学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2009年6月


37000688
Microstructure formation and in situ phase identification from undercooled Co-61.8 at.% Si melts solidified on an electromagnetic levitator and an electrostatic levitator
Li, M.*; 長汐 晃輔*; 石川 毅彦*; 水野 章敏*; 安達 正芳*; 渡辺 匡人*; 依田 眞一*; 栗林 一彦*; 片山 芳則
Acta Materialia 56(11), p.2514-2525(2008) ; (JAEA-J 05722)
 Co-61.8at.%Si(CoSe-CoSi2)共晶合金を電磁浮遊装置(EML)及び静電浮遊装置(ESL)を用いて、異なった過冷却度において固化された。低い過冷却度では、装置がEMLかESLかによらず、CoSi金属間化合物を初晶とする単一のリカレッセンスが起きた。しかし、微細構造は強く装置に依存した。高い過冷却度では、装置によらず、2回のリカレッセンスが起きた。EMLを用いた合金の固化のX線回折その場観察実験で、最初のリカレッセンスではCoSi2が初晶となり、2回目のリカレッセンスではCoSi金属間化合物が結晶化することが明らかになった。相の同定に加え、実時間回折パターンによって初晶の微細化の証拠も得られた。

37000689
Nondestructive detection of heavily shielded materials by using nuclear resonance fluorescence with a laser-compton scattering γ-ray source
菊澤 信宏; 羽島 良一; 西森 信行; 峰原 英介; 早川 岳人; 静間 俊行; 豊川 弘之*; 大垣 英明*
Applied Physics Express 2(3), p.036502_1-036502_3(2009) ; (JAEA-J 05723)
 We perform a proof-of-principle experiment for a nondestructive method for detecting the elemental and isotopic composition of materials concealed by heavy shields such as iron plates with a thickness of several centimeters. This method uses nuclear resonance fluorescence (NRF) triggered by an energy-tunable laser-Compton scattering (LCS) γ-ray source. One-dimensional mapping of a lead block hidden behind 1.5-cm-thick iron plates is obtained by measuring an NRF γ-ray of a lead isotope 208Pb. We observe a 5512-keV γ-ray from 208Pb excited by the quasi-monochromatic LCS γ-rays with energies up to 5.7 MeV. The edge position of the lead block is consistent with the exact position within the uncertainty.

37000690
Topological transition from accretion to ejection in a disk-jet system; Singular perturbation of the Hall effect in a weakly ionized plasma
白石 淳也; 吉田 善章*; 古川 勝*
Astrophysical Journal 697(1), p.100-105(2009) ; (JAEA-J 05724)
 原始星などの中心天体近傍に形成される、ジェット放出を伴う降着円盤は、理想流体モデルの枠組みから見れば特異な構造を持っている。降着流とジェット流は、ケプラー回転している円盤に対する「特異摂動」とみなすことができる。ここで特異摂動とは、何らかの(微分階数に関して)高次な効果をいう。本論文では、原始星円盤の弱電離プラズマ中ではホール効果がそのような構造を形成することを示した。実際、特異摂動によって規定される特徴的なスケールを評価すると、ホール効果が支配的である。

37000691
Analysis of particle pumping using SOLDOR/NEUT2D code in the JT-60U tokamak
川島 寿人; 清水 勝宏; 滝塚 知典
Contributions to Plasma Physics 48(1-3), p.158-163(2008) ; (JAEA-J 05725)
 SOL/ダイバータでの粒子制御のためのダイバータ排気の理解を進め、将来装置に外挿するため、SOLDOR/NEUT2Dコードを用いてJT-60Uのダイバータ排気のシミュレーションを実施した。ダイバータ排気室内の排気粒子束や中性粒子圧力は実験計測値をよく再現し、コードの精度を確認した。この結果に基づき、能動的粒子制御のためには、より高い排気性能が必要であることを指摘した。そこで、排気効率(排気粒子束/ダイバータ部で発生する粒子束)の改善を目指したシミュレーションを行った。その結果、ダイバータ板上ストライク点と排気口間の距離の短縮やダイバータ板の仮想的垂直化などにより、排気効率が改善されることを見いだした。一方、次期装置JT-60SAでの検討は、排気口幅を狭めることにより逆流粒子束を低減し、排気効率が増大することを示した。さらに、これらの入射粒子束と逆流粒子束のダイバータ形状に対する依存性を理解するため、中性粒子挙動における各過程(電離,荷電交換,弾性散乱,解離及び再結合)のダイバータ形状やプラズマ状態(接触/非接触プラズマ)に与える効果を明らかにした。

37000692
Goals, challenges, and successes of managing fusion activated materials
El-Guebaly, L. A.*; Massaut, V.*; 飛田 健次; Cadwallader, L.*
Fusion Engineering and Design 83(7-9), p.928-935(2008) ; (JAEA-J 05726)
 本研究は、世界中で進められている核融合及び核分裂の研究、米国,ヨーロッパ及び日本における環境や政策の現状を考慮して、核融合の放射性廃棄物管理に関する基本的考え方を整理したものである。この研究の結果、将来的には環境規制のため地中埋設処分が今より厳しい制約を受けると考えられるので、核融合炉設計の初期段階からバックエンドを考慮する必要があるという点が明確になった。新規に埋設処分場を建設することが政治的な困難という状況を考慮すると、環境に優しい方法で埋設処分するという80年代から現在まで続いてきた考え方を改め、今後はリサイクリングとクリアランスに留意した核融合炉設計や材料研究を目指す必要がある。

37000693
Critical heat flux experiments using a screw tube under DEMO divertor-relevant cooling conditions
江里 幸一郎; 鈴木 哲; 大楽 正幸; 秋場 真人
Fusion Engineering and Design 83(7-9), p.1097-1101(2008) ; (JAEA-J 05727)
 核融合炉用プラズマ対向機器(PFC)開発の一環として、原子力機構では加圧水冷却による高性能冷却管の開発を進めている。その中で冷却管内面にネジ状フィンにより除熱性能を高めた冷却管を核融合原型炉DEMOへの適用を提案している。この冷却管のフィンは単純なネジ切り加工により形成するため、スクリュウ管と呼んでいる。原子力機構におけるDEMO設計ではダイバータ冷却条件は、プラントの発電効率向上に寄与するため、圧力4MPaで出口温度200℃を想定している。本研究ではスクリュウ管の限界熱流束(CHF)に対するサブクール度の影響をDEMO冷却条件に相当する実験条件において実験的に調べた結果を報告する。冷却管はDEMOダイバータでの構造材候補のF82Hの代わりに純銅製を使用した。入口温度を室温(出口サブクール度200K)から180℃(出口サブクール度60K)まで上昇させることによりスクリュウ管のCHFは半減するものの、入口温度180℃(出口サブクール度60K)でも以前として、平滑円管の2倍以上の限界熱流束を有していることを明らかにした。

37000694
Heatup event analyses of the water cooled solid breeder test blanket module
鶴 大悟; 榎枝 幹男; 秋場 真人
Fusion Engineering and Design 83(7-9), p.1238-1243(2008) ; (JAEA-J 05728)
 本報では、水冷却固体増殖テストブランケットモジュール(WCSB TBM)の加熱事象に対する安全評価、及び特にBe-水化学反応に対する安全確保の方策について述べる。3つの代表事象シーケンスに対して、一次元伝熱解析を実施した。プラズマ運転中のTBM冷却喪失事象では、TBMの温度が全体的に上昇し、第一壁温度の上昇により、ディスラプションが発生しプラズマが停止する。この際に化学反応が活性化しないように、予想される最高温度条件でも冷却管が破断しないような設計が求められる。プラズマ運転中のTBM内冷却材浸入事象では、Be-水化学反応の熱負荷がTBMに加えられる。冷却材浸入により冷却材の一部が冷却系から失われるが、冷却系は稼動を継続することが求められる。冷却材浸入後の外部電源喪失事象では、事象が収束することを確認した。

37000695
Design study of JT-60SA divertor for high heat and particle controllability
川島 寿人; 清水 勝宏; 滝塚 知典; 朝倉 伸幸; 櫻井 真治; 松川 誠; 藤田 隆明
Fusion Engineering and Design 83(10-12), p.1643-1647(2008) ; (JAEA-J 05729)
 ITERの支援及びDEMO炉に向けた定常高ベータ化を目指し、JT-60の超伝導化改修装置JT-60SAの設計が進んでいる。われわれは、ITERの下、シングルヌルダイバータ配位を模擬し、適合する下側ダイバータ形状で高い熱,粒子制御性を得るため、ダイバータコードSOLDOR/NEUT2Dを用いて最適化設計の検討を行っている。SOLへの損失パワーを37MW(加熱入力の90%)とした場合、「V型コーナー」を有する垂直ダイバータ板形状において、ガスパフによる非接触化によってダイバータ板熱負荷を5.8MW/m2まで低減できることがわかった。これにより、定常運転で想定されるCFC材ダイバータ板の許容熱負荷15MW/m2に比べ十分小さくできた。一方、ダイバータ排気による非接触から接触状態などへの粒子制御性は、ダイバータ板上のストライク点とダイバータ板最下端までの距離(ストライク点距離)を20mmから120mmに上げることによって改善されることを明らかにした。これは、短いストライク点距離で非接触状態が強く主プラズマに影響する場合、ストライク点を上げることによって回復が見込まれる。

