学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2009年1月


37000013
Formation and decomposition of AlH3 in the aluminum-hydrogen system
齋藤 寛之; 町田 晃彦; 片山 芳則; 青木 勝敏
Applied Physics Letters 93(15), p.151918_1-151918_3(2008) ; (JAEA-J 04978)
 The pressure-temperature diagram of hydrogen-aluminum system was determined for a pressure range of 0∼10 GPa and a temperature range of 27∼800 ℃ by in situ X-ray diffraction measurements. Pristine aluminum was hydrogenated to tri-hydride at 8.9 GPa and 600 ℃. The cyclic formation and decomposition of the hydride resulted in lowering of the hydrogenation conditions down to 4.9 GPa and 330 ℃. Transparent single crystals were recovered at ambient conditions.

37000014
Microscopic studies of spherical particles for nuclear safeguards
Donohue, D.*; Ciurapinski, A.*; Cliff, J.*; Rüdenauer, F.*; 久野 剛彦; Poths, J.*
Applied Surface Science 255(5, Part2), p.2561-2568(2008) ; (JAEA-J 04979)
 核拡散防止条約に準じた核物質保障措置の検認活動の一端を担うため、マイクロ分析技術の組合せによる粒径9∼12ミクロンの球体粒子の特性評価を試みた。粒子は、保障措置の監督下にある核施設で採取された綿製のスワイプサンプルから取り除かれ、最初に、エネルギー分散X線分光分析(EDX)を付属する走査型電子顕微鏡(SEM)で観察された。続いて、興味ある幾つかの粒子は、光学顕微鏡へと移動され、マイクロマニピュレーターにより巧みに採取された後、そのうちの1つの粒子が粒子のコア部分におけるウランの存在有無を調べるため2次イオン質量分析装置によって破壊的に分析された。2番目の粒子については、粒子内部の元素組成を測定するために集束イオンビームでエッチングをしながら、SEMとEDXが実施された。本件における粒子の巧みな操作及びSEMと光学顕微鏡間の粒子位置の再配置の技法は、幾つかの分析技術との組合せにより、興味ある単一粒子について表面の形態観察,元素・同位体測定,深さプロフィール情報といった連続測定を可能にする。本測定の目的は、保障措置の監視下にある国において不法、又は、未申告の核活動がないことの保証を提供することである。

37000015
Molecular and crystal structures of uranyl nitrate complexes with N-alkylated 2-pyrrolidone derivatives; Design and optimization of promising precipitant for uranyl ion
鷹尾 康一朗*; 野田 恭子*; 森田 泰治; 西村 建二*; 池田 泰久*
Crystal Growth & Design 8(7), p.2364-2376(2008) ; (JAEA-J 04981)
 アルキル-2-ピロリドン誘導体の硝酸ウラニル錯体の分子構造と結晶構造を単結晶X線回折,赤外及びラマン吸収スペクトル分析により探求した。錯体の分子構造解析ではいずれのピロリドン誘導体においても、ウラニルイオンのエカトリアル面にピロリドン2分子と硝酸イオン2個がそれぞれトランス位に配位していることが判明した。n-プロピルピロリドン及びイソプロピルピロリドンのウラニル錯体の結晶構造解析から、これらの化合物の結晶格子にはボイドが存在することが示唆された。結晶の効率的パッキングについて検討を行い、イソブチルピロリドンは、そのアルキル基によってボイドを埋め、効率的結晶パッキングの要求を満足させることがわかった。

37000016
Status of JT-60SA tokamak under the EU-JA broader approach agreement
松川 誠; 菊池 満; 藤井 常幸; 藤田 隆明; 林 孝夫; 東島 智; 細金 延幸; 池田 佳隆; 井手 俊介; 石田 真一; 鎌田 裕; 木村 晴行; 木津 要; 栗原 研一; 栗田 源一; 正木 圭; 松永 剛; 宮 直之; 森山 伸一; 逆井 章; 櫻井 真治; 芝間 祐介; 島田 勝弘; 助川 篤彦; 鈴木 隆博; 鈴木 優; 高瀬 雄一*; 武智 学; 玉井 広史; 土屋 勝彦; 浦野 創; 山本 巧; 吉田 清; Andreani, R.*; Alonso, J.*; Barabaschi, P.*; Botija, J.*; Cara, P.*; Coletti, A.*; Coletti, R.*; Costa, P.*; Cucchiaro, A.*; Decool, P.*; della Corte, A.*; Dolgetta, N.*; Duchateau, J. L.*; Fietz, W. H.*; Gaio, E.*; Grosman, A.*; Gruber, O.*; Heller, R.*; Henry, D.*; Hertout, P.*; Hourtoule, J.*; Lacroix, B.*; Magne, R.*; Medrano, M.*; Michel, F.*; Muzzi, L.*; Nicollet, S.*; Novello, L.*; Petrizzi, L.*; Piovan, R.*; Pizzuto, A.*; Portafaix, C.*; Rincon, E.*; Roccella, S.*; Semeraro, L.*; Turtù, S.*; Verder, J.-M.*; Villari, S.*; Zani, L.*; Di Zenobio, A.*
Fusion Engineering and Design 83(7-9), p.795-803(2008) ; (JAEA-J 04983)
 JT-60SAは、日欧の幅広いアプローチの下で建設する完全超伝導トカマク装置で、ITERや原型炉への貢献を目指している。2007年の両極の国会批准後、実質的には既に建設段階に移行している。JT-60SAは、既存の建屋,電源,プラズマ加熱装置,計測装置などの、JT-60U設備の最大限の有効利用が前提であり、完全に新作する主たる機器は本体装置のみである。最大プラズマは電流5.5MAで、プラズマ主半径3.06m,アスペクト比2.65,非円形度1.76,三確度0.36である。最大プラズマ加熱入力41MW,プラズマ電流のフラットトップ時間は100秒間である。本論文では、トカマク装置本体だけでなく、プラズマ加熱装置や遠隔保守装置の設計などについても言及するとともに、EUとの技術的な議論を踏まえて行った超伝導導体に関する最近の設計変更案などを紹介し、装置の全体像を明らかにする。

37000017
Engineering design and R&D of impurity influx monitor (divertor) for ITER
小川 宏明; 杉江 達夫; 河西 敏*; 勝沼 淳*; 原 玲丞*; 武山 芸英*; 草間 義紀
Fusion Engineering and Design 83(10-12), p.1405-1409(2008) ; (JAEA-J 04984)
 ダイバータ不純物モニターは、ITERのダイバータ部から発光する不純物イオン,重水素及びトリチウムのスペクトル線の強度分布を測定し、不純物制御及びダイバータ制御に使用するデータを提供するための計測装置である。これまで進めてきた光学設計をもとに、シャッターを含めた先端部光学系の機械設計を行い、ITERで想定される核発熱を仮定した熱解析を行った。その結果、十分な冷却流路を確保し、ミラーホルダーを熱伝導率の高い銅合金で製作することにより、ミラーを熱伝導のみで冷却できることを明らかにした。本モニターでは、広い波長範囲(200∼1000nm)で色収差を補正したカセグレン型集光光学系やマイクロ光学素子(マイクロレトローリフレクターアレイ,マイクロレンズアレイ)等の新しい光学機器を使用する光学設計を採用した。そこで、これらの機器の試作・試験を行った。試作したマイクロレトローリフレクターアレイの反射率は17%(波長:400nm)∼27%(波長:850nm)であり、感度較正に必要な反射光強度が得られる見通しであることを確認した。また、試作したカセグレン型望集光光学系の焦点距離は設計値と2%以内で一致しており、良好な結像特性が得られた。

37000018
Experimental durability studies of electrolysis cell materials for a water detritiation system
岩井 保則; 廣木 章博; 八木 敏明*; 玉田 正男; 山西 敏彦
Fusion Engineering and Design 83(10-12), p.1410-1413(2008) ; (JAEA-J 04985)
 核融合炉プラントのトリチウム水処理システムを構成する固体高分子電解槽の放射線耐久性を精査した。固体高分子電解槽の水電解機能を担うナフィオンN117イオン交換膜について、浸漬条件下にて国際熱核融合実験炉における使用時の線量上限値530kGyを越える線量のγ線や電子線を照射した結果、1600kGyにおいても機械的強度やイオン交換能について設計要求値以上の放射線耐久性を有することを確認した。使用時の線量上限値530kGyまで固体高分子電解槽の電解性能を維持するためには、商用電解槽において電気絶縁に使用されているテフロンを1500kGyにおいても放射線耐久性を有するポリイミド材に交換することを提案した。Oリングに用いられるゴム材については、1500kGyにおいても機械的強度が変化せず、放射線劣化に伴う有機物の溶出も小さいバイトンが最適であることを明らかとした。

37000019
Conceptual design of JT-60SA cryostat
芝間 祐介; 櫻井 真治; 正木 圭; 助川 篤彦; 神永 敦嗣; 逆井 章; 松川 誠
Fusion Engineering and Design 83(10-12), p.1605-1609(2008) ; (JAEA-J 04986)
 JT-60SAクライオスタットの概念設計について報告する。JT-60SAは、重水素運転を想定し、真空容器内コイルを除くすべてのプラズマ閉じ込め磁場コイルを超伝導化する。このため、トカマク装置を設置する本体室内の空間放射化の低減及び超伝導コイルの熱遮蔽の機能を有するクライオスタットを設置する。クライオスタットはこれらの機能に加えて、トカマク装置全体の支持構造であることが要求される。したがって、クライオスタットの構造は、胴体部及び支持架台から成り、付属設備である80K熱遮蔽板,真空排気設備を有する。胴体部及び支持架台は、超伝導コイルに対し真空断熱層を与えるため、高さ15m,半径7mの空間を真空に保つ必要がある。プラズマ計測装置及び加熱装置,各設備の冷却系配管等のアクセスを可能とするため、胴体部の開口率は高く、剛性確保の観点から二重壁構造を採用する。二重壁構造の壁間には、遮蔽材としてボロン添加コンクリートが充填される。支持架台は、トカマク機器の総重量2550トンを支持するため、運転及び地震に対する健全性が要求される。JT-60SAは、既存のプラズマ加熱装置等の周辺設備を再利用するため、クライオスタットは空間的な制限を満足する必要があり、これらに関するJT-60SAの設計概念を明確に示す。

37000020
Verification of KERMA factor for beryllium at neutron energy of 14.2 MeV based on charged-particle measurement
近藤 恵太郎; 落合 謙太郎; 村田 勲*; 今野 力
Fusion Engineering and Design 83(10-12), p.1674-1677(2008) ; (JAEA-J 04987)
 過去に行われたDT中性子入射によるベリリウムの核発熱の直接測定実験で、JENDL-3.2を用いた計算値が測定値を25%も過小評価することが指摘されていたが、この大きな不一致の原因は明らかにされていなかった。この原因を明らかにするために、本研究では核発熱を計算する基本データであるKERMAファクターを調べた。中性子エネルギー14.2MeVでの値を比較した結果、部分KERMAファクターが最も大きい9Be(n,2n+2α)反応で、JENDL-3.3から導出した部分KERMAファクターがENDF/B-VII.0, JEFF-3.1から導出したものと比べ大きく異なることがわかった。さらに、9Be(n,2n+2α)反応チャンネルについて、われわれのα粒子放出二重微分断面積の測定データから構築した実験モデルを用いて部分KERMAファクターを計算し、これらのライブラリから導出した部分KERMAファクターと比較した。その結果、JENDL-3.3から導出した部分KERMAファクターは、われわれの実験モデルによるものを20%程度過小評価することが明らかになった。過去の核発熱測定実験におけるJENDL-3.2を用いた計算値の過小評価は、この9Be(n,2n+2α)反応チャンネルの部分KERMAファクターの過小評価に由来するもので、α粒子放出二重微分断面積の高エネルギー成分が前方の放出角で過小評価されているためであると結論した。

37000021
Characterization of ITER Nb3Sn strands under strain-applied conditions
布谷 嘉彦; 礒野 高明; 小泉 徳潔; 濱田 一弥; 松井 邦浩; 名原 啓博; 奥野 清
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 18(2), p.1055-1058(2008) ; (JAEA-J 04993)
 原子力機構はITER TFコイル用Nb3Sn超伝導線の開発を行った。温度4.2Kと磁場12Tにおいてのブロンズ法及び内部拡散法の製法による臨界電流密度がそれぞれ790A/mm2以上及び980A/mm2以上で、またヒステレシス損失が±3Tの変動磁場において770mJ/cc以下となり、ITERの要求仕様を満たした。ITERの運転では、これらの超伝導線は外部からのひずみを受ける。このため、超伝導性能のひずみ依存性を測定することが重要である。そこで、ひずみ特性を測定する装置を新たに開発した。本装置では、素線を取り付け固定する治具として、超伝導線の長手方向に均一なひずみが印可できる馬蹄形状を用いることを特徴とする。ITER TFコイルの設計上の運転条件は、0.77%の圧縮ひずみ,磁場11.3T、及び温度5.7Kであり、本条件での、ブロンズ法超伝導素線の臨界電流値は約92Aと測定された。これはITERの要求性能よりも約20%高性能である。開発したNb3Sn超伝導素線の特性の詳細を報告する。

