辺に蓄積する原爆由来成分のみの分布を明らかにすることを試みた。西山貯水池の堆積物に記録された長崎原爆由来のPu及び137Csの蓄積を時系列に沿って解析した。同位体比及び濃度の深度分布から、原爆由来のPu及び137Csは原爆直後急激に蓄積している様子が見られた。また、核実験由来の成分も検出されたが、現在でも貯水池に流れ込むPuの大部分は原爆由来であり、貯水池周辺の土壌から供給されていた。爆心地周辺の表層土壌に蓄積する原爆由来Puの分布を明らかにした。爆心地半径約10km内では、原爆由来のPuが爆心地東側の地域に蓄積し、さらに遠方まで蓄積している可能性が見いだされた。調査範囲を東側に広げると、原爆由来のPuは、島原半島、さらに熊本県阿蘇山付近まで及んでいることが明らかとなった。以上、240Pu/239Pu比からPuの放出起源の特定を行い、原爆由来のPuの時間的,空間的分布に関する新しい知見を得た。

36000742
土壌中からのカドミウムの除去技術(ファイトレメディエーション)の実用化を目指した研究におけるポジトロンイメージング技術の貢献
中村 進一*; 茅野 充男*; 藤巻 秀; 鈴井 伸郎; 石岡 典子; 河地 有木; 松橋 信平
放射線と産業 (117), p.9-14(2008) ; (JAEA-J 04023)
 食の安全を脅かす要因の一つに、人体にとって有害な物質であるカドミウムの農作物への蓄積がある。農作物へのカドミウムの蓄積を抑制するためには、高等植物におけるカドミウムの長距離輸送機構を解明し、それらを制御する必要がある。しかし、これまでの研究では植物におけるカドミウムの長距離輸送のメカニズムは十分に明らかになっていない。そこでわれわれは、プラナー型ポジトロン放出核種画像化システム(PETIS)を用いて、高等植物におけるカドミウムの吸収・移行・蓄積の動態を画像化し、それらを解析することにより、その機構の解明を目指した。本稿では本研究における近年の成果について報告する。

36000743
国際原子力情報システム(INIS)データベースのインデクシング方針
米澤 稔
情報の科学と技術 58(4), p.178-183(2008) ; (JAEA-J 04025)
 国際原子力情報システム(International Nuclear Information System: INIS)は、国際原子力機関(IAEA)加盟国と関連する国際組織が協力して原子力の平和目的のための科学技術情報の流通を促進するために、1970年に設立された。INIS加盟国は原子力関連の文献を収集・編集してIAEA/INIS事務局に提供し、INIS事務局はINISデータベースを作成している。INISでは、効率的な情報検索のためにインデクシングを行っている。INISメンバーの間でインデクシングの一貫性を保つことは重要であり、インデクシングに際してはインデクシングマニュアルに従い、タイトルと抄録を中心に行っている。本稿では、INISにおけるインデクシングの原則と個々の分野におけるインデクシングの規則について述べる。

36000744
アブストラクトを用いた原子分子物理学分野の論文分類支援システムの設計と実装
柏木 裕恵*; 高田 雅美*; 佐々木 明; 城 和貴*
情報処理学会論文誌; 数理モデル化と応用 48(SIG15), p.189-198(2007) ; (JAEA-J 04026)
 原子分子データベースの構築に必要となる、科学論文から原子分子データを収集する過程の自動化支援の手法の研究を行った。インターネットなどで閲覧可能な論文のアブストラクトの中から、これまでのデータベース活動で収集された論文のアブストラクトの集合を教師データとする機械学習手法(学習ベクトル量子化法:LVQ)を用い、原子分子データを含む論文を抽出する方法について、原子分子物理分野の固有表現,専門用語など論文の特徴をよく表すと予想された情報を活用して、分類の性能の評価を行った。最適化の結果、精度82%,再現率13%が得られたが、原子分子データを含む論文が全論文中の1%以下であることから、実用化のためには適切な専門用語辞書を構築するなどによってさらに精度を高める必要があると考えられる。

36000745
イオンビーム照射ポリフッ化ビニリデン薄膜のエッチング挙動; エッチング前処理・照射イオン効果の検討
八巻 徹也; Rohani, R.*; 越川 博; 高橋 周一; 長谷川 伸; 浅野 雅春; Voss, K.-O.*; Neumann, R.*; 前川 康成
高分子論文集 65(3), p.273-276(2008) ; (JAEA-J 04027)
 ナノ構造制御電解質膜に関する研究の一環として、ポリフッ化ビニリデンのイオン穿孔形成に対し、照射イオン種とエッチング前処理の効果を調べた。イオン照射PVDF膜を-84, 25, 120℃の異なる温度で空気中に保持した後、80℃, 9MのKOH水溶液で化学エッチングした。コンダクトメトリー法を用いた検討の結果、高温で30日,90日間加熱することにより、未照射部(バルク)のエッチングに影響を与えずにトラックエッチング速度を高められることが示された。同様の効果は高LETのGeV級イオンビームを照射したときにも確認され、両手法によりエッチング感度の向上が可能であった。

36000746
中性子ラジオグラフィによるコンクリートのひび割れ部における水分挙動の可視化及び定量化に関する研究
兼松 学*; 野口 貴文*; 丸山 一平*; 飯倉 寛
コンクリート工学年次論文集 29(1), p.981-986(2007) ; (JAEA-J 04028)
 非破壊可視化・定量化技術の一つである中性子ラジオグラフィを用い、コンクリートのひび割れ中の水分挙動の可視化及び定量化を目的とした基礎的な研究を行った。ペーストを用い本手法の定量精度確認した後、ひび割れ部の水分挙動の可視化を試みた。その結果、ひび割れ部及びマトリクス中に移動する水分挙動を高解像能で可視化・定量化可能であることが明らかとなった。

36000747
光グラフト重合を利用したフッ素系高分子電解質膜の開発
浅野 雅春; Chen, J.; 前川 康成; 吉田 勝
33(2), p.63-69(2008) ; (JAEA-J 04029)
 ポリテトラフルオロエチレンに代表されるフッ素系高分子の場合、紫外線によってフッ素原子が引き抜かれ、グラフト重合の開始に必要な炭素ラジカルを形成するだけのエネルギーを持たないため、光グラフト重合は不可能とされていた。上述の課題を解決するため種々の検討を重ねたところ、水と溶媒の混合系に疎水性のビニルモノマーを懸濁させ、得られたモノマー溶液中にフィルムを浸漬した状態で紫外線を照射したところ、光グラフト重合が起こることが明らかになった。このグラフト膜をスルホン化した電解質膜の膜厚方向のプロトン伝導度を測定したところ、低グラフト率にもかかわらずナフィオンを凌駕するプロトン伝導性能を発現したことから、効率的にグラフト鎖が膜を貫通したことが確認できた。この結果は、膜内に分布しているスルホン酸基中の硫黄元素のX線マイクロアナライザーによる観察からも示唆された。これらの結果をγ線グラフト法との比較で検討し、総説としてまとめた。