37000696
D-T neutron streaming experiment simulating narrow gaps in ITER equatorial port
落合 謙太郎; 佐藤 聡; 和田 政行*; 飯田 浩正; 高倉 耕祐; 沓掛 忠三; 田中 滋; 阿部 雄一; 今野 力
Fusion Engineering and Design 83(10-12), p.1725-1728(2008) ; (JAEA-J 05730)
 ITER/ITAタスクにおいて、ITER真空容器壁と水平ポートプラグの境界にあるギャップ構造を模擬した体系によるDT中性子ストリーミング実験を実施した。ギャップ空間の高速及び低速中性子を測定するためにマイクロフィッションチェンバーと放射化箔による核分裂率及び反応率測定を行った。実験解析にはモンテカルロ計算コードMCNP4C並びにSn計算コードTORT, Attilaを用いた。核データライブラリはFENDL-2.1を採用した。実験結果から以下のことが明らかになった。(1)MCNP, TORT及びAttilaによる高速中性子輸送計算は深さ約100cmまで精度よく評価できる。(2)Sn計算コードTORT及びAttilaではupward biasedあるいはlast collided線源計算手法が不可欠である。

37000697
Recent progress in safety assessments of Japanese water-cooled solid breeder test blanket module
鶴 大悟; 榎枝 幹男; 秋場 真人
Fusion Engineering and Design 83(10-12), p.1747-1752(2008) ; (JAEA-J 05731)
 本報では、日本の水冷却固体増殖テストブランケットモジュール(WCSB TBM)の安全評価活動の現状を報告する。核発熱及び放射能生成のソースターム見積りのために、中性子束,トリチウム生成率,核発熱,崩壊熱及び廃棄物の放射能を算出した。従事者被爆(ORE)評価のために、ペブルベッド内トリチウム,パージガス内トリチウム,冷却系内に透過したトリチウム,冷却系内放射化腐食生成物(ACP)といったRIインベントリーを算出した。FMEAを実施し、安全評価を必要とする事象を選定し、さらにその中から他の事象を包絡する代表事象(PIE)を選定した。選定されたPIEは、RI放出,加圧,加熱の3つのグループに分類される。RI放出に関しては、真空容器内RI(トリチウム及び放射化ダスト),パージガス内RI(トリチウム),冷却系内RI(トリチウム及びACP)といった3つのインベントリーごとに、最大放出量を見積った。加圧に関しては、冷却系配管の破断による隣接区画の加圧事象の数値解析を行った。

37000698
Analyses of fusion integral benchmark experiments at JAEA/FNS with FENDL-2.1 and other recent nuclear data libraries
今野 力; 落合 謙太郎; 和田 政行*; 佐藤 聡
Fusion Engineering and Design 83(10-12), p.1774-1781(2008) ; (JAEA-J 05732)
 原子力機構FNSではこれまでにDT中性子による数多くの核データ検証積分ベンチマーク実験(単純組成・単純形状実験,飛行時間法実験,増殖ブランケット実験)を行ってきた。ここ数年で、新たに核データライブラリーJENDL-3.3, FENDL-2.1, JEFF-3.1及びENDF/B-VII.0が公開されているが、積分ベンチマーク実験の解析を通して、これらの核データライブラリーの妥当性検証を行うことが不可欠である。そこで、われわれは原子力機構FNSで実施した種々のベンチマーク実験の解析をFENDL-2.1及び他の最新の核データライブラリーを用いて行った。この解析にはモンテカルロコードMCNP-4Cを用いた。得られた計算結果を実験結果と比較するとともに、計算結果どうしの比較も行った。一部の実験を除いてJENDL-3.3, FENDL-2.1, JEFF-3.1及びENDF/B-VII.0の計算結果はほとんど一致し、実験結果をよく再現した。

37000699
Multi-scattering time-of-flight neutron spectrometer for deuterium to tritium fuel ratio measurement in fusion experimental reactors
浅井 啓輔*; 湯川 恭平*; 井口 哲夫*; 直井 紀拓*; 渡辺 賢一*; 河原林 順*; 山内 通則*; 今野 力
Fusion Engineering and Design 83(10-12), p.1818-1821(2008) ; (JAEA-J 05733)
 DTプラズマ中のD/T比は、DD/DT反応によって発生するDD中性子(2.45MeV)とDT中性子(14.1MeV)の測定によりそれらの中性子強度比から求めることができ、測定にはDT中性子中の微量なDD中性子の検出が鍵となる。本研究では、TOF法をベースに、飛行時間を測定するシンチレータ対の前に中性子散乱体(水)を挿入した多重散乱飛行時間中性子スペクトロメータ(MS-TOF)の開発を行っている。本システムは、ビームライン上にアクティブな検出器を持たないことと中性子散乱体中の水素原子核がDT中性子よりもDD中性子に対して大きな弾性散乱断面積を有することを利用して、シンチレータ対に入射する中性子束のDD/DT中性子強度比を向上させることができ、微量DD中性子の検出に有利である。今回は、日本原子力研究開発機構核融合中性子源施設FNSの加速器DT中性子源を用いて、本システムによるDT中性子ビーム中の微量DD中性子検出を試みた。その結果、DT中性子ピークとともにDD中性子ピークも観測できた。また予備的ながら、使用した中性子ビーム中のDD/DT中性子強度比を評価し、妥当な結果を得た。

37000700
Design of a high power millimeter wave launcger for EC H&CD system of ITER
梶原 健; 高橋 幸司; 小林 則幸; 春日井 敦; 坂本 慶司
Fusion Engineering and Design 84(1), p.72-77(2009) ; (JAEA-J 05734)
 An optimization procedure of the quasi-optical system for millimeter wave launcher is developed for the ITER electron cyclotron heating and current drive (EC H&CD) launcher. In the launcher, the radiated RF beams from 8 corrugated waveguides are reflected sequentially by two finite-sized mirrors and radiated into a plasma through the small aperture of the blanket shield module on the top of the launcher. Using a steepest decent method, the heat load on the mirrors are successfully reduced to the acceptable level by flattening the RF power profile on the mirrors keeping the spilling out of the RF power minimum from the mirrors. It is found that 20 MW injection will be acceptable even when the resistivity of 2.64×10-8 Ω m for the surface of the mirror (Dispersion strengthened copper, 151℃ assumed) is increased by factor ∼10 with a contamination.

37000701
Results of R&D on ITER-TF winding critical issues
小泉 徳潔; 中嶋 秀夫; 松井 邦浩; 礒野 高明; 奥野 清; 高柳 貞敏*; 久野 和雄*; 仙田 郁夫*
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 18(2), p.475-478(2008) ; (JAEA-J 05736)
 ITER-TFコイルの製作技術は、ITE-EDAで開発,試験されたTFモデル・コイル(TFMC)でおおむね実証されたが、ITER-TFコイルがTFMCに比べて約3倍の大きさとなったために、新たな技術的課題が発生している。主な課題としては、高精度の巻線技術,熱処理前後の導体長変化量の正確な予測,耐放射線性に優れた絶縁樹脂を用いた含浸技術の開発がある。原子力機構では、巻線機の主要部品である高精度・自動巻線ヘッドを開発し、短尺導体で高精度巻線の実現性を実証した。また、導体の熱処理前後の伸縮量を新たに開発した装置を用いて測定し、その伸縮量が200ppm以下の小さなものであることを示した。これらの成果より、ITER-TFコイル巻線の寸法公差を達成する目処を立てることができた。さらに、部分モデルによる含浸試験を実施し、ITER-TFコイルの含浸時間を評価する手法を確立し、樹脂のポット・ライフ(含浸作業が実施可能な最大の時間)内でコイルを含浸する手法を検討した。

37000702
Numerical simulation of critical current degradation of Nb3Sn strand in CIC conductor
村上 陽之*; 石山 敦士*; 植田 浩史*; 小泉 徳潔; 奥野 清
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 18(2), p.1051-1054(2008) ; (JAEA-J 05737)
 大型超伝導導体では、電磁力による素線の波状変形によって臨界電流性能が劣化する。この機構を解明するために、解析コードを開発した。しかし、解析結果は、単一素線に波状変形を加えた実験結果を精度よく模擬することができなかった。そこで、素線の弾塑性変形を考慮し、加えてフィラメント間のコンダクタンスの詳細評価を実施した。この結果、解析の精度を改善することができた。そこで、改良したコードを用いて、臨界電流値のバリア厚さ,ブロンズのRRR、及びツイスト・ピッチの依存性を評価した。その結果、バリア厚さを厚くすることで劣化を低減できること,ブロンズのRRR,ツイスト・ピッチは影響が小さいことがわかった。

37000703
Vacancy generation in Si during solid-liquid transition observed by positron annihilation spectroscopy
前川 雅樹; 河裾 厚男
Japanese Journal of Applied Physics 48(3), p.030203_1-030203_3(2009) ; (JAEA-J 05739)
 新規に開発した陽電子マイクロビームを用いて、融点付近におけるシリコン結晶中の陽電子消滅ドップラー拡がり測定を行った。1380℃以下の温度領域では、ドップラー拡がりスペクトルの変化は認められなかった。融点付近の非常に狭い温度領域において、ドップラー拡がりスペクトルは、一度若干の拡がりを見せ、融解に至る過程で逆に劇的に先鋭化することがわかった。前者の変化は物質密度の増加を、後者の変化は熱空孔形成を示唆している。理論計算との比較から、単一空孔だけでなく複空孔のような比較的大きな空孔集合体が生成すると推定される。

