学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2009年3月


37000269
Organic contaminant detection of silicon wafers using negative secondary ions induced by cluster ion impacts
平田 浩一*; 齋藤 勇一; 千葉 敦也; 鳴海 一雅
Applied Physics Express 1(4), p.047002_1-047002_3(2008) ; (JAEA-J 05278)
 Emission yields of carbon and hydrogenated carbon cluster secondary ions CpHq± (p≥1, q≥0) originating from organic contaminants on a silicon wafer are compared between monoatomic (0.5 MeV/atom-C1+) and cluster ion (0.5 MeV/atom-C8+) impacts using time-of-flight (TOF) secondary ion mass spectrometry. CpHq± for the cluster ion impact exhibits the highest emission yield per incident atom among CpHq± with the same p number. The highest relative CpHq± emission yield for the cluster ion impact reaches ∼ 20 and ∼ 60 times higher in comparison with those of CpHq- and CpHq+ with the same p number for the impact of the monoatomic ion with the same velocity, respectively. Combination of negative secondary ion TOF measurements with cluster impact ionization is a promising tool for highly sensitive detection of organic-contaminants on silicon wafers.

37000270
Development of micromachining technology in ion microbeam system at TIARA, JAEA
神谷 富裕; 西川 宏之*; 佐藤 隆博; 芳賀 潤二; 及川 将一*; 石井 保行; 大久保 猛; 打矢 直之; 古田 祐介*
Applied Radiation and Isotopes 67(3), p.488-491(2009) ; (JAEA-J 05279)
 原子力機構高崎量子応用研究所のイオン加速器施設(TIARA)のマイクロビームにおいて、芝浦工業大学との共同研究で、マスクレスイオンビームリソグラフィ技術の開発が進められている。マイクロビームサイズ評価とレンズ系の最適化、又は空間分解能として最小100nmのレベルの高空間分解能の測定手段を確立するために、開発している加工技術自身と電鋳技術との組合せにより二次電子マッピングに使用する標準試料としてNiレリーフパターンを作成した。本発表ではこの標準試料を用いて、100nmレベルの最小のビームサイズを測定することができたことを述べるとともに、その試料中をイオンが透過する際の散乱効果が測定結果に与える影響をモンテカルロシミュレーションコードを使用して評価した結果について報告する。

37000271
Neutrino-nucleus reaction cross sections for light element synthesis in supernova explosions
吉田 敬*; 鈴木 俊夫*; 千葉 敏; 梶野 敏貴*; 横枕 英和*; 木村 恵一*; 高村 明*; Hartmann, D.*
Astrophysical Journal 686(1), p.448-466(2008) ; (JAEA-J 05280)
 新しい殻模型ハミルトニアンを用いて4Heと12Cのニュートリノ反応断面積を求めた。超新星ニュートリノに対してLi, BeとB同位体を生成する崩壊比を導出した。今回求めた断面積を使うと太陽質量の16.2倍の星が超新星を起こした場合に生成する7Liと11Bの量が以前の結果のそれぞれ1.3, 1.2倍になることがわかった。それに対して10Bの量は三分の一になるなど、顕著な違いのあることもわかった。また、銀河の化学進化のモデルにおいて、超新星で合成された11Bの量から、超新星爆発時に発生する各種のニュートリノの温度に対する制限が得られた。さらには新しい断面積を用いて、ニュートリノ振動による7Liと11Bの増加がどの程度であるかを示した。

37000272
A Neutron crystallographic analysis of a cubic porcine insulin at pD 6.6
石川 卓哉*; 茶竹 俊行*; 大西 裕季*; 田中 伊知朗*; 栗原 和男; 黒木 良太; 新村 信雄*
Chemical Physics 345(2-3), p.152-158(2008) ; (JAEA-J 05281)
 A neutron diffraction study has been carried out at 2.7 Å resolution on cubic porcine insulin at pD 6.6 using the BIX-4 at the JRR-3 reactor of JAEA. The ionization states of several amino acids in porcine insulin have been obtained at pD 6.6 and they are compared with those at pD 9 obtained by neutron diffraction as well as those at pH 6.50 and 6.98 obtained by X-ray diffraction. For the present work, a large single crystal of 2.7 mm3 was obtained by dialysis. Refinement of the structure was carried out and the R-factor was 21.4% with the free R being 29.4%. Protonation and deprotonation of various ionizable amino acid residues were observed and discussed on the basis of the charged states estimated by the pKa values. In the case of HisB5, both Nπ and Nτ of an imidazole ring are protonated at pD 6.6, but at pD 9 only Nπ is protonated. In contrast, for HisB10, both Nπ and Nτ are protonated at pD 6.6 as well as at pD 9.

37000273
Numerical simulation of oscillations and rotations of a free liquid droplet using the level set method
渡辺 正
Computers & Fluids 37(2), p.91-98(2008) ; (JAEA-J 05282)
 二相流における界面現象のシミュレーション技術開発の一環として、レベルセット法によりナビエ-ストークス方程式を解くシミュレーションコードを開発し、自由液滴の3次元的な振動と回転挙動の数値シミュレーションを行った。まず、微小振幅の2次,3次及び4次の振動を模擬し、振動の周波数と減衰が線形理論により得られるものと一致することを示した。また、液滴の内部及び外部の流れ場を可視化し、3次元的な渦構造が液滴周辺に現れること、さらに、渦の数は振動の次数に一致することを明らかにした。振動周波数に及ぼす初期振幅及び回転の影響を検討し、初期振幅が増加すると振動周波数は減少し、回転数が増加すると振動周波数も増加することを示した。これらの非線形効果は、2次の摂動理論では過大評価されることを明らかにした。

37000274
Status of development of functional materials with perspective on beyond-ITER
四竈 樹男*; Knitter, R.*; Konys, J.*; 室賀 健夫*; 土谷 邦彦; Möslang, A.*; 河村 弘; 永田 晋二*
Fusion Engineering and Design 83(7-9), p.976-982(2008) ; (JAEA-J 05284)
 将来の核融合炉がより簡単な構造でかつ予備システムから解放されることが主張されたとしても、機能材料はITERだけでなくITERよりも先の核融合装置に重要な役割を持つ。ITER用テストブランケットモジュール(TBM)の研究は、機能材料の重要性を示している。本論文は、DEMO炉のような発電用核融合炉に適合するための機能性セラミックスの研究開発の現状についてまとめたものである。

37000275
Progress of R&D and design of blanket remote handling equipment for ITER
角舘 聡; 武田 信和; 中平 昌隆; 松本 泰弘; 柴沼 清; Tesini, A.*
Fusion Engineering and Design 83(10-12), p.1850-1855(2008) ; (JAEA-J 05285)
 本報では、ITERブランケット遠隔保守機器(保守ロボット)について以下に示す最新の設計及びR&D成果について報告する。(1)ブランケット分割形状の変更により他機器との干渉を回避するため保守ロボットの小型化設計を実施し、軌道回り回転機構歯車にダブルヘリカルギヤの採用等により重量30%減の小型化設計を実現した。(2)ブランケット交換時の視覚情報として3Dシュミレーションモデルを利用した操作系を全体制御系に組込み、真空容器内の周辺状況を把握するためのヒューマンインタフェースを改善し、保守ロボットの操作系を向上させた。(3)保守ロボットで使用される露出した歯車部の潤滑剤(グリース)が真空容器内の機器を汚すことを避ける必要がある。このため、グリースなしのドライ潤滑として耐摩耗特性に優れたDLC(Diamond Like Carbon)膜技術に着目し、歯車への応用を目的にDLC膜の潤滑特性要素試験を実施した。この結果、軟DLCとNi-Cr-Mo材で浸炭処理を施した基材との組合せが最も耐摩耗特性に優れていることが判明した。

37000276
Quantitative aspects of heterogeneity in soil organic matter dynamics in a cool-temperate Japanese beech forest; A Radiocarbon-based approach
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 石塚 成宏*; 三浦 覚*; 齋藤 武史*; 平井 敬三*
Global Change Biology 15(3), p.631-642(2009) ; (JAEA-J 05292)
 土壌には大気中に存在している炭素の約2倍に相当する炭素が有機物として貯留していると推定されている。そのため、土壌有機炭素貯留量がわずかに変化するだけで、大気中のCO2濃度や地球規模での炭素循環に重大な影響を及ぼす可能性がある。将来の気候変化に対する土壌有機炭素の応答の規模やタイミングを正確に予測するためには、土壌有機炭素の微生物分解に対する不均質性の定量的理解が不可欠である。本研究では、化学的に分画した土壌有機物に対して加速器質量分析装置を用いて放射性炭素同位体比を測定することによって、化学的に安定性の異なる土壌有機炭素画分ごとにその滞留時間を推定した。その結果、土壌を数年から1000年以上に渡る6つの異なる分解性を持つ炭素プールの複合体として特徴づけることができ、今後100年間に温暖化によって数十年から200年程度の比較的長い滞留時間を持つ炭素プールからの炭素消失が加速する可能性を示した。

37000277
Thermal feasibility analyses for the 1356 MWe high conversion-type innovative water reactor for flexible fuel cycle
Liu, W.; 大貫 晃; 吉田 啓之; 呉田 昌俊; 高瀬 和之; 秋本 肇
Heat Transfer Engineering 29(8), p.704-711(2008) ; (JAEA-J 05293)
 原子力機構が開発した稠密バンドル用限界出力相関式、及びMartinelli-Nelson二相増倍係数をTRAC-BF1に集約し、コード改良を行い、低減速軽水炉用熱設計コードが開発された。本研究は、開発したコードを用いて、900体の燃料集合体から構成される1356MWe増殖型低減速軽水炉の実機炉心の熱工学的成立性を評価した。評価にあたって、通常運転時及び運転時異常な過渡変化において、沸騰遷移を許容しないという従来BWR熱設計方針を用いた。評価手順は、まず運転時異常な過渡変化におけるMCPRの変化量ΔMCPRを評価し、これに基づいて通常運転時に必要なMCPR及び冷却材流量を算出した。強制循環型低減速軽水炉の熱工学成立条件は、運転制限MCPRが1.32(炉心平均質量速度が640kg/m2s)以上にすることである。また、自然循環型の熱工学成立条件は、運転制限MCPRが1.19(炉心平均質量速度が560kg/m2s)以上にすることである。

37000278
Shape optimization using adjoint variable method for reducing drag in Stokes flow
篠原 主勲*; 奥田 洋司*; 伊東 聰*; 中島 憲宏; 井田 真人
International Journal for Numerical Methods in Fluids 58(2), p.119-159(2008) ; (JAEA-J 05294)
 ストークス流中に置かれた物体が受ける流体抵抗を低減するための随伴変数法を定式化し、幾つかのテスト計算を行った。提案した定式化には、物体表面のメッシュを平滑化する手法や定積条件を保証する手法など、安定で頑健な最適化計算の実現に必須なテクニックが組み入れられている。支配方程式は有限要素法を用いて移動メッシュ上で解かれる。計算負荷や必要メモリが過大になることを避けるため、計算コードはHEC-MWライブラリのデータ圧縮ルーチンや並列化ライブラリを利用して実装された。ここで開発したコードにより、円柱がストークス流から受ける抵抗力を25%減らすことに成功した。

37000279
Estimation of regional stress by FEM for a heterogeneous rock mass with a large fault
松木 浩二*; 中間 茂雄; 佐藤 稔紀
International Journal of Rock Mechanics and Mining Sciences 46(1), p.31-50(2009) ; (JAEA-J 05295)
 大規模断層を含む不均一岩体の広域応力場の評価法について、三次元有限要素法を用い、二つの研究を実施した。一つ目の研究として、小規模モデルを対象とした基礎的研究として、断層が部分的に滑る場合の広域応力場評価とともに、断層が滑っていない場合について、評価精度に及ぼす断層剛性の設定値,地圧データの与え方,断層滑りの影響等、評価手法について検討した結果を述べる。二つ目の研究として、広領域の東濃地区に月吉断層が存在する場合を対象として、断層が滑らないと仮定した場合の広域応力場評価に関する研究を行い、現在までに測定された地区データを用いて広域応力場を評価し、小規模モデルに関する研究で得られた知見を基礎としてその妥当性について検討し、東濃地区の応力分布の傾向を論じた。

37000280
Evaluation of uncertainties originating from the different modeling approaches applied to analyze regional groundwater flow in the Tono area of Japan
井尻 裕二*; 三枝 博光; 澤田 淳; 小野 誠*; 渡辺 邦夫*; 唐崎 建二*; Doughty, C.*; 下茂 道人*; 文村 賢一*
Journal of Contaminant Hydrology 103(3-4), p.168-181(2009) ; (JAEA-J 05296)
 高レベル放射性廃棄物地層処分の安全評価においては、シナリオ,概念モデル及び入力パラメータ値の不確実性が計算結果に及ぼす影響を定量的に評価することが重要な課題の1つとなっている。本研究では、複数の不均質連続体モデルを用いて東濃地域周辺を対象とした広域地下水流動解析を実施し、概念モデルに起因した不確実性について検討を行った。その結果、概念モデルの不確実性は、解析技術者が設定する境界条件及びモデル化する水理地質構造などに大きく依存し、確率論的モデルにおけるモンテカルロシミュレーションのばらつきに起因した不確実性よりも大きいことが明らかとなった。

37000281
Modeling pressure fluctuation with cross flow in a tight-lattice rod bundle
Zhang, W.; 吉田 啓之; 高瀬 和之
Journal of Engineering for Gas Turbines and Power 131(2), p.022901_1-022901_6(2009) ; (JAEA-J 05297)
 To explore the mechanism of differential pressure fluctuation inducing cross flow between subchannels in the tight-lattice rod bundle, an evaluation method is presented, which permits the prediction in detail of the unsteady differential pressure fluctuation behavior between subchannels. The instantaneous fluctuation of differential pressure between two subchannels in gas-liquid slug flow regime is deemed as a result of the intermittent nature of slug flow in each subchannel. The method is based on the detailed numerical simulation result of two-phase flow that pressure drop occurs mainly in liquid slug region and it is, however, negligibly small in the bubble region. The instantaneous fluctuation of differential pressure between two subchannels is associated with pressure gradient in the liquid slug for each channel. In addition to a hydrostatic gradient, acceleration and frictional gradients are taken into account to predict pressure gradient in the liquid slug. This method used in conjunction with the numerical simulation code works satisfactorily to reproduce numerical simulation results for instantaneous fluctuation of differential pressure between two modeled subchannels. It is shown that the static head, acceleration and frictional pressure drops in liquid slug are main contributions to the fluctuation of differential pressure between subchannels.

37000282
Heat source for an amagmatic hydrothermal system, Noto Peninsula, Central Japan
梅田 浩司; 二ノ宮 淳; 根木 健之
Journal of Geophysical Research 114(B1), p.B01202_1-B01202_10(2009) ; (JAEA-J 05298)
 地層処分システムの長期的な安全性を検討するうえで考慮すべき天然現象として、最近注目されている非火山性温泉の熱源を解明するため、能登半島(和倉温泉: 95度)を事例に、温泉ガスの希ガス同位体分析及び三次元比抵抗構造解析を行った。その結果、三次元比抵抗構造によると、地下2∼3kmまでは、中新世の堆積岩と考えられる低比抵抗帯がそれ以深は、基盤岩(花崗岩)と考えられる高比抵抗帯が存在する。また、温泉ガスのヘリウム同位体比は、大気の値と同程度あるいはそれより低い値を示す。一方、最近発生したM6.5以上の内陸地震の震源域では、大気の2倍以上の値を示した。以上のことから能登半島の非火山性温泉は、高いU, Th, Kを含む花崗岩の崩壊熱によって温められた天水起源の地下水が、活構造帯等に規制され地表まで上昇した可能性があると考えられる。

37000283
Irradiation damage to the beam window in the 800MWth accelerator-driven system
西原 健司; 菊地 賢司
Journal of Nuclear Materials 377(1), p.298-306(2008) ; (JAEA-J 05301)
 800MW加速器駆動炉概念のビーム窓における照射損傷及び発熱を評価した。3.0GeVまでの陽子と中性子の輸送をPHITS及びTWODANTで計算した。PHITSはモンテカルロ輸送コード、TWODANTは決定論的2次元輸送コードである。ビーム窓は加速器駆動炉の中心で20MWの陽子と炉心からの中性子によって300炉内実効滞在日にわたって照射される。ガウス分布と平坦な分布の陽子ビームを仮定し、発熱,はじき出し,水素・ヘリウム元素の生成及び中性子・陽子場を評価した。

37000284
Status of reduced activation ferritic/martensitic steel development
Baluc, N.*; Gelles, D. S.*; 木村 晃彦*; 實川 資朗; Klueh, R. L.*; Odette, G. R.*; Van der Schaaf, B.*; Jinnan, Y.*
Journal of Nuclear Materials 367-370(1), p.33-41(2007) ; (JAEA-J 05302)
 低放射化フェライト鋼に関する最近の研究成果をまとめて示す。低放射化フェライト鋼はさまざまな中間的な段階(部品等)を経て利用される。これらには、例えば、板材,管材,粉末冶金HIP材,液相/固相接合材等がある。これらは加工や熱処理の履歴を反映して性質がある程度異なる。加えて、使用に際して照射の効果を受ける。しかし、このような違いや照射の影響を含めても、低放射化フェライト鋼は、ITERのテストブランケットへの適用に関して、十分な強度を有する。一方、DEMOへの利用には、IFMIFによる性能評価を含めて、特に、多量の核変換生成水素及びヘリウムの影響について、さらなる研究の余地がある。