37000022
Recent R&D activities of negative-ion-based ion source for JT-60SA
池田 佳隆; 花田 磨砂也; 鎌田 正輝; 小林 薫; 梅田 尚孝; 秋野 昇; 海老沢 昇; 井上 多加志; 本田 敦; 河合 視己人; 椛澤 稔; 菊池 勝美; 小又 将夫; 藻垣 和彦; 能登 勝也; 大麻 和美; 大島 克己; 佐々木 駿一; 清水 達夫; 竹之内 忠; 棚井 豊; 薄井 勝富; 渡邊 和弘; Grisham, L. R.*; 小林 信一*; 山納 康*; 高橋 昌宏*
IEEE Transactions on Plasma Science 36(4), p.1519-1529(2008) ; (JAEA-J 04994)
 JT-60SA用負イオンNBI加熱装置(N-NBI)は、加速エネルギー500keV, 10MW, 100秒入射の性能が求められている。JT-60SA用N-NBIの実現には、3つの課題解決が必要である。1つはイオン源の耐電圧の改善である。最近のイオン源の耐電圧試験から、大型加速管ではその電極面積の大型化に伴い長時間のコンディショニングと電界強度の設計裕度が必要であることが明らかとなった。2つ目は、電極及びビームラインの熱負荷の低減である。最近の研究によりビーム同士の空間電荷効果でビーム軌道が曲げられ電極に衝突し、熱負荷を増加していることが明らかとなった。これは空間電荷効果を考慮した3次元ビーム軌道計算に基づき電極構造を補正することで改善できる。3つ目は、100秒間の安定な負イオン生成である。このため負イオン生成に不可欠なプラズマ電極の温度制御方式を提案した。これらのR&Dを行い、JT-60SA用N-NBIのイオン源は2015年から改造を予定している。

37000023
Power loading of electrons ejected from the JT-60 negative ion source
花田 磨砂也; 池田 佳隆; 鎌田 正輝; Grisham, L. R.*
IEEE Transactions on Plasma Science 36(4), p.1530-1535(2008) ; (JAEA-J 04995)
 JT-60負イオンNBI装置において、世界で初めて、負イオン源からビームラインに流出する電子の熱負荷やその分布を測定した。JT-60U負イオン源の動作圧力及びパービアンス(動作圧力0.3Paの下、300keV, 3.4Aの重水素負イオンビームを生成)での電子の熱流束及び全体熱量はそれぞれ、約8W/cm2及び27kWであった。この全体熱量はイオン加速のために加速電源で消費したパワーの2.6%という非常に低い値であり、100秒,10MW入射が要求されるJT-60SAにおいても十分に除熱できることを明らかにした。また、3次元電子軌道計算を用いてイオン源内の電子軌道を調べた結果、全体熱量の約70%が加速器内における負イオンの中性化損失によって発生する剥離電子に起因することや、その剥離電子がおもに第2番目の加速ギャップで生じていることを明らかにした。

37000024
Non-uniform structure of matter and the equation of state
丸山 敏毅; 千葉 敏; 巽 敏隆*
International Journal of Modern Physics E 17(9), p.1774-1789(2008) ; (JAEA-J 04996)
 原子核物質の一次相転移における非一様構造と状態方程式を調べる。複数の荷電粒子からなる物質の一次相転移(ここでは液相-気相相転移,中間子凝縮,ハドロン-クォーク相転移を扱う)では、2相のクーロン斥力と表面張力の釣り合いで「パスタ」構造と呼ばれる非一様構造が現れる。われわれはこの効果をGibbs条件とPoisson方程式を正しく考慮に入れた無撞着な方法で研究した。その結果、Debye遮蔽によって、混合相の状態方程式がMaxwell構成法によるものに近づくことがわかった。これは荷電粒子からなる混合相の一般的な側面である。ハドロン-クォーク混合相の状態方程式は天体の構造にとって特に重要であるが、われわれはこれに関して非一様構造のもたらした新たな興味深い効果すなわちハイペロン抑制現象を発見した。

37000025
Characterization of lesions induced in linear-formed plasmid DNA by valence ionization and Auger decay at carbon, nitrogen and oxygen
赤松 憲; 藤井 健太郎; 横谷 明徳
International Journal of Radiation Biology 84(12), p.1082-1092(2008) ; (JAEA-J 04997)
 この研究の目的はCo-60γ線及び超軟X線(USX)によって引き起こされるDNA損傷の違いを明らかにすることである。本研究ではDNA損傷の指標として、塩基遊離,リン酸のある、あるいはない3'鎖切断末端,ピペリジン脆弱性塩基損傷を選んだ。USXのエネルギーは270から560eVの範囲内で4点選択した。切断末端及びピペリジン脆弱性塩基損傷の定量には、ヘビ毒ホスホジエステラーゼ(SVPD)及びアルカリ・ホスファターゼ(CIAP)を用いた方法で行った。その結果、γ線, USXともに、塩基遊離,全3'鎖切断末端量,リン酸がある3'鎖切断末端量の各々に有意な違いがないことがわかった。しかしながらピペリジン脆弱性塩基損傷部位に関してはUSXの窒素K吸収端のエネルギー近傍(400eV付近)で最も少なくなる傾向が伺えた。このエネルギー近傍では塩基損傷の量が少ないか、あるいはピペリジン耐性の塩基損傷が生じている可能性が示唆された。

37000026
Conversion electron and X-ray Mössbauer spectroscopies using synchrotron radiation
三井 隆也; 瀬戸 誠; 増田 亮; 小林 康浩*; 北尾 真司*
Japanese Journal of Applied Physics 47(9), p.7136-7139(2008) ; (JAEA-J 04998)
 57Feを富化した反強磁性体FeBO3単結晶のネール温度近傍における純核ブラッグ反射を利用して、SPring-8からエネルギー可変の高輝度メスバウアービームの取り出しを行った。本実験では、これをプローブに利用した放射光ベースの内部転換電子、X線メスバウアー分光の最初の測定に成功するとともに、放射光メスバウアービームの利点を浮き彫りにした。本実験では、高温腐食させた鉄試料の生成酸化物の同定・分離定量化や入射ビームの偏光性がスペクトルに与える影響も詳細に調べられた。

37000027
Effects of oxygen annealing on dielectric properties of LuFeCuO4
松尾 祥史*; 鈴木 宗泰*; 野口 祐二*; 吉村 武*; 藤村 紀文*; 吉井 賢資; 池田 直*; 森 茂生*
Japanese Journal of Applied Physics 47(11), p.8464-8467(2008) ; (JAEA-J 04999)
 新規強誘電体LuFe2O4の鉄サイト置換体LuFeCuO4を合成し、その誘電性と微細構造について調べた。室温における透過電子線回折によって観測された微細構造からは、ab面内に3倍周期を持つ、Fe3+とCu2+の長周期構造の存在が見いだされた。この構造は、LuFe2O4における鉄電荷秩序構造と類似しており、電気双極子を持つ。また、実空間像からは、5∼10nm程度の小さなドメインが観測され、電気双極子を持つドメインが形成されていることを示す。誘電率測定からは、500K近傍で誘電率にピークが見られ、ピークにおける誘電率は1000程度であり、誘電体であることを観測した。講演では、酸素アニールによる誘電特性やドメイン構造の変化についても報告する。

37000028
Evaluations of optical properties of Co based soft X-ray multilayer gratings
石野 雅彦; 小池 雅人; 佐藤 二美*; 寺内 正己*; 佐野 一雄*; 笹井 浩行*
Journal of Applied Physics 104(7), p.073520_1-073520_5(2008) ; (JAEA-J 05000)
 近年、機能性デバイス開発や生体観察などが精力的に行われ、これらの分野からは広い光子エネルギー範囲を高いエネルギー分解能でカバーするX線分光器開発が望まれている。われわれは従来の回折格子にかわる広帯域X線分光素子として多層膜回折格子に注目し、8keVまでのX線領域において実用的な効率を持つCo/SiO2多層膜回折格子とW/C多層膜回折格子を開発した。これらの多層膜回折格子に加えてCo/Si多層膜回折格子も候補として考えられるが、反射膜となるCo/Si多層膜の界面では大きな拡散層が形成されることが知られている。そこで、拡散層を持つX線多層膜を反射膜に持つ多層膜回折格子の特性を評価するために、Co/Si多層膜回折格子とCo/SiO2多層膜回折格子を製作し、構造評価と効率測定を行った。TEMによる試料の断面観察では、欠陥のない良好な構造が確認された。しかし、多層膜回折格子では格子構造だけでなく反射膜の光学定数が回折条件に影響すること、加えてCo/Si多層膜中に形成された拡散層が効率を低下させる原因となっていることを確認した。多層膜回折格子の反射膜として界面に大きな拡散層を持つX線多層膜を用いることには問題がある。

37000029
Radiation-induced crosslinking and mechanical properties of blends of poly(lactic acid) and poly(butylene terephthalate-co-adipate)
Sarath Kumara, P. H.*; 長澤 尚胤; 八木 敏明; 玉田 正男
Journal of Applied Polymer Science 109(5), p.3321-3328(2008) ; (JAEA-J 05001)
 ポリ乳酸(PLA)に生分解性芳香族ポリエステルであるポリ(ブチレンアジペート・テレプタレート)(PBTA)をブレンドし、橋かけ剤であるトリアリルイソシアヌレートを添加して放射線橋かけを行うことにより。PLA/PBTAブレンド体の熱変形性の抑制だけでなく、力学的性質の改善にも成功した。PBTAとのブレンドと電子線照射による橋かけ構造導入により、PLAの融点以上で形状を保持できるうえ、室温域で柔軟さを付与できることを見いだし、産業応用への道筋をつけた。

37000030
Interatomic Coulombic decay following the Auger decay; Experimental evidence in rare-gas dimers
上田 潔*; 福沢 宏宣*; Liu, X.*; 酒井 克典*; Prümper, G.*; 森下 雄一郎*; 齋藤 則生*; 鈴木 功*; 長谷 清信*; 岩山 洋士*; 八尾 誠*; Kreidi, K.*; Schöffler, M.*; Jahnke, T.*; Schössler, S.*; Dörner, R.*; Weber, T.*; Harries, J.; 為則 雄祐*
Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena 166-167, p.3-10(2008) ; (JAEA-J 05002)
 電子・イオン・イオン同時測定分光法を利用してAr2pまたはKr3dのオージェ崩壊に伴うAr2, ArKr、及びKr2の原子間クーロン崩壊(ICD)を測定した。この逐次崩壊によってクーロン解離を通して二価のイオンと一価のイオンが生成する。ICD電子の運動エネルギーと両方の原子イオンの運動エネルギーの同時測定によって、ICDの崩壊過程を解明できた。一重項もしくは3重項の二価電子状態が崩壊して、そのエネルギーをとなりの原子に移すと「スピン保存」ICDが「スピン・フリップ」ICDよりレートが早いことがわかった。

37000031
Application of snow nanograin targets for the generation of fast ions in femtosecond laser plasma
Faenov, A. Y.; Magunov, A. I.*; Pikuz, S. A.*; Gasilov, S. V.*; Skobelev, I. Yu.*; Palchan, T.*; Zigler, A.*; Henis, Z.*
Journal of Experimental and Theoretical Physics 107(3), p.351-355(2008) ; (JAEA-J 05003)
 The energy of the directed motion of multiply charged ions produced when solid targets are exposed by low-contrast femtosecond laser pulses with low intensities. The measurements are based on the recording of spatially resolved X-ray spectra for H- and He-like Oxygen ions in the target plane. Analysis of the He- and H-like ions line profiles has revealed fractions of accelerated ions in plasma with energies from several to several tens of kiloelectron volts. We show that using a layer of frozen nanometer-size water droplets as the targets leads to an effective absorption of laser pulses and a twofold rise in the energy (to 0.1 MeV) of He-like oxygen ions compared to the use of solid targets.