37000704
Modeling of degradation behavior of InGaP/GaAs/Ge triple-junction space solar cell exposed to charged particles
佐藤 真一郎; 大島 武; 今泉 充*
Journal of Applied Physics 105(4), p.044504_1-044504_6(2009) ; (JAEA-J 05740)
 1次元光デバイスシミュレータPC1Dを用いて、荷電粒子線(陽子,電子)を照射したInGaP/GaAs/Ge宇宙用三接合(3J)太陽電池の劣化モデリングを行ったところ、各サブセルの外部量子効率をシミュレーションによりフィッティングすることで3J太陽電池の電気特性の劣化をうまく再現することができた。また、このモデルでは各サブセルにおけるベース層キャリア濃度のキャリア枯渇係数(RC)と少数キャリア拡散長の損傷係数(KL)を放射線劣化パラメータとして考慮するが、これらを非イオン化エネルギー損失(NIEL: Non-Ionizing Energy Loss)を用いて解析した結果、これら劣化パラメータとNIELには正の相関があることから、NIELにより各サブセルの劣化度を見積もれば3J太陽電池の電気特性劣化を予測できることがわかった。

37000705
Influence of hydrofluoric acid on extraction of thorium using a commercially available extraction chromatographic resin
藤原 亜佐子; 星 亜紀子; 亀尾 裕; 中島 幹雄
Journal of Chromatography A 1216(18), p.4125-4127(2009) ; (JAEA-J 05741)
 UTEVAレジンにより1×10-6mol/dm3のThとさまざまな濃度のHFを含む硝酸溶液(1∼5mol/dm3)からThを回収するとき、Th回収率のHF濃度依存性を調べた。Th回収率はHF濃度の増加とともに減少した。ほぼ100%の回収率が得られる最大のHF濃度は、1mol/dm3硝酸では約10-4mol/dm3, 3mol/dm3硝酸では約10-3mol/dm3, 5mol/dm3では約10-2mol/dm3であった。0.1mol/dm3のHFを含む溶液に硝酸アルミニウム(0.2mol/dm3)又は硝酸鉄(0.6mol/dm3)をF-のマスキング剤として添加するとTh回収率は1.4±0.3%から95±5%又は93±3%に改善された。UTEVAレジンによるThの効果的な抽出は、試料溶液中のHF濃度に応じて硝酸濃度を選択することや硝酸アルミニウムのようなマスキング剤を添加することにより達成できる。

37000706
Hydrothermal-method-grown ZnO single crystal as fast EUV scintillator for future lithography
中里 智治*; 古川 裕介*; 田中 桃子; 巽 敏博*; 錦野 将元; 山谷 寛*; 永島 圭介; 木村 豊秋*; 村上 英利*; 斎藤 繁喜*; 清水 俊彦*; 猿倉 信彦*; 西村 博明*; 三間 圀興*; 鏡谷 勇二*; Ehrentraut, D.*; 福田 承生*
Journal of Crystal Growth 311(3), p.875-877(2009) ; (JAEA-J 05742)
 水熱合成法により成長させた酸化亜鉛の、ニッケル様銀X線レーザー励起による発光の温度依存性を評価した。室温では発光のピーク386nm, 半値全幅15nmであったが、結晶の温度を25Kまで冷却するにつれて発光は短波長シフトし、波長幅も狭くなった。105Kでのストリーク像は寿命0.88nsと2.7nsの2成分で表すことができた。この発光寿命はリソグラフィーに関連した応用研究に用いるのに適切であり、ナノ秒程度の時間幅を持つレーザープラズマEUV光源の評価を行うのに十分な時間スケールである。

37000707
Oxygen potentials of mixed oxide fuels for fast reactors
加藤 正人; 田村 哲也*; 小無 健司*
Journal of Nuclear Materials 385(2), p.419-423(2009) ; (JAEA-J 05743)
 高速炉燃料として開発が進められている(Pu0.2U0.8)O2-x及び(Np0.02Am0.02Pu0.3U0.66)O2-Xの酸素ポテンシャルを1473∼1623Kの温度で、気相平衡法により測定した。(Pu0.2U0.8)O2-xの酸素ポテンシャルは(Pu0.3U0.7)O2-xに比べ約25kJ/molK低い結果を得た。(Np0.02Am0.02Pu0.3U0.66)O2-Xの酸素ポテンシャルは、MAが含んでいない試料に比べてわずかに高い値であった。

37000708
Thermochemical and thermophysical properties of minor actinide compounds
湊 和生; 高野 公秀; 音部 治幹; 西 剛史; 赤堀 光雄; 荒井 康夫
Journal of Nuclear Materials 389(1), p.23-28(2009) ; (JAEA-J 05744)
 現行の核燃料サイクルでは高レベル放射性廃棄物に区分されているマイナーアクチノイド(MA: Np, Am, Cm)を燃焼・核変換することが将来の選択肢として考えられている。MA含有燃料の設計及び挙動評価には、MA化合物の熱化学的及び物理的特性が必要であるが、それらの特性はよく知られていない。MA含有燃料の研究開発の基盤を支えるため、アクチノイド窒化物及び酸化物の特性測定評価を行った。格子定数及びその熱膨張を高温X線回折法により測定評価した。比熱容量を投下型熱量計により、熱拡散率をレーザーフラッシュ法により、それぞれ測定評価した。熱伝導率を比熱容量,熱拡散率及び密度から評価した。酸素ポテンシャルを熱起電力法により測定評価した。

37000709
Oxygen potential measurements of Am0.5Pu0.5O2-x by EMF method
音部 治幹; 赤堀 光雄; 荒井 康夫
Journal of Nuclear Materials 389(1), p.68-71(2009) ; (JAEA-J 05745)
 Am0.5Pu0.5O2-xの酸素ポテンシャルの酸素不定比組成(x)と温度依存性をEMF法で明らかにした。Am0.5Pu0.5O2-xxは、1333Kで0.02< x ≤ 0.25の範囲でクーロン滴定法により変化させた。酸素ポテンシャルの温度依存性は、温度領域1173∼1333Kで測定した。1333Kでは、酸素ポテンシャルは、xが0.021から0.22まで増加したとき、-80から-360kJmol-1まで減少し、xが0.23付近では、-360kJmol-1でほとんど一定となった。この結果から、1333Kでは、Am0.5Pu0.5O2-xは、xが0.021から0.22までは蛍石型単相から構成され、xが0.23の付近では蛍石型相と(Am,Pu)9O16相の混合相から構成されると考えられる。

37000710
Analysis of oxygen potential of (U0.7Pu0.3)O2±x and (U0.8Pu0.2)O2±x based on point defect chemistry
加藤 正人; 小無 健司*; 中江 延男
Journal of Nuclear Materials 389(1), p.164-169(2009) ; (JAEA-J 05746)
 (U0.7Pu0.3)O2±x及び(U0.8Pu0.2)O2±xの不定比性について、点欠陥化学により実験データから解析を行った。定比組成からのずれXと酸素分圧の関係を評価し、Kröger-Vink図を用いてMOXの点欠陥濃度を酸素分圧と温度の関数として見積もった。定比組成近傍では、XはΔに比例し、電気的欠陥が支配することを示した。また、酸素ポテンシャルを計算するためのモデルを導き、実験データを精度よく再現した。定比組成の(U0.7Pu0.3)O2.00及び(U0.8Pu0.2)O2.00について、それぞれ、-552.5kJ/mol及び-149.7J/mol, -674.0kJ/mol及び-219.4J/molと決定した。

37000711
The Phase state at high temperatures in the MOX-SiO2 system
中道 晋哉; 加藤 正人; 砂押 剛雄*; 内田 哲平; 森本 恭一; 鹿志村 元明; 木原 義之
Journal of Nuclear Materials 389(1), p.191-196(2009) ; (JAEA-J 05747)
 「常陽」での短期照射試験後、燃料中心部の限定された領域で燃料製造時に不純物として混入するSiO2の凝集が認められた。SiO2を混合したMOXについて酸素分圧を変えて1700℃, 2000℃, 2400℃の温度で熱処理を行った。低酸素分圧下で熱処理した試料において、MOXの粒界にPu, Am及びSiの化合物の形成が観察され、特に2400℃で熱処理した場合において、その傾向が顕著となった。

37000712
Oxygen chemical diffusion in hypo-stoichiometric MOX
加藤 正人; 森本 恭一; 田村 哲也*; 砂押 剛生*; 小無 健司*; 青野 茂典; 鹿志村 元明
Journal of Nuclear Materials 389(3), p.416-419(2009) ; (JAEA-J 05748)
 プルトニウム-ウラン混合酸化物(MOX)は、高速炉用の燃料として開発が進められている。MOX燃料のO/Mは照射中のFCCIをコントロールするため、重要なパラメータである。酸素ポテンシャルと酸素相互拡散係数はMOX中の酸素の挙動を理解するうえで不可欠なデータである。本研究では、(Pu0.2U0.8)O2-xと(Pu0.3U0.7)O2-xについて、熱重量法を用いて酸素相互拡散係数を測定した。熱重量計により、還元速度を測定し、その曲線から酸素の相互拡散係数を測定した。その結果、(Pu0.3U0.7)O2-xの拡散係数は、(Pu0.2U0.8)O2-xの拡散係数に比べ低い値であった。

37000713
Study of Li2TiO3 + 5 mol% TiO2 lithium ceramics after long-term neutron irradiation
Chikhray, Y.*; Shestakov, V.*; Maksimkin, O.*; Turubarova, L.*; Osipov, I.*; Kulsartov, T.*; Kuykabayeba, A.*; Tazhibayeva, I.*; 河村 弘; 土谷 邦彦
Journal of Nuclear Materials 368-386, p.286-289(2009) ; (JAEA-J 05749)
 本論文は、長期間中性子照射した5mol%TiO2添加Li2TiO3微小球の照射後試験結果について記述したものである。照射試料は、6Liを96at%濃縮したLi2TiO3微小球を用い、照射試験はカザフスタン国立原子力センターのWWR-K炉で223日間、熱出力6MWで行った。照射後、白色の微小球が灰色に変化し、密度及び微小硬が低下するとともに、機械的強度も低下した。また、X線回折による結晶構造の測定を行った結果、照射後の結晶構造に変化があることがわかった。さらに、微小球中の残留トリチウム量を明らかにした。

