学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2009年11月


37001351
Understanding covalent mechanochemistry
Ribas-Arino, J.*; 志賀 基之; Marx, D.*
Angewante Chemie International Edition 48(23), p.4190-4193(2009) ; (JAEA-J 06363)
 化学結合の解離を機械的に制御することは「メカノケミストリー」と呼ばれ、新しい分野として成長しつつあるが、その背景となる理論はまだ確立されていない。ここでは、外力により変形された断熱ポテンシャル面上での分子運動について福井の固有反応座標のコンセプトを取り入れるという、新しい方法を提案する。また、これをもとに最近超音波実験で得られている禁制のペリ環状反応の仕組みについて説明する。

37001352
Heavy-ion-induced bystander killing of human lung cancer cells; Role of gap junctional intercellular communication
原田 耕作*; 野中 哲生*; 浜田 信行*; 桜井 英幸*; 長谷川 正俊*; 舟山 知夫; 柿崎 竹彦*; 小林 泰彦; 中野 隆史*
Cancer Science 100(4), p.684-688(2009) ; (JAEA-J 06364)
 The aim of the present study was to clarify the mechanisms of cell death induced by heavy-ion irradiation focusing on the bystander effect in human lung cancer A549 cells. In microbeam irradiation, each of 1, 5 and 25 cells under confluent cell conditions was irradiated with 1, 5 or 10 particles of energetic carbon ions, and then the surviving fraction of the population was measured by a clonogenic assay in order to investigate the bystander effect of heavy-ions. In this experiment, the limited number of cells (0.0001-0.002%, 5-25 cells) under confluent cell conditions irradiated with 5 or 10 carbon ions resulted in an exaggerated 8-14% increase in cell death by clonogenic assay. However, these overshooting responses were not observed under exponentially growing cell conditions. Furthermore, these responses were inhibited in cells treated with an inhibitor of gap junctional intercellular communication (GJIC), whereas these were markedly enhanced by the addition of a stimulator of GJIC. The present results suggest that bystander cell killing by heavy-ions was induced mainly by direct cell-to-cell communication, such as GJIC, which might play important roles in the bystander responses.

37001353
Age-momentum correlation measurements of positron annihilation in water; Possibility of quantum beats on ortho-positronium reactions
平出 哲也
Chemical Physics Letters 480(1-3), p.132-135(2009) ; (JAEA-J 06365)
 不対電子のスピンに相関のあるオルソーポジトロニウムとヒドロキシルラジカルの反応において、陽電子消滅寿命-運動量相関測定(AMOC)によって量子ビートを観測した。水中に入射した陽電子の照射効果によって、オルソーポジトロニウムとヒドロキシルラジカル中の不対電子が一重項状態であるラジカル対が形成される。このラジカル対のスピン状態は、それぞれのラジカル中で超微細結合に由来する電子の歳差運動によって一重項と三重項の間を振動する。その結果、ラジカル間のラジカル反応速度がスピン状態に依存し、結果として、ラジカル反応の競争反応であるスピン交換反応もスピン状態に依存することとなる。スピン交換反応ではオルソーポジトロニウムは短寿命(約125ピコ秒)のパラーポジトロニウムに変化し、自己消滅する。パラーポジトロニウムの自己消滅によるγ線は運動量の広がりが小さく、その結果、スピン依存の反応の時間依存性をAMOCで観測することが可能となり、量子ビートとして観測することに成功した。この測定によって、水の構造として2状態モデルを支持する結果が得られた。

37001354
225Ac metallofullerene; Toward 225Ac nanogenerator in fullerene
秋山 和彦*; 羽場 宏光*; 末木 啓介*; 塚田 和明; 浅井 雅人; 豊嶋 厚史; 永目 諭一郎; 片田 元己*
Chemistry Letters 38(10), p.978-979(2009) ; (JAEA-J 06366)
 放射性トレーサー225Acを内包した金属フラーレンの合成に成功した。さらにラジオクロマトグラフ法により225Ac内包フラーレンの溶離挙動を調べ、使用したカラムへの保持時間とフラーレンケージ上のπ電子数の相関から、内包フラーレンの化学種をAc C82と決定した。

37001355
Ab initio calculations of Fe-Ni clusters
中沢 哲也; 五十嵐 誉廣; 都留 智仁; 加治 芳行
Computational Materials Science 46(2), p.367-375(2009) ; (JAEA-J 06367)
 Fe, Ni、及びFe-Niクラスターについて密度汎関数法を基礎とした計算科学的手法により調べた。クラスターの構造はUB3LYP/LanL2DZレベルにおいて対称性の制約のもと最適化した。本研究では平衡構造と結合エネルギーを示し、密度解析の結果や電子配置とともに議論した。さらに、Fen-xNixクラスターの結合エネルギーはFe原子のNi原子での連続的な置換によって緩やかに減少することがわかった。異性体間における全エネルギーの比較からFe-Niの混合クラスターではNi原子はエネルギー的にクラスタリングをしやすいことが明らかとなった。本研究は、照射した圧力容器で観察されているNiクラスターやステンレス鋼で見られる照射誘起偏析のNi富化などの実験結果と定性的に一致している。

37001356
Sedimentation of impurity atoms in InSb semiconductor under a strong gravitational field
井口 裕介*; 小野 正雄; 岡安 悟; 真下 茂
Defect and Diffusion Forum 289-292, p.319-322(2009) ; (JAEA-J 06368)
 これまでに、合金や化合物に100万Gレベルの超重力場を加えることで、構成原子の沈降現象を誘起し、原子スケールの傾斜構造の形成に成功してきた。本研究では、超重力場下の半導体中での不純物原子の沈降について調べた。試料はGeを物理蒸着(PVD)したInSb単結晶ウエハーとし、超重力場実験条件は、最大遠心加速度59万G,超重力場実験としては比較的高温の400℃の試料温度にて、60時間とした。超重力場処理したGeの侵入深さが、地上重力場下で同一温度で熱処理した場合に比べ数倍深くなっていることがわかった。

37001357
Formation of amorphous graded structure in Bi3Pb7 intermetallic compounds under strong gravitational field
真下 茂; 井口 裕介*; Bagum, R.*; 佐野 智一*; 竹田 晋吾*; 木村 滋*; 坂田 修身*; 小野 正雄; 岡安 悟; 鶴井 隆雄*; 平賀 賢二*
Defect and Diffusion Forum 289-292, p.357-360(2009) ; (JAEA-J 06369)
 単相で均一なBi3Pb7金属間化合物を、102万G,130℃,100時間の実験条件にて超重力処理したところ、目視でも確認できる特異なナノ構造を持つ4つの層状構造が形成された。重力が最も小さい領域となる4番目の層では、純Biの析出が見られ、2,3番目の層では、Pbの組成が重力方向に増加する組成傾斜構造が形成されていた。2層目では、アモルファス相が含まれていることを示唆する非常にブロードなピークを持つX線回折パターンが確認された。

37001358
Identification of PprM; A Modulator of the PprI-dependent DNA damage response in Deinococcus radiodurans
大庭 寛史; 佐藤 勝也; Sghaier, H.; 柳沢 忠*; 鳴海 一成
Extremophiles 13(3), p.471-479(2009) ; (JAEA-J 06371)
 デイノコッカス・ラジオデュランスは、PprIが中心的な役割を果たすDNA損傷応答機構を持っており、RecAやPprAの発現を誘導している。このDNA損傷応答機構の特質をさらに明らかにするために、PprI依存性情報伝達経路の新たな因子の同定を試みた結果、コールドショックタンパク質(Csp)と相同性を持つ新たな制御タンパク質を発見し、このタンパク質をPprMと命名した。pprM遺伝子破壊株は、γ線に著しく感受性を示した。PprMタンパク質は、デイノコッカス・ジオサーマリスやサーマス・サーモフィルスのCSPとともに亜群を形成する独特な分岐群に属していた。また、PprMタンパク質の働きによって、PprAの発現は誘導されるが、RecAの発現は誘導されなかった。PprMタンパク質は、大腸菌のCspDの場合と同様に、生理的条件下で2量体を形成していた。pprA pprM二重遺伝子破壊株は、どちらか一方の遺伝子が欠損した菌株よりも高い放射線感受性を示したことから、PprMタンパク質はPprAタンパク質以外の放射線耐性に重要な未知タンパク質を制御していると考えられた。

37001359
Free radical scavenging reactions and antioxidant activities of silybin; Mechanistic aspects and pulse radiolytic studies
Fu, H.*; Lin, M.; 室屋 裕佐*; 端 邦樹; 勝村 庸介; 横谷 明徳; 鹿園 直哉; 籏野 嘉彦
Free Radical Research 43(9), p.887-897(2009) ; (JAEA-J 06372)
 Silybin (extracted from Silybum marianum) is the major active constituent of silymarin which possesses a wide range of medicinal properties. These properties may be, in part, due to the potent scavenging capacity of oxidizing free radicals. In this context, scavenging radicals (hydroxyl, azide, dibromide anion radicals, nitrite, carbonate, etc.) of silybin have been studied to understand the mechanistic aspects of its action against free radicals. The transients produced in these reactions have been assigned and the rate constants have been measured by pulse radiolysis techniques. Reduction potential determined both by cyclic voltammetry gave a value 0.62±0.02 V vs NHE at pH 9. Quantum chemical calculations have been performed to further confirm the different activities of individual hydroxyl groups with the difference of heat of formation. Moreover, silybin also protected plasmid pUC18 DNA from soft X-ray radiation which induced strand breaks. These results are expected to be helpful for a better understanding of the anti-oxidative properties of silybin.

37001360
Deinococcus aerius sp. nov., isolated from the high atmosphere
Yang, Y.*; 伊藤 隆*; 横堀 伸一*; 板橋 志保*; 島田 治男*; 佐藤 勝也; 大庭 寛史; 鳴海 一成; 山岸 明彦*
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 59, p.1862-1866(2009) ; (JAEA-J 06373)
 日本の高度大気圏で収集した塵から、橙色の色素を持ち運動性のない球菌TR0125株が分離された。16S rRNA遺伝子をもとにした系統解析によってこの菌はデイノコッカス属細菌であることが示された。強い乾燥耐性,UV耐性,γ線耐性及び高いGC含量は、この菌株がデイノコッカス属細菌であることを支持している。TR0125株は、デイノコッカス・アパチェンシスの標準菌株の16S rRNA遺伝子配列と最も高い類似性(95.7%)をもち、系統解析の結果は、TR0125株が、デイノコッカス・ジオサーマリス以上に、デイノコッカス・アパチェンシスと進化的に離れていることを示しており、このことは、TR0125株がこれら2種のデイノコッカス属細菌に属するものではないことを表している。他にも、TR0125株と上記2種のデイノコッカス属細菌の標準菌株との間には、幾つかの表現型に違いがあった。よって、われわれは今回分離した菌株に適合するものとして、新種デイノコッカス・アエリウスという名前を提案する。

37001361
Flowability measurement of coarse particles using vibrating tube method
石井 克典; 鈴木 政浩; 山本 琢磨; 木原 義之; 加藤 良幸; 栗田 勉; 吉元 勝起; 安田 正俊*; 松坂 修二*
Journal of Chemical Engineering of Japan 42(5), p.319-324(2009) ; (JAEA-J 06374)
 振動細管式流動性測定法のMOX粒子への適用性を評価するために、振動細管式流動性測定装置により、直径が大きな粒子の流動性測定試験を実施した。模擬粒子は直径が850ミクロン以下の非放射性のジルコニア粒子であり、5種類の異なる粒径のサンプルを準備した。また細管の排出口径としては2mmから4mmのものを使用した。細管の排出口径は流動性の測定特性に大きな影響を与えた。4mmの排出口径の細管を用いることにより、すべての粒子径の模擬粒子を測定することができた。細管の傾斜角度も流動性測定特性に影響を与えた。粒子の排出が開始される流動開始加速度、すなわち流動性の評価ファクターは、カーの流動性指数と相関がある。高感度,測定時間の短さ,操作の容易さ等の利点を考慮すると、振動細管法はMOX粒子の遠隔流動性測定への適用が期待される。

37001362
Quantum optimal control of isomerization dynamics of a one-dimensional reaction-path model dominated by a competing dissociation channel
黒崎 譲; Artamonov, M.*; Ho, T.-S.*; Rabitz, H.*
Journal of Chemical Physics 131(4), p.044306_1-044306_8(2009) ; (JAEA-J 06375)
 Quantum optimal control simulations have been carried out molecular isomerization dynamics of a one-dimensional (1D) reaction-path model involving a dominant competing dissociation channel. The 1D intrinsic reaction coordinate model mimics the ozone open → cyclic ring isomerization along the minimum energy path that successively connects the ozone cyclic ring minimum, the transition state (TS), the open (global) minimum, and the dissociative O2 + O asymptote on the O3 ground-state 1A' potential energy surface. The molecular orientation of the modeled ozone is held constant with respect to the laser-field polarization and several optimal fields are found that all produce nearly perfect isomerization. The optimal control fields are characterized by distinctive high temporal peaks as well as low frequency components, thereby enabling abrupt transfer of the time-dependent wave packet over the TS from the open minimum to the targeted ring minimum.