37000285
Lifetime estimation of microbubble in mercury
直江 崇; 長谷川 勝一; Bucheeri, A.; 二川 正敏
Journal of Nuclear Science and Technology 45(12), p.1233-1236(2008) ; (JAEA-J 05306)
 水銀をターゲット材に用いた核破砕中性子源では、圧力波に励起されるキャビテーションによる損傷がターゲット容器の健全性を著しく低下させるとして問題となっている。圧力波を抑制するための方策の一つとして、水銀中へのマイクロバブル注入がある。任意の位置に最適な大きさのバブルを分布させるためには、溶解及び拡散により消滅するマイクロバブルの寿命を把握する必要がある。水銀は不透明であり、浮遊するマイクロバブルの測定が困難であることから、アクリル壁面に接するマイクロバブルの収縮挙動を観察し、その寿命を計測した。壁面におけるマイクロバブルの寿命から液体中に浮遊する場合の寿命を推定した。水銀中におけるヘリウムマイクロバブルの寿命は、現在検討中の気泡注入条件(気泡径,輸送距離)に対して十分長いことを示唆した。

37000286
New estimation method for void reactivity coefficient using the TRACY transient data
小川 和彦; 神永 文人*
Journal of Nuclear Science and Technology 46(1), p.1-5(2009) ; (JAEA-J 05307)
 放射線分解ガスボイドの生成に伴うフィードバック反応度を評価することは、核燃料再処理施設での臨界事故規模を評価するうえで重要である。過渡臨界実験装置(TRACY)の即発臨界時において、ガスボイド生成直後に出力及び炉心圧力の規則的な小振動が観測されている。この出力の小振動がガスボイドの圧縮性に起因することに着目し、出力と圧力の時間変化からボイド反応度係数を評価する手法を考案した。反応度変化は出力の逆解析から、ガスボイドの体積変化は炉心圧力変化から算出した。評価の結果、ガスボイドが中性子束に従い中央部に存在する場合は、溶液中にガスボイドが均一に存在する場合に比べ、負の反応度価値は大きくなることを実験的に示した。

37000287
Modeling of the interaction of Pu(VI) with the mixture of microorganism and clay
大貫 敏彦; 吉田 崇宏*; 尾崎 卓郎; 香西 直文; 坂本 文徳; 南川 卓也; 鈴木 義規; Francis, A. J.*
Journal of Nuclear Science and Technology 46(1), p.55-59(2009) ; (JAEA-J 05308)
 モデル解析により、Pu(VI)の微生物と粘土鉱物との混合物への濃集過程におけるPu(IV)の還元挙動を検討した。モデル解析と実験結果を比較した結果、Pu(VI)は微生物細胞表面で電子を受け取りPu(IV)に還元されると仮定した場合に両者に良い一致が見られた。一方、Pu(V)の不均化反応を仮定した場合にはモデルによる予測は実験結果と異なった。これらの結果から、Pu(VI)のPu(IV)への還元には微生物が関与することがわかった。

37000288
Simulation study on unfolding methods for diagnostic X-rays and mixed γ rays
橋本 周; 大高 雅彦; 荒 邦章; 神野 郁夫; 今邨 亮*; 三上 研太*; 野宮 聖一郎*; 尾鍋 秀明*
Journal of Nuclear Science and Technology 46(1), p.76-82(2009) ; (JAEA-J 05309)
 X線のエネルギー分布を測定する光子検出器について、先に報告したが、ここでは、その検出器を用いた、診療X線と137Csと60Coの混合γ線源の測定に用いるアンフォウルディング手法について論じる。さまざまな診療X線に対する応答関数は相互の区別がほとんどつかず、誤差低減法によるアンフォウルディング手法は十分に機能しない。この場合、スペクトルサーベイ手法が有効である。しかしながら、混合γ線の測定では誤差低減法は適用可能である。両ケースにおいて、ニューラルネットワーク手法の適用が期待できることも示された。

37000289
Study on loss detection algorithms using tank monitoring data
鈴木 美寿; 堀 雅人; 長岡 真一; 木村 隆志
Journal of Nuclear Science and Technology 46(2), p.184-192(2009) ; (JAEA-J 05310)
 東海再処理施設の溶液モニタリングシステムから得られたデータを用いて、溶液モニタリング結果を物質収支評価へ応用する可能性について調べた。提案されている幾つかの多変量統計的評価手法を用いた損失検知能力について、溶液移送がないウエイトモードのときの有意量をパラメータとした仮想損失に対して数値的に検討した。多変量累積管理和手法と同様に多スケール統計的解析手法が、ゆっくりした損失検知に対して有効であることが実証された。実タンクデータは、ウエイトモードと溶液移送のあるトランスファーモードとからなるため、溶液移送時のデータをシステムより抜き出し誤差評価モデルの有効性についてシミュレーション結果と比較して調べた。溶液モニタリングシステムは、東海再処理施設の全体プロセスに設置されている訳ではないが、溶液モニタリング結果の物質収支評価への応用を、実データを用いた評価により進めた。

37000290
Measurement of neutron dose under criticality accident conditions at TRACY using TLDs
村崎 穣; 外池 幸太郎; 内山 軍蔵
Journal of Nuclear Science and Technology 46(2), p.193-203(2009) ; (JAEA-J 05311)
 臨界事故時における中性子線量を簡易に測定する手法を開発するため、TLD中性子線量当量モニタ(TLDモニタ)を用いて、TRACY施設の中性子線量当量を測定した。このTLDモニタは、二つのTLDバッジと立方体のポリエチレンケースで構成され、周辺線量当量に似た応答を持つ。実験では、TRACYは水反射体ありとなしの両方で運転され、TLDモニタを照射した。測定された周辺線量当量は、TRACYの積算出力に比例しており、またMCNP5による計算結果とよく一致した。測定データは、MCNP5によって計算された線量換算係数を用いて組織カーマに換算された。測定データに適用するため、TLDモニタの252Cf校正線源とTRACYに対する応答の違いを考慮した応答補正係数もまたMCNP5により計算された。組織カーマは、30mGyから15Gyの範囲となり、これはIAEAにより臨界事故時の線量評価において重要であると指定されている100mGyから10Gyの範囲をカバーしている。TLDモニタはまた、IAEAによって要求されている線量決定の時間制限を満足している。

37000291
Experimental study on U-Pu cocrystallization reprocessing process
柴田 淳広; 大山 孝一; 矢野 公彦; 野村 和則; 小山 智造; 中村 和仁; 菊池 俊明*; 本間 俊司*
Journal of Nuclear Science and Technology 46(2), p.204-209(2009) ; (JAEA-J 05312)
 2段の晶析工程から成る新しい再処理システムの開発を行っている。本システムの第1段階ではUとPuがU-Pu共晶析により溶解液から回収される。U-Pu共晶析の基礎データ取得のため、U, Pu混合溶液及び照射済燃料溶解液を用いた実験室規模の試験を実施した。PuはUと共晶析したが、Puの晶析率はUに比べて低かった。FPは共晶析によりUやPuと分離され、Uに対するCs及びEuの除染係数は100以上であった。

37000292
NMR investigation of quadrupole order parameter in actinide dioxides
徳永 陽; 本間 佳哉*; 神戸 振作; 青木 大*; 酒井 宏典; 中堂 博之; 生嶋 健司*; 山本 悦嗣; 中村 彰夫; 塩川 佳伸*; Walstedt, R. E.*; 安岡 弘志
Journal of Optoelectronics and Advanced Materials 10(7), p.1663-1665(2008) ; (JAEA-J 05313)
 アクチノイドや希土類元素を含むf電子系化合物の多様な物性の背後には、f電子が持つ多極子の自由度が隠されている。この多極子の自由度が最も顕著に現れるのが多極子秩序と呼ばれる現象である。講演ではわれわれが行った二酸化ネプツニウム単結晶を用いた核磁気共鳴研究の結果を中心に、この新奇な秩序相について紹介する。また低温の電子状態について二酸化ウラニウムや二酸化プルトニウムとの比較も行う。

37000293
Momentum-resolved charge excitations in high-Tc cuprates studied by resonant inelastic X-ray scattering
石井 賢司; Hoesch, M.*; 稲見 俊哉; 葛下 かおり*; 大和田 謙二; 坪田 雅己; 村上 洋一; 水木 純一郎; 遠藤 康夫; 筒井 健二*; 遠山 貴己*; 前川 禎通*; 山田 和芳*; 増井 孝彦*; 田島 節子*; 川嶋 浩和*; 秋光 純*
Journal of Physics and Chemistry of Solids 69(12), p.3118-3124(2008) ; (JAEA-J 05314)
 Resonant inelastic X-ray scattering (RIXS) in the hard X-ray regime is a new spectroscopic technique to measure electronic excitations utilizing brilliant synchrotron radiation. It has the great advantage that the momentum dependence can be measured unlike conventional optical methods. As inelastic neutron scattering gives spin or lattice dynamics, inelastic X-ray scattering can be a tool to measure charge dynamics in solids through the coupling of photon to the charge of the electron. Here, I would like to present our RIXS studies on high-Tc cuprates and related materials which were performed in close collaboration with theorists. In doped Mott insulators, an interband excitation across the Mott gap and an intraband excitation below the gap are observed in the low energy region of RIXS spectra. Momentum and carrier-doping dependence of the excitations will be discussed.

37000294
Impurity effect on spin correlations in lightly doped La2-xSrxCuO4
松田 雅昌; 平賀 晴弘*; 藤田 全基*; 太田 聡一*; 脇本 秀一; 山田 和芳*
Journal of Physics and Chemistry of Solids 69(12), p.3181-3183(2008) ; (JAEA-J 05315)
 われわれは、中性子散乱実験によりLa2-xSrxCuO4低ドープ領域の静的スピン相関に対する不純物効果の研究を行った。その結果、Zn置換は非整合度をわずかに減少させるのに対して、Ni置換は非整合度を大きく減少させるうえにネール秩序を復活させることがわかった。これは、Ni置換によりホールの局在化が起こっていることを示唆する。つまり、NiがNi3+あるいはNi2+とホールが束縛状態を形成しZhang-Rice的な性格を持つ状態になっていると考えられる。われわれは、このような振る舞いがLa2-xSrxCuO4(0.01≤ x≤ 0.07)の広い領域に渡って共通に見られることを明らかにした。

37000295
First-principles calculation of the electron dynamics in crystalline SiO2
乙部 智仁; 矢花 一浩*; 岩田 潤一*
Journal of Physics; Condensed Matter 21(6), p.064224_1-064224_5(2009) ; (JAEA-J 05316)
 ガラス及びその結晶である水晶のレーザー加工,制御に大きな注目が集まっている。本研究ではα-qartzの電子ダイナミクスを時間依存密度汎関数法に基づき実時間実空間法によってシミュレートした。計算は線形応答領域の弱い光から大強度レーザーまでを行いその二つの領域でわれわれの計算手法が十分な解析を可能にするものであることがわかった。弱い光に関しては誘電関数及び誘電率の記述を行い実験に近い結果が出ることを確認した。また大強度レーザーによる電子応答は光絶縁破壊までを記述できている。また絶縁破壊が起こる過程での物理現象を以前計算したダイアモンドとの場合と比較しその特徴を調べた。

37000296
Recent insights into the biological action of heavy-ion radiation
浜田 信行*
Journal of Radiation Research 50(1), p.1-9(2009) ; (JAEA-J 05317)
 Biological effectiveness varies with the linear energy transfer (LET) of ionizing radiation. During cancer therapy or long-term interplanetary manned explorations, humans are exposed to high-LET heavy ions that inactivate cells more effectively than low-LET photons. Heavy ions overcome tumor radioresistance caused by Bcl-2 overexpression, p53 mutations and intratumor hypoxia. Compared with heavy ions alone, the combination with certain chemical agents or hyperthermia further enhances tumor cell killing. Beer or melatonin ameliorates the damage to normal cells. The bystander effect arises in nonirradiated cells having received signals from irradiated cells. This paper reviews briefly the current knowledge of the biological effects of heavy-ion irradiation with a focus on recent findings regarding its potential benefits for therapeutic use as well as on the bystander effect.

37000297
Development of multiple prompt γ-ray analysis
藤 暢輔; 大島 真澄; 小泉 光生; 木村 敦; 初川 雄一
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 276(1), p.217-220(2008) ; (JAEA-J 05319)
 3号炉の中性子ガイドホールC-2ラインに多重γ線を用いた即発γ線分析(MPGA)を行うための装置を開発している。PGAが1台のγ線検出器を用いてシングル測定によって定量を行うのに対し、MPGAでは複数のγ線検出器を用いて同時計数測定を行い、2次元のγ線スペクトルを生成して分析を行う。現在の検出器はGe結晶が4分割型となっているクローバー型Ge検出器が3台とコンプトンサプレッサーとして用いるBGO検出器が3台という構成であり、データ収集系はADC-DSPを用いたVMEモジュールで構成されている。多試料の自動測定を行うためのサンプルチェンジャー,中性子強度調整のためのアッテネータ,グラファイト製試料台車及びホルダー,ヘリウムガスによる窒素置換,VMEモジュール用ソフトウェア,データ収集用ソフトウェア,データ解析用ソフトウェアなどの開発を行い、標準試料を用いた予備実験の結果を報告する。本研究は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の平成15年度産業技術研究助成事業の助成金により実施された。

37000298
Development of a neutron beam line and detector system for multiple prompt γ-ray analysis
藤 暢輔; 大島 真澄; 古高 和禎; 木村 敦; 小泉 光生; 初川 雄一; 後藤 淳*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 278(3), p.703-706(2008) ; (JAEA-J 05320)
 研究用原子炉JRR-3M C2-3-2ラインに多重即発γ線分光装置を開発している。これを即発γ線分析(MPGA)に適用し得られた結果を報告する。即発γ線分析は非破壊、多元素同時といった特徴がある。しかし、試料の主成分元素からの即発γ線の影響、特にそのコンプトン成分によって目的元素からの即発γ線が覆われてしまうという問題がある。一方、MPGAではスペクトルが2次元に展開されるため、妨害を受け難くなる。MPGAの高精度化と迅速性を高めるためには中性子強度が重要である。そのため、Ge検出装置の直前にスーパーミラーによる中性子ガイドを設置し、中性子強度を増強した。上流部に設置されている中性子ベンダーの改良と中性子ガイドによる中性子増強効果を金箔の放射化により測定した結果、中性子強度が従来の約9倍となったことがわかった。LiFコリメータ,グラファイトホルダー,ガス置換等によるバックグラウンドの低減や、新しい検出装置についても報告を行う。

37000299
SAXS analysis of the order-disorder transition and the interaction parameter of polystyrene-block-poly(methyl methacrylate)
Zhao, Y.; Sivaniah, E.*; 橋本 竹治
Macromolecules 41(24), p.9948-9951(2008) ; (JAEA-J 05323)
 In this study, the order-disorder transition (ODT) for two symmetric polystyrene-b-poly(methyl methacrylate) diblock copolymers was investigated by a high temperature-resolution Small Angle X-ray Scattering (SAXS) experiments with small decreases of temperature (T) across the ODT. The characteristic ODT temperature was determined from the discontinuity of 1/Im and q2 vs 1/T, confirming the fluctuation-induced weakly first-order transition for this block copolymer. In the disordered state, far above ODT temperature, the interaction parameter for PS-b-PMMA was also extracted, and found to be slightly larger than that in the deuterated systems having the similar molecular weight and compositions. PS-b-PMMA is a promising technological system that is able to be manipulated to provide nanostructural templates and scaffolds. Hence our precise determination of the interaction parameter and the order-disorder characteristics of a non-deuterated system will be invaluable to future works.