37000714
Advanced neutron shielding material using zirconium borohydride and zirconium hydride
林 孝夫; 飛田 健次; 中森 裕子*; 折茂 慎一*
Journal of Nuclear Materials 386-388, p.119-121(2009) ; (JAEA-J 05750)
 先進遮蔽材料として水素化ホウ化ジルコニウム(Zr(BH4)4)及び水素化ジルコニウム(ZrH2)の性能を評価するために中性子遮蔽計算を実施した。優れた遮蔽材料は外部の構造材の深刻な放射化を防止するために必要とされている。Zr(BH4)4の水素密度はZrH2よりわずかに多いにもかかわらず、遮蔽性能はZrH2より低い。これは中性子の効率的な遮蔽には、水素原子と同様に原子番号が大きな原子が必要であることを示しており、さらにZr(BH4)4と鋼の組合せにより中性子遮蔽性能が向上することがわかった。(Zr(BH4)4とF82Hの組合せ)及び(ZrH2とF82Hの組合せ)は、(水とF82Hの組合せ)より遮蔽材の厚さをそれぞれ6.5%, 19%減らすことが可能であることがわかった。他の材料と比較してZr(BH4)4を遮蔽材に用いた場合、ホウ素の効果により100eV以下の中性子束が大幅に減少する。これにより核融合炉からの放射性廃棄物の減少に寄与することが可能である。

37000715
Effect of high dose/high temperature irradiation on the microstructure of heat resistant 11Cr ferritic/martensitic steels
山下 真一郎; 矢野 康英; 舘 義昭; 赤坂 尚昭
Journal of Nuclear Materials 386-388, p.135-139(2009) ; (JAEA-J 05751)
 FFTF及び常陽を用いて11Cr系耐熱フェライト/マルテンサイト鋼を400∼670℃の温度範囲で約100dpaまで照射した。一部の材料は組織変化挙動に及ぼす熱的効果を明らかにするために、原子炉照射相当の長時間熱時効試験も行った。照射前の組織は、ラスマルテンサイト組織(ラス組織),転位,炭化物で構成されており、旧オーステナイト粒界のほとんどは部分的に炭化物で被覆されていた。照射後組織観察の結果から、照射により誘起される組織が照射温度に応じて次の3つに分類されることが示された。(1)照射温度が400∼450℃の低温域の場合、フェライト相内に直径30nm以下の微細な転位ループやキャビティが形成するが、ボイドスエリング量としては0.05%に留まる程度であった。(2)温度が500∼600℃の中温域で照射されると炭化物の析出が支配的な組織変化となり、M23C6やM6Cが旧オーステナイト粒界を広範囲に被覆することで、粒界強化やラス組織回復の遅滞化に寄与していることが明らかとなった。(3)照射温度が650℃を超える高温になった場合、ラス組織の完全回復,炭化物の著しい粗大化に加え、再結晶粒の形成,成長が同時に生じてしまうことが明らかとなった。この組織変化は、650℃以上では不可避な組織変化と考えられ、機械的特性の著しい劣化と密接な関係があると推察される。

37000716
In-situ SCC observation of thermally-sensitized and cold-worked type 304 stainless steel irradiated to a neutron fluence of 1×1025n/m2
中野 純一; 根本 義之; 三輪 幸夫; 宇佐美 浩二; 塚田 隆; 秀 耕一郎*
Journal of Nuclear Materials 386-388, p.281-285(2009) ; (JAEA-J 05752)
 照射誘起応力腐食割れにおけるき裂発生及び進展過程を酸素添加した561Kの高温水中での低ひずみ速度試験により調べた。同時に試験片表面のその場観察を行った。304ステンレス鋼の試験片に固溶体化,熱鋭敏化及び冷間加工を施し、材料試験炉(JMTR)の323Kの炉水中で1.0×1025n/m2(E>1MeV)まで照射した。照射量1.0×1026n/m2の冷間加工材では最大応力到達直後に割れの発生が見られたが、照射量1.0×1025n/m2の冷間加工材では最大応力に到達する前に割れの発生が観察された。破面観察では、熱鋭敏化材ではほぼ全面で粒界型応力腐食割れを示し、固溶体化材及び冷間加工材では粒内型応力腐食割れと延性を示すディンプルの混在する破面が認められた。

37000717
Recent findings on blistering and deuterium retention in tungsten exposed to high-fluence deuterium plasma
洲 亘; 河裾 厚男; 山西 敏彦
Journal of Nuclear Materials 386-388, p.356-359(2009) ; (JAEA-J 05753)
 高フルエンス重水素プラズマ照射によるタングステンでのブリスタリング挙動と滞留挙動の解明が炉心プラズマへの不純物制御やトリチウム滞留量の制御にとって重要である。本研究では、高フラックス・低エネルギーの重水素プラズマ照射によるタングステンのブリスタリングと重水素滞留を調べ、新しい知見を得た。まず、ドーム高さと外径との比率が従来報告値の一桁以上であるという高ドームブリスタが観測された。また、その内部が空洞ではないブリスタも発見された。次に陽電子消滅測定で重水素プラズマ照射による原子空孔濃度の増加が見られた。さらにブリスタリング挙動と滞留挙動は、顕著な温度依存性,マイクロ組織依存性,フルエンス依存性などを示している。これは、ブリスタリングと水素滞留を制御・抑制できることを示唆するものである。

37000718
Fusion materials development program in the Broader Approach activities
西谷 健夫; 谷川 博康; 實川 資朗; 野澤 貴史; 林 君夫; 山西 敏彦; 土谷 邦彦; Möslang, A.*; Baluc, N.*; Pizzuto, A.*; Hodgson, E. R.*; Laesser, R.*; Gasparotto, M.*; 香山 晃*; 笠田 竜太*; 四竈 樹男*; 高津 英幸; 荒木 政則
Journal of Nuclear Materials 386-388, p.405-410(2009) ; (JAEA-J 05754)
 原型炉の開発においては、増殖ブランケット技術の確立が最も重要な工学課題である。増殖ブランケット技術の開発では、高い中性子フルエンス,高温,高磁場等の厳しい環境で健全性を有する構造材及びトリチウム増殖材・中性子増倍材等の機能材料の開発が急務となっている。日欧間で進められている幅広いアプローチ活動(BA)の一つである原型炉工学R&D活動では、日欧双方が重要かつ不可欠と考える基盤的なR&Dとして、低放射化フェライト鋼,SiC/SiC複合材,先進中性子増倍材,先進トリチウム増殖材及びトリチウム技術の開発を行う予定である。本論文では、BAにおける低放射化フェライト鋼,SiC/SiC複合材,先進中性子増倍材,先進トリチウム増殖材の開発計画についてその概要を述べる。

37000719
Corrosion behavior of Al-alloying high Cr-ODS steels in lead-bismuth eutectic
高屋 茂; 古川 智弘; 青砥 紀身; Müller, G.*; Weisenburger, A.*; Heinzel, A.*; 井上 賢紀; 奥田 隆成*; 阿部 冨士雄*; 大貫 惣明*; 藤澤 敏治*; 木村 晃彦*
Journal of Nuclear Materials 386-388, p.507-510(2009) ; (JAEA-J 05755)
 Al(0∼3.5wt%)とCr(13.7∼17.3wt%)を含むODS鋼と、12Cr鋼の停留鉛ビスマス(LBE)中での耐食性を調べた。試験条件は、ODS鋼については、LBE中溶存酸素濃度が10-6と10-8wt%,温度が550と650℃,浸漬時間は3,000時間まで、12Cr鋼については、LBE中溶存酸素濃度が10-8wt%,温度が550℃,浸漬時間は5,000時間まである。Alを約3.5wt%,Crを13.7∼17.3wt%含むODS鋼は、表面に保護的なAl酸化膜が形成された。Alの添加は、ODS鋼の耐食性向上にとても効果があることがわかる。一方、Crを16wt%を含み、Alを含まないODS鋼については、溶存酸素濃度が10-6wt%,温度が650℃の場合を除き、十分な耐食性を有しなかった。単にCrを増量しただけでは、耐食性の向上は期待できないと思われる。

37000720
Recent advances and issues in development of silicon carbide composites for fusion applications
野澤 貴史; 檜木 達也*; 長谷川 晃*; 香山 晃*; 加藤 雄大*; Snead, L. L.*; Henager Jr., C. H.*; Hegeman, J. B. J.*
Journal of Nuclear Materials 386-388, p.622-627(2009) ; (JAEA-J 05756)
 先進SiC/SiC複合材料は核融合炉材料としてこれまで開発が進められている。近年において耐照射特性に優れる複合材料の開発に成功し、今もなおさらなる材料特性の改善を目指した研究が継続して行われている。一通りの複合材料の設計と基本用件の実証が終了し、SiC/SiC複合材料の開発は徐々に実用化を見据えた材料特性データベースの整備に移行している。主要な評価項目として、(1)照射下クリープやヘリウム/水素同時照射効果を含む重照射効果,(2)腐食・浸食挙動,(3)ヘリウムや水素以外の核変換物質の影響,(4)接合部特性などが挙げられる。また、SiC/SiC複合材料のFCI応用においては照射下の電気伝導率の変化が重要な課題である。本論文はSiC/SiC複合材料研究の最近の進捗状況を総括するとともに、材料データベース構築のために必要となる評価技術の標準化に関する国際協力の進展を解説する。