36000748
放射線グラフト重合法による膜の改質が可能にする抽出試薬担持材料の作製
浅井 志保
33(2), p.70-77(2008) ; (JAEA-J 04030)
 特定の金属化学種と相互作用するように分子設計された抽出試薬を用いることによって、多孔性高分子に高い金属選択性を与えることができる。これまで、抽出試薬を保持した多孔性膜を用いる分離法が数多く考案されてきた。しかしながら、材料の耐久性や分離速度の点で課題が残されている。そこで、ポリエチレン製の多孔性中空糸膜を基材膜とし、放射線グラフト重合法によって疎水性の高分子鎖を細孔表面に付与して、抽出試薬の担体として用いることを提案した。本解説では、高分子鎖に疎水基を持つ官能基を導入し、さまざまな抽出試薬を安定に担持する方法について紹介した。例えば、bis(2-ethylhexyl)phosphate(以下、HDEHP)を、オクタデシルアミノ基の導入によって疎水化したグラフト鎖へ担持すると、グラフト鎖にHDEHPが緩やかに束縛されることによって、本来の抽出性能を損なうことなく、しかも液相に漏出しない安定な担持構造を形成した。また、モデル金属として用いたイットリウムの水溶液を膜に高速で透過させた場合(膜内の滞留時間約4秒)でも、回収率100%を達成し、高速処理を実証できた。

36000749
V添加10Crフェライト鋼におけるラス境界析出物の3D電子線トモグラフィー観察
光原 昌寿*; 池田 賢一*; 波多 聰*; 中島 英治*; 若井 隆純
まてりあ 46(12), p.800(2007) ; (JAEA-J 04031)
 Vを添加した10Crフェライト系耐熱鋼において、ラス組織安定化に有効なラス境界上析出物に注目し、その元素分析と3次元形態観察を行った。その結果、塊状とフィルム状の2種類の異なる組成の析出物がラス境界に生成しているが、後者の方が被覆率が高いことがわかった。このような高被覆性析出物は、クリープ変形中のラス組織の回復抑制に有効であり、V添加によるクリープ強度向上の主要因と推察される。

36000750
超高温ガス炉(VHTR)の炉心概念設計; マルチホール型燃料の採用による炉心高度化
大橋 一孝; 西原 哲夫; 國富 一彦; 中野 正明*; 田沢 勇次郎*; 岡本 太志*
日本原子力学会和文論文誌 7(1), p.32-43(2008) ; (JAEA-J 04032)
 950℃もしくはそれ以上の高温の原子炉出口温度を目指す、超高温ガス炉(VHTR)の開発に関する関心が世界的に高まっており、GIF(第4世代原子炉システム国際フォーラム)においても、VHTRが候補炉型の一つとして取り上げられている。日本原子力研究開発機構においても、VHTRを用いた電力-水素併産プラントであるGTHTR300Cに関する開発を開始した。GTHTR300Cの研究では、出口温度950℃というVHTRの条件において、高温工学試験研究炉(HTTR)で実績のあるピンインブロック型燃料を採用した炉心での基本的な成立性の見通しを得たが、一方で、例えば1次系のメンテナンス時における作業員の被ばく線量低減の観点からの、炉心性能のさらなる向上も求められる結果となった。本論文では、マルチホール型燃料体による出口温度950℃の炉心概念の構築を行い、メンテナンス線量に与える影響の検討を行った結果について報告する。後者については、GTHTR300に関して従来得られていた結果と比較してよりメンテナンス性に優れていることを示す。

36000751
加速器駆動核変換システムの技術開発におけるビーム窓熱流動試験
林 健一*; 小野 幹訓*; 菊地 賢司; 徳永 典也*; 北野 照明*; 大井川 宏之
日本原子力学会和文論文誌 7(1), p.44-57(2008) ; (JAEA-J 04033)
 加速器駆動核変換システムは、マイナーアクチニドと長寿命核分裂生成物を安定核又は短寿命核に変換することを狙っている。このシステムにおけるビーム窓は、加速器と原子炉との境界要素であり、鉛ビスマス流動条件下での熱伝達特性の評価が重要である。そこで、ビーム窓周りの熱流動実験を行った。一つは水を使った流動実験で、粒子法による速度場測定を行った。もう一つは鉛ビスマスを使った熱流動実験である。得られた結果より、ビーム窓周りの熱伝達特性を表す実験式を導出した。数値計算によるシミュレーションを行い、モデリングにより平均熱伝達特性を表すことが可能となった。しかし、局所熱伝達特性は、空間的時間的に不安定で、特に流れの停滞域では変動が見られ、数値計算による再現は今後の課題である。

36000752
二酸化硫黄ガスを利用した水電解水素製造装置の開発
中桐 俊男; 八巻 徹也; 浅野 雅春; 堤 泰行*
日本原子力学会和文論文誌 7(1), p.58-65(2008) ; (JAEA-J 04034)
 亜硫酸を利用した水電解水素製造は、低電力消費の水素製造技術として魅力的であり、原子力プラントの熱を利用した熱電併用水素製造プロセス用として研究されてきた。本研究では、二酸化硫黄ガスを利用した水電解セルの水素製造能力、及び、複数の陽イオン交換膜の二酸化硫黄クロスオーバー抑制能力を実験的に調査した。

36000753
米国の軽水型原子力発電所における安全弁・逃がし安全弁の設定点変動事例の傾向分析
渡邉 憲夫
日本原子力学会和文論文誌 7(1), p.74-84(2008) ; (JAEA-J 04035)
 1980年代初頭から、米国においては、安全弁や逃がし弁の開動作に対する設定点の変動について数多くの設置者事象報告書(LER)が出されている。米国原子力規制委員会(NRC)は、当該問題に関して多くの規制関連書簡を発行し、また、産業界では問題の解決を図るための努力を行ってきた。しかし、近年、NRCスタッフは、2001年から2006年8月までの間に70件以上のLERにおいて、安全弁や逃がし弁が設定点の許容範囲に入っていないという事例を取り上げていることに注目した。そこで、本研究では、BWRの逃がし安全弁(SRV),PWRの加圧器安全弁(PSV)及び主蒸気安全弁(MSSV)の設定点変動に関して、2000年から2006年の期間におけるLERをレビューし、原因及び変動幅についてその傾向を調べた。その結果、SRVとMSSVについては、設定点の高い側への変動に対する主たる原因がディスクとシートの固着によるものであり、これが原因となる場合には設定点の変動幅も大きくなる傾向にあることが明らかとなった。一方、PSVについては、その原因が特定されていないものが多いが、変動幅は概して小さい傾向にある。

