学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2009年5月


37000598
Crystallization and preliminary neutron diffraction studies of HIV-1 protease cocrystallized with inhibitor KNI-272
松村 浩由*; 安達 基泰; 杉山 成*; 岡田 詩乃*; 山上 恵*; 玉田 太郎; 日高 興士*; 林 良雄*; 木村 徹*; 木曽 良明*; 北谷 友也*; 牧 祥*; 吉川 洋史*; 安達 宏昭*; 高野 和文*; 村上 聡*; 井上 豪*; 黒木 良太; 森 勇介*
Acta Crystallographica Section F 64(11), p.1003-1006(2008) ; (JAEA-J 05594)
 本論文では、HIV-1プロテアーゼと薬剤候補分子であるKNI-272との複合体の結晶化と予備的中性子結晶構造解析について報告する。この中性子回折研究の目的は、水素原子の構造情報を得ることと活性中心の2つのアミノ酸残基の解離状態を決定することである。結晶化は、2液法を除冷法を組合せて、さらにマクロシーディングを繰り返し、1.4mm3のサイズの結晶を得た。中性子回折データは、原子力機構のJRR-3に設置してあるBIX-4を用いて室温にて行った。回折データの分解能2.3Å、空間群はP2(1)2(1)2、格子定数は、a=59.5, b=87.4, c=46.8Åであった。

37000599
Role of metals loaded on a TiO2 Surface in the oxidation of xylene in air using an electron beam irradiation/catalytic process
箱田 照幸; 松本 加奈江*; 水野 彰*; 広田 耕一
Applied Catalysis A: General 357(2), p.244-249(2009) ; (JAEA-J 05595)
 当グループでは空気中の揮発性有機化合物(VOC)を電子ビーム照射により効率よく酸化分解するために、触媒を併用したVOC分解処理技術の開発を進めている。これまでに、この併用触媒の一つとして光触媒であるTiO2が有効であり、さらにこれに電子親和力の大きなAgやPtなどの金属を担持することによりこのVOCの酸化分解が促進することがわかっている。本研究では、空気中キシレンの電子ビーム分解に、TiO2やAg, Pt, AuやMnを担持したTiO2を併用し、その結果を比較することによりVOC酸化分解促進における担持金属の役割を調べた。その結果、電子ビームが直接触媒表面に入射せずに、照射後のガスが到達する位置にAg担持TiO2を設置した場合のVOC酸化促進効果が最も大きく、この効果はAgがオゾンを分解して活性酸素を生成する効果と有機物の吸着能力を向上させる効果の2つの効果の相乗効果として引き起こされることを明らかにした。

37000600
Spectrum modulation of relativistic electrons by laser wakefield
中新 信彦*; 近藤 公伯; 蔵満 康浩*; 森 芳孝*; 三浦 永祐*; 辻 和樹*; 木村 和也*; 福持 修司*; 柏原 守*; 谷本 壮*; 中村 浩隆*; 石倉 隆彦*; 武田 和夫*; 反保 元伸; 高部 英明*; 兒玉 了祐*; 北川 米喜*; 三間 圀興*; 田中 和夫*
Applied Physics Letters 93(8), p.081501_1-081501_3(2008) ; (JAEA-J 05596)
 中空のプラスチックシリンダーを爆縮して過渡的に長尺プラズマチューブを発生し、そこへPWレーザーを入射して相対論電子を発生した。長尺プラズマチューブの条件を変えることで発生相対論電子のスペクトル変調が可能であることが判明した。

37000601
Focusing and spectral enhancement of a repetition-rated, laser-driven, divergent multi-MeV proton beam using permanent quadrupole magnets
西内 満美子; 大東 出; 池上 将弘; 大道 博行; 森 道昭; 織茂 聡; 小倉 浩一; 匂坂 明人; 余語 覚文; Pirozhkov, A. S.; 杉山 博則*; 桐山 博光; 岡田 大; 金沢 修平; 近藤 修司; 下村 拓也; 田上 学*; 中井 善基; 笹尾 一; 若井 大介*; 榊 泰直; Bolton, P.; Choi, I. W.*; Sung, J. H.*; Lee, J.*; 大石 祐嗣*; 藤井 隆*; 根本 孝七*; 想田 光*; 野田 章*; 井関 康*; 吉行 健*
Applied Physics Letters 94(6), p.061107_1-061107_3(2009) ; (JAEA-J 05597)
 2.4MeVのレーザー駆動陽子線を永久四重極磁石で1Hzで収束させた。磁場勾配は、55T/m, 60T/mであった。陽子線は、ターゲットから650mmにおける2.7mm×8mmの大きさ(半値全幅)の領域に収束された。この結果は、モンテカルロシュミレーションとよく一致した。

37000602
A 3-quasiparticle isomer in neutron-rich 183Ta
静間 俊行; 石井 哲朗; 牧井 宏之*; 早川 岳人; 松田 誠
European Physical Journal A 39(3), p.263-266(2009) ; (JAEA-J 05600)
 中性子移行反応181Ta(18O,16O)を用いて、中性子過剰な183Taの励起状態に関する研究を行った。散乱荷電粒子をシリコン検出器を用いて測定し、放出γ線との同時計測を行った。その結果、半減期0.9(3)μ秒を持つ、3準粒子準位や1準粒子バンドが観測された。

37000603
Impact of reflected neutrons on accuracy of tritium production rate prediction in blanket mock-ups for fusion reactors
佐藤 聡; 落合 謙太郎; 和田 政行*; 今野 力; 西谷 健夫
Fusion Engineering and Design 83(7-9), p.1304-1308(2008) ; (JAEA-J 05617)
 これまでに行われてきたFNSでのDT中性子照射ブランケット核特性実験において、線源の周囲に反射体を設置した実験及びベリリウムと接している増殖材層の後側境界面付近でのトリチウム生成率の計算値は、測定値を10%以上過大評価した。これらの過大評価の原因として、鉄やベリリウムの後方散乱中性子に問題がある可能性を指摘した。本研究では、核データライブラリーFENDL-2.1の鉄及びベリリウムの後方散乱断面積に関する角度分布を変更して、これまで行ったブランケット核特性実験の再評価を行い、過大評価が改善されるかどうかを調べた。0.11MeV以下の入射中性子に対する56Feの弾性散乱の角度分布の後方部分を一様に50%減らした結果、反射体付き実験における過大評価が約5%改善した。また0.62∼14.94MeVの入射中性子に対する9Beの弾性散乱の角度分布の後方部分を一様に20%及び30%減らした結果、ベリリウムと接している増殖材層の後側境界面付近での過大評価が3∼6%改善した。これらの結果、弾性散乱の角度分布を変更することにより、トリチウム生成率予測精度を改善させることができることがわかった。

37000604
Hydrogen isotope separation capability of low temperature mordenite column for gas chromatograph
河村 繕範; 大西 祥広*; 奥野 健二*; 山西 敏彦
Fusion Engineering and Design 83(10-12), p.1384-1387(2008) ; (JAEA-J 05618)
 低温分離カラムを擁するガスクロマトグラフは水素同位体分析手段の一つである。しかし、液体窒素でカラムを冷却するため分析時間が長く取り回しにも難がある。比較的高い温度で十分な水素同位体分離性能を示すカラムの開発は、この弱点を解決する方法の一つである。モルデナイトは合成ゼオライトの一種で、比較的高い温度で水素同位体を分離できることが報告されているが、水素同位体吸脱着特性は明らかではない。そこで、水素同位体吸脱着特性把握の一環として、本研究ではモルデナイトの分離カラムを作成して水素同位体の分離性能を調べ、クロマトグラフから物質移動係数を求めた。本研究で作成したカラムは144KではH2とD2をほぼ完全に分離できたが195Kでは分離できなかった。本実験結果は水素同位体を比較的高い温度で分離できる合成ゼオライトの存在の可能性を示すものである。また、カラム材の開発においては水素同位体分離に影響をする要因の特定が重要である。

37000605
Detection of fast neutron by storage phosphors with low γ-ray sensitivity
坂佐井 馨; 岩元 洋介; 曽山 和彦
IEEE Transactions on Nuclear Science 55(4), p.2352-2356(2008) ; (JAEA-J 05629)
 これまでに開発した低γ線感度の輝尽性蛍光体SrBPO5:Eu2+の前面にポリエチレンラジエータを配した体系において、高速中性子検出を試みた。最大のPSL値はポリエチレン厚さが0.3mmの場合に得られることがわかった。これらの実験結果は、PHITSを用いたモンテカルロシミュレーションの結果とほぼ一致した。高速中性子に付随するγ線の影響はSrBPO5:Eu2+蛍光体を用いた場合はほぼ無視できるのに対し、市販のイメージングプレートの場合は約26%であった。市販のイメージングプレートの高いγ線感度はイメージの質の低下を招く可能性があるが、本方法のような低γ線感度の輝尽性蛍光体を用いる場合はその影響がほとんどなく、高速中性子イメージングに有用である。

37000606
Non-stoichiometries of (Nd0.1Ce0.9)O2-x and (Gd0.1Nd0.1Ce0.8)O2-x
逢坂 正彦
Journal of Alloys and Compounds 475(1-2), p.L31-L33(2009) ; (JAEA-J 05630)
 H2O/H2ガス及び希釈O2ガスを用いた熱重量法により、新規な希土類及び二種類の希土類をドープしたセリア(Nd0.1Ce0.9)O2-x及び(Gd0.1Nd0.1Ce0.8)O2-xの不定比を実験的に決定した。不定比はほかの希土類をドープしたセリアと同等であり、希土類をドープしたセリアの不定比においては、元素間の違いや二種類を同時にドープする効果はないことが示唆された。

37000607
Dependence on chirp rate and spectral resolution of the terahertz field pulse waveform measured by electro-optic detection using a chirped optical pulse and a spectrometer and its effect on terahertz spectroscopy
村上 洋; 清水 広平*; 桂田 雅章; 菜嶋 茂喜*
Journal of Applied Physics 104(10), p.103111_1-103111_7(2008) ; (JAEA-J 05631)
 Single-shot measurement of a terahertz field pulse waveform by electro-optic sampling using a chirped optical pulse and a spectrometer was demonstrated by Jiang et al. We have performed an experimental and theoretical investigation into the dependence of the waveform thus measured on the chirp rate and spectral resolution. It was found that the waveform exhibits multicyclic behavior at a chirped pulse width of over 10 ps for the monocyclic original terahertz field, while it approaches the monocyclic behavior with decreasing pulse width. Further, broadening of the spectral resolution of the spectrometer gives rise to a monocyclic waveform in the chirp-rate range where the waveform is expected to be multicyclic. The theoretical results were found to be consistent with measured ones. Finally, we examined the spectral bandwidth and resolution of terahertz spectroscopy using this method.