37000721
Study on the weld characteristics of 316LN by magnetization measurement
Kim, H. C.*; Kim, K.*; Lee, Y. S.*; Cho, S. Y.*; 中嶋 秀夫
Journal of Nuclear Materials 386-388, p.650-653(2009) ; (JAEA-J 05757)
 異なった溶接ワイヤを用いた316LNの溶接部の磁化測定を温度と磁場を変化させて実施した。この結果、測定された透磁率は、使用する溶接ワイヤに大きく依存した。また、溶接部の磁化の磁場依存性は母材とは異なることが観測された。溶接材料を使用しない溶接部あるいはマンガン含有量の少ない溶接ワイヤでは、オーステナイトと異なる第二相が形成されているが、ITERで使用する高マンガンを含有する溶接ワイヤではオーステナイト以外の第二相は観測されなかった。この結果、高マンガンを有するワイヤは組織が安定しており、ITERでの仕様に適していることがわかった。

37000722
Deuterium diffusion in a chemical densified coating observed by NRA
高木 郁二*; 小林 卓志*; 上山 裕*; 森山 裕丈*; 中道 勝; 中村 博文; 林 君夫
Journal of Nuclear Materials 386-388, p.682-684(2009) ; (JAEA-J 05758)
 核融合炉ブランケットにおいては、トリチウム増殖材から生成したトリチウムが構造材を透過して冷却材中へ漏洩しないようにするため、ブランケット容器構造材上に緻密なセラミック皮膜を成膜し、トリチウムの透過を低減することが考えられている。トリチウム透過低減皮膜の物性評価のため、核反応法(NRA法)を用いて皮膜の重水素拡散係数の測定を実施した。その結果、300℃で7×10-17m2s-1と、鋼材(SS304)と比較して5桁程度低く、本皮膜が十分な透過低減能を有していることが明らかになった。

37000723
Impact of ceramic coating deposition on the tritium permeation in the Japanese ITER-TBM
中道 勝; 中村 博文; 林 君夫; 高木 郁二*
Journal of Nuclear Materials 386-388, p.692-695(2009) ; (JAEA-J 05759)
 国際熱核融合実験炉(ITER)の日本のテストブランケットモジュール(TBM)開発においては、トリチウム透過バリアとしての皮膜技術開発が必要であり、原子力機構では、このために化学緻密化法によるセラミックスの成膜技術を開発した。本皮膜は、ガラス化材を添加することにより皮膜内の貫通欠陥である開気孔を減少することに成功したものである。また、炉外における特性試験の結果から、皮膜中の重水素の拡散係数は非常に小さいことが明らかになった。これら皮膜の成膜技術開発から特性評価、そして、日本設計のTBMにおけるトリチウムの透過挙動評価の結果について報告する。本成膜技術は、ITER-TBMのみならず、核融合原型炉の発電ブランケットにおけるトリチウム透過低減対策への適用も可能である。

37000724
Compatibility between Be-V alloy and F82H steel
土谷 邦彦; 滑川 要二; 石田 卓也
Journal of Nuclear Materials 386-388, p.1056-1059(2009) ; (JAEA-J 05760)
 ベリリウム金属間化合物を含んだベリリウム系合金(Be-Ti, Be-Vなど)は、高温で高い化学的安定性を有しており、核融合原型炉の先進中性子増倍材として期待されている。そこで、Be-V合金と構造材料であるF82Hとの両立性試験を行い、その両立性及び反応素過程について調べた。Be-V合金としては、Be12V相とαBe相が共存するBe-7at%Vを用いた。X線回折の結果、F82Hの反応層の表面には、Be2Feが観察された。また、800℃で100時間の加熱条件では、F82Hの反応層の厚さは約10μmであり、Beの場合と比較して約1/5であった。以上の結果より、Be-V合金がF82Hと良好な両立性を有することを明らかにした。

37000725
Design and trial fabrication of a dismantling apparatus for irradiation capsules of solid tritium breeder materials
林 君夫; 中川 哲也; 小野瀬 庄二; 石田 卓也; 中道 勝; 高津 英幸; 中村 和*; 野口 恒行*
Journal of Nuclear Materials 386-388, p.1083-1086(2009) ; (JAEA-J 05761)
 ITERに装荷するテストブランケット・モジュール(TBM)の解体・照射後試験プロセスを確立するため、トリチウムを含有する照射済みキャプセルの解体・処理技術の確立に向けて、設計及び試作試験を行った。検討の対象としたキャプセルは、JMTRでのスイープ照射試験に用いたものであり、外径約65mmの外筒内にある試料容器中に、Li2TiO3試料が装荷されている。照射済みキャプセルは帯のこぎりで切断され、その際放出されるトリチウムは、酸化装置を有するパージガス系によって安全に回収され、固化処理により放射性廃棄物となる。本解体装置は、収納容器(インナーボックス)に収められる構造となっており、このような構造とすることにより、ホットセルの大幅な改造を行うことなくトリチウムの安全な閉じ込めを実現できる技術的見通しを得た。非照射の模擬キャプセルを用いた試作試験において、本解体装置の切断性能が良好であることが実証された。本解体装置の設計及び試作試験の経験は、今後のTBM設計や解体プロセス検討に役立つものである。

37000726
Crystal structure of advanced lithium titanate with lithium oxide additives
星野 毅; 佐々木 一哉*; 土谷 邦彦; 林 君夫; 鈴木 晶大*; 橋本 拓也*; 寺井 隆幸*
Journal of Nuclear Materials 386-388, p.1098-1101(2009) ; (JAEA-J 05762)
 水素により還元されにくく、Liの核的燃焼に対する耐久性,トリチウム増殖比が向上した先進トリチウム増殖材の開発を目指し、Li2TiO3よりLi添加量の大きい(Li2O/TiO2比が1.0より大きい)チタン酸リチウムの合成法の探索を行った。リチウムエトキシド(LiO-C2H5)又はリチウムプロポキシド(LiO-i-C3H7)とテトラチタンプロポキシド(Ti(O-i-C3H7)4)をLi2O/TiO2比が2.0になるようにアルコール溶媒にて混合した後、加水分解を行い、得られたゲルを5%H2-He雰囲気中にて、800℃・6時間の条件にて焼成を行ったところ、水素により還元されず、Liの核的燃焼に対する耐久性が高いと考えられる試料の合成に成功したことを、熱天秤等を利用した材料特性評価により確認した。

37000727
Preliminary test for reprocessing technology development of tritium breeders
星野 毅; 土谷 邦彦; 林 君夫; 中村 和*; 照沼 仁*; 蓼沼 克嘉*
Journal of Nuclear Materials 386-388, p.1107-1110(2009) ; (JAEA-J 05763)
 核融合炉ブランケットで用いた使用済みのトリチウム増殖材用リチウムセラミックス微小球からリチウム資源を回収・再利用する技術を開発することは、希少資源としての6Liの有効利用の観点から重要なことである。本研究では、各種Liセラミックス(Li2TiO3, CaO添加Li2TiO3, Li4SiO4及びLi2O)の溶解特性及びキレート剤担持吸着剤を用いた不純物除去特性を調べた。Liセラミックスを過酸化水素水又は硝酸を溶媒として超音波溶解し、その溶液を吸着剤に浸した結果、ほとんどのリチウムが溶液中に存在し、かつ溶液中の60Coは97%以上の除去ができることがわかった。本試験により、使用済LiセラミックスからLiを回収する一連のプロセスの開発に見通しを得た。

37000728
Experimental demonstration on flow diodes applicable to a passive decay heat removal system for sodium-cooled reactors
近澤 佳隆; 相澤 康介; 白石 正*; 坂田 英之*
Journal of Nuclear Science and Technology 46(4), p.321-330(2009) ; (JAEA-J 05764)
 Enhancing passive safety features, the 50MW sodium cooled reactor plant DRACS adopts flow diodes instead of valves which need active signals to activate. In this study, two full scale flow diode models: Type A and B were manufactured and water tests were conducted. The Type A flow diode is a conventional vortex flow diode and the Type B is a modified vortex flow diode which enhances maintenance availability. The Type A flow diode showed good performance while the Type B did not provide enough performance in the test model conditions. Then, flow diodes for the 50MW plant DRACS are designed according to the experimental results. An optimized Type A and modified Type B flow diodes are evaluated to meet requirements of natural convection decay heat removal operation while maintaining the bypass flow in the normal power operation low enough.