36000754
リスク情報を活用した臨界安全評価に関する国内外の動向
玉置 等史; 内藤 俶孝*; 鈴木 忠和*; 三橋 雄志*
日本原子力学会誌 50(2), p.97-102(2008) ; (JAEA-J 04036)
 近年、我が国では、原子力施設の潜在的危険性(リスク)を定量的に評価することにより得られるリスク情報を活用した安全規制導入の検討や安全管理へのリスク情報の反映方法の検討が進められている。安全規制にリスク情報を活用することにより、規制の合理性・整合性・透明性の向上、さらに効果的な規制活動が期待される。一方、海外諸国のうち、特に米国及び英国では、原子力施設すべてを対象に、リスク情報を活用した規制や管理を行うとしている。これまで、核燃料サイクル施設へのリスク情報の活用例はほとんど公開されていなかったが、2007年サンクトペテルスブルグで開催された臨界安全国際会議において、英国及び米国より核燃料サイクル施設へのリスク評価の応用研究についての報告があった。そこで、臨界安全に関する国内のリスク評価研究の現状と上記会議での報告内容を紹介する。

36000755
大強度陽子加速器計画(J-PARC)及び物質・生命科学実験施設(MLF)の概要
池田 裕二郎
日本結晶学会誌 50(1), p.2-6(2008) ; (JAEA-J 04037)
 The J-PARC project has been conducted jointly by JAERI and KEK since 2001. This paper reports an overview and current status of the project. The high intensity proton accelerator consists of a 400 MeV Linac, a 3 GeV synchrotron and 50 GeV synchrotron to deliver MW level pulsed proton beam to experimental facilities. The MW proton power will provide an advanced scientific experimental research complex aiming at making breakthroughs in materials and life science with neutron and muon, nuclear and elementary physics, etc. Regarding the project being close to its completion in 2008, this paper describes the overview of J-PARC project with emphasis of the Materials and Life Science Experimental Facility, in which the MW pulsed neutron and muon sources, are placed to provide high quality neutron and muon beams to the world wide users.

36000756
パルス中性子小中角散乱装置によるナノ構造評価の新展開
鈴木 淳市; 篠原 武尚; 高田 慎一; 奥 隆之; 鈴谷 賢太郎; 相澤 一也; 新井 正敏; 大友 季哉*; 杉山 正明*
日本結晶学会誌 50(1), p.24-28(2008) ; (JAEA-J 04038)
 中性子小角散乱法は、物質透過能力,水素などの軽元素識別能力,同位体識別能力,磁気解析能力などのほかの量子プローブにない中性子の優れた特徴を活かした数nmから数10μmに及ぶスケールの構造解析法として幅広い科学分野で利用されている。本稿は、これらの利用をさらに高い空間分解能や時間分解能で高効率に促進するためにJ-PARCに建設する世界最高性能のパルス中性子小中角散乱装置の特徴をまとめたものである。本稿は、装置の機器構成と設計概念,モンテカルロ・シミュレーションなどにより見積もられる装置の基本性能,装置性能をナノ構造評価に活かすデータ解析法の開発,ほかの装置の相補的利用の可能性の解説から構成される。

36000757
低放射化フェライト鋼における介在物と衝撃特性に及ぼすエレクトロスラグ再溶解の影響
澤畠 篤司; 谷川 博康; 榎本 正人*
日本金属学会誌 72(3), p.176-180(2008) ; (JAEA-J 04039)
 核融合炉構造材料の第一候補材である低放射化フェライト鋼F82Hにおいては、鋼中にTa系酸化物,アルミナ、及びTa酸化物とアルミナの複合酸化物が形成されており、これらが衝撃特性に悪影響を及ぼしていることがわかりつつある。F82Hにとって不純物元素であるTiを低減し高純度化することで複合酸化物は減少させることが可能だが、Ta酸化物単体やアルミナといった介在物を完全に取り除くことは現行の溶解法(VIM)のみでは困難である。そこで、本研究では脱硫や非金属介在物の除去のため用いられている二次精錬方法のエレクトロスラグ再溶解(Electroslag Remelting: ESR)を施した鋼を溶製し、F82HにとってのESRの有効性と、酸化物が衝撃特性などの機械的特性に及ぼす影響を調査した。

36000758
より良い高速増殖炉サイクル実現に向けたOR手法の活用
塩谷 洋樹
オペレーションズ・リサーチ 53(4), p.210-216(2008) ; (JAEA-J 04040)
 現在、新型の原子力発電システムである高速増殖炉(FBR)サイクルの実用化を目指したプロジェクト(FaCTプロジェクト)が開始された。要素技術開発と試験による技術実証に並行して、FBRサイクルシステムの総合評価手法開発も進行中であり、シナリオ・スタディ,DCF法,AHP,リアルオプション,サプライチェーン・マネジメント等が活用されている。FBRサイクル実用化には、長期間に渡って多くの関係者による大規模な開発が必要であり、評価手法開発にあたっても、原子力システムのモデル化や知識マネジメントが有益となるが、さらなるORの活用が期待されている。

36000759
The Effects of rhizosphere pH on Cd uptake of soybean seedlings
大矢 智幸*; 頼 泰樹*; 田野井 慶太朗*; 飯倉 寛; 中西 友子*
Radioisotopes 56(11), p.729-736(2007) ; (JAEA-J 04041)
 ダイズをpHの異なる(pH4.5: 酸性土壌条件, pH6.5: 一般的な土壌条件)カドミウム入り生育溶液(109Cd-キャリアーを加えることで生育溶液のカドミウム濃度は1μMに調整+0.2mMカルシウム)で4日間生育することにより、ダイズ幼苗のカドミウム取り込みに対する根圏pHの影響を調べた。その結果、ダイズの根におけるカドミウム濃度は、根圏pHを6.5で生育したものはpH4.5で生育したものに比して3.4倍高い値を示した。また、根表面に吸着するカドミウムの量もpH6.5ではpH4.5に比べ1.3倍高い値を示した。しかしながら、両pH条件ともに根へ高い集積を示したにもかかわらず、カドミウム高集積に誘導された生理的障害(根組織の褐色化や側根の成長阻害)はpH6.5条件の根においてのみ観察された。また、地上部の蒸散量は地上部における高集積とは関係が認められなかった。