37000032
Radiation-induced grafting of perfluorinated vinyl ether into fluorinated polymer films
Zhai, M.; 長谷川 伸; Chen, J.; 前川 康成
Journal of Fluorine Chemistry 129(12), p.1146-1149(2008) ; (JAEA-J 05004)
 同時照射法により、全フッ素系ビニルエーテルモノマーのフッ素系樹脂膜へのグラフト重合に初めて成功した。室温γ線照射により、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体膜に2-Bromotetrafluoroethyl trifluorovinyl ether(BrTFF)をグラフトすることができた。グラフト率は吸収線量1400kGyまで直線的に増加した。十分に高いグラフト率(約20%)を得るためには、モノマーの低い重合性のため、400kGy以上の吸収線量が必要であった。また、熱重量分析より、フッ素系モノマーとポリマーの相溶性のため、グラフト膜においてほとんど相分離していないことが確認できた。

37000033
Nuclear criticality safety evaluation of a mixture of MOX, UO2 and additive in the most conservative concentration distribution
奥野 浩; 佐藤 庄平; 酒井 友宏*; 内山 軍蔵
Journal of Nuclear Science and Technology 45(11), p.1108-1115(2008) ; (JAEA-J 05021)
 MOX燃料加工施設の臨界安全評価のために、MOX, UO2及び添加剤であるステアリン酸亜鉛の3つの化学物質の粉末の不均一性を考慮するべきである。この論文で考慮した均一化混合装置モデルは、PuO2富化度33wt%MOX,劣化UO2及びステアリン酸亜鉛が逆円錐形状をしており、厚さ30cmのポリエチレンにより囲まれているものとした。計算件数の制限から、混合物の核分裂プルトニウム質量は98kgに、MOXとUO2の濃度の和を4g/cm3に固定した。これらの条件の下での臨界安全上で最も保守的な燃料分布は、二次元最適燃料分布計算コードOPT-TWOを用いて、MOXとステアリン酸亜鉛それぞれの要素のインポータンスを、質量を保存させつつ平坦化させるように計算した。OPT-TWO計算の後MCNPコードにより臨界計算を実施して当該分布における中性子増倍率を得た。この研究によって得られた最も保守的な燃料分布は、ステアリン酸亜鉛が中心部のMOX粉末領域に殻状に入り込み、周辺部をUO2の領域により囲まれている、と典型的に表される。この分布の場合、粉末の混合割合によって均一状態に比べて中性子増倍率が最大で25%増大する場合があること、この増大にはPu富化度及び添加剤の不均一性がそれぞれ独立に寄与していることが明らかになった。

37000034
Development of three-dimensional numerical model for 222Rn and its decay products coupled with a mesoscale meteorological model, 2; Numerical analysis on the increase in γ dose rate observed in the coastal area of Fukushima prefecture
西沢 匡人; 永井 晴康; 茅野 政道
Journal of Nuclear Science and Technology 45(11), p.1129-1137(2008) ; (JAEA-J 05022)
 メソスケール気象モデルと結合したラドンとその壊変生成物の数値モデルを用いて2002年10月に福島県沿岸部で観測されたγ線量率の上昇の原因を調べた。数値モデルによって得られた結果は、風,降水量,γ線量率の観測値との比較によって検証され、γ線量率上昇の原因を調べるうえで十分な精度を持つことがわかった。数値モデルの結果から、2002年10月に福島県沿岸部で観測されたγ線量率の上昇はおもに、アジア大陸からの寒気の流入による自然放射性核種の輸送,福島県沿岸部における局地的な降水、の2つの現象の組合せによって生じたことがわかった。また、今回観測されたγ線量率の上昇の約6割以上がアジア大陸からの自然放射性核種によるものと推定された。

37000035
Thermal stress analysis of high-burnup LWR fuel pellet pulse-irradiated in reactivity-initiated accident conditions
鈴木 元衛; 杉山 智之; 更田 豊志
Journal of Nuclear Science and Technology 45(11), p.1155-1164(2008) ; (JAEA-J 05023)
 PWR及びBWRの高燃焼度燃料の、NSRRにおける反応度事故模擬実験において、パルス照射によって燃料ペレットに生じる温度及び熱応力プロファイルの時間変化に関する数値解析をRANNSコードを用いて行った。パルス照射前の燃料棒状態は燃料解析コードFEMAXI-6によって、商用炉照射履歴に従って解析され、結果はRANNS解析に初期条件として与えられた。一次元FEMにより燃料棒の力学解析が行われた。解析されたペレット温度と応力は測定された内圧や試験後のペレット金相などと比較され、PCMIと結晶粒分離の観点から考察された。ペレットのクラックは計算された応力状態に対応すること、圧縮応力は粒分離を抑制することが示された。

37000036
Irradiation performance of fast reactor MOX fuel assemblies irradiated to high burnups
上羽 智之; 伊藤 昌弘*; 水野 朋保
Journal of Nuclear Science and Technology 45(11), p.1183-1192(2008) ; (JAEA-J 05024)
 Mixed oxide fuel assemblies (MFA-1 and MFA-2 assemblies) were used in irradiation tests conducted in the Fast Flux Test Facility to demonstrate the capability of fast reactor core fuels to attain high burnups and fast neutron fluences. The MFA-1 and MFA-2 assemblies achieved respective peak pellet burnups of 147 GWd/t and 162 GWd/t without any indication of fuel pin breaching. Structural components of these assemblies were made of modified Type 316 stainless steel and 15Cr-20Ni base advanced austenitic stainless steel. Post irradiation examinations of these assemblies revealed dimensional changes of fuel pins and assembly ducts due to irradiation-induced void swelling and irradiation creep, and fuel cladding local oval distortions due to bundle-duct interaction (BDI). The swelling resistance of 15Cr-20Ni base advanced austenitic stainless steel fuel pin cladding was almost the same as that of the modified Type 316 stainless steel cladding, while the assembly duct of the former material had slightly better swelling resistance compared with that of the duct of the latter material. Analyses of fuel pin bundle deformations indicated that these assemblies were likely to mitigate BDI mainly by fuel pin bowings and cladding oval distortions.

37000037
Analysis of tritium behavior in very high temperature gas-cooled reactor coupled with thermochemical iodine-sulfur process for hydrogen production
大橋 弘史; 坂場 成昭; 西原 哲夫; 橘 幸男; 國富 一彦
Journal of Nuclear Science and Technology 45(11), p.1215-1227(2008) ; (JAEA-J 05025)
 核熱により水素を製造するシステムにおいては、炉心で発生したトリチウムの製品水素への混入が潜在的な問題である。本研究では、熱化学法ISプロセスにより水素を製造する超高温ガス炉水素製造システムとして設計研究を進めているGTHTR300Cを対象とし、炉心でのトリチウム生成量及び製品水素中のトリチウム濃度を数値解析により評価した。本研究では、保守的な解析として炉心黒鉛によるトリチウム保持を考慮していないが、製品水素中トリウム濃度の解析結果はトリチウム放出量と比例関係にあることが明らかとなったため、炉心黒鉛の影響評価が今後の重要な研究課題として摘出された。また、純化設備の能力増大よりも熱交換器伝熱管透過係数の低減が製品水素中トリチウム濃度低減に対して効果が大きいことを明らかにした。

37000038
Measurements of photon mass attenuation coefficients for Ge and BGO crystals at 10 MeV
原田 秀郎; 北谷 文人; 後神 進史; 原 かおる*; 豊川 弘之*; 海堀 岳史*; 宇都宮 弘章*
Journal of Nuclear Science and Technology 45(11), p.1228-1232(2008) ; (JAEA-J 05026)
 レーザー逆コンプトン光と高分解能・高エネルギー光子スペクトロメータを用い、1.6から40MeVのγ線に適用可能な全γ線吸収断面積測定システムを開発した。本システムを適用し、γ線検出器の材料として重要なGe及びBGO結晶について、10MeVでの全γ線吸収断面積を測定した。測定結果と評価値は、0.6%の測定誤差の範囲で一致した。本手法が、高エネルギーのγ線に対する全γ線吸収断面積の精密測定に有効であることを示すとともに今後の測定精度向上方法について議論した。また、従来U-238の測定で指摘された10MeVγ線に対する全γ線吸収断面積の評価値と実験値との4%以上の大きな差異は、Ge及びBGOに関しては存在しないことを示した。

37000039
Performance of the Hp(10) and Hp(0.07) measurable electronic pocket dosimeter for γ- and β-rays
高橋 聖; 関口 真人; 宮内 英明; 橘 晴夫; 吉澤 道夫; 加藤 徹*; 山口 明仁*
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 5 (June 2008) , p.225-228(2008) ; (JAEA-J 05027)
 In this study, the Hp(10) and Hp(0.07) detectable electronic pocket dosimeter(EPD-101) manufactured by ALOKA CO., LTD. was examined for (1) energy dependences for γ and β-rays and (2) applicability for actually personal dosimetry in the mixed radiation fields. The energy responses of EPD-101 were obtained by standard irradiation in the Facility of Radiation Standards in the Japan Atomic Energy Agency (JAEA). The responses of EPD-101 were shown to be within ±20% in the irradiated energy range for the both radiations except for 147Pm emitting low-energy β-rays. In order to examine the applicability of EPD-101 in actual radiation workplaces, measured values of EPD-101 were compared with those of two other types of dosimeters (glass dosimeters and thermoluminescence dosimeters) in hot cells of the Reactor Fuel Examination Facility in JAEA. As a result, EPD-101 showed lower dose for β-ray and higher dose for γ-ray than the other two dosimeters. The differences should be attributed to high-energy β-emitting sources such as 106Ru-106Rh in the facility.

37000040
Structural phase transition in the spin gap system YbAl3C3
松村 武*; 稲見 俊哉; 小坂 昌史*; 加藤 慶顕*; 犬飼 敬希*; 落合 明*; 中尾 裕則*; 村上 洋一*; 片野 進*; 鈴木 博之*
Journal of the Physical Society of Japan 77(10), p.103601_1-103601_4(2008) ; (JAEA-J 05028)
 The unresolved phase transition at 80K in YbAl3C3 has been studied by X-ray diffraction. It has been confirmed that the transition is a structural one with atomic displacement. Superlattice reflections that appear below 80K show that the crystal structure changes from hexagonal to orthorhombic. From the reflection conditions, we conclude that the space group in the low temperature phase is Pbca, where all the atoms occupy the general 8c site. By fitting the observed intensities, we present two possible models of atomic displacement. The displacement results in the deformation of the triangular lattice of Yb spins, which is considered to be responsible for the formation of a spin-singlet ground state at low temperatures.

37000041
Photo-EPR study of vacancy-type defects in irradiated n-type 4H-SiC
梅田 享英*; 森下 憲雄; 大島 武; 伊藤 久義; 磯谷 順一*
Materials Science Forum 600-603, p.409-412(2009) ; (JAEA-J 05029)
 炭化ケイ素(SiC)半導体中の固有欠陥については、電子常磁性共鳴(EPR)及び第一原理計算の手法を用いて微視的構造が解き明かされつつあるが、それらの電子準位はほとんどわかっていないのが現状である。そこでわれわれは、SiC半導体の中でもデバイス応用が最も期待されている六方晶SiC(4H-SiC)に着目し、基本的な点欠陥であるSi単一空孔(Vsi),C単一空孔(Vc),二重空孔(VsiVc)等の電子準位を明らかにするため、窒素ドープn型及びホウ素ドープp型4H-SiC単結晶に3MeV電子線を高温(600∼800℃)で照射して点欠陥を導入し、キセノンランプとモノクロメータを使って単色化した光を試料に当てながらEPR測定を行う、いわゆる光EPR測定を実施した。この結果、Vsi-, Vc-, VsiVc0に関与するEPR信号強度がエネルギー領域0.90∼1.25eVの範囲で光照射により増大することが見いだされ、これらの欠陥の電子準位が伝導帯下端から0.90∼1.25eV範囲に存在することが示唆された。本論文では、光励起による欠陥の荷電状態の変化を考慮しながら、上記固有点欠陥の電子準位について実験・理論両面から探求する。

37000042
Nuclear magnetic relaxation and superfluid density in Fe-pnictide superconductors; An Anisotropic ± s-wave scenario
永井 佑紀*; 林 伸彦; 中井 宣之; 中村 博樹; 奥村 雅彦; 町田 昌彦
New Journal of Physics (Internet) 10(10), p.103026_1-103026_17(2008) ; (JAEA-J 05030)
 鉄系超伝導体に対して、Kurokiらが提唱する5バンドモデル(Phys. Rev. Lett. 101, 087004 (2008))に基づき、核磁気緩和率と超流動密度を理論的に議論した。その結果、それら物理量の実験結果が、ギャップが全面に開いた異方的± s波超伝導によって整合的に説明できることが示され、その± s波超伝導ギャップが超伝導対称性の有力な候補であることがわかった。また、対象とする現象論では、逆格子空間内M点まわりの電子的βフェルミ面上の超伝導ギャップが、異方的であると仮定した。その異方的ギャップの最大値は、最小値に対し約4倍大きく設定される。