37001363
Modification of ultrathin polyetheretherketone film for application in direct methanol fuel cells
Chen, J.; Li, D.; 越川 博; Zhai, M.*; 浅野 雅春; 奥 浩之*; 前川 康成
Journal of Membrane Science 344(1-2), p.266-274(2009) ; (JAEA-J 06376)
 直接メタノール燃料電池(DMFC)用電解質膜を開発するために、超薄膜フィルムポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用い、モノマーであるジビニルベンゼン(DVB)及びエチルスチレンスルホンファイド(ETSS)をそれぞれ熱重合及び放射線重合によるグラフトを行った。DVBグラフト率は7%未満にもかかわらず、その後のETSSグラフトを大幅に促進させることがわかった。熱水による加水分解により超薄膜電解質膜を得た。得られた電解質膜は、フーリエ変換型赤外分光(FT-IR),熱重量(TG)分析またはイオン交換容量,含水率,導電性,機械強度及びメタノール透過性の測定により評価した。さらに、得られた電解質膜は燃料電池評価により、優れた電池性能を有することがわかった。したがって、このように作製した電解質膜はDMFCへ適用できることがわかった。

37001364
Application of ionic liquid as a medium for treating waste contaminated with UF4
大橋 裕介; 浅沼 徳子*; 原田 雅幸*; 和田 幸男*; 松原 達郎; 池田 泰久*
Journal of Nuclear Science and Technology 46(8), p.771-775(2009) ; (JAEA-J 06377)
 転換・濃縮施設で発生するウラン廃棄物の多くはUF4で汚染されている。UF4はイオン液体BMICl(1-buthyl-3-methylimidazolium chloride)にほぼ完全に溶解した。UF4に汚染された金属廃棄物をBMIClによって除染した結果、想定したクリアランスレベル1Bq/g以下まで除染することができた。また、UF4を溶解したBMIClについて、サイクリックボルタモグラムを測定した結果、UO2への還元につながるUO22+→UO2+と推察される非可逆的還元波が見られた。

37001365
Selective detection of particles containing highly enriched uranium for nuclear safeguards environmental samples
Lee, C. G.; 鈴木 大輔; 江坂 文孝; 間柄 正明; 篠原 伸夫; 臼田 重和*
Journal of Nuclear Science and Technology 46(8), p.809-813(2009) ; (JAEA-J 06378)
 保障措置環境試料のパーティクル分析法の高度化の目的で、スワイプ試料から回収した粒子の中から高濃縮度のウラン粒子を選択的に検出できる方法を開発した。新たに開発した方法は次のような3つの要素技術で構成されている。(1)スワイプ試料からの粒子回収のための2段式粒子回収法,(2)フィッショントラック(FT)検出器のエッチング時間の制御,(3)フィッショントラックの形状と粒径の比較。濃縮度別検出法の開発は、保障措置上最も重要な課題の一つである、高濃縮度の粒子の優先的な検出に焦点を置いた。天然組成と10%濃縮ウラン粒子を混ぜた試料を作製し、開発した方法の実証実験を行った。その結果、FT検出のためのエッチング時間の制御に加えて、FT形状と粒径の比較により、10%濃縮ウラン粒子を選択的に検出できることが示された。この方法は、主としてFT検出器のエッチング挙動を利用しているので、実試料への応用が容易であることが大きな特徴である。

37001366
Development of a Japanese adult female voxel phantom
佐藤 薫; 野口 宏; 江本 豊*; 古賀 佑彦*; 斎藤 公明
Journal of Nuclear Science and Technology 46(9), p.907-913(2009) ; (JAEA-J 06379)
 健康な女性ボランティアのCT画像を用いて、日本人成人女性の精密全身ボクセルファントム(以下、JFファントムと呼ぶ。)を開発した。JFファントムは身長152cm,体重44kgで、平均的な日本人成人女性と比較してやや小さい。JFファントムは、約1mm3角のボクセルより構成されているため、甲状腺,胃壁等の小さくて複雑な形状を有する臓器だけでなく、子宮,卵巣等の女性特有の臓器形状も精密に再現している。すなわち、JFファントムは、内部及び外部被ばくにおいて日本人成人女性に対する精密な線量評価に利用することができる。本稿では、JFファントムの構築方法及びその特長について述べる。

37001367
Impact of incident energy dependence of prompt fission neutron spectra on uncertainty analyses
千葉 豪; 長家 康展
Journal of Nuclear Science and Technology 46(10), p.1000-1003(2009) ; (JAEA-J 06380)
 即発核分裂中性子スペクトル(PFNS)から核特性への誤差伝播を、従来は無視されているPFNSの入射エネルギー依存性を考慮して厳密に計算した。その結果、従来のPFNSからの誤差伝播計算はPFNSに起因する臨界性の不確かさを大きく評価することを示した。本研究は、PFNSの入射エネルギー間の相関が、核特性に対する誤差伝播計算に大きく影響することを示唆した。

37001368
Long-lived intermediates in radiation-induced reactions of alicyclic polyimides films
Park, J.*; 榎本 一之; 山下 俊*; 高木 康行*; 戸高 勝則*; 前川 康成
Journal of Photopolymer Science and Technology 22(3), p.285-287(2009) ; (JAEA-J 06381)
 カプトンなどの全芳香族ポリイミド膜に匹敵する優れた膜特性を示す脂環式ポリイミド膜(A-PI膜)を用い、放射線グラフト重合法による燃料電池用電解質膜の合成に成功した。得られた電解質膜はナフィオンより高いイオン伝導度と機械・熱的安定性を示したため、A-PI膜はグラフト型電解質膜の高分子基材膜としての応用が可能であることが確かめられた。さらに、照射A-PI膜の紫外・可視光分光(UV-VIS)スペクトルより、可視光領域に吸収を持つ長寿命中間体の存在が確認できた。この中間体のUV-VISスペクトルの減衰と電子スピン共鳴によるラジカルの減衰の比較から、600, 420nmに吸収極大を持つ中間体が放射線グラフト重合を引き起こすアルキルラジカルであることから、A-PI膜の放射線グラフト重合における開始部位が確定できた。

37001369
A Metallofullerene that encapsulates 225Ac
秋山 和彦*; 羽場 宏光*; 塚田 和明; 浅井 雅人; 豊嶋 厚史; 末木 啓介*; 永目 諭一郎; 片田 元己*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 280(2), p.329-331(2009) ; (JAEA-J 06382)
 225Acを内包したフラーレンを合成し、その性質をクロマトグラフ的手法を利用して調べた。バッキークレッチャーカラムによるクロマトグラフ実験の結果、カラムへの保持時間の違いから、AcC82フラーレンに幾つかの異性体が存在することを明らかにした。また。このときLa C82と同じ保持時間でAcC82フラーレンの主成分ピークが検出されたことから、AcC82フラーレンの異性体の一つは、La C82フラーレンと構造が同じであると推定できる。

37001370
Neutron powder diffraction and difference maximum entropy method analysis of protium- and deuterium-dissolved BaSn0.5In0.5O2.75+α
長崎 正雅*; 塩谷 真也*; 井川 直樹; 吉野 正人*; 岩崎 航太*; 深澤 裕; 内海 渉
Journal of Solid State Chemistry 182(10), p.2632-2639(2009) ; (JAEA-J 06383)
 プロトン伝導体中の水素の結晶位置の詳細を明らかにするため、中性子回折データを用いた差最大エントロピー法(差MEM)を提案した。この方法は結晶中に取り込まれた水素と重水素の構造因子の差を利用した手法である。本法のシミュレーションでは水素原子の分布のみではなく、水素原子付近の空間分解能を改善させることを明らかにした。また、本法を水素と重水素を溶解させたBaSn0.5In0.5O2.75+αの9Kで測定した回折データに適用することで、O-D結合が第2近接酸素方向へ傾いていること、そしてその水素と酸素原子の分布は格子間位置には存在しないことを明らかにした。

37001371
Observation of itinerant Ce 4f electronic states in CeIrSi3 studied by angle-resolved Ce 3d→ 4f resonance photoemission spectroscopy
大河内 拓雄*; 利光 孝文*; 山上 浩志; 藤森 伸一; 保井 晃; 竹田 幸治; 岡根 哲夫; 斎藤 祐児; 藤森 淳; 宮内 裕一朗*; 奥田 悠介*; 摂待 力生*; 大貫 惇睦*
Journal of the Physical Society of Japan 78(8), p.084802_1-084802_6(2009) ; (JAEA-J 06385)
 結晶構造に空間反転対称性を持たない超伝導体CeIrSi3に対してCe 3d→4f共鳴角度分解光電子分光を行い、4fバンド構造とフェルミ面を得た。その結果、Ce 4f状態はフェルミ準位近傍に位置することがわかり、フェルミ準位を横切る伝導バンドが共鳴増大を示した。さらに、CeIrSi3のバンド分散とフェルミ面は、4f電子を持たない参照物質LaIrSi3のそれとは異なり、その違いは局所密度近似(LDA)による電子状態計算によりよく説明できることを見いだした。これらの結果は、CeIrSi3の4f電子は伝導電子とよく混成し、遍歴的な電子状態を形成していることを示唆している。

37001372
Direct extension of density-matrix renormalization group to two-dimensional quantum lattice systems; Studies of parallel algorithm, accuracy, and performance
山田 進; 奥村 雅彦; 町田 昌彦
Journal of the Physical Society of Japan 78(9), p.094004_1-094004_5(2009) ; (JAEA-J 06386)
 核燃料の主要物質である酸化プルトニウムなどの量子効果が大きい物質の物性を計算機シミュレーションで調査するには、ミクロレベルでの大規模な計算が必要であり、その有力な計算方法の1つに密度行列繰り込み群法(DMRG法)がある。DMRG法は本来1次元モデル用に開発された方法である。しかし、物質の興味深い性質の多くは、その2次元構造により発現すると考えられており、DMRG法を2次元モデル用に拡張することが望まれているが、その拡張により計算量は指数関数的に増加する。そこで、発表者らは計算量の多い部分が行列とベクトルの掛け算であることを見いだし、この演算を問題の物理的性質を利用する並列化手法を提案した。この並列化により、準2次元モデルを計算することが可能になり、実際、原子力機構のSGI Altix3700Bx2を利用することで、これまで高精度で計算することのできなかった4×20サイトの物理モデルを高精度で計算することに成功した。

37001373
A Modification of the guiding-centre fundamental 1-form with strong E×B flow
宮戸 直亮; Scott, B. D.*; Strintzi, D.*; 徳田 伸二
Journal of the Physical Society of Japan 78(10), p.104501_1-104501_13(2009) ; (JAEA-J 06387)
 相空間ラグランジアンに対するリー摂動解析により従来とは異なる強いE×B流を考慮した案内中心基本1-形式を導出した。この修正された1-形式のシンプレクティック部分はE×B流のない標準的な1-形式と同じであり、それは標準的なラグランジュ括弧及びポアソン括弧を与える。そのため、案内中心ハミルトン方程式は、E×B流の時間変化が許されるときも、その一般形を保つ。標準的なシンプレクティック構造を保つ代償として案内中心ハミルトニアンは複雑になるが、トカマクのHモードの周辺部や反転磁気シアトカマクの内部輸送障壁などのよく局所化した輸送障壁領域ではハミルトニアンを簡単化することができる。この1-形式をもとに電磁場を含む系全体のラグランジアンを構築し、案内中心ブラソフ方程式と案内中心ポアソン方程式を変分原理により導いた。この系で保存されるエネルギーがネーターの定理により得られる。

37001374
High-tech composites to ancient metals
Zhang, S. Y.*; Godfrey, E.*; Kockelmann, W.*; Pawadowska, A.*; Bull, M. J.*; Korsunsky, A. M.*; Abbey, B.*; 徐 平光; 友田 陽*; Liljedahl, D.*; Zanellato, O.*; Fitzpatrick, M.*; Daymond, M. R.*; Toda, R. M.*; Holt, R. A.*; Kelleher, J.*; Siano, S.*; Santisteban, J.*
Materials Today 12(7-8), p.78-84(2009) ; (JAEA-J 06389)
 中性子回折は格子面間隔の精密評価に基づいて結晶材料内部の弾性歪みを直接測定できる。無材料除去のままで実際部品の内部組織や変形因子の変化などを非破壊測定的に評価するため、この技術は現代工程材料の設計や古代器物の材料考古学などの分野に特に有効である。本文はISIS核破砕型パルス中性子源に備えたEngin-X中性子回折装置における多数代表性試験研究にめぐって、中性子回折技術は材料科学の深入解明から産業への実際利用まで有効な基礎実験手法であることを示した。

37001375
A Three-dimensional neutronics-thermohydraulics simulation of core disruptive accident in sodium-cooled fast reactor
山野 秀将; 飛田 吉春; 藤田 哲史
Nuclear Engineering and Design 239(9), p.1673-1681(2009) ; (JAEA-J 06390)
 SIMMER-IIIは二次元多速度場多相多成分オイラー型流体力学コードに燃料ピン及び空間・エネルギー依存核計算モデルを結合した解析コードである。SIMMER-IIIは許認可のための高速炉安全解析の標準解析ツールとなると期待されていることから、同コードは十分ロバストで信頼できることを実証されねばならない。そのため、同コードの体系的検証計画が欧州研究機関と協力して実施されてきた。SIMMER-IIIをそのまま三次元に拡張したSIMMER-IVが開発された。最近では、SIMMER-IVの並列化を進め、利用可能な計算機資源でSIMMER-IVを実機解析に適用することが可能となった。より現実的な事故シナリオを明らかにするため、SIMMER-IVを用いた三次元解析結果を示す。