37000729
Benchmark critical experiments and FP worth evaluation for a heterogeneous system of uranium fuel rods and uranium solution poisoned with pseudo-fission-product elements
外池 幸太郎; 山本 俊弘; 三好 慶典; 内山 軍蔵; 渡辺 庄一*
Journal of Nuclear Science and Technology 46(4), p.354-365(2009) ; (JAEA-J 05765)
 再処理施設の溶解工程にかかわる系統的な臨界ベンチマークデータを取得するため、日本原子力研究開発機構の定常臨界実験装置を用いて一連の臨界実験を実施した。燃焼度クレジットの導入を念頭において、ウラン酸化物燃料棒(5wt% 235U)と、模擬FP元素(サマリウム,セシウム,ロジウム,ユーロピウム)を添加した硝酸ウラニル水溶液(6wt% 235U)を組合せて、臨界量測定を行った。燃料棒は直径60cmの円筒タンクの中で溶液燃料中に1.5cm間隔の格子状に配列した。溶液燃料のウラン濃度は約320gU/Lに維持し、FP元素は約30GWd/tの燃焼度に相当する濃度とした。測定結果は、FP元素個別の反応度効果を解析的に評価する手法の検証、及び使用済燃料の非均質体系の中性子実効増倍率を計算する手法の検証に供される。本報告では、実験及びベンチマークモデルを詳述し、FP元素個別の反応度効果を評価する手順と結果を示す。実験結果と解析評価も比較する。

37000730
Formulations and validations of a high-precision volume-of-fluid algorithm on nonorthogonal meshes for numerical simulations of gas entrainment phenomena
伊藤 啓; 功刀 資彰*; 大島 宏之; 河村 拓己*
Journal of Nuclear Science and Technology 46(4), p.366-373(2009) ; (JAEA-J 05766)
 設計研究中のナトリウム冷却大型高速炉では、経済性向上のためにコンパクト化した炉容器を採用する予定であり、そのために炉内冷却材流速が増加する見通しである。このため、ガス巻込み現象の防止が重要な課題となっているが、ガス巻込み発生を理論的に予測することは現象の非線型性にために困難であり、現在、現象を評価できる数値解析手法の開発を進めている。本論文では、その一環として高精度Volume-of-Fluid法の定式化について述べる。ガス巻込み現象を正確に評価するためには複雑な体系形状を忠実に模擬する必要があるため、本研究では非構造格子を採用しており、任意形状の格子セルにおける定式化が実施される。開発した手法は、液中上昇気泡を解析することで基本的な検証を行い、さらに、ガス巻込み基礎実験を対象とし、ガス巻込み現象発生条件下における解析を行うことで現象への適用性確認を行った。

37000731
Measurements of neutron capture cross section of 237Np for fast neutrons
原田 秀郎; 中村 詔司; 初川 雄一; 藤 暢輔; 木村 敦; 石渡 祐樹*; 安見 厚志*; 間淵 幸雄*; 仲川 勉*; 岡村 和夫*; 斉藤 勲*; 岡 芳明*
Journal of Nuclear Science and Technology 46(5), p.460-468(2009) ; (JAEA-J 05767)
 弥生炉の高速中性子を用い、約0.1mgの微量サンプルを用いて高速中性子の捕獲断面積を測定する技術を開発し、その有効性を高速中性子に対する237Npの中性子捕獲断面積を測定することにより実証した。測定手法としては放射化法を適用し、中性子捕獲反応で生成する238Npの生成量を、これからの崩壊γ線をGe検出器で測定することにより測定した。モンテカルロ計算で得られた照射場の中性子束強度は、同時に照射したAuモニターの放射化量により校正した。核データライブラリーに収められている237Npの中性子捕獲断面積のエネルギー依存性情報より、本測定で導出される中性子捕獲断面積及び対応する中性子エネルギーの代表点を求めた。この結果、0.214±0.009MeVにおいて0.80±0.04bという5%の精度での測定値を得た。この結果は、ENDF/B-VII.0の評価値と一致するが、JENDL-3.3のそれより15%、JENDL/AC-2008のそれよりも13%大きくなることを示した。

37000732
Ginzburg-Landau simulation for a vortex around a columnar defect in a superconducting film
中井 宣之; 林 伸彦; 町田 昌彦
Journal of Physics and Chemistry of Solids 69(12), p.3301-3303(2008) ; (JAEA-J 05768)
 発表者らはギンツブルグ-ランダウ理論に基づき、磁束のピン外れについて数値シミュレーション研究を行った。本研究では、超伝導薄膜の柱状欠陥に注目しており、1本の柱状欠陥にピンされた1本の磁束がピンから外れる様子をシミュレーションしている。なお、対象となる柱状欠陥については金属と絶縁体の場合について研究した。さらに柱状欠陥に対して垂直に磁場を印加し、磁束がピンされる超伝導薄膜の臨界膜厚を評価した。ここで、臨界膜厚とは柱状欠陥の磁束に対するピニング力を表している。本研究の成果として、臨界膜厚は磁場強度に依存し、柱状欠陥の種類にも依存することを示した。

37000733
Effect of equilibrium properties on the structure of the edge MHD modes in tokamaks
相羽 信行; 林 伸彦; 滝塚 知典; 徳田 伸二; 小関 隆久
Journal of Physics; Conference Series 123, p.012008_1-012008_11(2008) ; (JAEA-J 05769)
 エッジローカライズモード(ELM)の原因の1つである周辺理想MHD不安定性のモード構造に対する平衡量、特にプラズマ断面形状と周辺部ペデスタル領域よりも内側の圧力分布の影響について数値解析を行った。その結果、ペデスタル領域の幅は同じであってもペデスタル領域よりも内側の圧力勾配を大きくすることにより、モード構造がプラズマ中心方向に広がった不安定性が発生すること、さらにこのようなモード構造の広がりはプラズマ断面形状が強く非円形化されている(楕円度・三角度が大きい)方が顕著に表れることを明らかにした。これは、非円形度の大きいプラズマではペデスタルを含むプラズマ周辺領域とそれよりもプラズマ中心に近い領域におけるバルーニングモードの安定化効果の差が大きくなるため、ペデスタル内側における圧力勾配がペデスタル領域における安定限界圧力勾配よりも小さくてもバルーニングモードの安定限界に近づくことが可能となることにより、ペデスタル・ペデスタル内側の各領域を跨いだ構造を持つ不安定モードが現れることが原因であることを示した。

37000734
ELM propagation in the low- and high-field-side Scrape-off Layer of the JT-60U tokamak
朝倉 伸幸; 川島 寿人; 大野 哲靖*; 松永 剛; 仲野 友英; 大山 直幸
Journal of Physics; Conference Series 123, p.012009_1-012009_11(2008) ; (JAEA-J 05770)
 JT-60Uトカマクでは可動静電プローブによるスクレイプ・オフ層プラズマの高速測定が行われELMにより排出された熱・粒子の伝搬が測定されている。第一壁への熱負荷を増加する要因と考えられる磁力線方向に伸びた線状のプラズマ束(フィラメント)の運動について、初めて測定された高磁場側スクレイプ・オフ層での結果と低磁場側での伝搬特性とを比較した。イオン飽和電流の高速測定により複数のピークが観測され、プローブ位置をフィラメントが通過したと考えられる。フィラメントは、高磁場側ではセパラトリクス付近で特に多く観測され、トロイダル方向へ回転しながらダイバータ方向へ高速(イオン音速)で移動する。複数のピークの時間間隔とそれぞれのピークの時間幅から、フィラメントのトロイダルモード数は15∼25、ポロイダル方向の広がりは、2∼4cm程度と評価される。低磁場側での観測結果は、モード数は約1.5倍、大きさは同程度であることを示唆する。さらに、フィラメントが通過した後、プラズマ流の逆流が高磁場側SOLの広い範囲で観測され粒子や不純物イオンの輸送に大きく影響を及ぼすと考えられる。

37000735
Comparison of the spatial and temporal structure of type-I ELMs
Kirk, A.*; 朝倉 伸幸; Boedo, J. A.*; Beurskens, M.*; Counsell, G. F.*; Eich, T.*; Fundamenski, W.*; Herrmann, A.*; 鎌田 裕; Leonard, A. W.*; Lisgo, S.*; Loarte, A.*; 大山 直幸; Pitts, R. A.*; Schmid, A.*; Wilson, H. R.*
Journal of Physics; Conference Series 123, p.012011_1-012011_10(2008) ; (JAEA-J 05771)
 トカマク・プラズマ周辺部で発生するタイプ-1ELMにより、熱・粒子はスクレイプ・オフ層に排出され、一部は磁力線方向に伸びた線状のプラズマ束(フィラメント)として伝搬が測定されている。本論文は、多くのトカマクで測定されたフィラメントの形状及び発生から第一壁へ向かう運動についてまとめた。フィラメントは、プラズマ周辺部でELM発生前に生成されるが、ポロイダル方向に伸びた断面形状であり装置の大きさに伴い増加する。排出されたフィラメントのトロイダル方向の回転速度は低下するが、半径方向に伝搬する速度はそのまま維持される傾向があり、第一壁への熱負荷の主な原因となる。1本のフィラメントは、ELMによりスクレイプ・オフ層に排出されたエネルギー損失全体の最大2.5%である。

37000736
Simulation study of density dynamics effect on the ELM behavior with TOPICS-IB
林 伸彦; 滝塚 知典; 相羽 信行; 小関 隆久; 大山 直幸
Journal of Physics; Conference Series 123, p.012025_1-012025_10(2008) ; (JAEA-J 05772)
 周辺部局在モード(ELM)に対する密度ダイナミクス効果を、統合コードTOPICS-IBによるシュミレーションで調べた。そのために、中性粒子モデルをTOPICS-IBに統合した。TOPICS-IBが、密度ダイナミクスを含めたプラズマ全体の挙動をシュミレーションできることを確かめた。ELM前の密度分布とELM中のスクレイプオフ層(SOL)密度の上昇のために、実験で観測されたようにELMによる粒子損失は衝突周波数に依存しないことがわかった。以前の研究のように衝突周波数を人為的に増倍する代わりに、密度・温度を変えることにより、ELMによるエネルギー損失の衝突周波数依存性がブートストラップ電流とSOL輸送に起因することを確かめた。さらに、温度緩和の効果によりイオンの対流損失と荷電交換損失が衝突周波数依存性を強めることを明らかにした。