37000043
Application of covariances to fast reactor core analysis
石川 眞
Nuclear Data Sheets 109(12), p.2778-2784(2008) ; (JAEA-J 05031)
 本論文では、高速炉解析及び核設計における核データ共分散適用の現状を、幾つかの実例とともに紹介する。核データ共分散の利用は、3つの分野に分けることができる。第一は、臨界性,制御棒価値,Naボイド反応度のような炉心核特性の不確かさを定量的に評価することである。日本では、特に、対象核特性を燃焼特性やドップラー反応度まで拡張している点に特長がある。第二は、核特性の不確かさに大きく寄与する核種・反応・エネルギー領域を特定し、核データ研究者にその精度向上を行う動機を与えることである。第三は、臨界実験データや実機の運転データ(積分データ)を用いて、伝統的なE/Cバイアス補正法や最新の炉定数調整法により、設計精度の向上を図ることである。日本では、既に、統合炉定数ADJ2000Rが、将来高速炉の設計研究に使用されている。

37000044
380 keV proton irradiation effects on photoluminescence of Eu-doped GaN
岡田 浩*; 中西 康夫*; 若原 昭浩*; 吉田 明*; 大島 武
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 266(5), p.853-856(2008) ; (JAEA-J 05032)
 耐放射線性の発光素子開発の一環として、陽子線照射により損傷を導入した無添加及びユーロピウム(Eu)添加窒化ガリウム(GaN)のフォトルミネッセンス特性を調べた。室温にて380keV陽子線を1×1014/cm2まで照射した後、室温にてフォトルミネッセンスを測定した。その結果、無添加のGaNでは1×1013/cm2照射後にはバンド端の発光が著しく減少することが判明した。一方、Eu添加GaNは1×1014/cm2照射後もEu3+5D07F2内殻遷移に起因する発光が初期発光と同程度維持され、優れた耐放射線性を示すことが明らかとなった。

37000045
Bandwidth enhancement for parametric amplifiers operated in chirped multi-beam mode
Terranova, F.*; 桐山 博光; Pegoraro, F.*
Optics Communications 281(19), p.4993-4997(2008) ; (JAEA-J 05033)
 OPCPAの増幅スペクトル幅の拡大を目的として理論的な評価をしている。シグナル光を2つに分離し、位相整合条件をわずかに変化させた2つのOPCPAにてそれぞれ増幅する。このような構成にすることで、一方のOPCPAで短波長側のシグナル光成分を増幅し、もう一方のOPCPAで長波長側のシグナル光成分を増幅することが可能となる。最後に増幅された2つのシグナルビームを重ね合わせることで、シングルビームのOPCPAに必要な大型の非線形光学結晶,大型のポンプレーザーを用いることなしに、高エネルギーでかつ広いスペクトル帯域の増幅が可能であることを理論的に示した。

37000046
Vortex core structure in strongly correlated superfluidity
山田 進; 奥村 雅彦; 町田 昌彦; 大橋 洋士*; 松本 秀樹*
Physica C 468(15-20), p.1237-1240(2008) ; (JAEA-J 05034)
 高温超伝導体の渦糸芯構造を調査するため、密度行列繰り込み群法を利用し、調和ポテンシャルのある1次元ハバードモデルのシミュレーションを原子力機構が所有する並列計算機Altix3700Bx2を用いて実施した。その結果、モット状態が中心に出現し、その周りに金属状態が現れることを見つけた。さらに、アップスピンとダウンスピンの数が異なるとき、モット状態のところに長周期で変化する反強磁性が現れることを見いだした。

37000047
Coupled-channels analyses for large-angle quasi-elastic scattering in massive systems
Zamrun, F. M.*; 萩野 浩一*; 光岡 真一; 池添 博
Physical Review C 77(3), p.034604_1-034604_11(2008) ; (JAEA-J 05035)
 We discuss in detail the coupled-channels approach for large-angle quasi-elastic scattering in massive systems, where many degrees of freedom may be involved in the reaction. We especially investigate the effects of single-, double-, and triple-phonon excitations on the quasi-elastic scattering for 48Ti, 54Cr, 56Fe, 64Ni, and 70Zn+208Pb systems, for which the experimental cross sections have been measured recently. We show that the present coupled-channels calculations well account for the overall width of the experimental barrier distribution for these systems. In particular, it is shown that the calculations taking into account the double-quadrupole phonon excitations in the projectiles and triple-octupole phonon excitations in the target reasonably well reproduce the experimental quasi-elastic cross section and barrier distribution.

37000048
Low-energy spin fluctuations in the ground states of electron-doped Pr1-xLaCexCuO4+δ cuprate superconductors
藤田 全基*; 松田 雅昌; Lee, S.-H.*; 中川 雅陽*; 山田 和芳*
Physical Review Letters 101(10), p.107003_1-107003_4(2008) ; (JAEA-J 05036)
 電子ドープ銅酸化物超伝導体Pr1-xLaCexCuO4+δの反強磁性相からオーバードープ超伝導相に渡る広いドープ領域(0.07< x <0.18)で低エネルギースピン揺動を調べた。低エネルギー磁気励起は、すべての領域において(π, π)の整合位置に現れる。われわれは緩和率とスピン・スティッフネスがxの増加とともに減少し、超伝導の消失とともに消失するという特徴的な性質を明らかにした。

37000049
Longitudinal spin density wave order in a quasi-1D Ising-like quantum antiferromagnet
木村 尚次郎*; 松田 雅昌; 益田 隆嗣*; 本堂 英*; 金子 耕士; 目時 直人; 萩原 政幸*; 竹内 徹也*; 奥西 巧一*; He, Z.*; 金道 浩一*; 谷山 智康*; 伊藤 満*
Physical Review Letters 101(20), p.207201_1-207201_4(2008) ; (JAEA-J 05037)
 擬一次元イジング的量子反強磁性体BaCo2V2O8の中性子回折実験を行い、磁場中で新しいタイプの非整合磁気秩序が現れることを観測した。この秩序は本質的に古典系で予想されるネール秩序とは異なり、量子スピン鎖特有の量子揺らぎに起因する。ギャップレス量子一次元系に特徴的な朝永-ラッティンジャー液体的性質が非整合磁気秩序を引き起こしている。

37000050
Is CO Carbon KVV Auger electron emission affected by the photoelectron ?
Prümper, G.*; 福沢 宏宣*; Rolles, D.*; 酒井 克典*; Prince, K. C.*; Harries, J.; 為則 雄祐*; Berrah, N.*; 上田 潔*
Physical Review Letters 101(23), p.233202_1-233202_4(2008) ; (JAEA-J 05038)
 以前から、内殻光励起に伴うオージェ過程が2段階のプロセスとして扱えるかどうかについて議論してきた。この研究で電子・イオンの同時測定実験を行って、この2段階モデルの適用性について議論する。C(1s)のKVVオージェ電子と同時に酸素一価イオンフラグメントの運動量分布を3つの放射光エネルギーと二つの放射光偏光で測定した。オージェ電子の角度分布のエネルギー依存及び偏光依存が見られないため、2段階モデルが適用だと判断された。

37000051
Kinetic behavior of water as migration media in compacted montmorillonite using H218O and applying electric potential gradient
田中 真悟*; 野田 菜摘子*; 東原 知広*; 佐藤 正知*; 小崎 完*; 佐藤 治夫; 畑中 耕一郎
Physics and Chemistry of the Earth 33(Suppl.1), p.S163-S168(2008) ; (JAEA-J 05039)
 圧縮ベントナイト中の物質移行経路について検討するため、ベントナイトの主成分であるモンモリロナイト中の水の移行挙動について調べた。18Oを水のトレーサとし、モンモリロナイトの乾燥密度1.0, 1.2, 1.4Mg/m3に対して拡散実験と電気浸透実験を行った。拡散実験からは見掛けの拡散係数を、電気浸透実験からは移流速度と水理学的分散係数を決定するとともに、これまでに報告されているHe, Na, Clのデータと比較することにより移行経路について検討した。各イオンの濃度分布とピーク位置の比較から、分散係数はHe, H2O, Cl, Naの順に減少し、この違いは化学種によって移行経路が異なるとともに、移行経路の違いによって分散係数が異なったことによると考えられた。

37000052
Thermodynamic model on swelling of bentonite buffer and backfill materials
佐藤 治夫
Physics and Chemistry of the Earth 33(Suppl.1), p.S538-S543(2008) ; (JAEA-J 05040)
 地層処分において使用される人工バリア材及び埋め戻し材を構成する主要構成粘土鉱物であるスメクタイトに着目し、その表面での水の熱力学データに基づいてベントナイトの膨潤圧を求めた。スメクタイト密度0.6-0.9Mg/m3の範囲において、含水比(0-83%)をパラメータにスメクタイト表面の水の活量と相対部分モルギブスの自由エネルギー(dG)を測定した。スメクタイトは、あらかじめ、層間イオンをNaに置換させるとともに、可溶性塩を除去し、精製したものを用いた。活量とdGは含水比の減少に伴い低下し、過去に報告されたクニピアF(ほぼ100%がスメクタイト)と同様な傾向であった。自由水と含水したスメクタイト間での平衡状態における水の化学ポテンシャルバランスの差(dG)に基づいて膨潤圧を計算し、さまざまな種類のベントナイトや種々の条件で取得された実測値と比較した結果、計算値は実測値と一致した。このことは、ベントナイト中のスメクタイト含有率や珪砂混合率が既知の場合、スメクタイト表面での水の熱力学データに基づいて、任意のベントナイトや乾燥密度に対する膨潤圧を定量的に求めることができることを示している。

37000053
Naphthalene and acenaphthene decomposition by electron beam generated plasma application
Ostapczuk, A.*; 箱田 照幸; 島田 明彦; 小嶋 拓治
Plasma Chemistry and Plasma Processing 28(4), p.483-494(2008) ; (JAEA-J 05041)
 石炭火力発電所からの排ガス中に含まれる典型的な多環芳香族有機物として、ナフタレンやアセナフテンの電子ビームプラズマによる分解挙動を調べた。その結果、ナフタレン及びアセナフテンの分解のG値はそれぞれ1.66及び3.72であり、分解生成物としてはCOやCO2に加えてベンゼン環を1個有する芳香族有機物が生じることを明らかにした。

37000054
Temperature effect on the absorption spectrum of the hydrated electron paired with a metallic cation in deuterated water
熊谷 友多; Lin, M.; Lampre, I.*; Mostafavi, M.*; 室屋 裕佐*; 勝村 庸介
Radiation Physics and Chemistry 77(10-12), p.1198-1202(2008) ; (JAEA-J 05042)
 水溶液の温度と塩濃度が水和電子の構造に与える効果を調べるため、リチウム塩及びマグネシウム塩(LiCl・LiClO4・Li2SO4・MgCl2・Mg(ClO4)2)の高濃度重水溶液中における水和電子の光吸収スペクトルを、パルスラジオリシス法により、25MPaの一定圧力,室温から300℃までの温度条件で測定した。水和電子の光吸収は、塩濃度の上昇に応じて、短波長側へシフトすると同時に、スペクトル幅を広げることが観測された。高温においても、塩の添加によるスペクトルのシフトは観測されたが、スペクトル幅の拡大は、温度上昇に従って減少した。この結果から、高濃度の塩は水和電子に対してイオン雰囲気を形成し、その光吸収を短波長側へ動かすだけでなく、水和構造に影響を及ぼし、スペクトル形状を変化させるが、高温条件下では、温度上昇に伴う密度の低下により、電子と周辺イオン間の距離が長くなり、水和構造に関する効果が観測されなくなるものと考えられる。