37000300
Transient response to high energy heavy ions in 6H-SiC n+p diodes
小野田 忍; 大島 武; 平尾 敏雄; 菱木 繁臣; 岩本 直也; 児島 一聡*; 河野 勝泰*
Materials Science Forum 600-603, p.1039-1042(2009) ; (JAEA-J 05324)
 炭化ケイ素(SiC)半導体のイオン照射効果を明らかにするため、15MeV-O及び260MeV-Neマイクロビームを使用して六方晶(6H)SiC n+pダイオード中で発生する過渡電流の電圧依存性を調べた。双方のイオンについて、印加電圧の増加とともに、ピーク値が増加し、立上り及び立下り時間が減少する結果を得た。ピーク値の増加と立上り及び立下り時間の減少が補償することから、電荷収集効率(CCE:Charge Collection Efficiency)の電圧依存性はないことがわかった。15MeV-Oと比較して260MeV-NeによるCCEは非常に小さいことがわかった。この違いは線エネルギー付与(LET:Linear Energy Transfar)及び飛程の違いに由来するものと考えられる。15MeV-OのLETが7.29MeVcm2/mgであるのに対し、260MeV-NeのLETが2.95MeVcm2/mgと低いため、CCEが小さくなったと考えられる。さらに、15MeV-Oの飛程が空乏層よりも短いのに対し、260MeV-Neの飛程は空乏層よりも長い。そのため、260MeV-Neでは、入射エネルギーの一部しかダイオード中に付与されず、CCEが小さくなる。このように、過渡電流及びCCEのエネルギー依存性をマイクロビーム照射実験から明らかにした。

37000301
The Synthesis and structure of suspended ultra-thin Si3N4 nanosheets
田口 富嗣; 山本 博之; 社本 真一
Nanotechnology 19(48), p.485601_1-485601_6(2008) ; (JAEA-J 05325)
 幅が4μm以上と大きく、厚さが1.5∼4nmと非常に薄い単結晶Si3N4ナノシートの合成に初めて成功した。幾つかのナノシートの端は、その薄さのため丸まっていた。TEM及びAFM観察の結果から、合成されたSi3N4ナノシートは、数十nmオーダーで微細なしわがあることがわかった。加えて、この微細なしわの方向はランダムではなく、ある特定の結晶方向に平行であることがわかった。

37000302
Study on mixing behavior in a tee piping and numerical analyses for evaluation of thermal striping
上出 英樹; 五十嵐 実*; 川島 滋代*; 木村 暢之; 林 謙二
Nuclear Engineering and Design 239(1), p.58-67(2009) ; (JAEA-J 05326)
 サーマルストライピング現象の熱流動側面に着目し、3対1の口径比を持つT管を対象とした水試験を実施した。移動可能な熱電対ツリーと粒子画像流速計測法を用い、詳細な温度分布と流速分布を計測した。T管内のフローパターンは3種類に分類され、それぞれが固有の温度変動強度の空間分布を持つことを明らかにした。温度変動のパワースペクトル(PSD)はSt数により無次元化することで、T管の流速比とフローパターンが同じであれば、流速の絶対値によらず同じ分布形状を示すことがわかった。有限差分法に基づく数値解析の結果、壁面噴流の形態では、枝管からのジェットの背後に交互に渦が発達することが示された。T管内の混合現象をこれらの試験データと解析結果に基づいて明らかにした。

37000303
Pulse characteristics of epithermal neutrons from a spallation source
原田 正英; 渡辺 昇*; 前川 藤夫; 二川 正敏
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 597(2-3), p.242-256(2008) ; (JAEA-J 05327)
 この論文は、MW級核破砕中性子源に設置された液体水素モデレータの熱外中性子パルス特性について、議論したものである。JSNSにおける熱外中性子の中性子パルス特性をJSNSの線源集合体には設置されていない軽水モデレータと比較しつつ、その有意性について議論している。その結果、熱外中性子領域でのJSNS水素モデレータから予想される効率性は、中性子のエネルギーによるが、軽水モデレータの50%から100%になることがわかった。この結果より、JSNSは、おもに凝縮系物性研究のための冷・熱中性子源として設計されているが、熱外中性子源としても、十分利用できることがわかった。

37000304
J-PARC status update
池田 裕二郎
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 600(1), p.1-4(2009) ; (JAEA-J 05328)
 This paper reports the current status of J-PARC facility construction and commissioning with emphasis of critical technological issues and important achievements. Lastly, the neutron and muon source performances are given to world wide users to have ideas of science expected. In addition, J-PARC user access policy and user program of neutron and muon users are introduced.

37000305
Development of the Hg target in the J-PARC neutron source
二川 正敏; 羽賀 勝洋; 涌井 隆; 粉川 広行; 直江 崇
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 600(1), p.18-21(2009) ; (JAEA-J 05329)
 J-PARCの物質・生命科学実験施設に設置される中性子源として使用される水銀ターゲットに関する開発の現状について報告する。特に、高出力陽子ビームの入射により水銀中に発生する圧力波の抑制技術に関する開発研究及び高出力化対応のターゲット容器構造の概念について紹介する。

37000306
Total scattering of disordered crystalline functional materials
社本 真一; 樹神 克明; 飯久保 智; 田口 富嗣
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 600(1), p.229-231(2009) ; (JAEA-J 05330)
 J-PARCの全散乱装置での科学研究対象として、乱れた結晶性機能性物質を取り上げる。それらは光記録材料であり、熱電材料であり、リラクサー強誘電体などである。光記録材料では、金属的な相では、低い熱伝導と高い電気伝導を同時に持たなければならない。この矛盾した条件は、材料研究者が良い機能性材料を設計するのを難しくしている。その材料は、少なくとも二つの結晶学的サイトを持たなければならない。一つのサイトは熱伝導を抑え、もう一つのサイトは電子又はホールを高い移動度を保持しなくてはならない。乱れた部分では、周期境界条件が失われている。そのために2体分布関数(PDF)解析は材料中の乱れた部分だけでなく、結晶性部分の形とサイズを調べるのに適している。

37000307
Correlation effects among atomic thermal displacements in oscillatory diffuse neutron scattering of ZnSe
Basar, K.*; Siagian, S.*; Xianglian*; 佐久間 隆*; 高橋 東之*; 井川 直樹
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 600(1), p.237-239(2009) ; (JAEA-J 05331)
 ZnSeの中性子回折実験を15K, 150K及び300Kにおいて行い、散漫散乱解析を行った。その結果、散漫散乱の振動的なプロファイルは第1,第2,第3近接原子間の熱振動による相関効果によって説明でき、この相関効果の値は原子間距離の増加と温度の低下によって減少することが明らかになった。

37000308
Powder neutron diffraction of La-apatite under low temperature
松下 能孝*; 泉 富士夫*; 小林 清*; 井川 直樹; 北澤 英明*; 尾山 由紀子*; 三好 正悟*; 山口 周*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 600(1), p.319-321(2009) ; (JAEA-J 05332)
 アパタイト型Laシリケート・La9.5Si6O26.25について10Kにて粉末中性子回折データを測定し、Rietveld解析を行った。解析の結果、本物質の空間群はP63/mであり、格子定数はa=0.971297(7)nm, c=0.717950(6)nmであることがわかった。最大エントロピー法解析によって、La2サイトの周りにランダムに格子間酸素位置が存在すること、これがO4サイトによるイオン伝導に対して高い伝導度をもたらすことが明らかになった。

37000309
On the effect of microbubble injection on cavitation bubble dynamics in liquid mercury
井田 真人; 直江 崇; 二川 正敏
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 600(2), p.367-375(2009) ; (JAEA-J 05333)
 核破砕中性子源の開発において、水銀中キャビテーションによる水銀容器の損傷が深刻な問題となっている。水銀へのマイクロバブル注入は、この問題の克服を目指してわれわれが試みている手段の一つであるが、最近の実験によってその有効性が徐々に明らかになりつつある。本論文では、実験結果に表れた幾つかの興味深い現象を説明することを目的に、複数気泡モデルを用いた数値解析を実施した。それにより、マイクロバブル注入による負圧のわずかな減少はキャビテーション気泡の挙動に甚大な影響を与えること、そして、その負圧の変化はマイクロバブルが放射する正の圧力波に起因するものであることを明らかにした。さらに、注入したマイクロバブル自体が損傷を引き起こす可能性について議論し、その崩壊強度がキャビテーション気泡のそれよりもずっと弱いことを示した。

37000310
Development of secondary ion mass spectroscopy using medium energy C60 ion impact
平田 浩一*; 齋藤 勇一; 千葉 敦也; 阿達 正浩*; 山田 圭介; 鳴海 一雅
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 266(10), p.2450-2452(2008) ; (JAEA-J 05337)
 Time-of-flight (TOF) secondary ion mass spectroscopy was performed using primary C60 ions with an energy range from several tens of keV to several hundreds of keV. Application of the spectroscopy to the analysis of a poly(amino acid) film revealed that characteristic peaks, necessary for identification of the amino acid in proteins, show higher intensities for medium energy C60 (120 keV C60+ and 540 keV C602+) impacts than those for low energy C60 (30 keV C60+) impacts. This finding demonstrates that medium energy C60 ion impacts are useful for highly sensitive characterization of amino acids.

37000311
Clarification of the properties and accumulation effects of ion tracks in CeO2
園田 健*; 木下 幹康*; 石川 法人; 左高 正雄; 知見 康弘; 大久保 成彰; 岩瀬 彰宏*; 安永 和史*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 266(12-13), p.2882-2886(2008) ; (JAEA-J 05338)
 高エネルギーイオン照射したCeO2のイオントラック構造とその蓄積の効果を電子顕微鏡観察の手段を使って調べた。特に、FIB(集束イオンビーム:Focused Ion Beam)を用いることによって、照射方向の微細組織の深さ依存性について調べることができた。その結果、電子系に伝達されるエネルギー密度が、閾値16keV/nm以上のときにのみイオントラックが観測されることがわかった。また、高照射量領域でのイオントラックの蓄積が、照射表面の面粗度の上昇に寄与していることがわかった。

37000312
Hydrocarbon proton-conductive membranes prepared by radiation-grafting of styrenesulfonate onto aromatic polyamide films
Li, D.*; Chen, J.; Zhai, M.; 浅野 雅春; 前川 康成; 奥 浩之*; 吉田 勝
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 267(1), p.103-107(2009) ; (JAEA-J 05339)
 本研究では、メタノール透過性を抑制した直接メタノール型燃料電池用電解質膜を開発するため、優れたバリア性を持つ芳香族ポリアミドNMDX6を基材フィルムとして、放射線グラフトによりスルホン酸基を有するp-スチレンスルホン酸ナトリウム(SSNa)のグラフト重合を試みた。その結果、ジメチルスルホキシドを溶媒に用いたときに、SSNaのグラフト重合性が促進することがわかった。また、このグラフト膜を塩酸処理することにより容易にプロトン電解質膜に変換することができた。得られた電解質膜は、最大イオン交換容量が1.63mmol/gに達したことに加え、高い機械強度を有することがわかった。さらに、メタノール透過性はナフィオンより1/7に抑制した。

37000313
Influence of secondary flow generated in a 90-deg bend on the thermal-hydraulic characteristics in a mixing tee
結城 和久*; 菅原 良昌*; Hosseini, S. M.*; 橋爪 秀利*; 戸田 三朗*; 田中 正暁; 村松 壽晴
Nuclear Science and Engineering 158(2), p.194-202(2008) ; (JAEA-J 05340)
 本研究では、粒子画像流速測定法(PIV)による速度計測と壁近傍での流体温度計測によって、上流側に90度曲がり管を有するT字合流配管部における非等温流体混合現象と、非定常の流体混合によって生じる温度変動発生メカニズムの関係を解明することを目的としている。実験により、90度曲がり管内で発生する2次流れと枝管より流出する噴流挙動との関係、及び混合領域における2次流れと温度変動特性との関係について明らかにした。

37000314
Temperature and flow distributions in sodium-heated large straight tube steam generator by numerical methods
木曽原 直之; 森部 剛志; 堺 公明
Nuclear Technology 164(1), p.103-118(2008) ; (JAEA-J 05341)
 将来の実用化FBRのために研究が進められているナトリウム加熱型蒸気発生器(SG)は直管2重管型である。このSGは製作費低減のためスケールメリットを追求して大型になっている。本論文はこの大型SGにおける多次元の温度・流速分布を取り扱ったものである。大型の熱交換器は流速や温度分布が不均一になりやすい。このような不均一分布は、直管型蒸気発生器においては、伝熱管の熱膨張差の違いにより、伝熱管の座屈や管-管板継ぎ手の破損に至る可能性がある。よって、SG内部の温度分布特性を数値的な手法により調べ、これらの課題が生じないように、流配機構を最適化した。SGの解析モデルは、入口ナトリウムプレナムと管束部の2つから成る。入口プレナムと管束部の温度・流速分布は多次元コードフルーエントとMSGを用いて評価した。次にこの温度分布に基づき、伝熱管の熱応力をFINASによって計算した。計算コードの解析によると、整流機構によってナトリウムは均一な流れとなり、また温度分布は伝熱管や管-管板継ぎ手の構造健全性の観点でその許容範囲内にあることがわかった。

37000315
Transient heat transfer characteristics between molten fuel and steel with steel boiling in the CABRI-TPA2 test
山野 秀将; 小野田 雄一; 飛田 吉春; 佐藤 一憲
Nuclear Technology 165(2), p.145-165(2009) ; (JAEA-J 05342)
 高速炉安全研究の一部であるCABRI-RAFTプログラムにおけるTPA2試験では、溶融燃料/スティール混合物における燃料-スティール間熱伝達特性を調べた。この試験はフランスのCABRI炉で行われ、富化度12.3%のUO2ペレットにステンレススティール球を埋め込んだ試験カプセルを使用した。予熱過程を経て、そのカプセルに過出力を印加し、燃料の溶融とスティールの蒸発を実現させた。観察されたスティール蒸気圧はかなり低く、燃料-スティール間熱伝達を有意に制限するメカニズムの存在を示唆した。SIMMER-IIIによる実験データの詳細評価により、スティール球の表面で生成した蒸気がスティール自身を取り囲み溶融燃料との接触を阻害するという一つの解釈を導き出した。

37000316
Demonstration of highly efficient broadband amplification in a optical parametric chirped-pulse amplifier system
岡田 大; 桐山 博光; 森 道昭; 中井 善基; 下村 拓也*; 田上 学*; 近藤 修司; 金沢 修平; 大道 博行; 木村 豊秋*; 田島 俊樹
Optical Review 16(1), p.1-3(2009) ; (JAEA-J 05343)
 We have demonstrated highly efficient broadband amplification by a parametric chirped pulse amplifier (OPCPA) system that uses high energy seed pulses. The OPCPA consists of three type I B-barium borate (BBO) crystals pumped by a Q-switched Nd:YAG laser. We successfully amplified the microjoule level seed pulses to 78 mJ with a pump-to-signal optical conversion efficiency of 26 % at a 10 Hz repetition rate. To our knowledge these results represent the most optically efficient OPCPA to date pumped by a typical Q-switched laser.

37000317
Quantum phase transitions of the asymmetric three-leg spin tube
坂井 徹; 佐藤 正寛*; 奥西 巧一*; 大塚 雄一*; 岡本 清美*; 糸井 千岳*
Physical Review B 78(18), p.184415_1-184415_11(2008) ; (JAEA-J 05344)
 対称性の破れた構造を持つS=1/2三本鎖スピンチューブの量子相転移を理論的に解析した。われわれは、電子系チューブに基づく新しい有効理論を提案し、広域に渡る相図を導くことに成功した。密度行列繰り込み群による詳細な解析により、正三角形の対称性に近い狭い領域でスピンギャップが出現し、対称性の破れた構造では急激に消失することが判明した。

37000318
Analysis of deuteron elastic scattering from 6,7Li using the continuum discretized coupled channels method
Ye, T.*; 渡辺 幸信*; 緒方 一介*; 千葉 敏
Physical Review C 78(2), p.024611_1-024611_12(2008) ; (JAEA-J 05345)
 10から50MeV領域における6,7Liによる重陽子弾性散乱を、離散化連続チャンネル結合法(CDCC)により解析した。CDCC計算に必要な核子と原子核間の光学ポテンシャルは現象論的な光学模型解析により導出した。これにより核子・原子核と重陽子・原子核反応を整合的に記述できるポテンシャルを構築することができた。

37000319
Observation of high-j quasiparticle states in 249Cm by in-beam γ-ray spectroscopy using heavy-ion transfer reactions
石井 哲朗; 牧井 宏之*; 浅井 雅人; 塚田 和明; 豊嶋 厚史; 松田 誠; 牧嶋 章泰*; 重松 宗一郎*; 金子 順一*; 静間 俊行; 當銘 勇人*; Hossain, I.*; 河野 俊之*; 小川 雅生*
Physical Review C 78(5), p.054309_1-054309_11(2008) ; (JAEA-J 05346)
 We have measured deexcitation γ rays in 249Cm populated by one-neutron stripping reactions with a 248Cm target and a 162 MeV 16O, a 162 MeV 18O, and a 120 MeV 13C beams. γ rays in 249Cm were identified by measuring kinetic energies of outgoing particles using Si Δ E-E detectors. It was demonstrated that high-j orbitals were selectively populated in the (16O,15O) reaction having a large negative Q value. We have observed eight quasi-particle states above the deformed shell gap of N=152. The 1/2+[620], 1/2-[750], and 7/2+[613] bands were extended up to 19/2+, 19/2-, and 13/2+ states, respectively. We have established the 9/2 9/2+[615] state at 526 keV, the 9/2 9/2+[604] state with a short life of T1/2« 2 ps at 1030 keV, and the 11/2 11/2-[725] state with T1/2=19(1) ns at 375 keV. Furthermore, the 17/2 1/2+[880] state, having a large component of the k17/2 spherical single-particle state, has been identified at 1505 keV. We discuss the properties of those quasi-particle states in the framework of a deformed shell model.