36000760
硝酸塩がセメント水和物の溶脱挙動へ及ぼす影響
藤田 英樹*; 根岸 久美*; 大澤 勉*; 本田 明
セメント・コンクリート論文集 (61), p.262-269(2008) ; (JAEA-J 04042)
 普通ポルトランドセメントペースト硬化体を用いた通液試験により硝酸ナトリウムがセメント水和物の溶脱へ与える影響を評価した。純水に比べ1mol dm-3硝酸ナトリウム溶液を通液した場合では水酸化カルシウムの溶脱が1.5倍程度促進された。硝酸ナトリウム濃度を変えながら活量を補正し、水酸化カルシウムの平衡濃度を計算した結果、硝酸ナトリウム濃度が1mol kg-1付近でCa濃度が最大となり、純水の約1.5倍と評価され通液試験結果と整合した。試験後の供試体の物性は純水に比べ、圧縮強度の低下,劣化部の空隙率増大が起こった。硝酸ナトリウム溶液通液中は透水係数は低下し、空隙率の結果と一見矛盾するものであったが、劣化部に高濃度に存在したNaが関連している可能性が示唆された。

36000761
専門図書館を見る; シンガポールの公共図書館
池田 貴儀
専門図書館 (227), p.65-69(2008) ; (JAEA-J 04044)
 2007年9月3日(月)から9月4日(火)にかけて訪問した、シンガポールの公共図書館について紹介を行う。シンガポールでは、シンガポール国立図書館委員会が10年ごとに作成する図書館整備計画のマスタープラン「Library 2000」,「Library 2010」に基づき図書館サービスが提供される。シンガポールの公共図書館は「Library 2000」で計画された新しい図書館の建設やICタグの全面導入等のハード面の整備,マーケティング手法の導入,利用者分析を根拠とした利用者サービスの展開が行われたことで大きな発展につながった。

36000762
「JAEA Abstracts」と「JOPSS」; 機関リポジトリの先駆け
權田 真幸; 池田 貴儀; 海老澤 直美*
専門図書館 (228), p.26-32(2008) ; (JAEA-J 04045)
 日本原子力研究開発機構(原子力機構)は今日のように機関リポジトリが台頭する前から、インターネットを通じて研究開発成果を発信している。現在は「JAEA Abstracts」(研究開発成果抄録集)と「JOPSS」(JAEA Originated Papers Searching System,研究開発成果検索・閲覧システム)の2つのシステムを公開しており、図書館が運営している。本稿では、機関リポジトリの先例として、原子力機構図書館における研究開発成果発信の歴史を振り返るとともに、その現状と直面する課題を紹介する。

36000763
高クロム鋼におけるMX析出強化の長時間安定性・有効性の検討
鬼澤 高志; 安藤 勝訓; 若井 隆純; 浅山 泰; 加藤 章一
鉄と鋼 94(3), p.91-98(2008) ; (JAEA-J 04046)
 高速増殖炉の実用化に向けて、高Cr鋼を主要構造材料として採用することが検討されている。FBR構造材料には、最高使用温度約550℃におけるクリープ疲労強度が求められるほか、破断前漏洩成立の観点から靭性が要求され、また60年を超えるような長寿命プラントの寿命末期までそれら特性を安定に保つ必要がある。そのために、高Cr鋼をFBR構造材料に適用するにあたっては、添加元素や熱処理条件などを最適化することが望まれる。本研究は、FBR用高Cr鋼に最適なV, Nb添加量を提示するために、V, Nb添加量を調整した高Cr鋼に対して時効試験を実施し、時効に伴うMXを中心とした微細析出物の種類,化学組成,平均直径,形状等の変化を電子顕微鏡観察等により明らかにし、FBR使用環境を模擬した加速条件におけるMX析出強化機構の長時間安定性・有効性について検討を行った。限定された化学成分及び熱処理条件に対する結果であるが、Nb添加による析出強化機構の安定性は高くないものの、V単独添加による析出強化機構は、FBRプラントの寿命末期まで有効である可能性があることが明らかとなった。

36000764
選択硫化反応を用いる使用済核燃料再処理法
佐藤 修彰*; 佐藤 宗一
東北大学多元物質科学研究所素材工学研究彙報 63(1-2), p.69-76(2007) ; (JAEA-J 04047)
 使用済燃料から核燃料物質を回収するために、硫化法を用いた方法について試験を行った。本法を用いることにより、(1)低温での硫化反応(2)核分裂生成物のみの硫化(3)核燃料物質は酸化物として回収できることが上げられる。ウラン酸化物と希土類酸化物について二硫化炭素を用いた硫化試験を行いXRD及び熱力学的な観点から評価した。またPuO2の代替物質としてCeO2を用いた試験を行った。これらの結果、(1)ボロキシデーションにおいて、U3O8が生成し、希土類を固溶した部分はUO2であること。(2)希土類は選択的に硫化されること。(3)CeO2はUO2と似た挙動をとること。(4)硫化された希土類は選択的に溶解されること。(5)Cs, Sr,白金族についても熱力学的な観点から考察した。(6)これらの結果から選択硫化法を用いた核燃料物質の酸化物回収方法について提案した。

36000765
Absolute neutron emission measurement in burning plasma experiments
西谷 健夫; 石川 正男; 近藤 貴; 草間 義紀; 浅井 啓輔*; 笹尾 真実子*
AIP Conference Proceedings 988 , p.267-274(2008) ; (JAEA-J 04051)
 燃焼プラズマにおける中性子発生量の絶対測定は、燃焼制御のセンサーであるとともに、燃焼プラズマの物理理解の手段としても非常に有効である。本講演ではJT-60における中性子発生量絶対測定の例を紹介するとともに、ITERにおける中性子発生量絶対測定の設計とR&Dの成果を紹介する。中性子発生量の絶対測定において最も重要な課題である、絶対発生量の較正法についても述べる。