37001376
Effects of a sheared toroidal rotation on the stability boundary of the MHD modes in the tokamak edge pedestal
相羽 信行; 徳田 伸二; 古川 勝*; 大山 直幸; 小関 隆久
Nuclear Fusion 49(6), p.065015_1-065015_9(2009) ; (JAEA-J 06391)
 Type-I周辺局在モード(ELM)の原因である「周辺部ペデスタル領域において不安定化する理想MHDモード」の安定性に対するトロイダル回転の影響について数値解析を行った。この解析を実現するために、回転の影響を考慮した線形理想MHD方程式(Frieman-Rotenberg方程式)を解く数値解析コードMINERVAを開発し、同コードを用いることで「回転シアを持つトロイダル回転は周辺局在理想MHDモードを不安定化する」ことを明らかにした。この不安定化効果に対して平衡の安全係数分布が影響を与えることも示した。この原因として、トロイダル回転の影響が不安定化するMHDモードが短波長であるほど強く表れること、そしてこの不安定モードの波長は安全係数分布に強く依存していることが重要であることを明らかにした。

37001377
Two-dimensional full particle simulation of the flow patterns in the scrape-off-layer plasma for upper- and lower-null point divertor configurations in tokamaks
滝塚 知典; 清水 勝宏; 林 伸彦; 細川 哲成*; 矢木 雅敏*
Nuclear Fusion 49(7), p.075038_1-075038_9(2009) ; (JAEA-J 06392)
 磁場閉込め核融合炉においてスクレイプオフ層(SOL)中のプラズマ流は粒子制御に重要な役割を持つ。この流れの構造について、完全粒子コードPARASOLを用いてシミュレーションを行った。ヌル点がイオン磁場勾配ドリフトの逆向きの上方にあるダイバータ配位のとき、中間アスペクト比トカマクでは流れは内外の両ダイバータ板に向かい淀み点は対称的な底位置にある。一方ヌル点がイオン磁場勾配ドリフトと同方向の下方にあるときは、外側SOLで逆流様になる。淀み点は外側SOL中央より下に移動する。これらのシミュレーション結果は実験結果とよく一致している。アスペクト比を変化させるとともに、人工的に電場をなくしたシミュレーションも行った。流れ構造の形成に対し、自己無撞着電場に加え、捕捉イオンのバナナ運動が重要であることがわかった。アスペクト比が5より小さい標準トカマクでは、この捕捉イオン効果が電場効果より強くなる。

37001378
Development of advanced operation scenarios in weak magnetic-shear regime on JT-60U
鈴木 隆博; 大山 直幸; 諫山 明彦; 坂本 宜照; 藤田 隆明; 井手 俊介; 鎌田 裕; 内藤 磨; 末岡 通治; 森山 伸一; 花田 磨砂也; JT-60チーム
Nuclear Fusion 49(8), p.085003_1-085003_8(2009) ; (JAEA-J 06393)
 定常運転が必要とされる核融合炉にとって必須でありながら実現が困難であった定常性と経済性を同時に有するプラズマの開発に関する成果を報告する。定常性に関しては、(1)トランスの原理によらない完全非誘導電流駆動状態でかつ(2)プラズマの安定性を決定する電流分布の定常状態を実現し、しかも経済性にとって重要な二つの条件,(3)高い自発電流割合50%以上,(4)比較的低い安全係数q95=5.8を満たすプラズマを世界で初めて開発した。この領域は国際熱核融合実験炉(ITER)の定常運転シナリオで想定される領域であり、このような定常運転領域が存在するかは実証されていなかった。開発したプラズマは到達できる圧力の強い制限となるポロイダル=トロイダルモード数が1/1, 3/2, 2/1の電磁流体力学的(MHD)不安定性に対して安定となる適切な電流分布を高周波電流駆動及び中性粒子ビーム電流駆動により実現し維持しているという特筆すべき特徴を有する。このため達成した圧力(規格化圧力1.6)はMHD不安定性には制限されておらず、完全非誘導電流駆動が実現できる電流駆動パワーと高周波がプラズマに侵入できる密度により制限されている。上記の成果を得る過程では、電流分布が定常状態に達成していないプラズマも得られた。そのようなプラズマでは電流分布が変化することによってMHD不安定性の発生が観測された。これにより電流分布の定常性が重要であることを明確に示した。

37001379
Plasma rotation effects on magnetic island formation and the trigger of disruptions in reversed shear plasma
石井 康友; Smolyakov, A. I.*; 武智 学
Nuclear Fusion 49(8), p.085006_1-085006_10(2009) ; (JAEA-J 06394)
 反転磁気シアプラズマは高性能トカマクプラズマを生成するための有力なプラズマ配位の1つであるが、低プラズマ圧力領域でのディスラプション発生確率が高く、このようなディスラプションの機構解明と回避手法の開発が緊急の研究課題である。本論文では、プラズマ回転効果を含む自発的DTM,外部駆動型DTMの非線形MHDシミュレーションを行うことにより、内外共鳴面で観測される揺動の差異を説明する物理モデルを構築するとともに、外部揺動による低圧力ディスラプションのトリガー機構を解明した。また、強い回転シアにより、自発的及び外部駆動型DTMの非線形不安定化が抑制できることを明らかにした。

37001380
Chelating ion-exchange methods for the preparation of no-carrier-added 64Cu
渡邉 茂樹; 渡辺 智; Liang, J. X.; 花岡 宏史*; 遠藤 啓吾*; 石岡 典子
Nuclear Medicine and Biology 36(6), p.587-590(2009) ; (JAEA-J 06395)
 We have developed a production method for no-carrier-added copper-64 (64Cu) by using chelating resin bearing iminodiacetic acid groups. We optimized the condition for selective separation of radioactive copper by using chelating resin from nickel and cobalt. Radioactive copper was separated completely using 0.1 M and 2 M HCl solution. In production of no-carrier-added 64Cu, the average 87% of 64Cu was isolated from the 64NiO target with high radionuclide purity (> 99%). In order to investigate the quality of the obtained 64Cu, metallic impurities contained in the 64Cu solution were analyzed by means of inductive coupled-plasma mass spectroscopy (ICP-MS) and optical emission spectroscopy (ICP-OES). It was observed that extremely low amounts of metal ion were contained in the 64Cu. The 64Cu solution showed high specific activity (average: 594.7 GBq/μ mol). In this study, the chelating exchange method yielded high-quality of 64Cu sufficient for the synthesis of 64Cu-labeled radiopharmaceuticals and medical applications.

37001381
Feasibility study on an upgraded future Monju core concept with extended operation cycle length of one year and increased fuel burnup
金城 秀人*; 影山 武*; 北野 彰洋; 宇佐美 晋
Nuclear Technology 167(2), p.254-267(2009) ; (JAEA-J 06396)
 将来の「もんじゅ」炉心の性能向上に関する研究を行った。本研究の目的は、実用化FBR炉心が目標とする「1年連続運転サイクル・150GWd/t取出燃焼度」の炉心性能を「もんじゅ」で実証するための炉心概念・方策を検討し、技術的成立性を示すことである。通常、運転サイクル期間を延長すると燃焼欠損反応度が増大し、反応度収支上の炉停止余裕が減少する。このため、(1)太径・高密度・長尺ペレット燃料を導入して内部転換比向上,燃焼反応度増大を抑制し、(2)制御棒吸収体のB-10濃縮度や吸収体長さも変更して制御棒価値を増加させ、反応度収支を改善した。この炉心概念の主要炉心核熱特性を評価した結果、炉心出力分布や反応度制御特性,ドップラ・ボイド反応度等安全特性へ有意な影響を与えずに、2500リットル程度の「もんじゅ」中型炉心体系においても1年連続運転が可能であることが示された。以上により「もんじゅ」高度化炉心概念の成立性を確認した。

37001382
Small-angle neutron scattering study of dynamically polarized polyethylenes
能田 洋平; 熊田 高之; 橋本 竹治; 小泉 智
Physica B; Condensed Matter 404(17), p.2572-2574(2009) ; (JAEA-J 06397)
 ポリエチレンに有機ラジカル(TEMPO: 2,2,6,6-tetramethylpiperidine 1-oxyl)をドープした試料について、動的核スピン偏極法(3.3Tesla, 1.4Kにおいてマイクロ波(94GHz)を照射)によって試料中の水素原子核のスピンを偏極させた。偏極中性子超小角散乱装置(SANS-J-II)において偏極中性子をこの試料に照射し、干渉性,非干渉性小角散乱について偏極解析を行った。結晶化度の低い試料ではNMRによる評価では偏極度32%を達成したが、対応して偏極小角散乱においても非干渉性散乱の増減が定量的に観測された。また結晶化度の高い試料では偏極度23%を達成し、対応して干渉性小角散乱の増大が確認できた。両結果とも動的核スピン偏極法によって試料内部の水素核の散乱長が変化したことを支持するものである。

37001383
Interatomic potentials for hydrogen in α -iron based on density functional theory
Ramasubramaniam, A.*; 板倉 充洋; Carter, E. A.*
Physical Review B 79(17), p.174101_1-174101_13(2009) ; (JAEA-J 06399)
 鉄及び鋼は水素によって劇的に材質が劣化することが知られているがその具体的メカニズムはいまだ不明である。その解明には材質を決定している鉄の格子欠陥と水素がどのように相互作用するか知る必要があり、それは実験で調べることは困難であるので原子スケールの量子計算及び分子動力学計算が必要となる。本論文ではさまざまな格子欠陥と水素を含む量子計算を行いその結果を高速かつ正確に再現する原子間ポテンシャルを開発した。

37001384
Magnetic-field-induced polarization flop in multiferroic TmMn2O5
福永 守*; 坂本 勇馬*; 木村 宏之*; 野田 幸男*; 阿部 伸行*; 谷口 耕治*; 有馬 孝尚*; 脇本 秀一; 武田 全康; 加倉井 和久; 近 桂一郎*
Physical Review Letters 103(7), p.077204_1-077204_4(2009) ; (JAEA-J 06400)
 We discovered a reversible electric polarization flop from the a axis (Pa) to the baxis (Pb) in multiferroic TmMn2O5 below 5 K by applying a magnetic field of approximately 0.5 T along the c axis. This phenomenon is the first example of the rare-earth (R) compound RMn2O5. This magnetic-field-induced polarization flop corresponds to a magnetic phase transition from one incommensurate magnetic (ICM) Pa phase to another ICM Pb phase, which is equivalent to an ICM Pb phase above 5 K under no magnetic field. The spin chirality in the bc plane, which was observed in the Pb phase by polarized neutron diffraction, disappeared in the ICM Pa phase. This indicates that the polarization in the ICM phases of TmMn2O5 was induced by an Si × Sj type interaction.

37001385
Formation of nuclear "Pasta" in supernovae
渡辺 元太郎*; 園田 英貴*; 丸山 敏毅; 佐藤 勝彦*; 泰岡 顕治*; 戎崎 俊一*
Physical Review Letters 103(12), p.121101_1-121101_4(2009) ; (JAEA-J 06401)
 超新星爆発の圧縮段階で予想されている原子核物質のパスタ構造が、実際に起こる可能性の高いことを分子動力学シミュレーションによって示した。原子核物質のパスタ構造は、密度によっては最も安定な静的な状態として予測されてきた。しかし超新星爆発の前段階で物質が圧縮され、密度が動的に変化する際に、物質の構造が原子核のクーロン格子から棒状の原子核パスタが実際に形成されるかどうか、またどのように形成されるかはわかっていなかった。われわれは分子動力学シミュレーションにより、原子核のクーロン格子からなる物質を圧縮することで、実際に棒状の原子核が作られることを示した。また、その過程で、bcc格子上の隣同士の原子核が融合して短い棒状の原子核を作り、それらがさらに融合してパスタ構造を形成することがわかった。

37001386
Coupling impedances of a resistive insert in a vacuum chamber
菖蒲田 義博; Chin, Y. H.*; 高田 耕治*
Physical Review Special Topics; Accelerators and Beams 12(9), p.094401_1-094401_19(2009) ; (JAEA-J 06402)
 抵抗性のインサートのインピーダンスの理論を作った。これにより、インサートの厚みがスキンデプスより極めて薄くても、ビームに伴う壁電流はインサートを流れ続け、ビームパイプの外側の環境からビームはシールドされることがわかった。つまり、抵抗性のインサートのインピーダンスは抵抗性チェンバーのインピーダンスに比べて一般的に大きくなることがわかった。

37001387
Fully nonlinear features of the energetic beam-driven instability
Lesur, M.*; 井戸村 泰宏; Garbet, X.*
Physics of Plasmas 16(9), p.092305_1-092305_12(2009) ; (JAEA-J 06403)
 To investigate instabilities driven by high-energy particles in a fusion plasma, we apply the so-called Berk-Breizman model, which is an augmentation of the 1D Vlasov-Poisson system including distribution relaxation and extrinsic damping. The nonlinear evolution of a perturbation is obtained by a semi-Lagrangian numerical code. We categorize the nonlinear behavior of the solutions in the whole parameter space for a cold bulk, weak warm beam distribution, and recover analytic predictions.