37000055
Design of microfission chamber for ITER operations
石川 正男; 近藤 貴; 西谷 健夫; 草間 義紀
Review of Scientific Instruments 79(10), p.10E507_1-10E507_4(2008) ; (JAEA-J 05044)
 ITERでは、マイクロフィッションチェンバー(MFC)を用いて全中性子発生量及び核融合出力の評価を行う。広範囲の運転条件でITERの計測要求を満たすために、高出力運転用(計測範囲: 核融合出力100kW∼1GW)と低出力運転用(同<100kW)の二種類のMFCを組合せて計測する計画である。高出力運転用MFCはプラズマ位置の変化の影響を避けるために、真空容器内の外側上部及び下部の遮蔽ブランケットモジュール背面に設置する予定だが、低出力運転用MFCはサイズが大きいため、水平ポートの上部及び下部に設置することを検討している。プラズマとMFCとの間には、遮蔽ブランケットモジュールやマニフォールド等さまざまな中性子遮蔽体があるため、それらが計測に与える影響を調べるためにMCNPを用いた中性子輸送解析を行った。さらに、プラズマ位置の変化の影響も調べた。その結果、低出力運転用MFCを水平ポート上下に設置した場合、その出力の平均値は、プラズマ位置の垂直方向の変化に対しては影響はないものの、水平方向の変化に対してはプラズマ中心位置に依存して変化をしており、補正が必要であることがわかった。

37000056
Design study of polychromators for ITER edge Thomson scattering diagnostics
梶田 信; 波多江 仰紀; 草間 義紀
Review of Scientific Instruments 79(10), p.10E726_1-10E726_4(2008) ; (JAEA-J 05045)
 ITERの周辺トムソン散乱計測装置においては、光学フィルターと検出器としてアバランシェフォトダイオードを用いたポリクロメーターを検出系に使用する予定である。本研究では、数値計算により得られる電子温度の誤差を指標として、光学フィルターの透過波長領域の最適化を行った。本計測装置では、高い電子温度領域(∼10keV)まで計測する計画であるが、トムソン散乱スペクトルは短波長側まで広がるため、Dα線のようなプラズマからの発光スペクトル線を除去することが重要になる。誤差評価の結果、高い温度領域での誤差を抑えるためには、Dα線以下の短波長領域のフィルターが重要であることが明らかになった。さらに、レーザーの波長である1064nm以上の波長領域のフィルターが計測誤差を抑えるために有効であることが示唆された。

37000057
Water-based sol-gel synthesis and crystal structure refinement of lanthanum silicate apatite
小林 清*; 松下 能孝*; 井川 直樹; 泉 富士夫*; 西村 睦*; 三好 正悟*; 尾山 由紀子*; 山口 周*
Solid State Ionics 179(38), p.2209-2215(2008) ; (JAEA-J 05046)
 アパタイト型ランタンシリケートの新しい合成法を、水溶液を用いたゾルゲル法によって開発した。アパタイト相生成過程をX線回折法とTG-DTAによって調べ、873K以下の温度で二酸化ランタン炭酸塩が生成し、1073K以上の温度でアパタイト型ランタンシリケートが生成することを見いだした。このアパタイト型ランタンシリケートは、粉末X線回折と中性子回折によって空間群がP63/mのオキシアパタイト構造として精密化することができた。

37000058
Isotopic analysis of single uranium and plutonium particles by chemical treatment and mass spectrometry
篠永 妙子*; 江坂 文孝; 間柄 正明; Klose, D.*; Donohue, D.*
Spectrochimica Acta, Part B 63(11), p.1324-1328(2008) ; (JAEA-J 05047)
 単一のウラン及びプルトニウム微粒子の同位体比分析を可能とする方法の開発を行った。電子顕微鏡による観察で選択した粒径数マイクロメートルの個々のウラン及びプルトニウム微粒子をそれぞれ溶解し、誘導結合プラズマ質量分析(ICPMS)及び表面電離型質量分析(TIMS)の2種類の方法により同位体比を分析した。その結果、両分析方法において保証値と一致した結果を得ることができた。以上より、単一微粒子の同位体比分析法として本法が有効であることが示された。

37000059
Extrinsic sensors and external signal generator for advanced transparency framework
勝村 聡一郎; 北端 琢也; 入江 勤; 鈴木 美寿; 橋本 裕; 加藤 慶治*
Transactions of the American Nuclear Society 99, p.780(2008) ; (JAEA-J 05049)
 The "Advanced Transparency Framework" for nuclear fuel cycles has been developed to provide a basis for implementing the framework, including secure and direct monitoring of nuclear operations in real time and to provide a quantitative assessment of diversion risk. For demonstration, prototype software that supports this framework has been developed. This paper will introduce the technical advancements of the installation of extrinsic sensors, an external signal generator for the purpose of the development of the algorithm for the diversion risk calculation.

37000060
Shielding design of spacecrafts using PHITS
佐藤 達彦; Sihver, L.*; Gustafsson, K.*; Mancusi, D.*; 仁井田 浩二*
Transactions of the American Nuclear Society 99, p.592(2008) ; (JAEA-J 05050)
 宇宙線に対する宇宙機の遮へい設計のためには、高エネルギー放射線、特に重イオンの物質内での挙動を的確に模擬可能な放射線輸送計算コードが必要となる。そこで、われわれは、3次元放射線輸送計算コードPHITSを用いた宇宙機遮へい設計の可能性について検討している。本発表では、PHITSの電荷変換核反応断面積及び宇宙機内中性子スペクトルの計算精度検証結果について報告する。本研究により、従来、宇宙分野で一般的に用いられてきた1次元放射線輸送計算コードに比べ3次元コードのPHITSが、より適切な計算結果を与えることが明らかになった。

37000061
Recent improvement of DARWIN; Dose monitoring system applicable to various radiations with wide energy ranges
佐藤 達彦; 佐藤 大樹; 遠藤 章; 執行 信寛*; 保田 浩志*; 高田 真志*; 矢島 千秋*; 中村 尚司
Transactions of the American Nuclear Society 99, p.589(2008) ; (JAEA-J 05051)
 高エネルギー加速器施設や核燃料再処理施設の作業環境など、中性子・光子など多種類の放射線が混在する複合放射線場における被ばく線量を的確に測定可能な放射線モニタDARWINを開発している。DARWINは、以下に示す4つの特徴を有する。(1)1台で幅広いエネルギーの中性子・光子・μ粒子による線量を同時かつリアルタイムで測定可能,(2)高精度及び従来の中性子モニタと比べて10倍以上の高感度,(3)扱いやすいインターフェイスによる高い操作性,(4)軽量。本発表では、その基本的な特性について詳しく説明するとともに、スペクトル導出モードなど、最近追加したDARWINの新しい機能について紹介する。

37000062
「ふげん」原子炉本体解体に向けたAWJ切断技術の適用性試験
中村 保之; 岩井 紘基; 佐野 一哉; 森下 喜嗣; 丸山 信一郎*; 手塚 慎一*; 大鐘 大介*; 高島 雄次*
デコミッショニング技報 (38), p.43-52(2008) ; (JAEA-J 05052)
 新型転換炉「ふげん」(原子炉廃止措置研究開発センター)の原子炉本体は、圧力管型を特徴としている。原子炉本体解体の検討にあたり、圧力管とカランドリア管からなる二重管構造部の同時解体技術として、アブレイシブウォータージェット(AWJ)切断技術を候補にあげ、その適用性を試験によって確認した。試験では、AWJの課題となる二次廃棄物量の低減と水中における切断監視技術の確立を目的として、最適な研掃材供給量,切断への研掃材再利用の可能性、並びに音及び振動による切断監視技術の適用の可能性を確認した。

37000063
中性子反射率法の原理
鳥飼 直也*; 武田 全康
波紋 18(4), p.221-227(2008) ; (JAEA-J 05053)
 中性子反射率法は中性子が物質界面で示す光学的性質を利用して界面構造を非破壊的にサブナノメータの訓間分解能を調べる手法であり、界面の研究に必要不可欠な手法である。中性子の物質界面での反射は一次元の井戸型ポテンシャル問題としてShrödinger方程式で扱うことができる。この解説では、ひとつの界面を持つ単純な単層膜から多数の界面を持つ多層膜試料の中から、典型的な例を用いてその原理を解説する。

37000064
放射線を利用したバイオプラスチックの改質
長澤 尚胤
放射線化学 (85), p.25-31(2008) ; (JAEA-J 05054)
 地球温暖化問題を解決するため、植物由来のバイオプラスチックの利用が期待されている。その中でも実用化が期待されているポリ乳酸について、橋かけ剤を添加後、放射線橋かけを行うことで耐熱性が大幅に改善できることを明らかにした。この技術の適用により、高温に耐える生分解性ポリ乳酸熱収縮材や透明性を保持した射出成形品の開発に発展した。さらに、柔軟で弾力性のあるポリ乳酸を開発することにも成功した。開発したポリ乳酸は、汎用プラスチックの代替え品として幅広い分野での利用価値が高く、その実用化は環境保全のみならず産業振興にもつながるものと期待される。

37000065
放射光X線による先端材料のダイナミックス解析
水木 純一郎
金属 78(11), p.1036-1043(2008) ; (JAEA-J 05055)
 放射光X線の特長を活かした研究や材料評価・解析のキーワードとして、「in situ観察」,「極端条件」,「ダイナミックス」が挙げられる。これらは放射光X線が高輝度性,高指向性,エネルギー可変性の特性を持つことに起因している。ここでは特に、in situ条件下でのさまざまなダイナミックスに注目した物質・材料研究例を示し、それによって新しく見えてきた材料の顔を紹介する。

37000066
衝突入射型レーザー電子加速
小瀧 秀行; 大東 出; 神門 正城; 林 由紀雄; 大道 博行; Bulanov, S. V.
光学 37(11), p.651-653(2008) ; (JAEA-J 05056)
 高強度レーザーとプラズマとの相互作用により生成したプラズマ振動中の電場(ウェーク場)によって荷電粒子を加速する「レーザー加速」により、パルスで低エミッタンス(指向性が高い)の電子ビームを短い加速距離で作ることが可能となる。しかし、1パルスの場合、電子のトラップと加速を同一のレーザーパルスで行うため、安定領域が非常に狭く、電子の発生が不安定になってしまう。これを解決するためには、現在の加速器と同様に、電子バンチの入射と加速の機構を分離してやればいい。そのための方法の1つに複数のレーザーパルスを用いる方法「光電子入射(オプティカルインジェクション)」がある。このうちの電子入射に関しては、幾つかの方法が提案されている。2パルス衝突による安定な高品質電子ビーム発生は、理論及び実験の両方で証明されており、その方法を中心に、光電子入射に関してのレビューを行った。

37000067
「ふげん」原子炉本体解体に向けたAWJ技術の適用性検討評価; 研掃材を再利用した切断試験と切断監視技術の開発
丸山 信一郎*; 手塚 慎一*; 大鐘 大介*
三井住友建設技術研究所報告(CD-ROM) (6), p.185-192(2008) ; (JAEA-J 05057)
 新型転換炉「ふげん」の原子炉は、圧力管型を特徴としている。原子炉本体解体の検討にあたり、圧力管とカランドリア管からなる二重管の同時解体技術として、アブレイシブウォータージェット(AWJ)を候補にあげ、その適用性を試験した。試験では、AWJの課題となる二次廃棄物量の低減と水中における切断監視技術の確立を目的とし、切断への研掃材再利用の可能性と音及び振動による切断監視技術の適用の可能性を確認した。

37000068
3次元格子ガスオートマトン法を用いた高温粒子表面上の蒸気膜崩壊挙動に関する数値シミュレーション
栃尾 大輔; 阿部 豊*; 松隈 洋介*
日本原子力学会和文論文誌 7(4), p.321-327(2008) ; (JAEA-J 05058)
 蒸気爆発の発生には、粗混合した高温液滴表面の蒸気膜崩壊が必要であるとされており、蒸気爆発の発生には蒸気膜崩壊の微視的挙動が重要となる。蒸気膜の崩壊挙動周囲流体の流動より相変化が支配的となることが従来の研究で示唆されている。本研究では、蒸気膜の崩壊挙動に支配的な要因を明らかにするために、3次元格子ガスオートマトン法を用いて蒸気膜の崩壊挙動に関する解析を行った。解析を行うにあたり、格子ガスオートマトン法で沸騰及び相変化を表現するために、加熱壁モデル及び相変化モデルを新たに構築した。これら新たに開発したモデルを用いて、蒸気膜の崩壊挙動に関する解析を、相変化効果がある場合とない場合について行った。その結果、相変化を考慮した場合の解析結果は実験結果と定性的に良い一致を示しており、蒸気膜の崩壊挙動は、周囲流体の流動より相変化挙動に支配されるということが示唆された。