36000766
Development in diagnostics application to control of advanced tokamak plasma
小出 芳彦
AIP Conference Proceedings 988 , p.413-419(2008) ; (JAEA-J 04052)
 経済性の高いDEMO炉の設計では、ブートストラップ電流割合と規格化ベータ値がともに高い、定常高性能プラズマの実現が想定されている。このような高性能プラズマを、計測器を活用した制御で安定に保持する技術開発が世界のトカマク装置で進められている。本講演ではその開発の現状を述べる。一例として、JT-60では電流分布計測に基づく運動量入力の実時間制御により圧力勾配を適度に緩和することで、整数有理面近傍で発生する崩壊現象を回避する制御アルゴリズムを開発し、DEMO炉で想定される70%程度の高いブートストラップ電流割合のプラズマを8秒間維持することに成功している。また同実験において、ブートストラップ電流割合が高い領域では、圧力勾配変化に対応して安全係数の極小値の変化が大きくなるなど、MHD不安定性を回避する観点から新たな知見が得られている。本講演では、今日の実時間制御手法が自己加熱を伴うDEMO炉に適用できるか、また、十分なトリチウム増殖率の確保と上記制御関連機器のための空間確保との整合性等の課題についても言及する。

36000767
Nanofabrication of block copolymer bulk and thin films; Microdomain structures as templates
橋本 竹治; 福永 謙二*
Nanostructured Soft Matter; Experiment, Theory, Simulation and Perspectives , p.45-97(2007) ; (JAEA-J 04054)
 ナノ周期を持つさまざまなブロック共重合体薄膜及びバルク固体の多相秩序構造の創製、さらにこの秩序構造を鋳型として用い、ナノ精密加工を施すことを基盤としたナノテクノロジーの原理についての著者等の研究グループの成果をレビューした。ナノ精密加工としては、一つの秩序相の選択的空孔化,一つの秩序相への金属ナノ微粒子の選択配列、及び両者の複合体(空孔相と金属ナノ微粒子を内蔵する秩序相)形成について論じている。

36000768
Profile measurement and transverse matching in J-PARC linac
秋川 藤志*; 五十嵐 前衛*; 池上 雅紀*; Lee, S.*; 佐藤 進; Shen, G.; 富澤 哲男; 上野 彰
Proceedings of 2007 Particle Accelerator Conference (PAC '07) (Internet) , p.1472-1474(2007) ; (JAEA-J 04055)
 J-PARCリニアックのビームコミッショニングが2006年11月から実施されている。われわれは、ビームプロファイルと横方向のマッチングを測定するため、ワイヤースキャナーを製作した。各マッチングセクションに4台ずつワイヤースキャナーが設置されている。ビームプロファイルとマッチングの測定結果について報告する。

36000769
RF feedback control systems of the J-PARC linac
Fang, Z.*; 穴見 昌三*; 道園 真一郎*; 山口 誠哉*; 小林 鉄也; 鈴木 浩幸
Proceedings of 2007 Particle Accelerator Conference (PAC '07) (Internet) , p.2101-2103(2007) ; (JAEA-J 04056)
 J-PARCでは2006年9月から181MeV陽子リニアックのビームコミッショニングが開始された。RF電力供給源は4台の半導体アンプと20台のクライストロンで構成される。それぞれのRF源では、加速器電場を振幅,位相それぞれ±1%, ±1度で安定化させるため、cPCI上で動くRFフィードバック制御システムによりRFの制御が行われる。本論文では、RFフィードバック制御システムの性能について詳細を報告する。

36000770
Performance of J-PARC linac RF system
小林 鉄也; 千代 悦司; 堀 利彦; 鈴木 浩幸; 山崎 正義; 穴見 昌三*; Fang, Z.*; 福井 佑治*; 川村 真人*; 道園 真一郎*; 南茂 今朝雄*; 山口 誠哉*
Proceedings of 2007 Particle Accelerator Conference (PAC '07) (Internet) , p.2128-2130(2007) ; (JAEA-J 04057)
 J-PARC線形加速器では、2006年9月からRFシステムの大電力運転が開始された。20台の324MHzクライストロンは問題なく加速空洞に電力を供給し、その11月からビームコミッショニングが開始された。現在RF源システム及びその制御システムは正常に動作しており、要求される安定度が満たされている。

36000771
Comparison of trajectory between modeling and experiment for J-PARC linac
大川 智宏; 青 寛幸; 佐甲 博之; 上野 彰; 長谷川 和男; 池上 雅紀*
Proceedings of 2007 Particle Accelerator Conference (PAC '07) (Internet) , p.3324-3326(2007) ; (JAEA-J 04058)
 J-PARC線形加速器のビームコミッショニングでは、加速器をモデル化するために、TRACE3D, XAL, PARMILAの3つのシミュレーションコードを使用している。TRACE3Dは、おもに4極電磁石の初期設定値を決定するために、XALは、横方向のマッチングと軌道補正のために、PARMILAは、フェーズスキャンの際の出力エネルギの位相依存性をモデル化するために使用される。われわれは、モデルとこれまでのビームコミッショニングで得られた実験結果とを比較してきた。そして、モデルと実際のビームの挙動は、基本的には一致することを確認した。

36000772
Characterization of hexagonal boron carbonitride (h-BCN) films prepared by RF plasma enhanced CVD
Mannan, M. A.*; 永野 正光*; 平尾 法恵*; 馬場 祐治
Proceedings of 24th Japan-Korea International Seminar on Ceramics , p.289-292(2007) ; (JAEA-J 04059)
 ホウ素,炭素,窒素を含む有機分子であるトリスジメチルアミノボランを原料とし、Si(100)表面に高周波誘起化学蒸着法(CVD)によりホウ素-炭素-窒素薄膜(BCN薄膜)を作成し、その構造と結合状態について検討した。フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)による測定結果は、作成したBCN薄膜が六方晶の構造を持つことを示唆した。X線光電子分光測定(XPS)の結果、BCN薄膜中のホウ素原子は、炭素原子及び窒素原子の両方と結合していることがわかった。また放射光を用いたX線近吸収端微細構造(NEXAFS)の測定においても、ホウ素原子が炭素だけでなく窒素原子とも結合しているというXPSのデータを支持する結果が得られた。また、NEXAFSスペクトルの偏光依存性から、BCN薄膜がさまざまな配向をとることが明らかとなった。