37000320
Charge radii in macroscopic-microscopic mass models of reflection asymmetry
飯村 秀紀; Buchinger, F.*
Physical Review C 78(6), p.067301_1-067301_4(2008) ; (JAEA-J 05347)
 Finite Range Droplet模型は原子核の質量や変形等の特性をすべての原子核について統一的に計算するために最近開発された核構造模型である。この模型で使用されるパラメータは原子核質量を再現するように最適化されているので、最適化で考慮されていない原子核荷電半径は模型の予測力を検証するのに良い物理量である。本研究では、反転対称でない変形が予想される多くの原子核の荷電半径を、Finite Range Droplet模型に非反転対称性を取り入れて計算した。その結果、実験値との一致は反転対称を含まない計算より改善された。しかし、幾つかの元素については、同位体間での荷電半径の変化量の実験値と理論値との間に不一致が残り、これらは原子核の動的な四重極変形を含んだ計算によっても解消されなかった。これらのことから、Finite Range Droplet模型に非反転対称性を取り入れることの有効性とその限界についての知見が得られた。

37000321
Bubble-bubble interaction; A Potential source of cavitation noise
井田 真人
Physical Review E 79(1), p.016307_1-016307_7(2009) ; (JAEA-J 05348)
 キャビテーションによって発生した気泡は激しく体積振動し、キャビテーションノイズと呼ばれる強い雑音を発生させる。この論文では、テッポウエビの生態をヒントに、圧力パルスによる気泡間相互作用がノイズ源となり得ることを示した。近年の観察により、テッポウエビがハサミを迅速に閉じる際に小さなキャビテーション気泡が発生し、その気泡が崩壊する際に強いノイズが放射されることが見いだされた。測定されたノイズは多数の正と負の圧力パルスから成るものであるが、単一の気泡を仮定した理論モデルでは負のパルスが再現できないことが明らかになっている。そこでわれわれは複数気泡モデルを用いた解析を行い、気泡の崩壊後に現れる多数のマイクロバブルがノイズ発生の鍵であることを突きとめた。提案したシナリオは次の通りである。崩壊するマイクロバブルは強い正の圧力パルスを放射するが、それが近隣のマイクロバブルを直撃した際に負のパルスとして反射される。この過程は沢山のマイクロバブルの間で繰り返され、それにより複雑なノイズ波形が作られる。本成果はノイズ測定によるキャビテーションのモニタリング技術などに有用となるものである。

37000322
Modeling energy dependence of the inner-shell X-ray emission produced by femtosecond-pulse laser irradiation of xenon clusters
Berkelbach, T.*; Colgan, J.*; Abdallah Jr., J.*; Faenov, A. Y.; Pikuz, T.*; 福田 祐仁; 山川 考一
Physical Review E 79(1), p.016407_1-016407_6(2009) ; (JAEA-J 05349)
 We employ the suite of atomic physics codes to model the inner-shell X-ray emission spectrum of xenon clusters and compare results with those obtained via observation by high-resolution X-ray spectroscopy the emission of Xe clusters irradiated by 30 fs laser pulses. We find that the commonly employed configuration average approximation breaks down and significant spin-orbit splitting necessitates a detailed level accounting. Additionally, were produce an interesting spectral trend for a series of experimental spectra taken with varyingpulse laser energy for fixed pulse duration.

37000323
Magnetic dispersion of the diagonal incommensurate phase in lightly doped La2-xSrxCuO4
松田 雅昌; 藤田 全基*; 脇本 秀一; Fernandez-Baca, J. A.*; Tranquada, J. M.*; 山田 和芳*
Physical Review Letters 101(19), p.197001_1-197001_4(2008) ; (JAEA-J 05350)
 銅酸化物高温超伝導体の大きな特徴の一つとして、電気伝導と磁性が密接に関係していることが挙げられる。超伝導発現機構の解明にはこの関係を明らかにすることが不可欠であり、実験,理論両面からの広範囲な研究が行われている。われわれは、絶縁体-超伝導体転移を起こす境界領域の絶縁体側のスピン相関(斜め非整合スピン相関)を詳細に理解するために、La2-xSrxCuO4低ホール濃度領域での中性子非弾性散乱実験を行った。その結果、磁気分散が超伝導相で見られる砂時計型と同様であることを明らかにした。さらに、不足ドープ領域における磁気分散の低エネルギー部分での傾きが、絶縁相から超伝導相までほとんど変わらないことを明らかにした。これらの結果は、銅酸化物高温超伝導における磁性の役割を明らかにするうえで重要である。

37000324
Local lattice distortion in the giant negative thermal expansion material Mn3Cu1-xGexN
飯久保 智 *; 樹神 克明; 竹中 康司*; 高木 英典*; 瀧川 仁*; 社本 真一
Physical Review Letters 101(20), p.205901_1-205901_4(2008) ; (JAEA-J 05351)
 逆ペロブスカイト構造を持つMn窒化物では磁気秩序に伴う鋭い体積変化が元素置換によって緩和されたとき、巨大負熱膨張率が実現される。このレターではその体積膨張の緩和が起こっているMn3Cu1-xGexNにおけるGeの特殊な役割について報告する。われわれはMn3GeNの低温正方晶構造でよく再現できる局所構造歪みが、平均構造が立方晶であるx領域において存在することを示した。この構造不安定性が秩序磁気モーメントの成長と強い相関を示すことから、これが体積膨張の緩和を引き起こしているものと考えられる。

37000325
Status of the Japan Proton Accelerator Research Complex H- ion source
小栗 英知; 上野 彰; 池上 清*; 滑川 裕矢; 大越 清紀
Physical Review Special Topics; Accelerators and Beams 12(1), p.010401_1-010401_9(2009) ; (JAEA-J 05352)
 A cesium-free H- ion source driven by a LaB6 filament is being operated for the beam commissioning of the accelerators at Japan Proton Accelerator Research Complex (J-PARC). The beam commissioning started in November 2006. As of June 2008, there have been 17 beam commissioning runs. The duration of each run was approximately 4-5 weeks. In these runs, the ion source has succeeded in providing beam to the J-PARC accelerators for 2,720 hours. The interruption time due to the failure of the ion source is only approximately 50 hours. The availability of the ion source is calculated to be 98%. Since the fluctuation of the beam current is small, tuning the beam current once a day is sufficient to maintain the beam current within the error of a few percent. Recently, the ion source succeeded in producing the beam current of 36 mA with a flat top pulse width of 0.5 ms and a repetition rate of 25 Hz as required for the first stage of J-PARC.

37000326
Development and verification of a reactive transport model for long-term alteration of bentonite-cement-seawater systems
山口 徹治; 山田 文香; 根岸 久美*; 星野 清一; 向井 雅之; 田中 忠夫; 中山 真一
Physics and Chemistry of the Earth 33(Suppl.1), p.S285-S294(2008) ; (JAEA-J 05353)
 ベントナイトとセメントが共存する放射性廃棄物処分場の人工バリアシステムの長期的な変質を評価することは安全評価上重要である。これまでに実施してきた研究成果に基づく評価手法整備をさらに進めるため、本研究ではまず、セメント系材料の変質で生成する可能性のある鉱物を既往の知見から選定し、二次鉱物生成モデルを作成した。セメント硬化体の変質試験を実施して、このモデルを検証した。また、既に開発していたベントナイトの透水係数モデルに、温度に依存する粘性項を付加し、この新しいモデルを原環センターが報告していた80℃における透水試験の推移と照合することで検証した。さらにこれらのモデルを用いて、セメントとベントナイトが共存する人工バリアシステムの10,000年間に渡る変質を解析し、その計算結果を詳細に検討することにより、温度が変質挙動に強く影響すること、変質はベントナイト中の主要な鉱物の溶解速度が遅いことや、拡散でしか物質が移行しないことにより制限されること、はじめの1,000年間に比べてその後は変質速度が有意に遅くなること、地下水中の塩濃度は変質挙動に複雑な影響を与えることなどを見いだした。

37000327
Action-angle variables for the continuous spectrum of ideal magnetohydrodynamics
廣田 真; 福本 康秀*
Physics of Plasmas 15(12), p.122101_1-122101_11(2008) ; (JAEA-J 05356)
 理想磁気流体力学において現れるアルフベン波と遅い磁気音波の連続スペクトルに対し、特異な固有モードを作用・角変数で表した。この正準変換により、摂動のエネルギーは標準形、すなわち固有振動数と作用変数の積で表せる。ラプラス変換を活用することにより、他の連続スペクトルに対する既存の理論と比べ、この作用・角変数表示を効率的に行えることが示される。プラズマの流れが磁場に平行でない、又は超音速である領域では、負のエネルギーを持った特異な固有モードが必ず存在する。これらの特異なモードはどのような外力が加えられても中立安定な波のままであるが、異符号のエネルギーを持つ他のモードと相互作用することで不安定性を引き起こし得る。

37000328
The Effect of laser pulse incidence angle on the proton acceleration from a double-layer target
守田 利昌; Esirkepov, T. Z.; Koga, J. K.; 山極 満; Bulanov, S. V.
Plasma Physics and Controlled Fusion 51(2), p.024002_1-024002_18(2009) ; (JAEA-J 05357)
 レーザー加速による高品質プロトン生成において、レーザーをダブルレイヤーターゲットへ斜め入射した場合における、理論と3次元PICシミュレーションの結果を示す。ダブルレイヤーターゲットは、重い原子核からなる物質の表面に、狭い領域に薄く塗布された水素で構成されている。生成プロトンのエネルギーは、あるレーザー入射角度で最大となり、そのエネルギーは垂直入射の場合より大きな値となる。生成プロトンの方向は、ターゲットの垂直方向に対しある角度を有しており、その角度はレーザー入射角度と生成プロトンのエネルギー値で求められることを示す。

37000329
Low-barrier hydrogen bond in photoactive yellow protein
山口 繁生*; 上久保 裕生*; 栗原 和男; 黒木 良太; 新村 信雄*; 清水 伸隆*; 山崎 洋一*; 片岡 幹雄*
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 106(2), p.440-444(2009) ; (JAEA-J 05358)
 Low barrier hydrogen bonds (LBHBs) have been proposed to play roles in protein functions, including enzymatic catalysis and proton transfer. Transient formation of LBHBs is expected to stabilize specific reaction intermediates. However, based on experimental results as well as on theoretical considerations, arguments against the importance of LBHB in proteins have been raised. The discrepancy is due to the absence of direct identification of the hydrogen atom position. Here, we show by high-resolution neutron crystallography of photoactive yellow protein (PYP) that a LBHB exists in a protein, even in the ground state. We identified ∼87% (819/942) of the hydrogen positions in PYP, and demonstrated that the hydrogen bond between the chromophore and E46 is a LBHB. This LBHB stabilizes an isolated electric charge buried in the hydrophobic environment of the protein interior. We propose that in the excited state, the fast relaxation of the LBHB into a normal hydrogen bond is the trigger for photo-signal propagation to the protein moiety. These results give insights into the novel roles of LBHBs, as well as the mechanism of the formation of LBHBs.

37000330
Monte Carlo particle trajectory simulation for classification of C3+ cluster ion structure utilizing coulomb explosion imaging
阿達 正浩; 齋藤 勇一; 千葉 敦也; 鳴海 一雅; 山田 圭介; 金子 敏明*
Radiation Physics and Chemistry 77(10-12), p.1328-1332(2008) ; (JAEA-J 05359)
 高速クラスターイオンは電子的な衝突を介して物質と相互作用する。このこととクラスターの多体衝突効果とを合わせて考え、電荷状態とクラスター構造との関係を明らかにすることで相互作用解明へとつながる知見が得られると期待した。そのためにわれわれはクーロン爆発イメージング法により拡大したクラスター構成イオンの相対位置と電荷状態を同時測定している。この方法で構造弁別するためには、薄膜内部での散乱や相対位置の拡大による相対位置のずれの度合いを評価する必要がある。そこで、直線構造と三角構造のそれぞれのC3クラスターの薄膜透過後の軌道を計算するための粒子軌道計算コードを開発し、測定システムに対する評価を行った。このコードでは、拡大後の各イオンの位置の重心からの距離を用いて、原点付近で三角構造の割合が、周辺では直線構造の割合が高まるような平面上の点に変換する方式を考案して取り入れた。その結果、原点を中心とした円形領域を設定することで構造弁別の精度の評価が可能となり、直線構造と三角構造とをそれぞれ70%, 90%の精度で弁別可能な条件を見いだした。

37000331
Status of food irradiation in the world
久米 民和*; 古田 雅一*; 等々力 節子*; 上野山 直樹*; 小林 泰彦
Radiation Physics and Chemistry 78(3), p.222-226(2009) ; (JAEA-J 05360)
 The status of food irradiation in the world in 2005 was investigated using published data, a questionnaire survey, and direct visits. The results showed that the quantity of irradiated foods in the world in 2005 was 405,000 tons and comprised 186,000 tons (46%) for disinfection of spices and dry vegetables, 82,000 tons (20%) for disinfestation of grains and fruits, 32,000 tons (8%) for disinfection of meat and fish, 88,000 tons (22%) for sprout inhibition of garlic and potato, and 17,000 tons (4%) of other food items that included health foods, mushroom, honey, etc. Commercial food irradiation is increasing significantly in Asia, but decreasing in EU.

37000332
Biological dose estimation for charged-particle therapy using an improved PHITS code coupled with a microdosimetric kinetic model
佐藤 達彦; 加瀬 優紀*; 横谷 立子; 仁井田 浩二*; Sihver, L.*
Radiation Research 171(1), p.107-117(2009) ; (JAEA-J 05361)
 従来、別々に研究されてきたマイクロドジメトリとマクロドジメトリの知見を融合し、粒子線治療における新たな生物学的線量評価法を構築した。具体的には、マイクロドジメトリ分野で放射線種の違いによる生物効果比(RBE)を表すために利用されてきたLineal Energyの概念をマクロドジメトリ分野で利用されてきた粒子線輸送計算コードPHITSに組み込み、従来の計算コードでは評価できなかった、粒子線治療による腫瘍部や正常組織など巨視的な空間内における細胞生存率を計算可能とした。この成果は、粒子線治療における治療計画の最適化に有用なだけでなく、航空機乗務員や宇宙飛行士の宇宙線被ばくによる健康影響の評価精度向上に多大に貢献できるものである。

37000333
Surface structure of Si(111)-(8×2)-In determined by reflection high-energy positron diffraction
深谷 有喜; 橋本 美絵; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Surface Science 602(14), p.2448-2452(2008) ; (JAEA-J 05362)
 本研究では、反射高速陽電子回折(RHEPD)と第一原理計算を用いて、擬一次元金属鎖を形成し、低温において金属絶縁体転移を起こすIn/Si(111)表面の原子配置とバンド構造を調べた。動力学的回折理論に基づくロッキング曲線の解析から、130Kにおける4×1構造から8×2構造への相転移に伴って、In原子鎖がジグザグチェーン構造からヘキサゴン構造へ原子変位を起こすことを明らかにした。さらに、最適化したヘキサゴン構造を用いてバンド構造を計算したところ、この構造では60meVのバンドギャップが開くことがわかった。すなわち、ヘキサゴン構造は半導体的な表面であることがわかった。これは、最近の理論計算で予測されたように、低温ではヘキサゴン構造がエネルギー的に安定であることを示している。

37000334
High sensitive iridium measurement using neutron activation analysis with γ-γ coincidence detection
初川 雄一; 大島 真澄; 藤 暢輔; 木村 敦; 小泉 光生; 古高 和禎; 瀬川 麻里子
Transactions of the American Nuclear Society 99, p.53(2008) ; (JAEA-J 05363)
 イリジウムは地球科学的に地球外物質の影響を大きく受ける元素であり、その分析は多くの分野で興味がもたれている。大島らにより開発された、同時計測に基づいた多重γ線分析法は中性子放射化分析と組合せることにより高感度の元素分析を可能にした。本研究は多重γ線分析法を利用することにより非破壊で岩石試料中のイリジウムの超高感度分析を試みたものでこれを紹介する。秤量した50から200mgの試料を高純度石英管に溶封し、これらをイリジウムの標準溶液より作成した100ngのイリジウム標準試料とともに照射カプセルに入れて原子力機構研究炉JRR-3において48時間照射を行った。約3から4週間冷却した後に多重γ線分析装置GEMINI-IIにおいてγ線同時計測を行った。一試料あたり約一日の測定を行い、標準試料から得られたピーク強度との比較によって試料中のイリジウム量を定量した。測定試料は標準岩石試料で、これらの測定を通して本法の有用性を示し、さらに最近行った地質試料中のイリジウムの分析研究の紹介を行う。

37000335
Absorption of phosphate ion in swine urine using CMC gel
瀧上 眞知子*; 天田 春代*; 長澤 尚胤; 廣木 章博; 笠井 昇; 吉井 文男; 玉田 正男
Transactions of the Materials Research Society of Japan 33(4), p.849-852(2008) ; (JAEA-J 05364)
 世界におけるリン資源の枯渇や環境保全の目的である豚尿汚水からのリン除去が問題視されている。これらの問題を解決する手段として、カルボキシメチルセルロース(CMC)と鉄を原料としたゲルを作製し、豚尿汚水からリンを吸着する技術を開発した。三価の鉄イオンを用いるとゲル形成が急激に進むが、二価の鉄イオンでは、ゲル化しなかった。二価の鉄イオンでは、酸とともに加えることによりゲル形成することがわかった。得られたCMC/鉄ゲルは、約80mg/Lのリンを含む豚尿汚水から約97%除去することがわかり、家畜処理材として応用できる見通しを得た。