37000737
Three-dimensional neutral transport simulation in the JT-60U H-mode plasmas
中嶋 洋輔*; 東園 雄太*; 河野 博一*; 竹永 秀信; 朝倉 伸幸; 大山 直幸; 鎌田 裕; 谷津 潔*
Journal of Physics; Conference Series 123, p.012029_1-012029_7(2008) ; (JAEA-J 05773)
 DEGAS ver. 63コードを用いてJT-60Uトカマク装置に適用した中性粒子挙動の3次元モンテカルロシミュレーション結果について報告する。ダイバータドーム,バッフル板,ダイバータ板形状を取り込んで、SOL/ダイバータからコアプラズマまでを含めたメッシュを作成した。DEGAS2コードを用いた2次元シミュレーションとのベンチマークを行い、同シミュレーションの妥当性を確認した。ガスパフによる中性粒子供給の3次元シミュレーションを行い、ガスパフポート近傍に局在した中性粒子密度を評価し、トロイダルとポロイダル方向への中性粒子の拡散を定量的に評価した。また、Hモードプラズマにおける中性粒子侵入と電離分布の密度依存性を調べ、密度ペデスタル幅との関係について議論した。

37000738
Effects of low central fuelling on density and ion temperature profiles in reversed shear plasmas on JT-60U
竹永 秀信; 井手 俊介; 坂本 宜照; 藤田 隆明; JT-60チーム
Journal of Physics; Conference Series 123, p.012037_1-012037_8(2008) ; (JAEA-J 05774)
 JT-60Uの負磁気シアプラズマにおいて、負イオン源中性粒子ビーム入射と電子サイクロトロン加熱を用いて低中心粒子補給の密度及びイオン温度分布に与える影響を調べた。強い内部輸送障壁を形成した後に、正イオン源中性粒子ビーム加熱から電子サイクロトロン加熱に切り替えることで中心粒子補給を低減した場合には、強い密度及びイオン温度の内部輸送障壁が維持された。プラズマ電流立ち上げ時に低中心粒子補給と高中心粒子補給とした場合を比較した結果、両ケースに同様な密度・イオン温度の内部輸送障壁が形成された。密度勾配とイオン温度勾配の間には相関が見られ、このことは粒子輸送とイオンの熱輸送の間に関連があること、もしくは密度勾配がイオン温度勾配モード等の不安定性を安定化することに寄与しイオン温度の内部輸送障壁の形成を促進させたことを示唆していると考えられる。これらの結果は、炉心条件下でも密度及びイオン温度の内部輸送障壁が形成され得ることを意味している。

37000739
Field-induced incommensurate order and possible supersolid in the S=1/2 frustrated diamond chain
坂井 徹; 岡本 清美*; 利根川 孝*
Journal of Physics; Conference Series 145, p.012065_1-012065_4(2009) ; (JAEA-J 05775)
 スピン1/2歪んだダイヤモンド鎖の磁化過程について、有限系の数値的厳密対角化と有限サイズスケーリングにより解析した。その結果、飽和磁化の3分の1で生じる磁化プラトーの周辺で、磁場誘起非整合秩序が起きることが判明した。また、スーパーソリッドが実現する可能性についても議論する。

37000740
Two-step quantum spin flop transition in spin ladders
坂井 徹; 岡本 清美*; 利根川 孝*
Journal of Physics; Conference Series 150, p.042169_1-042169_4(2009) ; (JAEA-J 05776)
 桁方向に強磁性的な交換相互作用を持つスピンラダー系の磁化過程について、数値的厳密対角化と有限サイズスケーリングの手法を用いて理論的に解析した。その結果、容易軸タイプの異方性がある場合には、外部磁場によって誘起される新しい2段階スピンフロップが起きることが判明した。

37000741
Experimental analyses by SIMMER-III on molten fuel freezing and boiling pool behavior
山野 秀将; 飛田 吉春
Journal of Power and Energy Systems (Internet) 3(1), p.249-260(2009) ; (JAEA-J 05777)
 この論文では、COMPASSコードの総合検証のために先行的に実施されるSIMMER-IIIによる実験解析について述べる。ここでは、炉心崩壊事故における主要現象である2つの分野、すなわち、溶融燃料の固化・分散,溶融燃料プールの沸騰挙動を対象とする。燃料固化挙動を解析するため、GEYSER炉外実験とCABRI-EFM1炉内実験を選定した。SIMMER-IIIによる計算はGEYSER実験で測定された燃料侵入長とよく一致する結果を得た。CABRI-EFM1実験の解析についても、SIMMER-IIIは燃料固化挙動を再現した。溶融燃料とスティール混合物からなる沸騰プールは燃料とスティール間の熱伝達により特徴づけられる。CABRI-TPA2実験はスティール液滴周りを覆うスティール蒸気により燃料とスティール間の過渡的な熱流束が小さくなることを示唆した。SIMMER-IIIでTPA2実験を解析したところ、燃料とスティール間の熱伝達を減じることによって実験で観察されたスティール沸騰挙動をよく模擬できることが示された。

37000742
Creep-fatigue evaluation by hysteresis energy in modified 9Cr-1Mo steel
永江 勇二; 高屋 茂; 浅山 泰
Journal of Solid Mechanics and Materials Engineering (Internet) 3(3), p.449-456(2009) ; (JAEA-J 05778)
 Researchers have proposed the methods of creep-fatigue evaluation, such as time fraction rules or ductility exhaustion rules. However, the microstructure change during creep-fatigue should not be directly considered in these methods. The hysteresis energy contributes the microstructure change related to the damage and the crack initiation. We have evaluated the creep-fatigue based on the hysteresis energy in modified 9Cr-1Mo steel as a candidate for structural material in Fast Breeder Reactor (FBR) plant. Creep-fatigue and fatigue tests were carried out at 723∼873 K in air. We converted the hysteresis energy a cycle at the middle of life (Nf/2, Nf is the number of cycles to failure) into that of an hour, and the number of cycles into the time to failure. The relationship can be expressed by the power-law function. We have concluded that the creep-fatigue life can be evaluated based on the hysteresis energy an hour at Nf/2.

37000743
Effects of initial focusing on the blueshifting of high-power laser pulses
Koga, J. K.
Journal of the Optical Society of America, B 26(5), p.930-938(2009) ; (JAEA-J 05779)
 Since the advent of high power short pulse lasers, there has been a broad interest in the propagation dynamics of high power pulses in neutral gases. When high power ultra-short laser pulses are focused in neutral gases to sufficient irradiance levels, the gas is ionized and plasma forms. Experiments with a laser pulse focused in a gas chamber have shown a total blue-shift of the laser pulse, which was fixed and independent of the gas when the power is above the critical power for self-focusing. By directly solving Maxwell's equations including higher order gas polarization and using a semi-analytical method for pulse propagation we study the generation of plasma by high irradiance laser pulses propagating in a neutral gas and determine the effect of initial focusing angle on the blue-shift of the laser pulse. By varying the initial focusing angle we find that below a specific angle the blue-shift is nearly fixed and above the specific angle the shift changes with the initial angle.

37000744
Magnetic-field-induced magnetic phase transitions associated with ferroelectricity in multiferroic ErMn2O5
木村 宏之*; 脇本 秀一; 福永 守*; 野田 幸男*; 金子 耕士; 目時 直人; 加倉井 和久; 近 桂一郎*
Journal of the Physical Society of Japan 78(3), p.034718_1-034718_5(2009) ; (JAEA-J 05780)
 Microscopic magnetic properties under the application of a magnetic field were investigated in multiferroic ErMn2O5 using neutron diffraction. Below T=8 K upon applying a magnetic field along the c-axis, an incommensurate-commensurate-incommensurate magnetic phase transition occurred. On the contrary, when the magnetic field was applied parallel to the a-axis, no phase transition occurred up to H=5 T. H-T phase diagrams obtained in the present study show a one-to-one correspondence with H-T phase diagrams for previously obtained dielectric properties, indicating that the field-induced dielectric transition was triggered by magnetic phase transition. The contrastive phase diagram between H‖c and H‖a suggests that the induced Er3+ magnetic moment contributed significantly to the magnetic and dielectric responses to the magnetic field.

37000745
High temperature oxidation of Nb-containing Zr alloy cladding in LOCA conditions
中頭 利則; 永瀬 文久; 更田 豊志
Nuclear Engineering and Technology 41(2), p.163-170(2009) ; (JAEA-J 05781)
 燃料被覆管のLOCA時高温酸化挙動を調べるために、79MWd/kgまで照射された高燃焼度PWR燃料被覆管を用いて水蒸気雰囲気における等温酸化試験を行った。原子炉照射中に形成された腐食酸化膜が水蒸気中の高温酸化を抑制する効果が示された。一方、高温酸化に及ぼす水素吸収の影響はほとんど見られなかった。M5被覆管は1273Kにおいて有意に小さい酸化速度を示したが、より高い温度においては酸化速度に及ぼす合金組成の影響は小さく、従来のジルカロイ4とほぼ同等の酸化速度を示した。