37001388
Validation of on- and off-axis neutral beam current drive against experiment in DIII-D
Park, J. M.*; 村上 和功*; Petty, C. C.*; Heidbrink, W. W.*; Osborne, T. H.*; Holcomb, C. T.*; Van Zeeland, M. A.*; Prater, R.*; Luce, T. C.*; Wade, M. R.*; Austin, M. E.*; Brooks, N. H.*; Budny, R. V.*; Challis, C. D.*; DeBoo, J. C.*; de Grassie, J. S.*; Ferron, J. R.*; Gohil, P.*; Hobirk, J.*; Hollmann, E. M.*; Hong, R. M.*; Hyatt, A. W.*; Lohr, J.*; Lanctot, M. J.*; Makowski, M. A.*; McCune, D. C.*; Politzer, P. A.*; St. John, H. E.*; 鈴木 隆博; West, W. P.*; Unterberg, E. A.*; Yu, J. H.*
Physics of Plasmas 16(9), p.092508_1-092508_10(2009) ; (JAEA-J 06404)
 DIII-Dにおいてプラズマを垂直方向に変位させることで、プラズマ周辺部(off-axis)での中性粒子ビーム電流駆動(NBCD)を実証した。モーショナルシュタルク効果計測により測定した磁力線ピッチ角の時間変化からポロイダル磁束の時間変化を評価し、小半径の半分程度にピークを持ち空間的に広がったoff-axis NBCD分布を示す結果を得た。多くの場合、測定したoff-axis NBCD分布は有限軌道効果を考慮した軌道追跡モンテカルロコードによる高速イオンの減速計算によるものと一致する。中性化した高速イオンが発するDα光の2次元イメージング計測によるとビームイオン密度分布は凹状になっており古典的な減速の描像と一致する。NB駆動電流の大きさはビームと磁力線のなす角と関係しており、両者のなす角が小さくなるように選ぶことでoff-axis NBCDの効率は中心部(on-axis)NBCDと同程度によくすることができる。測定したoff-axis NBCDは入射パワーとともに増加するが、高パワーにおいて測定と計算が合うためには計算に適度な高速イオン拡散を入れる必要がある。

37001389
水銀電極を用いないストリッピングボルタンメトリーによる微量ウランの定量
田口 茂郎
ぶんせき 2009(9), p.522(2009) ; (JAEA-J 06405)
 最近、ストリッピングボルタンメトリーによるウランの定量において、作用電極に取り扱いが容易な水銀以外の電極を適用した例が研究論文として幾つか報告された。本件は、これら研究論文の概要を、日本分析化学会の学会誌「ぶんせき」のトピックス欄に紹介するものである。

37001390
ボーリングコア解析と14C年代測定に基づく木曽川デルタの形成プロセス
大上 隆史*; 須貝 俊彦*; 藤原 治*; 山口 正秋*; 笹尾 英嗣
地学雑誌 118(4), p.665-685(2009) ; (JAEA-J 06406)
 隆起・侵食は処分場の深度を減少させ、地下水流動系の変化を引き起こす可能性があるため、地層処分の長期安全性を評価するうえで考慮すべき重要な地質学的事象である。侵食量については、河川上流域の比較的狭い範囲を対象としてはダムの堆砂量を利用して見積もられているが、下流域から上流域までを含む広い範囲を対象としては行われていない。このような広い範囲を対象とする場合、侵食された土砂は河口付近の平野に堆積するため、そこでの堆積量を見積もることにより、侵食量を推定することができる。しかし、海岸沿いの平野は海水準変動の影響を強く受けるため、その形成プロセスは複雑である。そこで、海水準変動の影響を受けて形成された平野の事例として、濃尾平野の形成プロセスを検討した。具体的には、海岸からの距離が異なる複数のボーリングコアを用いて、堆積物の堆積相解析によって濃尾平野の地形地質断面を作成するとともに、多数の放射性炭素年代によって等時間面を求めた。この結果、海水準の上昇に伴って内湾が拡大したのに対し、海水準の下降に伴ってデルタが前進したことが明らかになるとともに、内湾の拡大速度とデルタの前進速度が示された。

37001391
北海道幌延地域における深部地球化学環境の長期変遷シナリオの構築
岩月 輝希; 石井 英一; 新里 忠史
地学雑誌 118(4), p.700-716(2009) ; (JAEA-J 06407)
 深部地球化学環境の長期変遷解析手法を構築するため、北海道幌延地域を対象として地質現象と地球化学環境との関連を整理したうえで、深度約500mの地球化学環境の長期変遷について考察した。その結果、同深度においては微生物活動による局所的酸性化や還元作用,炭酸塩鉱物の溶解・沈殿反応などにより、中性・還元環境が長期的に維持されてきたと考えられた。また、この過程で、地球化学環境にかかわる重要な現象,プロセスの抽出方法とその将来変遷にかかわる解析手順を整理できた。(1)対象領域の水理地質特性の形成にかかわる現象の整理,(2)水理地質特性の分布,変遷過程に基づく領域(サブシステム)区分,(3)サブシステムごと,時間スケールごとに地球化学環境にかかわる重要な現象,主要プロセスの抽出,(4)抽出された現象,主要プロセスに基づき過去から現在までの地球化学環境の変動幅の推測,(5)過去から現在までの主要プロセスとサブシステムの将来変化に基づいて、将来の地球化学環境の変動幅の推測。今後、人為的擾乱(地下施設建設)により形成される新規のサブシステムの性状や分布、それに対する既存のサブシステムの安定性(頑健性)にかかわる調査研究を行っていく。

37001392
Electrolysis of AmN in LiCl-KCl eutectic melts and renitridation of Am recovered in liquid Cd cathode
林 博和; 柴田 裕樹; 赤堀 光雄; 荒井 康夫; 湊 和生
電気化学及び工業物理化学 77(8), p.673-676(2009) ; (JAEA-J 06408)
 原子力機構における窒化物燃料サイクルの研究開発によって明らかとなった窒化物燃料の乾式再処理の主工程である溶融塩電解法による窒化物の陽極溶解及び液体カドミウム(Cd)陰極へのアクチノイドの回収、及び液体Cd陰極に回収されたアクチノイドの再窒化におけるアメリシウム(Am)の挙動について報告する。Am3+イオンを含んだLiCl-KCl共晶溶融塩中でのAmNの電解挙動をAmNディスク試料,液体Cd電極又はMo電極及び参照電極(Ag/AgCl電極)を用いた三電極法によって測定した結果、サイクリックボルタモグラムにおいてAmNの溶解に伴う酸化電流が見られた。また、AmNディスク試料を陽極とし、液体Cd電極を陰極として行った定電位電解によってAmN試料の電解を行い、窒素放出を観測した。液体Cd陰極において得られた電解回収物中には、金属間化合物Am11Cd45が含まれていることを明らかにした。さらに、液体Cd陰極に回収したAmをCdの蒸留とAmの窒化の二つの工程を一度に行う蒸留窒化法によって再窒化し、AmN粉末試料を調製できることを明らかにした。

37001393
環境問題における放射線の利用
廣木 章博
FBNews (394), p.3-7(2009) ; (JAEA-J 06409)
 放射線が身近なところで活用されていることを紹介するため、二酸化炭素による地球温暖化や水質汚染が深刻なものとなってきている現状を踏まえ、環境問題の解決を目指した材料・技術の開発にも放射線が役立っている事例を紹介した。(1)放射線改質ポリ乳酸の開発。放射線橋かけ技術により、カーボンニュートラル材料である「ポリ乳酸」の耐熱性改善に成功し、食用品カップ,筐体、そして耐熱チューブを作製、さらに塩ビの代替品として期待される弾性ポリ乳酸の開発に繋がっている。(2)水質浄化用グラフト吸着材の開発。放射線グラフト技術により、ビル空調用冷温水設備における配管の腐食やスケール付着の要因となる循環水中の微量金属を吸着・除去する材料が作製され、連続処理装置が開発されている。(3)燃料電池用高分子電解質膜の開発。放射線橋かけ技術と放射線グラフト技術を組合せることで、市販膜に比べ伝導度を2倍に向上、メタノール透過を十分の一にまで抑制した高性能な電解質膜の開発に成功している。

37001394
ICRP新勧告に基づく外部被ばく線量換算係数の計算
佐藤 達彦
放計協ニュース (44), p.2-3(2009) ; (JAEA-J 06410)
 国際放射線防護委員会(ICRP)は、従来の基本勧告ICRP60に代わる新しい基本勧告ICRP103を2007年に発表した。これに伴い、ICRP74に収録された旧勧告に基づく外部被ばく線量換算係数を改訂する必要が生じ、現在、その改訂作業がICRP第2専門委員会タスクグループDOCALにおいて精力的に進められている。本稿では、その現状について解説するとともに、今後の展望について述べる。

37001395
水浄化用グラフト吸着材料の開発
瀬古 典明; 吉井 明央*; 角田 安彦*
放射線と産業 (123), p.15-18(2009) ; (JAEA-J 06411)
 ビルなどの空調用冷温水設備では1000m3を超える大量の水を地下水槽に貯留し、長期に渡って循環を繰り返し、使用されている。貯留水中には配管設備内の金属類が経年的な「腐食」によって徐々に溶解し、貯留水使用期間が15年の設備(貯留水量2500m3)では鉄が1から4ppm、銅が0.3から0.7ppmに濃縮されている例もある。オフィスビルなど商業施設の空調設備では、日常運営のため、設備の停止をすることが困難であり、貯留水を循環させる際に、希釈することで水質改善を図って対策を講じている。この対策費は、約1200万円と見積られている。そのため、ほとんどの設備においては長年手付かずの状態で放置されている。この問題を解決するために、グラフト重合材による金属回収技術を用いて冷温水貯水槽中の鉄,銅など、腐食によって溶出した金属類を、ビル設備を停止することなく、除去可能な「水質改善装置」を開発し、最終的に300Lのベンチスケール試験を実施し、実液に鉄イオンを添加した実証実験では飲料水基準値以下に除去できる良好な結果が得られた。

37001396
研究開発活動などから発生する低レベル放射性廃棄物の埋設処分
土肥 輝美
放射線と産業 (123), p.34-39(2009) ; (JAEA-J 06412)
 研究機関,大学,民間企業,医療機関等の研究施設等においては、核燃料物質やRI,放射線発生装置等が使用され、多様な低レベル放射性廃棄物(以下「研究施設等廃棄物」という。)が発生している。研究施設等廃棄物は、各事業者において長期間に渡り保管されている状況にあり、確実に処分する体制整備が求められてきた。その結果、法律の一部改正を受けて、原子力機構が研究施設等廃棄物の埋設事業を実施することとなった。原子力機構は、国が策定した基本方針に即して埋設処分業務の実施計画を定め、国の認可を受けて本事業を開始する。当面、最初に行う事業としては、平成60年度までに発生が見込まれる廃棄物を対象として、トレンチ処分及びコンクリートピット処分を行う予定である。

37001397
原子力機構TIARAのマイクロビーム装置によるバイスタンダー効果研究
舟山 知夫; 横田 裕一郎; 坂下 哲哉; 小林 泰彦
Isotope News (665), p.7-11(2009) ; (JAEA-J 06413)
 放射線誘発バイスタンダー効果とは、放射線によって照射されていない細胞が近隣の照射された細胞からの照射シグナルによって照射された細胞と同様の放射線応答を示す現象である。低線量の重イオンで照射された細胞集団中には、イオンがヒットした細胞と、ヒットしていない細胞が混在するため、バイスタンダー効果による細胞応答が顕在化する。そのため、重イオンの細胞影響解析にあたっては、バイスタンダー効果が果たす役割を明らかにすることが非常に重要となる。このバイスタンダー効果の機構を解明する研究において、極めて有用なツールとなるものが、マイクロビーム細胞照射装置である。原子力機構では、TIARAに設置された細胞照射用重イオンマイクロビーム装置を用いて重イオン誘発バイスタンダー効果の機構解明を進めている。これまで、ヒト正常線維芽細胞を用いた研究で、重イオンがバイスタンダー細胞に生存率の低下,一過的なアポトーシス誘導,遅延的なp53タンパク質のリン酸化、そして異なる細胞内情報伝達経路の活性化などを引き起こすことを明らかにした。

37001398
レーザーイオン加速と医療応用
野田 章*; 余語 覚文
Journal of the Vacuum Society of Japan 52(8), p.448-454(2009) ; (JAEA-J 06414)
 Approach to downsize an accelerator for particle-cancer therapy with the use of a very high acceleration-gradient by laser-plasma interaction has been performed combining laser-produced ions with a conventional RF acceleration technique. Protons produced by a high peak-power (〜 a few tens TW) short-pulse (< 50 fs) laser from a thin solid foil target several μm in thickness has been improved in its beam characteristics by combination of a "Phase Rotation" and electron beam cooling in order to be accelerated with a short-rising-time (〜5 ms) synchrotron to the energy of 〜200 MeV needed for cancer-therapy. In the present paper, the scheme to improve the characteristics of the laser-produced protons in the longitudinal phase space by "Phase Rotation", which has been demonstrated in its feasibility experimentally, is described together with the procedure of laser proton production.