37000608
Improvement of poly(vinyl alcohol) properties by the addition of magnesium nitrate
久保 純一*; Rahman, N.*; 高橋 伸明; 河井 貴彦*; 松葉 豪*; 西田 幸次*; 金谷 利治*; 山本 正英*
Journal of Applied Polymer Science 112(3), p.1647-1652(2009) ; (JAEA-J 05632)
 ポリビニルアルコール(PVA)の機械強度と誘電特性の改善を狙い、われわれは、PVAと硝酸マグネシウムの複合体を作成した。この複合体はとても柔らかく、ゴム状の性質を示した。そして、ガラス転移温度は硝酸マグネシウム塩の添加に伴い低下した。広角X線回折と小角X線散乱の測定結果から、PVAの結晶が硝酸マグネシウム塩の添加に伴い破壊され、その結果、ソフトニングが起こっていることが明らかとなった。

37000609
In situ X-ray diffraction during stacking of InAs/GaAs(0 0 1) quantum dot layers and photoluminescence spectroscopy
高橋 正光; 海津 利行*
Journal of Crystal Growth 311(7), p.1761-1763(2009) ; (JAEA-J 05633)
 InAs/GaAs(001)量子ドットの分子線エピタキシー(MBE)成長を微小角入射X線回折法で調べた。実験には、SPring-8の原子力機構ビームラインBL11XUに設置された、MBE装置と一体化したX線回折計を用いた。シンクロトロン放射光とX線二次元検出器の利用により、10秒の時間分解能で、X線強度の三次元的な逆格子マッピングが可能になった。一連のX線回折像から、InAs量子ドット内部の格子歪み分布・断面形状の変化の様子が、InAsナノ結晶の形成とGaAsによる埋め込みも含む量子ドット成長の全過程にわたって明らかになった。量子ドットの光学的性質は光励起蛍光分光法で確認した。その結果は、その場X線回折法で測定された構造変化の様子と、よい対応を示した。

37000610
Development of high performance electrochemical solvent extraction method
奥垣 智彦*; 北辻 章浩; 糟野 潤*; 吉住 明日香*; 久保田 宏紀*; 芝藤 弥生*; 前田 耕治*; 吉田 善行; 木原 壯林*
Journal of Electroanalytical Chemistry 629(1-2), p.50-56(2009) ; (JAEA-J 05634)
 水相と有機相間に電位差を印加することによりイオンを水相から有機相へ移動させる反応に立脚した、高性能な電気化学溶媒抽出法を開発した。多孔質のテフロンチューブ,銀線及び白金線などから構成される電解セルを製作して用いた。電解によるイオンの移動は迅速であり、ビス-ジフェニルフォスフィニルエタンを含む1,2-ジクロロエタンを有機相に用いたとき、水相中のウラニルイオンの99%以上を電解セルの滞在時間である40秒で有機相に抽出できた。アクチノイドやランタノイド,Sr, Csイオンの電解抽出について詳細を調べた。アクチノイドイオンの酸化状態を調整するためにカラム電極によるフロー電解法を組合せ、アクチノイドの逐次分離を試みた。

37000611
Effect of wettability on bubble formation at gas nozzle under stagnant condition
粉川 広行; 菖蒲 敬久; 二川 正敏; Ahmed, B.*; 羽賀 勝洋; 直江 崇*
Journal of Nuclear Materials 377(1), p.189-194(2008) ; (JAEA-J 05635)
 微小気泡注入は、核破砕中性子源の水銀ターゲット中の圧力波抑制に効果的である。微小気泡注入技術開発の観点から、水銀中でノズルからの気泡生成、及び成長挙動を理解することが重要である。水銀中での気泡生成の観測は、水銀が不透明であるので、SPring-8高強度X線を用いて可視化実験を行った。内径100μm、及び外径200μmのステンレス鋼製のノズルを、水銀で満たした容器の底にノズル先端を上向きに設置し、ヘリウムガスをノズルから水銀に注入して気泡生成挙動を観測し、光学的に観察した水中での気泡成長挙動と比較した。水銀中での気泡成長挙動は、水中のそれと全く異なった。すなわち、水中ではノズル先端から気泡が噴出するように成長するが、水銀中ではノズル外側を囲みながら気泡は成長した。ステンレス鋼に対する水銀の濡れ性は悪いため、ヘリウムガスはステンレス鋼表面に沿って容易に広がり、気泡はノズルを囲むように成長した。

37000612
Numerical study on pressure wave propagation in a mercury loop
粉川 広行; 長谷川 勝一; 二川 正敏; Riemer, B.*; Wendel, M.*; Haines, J.*
Journal of Nuclear Materials 377(1), p.195-200(2008) ; (JAEA-J 05636)
 水銀ターゲットの圧力波問題に関して、ロスアラモス研究所の陽子加速器を用いたオンビーム実験を実施し、キャビテーション損傷評価とともにループターゲットのひずみ計測を行った。陽子ビーム照射位置から350mm離れた位置での最大ひずみは、陽子ビーム照射後5.5msで発生し、その伝播速度は、応力波や圧力波の伝播速度(それぞれ、5000m/s, 1500m/s)よりも遅い65m/sであることがわかった。数値解析を行い、伝播速度の低下は、水銀とループ壁の相互作用によることを明らかにした。

37000613
Extraction and stripping tests of engineering-scale centrifugal contactors cascade system for spent nuclear fuel reprocessing
竹内 正行; 荻野 英樹; 中林 弘樹; 荒井 陽一; 鷲谷 忠博; 加瀬 健; 中島 靖雄
Journal of Nuclear Science and Technology 46(3), p.217-225(2009) ; (JAEA-J 05637)
 Japan Atomic Energy Agency has been developing centrifugal contactors for solvent extraction to apply to next generation reprocessing plant. We evaluated the extraction and stripping performances of engineering-scale centrifugal contactors cascade system by uranyl nitrate solution on 10 kg/h flowsheet. As results, the uranium concentration profiles from extraction and stripping tests were fairly consistent with ideal distribution equilibrium calculated by MIXSET-X code. The stage efficiencies for uranium extraction and stripping were quite high. It was estimated as nearly 100% for extraction and 97∼98% for stripping. The contactors cascade system gave rapid equilibrium of distribution, and uranium concentration profiles became stable in 10 minutes on both extraction and stripping sections. No overflow and entrainment were observed under regular operation during extraction and stripping tests. From mal-operation test with the motor stop of one stage on contactors cascade system, it can keep running without emergency shutdown by the preparation of at least two spare stages.

37000614
Steam-assisted pyrolysis system for decontamination and volume reduction of radioactive organic waste
佐々木 紀樹; 曽根 智之; 小山 勇人; 山口 大美
Journal of Nuclear Science and Technology 46(3), p.232-238(2009) ; (JAEA-J 05638)
 実証規模の水蒸気アシスト熱分解試験装置による日本原子力研究開発機構に保管されている有機ハロゲン廃棄物の模擬廃棄物及びウランで汚染された廃TBP/n-ドデカンの処理試験を実施した。水蒸気アシスト熱分解試験装置は、焼却によって多量の酸類を発生し焼却炉に大きな損傷を与える有機廃棄物を処理するために設計されており、ガス化装置内で熱分解と水蒸気改質により放射性核種との分離を行うガス化プロセスと腐食防止のために液中燃焼型の反応装置において加熱空気による酸化分解を行う分解プロセスから構成されている。廃棄物は、処理によって98%から99.4%の重量が減少し、酸類による問題は発生しなかった。ほぼすべてのウランがガス化装置内に保持され、2次廃棄物である廃水のウラン濃度は、中和処理のみで環境へ放出できる低い濃度であった。

37000615
Calculation of neutron cross sections on 89Y for JENDL-4
市原 晃; 国枝 賢; 柴田 恵一
Journal of Nuclear Science and Technology 46(3), p.252-258(2009) ; (JAEA-J 05639)
 JENDL-4開発のために、JENDL-3.3の89Y核データを、分離共鳴領域より上で20MeVまでの中性子入射エネルギー範囲において理論計算により再評価した。核反応の断面積及び中性子放出スペクトルを、4種類の理論模型(球対称光学模型,歪曲波Born近似,Kalbach前平衡模型,Hauser-Feshbach統計模型)を適用して計算した。得られた全断面積,弾性及び非弾性散乱,(n,γ), (n,2n), (n,p)及び(n,α)反応に対する断面積は、実験値と定量的に一致した。全断面積及び弾性散乱断面積に対しては、JENDL-3.3よりも実験値をよく再現する結果を得た。さらに、本計算により、JENDL-3.3の評価値と比較して中性子放出スペクトルの測定データの再現性を改善できた。

37000616
Fluctuation of the neutron multiplication factor induced by an oscillation of the fuel solution system
佐藤 庄平; 奥野 浩; 内山 軍蔵
Journal of Nuclear Science and Technology 46(3), p.268-277(2009) ; (JAEA-J 05640)
 臨界安全の観点から、地震のような振動により誘起された溶液燃料の反応度を把握することは重要である。本紙は振動により形成された自由表面を持つ溶液燃料体系の反応度を、中性子増倍率の変動を評価することで明らかにすることを目的とする。この目的を達成するために、流体計算結果を反映した臨界計算を実施した。流体計算では、振動により発生する自由表面を算出するために有限体積法とVOF法を適用した。臨界計算では、連続エネルギモンテカルロ法を適用した。計算の結果、振動数と溶液高さと溶液幅の比(H/L)に依存する、3つの中性子増倍率の振動タイプが得られた。スロッシングが発生すると、中性子増倍率は大きく変動し、H/Lにより中性子増倍率の変動タイプが分類されるしきい値を持つ。そのしきい値は反射体の種類によらなかった。もしH/Lがしきい値(H/L=0.35)以上であれば、静止状態における中性子増倍率より小さな値で変動する。それとは逆に、H/Lがしきい値(H/L=0.35)以下であれば、静止状態における中性子増倍率より大きな値で変動する。本紙で示したしきい値は、従来の値より小さな値であることが明らかになった。

37000617
Calculation of neutron nuclear data on molybdenum isotopes for JENDL-4
柴田 恵一; 市原 晃; 国枝 賢
Journal of Nuclear Science and Technology 46(3), p.278-288(2009) ; (JAEA-J 05641)
 評価済み核データライブラリーJENDL-4のために92,94,95,96,97,98,99,100Mo中性子核データの理論計算を実施した。計算したのは、全断面積,弾性・非弾性散乱断面積,(n,p), (n,d), (n,t), (n,3He), (n,α), (n,np), (n,nd), (n,nα), (n,2n), (n,3n)反応断面積,放出粒子角度分布及び放出粒子・γ線のエネルギー分布である。これらの物理量の計算にはHauser-Feshbach理論に基づく統計模型を使用した。中性子チャネルの計算にはチャネル結合光学模型パラメータを用いた。複合核過程に加えて前平衡及び直接過程を考慮した。計算結果は既存の測定値をよく再現しており、JENDL-4の評価値として採用する予定である。