37000069
量子ビームが切り拓く未来,1; 量子ビーム応用研究の動向
長島 章; 藤井 保彦
日本原子力学会誌 50(11), p.696-700(2008) ; (JAEA-J 05059)
 これまで「放射線利用」として開拓されてきた広範な応用分野において、近年の技術展開により、中性子,イオンビーム,レーザー,放射光などの品質の高い放射線の利用技術開発や応用分野の多様化により、「量子ビームテクノロジー」という新たな展開が始まっている。本著は原子力学会からの依頼に基づき、量子ビームテクノロジーの世界的視野での現状と動向について、原子力を専門としない大学生レベルの知識を持っている人を想定し、原子力機構の展開を中核として全4回に渡って解説する。本著は初回として、量子ビームの動向全体を概観し、量子ビームが注目されている状況と国際的な注目分野の概況について記述した。

37000070
イオン交換法による白金族元素の選択的分離・回収
三村 均*; 山岸 功
日本イオン交換学会誌 19(3), p.179-195(2008) ; (JAEA-J 05060)
 使用済核燃料から発生する核分裂生成物核種は有用物質を含有している。特に、Pd, Rh及びRuなどの白金族元素(PGMs)は化学や電気産業の分野で非常に重要である。近年、環境負荷低減及び核種の有効利用の観点から、高レベル廃液からのPGMsの選択的分離及び回収に関心が高まっている。高レベル廃液からのPGMsの選択的分離・回収及びこれらの有効利用は、廃棄物を有用資源に変換するとともに、廃棄物の処理・処分の合理化を達成することができる。PGMsの分離では、コンパクトなカラムプロセスのためにはイオン交換が最も有望な方法と考えられている。本報では、(1)核燃料サイクルにおける白金族の生成と特性,(2)有望なイオン交換体の分離特性、及び(3)PGMsの分離システムについてまとめた。

37000071
粒界凝集エネルギーの第一原理計算; bcc FeΣ3(111)粒界における溶質元素の偏析と脆化及び強化効果
山口 正剛
日本金属学会誌 72(9), p.657-666(2008) ; (JAEA-J 05061)
 溶質元素の偏析による金属の粒界脆化のミクロなメカニズムは長年の間よくわかっていなかった。われわれは第一原理計算により、bcc鉄Σ3(111)対称傾角粒界における粒界凝集エネルギーがイオウやリンによって低下すること、逆にホウ素や炭素によって上昇することを示した。その変化の大きさは、高純度鉄において測定された延性脆性遷移温度の変化と非常によく相関した。すなわち、粒界凝集エネルギーが粒界脆化のカギを握っていることが明らかになった。

37000072
低アルカリコンクリートの鉄筋腐食ひび割れの予測に関する研究
竹田 宣典*; 入矢 桂史郎*; 人見 尚*; 小西 一寛*; 栗原 雄二*
大林組技術研究所報(CD-ROM) (72), 8p.(2008) ; (JAEA-J 05062)
 高レベル放射性廃棄物処分場に適用が検討されているポゾランを多く含む低アルカリセメントを用いたコンクリートの鉄筋コンクリートとしての適用性を評価することを目的として、水セメント比が30%のコンクリートについて、6年間の海洋暴露試験を行い、圧縮強度,塩化物イオンの侵入,鉄筋腐食などの経時変化を調査した。また、これらの結果に基づき、海水起源の地下水を有する環境下で、鉄筋腐食の進行及び腐食ひび割れの発生時期の予測を行った。その結果、下記のことが明らかになった。(1)6年間の海洋環境下における圧縮強度の低下はない。(2)塩化物イオンの侵入は、普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートに比べて少ない。(3)鉄筋腐食は、塩化物イオンの侵入がなくても開始するが、暴露6年までの進行は遅い。(4)海水起源の地下水中における低アルカリセメントを用いたコンクリート中の鉄筋の腐食速度は0.30∼0.55mg/(cm2・年)程度と予測され、かぶり100mm,鉄筋径22mmとした鉄筋コンクリート構造物に用いる場合、建設後50∼100年後に鉄筋腐食に起因したひび割れが発生すると予測される。

37000073
放電・雷における原子・分子過程のモデル化
加藤 進*; 高橋 栄一*; 佐々木 明; 岸本 泰明*
プラズマ・核融合学会誌 84(8), p.477-483(2008) ; (JAEA-J 05063)
 原子・分子過程をモデル化する目的は、力学系としての巨視的なプラズマ挙動の決定と状態の観測の2つに大別できる。大気圧下での分枝構造を持ったストリーマ放電を中心に、巨視的なプラズマ挙動の決定するために用いられている標準的な連続体モデルと巨視的な輸送係数における原子・分子過程のモデル化の役割とその手法を述べる。特に、初期電子生成に重要となる光電離過程について詳しく論じる。最後に分枝構造を取り扱う手法を述べる。

37000074
多価イオンの衝突輻射モデルの構築の自動化支援
佐々木 明; 西原 功修*; 村田 真樹*
プラズマ・核融合学会誌 84(8), p.546-554(2008) ; (JAEA-J 05064)
 多価イオンの発光を用いた分光解析や、光源への応用のためのシミュレーションモデルの構築を目的とし、任意の原子・イオン種を対象としたプラズマの衝突輻射モデルを構築してポピュレーションや発光スペクトルの計算を行えるようにする手法を示す。原子状態の文字列による表現の解釈によってプラズマの状態の決定のために重要な原子状態を推定する方法を示す。そして、衝突輻射モデルで考慮する原子状態の数を変えた計算を行ってポピュレーションや放射損失を収束させ、適切な原子状態を選択する過程を手続き化し、衝突輻射モデルの構築を自動化する方法を示す。

37000075
計測・制御用機能材料
西谷 健夫; 石塚 悦男; 藤 健太郎; 四竈 樹男*; 高橋 幸司
プラズマ・核融合学会誌 84(10), p.635-645(2008) ; (JAEA-J 05066)
 国際熱核融合実験炉ITERは、フランスのカダラッシュに建設が決まり、建屋や主要機器の調達が始まる段階にきている。ITERでは、核融合出力500MW, Q=0の本格的なD-T燃焼を300∼500秒持続することを目標にしており、そのときに第1壁における中性子負荷は約0.3MW/m2、10年間の中性子フルエンスは約3dpaになると見積もられている。ここでは、プラズマ計測・制御用に機能材料として電気絶縁材料と光伝送要素及びプラズマ加熱(ECH)用の真空窓材(人工ダイヤモンド窓)について最近の研究・開発の成果を紹介する。

37000076
フレオン系化合物の誘導ブリルアン散乱特性
吉田 英次*; 長沢 宗幸*; 岡田 大; 藤田 尚徳*; 中塚 正大*; Park, H.*
レーザー研究 36(9), p.566-572(2008) ; (JAEA-J 05067)
 Heavy fluorocarbons and perfluoropolyether liquids are ideal media for high power stimulated Brillouin scattering experiments from ultraviolet to infrared laser. Stimulated Brillouin scattering (SBS) reflectivity and threshold of new SBS liquids were measured systematically at four wavelengths (1064, 532, 355 and 266 nm). Fluorinert FC-72, -75, -77 and Galden HT-70, -135 exhibits high reflectivity of over 90 percents and excellent fidelity in phase conjugation for over 100 mJ, 10 ns optical pulse at 1064, 532 and 355 nm. Among them, FC-77 and HT-70 were found to be good candidates to replace FC-72, -75 liquids which previously were known to be a good SBS media up to now. Heavy fluorocarbons and perfluoropolyether liquids are most promising as a phase conjugate SBS mirror for all solid-state high-energy lasers because of its high damage threshold and low absorbance.

37000077
負の屈折率温度特性を持つ固体材料によるNd:YAGレーザーの熱レンズ補償
吉田 英次*; 竹内 徳洋*; 岡田 大; 藤田 尚徳*; 中塚 正大*
レーザー研究 36(9), p.573-578(2008) ; (JAEA-J 05068)
 We have successfully demonstrated the compensation of thermal lens effect in Nd:YAG laser rods regardless of pumping condition by inserting a solid-state self-adaptive CE (Compensation Element), having negative dn/dT property between two Nd:YAG rods. Several organic resins and a LiF crystal of higher negative dn/dT which have high damage threshold and low absorbance are very useful to compensate thermal effects in the amplifier. The results revealed that the use of several organic resins resulted in the complete reduction of the thermal lens effect by an order of magnitude. This compensation scheme is an ultimate method because of its dynamic compensation feature of the pumping power level.

37000078
レーザー・放電ハイブリッド励起光源のシミュレーション研究
佐々木 明
レーザー・クロス (248), p.2-3(2008) ; (JAEA-J 05069)
 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター,レーザー技術総合研究所,岡山大学,北里大学の研究者を研究分担者として行う、科学研究費基盤研究B「レーザー・放電ハイブリッド励起プラズマ光源における原子輻射過程の統合モデル構築」において扱う、レーザーアシスト放電方式のEUV光源の動作機構及び、その輻射流体力学,原子過程シミュレーション、特にレーザー技術総合研究所の研究者との共同研究の計画や、期待される成果などを、レーザー技術総合研究所の機関誌に寄稿する。

37000079
TBM施工における二次破砕を考慮したディスクカッタの交換寿命の評価
津坂 仁和; 小泉 悠*; 谷本 親伯*; 亀山 克裕*; 宮嶋 保幸*
トンネル工学報告集 18, p.77-84(2008) ; (JAEA-J 05070)
 TBM(Tunnel Boring Machine)は、ディスクカッタ(以下、カッタという)を岩盤に押しつけながら回転させ、隣接破砕を連続的に生じさせて岩盤を掘削する。発破工法に対する同工法の優位性は、岩盤のゆるみの抑制,高速掘進性、そして、掘削作業の安全性である。このため、第2次とりまとめにおいても、処分坑道の掘削に期待される工法として挙げられている。TBMによる岩盤の破砕現象は、切羽から隣接破砕により岩片を掘削することを一次破砕とし、切羽とカッタヘッドの間にたまった岩片が再破砕されることを二次破砕として考えることができる。本報告では、中口径のTBMにより堆積岩と火成岩を掘削した4つの事例を対象に、スクレーパによるずりの取込範囲よりも中心側のカッタの摩耗は主として一次破砕によって生じ、一方、その取込範囲にあるカッタの摩耗は一次破砕に加え二次破砕によって生じるものと考え、それぞれの範囲にあるカッタの交換寿命を考察した。カッタの取付半径が異なるために、カッタが交換されるまでの累積転動距離をその間に生じた摩耗量で除した値をその指標とした。その結果、外周部に取り付けられたカッタの交換寿命は、二次破砕現象により20%以上も低下することが示された。

37000080
Supernova nucleosynthesis and extremely metal-poor stars
冨永 望*; 梅田 秀之*; 前田 啓一*; 岩本 信之; 野本 憲一*
AIP Conference Proceedings 1016 , p.49-54(2008) ; (JAEA-J 05071)
 2次元特殊相対論的流体コードを用いて種族III 40MΟのジェット状超新星爆発における流体的及び元素合成的な性質を調べ、計算で得られたイールドの組成パターンを金属欠乏星のものと比較した。その結果、鉄族元素の放出及び元素合成を受けていない物質のフォールバックにより超金属欠乏星の組成パターンを再現できることを示した。また、エネルギー注入率の異なるジェット状爆発により金属欠乏星の組成パターンの違いを説明できることを明らかにした。

37000081
Improvement of gas-liquid two-phase flow simulation methodology on unstructured grid
伊藤 啓; 功刀 資彰*; 大島 宏之
Proceedings of 16th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-16) (CD-ROM) , 6p.(2008) ; (JAEA-J 05072)
 ナトリウム冷却高速炉におけるガス巻込み現象の数値解析を目的として、Volume-of-fluid法に基づく高精度気液二相流数値解析手法の開発を行っている。ガス巻込み現象は局所の流速や体系形状に大きく依存するため、非構造格子を用いた体系形状の正確な模擬が重要である。しかし、非構造格子系においては、コロケート型変数配置によって気液界面近傍において非物理的な挙動が観察された。本件では、非物理的挙動が不適切な定式化によって誘起されることを示し、気液界面における物理量の釣合いを考慮しながら機構論的に適切な定式化を導く。さらに、新たな定式化を、液中上昇気泡の解析によって検証した。