37001399
エネルギー回収型リニアック次世代放射光源のための要素技術開発とコンパクトERLの建設
羽島 良一; 中村 典雄*; 坂中 章悟*; 小林 幸則*
加速器 6(2), p.149-157(2009) ; (JAEA-J 06415)
 エネルギー回収型リニアック(Energy-Recovery Linac: ERL)に基づく次世代放射光源として、X線放射光(アンジュレータ光),γ線光源(レーザーコンプトン光)が提案され、これらの実現に向けた技術開発が国内研究機関の連携のもと、進められている。本稿では、電子銃,超伝導加速空洞などの技術開発の現状と、実証施設(コンパクトERL)の建設に向けた準備状況を述べる。

37001400
レーザー誘起蛍光によるアスベスト識別法
大図 章
クリーンテクノロジー 19(9), p.41-45(2009) ; (JAEA-J 06416)
 紫外レーザー照射で発生するレーザー誘起蛍光を用いるアスベスト識別計測の技術開発を行っている。これまでアスベスト5種類,ガラスウール,タルク等の建材試料6種類の蛍光スペクトルを調査したところ、それらすべての試料から波長350から700nmまでの幅の広い蛍光スペクトルが発生することが観測されている。各試料の蛍光特性を比較した結果、波長350〜700nmの積算蛍光量,蛍光減衰比、及びスペクトル形状においてアスベストとそれ以外の建材資料との間に顕著な差異が確認された。これら蛍光特性の差異を顕微鏡観察において利用する場合のアスベスト識別法及び問題点に関して解説する。

37001401
再処理抽出分離工程シミュレーションコードPARCの開発
津幡 靖宏; 朝倉 俊英; 森田 泰治
日本原子力学会和文論文誌 8(3), p.211-220(2009) ; (JAEA-J 06417)
 日本原子力研究開発機構では、使用済燃料再処理工程でのウラン,プルトニウム,ネプツニウム及び核分裂生成物の挙動予測を目的としてシミュレーションコードPARCを開発した。このコードは幾つかの有用な機能を有しており、ミキサセトラとパルスカラムを同時に連結した状態で扱うことが可能であり、また新たな化学反応式,反応速度式,分配比計算式を、プログラムの再コンパイルなしに容易に入力できる。これによりPARCを将来の再処理プロセスを目指した溶媒抽出の基礎研究,分離プロセス設計,プラント管理,安全解析に幅広く使用できる。本論文ではPARCの抽出器モデル及び幾つかの化学反応モデルを紹介した。またU/Pu分離工程でのU及びPuの挙動について計算結果を示し、フィード中のPu濃度の増加がプロセスに与える影響及びPu酸化還元反応モデルの選択の重要性を示した。

37001402
MOX燃料再処理における溶媒劣化; Pu精製工程における溶媒劣化とその影響
川口 芳仁; 森本 和幸; 北尾 貴彦; 大山 孝一; 大森 栄一
日本原子力学会和文論文誌 8(3), p.221-229(2009) ; (JAEA-J 06418)
 東海再処理施設では、30% TBP/n-ドデカンを用いるピューレックス法を用いて、使用済燃料からウランやプルトニウムを抽出している。TBPはおもに、放射線,抽出されている元素,酸による加水分解によりDBP, MBPに劣化する。本研究では、DBP生成速度式の算出,MOX燃料再処理時の工程内DBP濃度の調査,20日間工程停止時の工程内DBP濃度の調査を実施した。その結果、DBP生成速度式(T=47.3W+0.05[Pu]+0.1)が算出され、また、MOX燃料処理時の工程内のDBP濃度は91ppm、20日間工程停止時のDBP濃度は2000ppmであったが、その後の工程運転には影響がなかった。

37001403
先進湿式法再処理の晶析工程におけるCs挙動把握のための模擬溶解液を用いた基礎試験
柴田 淳広; 矢野 公彦; 紙谷 正仁; 中村 和仁; 鷲谷 忠博; 近沢 孝弘*; 菊池 俊明*
日本原子力学会和文論文誌 8(3), p.245-253(2009) ; (JAEA-J 06419)
 U晶析工程におけるCsの挙動を調べるため、模擬溶解液を用いたU晶析バッチ試験及びU(IV)溶液を用いたCs複塩生成基礎試験を実施した。使用済燃料の溶解液中のCs濃度では、先進湿式法再処理のU晶析工程の条件においてCsNO3やCs2UO2(NO3)4は生成せず、他のFP元素との相互作用によるCs塩も生成する可能性は小さいことを確認した。また、U(IV)溶液を用いたCs複塩生成基礎試験の結果から、酸濃度が5mol/dm3以上の場合にはCsとPu(IV)の複塩が生成する可能性が示唆された。

37001404
バランシング領域分割法の最適領域分割数の予測とその数値検証
山田 知典; 荻野 正雄*; 吉村 忍*
日本計算工学会論文集(インターネット) 2009(14), 7p.(2009) ; (JAEA-J 06420)
 構造力学解析における計算効率の向上のためバランシング領域分割法の最適領域分割数推定方法について新たな提案を行った。大規模並列計算向きの手法として広く知られているコースグリッドコレクションを伴う反復型部分構造法では、その大規模化に伴いコースグリッドコレクションに要する計算量が問題となる。このため、本研究では1反復計算当たりのコースグリッドコレクション及び反復型部分構造法に必要となる計算量を算出し、その最適化を行った。数値計算例として二次加圧水冷却器などの実機器を対象としたシミュレーションを行い本提案手法が有効であることを示した。

37001405
マルチコアクラスタのネットワーク構造を考慮した並列密度行列繰り込み群法の通信手法
山田 進; 今村 俊幸*; 町田 昌彦
日本計算工学会論文集(インターネット) 2009(15), 12p.(2009) ; (JAEA-J 06421)
 酸化プルトニウムなどの第一原理計算が有効でない物質をシミュレーションする有効な方法の1つに密度行列繰り込み群法(DMRG法)がある。DMRG法は本来1次元モデル用の方法であるが、発表者らがこれまでに提案した並列化により2次元モデルを高精度にシミュレーションすることが可能になった。この並列化ではall-to-all通信を利用しているが、この通信はすべてのプロセス間で通信するため、ネットワークに負担がかかる。現在主流の計算機であるマルチコアクラスタは、ネットワークの帯域に対するプロセス数が多いため、all-to-all通信には適しておらず、並列数を増やすと計算性能が低下する。そこで、問題の物理的性質を利用して通信データのパターンを適切に組合せることで、all-to-all通信を用いない通信アルゴリズムを提案した。この通信方法を用いた並列DMRG法をマルチコア計算機である東京大学のT2Kで実行したところ、これまでの方法と通信量はほぼ同じであるにもかかわらず、最大で4倍以上の通信性能の向上を実現した。

37001406
大強度陽子加速器施設J-PARC; 物質・生命科学実験施設を中心として
藤井 保彦; 新井 正敏
応用物理 78(8), p.758-764(2009) ; (JAEA-J 06422)
 2001年度から現原子力機構JAEAと高エネルギー加速器研究機構KEKが共同で建設を開始したJ-PARCは、世界最強の陽子ビームによる核反応で発生する各種の第2,3次ビームを利用する多目的研究施設であり、2008年度で建設を終了し、今年度から利用のフェーズに入った。3台の大強度陽子加速器を基盤として、中性子,ミュオンを利用する物質・生命科学実験施設,ハドロン,ニュートリノを利用する原子核・素粒子実験施設、さらに今後建設が計画されている核変換実験施設が設置され、国際的な共同利用に供される。これら複合施設のシナジー効果により、J-PARCは基礎・応用研究から産業利用に至る第一線の科学技術を主導することが期待されている。本誌では読者の関心が高いと思われる物質・生命科学実験施設を中心に紹介する。

37001407
JT-60SA用超伝導マグネット
吉田 清
低温工学 44(8), p.346-352(2009) ; (JAEA-J 06423)
 JT-60のトカマク本体を超伝導化するJT-60SA計画が、日本とEU間の共同プロジェクト「幅広いアプローチ」の中の「サテライトトカマク」プロジェクトとして推進することが合意され、製作が開始された。超伝導コイルは、18個のトロイダル磁場(TF)コイル,4個の中心ソレノイド(CS)モジュールと6個の平衡磁場(EF)コイルから構成される。TFコイルは、ステンレス鋼の容器の中に配置され、容器はコイル系の支持構造の骨格で、CSやEFコイルの支持はTF容器に取付けている。CSは、独立した4個の巻線から構成され、上下力を締付けるタイプレートによって支持され、TFコイルの上部から固定される。6個のEFコイルは、半径方向に自由なフレキシブル板でTFコイルに固定されている。CSは高磁界であるためNb3Sn素線を用い、TFコイルとEFコイルはNbTi素線を用いる。本紙は、JT-60SA超伝導マグネットの要求性能及び詳細設計について述べる。

37001408
Overview of solvent extraction chemistry for reprocessing
館盛 勝一*; 森田 泰治
Ion Exchange and Solvent Extraction, Vol.19 , p.1-63(2009) ; (JAEA-J 06424)
 溶媒抽出研究の現状を網羅して紹介する図書「Ion Exchange and Solvent Extraction, Vol.19」における第1章として、再処理における溶媒抽出化学を広く解説した論文である。高度化PUREX法から、マイナーアクチノイドやセシウム,ストロンチウム分離用の各種抽出剤及び分離手法の最新情報までを幅広く紹介するとともに、各種分離システムの整理がなされている。

37001409
Rate theory modeling of irradiation-induced phosphorus segregation in FCC nickel using first principles calculations
海老原 健一; 山口 正剛; 蕪木 英雄; 西山 裕孝
Materials Research Society Symposium Proceedings, Vol.1125 , p.133-138(2009) ; (JAEA-J 06425)
 第一原理計算の結果を組み込んだレート理論モデルを用いたイオン照射におけるリン偏析の結果について報告する。第一原理計算のわれわれの最近の結果から、原子間機構よりむしろ空孔機構がイオン照射されたニッケル中でのリンの輸送を支配しており、原子間機構の原子レベルの運動は以前報告されていた結果と違っていることを見いだした。MurphyとPerksのモデルを修正し、シュミレーションパラメータを調節することによって、彼等の結果より実験に近いシミュレーション結果を得ることができた。

37001410
Thermal-hydraulic research in JAEA; Issues and future directions
秋本 肇; 大島 宏之; 上出 英樹; 中川 繁昭; 江里 幸一郎; 高瀬 和之; 中村 秀夫
Proceedings of 13th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-13) (CD-ROM) , 7p.(2009) ; (JAEA-J 06426)
 原子力機構においては、核融合炉・高速炉・高温ガス炉及び軽水炉に関する多くの熱水力研究を進めている。これらの研究では、実験と解析の両面から検討している。実験研究は、小型装置による基礎実験から大規模な総合試験まで多岐に展開している。解析研究もいわゆる1次元モデルによるシステム解析コードから詳細な3次元CFDコードまで広範な解析手法を対象としている。これらの研究では、原子炉の通常運転時の熱水力挙動から過酷事故を含む原子炉事故時の熱水力挙動までを取り扱っている。水・超臨界圧水・ヘリウム・ナトリウムなどの単相流,水蒸気/水・ナトリウム/アルゴンなどの二相流,過酷事故に現れる多相流を対象として研究を進めている。本報告は、これらの原子力機構で進められている熱水力研究の現状と今後の動向についてまとめたものである。

37001411
Unsteady hydraulic characteristics in large-diameter pipings with elbow for JSFR, 3; Flow structure in a 3-dimentionally connected dual elbow simulating cold-leg piping in JSFR
結城 和久*; 長谷川 駿介*; 佐藤 司*; 橋爪 秀利*; 相澤 康介; 山野 秀将
Proceedings of 13th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-13) (CD-ROM) , 11p.(2009) ; (JAEA-J 06427)
 本研究では、コールドレグ部をシミュレートする三次元的に連結した二次元エルボ内の流動構造をPIV計測で可視化し、一次エルボから二次エルボまでの流動遷移,流動励起振動に影響する分離などの非定常流動の発生を細かく検討する。実験装置は、内径,曲率半径がそれぞれ56mmと1.0で実設計比15分の1スケールの試験区画である。湾曲なく視覚化するには、作動流体としてNaI溶液を使用して整合屈折率PIV計測を行う。レイノルズ数は50,000で、試験区画への流入状態は全体に乱流へ発達する。一次エルボの内壁,二次エルボ内の1つの大渦流動に沿った分離が発生することを確認する。さらに、分離領域内及び(又は)後方で形成する非定常流動は下流へ運ばれ、二次エルボ中心部へ流入する。

37001412
Evaluation of xenon spatial oscillations on annular cores
高松 邦吉; 中川 繁昭; 稲垣 嘉之
Proceedings of 13th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-13) (CD-ROM) , 12p.(2009) ; (JAEA-J 06428)
 BWRやPWRなど軽水炉で使用される円筒炉心におけるゼノン空間振動は、既に理論的にも実験的にも十分研究されている。一方、VHTRで適用が予想される環状炉心におけるゼノン空間振動の評価は、未だ十分に評価されていない。ゼノン空間振動、環状炉心の形状、及び温度係数によるフィードバック効果の関係を調査することは必要である。本論文では、幾つかの無次元数の1つである炉心形状に関する中性子結合パラメータを提案する。また、これらのパラメータが、環状炉心のゼノン空間振動の評価に有効であることを示す。

37001413
Numerical analysis of sodium experiment for thermal stratification in upper plenum of fast reactor
大野 修司; 大島 宏之; 菅原 章博*; 大木 裕*
Proceedings of 13th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-13) (CD-ROM) , 12p.(2009) ; (JAEA-J 06429)
 原子炉上部プレナム温度成層化現象の基本的解析手法の検証を目的として、ナトリウム試験の多次元数値解析を実施した。その結果、適切なメッシュサイズと高次差分スキームを採用した条件のもと、RANS乱流モデルを使ったCFD解析によって温度成層界面の上昇と温度勾配を良好に予測できることを明らかにした。

37001414
Unsteady hydraulic characteristics in large-diameter pipings with elbow for JSFR, 4; Influence of elbow curvature on velocity fluctuation at elbow outlet
小野 綾子; 木村 暢之; 上出 英樹; 飛田 昭
Proceedings of 13th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-13) (CD-ROM) , 14p.(2009) ; (JAEA-J 06430)
 次世代型ナトリウム冷却高速炉(JSFR)では、建設コスト削減の観点から、1次冷却系システムの2ループ化が検討されており、ホットレグ配管内流速は9m/sを超える設計となっている。このときのレイノルズ数は4.2×107となる。さらに、炉容器コンパクト化のため、ホットレグ配管の一部に曲率の大きい「ショートエルボ」を採用している。ナトリウム炉では、軽水炉よりも系圧力が大幅に低いため、配管の肉厚は非常に薄い設計となっている。その結果、エルボ部を含むホットレグ配管系で流動励起振動が発生し、配管系の健全性を保てなくなることが懸念されており、配管系の健全性を実証するために、その発生メカニズムの把握が必要とされている。そこで、本研究では、1/8スケールモデルを用いた水流動試験を行った。試験では、曲率比の異なるエルボで、エルボ内の速度変動に曲率比が与える影響について検討した。速度分布測定には粒子画像流速計測法を用いた。2種類のエルボについて、非定常的な二次流れの流況やエルボ腹側の剥離の流況を捉えることに成功し、剥離域周辺の流動構造並びに二次流れの流動構造に関する多数の知見を得ることができた。