37000618
Development of an extraction method for the determination of dissolved organic radiocarbon in seawater by accelerator mass spectrometry
田中 孝幸; 乙坂 重嘉; 天野 光; 外川 織彦
Journal of Nuclear Science and Technology 46(3), p.289-294(2009) ; (JAEA-J 05642)
 加速器質量分析で高確度かつ高精度な溶存態有機炭素中放射性炭素(DO14C)の測定を行うために、溶存態有機物から炭素を抽出するシステムを開発した。石油起源製品のような14Cフリーな炭素や大気起源炭素の汚染を低減することにより、開発したシステムのバックグランドを減少させ、さらに大容量の海水から炭素を抽出できるシステムとなるよう工夫した。開発したシステムにおいて、試料量に対するブランクは、先行研究より低い、1%以下を達成した。この低いブランクを達成したシステムにより抽出された有機物の14C値は、有機物での放射性炭素測定において一般的な方法である燃焼法と同じ値を示し、また、その精度は±5‰であった。この結果は、開発したシステムが14Cを高確度,高精度に測定可能であることを示した。さらに、実際に大容量の海水でのDO14Cを測定したところ、十分な炭素の回収ができ、誤差は、±8‰と高精度であった。これらすべての結果により、われわれが開発したシステムは高確度かつ高精度なDO14Cの測定が可能であることを示した。

37000619
Properties of a pulsed Ti:sapphire laser oscillator with an extended standing-wave cavity
田村 浩司
Journal of Nuclear Science and Technology 46(3), p.316-319(2009) ; (JAEA-J 05643)
 斜入射セルフシードで1対の回折格子を有し、伸張定常波共振器を有するチタンサファイアレーザー共振器を開発し、同位体分離光源としての特性を測定した。選択励起に望ましいシングルモード動作が、低閾値で得られた。25MHzに相当する狭いエネルギー幅が、伸張した定常波共振器により得られた。これは同位体分離に望ましい特性であった。

37000620
Mott insulating state in incommensurate molecular conductors
妹尾 仁嗣; 吉岡 英生*; 大塚 雄一*
Journal of Physics; Conference Series 132, p.012018_1-012018_6(2008) ; (JAEA-J 05644)
 分子性導体のうち二つの分子種の組成比が互いに非整合なもの、すなわち非整合分子性導体において、モット絶縁体状態の可能性を理論的に調べた。これらの物質ではバンド充填率が無理数となり金属状態が期待されるにもかかわらず、価電子間のオンサイトクーロン斥力とキャリアを供給する閉殻イオンからのポテンシャルによって、元にある格子とは周期が非整合にキャリアが局在する「非整合モット絶縁体」が実現しうることを示す。

37000621
Development of safeguards system simulator composed of multi-functional cores
鈴木 美寿; 井原 均
Journal of Power and Energy Systems (Internet) 2(2), p.899-907(2009) ; (JAEA-J 05647)
 大型の先進再処理施設においては、Puの取扱量が増大することにより、保障措置クライテリアの計量管理基準の達成が課題となる。核物質の転用が無いことを証明するためには、多量の化学分析や査察活動が必要となり、高コスト要因となっている。封じ込め・監視,プロセスモニタ,Cmバランス等が用いられているが、定量的な規制基準・定式化が為されていないために、費用対効果を考えることが困難である。核不拡散センターでは、保障措置システムシュミレータの開発に着手した。シュミレータの近実時間計量管理コアは既に開発が済み、各種施設の計量管理特性を調べた。ウエーブレット展開を利用した多変量・多重尺度コアを開発して、異常検知手段への適用性を評価した。多目的関数コアの考えを、確率論的リスク解析による保障措置の定式化に適用し提案する。また、流量計や非破壊検査機器は、費用対効果の観点から優れていることを示す。将来の展開として、目的指向型の仮想設計モデルをシュミレータに組み込み、コストパフォーマンスに優れたシステムの開発及び仮想的に建物の内部を歩くことが体験できるようなモデル開発を目指す。

37000622
Thrust performance of a microwave rocket under repetitive-pulse operation
小田 靖久; 柴田 鉄平*; 小紫 公也*; 高橋 幸司; 春日井 敦; 坂本 慶司
Journal of Propulsion and Power 25(1), p.118-122(2009) ; (JAEA-J 05648)
 An experiment was conducted on a Microwave Rocket (repetitive pulse millimeter wave beam powered thruster) with repetitive pulses. A thruster model with a forced breathing system was used. The forced breathing system supplies fresh air from the thrust wall into the thruster. The pressure histories in the thruster were measured and the propagation velocity of the shock wave and the thrust impulse were deduced. Results show that, although the propagation velocity was identical to the result for the single-pulse operation at the first pulse, the propagation velocity increased after the second pulse. Similarly, the impulse decreased after the second pulse. The dependence of the propagation velocity of the shock wave and the thrust performance on the partial filling rate of the fresh air was compared to that of the thrust generation model with the forced breathing system. The experimental results showed good agreement with those obtained using the model.

37000623
Analytical study of the effect of excessive loading on welding residual stress and crack growth near piping welds
勝山 仁哉; 鬼沢 邦雄
Journal of Solid Mechanics and Materials Engineering (Internet) 3(3), p.563-571(2009) ; (JAEA-J 05649)
 配管溶接部における応力腐食割れ(SCC)において最も重要な因子の一つである板厚内部の溶接残留応力分布に関して、過大荷重の影響について解析的な検討を行った。解析は汎用有限要素解析コードABAQUSを用い、軸対称熱弾塑性解析により評価を行った。配管突合せ溶接継手に対する溶接シミュレーションを行った後、軸方向のさまざまな強制変位を与えることにより、過大な荷重を模擬した。解析の結果、高い荷重ほど溶接残留応力の緩和が顕著となることが明らかとなった。また、溶接残留応力の緩和の影響により、SCC進展は抑制されることがわかった。

37000624
Does Gd@C82 have an anomalous endohedral structure? Synthesis and single crystal X-ray structure of the carbene adduct
赤阪 健*; 河野 孝佳*; 竹松 裕司*; 二川 秀史*; 仲程 司*; 若原 孝次*; 石塚 みどり*; 土屋 敬広*; 前田 優*; Liu, M. T. H.*; 与座 健治*; 加藤 立久*; 山本 和典; 溝呂木 直美*; Slanina, Z.*; 永瀬 茂*
Journal of the American Chemical Society 130(39), p.12840-12841(2008) ; (JAEA-J 05651)
 Gd@C82のcarbene付加体(Gd@C82(ad), Ad=adamantylidene)の単結晶を用いたX線結晶構造解析について報告する。Gd@C82(ad)におけるGd原子は、C2v-C82フラーレンケージの中心から六員環方向に接近した場所に位置しており、この位置はM@C82(M=Sc and La)やLa@C82(Ad)で確認されている金属原子の位置とほぼ等しいことがわかった。理論計算の結果からも、X線結晶構造解析の結果を支持する結果が得られた。

37000625
Resonant magnetic X-ray diffraction study on successive metamagnetic transitions in TbB4
稲見 俊哉; 大和田 謙二; 松田 康弘*; Ouyang, Z. W.*; 野尻 浩之*; 松村 武*; 奥山 大輔*; 村上 洋一*
Journal of the Physical Society of Japan 78(3), p.033707_1-033707_4(2009) ; (JAEA-J 05652)
 Resonant magnetic X-ray diffraction experiments on the Shastry-Sutherland lattice TbB4 were carried out under pulsed magnetic fields up to 30 T at 8 K. TbB4 exhibits a multi-step magnetization process above 16 T below about 20 K when magnetic fields are applied along the c-axis. We examined the intensity of the 010 magnetic reflection as a function of magnetic field and found that the magnetization plateau phases are accompanied by large XY components of magnetic moments. We propose novel magnetic structures which consist of XY spins and Ising spins for the plateau phases. We also propose that energy level-crossing and its inherent degeneracy give rise to the successive met magnetic transitions in TbB4.

37000626
Perturbation theory of high-Tc superconductivity in iron pnictides
野村 拓司
Journal of the Physical Society of Japan 78(3), p.034716_1-034716_12(2009) ; (JAEA-J 05653)
 最近鉄ニクタイドで発見された高温超伝導を摂動論の範囲で解析する。具体的には、現実的な電子構造を有する多バンド(2バンドと5バンド)ハバード模型を用いてエリアッシュベルグ方程式を解き、超伝導対対称性,転移温度のドーピング依存性,対形成機構などを調べる。有効対相互作用はオンサイトのクーロン相互作用について3次まで摂動展開して求める。摂動論による弱結合理論によって次のことが示される。5バンドの計算では、現実的なクーロン相互作用の強さの範囲で実際の高い転移温度が説明できる。こうして、非従来型(格子振動媒介型ではない)超伝導が実現している可能性が高い。超伝導の秩序変数はフェルミ面上では符号を変えないが、フェルミ面間では符号を変える。結果として、超伝導対対称性はすべてのパラメータ域で、ノードのない拡張型s波(より正確にはs±波)である。2バンドの模型は実際の高い転移温度を説明するのには不十分である。

37000627
Bulk copper-nanodiamond nanocomposites; Processing and properties
Correia, J, B.*; Livramento, V.*; 正法地 延光*; Tresso, E.*; 山本 和典; 田口 富嗣; 花田 幸太郎*; 大澤 映二*
Materials Science Forum 587-588, p.443-447(2008) ; (JAEA-J 05654)
 調製時及び使用時の環境においてナノ構造が熱的に安定な場合、金属のナノ構造化とナノコンポジット化は、金属の高温での硬度低下問題を解決する方法として有効である。本研究では、5から30atom%のナノダイヤモンドを含む銅コンポジット粉をバルク体に変換する研究を行った。銅-ナノダイヤモンドコンポジット粉末を真空カプセルに封入し、600℃でエクストルージョン処理を行ったところ、コンポジット粉末が示す初期硬度が処理後もほぼ維持されることがわかった。エクストルージョン処理後のサンプルについて透過電子顕微鏡観察を行ったところ、ナノダイヤモンド粒子と銅マトリックスがよく結合していることがわかった。同サンプルのラマン測定を行ったところグラファイトの存在が確認されたが、これはナノダイヤモンドの一部が変質したためと考えられる。

37000628
Mechanisms of neutron irradiation hardening in impurity-doped ferritic alloys
西山 裕孝; Liu, X.*; 亀田 純*
Metallurgical and Materials Transactions A; Physical Metallurgy and Material 39(5), p.1118-1131(2008) ; (JAEA-J 05655)
 Mechanisms of neutron-irradiation hardening in phosphorus (P), sulfur (S) and/or copper (Cu) doped ferritic alloys have been studied by applying a rate theory to temperature dependence of the yield strength. In P-doped alloys, neutron irradiation below 563 K brings about a remarkable increase in the athermal stress and activation energy due to more extensive dispersion of fine (∼1.7 nm) P-rich precipitates than Cu-rich precipitates. During neutron irradiation above 668 K, precipitation hardening occurs to some extent in Cu-doped and S-doped alloys, compared to small or negligible hardening in the P-doped alloys. In alloys with low to moderate contents of various dissolved impurities subjected to the high-temperature irradiation, the formation of kink pairs becomes considerably difficult. Differing dynamic interactions of dissolved and precipitated impurities with the nucleation and growth of dislocations are discussed, giving rise to irradiation hardening.