37000082
Decommissioning program for ATR-FUGEN nuclear power station
佐野 一哉; 北村 高一; 手怐@将志; 水井 宏之; 清田 史功; 森下 喜嗣
Proceedings of 16th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-16) (CD-ROM) , 6p.(2008) ; (JAEA-J 05073)
 新型転換炉ふげんは平成15年3月29日に運転を終了し、その後は安全かつ合理的な廃止措置の実現に向け、廃止措置の準備及び必要な技術開発を進めるとともに、改訂された原子炉等規制法に基づく初めてのケースとして国に対して廃止措置計画の認可申請を行い、平成20年2月12日に認可を取得した。本発表では、「ふげん」の廃止措置計画について、廃止措置の期間を、(1)使用済燃料搬出期間,(2)原子炉周辺設備解体撤去期間,(3)原子炉本体解体撤去期間,(4)建屋解体期間の4つの期間に区分して進める解体計画の概要,放射性廃棄物量の評価や廃止措置時の安全評価の概要等について報告する。

37000083
Champion data comparison in nuclear research institutes in Europe, the U.S., and Japan
柳澤 和章; Cutler, D.*; Brulet, C.*
Proceedings of 3rd European Conference on Management of Technology (EuroMOT 2008) (Internet) , 8p.(2008) ; (JAEA-J 05074)
 原子力知識管理を研究評価の観点から考察した。原子力施設における研究活動の結果から数多くの研究論文が排出されるが、多くの場合これは明確知と認識され広範な知識の普及のために保存されている。本報は、欧州(ドイツ,フランス),米国、及び旧原研(現:日本原子力研究開発機構)を対象に8原子力研究機関で保存されている研究論文を使い、計量書誌学的な方法で研究機関比較を実施し、論文数のランキングからチャンピオン評価(追跡評価)を行った。INIS(IAEA主管)及びECD(米国DOE主管)というデータベースの形式により50年以上にわたって原子力知識が明確知の形で知識管理されていることを確認した。30年間(1978年から2007年)という期間設定を行い論文数による機関優劣比較を実施してみた結果、いずれのデータベースでもORNLが第1位であった。旧原研は、INISで第2位、ECDでは第7位であった。

37000084
Numerical analysis of supercritical water flowing in an annular channel using the two-fluid model code ACE-3D
中塚 亨; 三澤 丈治; 吉田 啓之; 高瀬 和之
Proceedings of 6th Japan-Korea Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-6) (USB Flash Drive) , 4p.(2008) ; (JAEA-J 05075)
 超臨界圧水冷却炉(SCWR)の熱的安全性を確認するためには、燃料集合体内の冷却材の熱流動特性を把握することが重要であり、模擬燃料集合体による試験結果を補間する解析的手法の確立が必要である。本研究では、原子力機構で開発している3次元2流体モデル解析コードACE-3Dを超臨界領域の物性値を扱えるように改良し、改良したACE-3Dコードを使って燃料棒周りの流れを模擬した垂直環状流路における超臨界水の熱伝達特性試験結果に対して検証解析を実施した。一連の解析の結果、壁面温度の計算結果は試験結果とおおむね一致しており、ACE-3DコードはSCWR炉心を模擬した体系における超臨界水の熱伝達予測に適用可能であることが確認できた。今後の課題としては、伝熱劣化領域における予測精度向上が挙げられる。

37000085
Experimental study on onset of gas entrainment by 1/1.8 scale model of sodium cooled fast reactor
江連 俊樹; 木村 暢之; 宮越 博幸; 上出 英樹
Proceedings of 6th Japan-Korea Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-6) (USB Flash Drive) , 6p.(2008) ; (JAEA-J 05076)
 設計検討中のナトリウム冷却高速炉(JSFR)において自由液面でのガス巻込み現象が重要な課題になっている。これまでの試験から、著者らはガス巻込みが定常状態において抑制されることを確認している。本報では、実機炉上部液面付近を模擬した大規模縮尺の部分モデル試験装置を用いて、実機の起動時を対象とした水試験を実施した。液面の可視化を行いガス巻込み発生条件を計測した。また、ガス巻込みの発生メカニズムを明らかにするために、鉛直方向流速分布計測を実施した。試験の結果、実機起動時ではガス巻込みが発生しないことを確認した。

37000086
Validation of numerical simulation method for thermal stratification in reactor vessel upper plenum of fast reactor
大野 修司; 大木 裕*; 菅原 章博*; 大島 宏之
Proceedings of 6th Japan-Korea Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-6) (USB Flash Drive) , 7p.(2008) ; (JAEA-J 05077)
 高速炉上部プレナム温度成層化に関する基本的な数値解析手法を検証するために、商用コードSTAR-CD, FLUENT及び内製コードAQUAを使って、比較的簡易な体系における2種類の試験(水試験,ナトリウム試験)の解析を実施している。メッシュ分割や乱流モデルを変えた場合における温度成層化基本現象の再現性について報告する。

37000087
Experimental study on thermal stratification in a reactor vessel of innovative sodium cooled fast reactor; Mitigation approach of temperature gradient across stratification interface
木村 暢之; 宮越 博幸; 上出 英樹
Proceedings of 6th Japan-Korea Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-6) (USB Flash Drive) , 7p.(2008) ; (JAEA-J 05078)
 ナトリウム冷却高速炉のスクラム過渡時温度成層化現象に関して、1/10縮尺炉上部プレナム水流動試験装置を用い、成層界面挙動に対する燃料交換機貫通孔プラグ高さの影響を評価した。プラグを炉上部プレナム内に深く挿入することで、炉容器壁近傍の成層界面温度勾配は小さくできるとともに、界面の変動に伴う温度変動も低減できることがわかった。

37000088
Study on flow-induced-vibration evaluation of large-diameter pipings in a sodium-cooled fast reactor, 1; Sensitivity analysis of turbulent flow models for unsteady short-elbow pipe flow
相澤 康介; 中西 繁之; 山野 秀将; 小竹 庄司; 早川 教*; 渡辺 収*; 藤又 和博*
Proceedings of 6th Japan-Korea Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-6) (USB Flash Drive) , 7p.(2008) ; (JAEA-J 05079)
 JSFRで用いられるショートエルボ内の流力振動を評価するうえで、解析評価は必須である。本研究では、ショートエルボ内非定常流動に対する乱流モデルの解析を実施した。乱流モデルはLESとRSMの二つを検討することとし、両乱流モデルについて離散化手法,壁関数,メッシュ分割等をパラメータとして解析を実施し、1/3スケール水試験結果を再現できる解析モデルを選定した。両乱流モデル解析とも、エルボ下流における渦放出の非定常挙動及び剥離内の逆流を再現でき、また試験では確認できなかった剥離のスパン方向の揺らぎを明らかにした。剥離域内の圧力変動レベルは両解析と試験間でおおむね一致しているが、圧力変動のPSDについては、試験で観測された10Hz付近の卓越周波数をLESは再現できないが、RSMはよく捉えることがわかった。

37000089
Thermal mixing in T-junction piping system concerned with high-cycle thermal fatigue in structure
田中 正暁; 大島 宏之; 文字 秀明*
Proceedings of 6th Japan-Korea Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-6) (USB Flash Drive) , 8p.(2008) ; (JAEA-J 05080)
 数値解析コード"MUGTHES"を用いてT字合流配管部におけるサーマルストライピング現象の数値解析を実施した。解析では、モデル定数を0.14(=Cs)とした標準スマゴリンスキーモデルを用いた。数値解析結果と実験結果との比較により、MUGTHESコードのサーマルストライピング現象への適用性を確認するとともに、数値解析により高サイクル熱疲労現象を引き起こすと考えられる特徴的な大スケール渦の存在について明らかにした。

37000090
Numerical analysis of highly underexpanded jets by multi-phase flows and sodium-water reaction analysis program seraphim
内堀 昭寛; 渡部 晃*; 大島 宏之
Proceedings of 6th Japan-Korea Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-6) (USB Flash Drive) , 8p.(2008) ; (JAEA-J 05081)
 ナトリウム冷却高速炉の蒸気発生器において伝熱管破損時に生じるナトリウム-水反応及び圧縮性混相流現象を対象に、数値解析コードSERAPHIMの開発整備を進めている。SERAPHIMコードでは、流速場・温度場・濃度場など材料損傷環境を評価することが目的であるが、そのためには伝熱管破損口から水蒸気が噴出したとき形成される不足膨張噴流に対して十分な再現性を得ることが必要不可欠である。そこで本研究では、SERAPHIMコードにおける数値解析手法の高度化を目的に、不足膨張噴流現象に対する再現性検証解析を実施した。空気中空気噴流の解析を実施した結果、1次精度風上差分では十分な再現性を得ることができないが、高次精度離散化手法(2次精度TVDスキーム)を適用すれば噴流形状や衝撃波(マッハディスク)の形状及び形成位置を実機相当の圧力条件において精度よく予測できることがわかった。さらに、同手法により水中に空気が噴出した場合の流況についてもおおむね正しく再現できることを確認した。

37000091
RELAP5 post-test analyses of OECD/NEA ROSA project experiments on steam generator depressurization with or without non-condensable gas inflow
竹田 武司; 浅香 英明*; 渡辺 正; 中村 秀夫
Proceedings of 6th Japan-Korea Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-6) (USB Flash Drive) , 8p.(2008) ; (JAEA-J 05082)
 PWRでの0.5%低温側配管小破断冷却材喪失事故(LOCA)を模擬したOECD/NEA ROSAプロジェクト実験をLSTFを用いて行った。高圧注入系全故障と蓄圧注入タンクからの非凝縮性ガス(空気)流入の有無を仮定し、安全注入設備作動信号発信後10分に逃し弁全開による蒸気発生器(SG)二次側減圧を開始した。また、低圧条件下での自然循環(NC)現象をよく観察するため、一次系圧力が2MPaに低下時にSG安全弁を全開して減圧を促進させるとともに、低圧注入系不作動を仮定した。非凝縮性ガスの一次系ループへの流入により、SG U字管内凝縮熱伝達が阻害され、一次系減圧率は低下したが、非凝縮性ガスの流入後でさえも二相NCは継続した。非凝縮性ガスの影響下で、順流となるSG U字管本数がループ間で異なり、非対称なNC挙動となった。原子力機構改良版RELAP5/MOD3.2.1.2コードは、特に非凝縮性ガス流入後の一次系ループ流量,SG U字管水位挙動の予測に課題が有り、正確な予測には非凝縮性ガス混合条件下での凝縮熱伝達モデルやSG U字管モデルの改良が必要と考えられる。

37000092
Investigation on flow field around a slit of Upper Internal Structure (UIS) in a highly compact vessel of a sodium cooled fast reactor
上出 英樹; 相澤 康介; 大嶋 淳*; 中山 王克*; 笠原 直人
Proceedings of 6th Japan-Korea Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-6) (USB Flash Drive) , 8p.(2008) ; (JAEA-J 05083)
 原子力機構では改良ループ型ナトリウム冷却高速炉の開発を進めている。炉容器径の削減を目的として燃料交換システムの簡素化を行った結果、炉上部機構(UIS)は燃料交換機のアームを通すために半径方向の切込みを有する構造とした。このUIS切込みは炉心出口から上方に向かう速い流れを許すことになり、炉容器内自由液面でのガス巻込みや破損燃料位置検出器における遅発中性子先行核のサンプリングに影響を及ぼす。そこで、1/10縮尺炉上部プレナムモデルを用いた水試験により、可視化と流速測定を行った。UISは制御棒上部案内管(CRGT)と6枚の水平多孔板からなっている。この複雑な形状に対応するため、可視化には、屈折率調整の手法を用いた。UISの1/4セクター部にあるCRGTを水と屈折率がほぼ等しいフッ素系樹脂を用いてモデル化した。粒子画像流速測定法を用いて流速場を測定した結果、切込み部の流速はUISの水平多孔板の高さで加速され、炉上部プレナムの高い位置まで速い流速を維持することがわかった。複雑な形状を持つUISに対して適切な流動解析手法の知見を得るため、CFDコードを用いた実験解析を実施した結果、解析された流速場は実験結果によく一致した。

37000093
Improvement of gas entrainment evaluation method; Introduction of surface tension effect
伊藤 啓; 江口 譲*; 文字 秀明*; 大島 宏之; 内堀 昭寛; Xu, Y.*
Proceedings of 6th Japan-Korea Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-6) (USB Flash Drive) , 8p.(2008) ; (JAEA-J 05084)
 前回の会議(NTHAS5)にて提案したガス巻込み評価手法は、数値解析結果から得られる局所瞬時の値を伸長渦理論に適用することで、ガスコア長さを効率的に予測することが可能である。しかし、表面張力効果を無視しているため、ガスコア長さが過大評価されている可能性がある。本研究では、表面張力モデルの構築とガス巻込み評価手法への組込みを行い、ガスコア長さ予測精度の向上を図る。表面張力モデルの構築においては、重力,遠心力及び表面張力の力学的釣合い式を導出し、ガスコア先端形状を2次関数近似することで曲率を求め、ガスコア長さを算出する手法を導いた。改良ガス巻込み評価手法を用いて基礎実験体系におけるガスコア長さの予測を行った結果、従来手法よりも短いガスコア長さが評価され、実験結果との一致性が向上した。さらに、改良手法を用いることで、温度や表面張力係数が変化する場合の実験結果を再現することができた。