36000773
Design and scenario studies on FLWR for effective use of Pu
岩村 公道; 石川 信行; 大久保 努
Proceedings of 4th Asian Specialist Meeting on Future Small-Sized LWR Development , p.11-1-11-9(2007) ; (JAEA-J 04060)
 軽水炉技術に立脚し、将来の燃料サイクルの環境に柔軟に対応したプルトニウム有効利用を実現可能な革新的水冷却炉の概念を構築した。この概念の特徴は、現行軽水炉からの技術的ギャップの比較的小さい高転換型炉心から同一炉心構成、かつ、プラント構成の下で増殖型炉心への発展が可能なことである。本報では、革新的水冷却炉の炉心設計とその導入シナリオの検討結果について述べる。

36000774
Perspective and current status on fuel cycle system of Fast reactor Cycle Technology development (FaCT) project in Japan
船坂 英之; 伊藤 正徳
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycles and Systems (Global 2007) (CD-ROM) , p.259-267(2007) ; (JAEA-J 04061)
 FaCT(高速増殖炉サイクル実用化研究開発)プロジェクトは、FS(実用化戦略調査研究)を引き継ぎ、2006年よりオールジャパン体制で開始された。FaCTプロジェクトにおいては、FSで主概念として選定された先進湿式再処理プロセスと簡素化ペレット燃料製造法を中心に開発を行っていくこととしている。本報告では、この先進湿式再処理プロセスと簡素化ペレット燃料製造法について、開発の現状と2015年頃までの今後の展開について紹介する。

36000775
Long-term Nuclear Knowledge Management (NKM) on nuclear production of hydrogen; A Case study of the Japan Atomic Energy Research Institute (JAERI)
柳澤 和章
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycles and Systems (Global 2007) (CD-ROM) , p.820-826(2007) ; (JAEA-J 04062)
 高温ガス冷却炉は原研が研究開発した重要な知的財産であり、革新的原子力エネルギーシステムの将来を担う有力な技術的選択肢である。長期原子力知識マネジメントを駆使し、著者は、高温ガス冷却炉がどの程度の潜在的費用便益効果を有しているか評価した。長期予測のため大きな不確実性が前提にあるが、そこから得られた結果は以下のとおりである。商用化された高温ガス炉を用いた水素エネルギーの製造により、我が国における水素製造コストの低減が期待され、2020年までに19.7b(ビリオン)ドルが節約できると予測される。原研の寄与分は2010年から2050年までで総計1.2bドルである。一方、商用化された高温ガス炉を用いた発電により、電気料金の低減化が図れる。この低減額は我が国全体で年間0.36bドルと推定される。2010年から2050年にわたる原研の積算ベースでの寄与分は0.29bドルと推定される。現行の軽水炉と同じような費用対効果率を得るためにガス冷却高温ガス炉研究開発にはより多くの技術革新が望まれる。

36000776
Evaluation of the cell voltage of electrolytic HI concentration for thermochemical water-splitting iodine-sulfur process
田中 伸幸; 吉田 光徳; 奥田 泰之; 佐藤 博之; 久保 真治; 小貫 薫
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycles and Systems (Global 2007) (CD-ROM) , p.833-836(2007) ; (JAEA-J 04063)
 熱化学水素製造法ISプロセスの効率化に関する電解電気透析法(EED)を用いたHIx溶液(HI-H2O-I2混合液)濃縮研究の一環として、EEDの最適操作条件検討及びセル構造の最適設計に役立てるため、EEDセル電圧の内訳にかかわる予備的検討を行った。セル電圧検討の基礎データである溶液の電気抵抗,黒鉛電極におけるヨウ素-ヨウ化物イオンの酸化還元反応の過電圧、及び膜にかかわる電圧降下について、プロセス条件に近い組成を有するHIx溶液を用いた場合の値を測定した。また、セル電圧の推算方法を検討し、取得した基礎データをもとに試算した結果、実測値と良好な一致が認められ、用いた方法の妥当性を確認した。

36000777
Advanced LWR concept of FLWR for TRU recycling
岩村 公道; 大久保 努; 内川 貞夫
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycles and Systems (Global 2007) (CD-ROM) , p.1718-1724(2007) ; (JAEA-J 04064)
 TRUリサイクルが可能な新型軽水炉概念FLWRの検討を進めている。これまでの設計研究により、その概念は十分に達成可能であると見込まれる結果が得られており、関連する重要な技術課題に関するR&Dの結果も含めてそのように判断できる状況である。将来において強固な原子力エネルギー供給システムを確立するためには、軽水炉技術と高速炉技術、すなわちFLWRとNa-FBRを適切に組合せて使用して行くことが望ましくまた現実的であると考えられる。本論文ではこのような適切な両方の炉の併用を提案している。

36000778
Electrical characteristics of 6H-SiC MOSFETs after high dose irradiation
大島 武; 菱木 繁臣*; 岩本 直也; Reshanov, S. A.*; Pensl, G.*; 児島 一聡*; 河野 勝泰*
Proceedings of the 26th Symposium on Materials Science and Engineering, Research Center of Ion Beam Technology Hosei University , p.31-34(2007) ; (JAEA-J 04065)
 耐放射線性SiC半導体素子の開発の一環として、MGyという高線量域までのγ線照射によるSiC金属-酸化膜-半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の特性変化を調べた。p型エピタキシャル六方晶(6H)-SiC上にn-channel MOSFETを作製し、γ線照射(室温,無バイアス状態)を行った。ドレイン電流-ドレイン電圧特性の直線領域からチャンネル移動度を見積もったところ、ソース,ドレイン領域作製の際のイオン注入後の熱処理時にカーボン被膜にて表面を保護した試料では、照射前の値が55cm2/Vsであるのに対し、被覆なしは45cm2/Vsと小さな値を示した。原子間力顕微鏡によりこれらの試料表面粗さ(RMS)を調べたところ、被覆有りが0.67nm、被覆なしが1.36nmであった。このことから、エピ膜表面荒れが原因で発生した界面準位によりカーボン被覆なし熱処理試料では有りに比べてチャンネル移動度が小さくなったと考えられる。次に、γ線照射後を比較すると、両者とも1MGyまでは変化は見られないが、それ以上の照射により、カーボン被覆なしはチャンネル移動度が低下するのに対し、被覆有りで熱処理を行ったものは、わずかではあるがチャンネル移動度が上昇することが見いだされ、3MGy照射後には65cm2/Vsとなることが明らかとなった。