37000629
Neutron powder diffraction under high pressure at J-PARC
内海 渉; 鍵 裕之*; 小松 一生*; 有馬 寛*; 永井 隆哉*; 奥地 拓生*; 神山 崇*; 上床 美也*; 松林 和幸*; 八木 健彦*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 600(1), p.50-52(2009) ; (JAEA-J 05656)
 高圧をかけると多くの物質がその性質を大きく変える。高圧下の回折実験はそれらの現象を理解するうえで最も基本的な構造に関する情報を与える。J-PARCにおいて高圧下でのその場中性子回折実験が可能になれば、水素を含んだ結晶や軽元素液体などの高圧下での構造に関する優れた研究成果が得られると期待されている。現在検討中の中性子光学系や高圧発生装置について紹介する。

37000630
Development of high-reflectivity neutron supermirrors using an ion beam sputtering technique
丸山 龍治; 山崎 大; 海老澤 徹*; 曽山 和彦
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 600(1), p.68-70(2009) ; (JAEA-J 05657)
 原子力機構では、J-PARCにおける大強度パルス中性子源等で用いられる中性子スーパーミラーガイド等の製造のために、0.2m2(500mmφ)の成膜可能面積を持つイオンビームスパッタ装置を導入し、これを用いた高性能中性子スーパーミラーの開発を行っている。その結果、NiC/Ti多層膜の導入により、Niの3, 4, 6倍の臨界角を持つスーパーミラーで臨界角においてそれぞれ90, 80, 40%の高反射率が実現されたので、その開発方法及び実験結果について報告する。

37000631
Study of the analyzer crystals for use in the near-backscattering spectrometer DNA at J-PARC
高橋 伸明; 柴田 薫; 佐藤 卓*; 川北 至信*; 筑紫 格*; 目時 直人; 中島 健次; 新井 正敏
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 600(1), p.91-93(2009) ; (JAEA-J 05658)
 J-PARC、MLF施設に建設が予定されている飛行時間型結晶アナライザー分光器DNAは、PG(002), Ge(311), Si(111)の3種類の結晶アナライザーを用いてタンパク質などの生化学物質の低エネルギーダイナミクスを高強度,高エネルギー分解能で測定するための中性子非弾性散乱分光器である。高エネルギー分解能を目指すSi(111)は完全結晶を用いるが、PG(002)やGe(311)は、結晶ウエハ中に適当なモザイクを入れて反射強度を増大させる必要がある。われわれは、当該分光器にとって最適な仕様を明らかにするため、さまざまな結晶モザイクを有するPG(002)について、また、ホットプレス(高温高圧処理)により結晶モザイクをコントロールしたGe(311)結晶について、中性子ビーム実験を行った。

37000632
Development on mercury pump for JSNS
粉川 広行; 羽賀 勝洋; 涌井 隆; 二川 正敏
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 600(1), p.97-99(2009) ; (JAEA-J 05659)
 核破砕中性子源の水銀循環設備は、水銀ターゲットに水銀を循環供給し、1MWのパルス陽子ビーム入射によるターゲットでの発熱を除去する。また、各機器は、放射化した水銀を完全に閉じ込める機器とする必要があるため、シール部がない電磁ポンプを採用することとした。しかしながら、電磁ポンプは大型になることから、電磁ポンプの小型化を目的として開発を行った。円筒形の水銀流路の中央に永久磁石を設置し、それを回転させて発生する電磁力によって水銀を駆動する方式とし、磁石回転のためのモーターを熱除去の観点から90kWに制限し、縦置きとすることによって、水銀循環設備に設置可能な大きさとした。また、ポンプの特性に影響する流路形状の最適化を行った。すなわち、電磁ポンプの課題である熱損失を低減するために流路壁を薄肉とする一方で、運転圧力に対して十分な強度を確保できる構造とするとともに、磁場強度分布のために流路中に発生する逆流を抑制できる流路幅を決定した。製作した電磁ポンプを水銀循環設備に設置し、ターゲットの冷却に十分な流量(41m3/h)を実現できることを確認した。

37000633
J-PARC muon control system
髭本 亘; 下村 浩一郎*; 小林 庸男*; 牧村 俊助*; 三宅 康博*; 甲斐 哲也; 酒井 健二
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 600(1), p.179-181(2009) ; (JAEA-J 05660)
 J-PARCミュオン施設(MUSE)において、ミュオン実験機器はミュオンコントロール系により操作される。ミュオンコントロール系は、(1)ミュオン標的系,(2)M1/M2ライン空調機系,(3)超伝導ソレノイド磁石冷凍機系,(4)ミュオン2次ライン真空系,(5)ミュオン2次ライン電磁石,(6)ミュオンビーム部ロッカーと安全機器、から構成される。この詳細を紹介する。

37000634
JAEA-ASRC μSR project at J-PARC MUSE
髭本 亘; Heffner, R. H.; 下村 浩一郎*; 西山 樟生*; 三宅 康博*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 600(1), p.182-184(2009) ; (JAEA-J 05661)
 原子力機構先端基礎研究センターではJ-PARC MLFミュオン科学実験施設において「μSR計画」を進めている。この計画では、ミュオン取り出し部分と分光器を、崩壊表面ミュオンビームラインの支流として設置し、29MeV/cのビームによりミュオンスピン回転・緩和実験を行うことになっている。主たる対象になる科学は強相関電子系、特にf電子系物質の解明であり、この強力なμSR分光器において新たな知見が得られるものと期待する。

37000635
Study of the neutron guide design of the 4SEASONS spectrometer at J-PARC
梶本 亮一; 中島 健次; 中村 充孝; 曽山 和彦; 横尾 哲也*; 及川 健一; 新井 正敏
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 600(1), p.185-188(2009) ; (JAEA-J 05662)
 4SEASONSは大強度陽子加速器施設(J-PARC),物質・生命科学実験施設(MLF)の核破砕中性子研究施設に建設されるチョッパー型非弾性散乱装置の一つである。この装置は300meV以下のエネルギー範囲において高い測定効率を得ることを目的としている。そのためには中性子スーパーミラーによるガイド管を設置することにより試料位置における中性子強度を増強することが不可欠である。しかし、対象とするエネルギー範囲が広いため、単純な形状のガイド管では十分な強度の増強が望めない。そこで、本発表では、4SEASONSにとって最適なガイド管形状について解析的,数値的に検討した結果について報告する。

37000636
Neutron scattering study of the relaxor ferroelectric K1-xLixTaO3
脇本 秀一; Samara, G. A.*; Grubbs, R. K.*; Venturini, E. L.*; Boatner, L. A.*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 600(1), p.254-256(2009) ; (JAEA-J 05663)
 リラクサー強誘電体であるK1-xLixTaO3(x=0.05, 0.10)について中性子散乱実験を行った。x=0.05は低温までリラクサー状態であるのに対し、x=0.10はリラクサー状態から低温で強誘電転移を示す。中性子散乱により強誘電ソフトモードと、分極したナノ領域(polar nano-region PNR)からくる散漫散乱について調べた結果、強誘電ソフトモードは通常の変位型強誘電体に見られるのと同様の振る舞いを示すことがわかった。またPNR内の原子変位は、強誘電ソフトモードの凍結成分と、全原子が均一に変位する成分を含んでいることがわかった。異常の結果は、この系におけるリラクサー的振る舞いには、off-centerの配位をとるLiイオンによる誘電緩和に加え、強誘電ソフトモードの寄与が重要であることを示している。

37000637
Study on effects of swift heavy ion irradiation in cerium dioxide using synchrotron radiation X-ray absorption spectroscopy
大野 裕隆*; 岩瀬 彰宏*; 松村 大樹; 西畑 保雄; 水木 純一郎; 石川 法人; 馬場 祐治; 平尾 法恵; 園田 健*; 木下 幹康
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 266(12-13), p.3013-3017(2008) ; (JAEA-J 05664)
 200MeV Xeイオンを照射したCeO2における照射損傷を広域X線吸収微細構造(EXAFS)測定及びX線光電子分光(XPS)測定により評価した。その結果、照射後にCeの周りの酸素欠損が生じていること,Ceの価数が+4から+3に変化していることが明らかになった。

37000638
Split-aperture laser pulse compressor design tolerant to alignment and line-density differences
Rushford, M. C.*; Britten, J.*; Barty, C. P. J.*; 實野 孝久*; 近藤 公伯; 宮永 憲明*; 田中 和夫*; 兒玉 了祐*; Xu, G.*
Optics Letters 33(16), p.1902-1904(2008) ; (JAEA-J 05665)
 チャープパルス増幅(CPA)レーザーの大型化により1パルスあたりに出力されるレーザーエネルギーの向上が著しい。近年の技術では最終段階のパルス圧縮器は回折格子対を用いる必要があり、そのダメージ閾値の要請から回折格子の大型化は避けられず、既に2枚の組合せによるパルス圧縮器がデザインされている。本論文では大阪大学で採用されたダイアモンド型圧縮機のアライメント精度や回折格子線密度の違いに対する許容度について議論している。