37001415
Unsteady hydraulic characteristics in large-diameter pipings with elbow for JSFR, 2; Studies on applicability of a large-eddy simulation to high Re-number short-elbow pipe flow
江口 譲*; 村上 貴裕*; 田中 正暁; 山野 秀将
Proceedings of 13th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-13) (CD-ROM) , 14p.(2009) ; (JAEA-J 06431)
 JSFR設計において、ショートエルボ内の流体運動により発生すると考えられる非定常流体力は評価する必要があるため、本論文では、内作のLESコードを使用して高レイノルズ数水質試験に対するラージ・エディ・シミュレーション(LES)法の適用性を研究している。第一に、高レイノルズLES計算時のメッシュ細分要件は理論上研究されている。そして、各種の入口,出口境界条件がRe=1.2×106の場合、スマゴリンスキーモデル及びWALE(Wall-adapting local eddy-viscosity)モデルを使用して乱流モデルの影響,バウンダリ条件を数値的に調べる。入口速度の分析結果では、エルボ曲線の分離機能上考慮すべき衝撃があり、また現在の計算によれば、エルボと出口間の距離が必要以上に短いと、出口バウンダリ条件は分離機能上の影響を特に受けやすいことが明らかになった。圧力及び壁効力変動の基礎機能もコンピュータによる視覚化,スペクトル分析を活用して検討する。

37001416
Experimental study on high cycle thermal fatigue in T-junction; Effect of local flow velocity on transfer of temperature fluctuation from fluid to structure
木村 暢之; 小野 綾子; 宮越 博幸; 上出 英樹
Proceedings of 13th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-13) (CD-ROM) , 16p.(2009) ; (JAEA-J 06432)
 温度の異なる流体が混合する領域では温度変動が発生し、その温度変動が構造材に伝わることにより、構造材に高サイクル熱疲労が発生する可能性がある。高サイクル熱疲労の評価において、流体から構造材への温度変動での伝達特性を明らかにすることは重要である。そこで、温度の異なる流体が合流するT字配管体系において、流体温度変動と構造材温度変動を同時に計測し、その温度変動の伝達特性を把握するとともに、構造材近傍の流速を同時に計測することによって、温度変動伝達特性に対する局所流速の影響を評価する水試験を実施した。その結果、温度変動の伝達特性を示す熱伝達率は、局所流速の増加とともに増加することが明らかになった。

37001417
Experimental investigation on characteristic of entrained bubbles due to surface vortex
江連 俊樹; 木村 暢之; 宮越 博幸; 上出 英樹
Proceedings of 13th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-13) (CD-ROM) , 16p.(2009) ; (JAEA-J 06433)
 コンパクトで経済性の高いナトリウム冷却高速炉を実用化するため、炉上部プレナム自由液面でのガス巻込み評価が重要である。本研究では、液面渦によるガス巻込みについて、巻込み気泡についての基礎的知見を得ることを目的とした試験を実施した。気泡径を気泡画像から画像処理により算出し、その分布を求めた。加えて、周囲の流速場がガスコアと離脱気泡の形状に与える影響を把握するため、流速計測及びガスコア形状の可視化を実施した。計測の結果、本試験の試験範囲において、離脱気泡径が等価直径換算で1.34mm〜2.06mmであることがわかった。

37001418
Sodium experiments of buoyancy driven penetration flow into low power subassemblies in a sodium cooled fast reactor during natural circulation decay heat removal
上出 英樹; 小林 順; 林 謙二
Proceedings of 13th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-13) (CD-ROM) , 17p.(2009) ; (JAEA-J 06434)
 ナトリウム冷却高速炉の自然循環による崩壊熱除去機能を評価するうえで、特に炉内浸漬型の冷却器(DHX)を用いる場合、原子炉容器内の熱流動現象の評価が重要となる。DHXが作動し低温のナトリウムが炉容器上部プレナムに供給されると、高温の炉心との温度差による浮力のために特に低流速の集合体の内部に、低温ナトリウムが部分的に逆流することが考えられる。本研究ではこのような逆流現象についてナトリウム試験を行い、その発生条件を流速と温度差をパラメータとして求めた。その結果、実機で想定される条件で、このような部分的な逆流現象は集合体の上部遮蔽体内にとどまることを明らかにした。

37001419
Reliability of core exit thermocouple (CET) for accident management action during SBLOCA and abnormal transient tests at ROSA/LSTF
鈴木 光弘; 中村 秀夫
Proceedings of 13th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-13) (CD-ROM) , 17p.(2009) ; (JAEA-J 06435)
 日本原子力研究開発機構が大型非定常試験装置(LSTF)を用いて行った小破断冷却材喪失事故(SBLOCA)と異常過渡事象に関する12回の模擬実験を対象として、炉心出口温度計(CET)の特性とそのPWRアクシデントマネジメント措置への適用性をまとめた。LSTFは、高さ実寸で容積比1/48を有する世界最大のPWR模擬装置である。これらの実験より、次の一般的CET特性を明らかにした。(1)CETは大部分のケースで炉心過熱の検出が可能であるが、炉心過熱部と比べて検出時間と温度上昇に遅れを伴う。(2)この遅れを生じる原因の1つは、炉心出口と外周部の構造材による冷却効果である。(3)蒸気発生器による減圧操作を伴う微少破断の場合には、10%低温側配管破断と同様、ホットレグからの著しい流下水の影響でCETは過熱温度を検出しなかった。(4)著しく高圧あるいは低圧条件下では、CET温度の代替指標として、その過熱度が必要である。

37001420
Unsteady hydraulic characteristics in large-diameter pipings with elbow for JSFR, 1; Current status of flow-induced vibration evaluation methodology development for the JSFR pipings
山野 秀将; 田中 正暁; 木村 暢之; 大島 宏之; 上出 英樹; 渡辺 収*
Proceedings of 13th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-13) (CD-ROM) , 18p.(2009) ; (JAEA-J 06436)
 本論文では、特に短エルボ配管内の非定常水力特性を検証する研究開発に重点を置き、JSFRの一次冷却配管の、流動励起振動評価法開発の現状を説明している。ホットレグ配管には3分の1及び10分の1スケールの単エルボ実験装置を使用し、コールドレグ配管には、4分の1及び7分の1スケールの3段エルボ配管装置を使用して実験的成果を上げてきた。シミュレーション活動として内部コードを使用したCFDコード及びラージ・エディ・シミュレーション(LES)法を使用したレイノルズ応力モデル(RSM)による非定常レイノルズ平均ナビエ・ストークス方程式(U-RANS)アプローチなどがある。本論文には、ホットレグ配管実験への適用性に注目した計算結果が示されている。配管の構造振動評価にこの計算結果がデータとして取り入れられる可能性がある。また、流動励起振動評価手順も本論文中で説明している。

37001421
Status of development on 99Mo production technologies in JMTR
稲葉 良知; 飯村 光一; 細川 甚作; 出雲 寛互; 堀 直彦; 石塚 悦男
Proceedings of 1st International Conference on Advancements in Nuclear Instrumentation, Measurement Methods and their Applications (ANIMMA 2009) (USB Flash Drive) , 8p.(2009) ; (JAEA-J 06438)
 材料試験炉(JMTR)は現在改修中であるが、2011年度には再稼動する予定である。再稼動後のJMTRでは99mTcの親核種である99Moを製造する計画で、2種類の製造法(固体照射法及び溶液照射法)を用いた99Mo製造技術の開発を行ってきている。JMTRでは、まず固体照射法により99Moの製造を開始することにしており、国内需要の約20%を供給できる見通しを得た。また、溶液照射法に関しては、照射ターゲット候補として選定したモリブデン酸塩水溶液の基本的特性を明らかにした。

37001422
Experimental study of the effect of radiation exposure to concrete
藤原 一成*; 伊東 賢伸*; 笹沼 美和*; 田中 英朗*; 広谷 浄*; 鬼沢 邦雄; 鈴木 雅秀; 雨澤 博男*
Proceedings of 20th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology (SMiRT-20) (CD-ROM) , 8p.(2009) ; (JAEA-J 06439)
 現在国内では、原子力発電所の高経年化に対する関心が高まっている。しかしながら、原子力発電所を構成するコンクリートに及ぼす放射線照射の影響については、研究例や実測例が非常に少ないのが現状である。そこで、放射線照射がコンクリートの基本的な材料特性に及ぼす影響を確認するため、JMTRにおいてコンクリート試験体への照射試験を行った。JMTRでの照射試験では、照射中のコンクリート試験体の温度は原子力発電所の設計規定値である65℃以下を満足し、高速中性子照射量は、代表的BWR型原子力発電所の原子炉圧力容器外側における60年相当の照射量を十分に超える12×1018n/cm2(E>0.1MeV)を与えることができた。照射後のコンクリート試験体を用いた圧縮強度試験の結果、基本的な環境で養生したコンクリート試験体とほぼ同等の圧縮強度が得られた。また、試験体の水分量を測定した結果、結合水量に照射前後で変化は見られなかった。以上より、本実験における照射量の範囲では、放射線照射がコンクリートの基本的な材料特性に大きな影響を及ぼさないことを確認した。

37001423
Development of constitutive models for fast reactor design; Strategy of the study and results in the first half stage
月森 和之; 岩田 耕司; 川崎 信史; 矢田 浩基; 笠原 直人
Proceedings of 20th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology (SMiRT-20) (CD-ROM) , 10p.(2009) ; (JAEA-J 06440)
 日本ではFaCT(Fast reactor Cycle Technology development)と呼ばれる高速増殖炉実用化に向けた研究開発が進められている。研究開発の重要課題のひとつとして、従来設計において原子炉容器内面に取付けられている熱応力緩和を目的としたサーマルライナーの削除による原子炉容器の小型化による経済性の向上が挙げられる。熱応力緩和構造の除去において、最も重要な課題は原子炉起動停止時に上下移動が繰り返されるナトリウム液面近傍の累積非弾性ひずみ量である。本研究の目的は、この種の複雑な非弾性挙動を的確に予測可能な合理的な構成モデルの開発及び、非弾性解析に基づく設計ガイドラインの作成である。本稿では、研究開発の概要と方針、そしてプロジェクト前半の成果を紹介する。

37001424
Innovative powder production and granulation for advanced MOX fuel fabrication
栗田 勉; 加藤 良幸; 吉元 勝起; 鈴木 政浩; 木原 義之; 藤井 寛一
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycle; Sustainable Options & Industrial Perspectives (Global 2009) (CD-ROM) , p.94-102(2009) ; (JAEA-J 06442)
 高度な混合酸化物燃料に関して、革新的なMOX粉末製造のために、マイクロ波脱硝に合うように特に設計された容器を、破砕、及び造粒に利用し、有機系潤滑剤や、工程間の粉末移送を使用しない新しい概念の製法を導入した。この概念を実現化させるために、2つの試みが試験された。(1)特別設計された3翼羽根は補助羽根と結合された。(2)ユニークな形状をした混合羽根は補助羽根と結合され、自動軌道の複合回転をする。造粒処理において、撹拌羽根は造粒の成長を促進させるが、補助羽根は過大な粒子を切ることで過度の成長を抑制させる。これらの造粒器は、添加剤として少量の水を使用する。その結果、純粋なWO3モデル粉で顆粒の主な直径は、400〜1000ミクロン、流動性は82〜85が得られた。したがって、望ましい粉体物性と簡素な核物質製造の両方を満たし、運転効率改良とコスト低減の見通しが得られた。

37001425
Current status on research and development of uranium crystallization system in advanced aqueous reprocessing of FaCT project
柴田 淳広; 鍛治 直也; 中原 将海; 矢野 公彦; 田山 敏光; 中村 和仁; 鷲谷 忠博; 明珍 宗孝; 近沢 孝弘*; 菊池 俊明*
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycle; Sustainable Options & Industrial Perspectives (Global 2009) (CD-ROM) , p.151-157(2009) ; (JAEA-J 06443)
 原子力機構では、FBRサイクル実用化研究開発の一部として、三菱マテリアルと協力し、ウラン晶析プロセスの開発を実施している。このプロセスは、Uと他の元素の溶解度の差を利用しており、温度や酸濃度により制御可能である。溶解液中のUの大半は、溶解液の温度を下げることにより硝酸ウラニル結晶として回収される。本報では、U晶析プロセスと機器に関する研究開発状況について報告する。実溶解液を用いたビーカ規模の試験をCPFにて実施した。U晶析工程におけるFPの挙動について議論する予定である。また、工学規模の晶析装置を用いた、非定常事象評価試験を実施した。スクリュー回転数低下,結晶排出口閉塞及び母液排出口閉塞の各事象について、事象の進展及び事象検知手段を確認した。