37000336
Preparation and characterization of CMC-Konjac mannan mixture gel
笠原 崇光*; 瀧上 眞知子*; 長澤 尚胤; Prawitwong, P.*; 瀧上 昭治*
Transactions of the Materials Research Society of Japan 33(4), p.927-930(2008) ; (JAEA-J 05365)
 水溶性の高分子量体であるコンニャクマンナン(KM)の水溶液は粘性が高いため、加工性が悪いといった問題点がある。そこでKMの粘度を調整するため、KM粉末をガラスアンプルに入れ真空中で所定線量(1, 2, 4, 10, 20, 30kGy)のγ線照射によって分解した。放射線分解したKMの利用を考慮し、酸処理により形成するカルボキシメチルセルロース(CMC)ゲルに柔らかさを付与するために放射線分解したKMを混合し、そのブレンドゲルの物性について評価した。ブレンドするKMの分子量は、γ線照射により11.7×105から1.0×105に低下した。低分子量化したKMの2%水溶液にCMC粉末を混合し、高分子濃度が10%の水溶液に調整し、0.5Mの塩酸で8, 16, 32, 64時間処理した。KMをブレンドするとヤング率や破壊強度が高くなり、KMをブレンドして64時間酸処理するとCMC単独ゲルと比較して破壊強度が3倍大きくなることを見いだした。また、酸処理時間が16時間の時に最も強度が高くなることがわかった。CMCゲルに柔らかさと高強度を付与することができた。10kGy照射して分子量2.2×105を有するKMをブレンドした場合にはCMC単独ゲルより破壊強度が若干低下した。ブレンドするKMの分子サイズがCMC分子鎖との絡み合いと酸処理によるCMCゲルの凝集構造形成に関連していることがわかった。

37000337
Synthesis of ceramic nano fiber from precursor polymers by ion beam irradiation
杉本 雅樹; 吉川 正人; 佃 諭志*; 関 修平*
Transactions of the Materials Research Society of Japan 33(4), p.1027-1030(2008) ; (JAEA-J 05366)
 MeVオーダーのイオンビーム照射により、前駆体高分子材料からセラミックナノファイバーを合成する新規合成法及びその形状制御法を開発した。SiCセラミックスの前駆体高分子であるポリカルボシラン(PCS)の薄膜にイオンビームを照射すると、その飛跡に沿ってナノオーダーの架橋部が形成され、未架橋部を溶媒で除去することで直径数十ナノメートルの高分子ナノファイバーが得られた。これを不活性ガス中、1000℃で焼成することで、SiCナノファイバーに転換でき、その耐熱性は1200℃以上であることが明らかになった。また、焼成で得られたSiCナノファイバーの直径は、イオンビームの線エネルギー付与及び高分子の分子量と架橋効率で、長さはPCS薄膜の厚さにより制御可能であった。

37000338
Ion-irradiation effects of hydrogen absorption in palladium metal
米田 安宏; 田村 和久; 阿部 浩之; 大島 武; 森本 亮*; 内田 裕久*; 水木 純一郎
Transactions of the Materials Research Society of Japan 33(4), p.1053-1056(2008) ; (JAEA-J 05367)
 水素吸蔵合金であるパラジウムの特性を改変するためにN+イオン照射を行い、エッチングなどによる表面改変に比べ大幅に改善されることがわかった。このしくみを理解するために表面構造を電子顕微鏡で、またミクロスコピックな構造を放射光X線を用いて調べた。N+イオンはパラジウム金属中に留まることはないため、イオン照射時に生じる格子欠陥が水素吸蔵過程に変化をもたらしていると考えられる。SEM観察からは金属パラジウムの表面自体は照射前から圧延時の痕跡が見られ、照射による表面積の拡大が水素吸蔵に影響を与えているとは考えられない。したがって、X線によって明らかとなった格子欠陥によるミクロ構造の変化が本質的に水素吸蔵量と関係していると考えられる。

37000339
Effects of catalyst on gasochromic properties in tungsten oxide films
井上 愛知; 山本 春也; 永田 晋二*; 吉川 正人; 四竈 樹男*
Transactions of the Materials Research Society of Japan 33(4), p.1127-1130(2008) ; (JAEA-J 05368)
 光学式水素センサー用素子の改良を目的に、ガスクロミック酸化タングステン膜の着色特性に及ぼす触媒の堆積量及び構造の影響を調べた。試料として用いた非晶質酸化タングステン膜は反応性RFマグネトロンスパッタ法を用いて、アルゴン及び酸素雰囲気中でタングステンをスパッタすることで作製した。触媒として用いたパラジウム及び白金はアルゴン中で堆積させた。堆積時間を変化させながらシリコン単結晶基板上に堆積させた触媒を走査型電子顕微鏡で表面観察を行ったところ、パラジウムの場合では2nm、白金の場合では0.2nmに相当する堆積量のときに、着床した微粒子が一様な膜構造を形成することがわかった。堆積量を変えた触媒を非晶質酸化タングステン膜に堆積させ、1%の水素を含んだ窒素ガスに曝したところ、膜構造の触媒を有する酸化タングステン膜が高い着色特性を示した。

37000340
孔間水理試験による水圧応答に基づく地下深部の水理地質構造の解析的推定
尾上 博則; 三枝 博光; 大山 卓也; 竹内 真司
地下水学会誌 50(4), p.251-274(2008) ; (JAEA-J 05369)
 断層などの不連続構造が複数存在する地下深部の地下水流動場を三次元的に把握するにあたっては、物理探査やボーリング調査などの原位置調査を実施するとともに、それらの結果に基づく水理地質構造モデルの構築及び地下水流動解析が有効と考えられる。このうち、複数のボーリング孔を用いた孔間水理試験は、ボーリング調査では把握することができていないボーリング孔間に分布している不連続構造の水理特性や水理学的な連続性を推定できる手法である。本研究では、日本原子力研究開発機構が岐阜県瑞浪市で進めている超深地層研究所計画における調査研究の一環として実施した孔間水理試験を事例として、地下深部の地下水流動に影響を与える重要因子である水理地質構造を推定するための地下水流動解析を実施した。その結果、研究所用地周辺における水理境界や主要な水みちとして機能する断層の特定、並びにそれらの断層の水理特性を推定することができた。また、地下深部の水理地質構造を推定するにあたっては、非定常データを用いた地下水流動解析が有効であることを示した。

37000341
圧縮性ステップにおける破砕帯の構造; 岐阜県飛騨市の跡津川断層西部の例
丹羽 正和; 島田 耕史; 黒澤 英樹; 三輪 敦志*
地質学雑誌 114(10), p.495-515(2008) ; (JAEA-J 05370)
 断層のステップに伴う破砕帯の構造の変化を把握するため、岐阜県飛騨市の跡津川断層西部を事例対象とした地質調査を行った。まず、空中写真判読により、ステップが示唆される地域と、直線的に発達する断層が明瞭に追跡できる地域とを選定した。次に、詳細な露頭記載により、両地域の破砕帯の構造の比較を行ったところ、卓越する剪断面の姿勢と運動センス、及び断層ガウジの幅や粘土鉱物組成などに違いが見られることが明らかとなった。空中写真判読でステップが示唆された地域は、剪断面の姿勢などの特徴により、圧縮性ステップであると認定した。

37000342
フィッション・トラック年代によるむつ燧岳の活動年代の再検討
梅田 浩司; 檀原 徹*
岩石鉱物科学 37(5), p.131-136(2008) ; (JAEA-J 05372)
 火山灰を用いた編年法の一つであるRIPL法は、後期更新世の地質年代を決定するために有効な方法として、活断層調査のみならず考古学等の分野に幅広く利用されている。さらに、梅田・古澤(2004)は、RIPL法を前期∼中期更新世の火山に適用し、噴火史の編年を行っている。今回、前期∼中期更新世へのRIPL法による編年の妥当性を検討するため、最終期に噴出したとされる火砕流堆積物を対象に通常の3∼4倍のジルコンを用いたフィッション・トラック年代(FT年代)測定を行った。その結果、FT年代(約80万年)は、RIPL法によって推定された年代(約30万年)に比べて有為に古い値を示す。このことは、RIPL法による編年に用いた河岸段丘堆積物が従来から指摘されていた形成年代(MIS10)より古い時代に形成されたことを示唆する。

37000343
X線CTスキャナによる亀裂内侵入ベントナイトの密度測定に関する適用性
松本 一浩*; 棚井 憲治
原子力バックエンド研究 15(1), p.27-35(2008) ; (JAEA-J 05373)
 高レベル放射性廃棄物の地層処分では、廃棄体埋設後における人工バリアの長期健全性を評価するための評価手法の構築と、その評価手法の信頼性を高めることにより、安全評価における不確実性を低減させることが重要な課題である。本研究では、地層処分研究において懸念される事象の一つである緩衝材の岩盤亀裂中への侵入現象について、現象理解とより現実的な評価手法の構築に反映するために、X線CTスキャナを適用した模擬亀裂中におけるベントナイトの侵入密度測定を試み、その適用性を考察した。

37000344
将来の原子力システムにおける核拡散抵抗性とは?
井上 尚子; 久野 祐輔
原子力eye 55(3), p.52-55(2009) ; (JAEA-J 05374)
 核拡散抵抗性評価手法について過去の主要な議論を取り上げ、そこから見えてくる「抵抗性」議論の流れ、及び現在の国際的検討の場での状況をわかりやすくまとめた。また、次世代原子力システムの抵抗性のみならず核不拡散対策についてどのようにとらえ、取り組んでいくべきか、その方向性を議論した。

37000345
J-PARC核破砕中性子源用低温水素システムの開発を通じて
達本 衡輝
波紋 19(1), p.4-8(2009) ; (JAEA-J 05375)
 J-PARC核破砕中性子源モデレータ用低温水素システムは、4年間に渡る設計・製作期間を経て、2007年の11月に現地据付工事が完了した。その後、2008年の4月まで実施した低温試験により設計通りの機器性能を確認でき、かつ、安定な冷却運転方法を確立し、約5年の歳月を経て、低温水素システムが完成した。2008年5月30日、3GeVシンクロトロンから陽子ビームが中性子源の水銀ターゲットに入射され、J-PARCで初めて発生した核破砕中性子を本システムにより冷却し、冷中性子ビームを供給することに成功した。この低温水素システムの研究開発を通じて、液体水素は沸点が20Kとヘリウムに次いで低く、優れた冷却特性を有しており、冷媒として非常に魅力的であることがわかった。それゆえ、これまで液体窒素冷却では性能が発揮できなかった高温超伝導体や臨界温度が39KであるMgB2超伝導体の新しい冷媒として期待できるだけでなく、次世代の環境に優しい水素エネルギーの大量輸送,貯蔵手段として有望視されている。今後、液体水素冷却システムの設計基準の確立を目指した基礎研究を進めていく。

37000346
スーパーミラーからの散漫散乱メカニズムの解明
丸山 龍治
波紋 19(1), p.9-13(2009) ; (JAEA-J 05376)
 曲面ミラーによって中性子ビームを集光する際には、スーパーミラーでの反射における散漫散乱が問題となるが、NiC/Tiスーパーミラーからの散漫散乱強度はNi/Tiのそれよりも1桁以上小さく、集光素子への応用に適している。本研究では、スーパーミラーからの散漫散乱強度が減少するメカニズムを明らかにすべく、Ni及びNiC膜の結晶構造とNi/Ti及びNiC/Ti多層膜の界面構造の解析を行った。その結果、面内の相関長が小さく面間の相関長が大きい多層膜によりスーパーミラーからの散漫散乱強度が抑えられることがわかったので、実験及び解析結果に関する発表を行う。

37000347
J-PARCにおける新しい背面反射型分光器DNAの建設を目指して
高橋 伸明
波紋 19(1), p.14-17(2009) ; (JAEA-J 05377)
 The DNA is a novel Si-analyzer backscattering spectrometer. Construction of the DNA has been started in the Materials and Life Science Facility (MLF) of the Japan Proton Accelerator Research Complex (J-PARC). It is a twist of fate that the author, who is one of the instrument scientists of the DNA, started his scientific career in the biochemical science field to research deoxyribonucleic acid (DNA). This manuscript has been written to introduce the author himself with his recent studies of the instrument DNA.

37000348
大型加速器施設で生成されるエアロゾルの粒径分布の時間変化
横山 須美; 山崎 敬三*; 沖 雄一*; 長田 直之*
保健物理 43(4), p.333-340(2008) ; (JAEA-J 05378)
 放射性核種の吸入摂取による内部被ばく線量を評価するためには、吸入時の放射性物質の化学形,粒径が必要となる。しかし、定常的に連続運転されている加速器施設で生成される放射性粒子について、粒径に関する情報はこれまでに十分には得られていない。そこで、加速器運転時に生成される放射性粒子の粒径分布を明らかにするために、京都大学の電子線加速器施設において、ターゲット室内の空気中に発生した粒子に対し、粒径分布の時間変化を測定した。その結果、ビーム輸送開始直後には微小粒子が大量に発生し、その粒径分布及び総個数濃度は急速に変化するが、時間の経過とともにそれらは緩やかに変化することを明らかにした。この結果に基づき、生成粒子の粒径分布から、線量評価に必要となる放射能を基準とした粒径分布を明らかにした。

37000349
Rapid detection and estimation of an unexpected atmospheric release of 129I
小嵐 淳; 三上 智; 秋山 聖光; 武石 稔
保健物理 43(4), p.366-370(2008) ; (JAEA-J 05379)
 大気中への放射性ヨウ素(129I)の異常放出を迅速に検出し、放出量を推定するサンプリングシステム及び手法を開発した。このサンプリングシステムでは、ヨウ素捕集材を用いた排気中129Iのバッチサンプリング期間中に、ヨウ素捕集材からの放射線をNaI(Tl)シンチレーション検出器をベースとしたヨウ素モニタで連続的に監視する。検出された放射線計数とバッチサンプリング終了後にγ線スペクトロメトリによって定量された捕集材中129I放射能の関係から、このシステムの見かけの検出効率を算出し、バッチサンプリング期間中の任意の時間における129I放出率の推定を可能にした。使用済燃料再処理時に放出されるクリプトン(85Kr)の影響によって排気中129I放出率の連続監視が困難になる。そこで、エネルギー分解能の優れたGe半導体検出器をベースとしたヨウ素モニタの連続監視への適用性を試験し、85Krの影響を受けない129Iの放出率のリアルタイムモニタリングの可能性を示した。

37000350
核燃料再処理用機器の予防保全に向けたステンレス鋼の沸騰硝酸中での腐食の統計的検討
上野 文義; 山本 正弘; 加藤 千明
保全学 7(4), p.50-56(2009) ; (JAEA-J 05380)
 極低炭素304ステンレス鋼の沸騰硝酸溶液中での腐食について統計的な手法により解析した。蒸発缶の大型モックアップ試験装置を用いて伝熱管の腐食試験を行い、試験後の伝熱管の肉厚と粒界侵食深さを測定し、正規分布やグンベル分布を用いて統計解析した。その結果、伝熱管は均一に腐食すること、肉厚の減少量は粒界侵食深さよりも大きいことがわかった。この結果は、伝熱管の超音波による肉厚測定が沸騰硝酸溶液中のステンレス鋼に生じる粒界侵食を考慮した腐食に対する予防保全に適用できることを意味する。

37000351
ステンレス鋼のIASCC感受性と磁気特性の相関性に関する研究
根本 義之; 欅田 理*; 内一 哲哉*; 高屋 茂; 塚田 隆
保全学 7(4), p.57-68(2009) ; (JAEA-J 05381)
 著者らはこれまでの研究において、オーステナイトステンレス鋼中性子照射材の、フラックスゲート(FG)センサーによる漏えい磁束密度測定結果と、照射誘起応力腐食割れ(IASCC)感受性の間に、相関性が見られることを報告している。本研究は、実機への適用性がFGセンサーよりも高いと考えられる、渦電流法及び交流磁化法によって、IASCCの予兆診断を行う技術の開発の可能性を検討することを目的として実施した。中性子照射材及び模擬材に関して研究を行った結果、渦電流法及び交流磁化法によって評価した磁気特性と、IASCC感受性の間に正の相関関係が得られた。また、照射誘起偏析による磁性相生成について検討するため、透過型電子顕微鏡(TEM)による微細組織観察を行った。その結果、照射誘起偏析による結晶粒界での磁性相生成に基づいた磁気信号の変化を検知,評価することが、IASCC予兆診断のメカニズムとなり得る可能性が示された。

37000352
放射光X線回折による元素を識別した表面構造解析
高橋 正光
表面技術 59(12), p.848-850(2008) ; (JAEA-J 05382)
 表面における原子配列の骨格は、たとえば走査トンネル顕微法(STM)により得られる実空間像でかなりの程度知ることができる。ところが、これに加えて、原子の種類まで特定することは、実はあまり容易なことではない。光や電子を用いた各種分光法は、原子の種類に敏感であるが、一般には原子分解能を持たない。一方、電子線や陽電子線,X線などの回折は、表面の周期構造の解析手法として確立している。これらは、原子核の電荷もしくは原子の周囲の電子密度に応じた散乱断面積を持つため、原理的には特別の予備知識や仮定なしに原子種の同定が可能である。しかし、ガリウムとひ素のように、原子番号の近い原子については、散乱断面積がほとんど同程度であることから、両者を区別することが現実には非常に難しい。このような場合の困難を解決する方法として、筆者らは、兵庫県播磨にある放射光施設SPring-8において、元素を識別した表面X線回折を実施した。本稿では、放射光によって可能になる本手法の概要と、この方法のガリウムひ素半導体表面への適用例を紹介した。