37000639
Observation of a plasma waveguide in a preformed plasma pumped by double-pulse laser irradiation for the efficient soft X-ray amplification
河内 哲哉; 長谷川 登; 錦野 将元; 越智 義浩; 佐々木 明
Optics Letters 34(5), p.635-637(2009) ; (JAEA-J 05666)
 モリブデンスラブターゲットにCPAガラスレーザーの2段パルスを照射した。プラズマの状態を調べるためのプローブビームをプラズマコラムの軸方向から入射した。2段目のパルスのピーク時刻から0.8∼1.5ナノ秒遅れた時間帯にプローブビームがプラズマを伝搬することを実験的に見いだした。プローブビームは長さ4.3mmまで伝搬した。流体シミュレーションコードとの比較から、プラズマ中に電子密度勾配の平らな部分もしくは密度窪みが生じていることがわかった。この条件は効率的なX線レーザーの増幅に大変好ましい条件であり、シードX線とX線増幅器を組合せた最新のX線増幅法の効率化にとって大変重要である。

37000640
Phase competitions and coexistences in quasi-one-dimensional molecular conductors; Exact diagonalization study
大塚 雄一*; 妹尾 仁嗣; 求 幸年*; 加藤 岳生*
Physica B; Condensed Matter 404(3-4), p.479-481(2009) ; (JAEA-J 05667)
 1/4充填の分子性導体に対する擬1次元電格子結合モデルの基底状態の性質を調べた。鎖間平均場近似により格子自由度と結合した有効1次元拡張ハバードモデルを導出し、ランチョス厳密対角化法によって解いた。その結果、格子4量体化を起こしたさまざまな電子格子秩序パターンの間の臨界的性質が、鎖間クーロン斥力,格子の非調和性、そして内因的2量体化の度合いによって敏感に変わることがわかった。

37000641
31P-NMR study of hyperfine interactions and magnetic fluctuations in the neptunium-based filled skutterudite NpFe4P12
徳永 陽; 神戸 振作; 酒井 宏典; 中堂 博之; 松田 達磨; 芳賀 芳範; 安岡 弘志; 青木 大*; 本間 佳哉*; 塩川 佳伸*; 大貫 惇睦
Physical Review B 79(5), p.054420_1-054420_7(2009) ; (JAEA-J 05668)
 ネプツニウム系充填スクッテルダイト化合物NpFe4P12の単結晶を用いて31P-NMR測定を行った。NMRスペクトルの角度依存性からPサイトにおける超微細相互作用を見積り、P-3p軌道の局所スピン密度を評価した。その結果、軌道の混成効果により、主としてNpの5f軌道からNpイオン方向に伸びたPの3p軌道へスピンモーメントの移行が生じていることがわかった。しかしその程度は通常の金属よりも十分に小さく、5f電子はこの系では局在的な性質を持つことが明らかになった。われわれはさらにスピン-格子緩和時間の測定から、磁場によりNp 5f電子のスピン揺らぎが強く抑制されることを見いだした。このことはこの系の大きな負の磁気抵抗効果の起源が、スピン揺らぎに伴う電子散乱効果の減少にあることを示している。

37000642
Crossover from the quantum critical to overdamped regime in the heavy-fermion system USn3
神戸 振作; 酒井 宏典; 徳永 陽; 松田 達磨; 芳賀 芳範; 中堂 博之; Walstedt, R. E.*
Physical Review Letters 102(3), p.037208_1-037208_4(2009) ; (JAEA-J 05670)
 119Snのスピンエコー減衰率1/T2Gを重い電子系USn3で測定した。磁気相関長は100K以上でT-3/4に比例することがわかった。これは量子臨界領域に期待される値である。30K以下の重い電子系状態では、スピン格子緩和時間T1とあわせてT1T/T2G2が一定になることを明らかにした。これはUSn3の重い電子系状態が動的臨界指数z=2となるオーバーダンプト領域に対応することを意味する。これらの結果からこの系の量子臨界点がスピン密度波によるものであることを結論した。

37000643
Superthermal and efficient-heating modes in the interaction of a cone target with ultraintense laser light
中村 浩隆*; Chrisman, B.*; 谷本 壮*; Borghesi, M.*; 近藤 公伯; 中堤 基彰*; 乗松 孝好*; 反保 元伸; 田中 和夫*; 薮内 俊毅*; 千徳 靖彦*; 兒玉 了祐*
Physical Review Letters 102(4), p.045009_1-045009_4(2009) ; (JAEA-J 05671)
 コーンターゲットと超高強度レーザーの相互作用に関し、コーン中のフォーカス位置を変えて観測した。コーン先端に集光した場合は発生電子の温度は高々1MeV程度だったが、コーン先端からわずかにずらして集光することで10MeV以上の高温電子の発生が認められた。効率の良い加熱はコーン先端に設けたプラスチックワイヤーからの中性子発生によっても確かめられた。

37000644
Fluence-to-dose conversion coefficients for neutrons and protons calculated using the PHITS code and ICRP/ICRU adult reference computational phantoms
佐藤 達彦; 遠藤 章; Zankl, M.*; Petoussi-Henss, N.*; 仁井田 浩二*
Physics in Medicine and Biology 54(7), p.1997-2014(2009) ; (JAEA-J 05672)
 原子炉・加速器施設の作業員や航空機乗務員の被ばく線量を評価するためには、フルエンスから実効線量への換算係数が不可欠となる。国際放射線防護委員会(ICRP)は、その2007年勧告で、最新の科学的知見に基づき実効線量の定義を変更した。これに伴い、フルエンスから実効線量への換算係数の計算が新たに必要となった。そこで、われわれは、ICRP第2専門委員会の協力の下、放射線輸送計算コードPHITSとICRP/ICRU標準人体模型を組合せ、熱エネルギーから100GeVまでの中性子・陽子に対する実効線量換算係数を計算した。また、PHITSのマイクドジメトリ量に対する計算機能を活用し、2種類の線質係数を用いた実効線量当量に対する換算係数も計算した。これらの成果は、ICRP2007年勧告に基づく放射線防護体系の確立のみならず、宇宙空間や医療被ばくなどにおいてより洗練された放射線防護体系を構築するうえで極めて重要となる。

37000645
Control of energy distribution of the proton beam with an oblique incidence of the laser pulse
守田 利昌; Bulanov, S. V.; Esirkepov, T. Z.; Koga, J. K.; 山極 満
Physics of Plasmas 16(3), p.033111_1-033111_7(2009) ; (JAEA-J 05673)
 ダブルレイヤーターゲットを用いた斜め入射レーザーによるプロトン加速を、3次元PICシミュレーションにより解析した。生成されるプロトンビームのエネルギー広がりは、レーザーの照射位置によって変化し、ある照射位置で最小となることがわかった。これは、生成プロトンビームのエネルギースペクトルをコントロールする手段となる。さらに、プロトン層の大きさと位置を適切に調整することにより、高エネルギーかつエネルギー広がりの小さいプロトンビームが得られることが明らかとなった。

37000646
Spectroscopic measurements of high frequency plasma in supercritical carbon dioxide
前原 常弘*; 川嶋 文人*; 岩前 敦; 向笠 忍*; 竹森 俊彦*; 渡辺 高志*; 黒河 賢哉*; 豊田 洋通*; 野村 信福*
Physics of Plasmas 16(3), p.033503_1-033503_5(2009) ; (JAEA-J 05674)
 Spectroscopic measurements of high frequency (hf) plasma were performed under high pressure conditions (5 and 7 MPa) and supercritical (sc) CO2 conditions (8∼20 MPa). Temperature evaluated from C2 Swan bands (d 3Πg → a 3Πu) increased from 3600 to 4600 K with an increase in pressure. The first observation of broadening and shifting of the O I line profile (3s 5S2o ← 3p 5P3,2,1) of hf plasma under sc CO2 concisions was carried out. However, the origin of broadening and the shifting cannot be understood because the present theory explaining them is not valid for such high pressure conditions.

37000647
Long pulse and high power repetitive operation of the 170 GHz ITER gyrotron
梶原 健; 春日井 敦; 小田 靖久; 高橋 幸司; 小林 則幸*; 坂本 慶司
Plasma and Fusion Research (Internet) 4, p.006_1-006_3(2009) ; (JAEA-J 05675)
 First repetitive operation of a 170 GHz long pulse gyrotron with quasi-CW (400 sec pulse width) and high power is presented. Five hours of repetitive operation with 30 min intervals was successfully achieved without any major problem. During the 5 hours of operation, ∼800 kW output power is maintained, the oscillation efficiency is 35% and the total efficiency including the depressed collector is 56%. The pressure inside the gyrotron returns to the original level after ∼20 min. The results show the clear prospect for the application of 170 GHz gyrotrons to heating and current drive experiments on ITER.

37000648
Deatermination of the number of OH radicals in EB-irradiated humid gases using oxidation of CO
箱田 照幸; 島田 明彦; 松本 加奈江*; 広田 耕一
Plasma Chemistry and Plasma Processing 29(1), p.69-78(2009) ; (JAEA-J 05676)
 本研究では、水分を含む窒素ガスに、最大10kGyで電子ビーム照射した際に生成するOHラジカルの量を、OHラジカルとCOとの反応により生成するCO2濃度から評価した。OHラジカルは、水分子と窒素ガスの電子ビーム照射により生じる窒素イオンとの反応で生成するため、事前に10kGy以下の線量でOHラジカルの生成に必要な水分濃度や、このOHラジカルの補足に必要なCO濃度を調べた。その結果、水分濃度は6000ppmv以上,CO濃度は2000ppmv以上が必要であることがわかった。この条件でCO2濃度を測定した結果、CO2濃度は線量に対して比例関係があり、この傾きから求めたOHラジカルの生成のG値は4.9であることを明らかにした。

37000649
Preparation of Poly(ether ether ketone)-based polymer electrolytes for fuel cell membranes using grafting technique
長谷川 伸; 鈴木 康之; 前川 康成
Radiation Physics and Chemistry 77(5), p.617-621(2008) ; (JAEA-J 05677)
 ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)基材を用いた導電性高分子膜(PEMs)が、スチレンモノマーをPEEK内に放射線グラフト重合し、グラフト鎖のみに選択的にスルホン化することで調製することができた。スルホン化反応は、PEEK主鎖のフェニレン環存在下、穏やかな反応条件によってグラフトPEEK膜のグラフト鎖のみに進行し、その結果、0.1S/cm以上の導電率を有するPEMを調製することができた。PEEK電解質膜のイオン交換容量(IEC)と導電率は、グラフト率を制御することにより1.2∼2.9mmol/gと0.03∼0.18S/cmの範囲で制御することができた。これらは、放射線グラフト重合を用いたスーパーエンジニアリングプラスティックのPEMへの直接変換の初めての事例である。