37000094
Rationalization of gas entrainment allowance level at free surface of sodium-cooled fast reactor
山口 彰*; 高田 孝*; 辰巳 栄作*; 伊藤 啓; 大島 宏之; 上出 英樹; 榊原 潤*
Proceedings of 7th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics, Operation and Safety (NUTHOS-7) (CD-ROM) , 16p.(2008) ; (JAEA-J 05085)
 ナトリウム冷却高速炉の一次冷却系統内には、カバーガスの巻込み及び溶存と制御棒からのヘリウムガス放出によるガスが、溶存ガスもしくは気泡の形態で混入している。ガスは炉心反応度の擾乱や沸騰核の生成等を誘起する可能性があるため、安全の観点からガスを抑制する設計とすることが重要であり、ガス巻込みや気泡濃度に関する許容量を定める必要がある。本研究では、高速炉におけるガス巻込み許容量の検討と合理化として、ガス巻込みの影響を炉心入口ボイド率によって評価し、バックグラウンドのガス量を考慮することで受容できるガス巻込み量とガス濃度の提案を行う。そのために、プラント動特性解析コードVIBULの開発を行っており、本コードを用いて高速炉システム内の溶存ガスや気泡の濃度分布を評価する。コードを用いて気泡挙動を評価することでバックグラウンド気泡量が得られ、総気泡量がバックグラウンド量の105%以内に収まるという条件下において、設計における予備的なガス巻込み許容量が巻込み率と巻込み気泡径に関するマップとして導かれる。さらに、ガス抜き機構による気泡除去の成立性について調査を行った。

37000095
Suppression of high-cycle thermal fatigue at a mixing tee with a 90-degree bend upstream by changing its geometry
結城 和久*; 小原 啓*; 橋爪 秀利*; 田中 正暁; 村松 壽晴; 戸田三朗 *
Proceedings of 7th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics, Operation and Safety (NUTHOS-7) (CD-ROM) , 21p.(2008) ; (JAEA-J 05086)
 上流に90度曲がり管(エルボ)を有するT字合流配管部で、PIV(粒子画像計測法)により速度場の計測と流体温度計測を実施した。実験パラメータはエルボ出口からT字合流部までの距離及びエルボの曲率半径である。実験により、曲率半径の大小(はく離の有無)に応じて、エルボとT字合流部との距離を適切に定めることで流体混合による高サイクル熱疲労の発生を緩和する手法を提案した。

37000096
Basic policy for decommissioning of nuclear power plant in Japan and the decommissioning of Fugen
森下 喜嗣
Proceedings of International Symposium on Advanced Mechanical and Power Engineering 2008 (ISAMPE 2008) , p.211-217(2008) ; (JAEA-J 05087)
 日本においては、役目を終えた原子力発電施設は5∼10年の安全貯蔵の後に解体撤去することを基本としている。重水減速沸騰軽水冷却圧力管型原型炉である「ふげん」は、25年間の運転の後に原子炉を停止し、その廃止措置のための計画を整備してきた。本年2月に「ふげん」の廃止措置計画は認可され、2028年までに完了の予定で施設の解体に着手した。本稿では、日本における原子炉廃止措置の基本的考え方と「ふげん」の廃止措置について紹介する。

37000097
Development and validation of high-precision CFD method with volume-tracking algorithm for gas-liquid two-phase flow simulation on unstructured mesh
伊藤 啓; 功刀 資彰*; 大島 宏之
Proceedings of OECD/NEA Workshop on Experiments and CFD Code Applications to Nuclear Reactor Safety (XCFD4NRS) (CD-ROM) , 12p.(2008) ; (JAEA-J 05088)
 ナトリウム冷却高速炉の設計研究において、コンパクト化した炉容器の採用が予定されているが、それによって冷却材流速が高速化し、ガス巻込み現象の発生をもたらす可能性がある。ガス巻込み現象の発生条件を理論的に導くのは困難であるため、高精度気液二相流数値解析手法の開発を実施しており、複雑な体系形状を正確に模擬するために非構造格子を採用し、気液二相流数値解析手法として高精度Volume-of-Fluid法の導入と非構造格子系における定式化を行った。開発した数値解析手法は、Driven Cavity問題やSlotted Disk回転問題,上昇気泡問題などを解くことで検証し、その後、ガス巻込み現象の解析に適用した結果、ガス巻込み現象の発生を再現することに成功した。

37000098
太平洋及び日本海におけるヨウ素129の鉛直分布
鈴木 崇史; 皆川 昌幸*; 天野 光; 外川 織彦
第10回AMSシンポジウム報告集 , p.147-150(2008) ; (JAEA-J 05089)
 ヨウ素129は半減期1570万年の長寿命放射性核種である。大気核実験や核燃料再処理工場の稼動により環境中に129Iが放出されるため、環境中での129Iの移行挙動が注目されている。そこで本研究では海水中の129I濃度を測定することにより、海水中の129Iの移行挙動を考察した。海水試料は太平洋の1地点(釧路沖)と日本海の2地点(日本海盆及び大和海盆)で採取した。試料中の129I/127Iは原子力機構むつ事務所のAMSで測定した。表面海水中(水深5m)の129I/127Iは釧路沖、日本海盆及び大和海盆でそれぞれ(7.1±0.5)×10-11, (5.8±0.2)×10-11及び(4.6±0.6)×10-11であった。釧路沖の129I鉛直分布は水深とともに減少した。水深1500mから5000mまでの129I濃度は一定となり、129I/127I=(1.4±0.6)×10-12を得た。人為起源129Iを含まない天然レベルの129I/127Iが(1.5±0.15)×10-12であることから太平洋の1500m深まで人為起源の129Iが沈み込んでいることがわかった。一方、日本海の日本海盆と大和海盆では129I濃度は太平洋と同様に水深とともに減少し、2000m以深で一定値となり、その129I/127Iは日本海盆と大和海盆でそれぞれ(8.3±0.6)×10-12及び(9.8±0.8)×10-12であった。天然レベルの129I/127I値から考えると、人為起源129Iが日本海の深部まで沈み込んでいるためだと考えられる。

37000099
新規なAMS用ターゲットの製作方法に関する研究
片山 淳; 亀尾 裕; 中島 幹雄; 松崎 浩之*
第10回AMSシンポジウム報告集 , p.234-237(2008) ; (JAEA-J 05090)
 129Iを加速器質量分析装置で分析するためには、従来ヨウ化銀の沈殿から測定ターゲットを作製する。より高感度に129Iを分析するためには、沈殿生成のために加える担体量を減らす必要がある。しかし、沈殿の生成と回収には1mg以上の担体が必要である。本研究では、沈殿生成の代わりに銀表面へのヨウ素分子の吸着反応を利用した直接的な測定ターゲットの作製方法の基礎検討を行った。本法によれば、1から0.2mgの担体で測定ターゲットを作製することができた。

37000100
高速炉蒸気発生器水側熱流動解析手法の開発
吉川 龍志; 浜田 広次; 大島 宏之; 柳沢 秀樹*
第13回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集 , p.495-496(2008) ; (JAEA-J 05091)
 高速増殖炉の蒸気発生器における詳細な熱流動現象を評価することを目的として、数値解析コードを整備している。その一環として、サブクール沸騰及び二相流スリップ効果を取り込んだドリフトフラックスモデルを用いて、蒸気発生器水側の不安定挙動解析に適用可能な手法を開発した。また、密度波不安定流動に適用する解析アルゴリズムを検討した結果、複雑な行列計算の必要がない、大きい時間ステップが可能である数値方法を考案した。サブクール沸騰モデルについては、定常流動のボイド率分布の計算によりその機能を検証した。さらに、出入口圧力,熱流束を境界条件として与えて、入口流量を計算する流動不安定性解析により、非定常流動の解析機能を確認した。

37000101
放射線によるゲノム損傷とその生体修復のせめぎあい
横谷 明徳
茨城大学イブニングセミナー; 放射線によるゲノム損傷とその生体修復のせめぎあい , 19p.(2008) ; (JAEA-J 05092)
 生体は土壌や宇宙など環境からの放射線に絶えず晒され、その結果ゲノム中の遺伝子分子(DNA)に化学的な構造変化(損傷)が高い頻度で生じていることが知られている。生命は進化の過程で、これらのDNA損傷を効率よく酵素的に除去し元に戻す仕組み(修復機構)を備えてきた。しかし、まれに修復がうまく働かない場合には、突然変異など重大な影響が現れる。われわれは、この原因となる難修復性のDNA損傷の実体解明を目指している。最近、ナノメートル程度の狭い領域に複数の損傷が同時に生じる、クラスターDNA損傷が提案されている。このような局所的に生じた複数の化学変化はDNAの立体構造を歪めてしまうため、修復酵素が損傷部位に結合できないと推測される。私たちはDNA損傷の「難修復特性」を明らかにするために、実際に放射線照射したDNAに実際に修復酵素を作用させその修復度合いを観察する一方、兵庫県播磨地区にある世界最高性能のシンクロトロン放射施設(SPring-8)を活用して、DNA損傷の生成過程を物理化学的な見地からも追跡している。本セミナーでは、これらの研究成果を紹介する。

37000102
気泡注入による水銀中キャビテーションの抑制
井田 真人; 直江 崇; 二川 正敏
日本機械学会第21回計算力学講演会論文集(CD-ROM) , p.572-573(2008) ; (JAEA-J 05093)
 J-PARC核破砕中性子源の開発において、水銀中で発生するキャビテーションとそれによる水銀容器の損傷が大きな問題となっている。本講演では、キャビテーションの発生を抑制すべく試みている「気泡注入」について、その効果を解析的に議論した結果を紹介する。気泡同士の相互作用までを考慮に入れた解析により、(1)水銀に注入したガス気泡が水銀中の負圧を減少させること,(2)それによりキャビテーションの発生が抑え込まれること,(3)注入した気泡自体は膨張率や最大崩壊速度が小さく、そのため損傷の原因にはなりにくいこと等が明らかになった。

37000103
マイクロバブル注入によるキャビテーション抑制の数値的検証
井田 真人; 直江 崇; 二川 正敏
日本流体力学会年会2008拡張要旨集(CD-ROM) , 4p.(2008) ; (JAEA-J 05094)
 気泡注入がキャビテーション初生に与える効果を明らかにするため、キャビテーション気泡とガス気泡の相互作用について数値的に議論した。われわれは既報において、機械衝撃を受けた水銀中でキャビテーションが発生すること、そしてそれが核破砕中性子源に深刻な損傷を与えるだろうことを示した。本研究では、先在するガス気泡との相互作用までを考慮した複数気泡モデルにより、水銀への気泡注入がキャビテーション気泡の運動をどのように変えるかを議論した。その結果、水銀がキャビテーション気泡より十分に大きいガス気泡を含むときに、ガス気泡から放射される正の圧力波がキャビテーション気泡の急膨張を抑え込むことを見いだした。また、注入したガス気泡それ自身が損傷の原因になる可能性について議論し、ガス気泡の運動はキャビテーション気泡よりずっと穏やかであることを示した。

37000104
Evaluation of counting efficiency of whole-body counter using "MAX06" voxel phantom
高橋 聖; 木名瀬 栄; Kramer, R.*
KEK Proceedings 2008-7 , p.34-40(2008) ; (JAEA-J 05095)
 国際放射線防護委員会(ICRP)は2007年に刊行した新勧告において、内部被ばく実効線量係数は、人体断層画像をもとに開発された標準人数学ファントムを用いて導出されると明記した。この標準人数学ファントムは、ボクセルと呼ばれる微小体積の直方体の集合で表現され、ICRPの定義する標準人と等しい体型及び臓器質量を持つ。今回われわれは、ICRP標準人データをもとに開発されたボクセルファントム"MAX06"を用いてシミュレーション計算を行い、原子力機構に設置されている全身カウンタのICRP標準人に対する計数効率を求めた。その結果、実際の人体形状に限りなく近いICRP標準人モデルに対する全身カウンタの計数効率を取得でき、より信頼性の高い内部被ばく線量評価が可能になったと考える。

[ page top ]
JAEA > JAEA図書館 > JOPSS > 学会誌等掲載論文[バックナンバー] >  2009年1月
Copyright (C), Japan Atomic Energy Agency (JAEA)