37001426
Radiolysis and extraction properties of branched N,N-dialkylamides in n-dodecane for U(VI) separation
伴 康俊; Burdet, F.*; Cames, B.*; Caniffi, B.*; Hill, C.*; 森田 泰治
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycle; Sustainable Options & Industrial Perspectives (Global 2009) (CD-ROM) , p.266-271(2009) ; (JAEA-J 06444)
 ノルマルドデカンで約2mol/dm3(M)に希釈し、5M硝酸にて予備酸平衡を行ったN,N-di(2-ethylhexyl)butanamide, N,N-di(2-ethylhexyl)isobutanamide、及びN,N-di(2-ethylhexyl)dimethylpropanamideに対して、1040kGyを最大照射線量としてγ線照射を行った。放射線劣化生成物の同定、及び放射線劣化させた3種類のモノアミドによる模擬核分裂生成物(Sr, Ba, Mo, Zr, Ru, Rh, Pd、及びNd)並びにU(VI)の抽出試験をそれぞれ実施した。本研究で用いた3種類のモノアミドはγ線照射に対して実質的に安定であり、これらのモノアミド及びそれらの劣化生成物はPd以外の模擬核分裂生成物とU(VI)との抽出分離に悪影響を及ぼさなかった。Pdに対する分配比は照射線量の増加とともに上昇したが、照射線量が300kGy未満の条件ではPdの分配比は1未満であった。一段階抽出によるモノアミドのU(VI)に対する抽出容量は約0.5Mであり、この抽出容量は照射線量が増加してもほとんど減少しなかった。

37001427
Applicability study on the design method for the buffer material of a HLW repository
棚井 憲治; 内藤 守正
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycle; Sustainable Options & Industrial Perspectives (Global 2009) (CD-ROM) , p.796-805(2009) ; (JAEA-J 06445)
 The basic design flow for the Japanese reference Engineered Barrier System (EBS) and the associated disposal facility for high-level radioactive waste (HLW) was presented in the H12 report. This approach was appropriate to the boundary conditions at that time - defining a repository system that would allow feasibility of post-closure safety to be demonstrated for generic Japanese sites. Over the last decade such boundary conditions have changed dramatically as siting has now been initiated by an open call for volunteer communities to host this facility. The design process must now develop realistic and practical repository systems that can be tailored to specific locations and are described in sufficient detail that they can aid in the site selection process. Although it is clear that post-closure safety is a pre-requisite, for a real project this needs to be considered alongside other top level requirements - in particular the need to assure safety during construction and operation, to minimize environmental impact and to encourage public acceptance. Such concerns may lead to significant modifications of the repository appearance but, to the extent possible, emphasis should be placed on the well-established and demonstrably robust EBS components from H12. The most important of these is the buffer, which is considered in some detail in this paper.

37001428
Selective separation of heat-generating nuclide by silica gels loaded with ammonium molybdophosphate; Adv.-ORIENT cycle development
遠藤 祐介*; Wu, Y.*; 三村 均*; 新堀 雄一*; 小山 真一; 大西 貴士; 大林 弘; 山岸 功; 小澤 正基
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycle; Sustainable Options & Industrial Perspectives (Global 2009) (CD-ROM) , p.1007-1015(2009) ; (JAEA-J 06446)
 高速炉を機軸とする新しい燃料サイクルの開発を目指した先進オリエントサイクル開発の一環として、発熱元素Csを分離するための複合吸着剤(モリブドリン酸アンモニウム担持シリカゲル,AMP-SG)を複数の方法で調製し、吸着溶離試験を実施した。AMP-SG複合吸着剤は、高レベル廃液相当の2〜3M HNO3溶液においても103cm3/g以上の高いCs分配係数を示した。Cs吸着等温線はラングミュア式に従い、この式から求めた最大吸着量は0.24mmol/gであった。アンモニウム塩溶液はCsの回収及び吸着剤再生に有効な溶離剤であり、カラムに吸着したCsの94%を5M NH4NO3-1M HNO3溶液で溶離できた。硝酸-硝酸アンモニウム混合液を用いたクロマトグラフィでは、同族元素であるCsとRbを高純度で分離できることを確認した。

37001429
Development of advanced reprocessing system using highly selective and controllable precipitants; Precipitation behavior of plutonium from U-Pu solution
森田 泰治; Kim, S.-Y.; 川田 善尚; 池田 泰久*; 菊池 俊明*
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycle; Sustainable Options & Industrial Perspectives (Global 2009) (CD-ROM) , p.1081-1085(2009) ; (JAEA-J 06447)
 ピロリドン誘導体を用いた沈殿法による高速炉燃料の高度化再処理システムを開発している。本システムは、Uを選択的に沈殿させる第1沈殿工程,濃縮工程,残りのU及びPuを共沈させる第2沈殿工程から成る。本研究では、高配位性・高疎水性沈殿剤であるN-1,2-ジメチルプロピル-2-ピロリドン(NDMProP), N-ネオペンチル-2-ピロリドン(NNpP)及びN-シクロヘキシル-2-ピロリドン(NCP)の第2沈殿工程への適用性検討のため、U(VI)-Pu(IV)混合溶液を用いて、Pu沈殿挙動を調べた。試験の結果、Pu沈殿率と生成した沈殿の物理的性状の点からNNpPが第2沈殿工程で用いる沈殿剤として最も適当であることがわかった。NNpPによるNp(IV, V, VI)の沈殿挙動の試験では、Np(VI)はU(VI)及びPu(IV)とともに定量的に共沈することが示された。U-Pu-模擬核分裂生成物の溶液による一連の工程の試験では、第1沈殿工程の後の濃縮工程が第2沈殿工程におけるPuの沈殿挙動に影響を与えていることが示唆された。

37001430
Separation of Am and Cm from HLLW by extraction chromatography using novel R-BTP extraction resins
Wei, Y.*; 星 陽崇; 森田 泰治; Bruggeman, A.*; Goethals, P.*
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycle; Sustainable Options & Industrial Perspectives (Global 2009) (CD-ROM) , p.1086-1093(2009) ; (JAEA-J 06448)
 長半減期のマイナーアクチニド(MA=Am,Cm)を高レベル廃液(HLLW)から分離するため、有機溶媒の使用量を極少量に抑え、機器設備をコンパクトにできる抽出クロマトグラフィーによる新規プロセスの研究を進めている。本プロセスは、群分離を目的とするCMPO吸着剤を充填したカラム、及びMAとランタニド(Ln)を相互分離するためのR-BTP吸着剤を充填したカラムの二段の分離カラムから構成される。R-BTPは窒素ドナー抽出剤の類似体で、Ln(III)に比べてMA(III)に対して強い親和性を有することが確認されている。一般に、R-BTPは窒素のプロトネーションにより強酸性では不安定であるため、弱酸性での使用が想定されている。しかし、R-BTPの化学的な安定性はアルキル基の長さ及び構造に強く依存することが明らかになり、分岐させた側鎖を有するR-BTPは、硝酸濃度1〜4Mの範囲でAm及びCmに対して強い吸着性を示した。加えて、3〜4M硝酸への含浸吸着剤からの溶出は30ppm未満と極微量であった。したがって、構造を最適化させたR-BTP吸着剤を用いた単サイクル分離プロセスによる、HLLWからのMAの直接分離が可能であると考えられる。MA単分離サイクルでの放射線に対する耐久性の実験評価も報告する。

37001431
N,N,N',N'-tetrakis((5-alkoxypyridin-2-yl)methyl)ethylenediamine, TRPEN, effective ligands for the separation of trivalent minor actinides from lanthanides
松村 達郎; 稲葉 優介*; 駒 義和; 森田 泰治; 森 敦紀*; 竹下 健二*
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycle; Sustainable Options & Industrial Perspectives (Global 2009) (CD-ROM) , p.1107-1112(2009) ; (JAEA-J 06449)
 核種分離変換技術の課題の一つとして、化学的挙動が類似した3価MAとランタノイドの分離プロセスの開発がある。われわれは、水溶液中におけるAm(III)及びEu(III)との錯形成定数に102以上の差が見いだされているTPENに着目し、実プロセスへの適用という観点からTPENの欠点を改良した誘導体の開発を進めている。新たにTPEN分子の外側に位置するピリジル基にアルコキシ基を結合させた誘導体を数種類合成し、その抽出特性を確認した。その結果、ニトロベンゼンを有機溶媒とした場合、ドデシルオキシ基を側鎖とするTDdPENがpH4.5の条件でSFAm/Eu=820を示すことを見いだした。この値はフランスが開発しているBTPと比べても遜色なく、非常に優れた分離性能である。またオクチルオキシ基を側鎖とするTOPENと疎水性高級カルボン酸であるデカン酸による協同抽出を試みたところ、有機溶媒に実用の可能性がある1-オクタノールを使用し、pH3.0の条件でSFAm/Eu=200以上を示した。これは、実用化に結びつく重要な成果であると考えられ、さらに詳細なデータを取得し抽出特性の把握を進める計画である。

37001432
Experimental study on the behavior of americium in pyrochemical process of spent nitride fuels
林 博和; 柴田 裕樹; 赤堀 光雄; 荒井 康夫; 湊 和生
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycle; Sustainable Options & Industrial Perspectives (Global 2009) (CD-ROM) , p.1166-1173(2009) ; (JAEA-J 06450)
 原子力機構は窒化物燃料を用いた加速器駆動システムによる長寿命のマイナーアクチノイドの核変換に関する研究開発を行っている。使用済燃料の再処理では、崩壊熱及び高速中性子放出が大きな使用済燃料を取扱い、高濃縮の15Nを回収する必要があるため、乾式再処理法が適していると考えられている。乾式再処理プロセスでは、溶融塩電解によって、プルトニウムとMAはLiCl-KCl共晶溶融塩中に溶解し、カドミウム陰極に選択的に回収される。われわれは溶融塩電解における電気化学的挙動や液体カドミウム陰極に回収されたアクチノイドの再窒化挙動を研究している。ここでは、窒化物燃料の乾式再処理プロセスにおけるアメリシウムの挙動研究に関する最近の成果を報告する。内容はAmを含んだLiCl-KCl共晶溶融塩試料における液体Cd電極又は固体金属電極反応測定から得られたAmの電気化学的挙動,窒化アメリシウム(AmN)の溶融塩電解挙動,液体Cd電極に回収したAmの再窒化挙動についてである。

37001433
Recent progress of JAEA-CRIEPI joint study for metal pyroreprocessing at CPF
北脇 慎一; 仲吉 彬; 福嶋 峰夫; 小泉 務; 倉田 正輝*; 矢作 昇*
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycle; Sustainable Options & Industrial Perspectives (Global 2009) (CD-ROM) , p.1269-1273(2009) ; (JAEA-J 06451)
 原子力機構は、電力中央研究所と共同で金属電解法乾式再処理開発を東海CPFにおいて実施している。U試験を2002年から開始し、2008年までにMOX試験までを終了した。U試験では、UO2ペレットの還元,還元物の電解,電解析出物に付着する塩化物の蒸留分離と析出物のインゴット化を行い、99%の回収率でUを金属として回収した。PuO2を用いた試験でも同様にPu金属をUとともに回収した。MOX試験では、Puの物質収支が〜100%で維持されることを確認した。現在U-Pu-Zr合金の調整中であり、2009年以降は合金を用いた試験を継続する。

37001434
Nitridation of U and Pu recovered in liquid Cd cathode by molten salt electrorefining of (U,Pu)N
佐藤 匠; 岩井 孝; 荒井 康夫
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycle; Sustainable Options & Industrial Perspectives (Global 2009) (CD-ROM) , p.1278-1286(2009) ; (JAEA-J 06452)
 本研究では、窒化物燃料の乾式再処理技術開発に資するため、(U,Pu)Nの電解精製によって得られたU-Pu-Cd合金の再窒化試験を実施し、回収粉を原料として(U,Pu)Nペレットを調製した。Ag/AgCl参照電極に対して-0.60V〜-0.55Vの陽極電位で定電流電解を行った結果、U及びPuは液体Cd陰極中に回収された。得られたU-Pu-Cd合金を窒素気流中、700℃で10時間加熱することで、(U,Pu)Nに転換した。さらに、この(U,Pu)N粉末を原料として理論密度に対して約84%の(U,Pu)Nペレットを調製することに成功した。

37001435
Fabrication of metal fuel slugs for an irradiation test in JOYO
中村 勤也*; 尾形 孝成*; 加藤 徹也*; 中島 邦久; 荒井 康夫
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycle; Sustainable Options & Industrial Perspectives (Global 2009) (CD-ROM) , p.1487-1495(2009) ; (JAEA-J 06453)
 「常陽」での照射試験を行うため、U-Pu-Zr合金燃料スラグを実験室規模の射出鋳造装置を用いて製造した。原料として用いたU-Pu合金は、U-Pu酸化物を電解還元することにより調製した。製品のU-Pu-Zrスラグは、先行試験結果及び米国EBR-IIでのドライバー燃料の仕様から定めたスペックをすべてクリアした。燃料スラグ中のアメリシウムとプルトニウムの比率は射出鋳造前の値に比較するとやや減少した。

37001436
Early introduction core design for advanced LWR concept of FLWR to recycle Pu or TRU
大久保 努; 中野 佳洋; 内川 貞夫; 深谷 裕司
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycle; Sustainable Options & Industrial Perspectives (Global 2009) (CD-ROM) , p.1703-1710(2009) ; (JAEA-J 06454)
 成熟した軽水炉技術に立脚してPuやTRUのリサイクルによって将来の持続的なエネルギー供給に貢献するため、新型軽水炉概念FLWRの提案・検討が行われている。本概念はMOX燃料を用いた稠密炉心を使用し、時系列的な2つのステップで構成されている。第1ステップは、早期導入を実現する高転換型炉概念HC-FLWRであり、軽水炉及びプルサーマル技術からのスムースな連続性の確保を目指したものである。第2ステップは、低減速軽水炉概念RMWRであり、1.0を超える高転換比を実現してPuやTRUの多重リサイクルによって長期的持続的なエネルギー供給に適するものである。重要な点は、この2つの炉心概念では整合性を有する同じ形の燃料集合体を利用する点であり、このことにより、同一の原子炉において前者から後者への移行が将来の燃料サイクル環境の状況に柔軟に対応して行うことが可能である。本論文では、FLWRの早期導入炉心の設計に重点を置きながら、FLWR研究開発における炉心設計の進め方とともに紹介する。