37000353
花崗岩体上部に発達する低角度亀裂の空間分布特性と地質学的解釈; 瑞浪超深地層研究所周辺の土岐花崗岩からの知見
栗原 新; 天野 健治; Liu, C.*; 小池 克明*
Journal of MMIJ 124(12), p.710-718(2008) ; (JAEA-J 05383)
 岩盤中の地下水の流動経路や物質の移動経路となる亀裂の空間分布を精度よく把握することは、地層処分システムの安全評価や地下施設の設計・施工の信頼性向上の観点から、特に重要な課題である。本研究では、瑞浪超深地層研究所のボーリング孔に分布する土岐花崗岩中の亀裂の密度に関して広域的な地質構造との空間的相関性に着目した統計学的な検討と応答曲面の作成を行い、データの得られていない地点における亀裂密度を補間できる可能性が明らかとなった。

37000354
高レベル放射性廃棄物地層処分における緩衝材の核種移行抑制機能
佐藤 治夫
Journal of MMIJ 125(1), p.1-12(2009) ; (JAEA-J 05384)
 高レベル放射性廃棄物の地層処分の人工バリアを構成する緩衝材として使用されるベントナイトの放射性核種の移行抑制にかかわる特性のうち、透水特性,膨潤特性,化学的緩衝性,核種収着・移行遅延性について、これまでの研究動向を概説するとともに、現状において明らかになっていることと今後の展開について総括した。2000年以降、それ以前には余り存在しなかった海水系地下水条件に対する上記特性に関するデータ取得と現象解明に関する研究が精力的に行われてきており、透水係数は上昇し膨潤は減少することのほか、イオン交換性の核種の見掛けの拡散係数や陰イオンの実効拡散係数が増加するなど、上記の特性を含むさまざまな特性に影響を及ぼすことがわかりつつある。今後もこれらの研究を継続しつつ、共通的に変質の影響を考慮した長期的挙動に関する研究が必要であると考える。

37000355
放射性物質環境動態予測
永井 晴康
計算工学 14(1), p.1988-1992(2009) ; (JAEA-J 05385)
 環境中に放出された放射性物質の影響予測・評価への数値シミュレーション適用について、原子力機構での研究開発活動を紹介する。予測モデルとしては、WSPEEDI第2版について最新の数値モデルと計算手法、及びチェルノブイリ事故時の測定データを用いた予測性能評価について概説する。また、今後の展開として、現在開発を進めている包括的動態予測モデルシステムSPEEDI-MPの結合計算についても紹介する。

37000356
放射線グラフト重合技術による家庭用PEFCに適した高耐久性電解質膜の開発
前川 康成; Chen, J.; 浅野 雅春
燃料電池 8(3), p.74-77(2009) ; (JAEA-J 05386)
 固体高分子型燃料電池は小型・軽量化が可能であることなどから、家庭用燃料電池の本格普及に向けて精力的に研究開発が進められている。しかし、従来の高分子電解質膜は、導電性に優れるものの高温・低湿度環境では非常に脆弱であるという問題があった。今回、熱・放射線2段グラフト重合技術(熱グラフト重合と放射線グラフト重合を組合せた技術)を、耐熱性や強度の優れた芳香族炭化水素高分子に適用することで、高温で高い導電性と耐久性を併せ持つ電解質膜を製作することに成功した。この電解質膜は、従来の製品と比較して導電性で1.5倍,強度で2.3倍となっており、燃料電池セルに組み込んでの発電試験の結果、家庭用燃料電池に求められる作動条件(80℃)で、4万時間以上に相当する安定運転を達成した。

37000357
ナトリウム/二酸化炭素反応に関する試験研究
石川 浩康; 宮原 信哉; 吉澤 善男*
日本原子力学会和文論文誌 7(4), p.452-461(2008) ; (JAEA-J 05387)
 ナトリウム(Na)冷却高速炉システムの新概念として「超臨界CO2ガスタービン発電高速炉」が検討されている。この概念においてはNa/水反応を排除できるものの、プラント概念の成立性を検討するためにはNaと二酸化炭素(CO2)が接触した場合の事象、すなわち熱交換器伝熱管が破損しCO2がNa側に漏えいした場合のプラントへの影響を把握する必要がある。本研究においてはNa/CO2反応を基礎的に把握するために1∼5g程度のNaを取り扱え、熱電対による温度変化が測定できる装置を用いた。個体の反応生成物はX線回折及び化学分析により定性・定量分析し、気体の反応生成物はガスクロマトグラフにより定性・定量分析した。実験の結果、Na温度が570℃より低い場合には反応がNaプール表面だけで停止し、580℃より高い場合にはCO2供給直後から火炎を伴い継続的に反応することが観察された。

37000358
学会とともに歩む原子力研修センターの50年
杉本 純
日本原子力学会誌 51(1), p.58(2009) ; (JAEA-J 05388)
 日本原子力学会が50周年を迎えるにあたり、平成20年で開講50周年を迎える原子力機構原子力研修センターの歩みを紹介する。昭和33年1月のラジオアイソトープ研修所の開講以来、50年間で国内外の受講生は平成19年度末で延べ約10.6万人に達している。これら受講生から、産業界,官公庁,大学,東南アジア等の第一線で活躍する多くの人材を輩出するなど、原子力界へ貢献を果たして来た。大学関係では、連携大学院制度に基づく協力,東京大学への協力,文部科学省及び経済産業省による原子力人材育成プログラムへの協力を実施している。国際協力では、東南アジアを対象とした研修やアジア原子力協力フォーラム関連の協力,IAEAとの共催研修等を実施している。今後も原子力機構が有する施設,専門家等のリソースを有効に活用することにより、我が国の原子力人材育成を支える役割を果たしていく。

37000359
量子ビームが切り拓く未来,3; 中性子利用研究の新展開
大山 幸夫; 池田 裕二郎; 新井 正敏; 森井 幸生
日本原子力学会誌 51(1), p.14-19(2009) ; (JAEA-J 05389)
 平成13年度から着手したJ-PARC施設が平成20年度末の完成を目指して、ビーム試験が行われている。J-PARCの実験施設群の中でも、特に世界最高性能のパルス中性子源は中性子利用研究の新時代を拓くものである。本解説では、J-PARCの概要と平成20年12月に供用を開始するパルス中性子源及びそこに整備されつつある中性子実験装置について紹介する。また、量子ビームテクノロジーの一つの柱である中性子利用について、稼動中のJRR-3原子炉での利用を含め、J-PARC利用開始で幅広い展開が予想される生命科学研究,物質科学研究,産業利用への貢献など、最新の中性子利用研究の成果と今後の展望を述べる。

37000360
水平円柱内相変化物質の融解に及ぼす非均一熱伝達率の影響
小木 浩通*; 椎名 保顕; 稲垣 照美*
日本機械学会論文集,B 74(748), p.2588-2597(2008) ; (JAEA-J 05391)
 水平円柱表面の熱伝達率分布が円柱内固相の融解過程に及ぼす影響を数値解析及び実験より調べ、カプセル型潜熱蓄熱技術の熱設計への考察を加えた。数値解析は、一様流中で生じる非均一熱伝達率分布及びそれを平均した均一熱伝達率分布条件に対して行い、連成問題における円柱内レイリー数の評価方法を提案するとともに以下の結論を得た。融解に伴い円柱内レイリー数は増加するが、レイリー数が約1000以下では熱伝導が支配的となり、円柱の熱伝導率が小さい場合には、均一,非均一熱伝達率間の壁温,固相形状等の差は最も大きくなるが、その差は融解時間にしてたかだか10%程度である。円柱内レイリー数が増加すると、均一,非均一熱伝達率間による差は壁温,固相形状等を含めて減少する。また、円柱の熱伝導率が高い場合には内部レイリー数にかかわらず、均一,非均一熱伝達率の間の差は無視することができる。これらから、カプセル型潜熱蓄熱の熱設計において、カプセル寸法が大きく内部レイリー数が大きくなる場合には、均一熱伝達率を用いた解析により十分高い精度の熱設計を行うことができることを示した。

37000361
炉心燃料集合体内大規模二相流シミュレーション
高瀬 和之; 吉田 啓之
RIST News (45), p.3-9(2008) ; (JAEA-J 05395)
 計算機性能の飛躍的な発展とともに、スーパーコンピュータを利用して相変化や流動遷移などの複雑な過渡現象を含む二相流挙動を直接的に解析する手法の開発が行われている。著者らは、実規模試験を実施することなく、シミュレーションを主体とした機構論的な原子炉熱設計手法を確立し、効率的な新型炉開発の実現を図ることを目的として、過渡的な気液界面構造を直接とらえることができる界面追跡法を利用した二相流直接解析手法の開発を行っている。このようなDesign by Analysisの概念を原子炉設計に反映することによって、開発期間の短縮や大幅なコストダウンが期待できる。また、実験的検証が容易でない二相流熱流動現象を正確に把握できるため、炉心成立性評価における予測精度を従来よりも大きく向上できる。本報では、低減速軽水炉開発にあたり行ってきた一連の大規模二相流シミュレーションの成果について計算科学技術分野の専門家に紹介する。

37000362
植生フェノロジーの変化に着目した多時期衛星データによる林相区分の精度向上と森林の下層植生状態の推定
小出 馨
写真測量とリモートセンシング 47(6), p.4-12(2009) ; (JAEA-J 05397)
 高レベル放射性廃棄物の地層処分においては、その安全性を評価するうえで、地下水流動を把握することが極めて重要な項目であるとされている。我が国においても、日本原子力研究開発機構東濃地科学センターにおいて、地下水流動を把握するための研究開発を実施しており、地下水調査機器・調査手法の開発,水文データの観測,地下水流動のモデル化技術の開発を実施している。筆者は、地下水流動解析における涵養量の設定に必要な水収支に関する地表の水文特性及び地下水の流出域並びに水理地質構造をリモートセンシングデータや地形図(DEM)などを利用して推定する手法の開発を行っており、本論では、林相区分の精度向上の一環として、林相区分における多時期衛星データの最適な観測時期の選定について検討を行った。その結果、研究対象領域においては、(1)常緑針葉樹林と落葉広葉樹林との区分には、観測時期が夏(6月)と広葉樹が紅葉する時期の11月とのNDVIの季節変化量が有効である,(2)観測時期が夏(6月)と広葉樹が落葉する冬(12月)とのNDVIの季節変化量は、常緑の林床植物の影響により、針葉樹林と広葉樹林との値の範囲が重なり、区分が困難となる,(3)森林と草地(芝地)との区分には、観測時期が夏(6月)と冬(12月)の衛星データによるNDVIの季節変化量が有効であることを明らかにした。

37000363
J-PARC中性子源用極低温水素システム
加藤 崇; 達本 衡輝; 麻生 智一; 長谷川 勝一; 大都 起一
低温工学 43(10), p.409-416(2008) ; (JAEA-J 05399)
 日本原子力研究開発機構(JAEA)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)の共同プロジェクトとして陽子加速器を利用した最先端科学研究施設であるJ-PARCが、本年度その全体が完成する。本年5月末に3 GeVシンクロトロンから3GeVの陽子をMLFに導き、MLF内に建設された核破砕中性子源の水銀ターゲットに入射させ、中性子の発生に成功した。その核破砕中性子源において、中性子減速システムの中心を担う低温水素システムは、水素循環の水素冷凍システムとしては世界最大である。特に本システムは、低温水素の循環流量が大きく、世界最大の中性子源用低温水素システムとなる。低温での冷媒が水素であることから、システムの安全担保も重要な課題であった。この課題を克服し、世界的にもユニークな低温水素の冷凍システムが完成し、設計通りの性能が確認された。確認された冷却特性や冷凍能力特性を以下に報告する。一方、本システムの運転手法自体も、これまでのヘリウム冷凍システムに比べユニークなものになっている。したがって、運転手法についても言及する。

37000364
A LET-dependent decrease in the apoptotic response of normal human fibroblast cultures to isosurvival doses of γ-rays and energetic heavy ions
浜田 信行*; Ni, M.*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 楚良 桜*; 中野 隆史*; 小林 泰彦
宇宙生物科学 22(2), p.41-45(2008) ; (JAEA-J 05400)
 Biological effectiveness varies with the linear energy transfer (LET) of ionizing radiation. Plentiful evidence has been presented demonstrating that at physically equivalent doses, high-LET energetic heavy ions are more cytotoxic and genotoxic than low-LET photons like X-rays and γ-rays. Notwithstanding, its potential impact at isosurvival doses is yet to be characterized. Here we investigated the cell-killing effectiveness of γ-rays (0.2 keV/μm) and five different beams of heavy ions with LET ranging from 16.2 to 1610 keV/μm in confluent cultures of normal human fibroblasts. The relative biological effectiveness based on the dose giving 10% clonogenic survival peaked at 108 keV/μm. In cultures exposed to the 10% survival doses, the yield of apoptotic cells escalated with time postirradiation but declined with LET. Our results imply that the cell death mode differs with LET at isosurvival levels.

37000365
Heavy-ion microbeam irradiation induces bystander killing of human cells
浜田 信行*; 原 孝光*; 大村 素子*; Ni, M.*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 楚良 桜*; 中野 隆史*; 小林 泰彦
宇宙生物科学 22(2), p.46-53(2008) ; (JAEA-J 05401)
 Significant evidence indicates that ionizing radiation causes biological effects in nonirradiated bystander cells having received signals from directly irradiated cells. There is little information available hitherto as to the bystander effect of energetic heavy ions; however, our previous work has shown that in confluent cultures of normal human fibroblast AG01522 cells, targeted exposure of 0.0003% of cells to microbeams of 18.3 MeV/u 12C (103 keV/μm) and 13.0 MeV/u 20Ne (375 keV/μm) ions can similarly cause almost 10% decreases in the clonogenic survival, and twofold increments in the incidence of apoptosis whose temporal kinetics varies between irradiated and bystander cells. Using this experimental system, here we further report that bystander responses of AG01522 cells to 17.5 MeV/u 20Ne ions (294 keV/μm) are consistent with those to 18.3 MeV/u 12C and 13.0 MeV/u 20Ne ions. We also demonstrate that such bystander-induced reductions in the survival are less pronounced and occur independently of Bcl-2 overexpression in human cervical cancer HeLa cells.

37000366
Exposure of normal human fibroblasts to heavy-ion radiation promotes their morphological differentiation
楚良 桜*; 浜田 信行*; 原 孝光*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 横田 裕一郎; 中野 隆史*; 小林 泰彦
宇宙生物科学 22(2), p.54-58(2008) ; (JAEA-J 05402)
 Here we investigated the potential impact of energetic heavy ions on fibroblast differentiation. The differentiation pattern was morphologically determined at days 3 and 5 after exposure to graded dose of γ-rays (0.2 keV/μm) or carbon ions (18.3 MeV/u, 108 keV/μm). The cells irradiated with higher doses progressed toward later differentiation stages as time goes postirradiation, but underwent fewer cell divisions. Thus, radiation exposure accelerated morphological differentiation, for which carbon ions were more effective than γ-rays. The relative biological effectiveness of carbon ions for differentiation was higher than that for the clonogenic survival, and this was the most case for terminally differentiated cells that may not divide any more. The results are suggestive of the distinct mechanism underlying inactivation of clonogenic potential between radiation qualities, such that the contribution of the differentiation to heavy ion-induced reductions in the survival is greater than to those induced by photons. Such accelerated differentiation could be a protective mechanism that minimizes further expansion of aberrant cells.