37000650
Accurate dose assessment system for an exposed person utilising radiation transport calculation codes in emergency response to a radiological accident
高橋 史明; 重森 祐志*; 関 暁之
Radiation Protection Dosimetry 133(1), p.35-43(2009) ; (JAEA-J 05678)
 放射線輸送計算コードMCNP及びMCNPXコードを用いた放射線事故時の被ばく者の体内線量分布を解析するシステムを開発している。本システムは、輸送計算の「プリプロセッサー部」及び「ポストプロセッサー部」の2つの主要部からなる。「プリプロセッサー部」のプログラムは、事故時の状況及び評価対象とする線量を定義する入力ファイルを作成するのに使用する。「ポストプロセッサー部」について開発したプログラムでは、輸送計算コードの出力ファイルに基づき線量にかかわる情報を効率的に表示する。線量評価システムのすべてのプログラムは、汎用のパーソナルコンピュータで動作し、煩雑な手順を必要せずに被ばく者の線量の状況を正確に提示することができる。本システムの放射線事故に対する適用性は、光子照射場における物理的な人体模型を用いた実験で検証した。その結果、線源,被ばく者及び両者の位置関係を正確にモデル化することにより、本システムは事故時の重度被ばく者の体内,体表面の線量を妥当的に評価できることが確認された。

37000651
Absolute calibration of imaging plate for GeV electrons
中新 信彦*; 近藤 公伯; 薮内 俊毅*; 辻 和樹*; 田中 和夫*; 鈴木 伸介*; 安積 隆夫*; 柳田 謙一*; 花木 博文*; 小林 尚志*; 牧野 和浩*; 山根 誉久*; 宮本 修治*; 堀川 賢*
Review of Scientific Instruments 79(6), p.166102_1-066102_3(2008) ; (JAEA-J 05679)
 高エネルギー電子線の検出器として利用されるイメージングプレートの絶対感度較正を行った。GeV領域に感度較正範囲を広げるべくSPring-8の入射用ライナックを利用した。この結果、従来の100MeVまでの感度が1GeVまで広げられた。

37000652
Single-turn extraction from a K110 AVF cyclotron by flat-top acceleration
倉島 俊; 宮脇 信正; 奥村 進; 石堀 郁夫; 奈良 孝幸; 上松 敬; 吉田 健一; 横田 渉; 中村 義輝*; 荒川 和夫; 福田 光宏*
Review of Scientific Instruments 80(3), p.033302_1-033302_9(2009) ; (JAEA-J 05680)
 原子力機構AVFサイクロトロン(K=110)では、数百MeV級重イオンマイクロビーム形成に必要なビームのエネルギー幅縮小化や、引き出し効率の向上のためにフラットトップ(FT)加速によるシングルターン引き出し技術の開発を行った。フラットトップ電圧波形を発生させるため、電磁場解析コード"MAFIA"を用いて基本波電圧波形に第5高調波を重畳させるコンパクトでエネルギーロスが少ない新たなFT共振器を設計し、基本波共振器に静電的に連結した。このFT共振器の周波数範囲は55-110MHzで、AVFサイクロトロンの全周波数範囲をカバーする。220MeV 12C5+, 260MeV 20Ne7+及び45MeV H+ビームでフラットトップ加速試験を行い、総ターン数が200を越える大型のAVFサイクロトロンでは困難な引き出し領域におけるターンセパレーションを確認することに成功した。この結果、95%以上のビームの引き出し効率を実現した。ビームチョッパーにより1バンチ分の時間幅のビームをサイクロトロンに入射し、引き出されたビームパルスが入射と同じく1バンチのみであり、シングルターン引き出しされていることを確認した。エネルギー分析電磁石を用いたエネルギー幅計測システムにより、エネルギー幅がΔE/E=0.1%からΔE/E=0.05%に縮小したことを確認した。

37000653
Simple model representations of transport in a complex fracture and their effects on long-term predictions
Tsang, C.-F.*; Doughty, C.*; 内田 雅大
Water Resources Research 44(8), p.W08445_1-W08445_13(2008) ; (JAEA-J 05681)
 亀裂中の開口幅の不均質性,亀裂内の小亀裂,断層ガウジ,小亀裂に囲まれたブロック,健岩部などの要素を考慮したモデルを「現実的モデル」として構築し、粒子追跡法を用いて核種移行計算を行い、短期間の原位置トレーサー試験と自然の動水勾配(0.001)下での長期のトレーサーの破過曲線をモデル化し、得られた破過曲線を「真」と仮定した。通常性能評価で用いられる平行平板モデル(単一開口幅で、単一のマトリクスを考慮)と開口幅の不均質性追加したモデルで、自然の動水勾配下でのトレーサーの長期挙動について以下の2つのシミュレーションを行い、「真」の結果と比較した。(1)原位置トレーサー試験の破過曲線に対するフィッティングを行ったモデル,(2)室内実験で得られたパラメータを用いたモデル。その結果、(1)のモデルは「真」の破過曲線に対してピーク時間が10-100倍遅くピーク濃度を1/50-1/300過少評価し非保守的結果が得られた。また、(2)のモデルは「真」の破過曲線に対してピーク時間が1/50早く、ピーク濃度が50倍過大評価され保守的な結果が得られた。これらから、亀裂の内部構造を適切に考慮する必要があることが明らかとなった。

37000654
高レベル放射性廃棄物の地層処分を支える地下研究施設の構築
坂巻 昌工
土木技術 64(4), p.35-42(2009) ; (JAEA-J 05682)
 エネルギー資源に乏しい我が国において継続的にエネルギーを確保していくうえで、核燃料サイクルによる原子力の利用は重要であり、原子力の利用に伴って発生する高レベル放射性廃棄物の処分を着実に進める必要がある。機構では「原子力政策大綱」などに示される役割に基づき、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術の信頼性を高め、地層処分の実施主体が行う処分事業と国による安全規制の双方を支える基盤的な研究開発の一環として実施しており、岐阜県瑞浪市において結晶質岩を、北海道幌延町において堆積岩を対象として二つの深地層の研究施設計画を進めている。両地下研究施設は世界的にも数少ない大深度の地下空間施設であり、本論においては地下研究施設の背景と位置づけ、施設建設の概要を中心に報告した。

37000655
核不拡散にかかわる政策・技術の融合研究を目指して
久野 祐輔; Choi, J.-S.*
エネルギーレビュー 29(4), p.14-15(2009) ; (JAEA-J 05683)
 東京大学大学院GoNERIでは、「技術と社会の調和を図ることができる人材を育成」の一環として、原子力における社会との重要な接点である「核不拡散」をとりあげ研究活動を推進している。我が国は、「原子力ルネッサンスの時代」と叫ばれるなか、今後そのような期待に応えていくために、大学としては、上記ニーズに対応できる素養を持つ人材を育成していくこと、すなわち原子力政策・技術及び核不拡散に精通し、かつ国際的な場において議論をリードできるような人材を育成していくことが重要な役割と考える。また、大学ならではの議論・研究を行い、その成果を提言として社会に発信していくことが重要と考える。大学における同分野の研究は、これまで核軍縮を含めた「政策」に特化したものが主流であったが、我が国が推進する原子力平和利用における「核不拡散」は、本来、頑強な技術的背景に支えられるべきものと考える。本原稿では、このような観点から東京大学原子力国際専攻が取り組む教育について報告する。

37000656
耐放射線性ケーブル
右近 誠一*; 石田 克義*; 高野 一彦*; 古郡 永喜*; 草野 譲一*
フジクラ技報 3(115), p.26-30(2008) ; (JAEA-J 05684)
 一般的に原子力関連の施設の放射線環境下で使用されるケーブルは放射線によるケーブル被覆材料の劣化が起こり、被覆材料の欠落による絶縁効果をはじめとするケーブル保護機能の低下や難燃性の低下による火災時の延焼等の恐れがある。そのため放射線環境に晒されるケーブルは、定期的に交換し機能を維持・管理する必要がある。著者ら開発グループは、日本原子力研究開発機構殿と共同研究契約を締結して原子力関連施設で用いるケーブルの長寿命化の検討を行った。その結果、光安定剤と紫外線吸収剤を組合せて照射後の機械特性及び難燃性を改善した耐放射線性に優れた材料を開発した。現用のノンハロゲン難燃シースは積算吸収線量0.5MGyの照射により著しい機械特性の低下が生じた。これに対して、開発した耐放射線性シースではその5倍以上の2.5MGy照射後においても自己径曲げに相当する破断伸び50%以上を維持した。さらにこのシースを被覆したケーブルは2.5MGy照射後の4倍径曲げ試験及びJIS C 3521垂直トレイ燃焼試験に合格しすべての開発目標を達成した。

37000657
核燃料サイクル国際化及び地域管理に関する考え方; なぜ、核燃料サイクルの国際化なのか
Choi, J.-S.*; 久野 祐輔
原子力eye 55(5), p.59-63(2009) ; (JAEA-J 05685)
 近年の世界的な原子力への興味の拡大や、今後の原子力発電建設需要の顕著な伸びに従い、同時に核不拡散への懸念も増大しつつある。燃料調達にかかわる濃縮技術拡散への懸念がさしあたっての問題とされている。しかし、使用済燃料が世界各地で蓄積していくという状況を考えた場合、その処理の問題・安全管理問題とともにそれに内蔵するプルトニウムに関する保障措置・セキュリテイについても、無視できない重要な課題になるものと思われる。経済的かつ効率的で、しかも透明性の向上により、上記課題に対し国際的コンセンサスが得られやすい方向として「国際管理・多国間管理」がクローズアップされてきたものと認識する。本稿では、核燃料サイクルの国際化及びそれに関係する過去の議論の推移を紹介するとともに、今後の方向性について併せて議論する。

37000658
国際原子力情報システム(INIS)データベース無料提供の開始について
大島 健志
Isotope News (660), p.18-19(2009) ; (JAEA-J 05686)
 国際原子力機関(IAEA)は、世界各国の原子力関連文献情報を収録するデータベースである国際原子力情報システム(INIS:International Nuclear Information System,イニス)のオープンアクセス・パイロットプロジェクトを2008年10月から開始した。日本も2008年12月から、本プロジェクトへの参加が認められ、日本国内からはユーザー登録を行うことにより、無料でインターネット版INISデータベースを利用できるようになった。本稿では、INISデータベースとパイロットプロジェクトの概要について紹介している。

37000659
J-PARC MLFのビームコミッショニング
明午 伸一郎
加速器 5(4), p.327-336(2009) ; (JAEA-J 05687)
 J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)にビーム入射を開始した。モニター及び電磁石の調整は順調に行うことができ、わずか一発のビームで中性子ターゲットに輸送することに成功した。また、核破砕中性子源から生成する中性子をわずか一発のビームで確認することに成功し、ほぼ設計通りの中性子ビームを得ることに成功した。さらにミュオンビーム生成も確認され、MLFとしてユーザーにビームを供給する基礎がほぼ設計通りになっていることが確認された。平成20年12月からビームの供用運転を開始し、物質及び生命に関する様々な実験が開始される。