37001437
Evaluation of MA recycling concept with high Am-containing MOX (Am-MOX) fuel and development of its related fuel fabrication process
田中 健哉; 石井 徹哉; 吉持 宏; 浅賀 健男
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycle; Sustainable Options & Industrial Perspectives (Global 2009) (CD-ROM) , p.2045-2050(2009) ; (JAEA-J 06455)
 高濃度Am含有MOX燃料をベースとするMAリサイクルのシステム評価の一部として、MAリサイクルに伴う高レベル廃棄物発生量の低減に基づき、処理・処分に対する経済的な効果を評価した。また、このMAリサイクルシステムの中核技術となる燃料製造プロセスの成立性評価のため、転造造粒及び押出し造粒の比較検討を行い、両者の高濃度Am燃料製造への適用可能性を示した。さらに、Amを高濃度含有することによる熱伝道度等の物性劣化を補償するためのUメタル粒子及びMo粉末の添加酸化物燃料評価としてUO2を用いた先行焼結試験を行い、製造条件を把握するとともに、熱伝導度測定を行い、添加剤添加による熱伝導度の改善効果を確認した。

37001438
Development of an advanced fabrication process for fast reactor MOX fuel pellets
加藤 正人; 瀬川 智臣; 武内 健太郎; 鹿志村 元明; 木原 義之
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycle; Sustainable Options & Industrial Perspectives (Global 2009) (CD-ROM) , p.2051-2058(2009) ; (JAEA-J 06456)
 原子力機構では、高速炉リサイクル技術(FaCTプロジェクト)の開発のために、マイナーアクチニド含有MOXの開発を進めている。その燃料は、最大5%のマイナーアクチニドを含有する低O/Mの均質燃料である。この燃料の製造技術を確立するために、原料粉末の熱特性と、酸化原料を用いたペレット調製及びO/M調製に関する研究を実施した。

37001439
Protected plutonium production by transmutation of minor actinides for peace and sustainable prosperity; Irradiation tests of Np and Np-U samples in experimental fast reactor JOYO (JAEA) and advanced thermal reactor ATR (INL)
小山 真一; 逢坂 正彦; 伊藤 正彦*; 相楽 洋*; 齊藤 正樹*
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycle; Sustainable Options & Industrial Perspectives (Global 2009) (CD-ROM) , p.2356-2362(2009) ; (JAEA-J 06457)
 核不拡散研究の一環として、防護されたPuの生成にかかわるプロジェクトが東京工業大学により提案されている。この概念を検証するため、高速炉である常陽において237Npの照射による238Pu生成挙動を評価する試験が行われた。一方で、熱中性子炉であるINLのATRにおいて、同様の目的のため2%, 5%及び10%の237Npを含むNp-U試料が照射された。これらにより検証された237Npの核変換データは、核不拡散を目的とするNp-U酸化物燃料ペレットの設計に使用できる。

37001440
Determination of the solubility limiting solid of selenium in the presence of iron under anoxic conditions
飯田 芳久; 山口 徹治; 田中 忠夫; 北村 暁; 中山 真一
Proceedings of International Workshop on Mobile Fission and Activation Products in Nuclear Waste Disposal , p.135-145(2009) ; (JAEA-J 06458)
 還元環境における鉄共存下でのセレンの溶解度制限固相を決定するため、鉄-セレン化合物の溶解度試験を未飽和及び過飽和の両方から実施した。過飽和実験で生成した固相は、二セレン化鉄,磁鉄鋼及び針鉄鉱であった。一方セレン濃度は、未飽和及び過飽和試験のいずれにおいても既存のFeSe2熱力学データから計算される溶解度より9桁高かったことから、FeSe2固相に制限されているとは考えられなかった。試験溶液のセレン濃度はpH, Eh依存性から、Se(cr)の溶解反応とすることで最もよく解釈されたが、既存の熱力学データから計算された溶解度より3桁高い値であった。FeSe2以外のセレン化合物がXRDによって検出されなかったこと、セレン濃度がSe(cr)の溶解度より高かったことから、溶解度制限固体はXRDで検出できない無定形セレンであると考えられた。

37001441
Thermodynamic data of water on smectite surface and those applications to sweeling pressure of compacted bentonite
佐藤 治夫
Proceedings of International Workshop on Mobile Fission and Activation Products in Nuclear Waste Disposal , p.173-184(2009) ; (JAEA-J 06459)
 本研究は、地層処分の人工バリア材の1つであるベントナイト緩衝材の重要粘土鉱物のスメクタイト表面の水の熱力学特性に着目し、ベントナイト緩衝材の力学特性の1つである膨潤圧について検討した。蒸気圧法により、含水比,温度,スメクタイトの乾燥密度をパラメータとしてスメクタイト表面の水の熱力学データを測定した。得られた活量と相対部分モルギブスの自由エネルギー(Δ G)は含水比の減少に伴い低下し、スメクタイト表面からおおよそ水分子2層までの水が束縛されていると解釈された。Δ Gに基づいて膨潤圧を見積るとともに、実測値と比較したところ、計算値は実測値とよく一致した。さらに、膨潤圧に対する温度の影響についても検討する。

37001442
Newly-designed capsules for fuel ramp tests in the JMTR
塙 悟史; 扇柳 仁; 稲葉 良知; 笹島 栄夫; 中村 仁一; 中村 武彦
Proceedings of Top Fuel 2009 (DVD-ROM) , p.350-356(2009) ; (JAEA-J 06460)
 改良型軽水炉燃料の出力過渡時における挙動を評価するため、自然対流型と強制対流型の二種類の燃料異常過渡試験キャプセルの開発を進めている。自然対流型キャプセルは構造が比較的単純であり、試験燃料棒はその周りの冷却水の自然対流で冷却される。自然対流型キャプセルの基本的な技術は既に確立しており、改良型燃料の出力過渡試験は自然対流型キャプセルを用いて開始される予定である。強制対流型キャプセルは新しい概念のキャプセルであり、キャプセル内の小型ポンプにより燃料棒周りの冷却水を強制的に循環させることで、軽水炉の条件をより精度よく模擬できる。各種炉外試験を実施した結果、開発を進めるキャプセルでは改良型燃料を用いた試験でも目標とする線出力がDNBを起こすことなく達成できることが確認され、また強制対流型キャプセルに必要な技術要素について実現の見通しを得た。

37001443
Behavior of LWR/MOX fuels under reactivity-initiated accident conditions
更田 豊志; 杉山 智之; 梅田 幹; 笹島 栄夫; 永瀬 文久
Proceedings of Top Fuel 2009 (DVD-ROM) , p.465-472(2009) ; (JAEA-J 06461)
 Behavior of LWR fuels during reactivity-initiated accident (RIA) is being studied with pulse-irradiation experiments in the Nuclear Safety Research Reactor (NSRR). The tests BZ-1 and BZ-2 were performed on PWR-MOX fuel rods irradiated in the Beznau NPP in Switzerland. The BZ-1 test fuel rod contained pellets produced with the Short Binderless Route (SBR) process. The local burnup was 48 GWd/t. On the other hand, the pellets of the BZ-2 test fuel rod were produced with the Micronized Master blend (MIMAS) process. The local burnup was 59 GWd/t. The two tests resulted in PCMI failure, a long axial clack was generated and fragmented pellets were found in the capsule water. Subsequently to the above-mentioned BZ-2 test, a sibling rod was subjected to the NSRR experiment at high temperature by using newly developed capsule. The result from this test BZ-3 is also described and discussed in the paper.

37001444
Comparative analysis on behavior of high burnup PWR fuels pulse-irradiated in reactivity-initiated accident conditions
鈴木 元衛; 杉山 智之; 宇田川 豊; 永瀬 文久; 更田 豊志
Proceedings of Top Fuel 2009 (DVD-ROM) , p.473-479(2009) ; (JAEA-J 06462)
 高燃焼度PWR燃料を用いて、反応度事故条件下で行われた二ケースのNSRR実験をRANNSコードにより解析し、比較した。1ケースは室温大気圧の静止水中で行われ、他ケースは高温7MPaの静止水中で行われ、いずれも破損した。これらの燃料の速い過渡時のふるまい、特に燃料棒の温度,ペレット被覆管機械的相互作用,被覆管の応力歪みなどをRANNSコードにより解析し、その結果を実験における観察と比較検討した。金相観察は、被覆管がクラックの先端より発生したマクロな剪断すべりによって破損したことを示している。解析による破損時塑性歪み(円周方向平均値)は、金相観察から得た局所ひずみ量を全周で平均化した値と同程度となった。

37001445
Effect of initial coolant temperature on mechanical fuel failure under reactivity-initiated accident conditions
杉山 智之; 梅田 幹; 笹島 栄夫; 鈴木 元衛; 更田 豊志
Proceedings of Top Fuel 2009 (DVD-ROM) , p.489-496(2009) ; (JAEA-J 06463)
 Pulse irradiation tests, simulating reactivity-initiated accidents (RIAs), were performed on high burnup fuels at high temperature (HT) in the Nuclear Safety Research Reactor (NSRR). The NSRR tests have provided data of fuel failure limit against the pellet-cladding mechanical interaction (PCMI) at RIAs, but the coolant temperature in the previous tests was limited to room temperature (RT) of around 20 ℃. Therefore, the obtained failure limits could be very conservative for RIAs at hot zero power or at operation. The possible effect of initial coolant temperature on the PCMI failure limit was investigated using a newly developed test capsule which can achieve 290 ℃. PWR and BWR fuel rods were tested both at RT and HT conditions. Comparison of the test results indicated that the increased cladding ductility at HT raised the failure limit. Hence, the PCMI failure criterion based on the NSRR RT data has more than adequate safety margin for RIAs at HT condition.

37001446
Cladding embrittlement under LOCA conditions, examined by two test methodologies
永瀬 文久; 中頭 利則; 更田 豊志
Proceedings of Top Fuel 2009 (DVD-ROM) , p.527-537(2009) ; (JAEA-J 06464)
 LOCA時の被覆管脆化を調べるために、日本においてはLOCA過程を模擬した実験を、欧米においては酸化した被覆管のリング圧縮試験を行っている。2つの試験手法を比較し高燃焼度燃料に適した安全基準を検討するために、LOCA模擬試験に供した高燃焼度燃料被覆管に対し135℃でのリング圧縮試験を行った。酸化温度範囲は約1130から1210℃、酸化量は約11から22%ECR、水素濃度は約200から1400ppmである。LOCA模擬試験では急冷時にも破断しなかった被覆管がリング圧縮試験では塑性変形をせずに破損した。急冷までに燃料に加わる負荷を考えれば、リング圧縮試験により得られる結果は保守的であると考えられる。

37001447
Study on silicide fuel behavior during power transient
柳澤 和章
Proceedings of Top Fuel 2009 (DVD-ROM) , p.1226-1235(2009) ; (JAEA-J 06465)
 未照射シリサイド小型燃料板を用いた出力過渡試験を実施した。試験燃料板の破損しきい値は82から94カロリー/グラム燃料板の間にあることを見いだした。発生した燃料板の貫通割れは急冷時に発生する大きな温度差(94度以上)と極端に短い急冷時間(0.13秒以下)の組合せから生じる熱応力に起因する。さらに、単一燃料板と3枚組燃料板を用い、燃料板表面温度(PCST)をパラメータとした冷却材の流路閉塞(燃料板の曲がり)についても研究した。冷却材の流路閉塞については、安全審査の判断基準温度として228度が採用されているが、この値がJRR-3やJMTR燃料に対して妥当であることを実験的に明らかにした。

37001448
Phonons in the new iron-based high-temperature superconductors
福田 竜生; Baron, A. Q. R.*
SPring-8 Research Frontiers 2008 , p.90-91(2009) ; (JAEA-J 06466)
 X線非弾性散乱により、LaFeAsO1-xFx及びPrFeAsO1-yの格子振動の測定を行った。3種類の粉末試料の測定により格子振動の状態密度が、PrFeAsO1-y単結晶試料の測定により格子振動の分散関係が決定される。その結果、室温での全測定結果を矛盾なく説明するモデルは、第一原理計算の計算結果においてFe-As間のバネ定数を30%弱めることで得られることがわかった。

37001449
An Integrated approach for detecting latent magmatic activity beneath non-volcanic regions; An Example from the crystalline Iide Mountains, northeast Japan
梅田 浩司
Stability and Buffering Capacity of the Geosphere for Long-term Isolation of Radioactive Waste; Application to Crystalline Rock , p.289-301(2009) ; (JAEA-J 06467)
 将来の火山・地熱活動の発生に伴う地層処分システムへの影響を回避するためには、概要調査等によって対象となる地域にマグマや高温流体等の存在の有無をあらかじめ確認することが不可欠である。本講演では、地下深部のマグマの存在を示すための調査技術として、地震波速度構造,深部比抵抗構造,温泉ガスのヘリウム同位体等の地球物理及び地球化学データによる総合的なアプローチを提案するとともに、この手法を用いた研究事例を紹介する。

37001450
ドープしたグラフェンの電子状態・触媒活性
池田 隆司; Huang, S.-F.*; Boero, M.*; 寺倉 清之*
グラフェンの機能と応用展望 , p.46-59(2009) ; (JAEA-J 06468)
 グラフェンに窒素をドープした系の電子状態計算と、第一原理分子動力学法に基づくシミュレーションの結果から、カーボンアロイの酸素還元反応に対する触媒機能がどのように説明されるかを解説した。

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