37000367
開放型沿岸域における流れに及ぼす風の効果
中野 政尚; 磯崎 久明; 磯崎 徳重; 根本 正史*; 蓮沼 啓一*; 北村 尚士*
海の研究 18(1), p.37-55(2009) ; (JAEA-J 05403)
 沿岸域での風と流れの関係を調べるため、2年間に及ぶ風と流れの連続観測を実施した。観測海域は外洋に直接面した茨城県東海村沖である。沿岸水域特有の強い密度躍層の存在を考慮し、躍層以浅に注目した観測を行った。風と流れの変動は1日と数日以上の周期が卓越していた。風の長周期の変動には恒常的に北風成分が存在しており、これが南下流を形成している。また、風と表層0.5mの流れの間には2年間を通じて高い相関(相関係数0.64)が得られた。1日周期の変動は、調和解析の結果、卓越するS1分潮として現れたが、これは海陸風とそれによる吹送流であった。海陸風にはS1以外の太陽潮周期の成分も含まれており、これは対応する分潮流に吹送流成分を加える。その結果、太陽潮周期の分潮流にはあたかも潮流のように振舞う吹送流(擬似潮流)が含まれる。

37000368
Large-scale simulations on thermal-hydraulics in fuel bundles of advanced nuclear reactors
高瀬 和之; 吉田 啓之; 叶野 琢磨
Annual Report of the Earth Simulator Center April 2007 - March 2008 , p.217-221(2008) ; (JAEA-J 05406)
 原子炉の炉心内熱流動挙動の詳細を大規模シミュレーションによって明らかにする研究を行っている。従来の熱設計手法ではサブチャンネル解析コードに代表されるように実験データに基づく構成式や経験式を必要とするが、新型炉に関しては熱流動に関する実験データが十分ではないため、従来手法による熱設計では高精度の予測は困難である。そこで、シミュレーションを主体とした先進的な熱設計手法を開発し、従来手法と組合せることによって効率的な新型炉開発の実現を目指している。本研究では、将来型軽水炉の燃料集合体内熱流動挙動を大規模シミュレーションによって地球シミュレータ上に再現することを最終目標としている。本報では、平成19年度に実施した稠密燃料集合体内水-蒸気沸騰二相流挙動の予測結果について報告する。19年度には、ベクトル化したACE-3Dコードを使って沸騰二相流解析を行い、燃料集合体内のボイドの移行挙動等について原子力機構保有のスカラー並列計算機Altixと同様の結果が得られることを確認した。

37000369
Interoperation between Atomic Energy Grid Infrastructure (AEGIS) and other grids
鈴木 喜雄; 櫛田 慶幸; 手島 直哉; 中島 康平; 西田 明美; 中島 憲宏
High Performance Computing on Vector Systems 2008 , p.65-77(2009) ; (JAEA-J 05407)
 日本原子力研究開発機構システム計算科学センターでは、計算科学研究のための基盤構築に向け、1995年以来グリッドコンピューティングの研究開発を実施している。それらの一つがITBL基盤ソフトウェアの研究開発である。ITBLは、e-Japan戦略のもと実施されたe-Japan重点計画の一つとして実施された国家プロジェクトである。ITBL基盤ソフトウェアの技術を継承することにより、原子力研究のための知的基盤の構築を目指し、原子力グリッド基盤AEGISの研究開発を実施している。ここで、計算科学の進展とAEGIS環境の拡大を目指し、さまざまな分野にて国際協力を実施している。このため、AEGISと他のグリッドミドルウェアの相互接続環境を構築するためのシステムを構築した。

37000370
Development of cognitive methodology based data analysis system
木野 千晶; 鈴木 喜雄; 櫛田 慶幸; 西田 明美; 林 幸子; 中島 憲宏
High Performance Computing on Vector Systems 2008 , p.89-97(2009) ; (JAEA-J 05408)
 大規模・複雑データ解析は原子力分野においては重要な課題である。そのため、大規模・複雑データ解析をサポートするため、認識能力を備えたデータ解析システム(CDAS)を開発している。本研究では、データ解析に必要な情報概念として、解析対象,評価指標,判断基準を見いだし、その概念構造の分析を行った。それらの情報をシステムが具体的に扱うための情報科学技術を提案した。また、1TBに達する大規模構造解析データに適用し、その有用性を確認した。

37000371
Multi-scale modeling of crack propagation
板倉 充洋; 蕪木 英雄; 山口 正剛; 海老原 健一
High Performance Computing on Vector Systems 2008 , p.145-152(2009) ; (JAEA-J 05409)
 応力腐食割れの機構解明に数値計算で貢献するために、機構の仮説の一つである酸素による脆化メカニズムを検証する数値計算を行う。この仮説は酸素の拡散と酸素による脆化を含んでおり、その検証には拡散シミュレーションと亀裂進展シミュレーションの統合が必要となる。本発表では統合モデルの基本的枠組と幾つかの計算結果を示す。予備的な計算の結果、臨界応力での急激な亀裂速度の増加やその後での速度の漸次増加といった典型的な応力腐食割れの特徴を再現することができた。

37000372
Numerical simulation of thermal striping phenomena in T-junction piping system using large eddy simulation
田中 正暁; 大島 宏之; 文字 秀明*
Proceedings of 16th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-16) (CD-ROM) , 10p.(2008) ; (JAEA-J 05413)
 サーマルストライピング現象を対象として、熱流動場と構造材内温度場を一貫して解析する数値解析コードを開発している。本コードは、複雑形状に対応すべく境界適合座標系を使用しており、乱流モデルとしてはLESを採用している。また、数値誤差の伝搬による温度振動解を抑制する機構を組み込むとともに、圧力解法についても行列解法の一つであるBiCGSTAB法をベースとしてSOR法を組み込んだ新しい解法を開発した。これらにより、安定かつ合理的な計算負荷で過渡計算を可能とした。本コードの検証として、既往のT字合流配管体系水試験を対象とした解析を実施し、コードの妥当性を確認した。

37000373
Effects of alloy composition and flow condition on the flow accelerated corrosion in neutral water condition
佐藤 智徳; 宇賀地 弘和; 塚田 隆; 内田 俊介
Proceedings of 16th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-16) (CD-ROM) , 6p.(2008) ; (JAEA-J 05414)
 流れ加速型腐食(FAC)は炭素鋼の表面酸化被膜の溶出が、高い表面流速により加速される現象である。本研究では、チューブ型の炭素鋼試験片によるFAC速度のその場測定により、150℃中性純水中でのFACにおける炭素鋼の合金元素の影響を評価した。結果は以下のとおりである。(1)炭素鋼標準材でのFAC速度は流速の1.2乗に依存した。(2)FACは0.03%以上Crを含む炭素鋼では測定下限以下まで低減された。(3)0.1%Niを含む炭素鋼ではFACの低減が確認された。(4)NiによるFAC低減効果と、Crによる低減効果の違いを表面被膜の化学組成分析により確認した。(5)CuのFACへの影響は確認されなかった。また、流速がFAC速度に与える影響についての試験結果も報告する。

37000374
Flexible fuel cycle R&D for the smooth FBR deployment
深澤 哲生*; 山下 淳一*; 星野 国義*; 笹平 朗*; 井上 正*; 湊 和生; 佐藤 正知*
Proceedings of 16th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-16) (CD-ROM) , 6p.(2008) ; (JAEA-J 05415)
 軽水炉から高速増殖炉への移行期のサイクルシステムを検討することが重要である。移行期のシナリオを注意深く検討するとともに、高速増殖炉の円滑な導入のための柔軟な燃料サイクル(FFCI)を提案した。FFCIでは、軽水炉使用済燃料から、まずウランを約90%取り除き、残ったリサイクル原料(40%U,15%Pu,45%その他元素)から、高速増殖炉の導入状況に合わせながら、U/Puを回収し燃料製造を行う。FFCIの利点は、使用済燃料のまま保管するよりも体積を小さくすることができるとともに、高速増殖炉の導入速度に合わせて、Pu濃度の高いリサイクル原料を貯蔵又はPuをリサイクル原料から回収して燃料として供給できることである。

37000375
Development of stress corrosion cracking model for reactor structural materials
加治 芳行; 五十嵐 誉廣; 都留 智仁; 中沢 哲也
Proceedings of 16th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-16) (CD-ROM) , 6p.(2008) ; (JAEA-J 05416)
 軽水炉の長期運転において、ステンレス鋼製構造物の粒界型応力腐食割れ(IGSCC)は重要課題の一つである。IGSCCの機構解明のために、分岐き裂を含むIGSCC成長挙動をシミュレーションするIGSCC進展モデルの開発を実施している。本論文では、開発中のIGSCC進展モデル及び粒界特性に関する基礎的な研究活動の現状について紹介する。

37000376
Experiments simulating IGSCC under irradiation in BWR
塚田 隆; 加治 芳行; 宇賀地 弘和; 三輪 幸夫; 中野 純一; 佐藤 智徳; 内田 俊介
Proceedings of 16th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-16) (CD-ROM) , 6p.(2008) ; (JAEA-J 05417)
 粒界型応力腐食割れ(IGSCC)は、沸騰水型軽水炉(BWR)の構造材料における主要な材料損傷現象であるため、BWR炉内の環境条件におけるIGSCC挙動を調べるための炉内照射下試験,照射後試験等の各種試験が行われている。本論文では、それらの実験手法を特徴により整理し、実験技術上の課題について検討した。さらに、具体的な試験技術として著者らがオーステナイトステンレス鋼を供試材として実施した、材料試験炉(JMTR)における照射下SCCき裂進展試験、及び過酸化水素注入により炉内高温水の放射線分解を模擬した腐食試験について、試験法の概要と課題について述べた。実機の炉内環境を模擬するには多くの技術的制約があるが、各種の実験手法の特徴を組合せることにより、IGSCC挙動の機構論的な理解を進めることができると考えられる。

37000377
Uranium recovery in LWR reprocessing and plutonium/residual uranium conditioning in FBR reprocessing for the transition from LWR to FBR
深澤 哲生*; 山下 淳一*; 星野 国義*; 笹平 朗*; 井上 正*; 湊 和生; 佐藤 正知*
Proceedings of 3rd International ATALANTE Conference (ATALANTE 2008) (CD-ROM) , 7p.(2008) ; (JAEA-J 05418)
 軽水炉(LWR)から高速増殖炉(FBR)への移行期において、種々の不確定要因を考慮した移行シナリオを網羅的に検討し、各シナリオに柔軟に対応できる燃料サイクルシステムを開発中である。そこでは、軽水炉使用済燃料からのウランの粗分離、並びにプルトニウム/ウラン/核分裂生成物の一時保管及び適時の再処理によるFBRへのプルトニウム燃料の供給を柱としている。柔軟性確保手段の比較検討結果を報告する。国の原子力政策大綱によれば、経済性等の条件が整うことを前提にFBRは2050年頃から導入するものとし、FBRの導入に必要な第二再処理設備は2010年から検討することになっている。第二再処理は今後40∼100年の将来にかかわるため種々の変動・不確実性が想定され、それらに対する柔軟性の確保は重要である。Pu需給バランスの観点から変動に対し柔軟性を確保する手段について比較評価し、課題摘出・燃料サイクルシステムへの適用性等の検討を行った。

37000378
A Study of extrusion behaviour of buffer material into fractures
棚井 憲治; 松本 一浩*
Proceedings of 3rd International Meeting on Clays in Natural and Engineered Barriers for Radioactive Waste Confinement , p.57-64(2008) ; (JAEA-J 05419)
 高レベル放射性廃棄物の地層処分における緩衝材の候補材料であるベントナイトは、吸水により膨潤する性質を有し、この膨潤性によって緩衝材と周辺岩盤との隙間や周辺岩盤の割れ目などを充填する自己シール性が期待されている。一方で、この膨潤性によってベントナイトの割れ目への侵入が止まらずに緩衝材の密度が低下し、緩衝材自体の諸機能並びに人工バリアの構造力学的安定性に影響を及ぼすことが懸念される。また、割れ目へ侵入したベントナイトゲルが地下水の流れによって浸食される。このように岩盤の割れ目への侵入と割れ目へ侵入したベントナイトゲルの侵食を定量的に把握し、緩衝材の長期的な性能を評価する必要がある。本研究では、非破壊測定手法の一つであるX線CTを用いて亀裂内に侵入したベントナイトの密度分布の測定を行い、本手法の適用性について検討を行った。

37000379
Numerical simulation of heat transfer test of forced convection supercritical water in a circular pipe
吉田 啓之; 中塚 亨; 鈴木 貴行*
Proceedings of 6th Japan-Korea Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-6) (USB Flash Drive) , 6p.(2008) ; (JAEA-J 05420)
 In this study, to perform thermal hydraulic analysis of the Supercritical-Water-Cooled Reactor, the three-dimensional two-fluid model analysis code ACE-3D was improved to handle the thermal hydraulic properties of water at supercritical region. In this paper, the existing heat transfer experiments of supercritical water flowing in a vertical circular pipe were analyzed with the ACE-3D code to assess the prediction performance of the code. Wall surface temperature was underestimated by the ACE-3D code using standard k-ε model as turbulence model with wall function. Main cause of these underestimations was thought to be the wall function which cannot describe the effects of rapid fluid property variation near the wall. Then the equivalent eddy diffusivity model which was proposed by Kunugi was introduced to the ACE-3D code to improve evaluation of turbulent heat transfer coefficient vicinity of the wall. As a result, it was confirmed that the calculated wall surface temperature by the modified code agreed well with the measured results.

37000380
LES analysis of turbulent boundary-layer flow over urban-like building arrays with various spatial arrangement and height distribution
中山 浩成; 竹見 哲也*; 永井 晴康
Proceedings of 89th American Meteorological Society Annual Meeting (Internet) , 6p.(2009) ; (JAEA-J 05421)
 大気・陸域・海洋での放射性物質の移行挙動を包括的に予測できるSPEEDI-MPにおいて、LES(Large-Eddy Simulation)モデルによる都市大気拡散予測システムの開発とその導入を目指している。今回は、都市を想定した乱流シミュレーション予測の妥当性を調べるため、まず、立方形状の建物が均一に配置された簡易な地表面形状での数値シミュレーションを行い、平均風速分布や乱流統計量に関する計算結果が風洞実験と良好に整合性がとれていることを確認した。次に、東京都心における建物高さや建物密集度などの都市空間構造を調べ、その特徴に基づいて地表面形状を表現し、地表面形態に応じた平均風速や乱流変動量が得られたことで、乱流シミュレーション予測の妥当性が実証された。

37000381
Irradiation and measurement of GaAs based solar cells at low intensity, low temperature (LILT) conditions
Walters, R. J.*; Harris, R. D.*; 今泉 充*; Lorentzen, J. R.*; Messenger, S. R.*; Tischler, J. G.*; 大島 武; 佐藤 真一郎; Sharps, R. P.*; Fatemi, N. S.*
Proceedings of 8th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Applications (RASEDA-8) , p.105-108(2008) ; (JAEA-J 05422)
 深宇宙、すなわち太陽から非常に離れた宇宙空間でのミッションにおいてエネルギーを供給するような状況を想定し、低温環境下における高エネルギー(1MeV)電子線照射によるInGaP/GaAs/Ge宇宙用三接合太陽電池の、低強度光照射時の太陽電池の電気特性を調べた。太陽電池の特性は、電流・電圧(I-V)測定及び分光感度測定によって調べた。低温での放射線照射によって起こる劣化と、室温での放射線照射によって見られる劣化はいくらか異なっており、短絡電流は低温照射において劣化が顕著である一方、開放電圧は室温照射において劣化が顕著であった。低温照射の場合は室温アニールによる有意な電気特性の回復が見られた。

37000382
Durability of triple-junction solar cell for HIHT environments, venus and mercury exploration missions
今泉 充*; 豊田 裕之*; 島田 貴信*; 小川 博之*; 田島 道夫*; 久松 正*; 中村 一世*; 高本 達也*; 佐藤 真一郎; 大島 武
Proceedings of 8th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Applications (RASEDA-8) , p.127-130(2008) ; (JAEA-J 05423)
 宇宙航空研究開発機構が着手している金星ミッションと水星ミッションにおいて惑星探査機がさらされる環境を模擬し、宇宙用InGaP/GaAs/Ge三接合太陽電池の電気出力に対する高温高光強度(HIHT)環境の影響について調べた。電流・電圧測定の結果、+200℃では電流が0の付近でキンク状のパターンが現れた。また、これらのミッションの運用期間において予想される放射線曝露量を換算し、3MeV陽子線を2×1012/cm2照射した試料に対しても、同様にキンク状のパターンが確認された。さらに、HIHT環境下での熱サイクル試験及び連続稼働試験を行い、連続稼働試験では電流出力が有意に劣化する結果を得た。

37000383
Development of apparatus for electron irradiation and in-situ I-V characteristics measurements for space solar cells
普門 貴志*; 小林 一平*; 大島 武; 佐藤 真一郎; 奥田 修一*; 谷口 良一*; 岩瀬 彰宏*
Proceedings of 8th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Applications (RASEDA-8) , p.203-206(2008) ; (JAEA-J 05424)
 宇宙用太陽電池に対し、電子線照射と「その場」電流・電圧測定が行える装置の開発を行った。この装置は大阪府立大学放射線研究センターにある電子リニア加速器に設置され、6MeVから12MeVの電子線を-196℃から100℃の温度範囲で照射することが可能である。また、太陽電池の電流・電圧特性もこの温度範囲で測定可能である。まずは宇宙用単結晶Si太陽電池の電流・電圧特性を室温又は低温で測定し、温度可変機構が正常に動作することを確認した。また、10MeV電子線を室温で照射して電流・電圧測定を行い、この結果を1MeV電子線あるいは10MeV陽子線照射の結果と比較した。

37000384
NIEL analysis of carrier removal rate and damage coefficient in each sub-cell of triple-junction space solar cell
佐藤 真一郎; 今泉 充*; 大島 武
Proceedings of 8th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Applications (RASEDA-8) , p.211-214(2008) ; (JAEA-J 05425)
 電子線や陽子線照射によって劣化した宇宙用InGaP/GaAs/Ge三接合太陽電池のモデリングを行い、量子効率のフィッティングから電流・電圧特性を非常に高い精度で再現できることを見いだした。また、量子効率のフィッティングの際の指標となる、ベース層キャリア濃度の減少の度合いを示すキャリア枯渇係数RC,少数キャリア拡散長の減少の度合いを示す損傷係数KLを陽子線及び電子線のエネルギーから求めたNIEL値によってスケールすると、系統的にまとめられることが判明した。この結果はつまり、放射線の種類,エネルギー,材料がわかれば、その条件に相当するNIEL値がわかり、スケーリンググラフからさらにRC及びKLを導出でき、放射線劣化を予測することが可能であることを示している。