37000660
空中レーザー計測による活断層変位地形の把握と変位量復元の試み
中田 高*; 隈元 崇*; 奥村 晃史*; 後藤 秀昭*; 熊原 康博*; 野原 壯; 里 優*; 岩永 昇二*
活断層研究 (29), p.1-13(2008) ; (JAEA-J 05688)
 活断層に沿った変位量分布の情報は、活断層の空間的な分布や、地下の断層面のアスペリティの偏在を理解するための基礎的情報であり、多くの研究者による精力的な調査・研究が行われている。これまで、このような情報は空中写真判読や地上での測量などにより情報を得ていた。しかし、空中写真判読は、使用する写真や判読者により地域差や個人差が生じる問題がある。また、空中写真判読や測量には多大な労力と時間がかかる。一方、日本のように植生に覆われる斜面や家屋が密集する市街地が広く分布する地域では、空中写真判読や、地形測量の実施が困難な場合が少なくない。本研究では、植生等の影響が少ない地域で実施されている空中からのレーザー計測の国内での適用可能性を検討するため、横手盆地東縁の千屋丘陵周辺と阿寺断層沿いにおいて、独自に空中レーザー計測を実施し、そのデータを用いて三次元画像化による断層変位地形の把握と、断層変位量計測の手法的検討を行った。その結果、国内の活断層での空中レーザー計測により、断層変位地形や断層変位量の広域的な情報を効率的に取得できることがわかった。

37000661
世界最強パルス中性子施設J-PARCの稼動開始
新井 正敏
高圧力の科学と技術 19(1), p.4-9(2009) ; (JAEA-J 05689)
 建設開始の2001年以来7年の建設期が漸く収束へと向かおうとしている。世界最強となるJ-PARC・パルス中性子源(仮称JSNS)が利用者に扉を開く時期が迫っている。2007年1月に線形加速器が驚くほどの早さで陽子ビームの加速に成功して以来、同年10月の3GeV周回達成、そして、今年5月には陽子受け入れ準備ができた物質生命科学実験施設で初めての中性子の発生に成功した。その後、さらなる加速器の調整が進み、この9月には220kWに相当する陽子の加速に成功した。この瞬間、我が国のパルス中性子が世界トップの性能を持つことが実証された。現在においても加速器,中性子源の試験運転・調整(コミッショニング)が進められており、利用者が利用できる12月には、相当の研究の開始が期待されている。J-PARCの完成により、高圧化の中性子散乱の真価が問える時代が漸く到来したといってよい。今回は、J-PARC中性子源の重要な性能,中性子実験装置の基本的理念,JSNSの装置と高圧下中性子実験等について解説する。

37000662
スペクトル干渉法によるフェムト秒生成プラズマの計測
近藤 公伯
光学 37(11), p.648-650(2008) ; (JAEA-J 05690)
 超高速光技術の進歩により、10フェムト秒を切る光パルスを利用できるようになった。このような技術をプラズマ診断に利用することにより電子プラズマ波の超高速ダイナミクスを観測することもできるであろう。本論文では周波数領域干渉法による電子プラズマ波の観測について紹介する。

37000663
気液界面上において圧力と表面張力の力学的釣合い条件を完全に満足する高精度数値解析手法の非構造格子系における定式化
伊藤 啓; 功刀 資彰*; 大島 宏之
混相流 23(1), p.77-84(2009) ; (JAEA-J 05691)
 複雑な気液二相流現象を評価するために気液二相流数値解析が用いられており、著者らもガス巻込み現象への解析適用性を研究している。そのために、著者らはガス巻込み現象を直接計算できる高精度気液二相流数値解析手法の開発を行っている。その際、ガス巻込み現象は局所体系形状依存性が強いため、複雑形状模擬性に優れる非構造格子を採用している。さらに、気液界面における力学的不釣合いが非物理的挙動を引き起こすことに注目し、本研究では、非構造格子系において圧力と表面張力の力学的釣合い条件を厳密に満足する定式化を行った。本定式化においては、界面における圧力のジャンプ条件と整合する形式で、ラプラスの式に基づく表面著力ポテンシャルを導入した。液中気泡を対象とした検証解析によって、本定式化が非物理的挙動の発生を完全に抑制できることを示した。

37000664
微細規模大気流れの気象モデルとCFDモデルの融合解析
竹見 哲也*; 中山 浩成
ながれ 28(1), p.13-20(2009) ; (JAEA-J 05692)
 本稿では、気象モデルの高解像度化による気象擾乱の微細構造に起因する風速変動の再現性,CFDモデルによる現実的な粗度形態のもとで発達する境界層乱流のLES(Large-Eddy Simulation)解析について、両モデルの融合による微細規模大気流れのシミュレーションにあたり、検討すべき課題と展望について述べる。

37000665
高温粒子表面上の蒸気膜崩壊時における微視的界面挙動に関する研究
阿部 豊*; 栃尾 大輔
日本原子力学会和文論文誌 8(1), p.11-18(2009) ; (JAEA-J 05693)
 蒸気爆発の発生には、粗混合した高温液滴表面の蒸気膜崩壊が必要であるとされており、蒸気爆発の発生には蒸気膜崩壊の微視的挙動が重要となる。蒸気膜の崩壊挙動周囲流体の流動より相変化が支配的となることが従来の研究で示唆されている。本研究では、蒸気膜崩壊時の気液界面の微視的挙動について実験的に観察を行うとともに、定量的に評価を行った。また、熱伝導解析及び可視観測データ処理技術により界面温度と界面の動きについて解析的に評価を行った。その結果、圧力パルス到来時に気液界面にて凝縮が起きている可能性が示された。すなわち、蒸気膜の崩壊挙動は周囲流体の流動よりむしろ相変化が支配的となることが示された。

37000666
複数周方向表面欠陥を有する管の曲げ破壊評価式
Li, Y.*; 杉野 英治*; 長谷川 邦夫*; 鬼沢 邦雄; 土居 博昭*; 蛯沢 勝三*
日本機械学会論文集,A 75(749), p.56-63(2009) ; (JAEA-J 05694)
 供用期間中検査においてステンレス鋼配管に欠陥が検出された場合、その配管の健全性を評価するため、日本機械学会維持規格や米国機械学会ボイラー・圧力容器コードに規定されている極限荷重評価法が適用される。しかしながら、応力腐食割れの場合等には複数欠陥が同一平面に検出されているにもかかわらず、現行の規格においては、単一欠陥に対する極限荷重評価法の評価式のみが規定されている。本論文では、合理的な方法で配管の健全性を評価するため、任意の数と分布を有する独立した欠陥が配管内表面に存在する場合の極限荷重評価式を提案する。この評価式の妥当性を確認するため、さまざまなケースについて数値計算を行い、評価式の有効性を確認した。

37000667
レーザを用いた高速炉プラントの高感度ナトリウム漏えい検知技術の開発(Naの原子化及び共鳴イオン化試験とNa検出システムの設計)
青山 卓史; 伊藤 主税; 岡崎 幸基*; 原野 英樹*; 渡辺 賢一*; 井口 哲夫*
日本機械学会論文集,B 75(751), p.468-470(2009) ; (JAEA-J 05695)
 高速炉におけるNa漏えいの検出感度向上を目的として、レーザ共鳴イオン化質量分析法(RIMS)を用いたNa漏えい検知技術を開発している。この手法は、1次冷却材に含まれる放射化Naを安定同位体と区別して検出できる特長を有する。RIMSを適用したNa検出プロセスについて有力な手法を選択し、Na検出システムの基本構成を検討した。また、NaエアロゾルをRIMSで検出する際に基礎プロセスとなるNaエアロゾルの単原子化及びNa原子のレーザ共鳴イオン化について、基礎データを取得し、上記Na検出システムの設計に反映した。

37000668
The JT-60SA cryoplant current design status
Henry, D.*; Michel, F.*; Roussel, P.*; Reynaud, P.*; Journeaux, J. Y.*; Maréchal, J. L.*; Balaguer, D.*; Roux, C.*; 松川 誠; 吉田 清
AIP Conference Proceedings 985 , p.445-452(2008) ; (JAEA-J 05697)
 幅広いアプローチ活動のフレームの下で建設する、サテライトトカマクJT-60SA用のクライオプラントを、2014年の運転開始に向けてCEA(フランス)が調達する。JT-60SAの概念設計報告書によれば、保守や改造のためのシャットダウンを除いて、年間少なくも6か月の運転が予定されている。JT-60SAの運転シナリオでは、クライオプラント及び冷媒分配システムは、装置の異なる運転状態に対応する必要がある。クライオプラントはおもに4.5KのHe冷凍機と80Kのガス循環ループからなり、それぞれは液体窒素のプリクーラを有している。これらは、超伝導コイルや80Kサーマルシールド、及びダイバータ用のクライオパネルの入熱を同時に除去しなくてはならない。本文では、まずプロセスフロー図と最新のクライオプラントの設計現状について述べる。続いて、通常運転モードとダイバータクライオパネルの再生運転について言及する。

37000669
X-ray devices and the possibility of applying nanophotonics
小池 雅人; 宮内 真二*; 佐野 一雄*; 今園 孝志
Nanophotonics and Nanofabrication , p.179-191(2009) ; (JAEA-J 05698)
 光学近接場技術に基づいた新しいリソグラフィーを用いて製作したラミナー型回折格子の表面にMo/SiO2多層膜を蒸着して7600本/mmの多層膜回折格子を製作した。0.7∼2.0nmの波長範囲で回折効率を放射光施設で測定した。その結果、溝深さ3nm,多層膜周期5.33nmの多層膜回折格子は0.70nm(1.77keV),入射角88.020度で0.032, 1.19nm(1.04keV)入射角85.230度で0.016の回折効率を示した。また、実験的,理論的な回折効率の差をDebye-Waller因子により解析を行った。

37000670
化学的不純物アクティブ制御による原子炉材料長寿命化の研究開発
坂場 成昭
第3回原子力システム研究開発事業平成20年度成果報告会資料集(CD-ROM) , 2p.(2009) ; (JAEA-J 05699)
 文部科学省受託事業である「化学的不純物アクティブ制御による原子炉材料長寿命化の研究開発」における平成18年度から平成20年度の成果について報告する。主な成果は以下のとおりである。(1)化学組成の制限値及び制御アルゴリズムを提案した。(2)提案する組成を逸脱した場合には、一酸化炭素濃度を高く保つことが重要であることを見いだし、10ppmの一酸化炭素注入により効果的に安定領域に導けることを明らかにした。(3)ハステロイXRの腐食試験により提案した制御領域が将来ヘリウムガス炉において制御すべき領域として適切であることが示唆された。今後は、注入による副作用の検討,設備の簡素化の検討により全体をまとめる計画である。本事業終了後の展開としては、不純物組成を適切に制御することによるIHX伝熱管の長期健全性維持を検証するため、クリープ試験により材料健全性を確認するとともに予寿命評価手法を構築し、化学的不純物制御の観点から将来ヘリウムガス炉の経済性向上を実証していきたい。