36000779
Intense femto-second laser-driven X-ray source coupled with multiple directional quantum beams for applications
大道 博行; 匂坂 明人; 小倉 浩一; 織茂 聡; 西内 満美子; 余語 覚文; 森 道昭; Li, Z.*; 桐山 博光; 金沢 修平; 圷 敦; 中井 善基; Pirozhkov, A. S.; Bulanov, S. V.; Esirkepov, T. Z.; 木村 豊秋; 田島 俊樹; 根本 孝七*; 大石 祐嗣*; 名雪 琢弥*; 藤井 隆*; Zhidkov, A.*; 野田 章*; 中村 衆*; Choi, I. W.*; Yu, T. J.*; Sung, J. H.*; Kim, H. T.*; Jeong, T. M.*; Hong, K.-H.*; Kim, J.-H.*; Noh, Y.-C.*; Ko, D.-K.*; Lee, J.*; 菜島 茂喜*; 清水 広平*; 細田 誠*
X-ray Lasers 2006 , p.595-605(2007) ; (JAEA-J 04066)
 現在、関西光科学研究所に設置されている超短パルス高強度レーザーを用いた量子ビーム発生実験を行っている。すなわちレーザーを厚さ数ミクロンの薄膜に照射することにより、プロトン,X線,テラヘルツ波,電子線が発生する。これらは時間同期がきちんととれており、時間幅も1ピコ秒以下であり、するどい指向性を有し輝度も高い。これらを組合せることにより、極めて新しいポンプ-プローブ計測等が可能になると考えられる。これら研究の現状と今後の方向について報告する。

36000780
冬季雷活動時に観測される放射線量率の変動; 雷からの放射線発生と逃走絶縁破壊
鳥居 建男; 奥山 慎一; 野崎 達夫; 大久保 浩一; 杉田 武志*; 村木 綏*
地文台によるサイエンス; 極限エネルギー宇宙物理から地球科学まで , p.211-217(2008) ; (JAEA-J 04067)
 冬の日本海沿岸で発生する冬季雷の活動時に環境放射線レベルが上昇する事象が観測されることがある。これまでの測定の結果、数10秒程度の緩やかな低エネルギーの放射線レベルの上昇と、その直後に発生する高エネルギー放射線による急峻な上昇という異なる2種類の放射線が観測された。本稿では、冬季雷活動時の放射線変動の観測結果を中心に、放射線が引き金となって発生すると考えられる雷放電の逃走絶縁破壊について概説する。

36000781
非構造格子系における気液二相流数値解析手法の適切な定式化
伊藤 啓; 功刀 資彰*; 山本 義暢*
第21回数値流体力学シンポジウム講演要旨集(CD-ROM) , 5p.(2007) ; (JAEA-J 04068)
 FBRシステム内において発生するガス巻込み現象を高精度に評価することを目的として、非構造格子系における気液二相流数値解析手法の構築を実施している。本件では、気液界面近傍における表面張力と圧力の非平衡によって誘起される非物理的な流速分布、及び気液界面位置における速度定義式の不適切さによって誘起される非物理的な圧力分布に関して考察を行い、物理的に正しい解が導かれるような修正を実施した。表面張力と圧力の非平衡については、気液界面近傍における圧力勾配を局所的な表面張力と圧力のバランスから求めるようにした。気液界面位置における速度定義式に関しては、気液各相の速度をそれぞれ計算し、それらの値と流体率の値を用いて速度を計算する手法を構築した。改良した気液二相流数値解析手法を用いて、静止水中の上昇気泡を対象とした解析を実施した。構造格子系において、解析結果は物理的な矛盾を生じることなく実験結果と一致する気泡形状を導いた。三角形格子を用いた非構造格子系においても、解析結果の各時刻において構造格子系における解析結果とよく一致する気泡形状が得られ、非構造格子系においても十分に精度よく解析を実施できることがわかった。

36000782
原子力プラント全容解析のための接合部連成モデリングの研究開発
西田 明美
第2回原子力システム研究開発事業成果報告会資料集 , p.196-197(2008) ; (JAEA-J 04069)
 大規模地震発生時の原子力プラントの耐震性を評価し健全性の裕度を示すことは非常に重要かつ迅速な対応が望まれる課題である。本事業では、不具合の生じやすい部品と部品の接合部に着目し、接合部の接合効果を考慮できる物理モデルを提案することにより、大規模複雑構造物である原子力プラントの全体的挙動・局所的挙動双方を把握できる解析システムを構築し、これにより次世代炉設計における耐震性評価に貢献することを目的とする。平成18年度から開始された本事業における成果として、接合部連成モデルの試作及び調整、並びに、ハイブリッド実験用試験体製作についてまとめた。

36000783
エネルギー問題
柴田 猛順
現代社会と科学技術 , p.75-101(2008) ; (JAEA-J 04072)
 現代社会は大量生産,大量消費の社会で、太陽から地球に与えられる放射エネルギーの1万分の1という多量のエネルギーを消費していること,一人あたり人間が生物として必要とするエネルギーの数十倍を消費していること,現状の化石エネルギー消費は長くても数十年から百年程度しか続かないこと,化石エネルギーの消費は地球温暖化を引き起こすことを述べた。これらを解決できるのが原子力や再生可能エネルギーである。しかしながら、これらにもいろいろ問題がある。さらに今後のエネルギー使用を続けるうえで、エネルギーの出力・入力の比(EPR)の概念が重要であること、加えて政治・経済も重要であることを述べた。

36000784
FBRサイクル実用化; 「もんじゅ」運転開始に向け
根岸 仁; 茶谷 恵治; 谷川 信吾
原子力年鑑2008年版 , p.53-61(2007) ; (JAEA-J 04073)
 国は高速増殖炉サイクルの実用化調査研究フェーズ2の成果を評価し、ナトリウム冷却高速炉(酸化物燃料),先進湿式法再処理,簡素化ペレット法燃料製造の組合せを主概念に選定した。今後、原子力機構は、主概念に開発資源を集中的に投資し、高速増殖炉サイクル実用化研究開発(FaCT)としてその実用化を目指す。「もんじゅ」では、ナトリウム漏えい対策等の工事が順調に進められており、運転再開に向けた準備が行われている。性能試験を含め「もんじゅ」で得られる研究開発成果は、FBRの実用化に反映されていく。「常陽」は初臨界後、7万時間を超える運転を行い、FBRのための燃料・材料開発を行ってきている。また、外部利用の拡大等についても取り組んでいる。FBR開発の国際動向が活性化しており、GIF, GNEP, INPROなどの多国間協力,米仏等との研究協力を進めている。