37000385
Study on optimum structure of AlInGaP top-cells for triple-junction space solar cells
森岡 千晴*; 今泉 充*; 佐藤 真一郎; 大島 武; 岐部 公一*
Proceedings of 8th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Applications (RASEDA-8) , p.215-218(2008) ; (JAEA-J 05426)
 宇宙用三接合太陽電池のトップセルである(Al)InGaP太陽電池の放射線耐性について調べた。GaAs基板上にエピタキシャル成長させたAlInGaPの膜厚は1μmで固定し、アルミニウムの組成比とベース層キャリア濃度を変えた試料(セル)を作製し、3MeV陽子線を1×1014/cm2照射した。その結果、短絡電流と開放電圧の保存率は組成式がAl0.2In0.5Ga0.3Pの場合とIn0.5Ga0.5Pの場合のセルとの間に違いが見られなかった。また、ベース層のキャリア濃度に勾配をつけても耐放射線性に変化がなかったことから、(Al)InGaP太陽電池の放射線劣化は少数キャリア拡散長の減少に強く起因するものではないことが推測された。

37000386
Performance of a 4π Ge spectrometer for neutron capture cross section measurements
大島 真澄; 堀 順一*; 原田 秀郎; 古高 和禎; 小泉 光生; 北谷 文人; 藤 暢輔; 木村 敦; 中村 詔司; 井頭 政之; 水本 元治*; 大崎 敏郎*; 片渕 竜也*; 西山 潤*; 後藤 淳*
Proceedings of International Conference on Nuclear Data for Science and Technology (ND 2007), Vol.1 , p.603-606(2008) ; (JAEA-J 05427)
 マイナーアクチニド及び長寿命核分裂生成核種の中性子捕獲断面積は革新的原子炉開発のために重要である。しかしながら、現状ではその精度は充分ではない。よって、われわれは高分解能ゲルマニウム検出器及びBGO検出器からなる革新的γ線分析器を整備し、中性子断面積を測定するプロジェクトを開始した。この検出器は京都大学電子線ライナック及び原子力機構3号炉において性能評価を行ったのち、中性子断面積測定を行っている。完成した検出器の性能評価と測定手法について報告する。

37000387
Integrated nuclear data utilization system for innovative reactors; Nuclear data processing and utilization system
山野 直樹*; 片倉 純一; 加藤 幾芳*; 井頭 政之*
Proceedings of International Conference on Nuclear Data for Science and Technology (ND 2007), Vol.2 , p.825-828(2008) ; (JAEA-J 05428)
 核データ処理及び利用システムを革新炉のための総合核データ利用システムの一部として開発した。このシステムではENDF-6形式の評価済核データを取り扱い、ポイントワイズあるいは群定数などさまざまな形式で断面積を用意し、臨界性や遮蔽のベンチマーク計算を実施することができる。このシステムの概要及び将来計画について報告する。

37000388
Experiment and analysis for criticality in small fast reactor with reflector at FCA
福島 昌宏; 岡嶋 成晃; 森 貴正; 竹田 敏一*; 木下 泉*
Proceedings of International Conference on the Physics of Reactors, Nuclear Power; A Sustainable Resource (PHYSOR '08) (CD-ROM) , 7p.(2008) ; (JAEA-J 05430)
 日本原子力研究開発機構の高速炉臨界実験装置FCAを用いて反射体付き小型高速炉の模擬体系を構築し、境界領域の核特性評価の信頼性向上を目的としたベンチマーク実験を実施した。高速炉における標準的な中性子輸送計算コードシステムを用いて臨界性に関する実験解析を実施した結果、70群エネルギー群定数及び輸送近似散乱断面積等を用いた標準的な計算条件では、1.5%Δk/kほど過大評価する結果となった。これに対して、反射体の主材料である鉄の数10keVから1MeVのエネルギー領域の散乱反応等を適切に評価するために、より詳細なエネルギー群数(140群)及び高次の非等方散乱(3次オーダー)を考慮した解析を行った。その結果、計算予測精度に対して1%Δk/k程度の改善が見られることを示した。

37000389
Benchmark test for TRU nuclear data by analysis of central fission rate ratios measured at FCA cores
岡嶋 成晃; 福島 昌宏; 向山 武彦*
Proceedings of International Conference on the Physics of Reactors, Nuclear Power; A Sustainable Resource (PHYSOR '08) (CD-ROM) , 7p.(2008) ; (JAEA-J 05431)
 評価済み核データライブラリー(JENDL-3.3, ENDF/B-7.0, JEFF-3.1)におけるTRUの核データの信頼性を検証するために、高速炉臨界実験装置(FCA)で測定された中心核分裂率比の解析によってベンチマーク試験を実施した。試験には、モンテカルロコードを利用した。核データライブラリー間で、C/E値を比較した。

37000390
Approximate estimation of effective delayed neutron fraction with correlated sampling method
長家 康展; 中島 健*
Proceedings of International Conference on the Physics of Reactors, Nuclear Power; A Sustainable Resource (PHYSOR '08) (CD-ROM) , 7p.(2008) ; (JAEA-J 05432)
 実効遅発中性子割合(通常βeff)は原子炉の動特性において非常に重要なパラメータである。この実効遅発中性子割合をモンテカルロ法で評価するために、固有値比法に摂動モンテカルロ法の一つである相関サンプリング法を適用した。提案した手法を検証するため、その手法をMVPコードに組み込み、TCAで測定された実効遅発中性子割合を計算した。この結果、今回提案した手法は、名内らやMeulekampらによる手法と同様、よい精度で実効遅発中性子割合を計算できることがわかった。

37000391
Prediction accuracy improvement for neutronic characteristics of a fast reactor core by extended bias factor methods
久語 輝彦; 森 貴正; 横山 賢治; 沼田 一幸*; 石川 眞
Proceedings of International Conference on the Physics of Reactors, Nuclear Power; A Sustainable Resource (PHYSOR '08) (CD-ROM) , 8p.(2008) ; (JAEA-J 05433)
 拡張バイアス因子法、すなわちLC法とPE法の2手法を種々の核特性実験値を活用して、典型的な高速増殖炉の臨界性とナトリウムボイド反応度の予測精度評価に適用した。拡張バイアス因子法は従来バイアス因子法より効果的である。活用する実験の数が少ない場合は、PE法の持つ実験の組合せ方に自由度が多いという性質のために、PE法がLC法よりも効果的に働く。活用する実験値の数が十分多い場合は、その利点はほとんど影響しない。設計値に含まれる断面積起因誤差は、種々の核特性に関する約200個の実験値を活用することにより、そのほとんどが消滅した。臨界性については、設計値に含まれる全体の不確かさのうち、断面積起因誤差が大部分を占めているため、全体の不確かさも大きく低減した。ナトリウムボイド反応度については、設計値の不確かさのうち、断面積起因誤差が手法起因誤差より小さいため、全体の不確かさの低減は大きくない。

37000392
FBR core concepts in the "FaCT" Project in Japan
大木 繁夫; 小川 隆; 小林 登; 永沼 正行; 川島 克之; 丸山 修平; 水野 朋保; 田中 俊彦*
Proceedings of International Conference on the Physics of Reactors, Nuclear Power; A Sustainable Resource (PHYSOR '08) (CD-ROM) , 10p.(2008) ; (JAEA-J 05434)
 日本の高速増殖炉サイクル実用化研究開発プロジェクト(FaCTプロジェクト)においてナトリウム冷却高速炉の炉心の概念設計検討が実施されている。代表MOX燃料炉心及び金属燃料炉心は、安全性及び信頼性,持続可能性,経済性,核不拡散性において優れた性能を有している。本論文では、それら炉心の特徴を炉物理的観点から概観し、さらに最近の設計検討の進展について述べる。最近の設計検討においては、軽水炉から高速増殖炉への移行期における燃料組成変化に着目するとともに、高増殖や核不拡散性の強化といった、より高い目標を満足する炉心の柔軟性を示している。

37000393
幌延深地層研究計画における立坑工事の施工実績とサイクルタイム分析
山崎 雅直; 関谷 美智; 藤川 大輔; 北川 義人*
地下空間シンポジウム・論文集,14 , p.191-196(2009) ; (JAEA-J 05435)
 本稿は、今後の立坑工事の積算精度の向上と積算手法の体系化の検討に役立てる基礎データとすることを目的として、これまで実施した立坑工事の施工実績の概要並びに掘削時間に注目してサイクルタイムを分析した結果を報告する。本分析の結果、(1)岩盤等級の違いによるサイクルタイムの違いは見られなかったこと,(2)掘削方式による掘削時間の違いは見られなかったことが判明した。この成果は、地層処分施設の建設を念頭においた工事工程管理や工事費用の積算に反映できるものである。

37000394
高精度Volume-of-Fluid法に対応した非構造解適合格子の研究
伊藤 啓; 功刀 資彰*; 大島 宏之
第22回数値流体力学シンポジウム講演論文集(CD-ROM) , 6p.(2008) ; (JAEA-J 05437)
 高速炉容器内において局所的に発生するガス巻込み現象の捕捉を目的とした非構造解適合格子開発の一環として、2次元非構造解適合格子の開発を実施した。格子分割手法としてIsotropic分割を用いることで格子分割による格子歪みの増大を防止するとともに、詳細化セルと非詳細化セルとの間に接続セルを作成するとことですべての格子セル境界においてEdge整合性を満足する格子分割・結合手法を構築した。2次元Driven Cavity問題を対象として流れ場解析部分の検証を行った結果、非構造解適合格子を用いた解析結果は、初期格子として粗くて歪んだ格子分割を採用したにもかかわらずGhiaらのDNS結果と一致する結果を与えており、本件で開発した格子分割・結合手法によって渦流れ場を精度よく再現できることが示された。また、Slotted Disk回転問題を対象とした気液二相流解析部分の検証結果より、解適合格子を用いない場合は困難である切欠き付き円板の角部形状保存を、2次元非構造解適合格子を用いることで達成でき、それによって解析精度が大幅に向上することを確認した。

37000395
立坑掘削における内空変位の初期変形率と覆工コンクリート応力の相関
山崎 雅直; 津坂 仁和; 羽出山 吉裕*; 南出 賢司*; 高橋 昭博*
第38回岩盤力学に関するシンポジウム講演論文集(CD-ROM) , p.196-201(2009) ; (JAEA-J 05441)
 本稿は、地下研究施設の立坑掘削に伴う地下空洞の安定性や支保設計の妥当性を評価する目的で、立坑掘削時に取得した内空変位計測データと覆工コンクリート応力計測データから、初期変形率と覆工コンクリート応力の収束値(土被り圧で無次元化)を整理し、両者の相関について分析した結果を報告する。その結果、(1)内空変位の初期変位率と土被り圧で無次元化した覆工コンクリート応力収束値とは相関性が高いこと,(2)ショートステップ工法を対象とした内空変位の初期変位率より覆工コンクリート応力の収束値の予測が可能であることが判明した。

37000396
立坑の冠水・排水時の湧水量・水圧観測データを用いた水理地質構造モデルの構築
熊本 創*; 下茂 道人*; 三枝 博光; 大山 卓也
第38回岩盤力学に関するシンポジウム講演論文集(CD-ROM) , p.281-286(2009) ; (JAEA-J 05442)
 日本原子力研究開発機構では、岐阜県瑞浪市において、おもに結晶質岩を対象とした地下研究施設の建設を進めている。施設建設にあたっては、坑内湧水量や周辺への水圧応答など、建設に伴うデータ取得を行っている。また、掘削途中(深度約180m地点)では、排水処理方法の改善のため、掘削及び排水を停止し、坑内は一時的に冠水され、その後、再排水された。この一連の坑内水位変動は、大規模な回復・揚水試験と考えられ、これに伴う水圧応答データは、周辺の水理地質構造や透水性評価に非常に有効なデータである。本報では、この掘削・冠水・再排水時の湧水量や水圧応答データを用いて、筆者等がこれまでに構築してきた水理地質構造モデルの妥当性確認及び更新の結果について述べる。

37000397
エクセル版極値統計解析ソフト(EVAN-II)の使用方法
山本 正弘
腐食防食協会第47回技術セミナー資料; 極値統計解析による材料腐食寿命予測 , p.35-41(2008) ; (JAEA-J 05443)
 極値の解析による配管類の寿命予測は、今や標準的な方法になるまで多用されている。今回のセミナーでは、極値統計解析を使ってみることに主眼をおき、極値統計解析の基礎理論と適用事例をやさしく解説し、さらにPCを用いた演習のための使い方を説明した。

37000398
水理地質構造モデル構築及び地下水流動解析におけるノウハウや判断根拠にかかわる情報の抽出・分類・整理; 岐阜県東濃地域での調査研究を例として
三枝 博光; 大澤 英昭; 梅木 博之; 大山 卓也; 尾上 博則*
日本地下水学会2008年秋季講演会講演要旨 , p.74-79(2008) ; (JAEA-J 05445)
 地質環境特性調査にかかわる知識ベースの構築を目的として、水理地質構造モデル構築及び地下水流動解析の一般的な進め方に基づき作業項目を分類し、それぞれの作業項目における判断プロセスを超深地層研究所計画における経験に基づき分析・整理した。この結果は、一連の地質環境調査の進展によって変化する情報の質や量,社会状況などに応じて、調査計画の立案や実施,変更を支援する次世代型サイト特性調査情報統合システムにおけるルール化・事例作成に使用するものである。

37000399
水素脆化の表面エネルギー低下説; 第一原理計算による研究
山口 正剛; 海老原 健一; 鈴土 知明; 板倉 充洋; 蕪木 英雄
日本機械学会第21回計算力学講演会論文集(CD-ROM) , p.35-36(2008) ; (JAEA-J 05446)
 鉄のΣ3(111)粒界に対する第一原理計算を行い、粒界強度の指標である粒界凝集エネルギーが水素の粒界偏析によってどの程度低下するのかを調べた。その結果、水素は表面エネルギーを低下させる効果が大きいため高濃度に偏析すれば粒界凝集エネルギーを最大で30∼70%低下させることがわかった。この結果から、水素によって粒界脆性破壊が生じる場合に限れば、現在では可能性が低いとされている「き裂表面エネルギー低下説」が逆に有望であると考えられる。

37000400
多重極電磁石を用いた均一ビームの形成
百合 庸介; 石坂 知久; 湯山 貴裕; 奥村 進; 石堀 郁夫
Proceedings of 5th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 33rd Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.397-399(2008) ; (JAEA-J 05447)
 TIARAのAVFサイクロトロン施設では、多重極電磁石がつくる非線形集束力によりビーム強度分布が均一化されることを利用した、新たな均一照射システム(MuPUS: Multipole magnet beam profile uniformization system)の開発を行った。ビーム均一化について一般的な非線形磁場を考慮した詳細な理論解析を行い、対称なビームはもとより、六極電磁石等がつくる偶数次磁場を併用することにより、非対称なビームでも均一化が可能であることを示した。この理論計算に基づき、六極及び八極電磁石を用いた均一ビーム形成のためのビームラインを設計した。2008年1月までに多重極電磁石の設置等のビームライン改造作業を完了した。これまでに数度のビーム試験を実施し、本方式の前提として必要となる、サイクロトロンから引き出されたビームの散乱体によるガウス分布化とそれに付随するエミッタンスの拡大を図るとともに、八極磁場による均一ビームの形成や六極磁場によるビーム蛇行の補正ができることを確認した。

37000401
AVFサイクロトロン内部のビーム位相測定とプローブの改良
宮脇 信正; 奥村 進; 倉島 俊; 柏木 啓次; 吉田 健一; 百合 庸介; 湯山 貴裕; 石坂 知久; 石堀 郁夫; 奈良 孝幸; 横田 渉
Proceedings of 5th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 33rd Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.400-402(2008) ; (JAEA-J 05448)
 JAEA AVFサイクロトロンにおける中心領域のプラー電極や2組の位相スリットの幾何学的配置とビーム位相の関係を明らかにするために、プラスチックシンチレータを取付けた半径方向に走査できるプローブを用いて、3つの加速モードについてそれぞれビーム位相分布を測定した。また、実験結果の比較対照としてシミュレーションも行った。ビーム位相分布の測定結果は、シミュレーション結果によりほぼ再現できた。一方、本プローブでは光の収集効率が低く、エネルギーが低い条件で高精度な測定が困難であった。そこで、短い飛程の加速イオンのビーム位相測定に対応するため、形状等の改良を行った。これにより、75MeV-20Ne4+を用いた実験におけるビーム位相測定では、S/N比が改善された。

37000402
高エネルギー結晶化ビームの安定性について
杉本 寛*; 岡本 宏巳*; Wei, J.*; 百合 庸介; Sessler, A. M.*
Proceedings of 5th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 33rd Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.436-438(2008) ; (JAEA-J 05449)
 加速器中のビームを冷却すると、ビームは最終的にクーロン結晶状態になると予見されている。そのエミッタンスはゼロであり、高エネルギー衝突実験に利用すれば非常に大きなルミノシティが期待される。ビームを結晶化させるためには、ベータトロン振動数νとラティスの超周期数Nspν<Nsp/4を満たしている必要がある。また、結晶化したビームを安定に周回させるためにはビームエネルギーγはトランジションエネルギーγTを超えてはならない。本研究ではNspとγTが大きい蓄積リングを想定し、結晶化ビームの安定性とビームのエネルギーの関係を理論及び分子動力学シミュレーションにより検討した。その結果、γがνを超えると結晶は不安定になることがわかった。これはγの増加に伴い結晶化ビームの感じる実効的な集束力が弱くなることが原因であると考えられる。ただし、比較的低密度のひも状結晶はγ>νの場合にも安定に周回した。以上の結果から、高エネルギーの多次元結晶化ビームを安定に周回させるためには、ベータトロン振動数と超周期数が大きなリングが必要であることがわかった。

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