37000671
リン酸塩系ガラス
天本 一平
ガラスの加工技術と製品応用 , p.10-20(2009) ; (JAEA-J 05700)
 リン酸塩系ガラスは、耐水性に問題があるが、さまざまな分野で使用可能なガラスである。例えば、線量計材料,燃料電池用隔膜,磁性ガラス,生体関連材料としての用途がある。リン酸塩ガラスの耐水性を改善するためには、網目修飾酸化物,網目形成酸化物、及び・又は中間酸化物を適切に添加することにより達成できる。原子力分野において、核分裂生成物(FP)等の高レベル放射性物質を安定化するための材料として鉄リン酸ガラスが開発されており、このガラスはホウケイ酸ガラスと同程度の物性値を示し、かつ粘性やFP充填率等の点では、ホウケイ酸ガラスよりも優れている。このようにリン酸塩ガラスは、開発次第で用途が広がる材料である。

37000672
海水からのウラン回収技術
玉田 正男
図解,最先端イオン交換技術のすべて , p.132-135(2009) ; (JAEA-J 05702)
 海水1トンには、3.3mgのウランが溶けている。その総量は45億トンであり、世界の原子力発電所で1年間に消費されているウランの60,000倍に匹敵する。海水ウランを捕集する強度の高いウラン捕集材を放射線グラフト重合法により合成に成功した。得られたウラン捕集材はむつ沖合及び沖縄海域で性能評価が行われた。むつ海域では、布状の捕集材を沈めて、3年間で12回の海水ウランの捕集実験を行い、1kgのウラン(イエローケーキ換算)を捕集することに成功した。ウラン捕集のコスト低減化が課題となったため、沖縄では、形状を改良したモール状捕集材が使用され、30日で1.5g-U/(kg-捕集材)の性能が達成された。年間1200トンのウランを捕集するためには、60mの長さのモール状捕集材を海中に167万本係留する必要がある。沖縄海域で行ったウラン捕集試験では4g-U/kg-捕集材の性能が達成できる見込みがあるため、現状で到達可能性の高い回収コストは25千円/kg-Uとなる。

37000673
On-line evaluation of spatial dose-distribution by using a 15m-long plastic scintillation-fiber
納冨 昭弘*; 杉浦 紳之*; 伊藤 哲夫*; 今道 祥二*; 鳥居 建男; 野間 宏*
KEK Proceedings 2008-14 , p.11-19(2009) ; (JAEA-J 05708)
 長さ15mのプラスチック・シンチレーションファイバー(PSF)を用いて、低出力研究炉(近畿大学炉)の炉室内での放射線量率の空間分布の実時間測定を行った。PSF検出器は放射線の実時間測定に簡便かつ迅速に測定が可能であることがわかった。また、RIを用いるような医学利用にも有効であると考えられる。しかし、現段階では、利用可能な長さは15m程度までと考えられる。

37000674
HTTR第2次燃料体組立の作業実績
富本 浩; 梅田 政幸; 西原 哲夫; 伊与久 達夫
UTNL-R-0471 , p.11_1-11_9(2009) ; (JAEA-J 05715)
 高温工学試験研究炉(HTTR)は、1998年に初装荷燃料を装荷し、初臨界を達成してから、10年が過ぎ、現在も初装荷燃料にて運転を継続中である。HTTRの炉心は、U濃縮度が異なる12種類の燃料体を半径方向及び軸方向に分布させて構成している。組立てる燃料棒の総本数が4770本と数が多いため、燃料棒の取り違い等の誤装荷防止について設計上、考慮されているが、さらに確実な取扱いができるようにあらかじめ作業上の誤装荷対策を検討した。作業は、2008年6月から燃料棒を原子炉建家内に受入れ、組立を開始し、新燃料貯蔵ラックに貯蔵した後、使用前検査を受検し9月に作業を完了した。その後11月に使用前検査合格証を受けた。本報告は第2次燃料体の組立,貯蔵作業における燃料取扱いについてまとめたものである。

37000675
ベリリウム製中性子反射体の製作と管理
塙 善雄; 田口 剛俊; 北岸 茂; 坪井 一明; 土谷 邦彦
UTNL-R-0471 , p.5_2_1-5_2_8(2009) ; (JAEA-J 05716)
 原子力機構の材料試験炉(JMTR)には、中性子反射体としてベリリウム枠(以下、「Be枠」という。)が装荷されている。このBe枠は、東枠,西枠及び北枠からなり、それぞれ垂直方向に7段に積まれ、ベリリウム反射体要素と組合せて燃料領域で発生する中性子を効果的に反射・減速するためのものである。一方、Be枠は、その燃料領域側と反射体領域側及び垂直方向の高速中性子の照射量に差が生じる。このため、内部に蓄積するヘリウムによるスエリングが不均一となり変形(燃料領域側に湾曲)が進み、やがてBe枠照射孔内に装荷されたキャプセルの冷却条件の悪化と各炉心要素のハンドリングに支障をきたすことになる。これらの悪影響を未然に防ぐため、Be枠の変形(曲がり)量を定期的に測定し、交換時期(以下、「寿命」という)の把握に努めている。Be枠の交換は、JMTRの運転開始から5回行われた。交換作業は、1か月以上の期間を要するため、JMTRの運転計画と寿命とを勘案しながら定期自主検査期間内に交換作業を実施している。なお、交換後の照射済Be枠は、廃棄処理が難しく、JMTRカナル内で水中保管されているのが現状である。本報告は、JMTRで実使用されているBe枠の製作,交換作業,管理及び長寿命化と使用済Be再処理に関する技術開発の課題についてまとめたものである。

37000676
使用済イオン交換樹脂の処理に関する検討
木村 正; 出雲 寛互; 長尾 美春; 河村 弘
UTNL-R-0471 , p.5_3_1-5_3_10(2009) ; (JAEA-J 05717)
 JMTR原子炉施設においては、原子炉の一次冷却水及びプール・カナル水の精製にイオン交換樹脂を使用している。冷却水の精製に用いた使用済イオン交換樹脂は、JMTR原子炉施設内の廃液貯槽に貯蔵しており、その貯蔵量はJMTRの運転に伴い増加している状況にある。これまで、JMTR原子炉施設内の放射性廃棄物の管理の観点から、使用済イオン交換樹脂の処理方法等を検討してきたが、その集中処理施設が国内には存在しておらず、使用済イオン交換樹脂の処理,減容等がほとんどできないのが現状である。一方、海外では原子力発電所の使用済イオン交換樹脂を受け入れて、集中的に処理する施設が存在する。例えば、米国ではスタズビック処理施設(Studsvik Processing Facility)があり、合理的かつ合法的に使用済イオン交換樹脂が処理されている。本報告は、JMTR原子炉施設内に貯蔵している使用済イオン交換樹脂を、スタズビック処理施設で委託処理する場合の処理方法について調査し、技術的,法的及び社会的観点から問題点を抽出して、海外委託処理の実現性について検討したものである。

37000677
照射後試験技術の現状
米川 実; 相沢 静男; 近江 正男; 中川 哲也
UTNL-R-0471 , p.5_6_1-5_6_7(2009) ; (JAEA-J 05718)
 JMTRや試験研究炉で中性子照射された原子炉燃料試料及び材料試料を試験するために、ホットラボで開発・整備された照射後試験装置の現状について紹介するものである。燃料試料の照射後試験技術では、(1)燃料ふるまいを明らかにするための熱電対再計装技術,(2)渦流探傷法による酸化膜厚さ測定,(3)燃料棒の寸法測定について報告する。また、材料試料の照射後試験技術では、(4)非接触で高精度の歪測定が可能なレーザマイクロゲージを採用した低サイクル疲労試験,(5)TIGによる非照射材-照射試験片の溶接及び試験片加工技術,(6)照射誘起応力腐食割れの機構解明に向けた試験について報告する。

37000678
IASCC挙動解明のための照射後試験技術
田口 剛俊; 加藤 佳明; 高田 文樹; 近江 正男; 中川 哲也
UTNL-R-0471 , p.5_7_1-5_7_8(2009) ; (JAEA-J 05719)
 軽水炉の高経年化に伴い、顕在化する可能性のある照射誘起応力腐食割れ(IASCC)に関して、正確な挙動予測及び有効な対策技術の開発が確立していないため、IASCCの発生進展機構の究明を始めた。その一環として、これまでは実施されなかった中性子照射され高放射化した構造材の結晶方位解析を可能とした遠隔操作型結晶方位解析装置の整備及びデータ解析ソフトウェアの開発を行い、ホットセル内に装置を設置した。本報告は当該解析装置に供する試験試料の遠隔操作による最適な試料調製技術についてまとめたものである。これら解析装置の技術開発により、き裂が進展した粒界の粒界性格やき裂周辺の変形挙動を調べることが可能となり、軽水炉構造材料の高経年化対策におけるメカニズム解明に大きな貢献が期待できるとともに高速炉及び次世代炉の炉内構造物の劣化損傷現象をミクロな変形挙動の観点から機構論的に解明するための不可欠なツールとして期待できる。

37000679
JRR-3プロセス制御計算機の更新
諏訪 昌幸; 井坂 浩二; 大内 諭; 照沼 憲明
UTNL-R-0471 , p.12_1_1-12_1_8(2009) ; (JAEA-J 05720)
 JRR-3プロセス制御計算機は、原子炉本体施設全般のプロセス量の監視・制御を行う設備である、設置以来15年以上が経過しているためJRR-3管理課では原子炉の安全安定運転を確保するために、最新システムに3段階に分けて更新を行っている。この研究会において、更新計画及び1段階目の更新について報告をしているので、今回は、2段階目の更新について報告を行う。本報告については、前年度行ったフィールドコントロールステーション制御部とバスラインなどの更新について報告する。

37000680
安全計ゲイン調整用ポテンショメーター故障について
仁尾 大資; 池亀 吉則; 車田 修
UTNL-R-0471 , p.12_2_1-12_2_8(2009) ; (JAEA-J 05721)
 研究炉JRR-3において平成20年12月1日に原子炉の緊急停止(スクラム)が発生した。その原因は安全計(中性子束を監視している系統)を構成している線形増幅器のポテンショメーターであると同定した。研究会ではポテンショメーター本体及びその使用法について、今後の対策を含め議論する。

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