36000785
侵入者自動監視システムの性能確認試験結果について
田沼 浩二; 清水 和明; 蛭田 敏仁; 木村 直行; 鈴木 美寿; 伊藤 透
核物質管理学会(INMM)日本支部第28回年次大会論文集(CD-ROM) , 7p.(2007) ; (JAEA-J 04074)
 原子力機構では、不審者・侵入者の行動を監視カメラと画像解析ソフトウェアを応用して常時監視を行うことにより、原子力施設の敷地境界又は周辺防護区域等への不法侵入者や不審物等を機械的に早期発見するとともに警備業務の合理化,効率化を目的とした侵入者自動監視システムの実用化開発を行っている。本報告では、国外の代表的な画像解析ソフトウェアを用いた、侵入検知性能・機能,システムの拡張性等の比較検討結果,長期耐環境性能確認試験(気象条件,小動物・雑草等による環境影響評価,侵入者の行動認証等)の結果,核物質防護措置としての監視システムの有効性、並びに原子力施設以外への適用範囲について紹介する。

36000786
無線LANによるGUAM測定データの遠隔伝送試験
浅野 隆; 藤原 茂雄; 高橋 三郎; 根本 忠行*; 佐藤 隆*; 国安 和房*; 蛭田 一彦*
核物質管理学会(INMM)日本支部第28回年次大会論文集(CD-ROM) , 11p.(2007) ; (JAEA-J 04075)
 日本原子力研究開発機構(JAEA)は、プルトニウム燃料第三開発室において、査察活動の効率化を目的に貯蔵区域の保障措置機器に対する遠隔監視技術を開発し実証した。JAEAは今後、統合保障措置適用に向けて、本技術を燃料製造工程区域の保障措置機器に適用拡大し、査察活動のさらなる効率化を図ることを検討している。遠隔監視技術の適用拡大にあたり、新たに無線LANを活用することで、施設内の通信ケーブル等の配線工事及びその費用を大幅に簡素化することが可能となると考えている。JAEAは、日本原燃株式会社と共同でグローブボックス内非立会い測定・モニタリングシステム(GUAM)の測定性能及び無線LANを用いた当該測定データの遠隔伝送技術に関する確証試験を実施し、工程区域において無線LANによるネットワークの構築が可能であることを実証した。本件は、本確証試験結果に基づき、遠隔監視技術への無線LANの適用性について報告を行うものである。

36000787
高速増殖炉サイクルの実用化戦略策定における総合評価
塩谷 洋樹
企業・行政のためのAHP事例集; 意思決定支援ツールの上手な活用法 , p.2-30(2007) ; (JAEA-J 04076)
 実用化戦略調査研究フェーズII最終評価では、20のFBRサイクル候補概念について、安全性,経済性,環境負荷低減性,資源有効利用性,核拡散抵抗性,技術的実現性という6つの観点から多面的評価した。多面的評価では視点間の重み付けにはAHPを用い、多属性効用分析の枠組みを活用して評価した。炉型別の評価結果では、ナトリウム冷却炉を用いるFBRサイクルが最も有望な概念となった。

36000788
日本原子力研究開発機構における核不拡散のための環境中の放射性核種にかかわる研究開発
臼田 重和; 篠原 伸夫; 桜井 聡; 間柄 正明; 宮本 ユタカ; 江坂 文孝; 安田 健一郎; 國分 陽子; 平山 文夫; Lee, C. G.; 伊奈川 潤; 鈴木 大輔; 井口 一成; 小田 哲三; 熊田 政弘; 山本 洋一
KEK Proceedings 2007-16 , p.13-22(2008) ; (JAEA-J 04110)
 日本原子力研究開発機構(原子力機構: 2005年発足)では、その前身である日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の時代から、おもに原子力施設から環境に漏れる放射線や放射性物質を管理・監視,その影響を評価する目的で、環境放射能にかかわる幅広い研究開発が行われてきた。ここでは、核兵器を廃絶し、原子力の平和利用を推進するため、1990年代の半ばから計画された保障措置にかかわる極微量環境試料分析と包括的核実験禁止条約(CTBT)にかかわる超高感度放射性核種監視に焦点を絞り、核不拡散を目的とした環境放射能に関連する原子力機構の研究開発を紹介する。さらに、開発した技術の応用と今後の展望についても触れる。

36000789
原子炉付属建家管理区域における照射済集合体の洗浄廃液の漏えい
大原 紀和; 鈴木 寿章; 礒崎 和則
UTNL-R-0466 , p.6-1-6-11(2008) ; (JAEA-J 04111)
 高速実験炉「常陽」では、平成19年4月26日、同施設の原子炉付属建家の管理区域において、放射性物質を含む水の漏えいが発生した。調査の結果、原子炉内で照射した集合体を洗浄するナトリウム洗浄装置の循環ポンプのメカニカルシールが開放され、洗浄廃液が漏えいし、これが床コンクリートひび割れ部を浸透して下階に至ったことがわかった。本稿では、本事象の原因調査結果とそれに基づく再発防止策について報告する。

36000790
原子炉機器の更新計画
五来 滋; 塙 善雄; 海老沢 博幸; 大戸 勤; 深作 秋富
UTNL-R-0466 , p.1-2-1-1-2-8(2008) ; (JAEA-J 04112)
 原子力機構は、平成19年度予算の財務省内示を受け、JMTRを原子力の基盤技術を支える原子炉と位置づけ、平成23年度から再稼働することを目指し、平成19年度から改修に着手することを決定した。そこで、平成19年度から4年間で原子炉機器の更新を実施し、平成23年度から再稼働させるために原子炉機器の更新計画を策定した。更新計画の策定にあたっては、すべての原子炉機器について、これまでの運転実績,消耗の度合い,経年変化の程度について調査し、更新する機器と継続使用する機器に選定した。選定の基本的な考え方として、保守用の交換部品(代替品を含む)の調達ができなくなるものについてはすべて更新することとし、継続使用する機器については、施設定期評価に基づく保全計画に従った保全活動を行い、健全性を確認していく。

36000791
照射設備の整備計画; 99Mo製造にかかわる照射設備の整備
飯村 光一; 堀 直彦; 菅野 勝
UTNL-R-0466 , p.1-3-1-1-3-9(2008) ; (JAEA-J 04113)
 日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターのJMTRは改修中であり、新たな利用ニーズに応えるための照射設備を整備し平成23年度から再稼働する予定である。JMTRでは、有効利用の一環として99mTcの原料である99Moの製造を検討している。国内における99Moの供給はすべて輸入に依存していることからJMTRを用いて一部国産化を目指すものである。検討の結果、JMTRにある水力ラビット照射設備を使用し中性子捕獲法により99Moの安定供給及び大量生産の一翼を担うことが可能であることがわかった。

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