37000746
Evaluation of sensitivity coefficients of effective multiplication factor with respect to prompt fission neutron spectrum
長家 康展; Kodeli, I.*; 千葉 豪; 石川 眞
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 603(3), p.485-490(2009) ; (JAEA-J 05783)
 実効増倍率の核データ起因不確定性を計算する際、核分裂スペクトル起因誤差は非常に重要である。また、最近、実効増倍率の核分裂スペクトル起因誤差は、他の断面積起因誤差に比べて極めて大きいと指摘されている。核分裂スペクトル起因誤差を計算するには、実効増倍率の核分裂スペクトルに関する感度係数が必要であるが、この感度係数を計算する際に核分裂スペクトルの規格化条件を用いる場合と用いない場合があることがわかった。そこで、本研究では、核分裂スペクトルの規格化条件を用いる場合と用いない場合で、実効増倍率の変化量及び核分裂スペクトル起因誤差に差異を生じるのかどうか調べた。その結果、規格化されていない感度係数と規格化された感度係数どちらを用いても、実効増倍率の変化量及び核分裂スペクトル起因誤差は同じ結果となることがわかった。ただし、核分裂スペクトル起因誤差については、ENDFフォーマットFile 35の共分散行列の制約条件を満たしていなければならない。

37000747
Hydrogen retention induced by ion implantation in tungsten trioxide films
井上 愛知; 山本 春也; 永田 晋二*; 吉川 正人; 四竈 樹男*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 267(8-9), p.1480-1483(2009) ; (JAEA-J 05784)
 酸化タングステン中に導入される水素量と光学特性の関係を定量的に調べた。反応性スパッタ法により、金属タングステン(200nm)によって表面を被覆した非晶質WO3(300nm)膜を作製し、10keVに加速したH2+イオンを照射した。その結果、膜中に注入された水素濃度は、照射量とともにH/W∼0.4まで増加することがわかった。水素の導入量がH/W∼0.1までは、WO3膜の吸光係数は水素導入量に比例して約0.3μm-1まで増加したが、それ以上では緩やかに増加し約0.4μm-1で飽和した。このことから、H/W∼0.1未満の注入量では、WO3の吸光度を測定することでWO3内部への水素導入量を定量できることがわかった。

37000748
Ion induced structural modification and nano-crystalline formation of Zr-Al-Ni-Cu metallic glasses
永田 晋二*; 笹瀬 雅人*; 高廣 克己*; 土屋 文*; 井上 愛知; 山本 春也; 四竈 樹男*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 267(8-9), p.1514-1517(2009) ; (JAEA-J 05785)
 Zr基金属ガラスの構造変化及び微細結晶化に及ぼすイオンビーム照射効果について調べた。Zr55Al10Ni5Cu30からなる厚さ2mmの板状試料と薄膜試料に対して、室温のもとMg, P, Au及びBiイオンを100∼500keVの範囲で、最大2×1016ions/cm2まで照射した。X線回折を用いて照射試料の結晶構造を観察した結果、照射による長周期構造変化は見られなかった。Mgイオン照射した試料以外ではTEM観察によってfcc-Zr2Cuの析出を観察することができた。また、Auイオンを照射した試料ではX線光電子分光法によりAu-Zr又はAu-Cu金属間化合物の形成が認められた。これらの結果から、イオン照射は、金属ガラスの長周期構造にあまり影響を与えないが、金属間化合物の析出を促進させる効果があり、その効果は重イオンであるほど顕著であることが明らかになった。

37000749
Evaluation of the decay heat limits in electrorefiners for reprocessing spent metallic fuels
小林 嗣幸
Nuclear Technology 166(2), p.134-145(2009) ; (JAEA-J 05786)
 2次元の定常伝熱計算結果に基づき電解槽中の溶融塩に蓄積する崩壊熱に対する設計上の制限値を提案した。電解槽の外面を強制冷却によって冷却することにより自然循環除熱に比べて崩壊熱の制限値を30∼40%増加させられることがわかった。過渡時も含めた制限値を定常伝熱計算によって求めた平衡温度から評価することの妥当性を1次元の非定常計算によって確認した。ここで、提案された崩壊熱の制限値は、溶融塩の交換頻度に対して使用済燃料中のボンドNaや希土類FPの蓄積より重要な制限要因となることがわかった。

37000750
Simulation studies for the vortex depinning dynamics around a columnar defect in superconductors
中井 宣之; 林 伸彦; 町田 昌彦
Physica C 468(15-20), p.1270-1273(2008) ; (JAEA-J 05787)
 Using the time-dependent Ginzburg-Landau equation with the complex relaxation rate and Maxwell equation, we perform the numerical simulation of vortex-pinning dynamics in two cases of metal-pinning and insulator-pinning. At the same time, the vortex-flow voltage induced by the vortex-motion and the Hall coefficient are calculated. Numerical simulations reveal that the trapped vortex at the pinning-site disrupts the vortex-motion of non-trapped vortices and the Hall coefficient depends on that vortex-motion.

37000751
Spiral spin structures and origin of the magnetoelectric coupling in YMn2O5
Kim, J.-H.*; Lee, S.-H.*; Park, S. I.*; Kenzelmann, M.*; Harris, A. B.*; Schefer, J.*; Chung, J.-H.*; Majkrzak, C. F.*; 武田 全康; 脇本 秀一; Park, S. Y.*; Cheong, S.-W.*; 松田 雅昌; 木村 宏之*; 野田 幸男*; 加倉井 和久
Physical Review B 78(24), p.245115_1-245115_10(2008) ; (JAEA-J 05788)
 By combining neutron four-circle diffraction and polarized neutron-diffraction techniques we have determined the complex spin structures of a multiferroic YMn2O5 that exhibits two ferroelectric phases at low temperatures. The obtained magnetic structure has spiral components in both the low-temperature ferroelectric phases that are magnetically commensurate and incommensurate, respectively. Among proposed microscopic theories for the magnetoelectric coupling, our results are consistent with both the spin-current mechanism and the magnetostriction mechanism. Our results also explain why the electric polarization changes at the low-temperature commensurate-to-incommensurate phase transition.

37000752
Intermetallic charge transfer in FeTiO3 probed by resonant inelastic soft X-ray scattering
安居院 あかね; 魚住 孝幸*; 水牧 仁一朗*; Käämbre, T.*
Physical Review B 79(9), p.092402_1-092402_4(2009) ; (JAEA-J 05789)
 われわれはFeTiO3の電子状態を調べるために、スウェーデンの放射光共同利用施設MAX-lab1-I511バルクステーションにおいてTi 2p吸収端での共鳴発光分光測定を行った。測定から得られたRIXSスペクトルは、弾性散乱ピークから-2.5eVと-4.5eVに明確なピークを示した。これらFe3d-Ti3dの直接金属間電荷移動であることがわかった。この解析にわれわれが開発したダブルクラスターモデルを適応した。

37000753
Viscosity behavior spanning four orders of magnitude in As-S melts under high pressure
Brazhkin, V. V.*; 神崎 正美*; 舟越 賢一*; 片山 芳則
Physical Review Letters 102(11), p.115901_1-115901_4(2009) ; (JAEA-J 05791)
 As-S液体は圧縮によって重合化及び金属化を含む変化を起こす。われわれはAs-S液体の粘性を高圧下で測定した。その結果、4から5桁にも及ぶ粘性の大きな変化が明らかになった。分子性液体の状態では、As-S液体の粘性の値は穏当なものであるが、共有結合によって原子がつながった状態では非常に高く、金属状態では低い。他の融体の高圧下の粘性もこの結果から予測することが可能である。融体の粘性が加圧によって何桁も変わるという可能性は、地球科学,物質科学などに重要な意味を持つ。

37000754
Numerical study of the ripple resonance diffusion of alpha particles in tokamaks
三又 秀行*; 谷 啓二*; 筒井 広明*; 飛田 健次; 飯尾 俊二*; 嶋田 隆一*
Plasma and Fusion Research (Internet) 4, p.008_1-008_8(2009) ; (JAEA-J 05792)
 トカマクのリップル磁場中におけるアルファ粒子について、軌道追跡モンテカルロコードを用いて拡散係数のエネルギー依存性を調べた。拡散係数はリップル共鳴エネルギーから少し離れた高エネルギー及び低エネルギー側で増長され、ちょうど共鳴エネルギーと重なるところでは極小値を持つ、いわばM字型の依存性を持つことが明らかになった。リップル共鳴はバナナ粒子の歳差運動とリップルの位置が同じ位相で重なるために生ずるもので、粒子軌道のトロイダル角とポロイダル角の位相空間上に生ずるアイランド構造がこのような拡散係数のM字型の依存性を引き起こしている。このようなリップル共鳴拡散は核融合反応で生成したアルファ粒子の減速過程において顕著になると考えられる。

37000755
Optimization of the viewing chord arrangement of the ITER poloidal polarimeter
山口 太樹; 河野 康則; 藤枝 浩文; 栗原 研一; 杉原 正芳*; 草間 義紀
Plasma Physics and Controlled Fusion 50(4), p.045004_1-045004_15(2008) ; (JAEA-J 05794)
 国際熱核融合実験炉(ITER)のプラズマ中心部における安全係数分布の計測にポロイダル偏光計測装置が用いられる予定である。本研究では、精度の良い安全係数分布を同定するために適したポロイダル偏光計側装置の視線配置について、平衡再構築コードを用いた評価・検討を行った。平衡再構築コードは本研究で開発したものであり、ポロイダル偏光計測装置の計測データのみを用いてプラズマ内部の磁気面分布を評価することが可能であるという特長を持つ。結果として、ITER運転シナリオとして予測されている3つの平衡(誘導運転シナリオの燃焼フェーズ,非誘導運転シナリオの燃焼フェーズ及び誘導運転シナリオのリミターフェーズ)のそれぞれに対する最適な視線配置を得ることができ、プラズマ中心部における安全係数分布の精度として3%以内が見込まれた。さらに、誘導運転シナリオの燃焼フェーズに最適化した視線配置を他の平衡に適用し、それぞれの平衡に最適化した視線配置を用いた場合と比較して、大きな精度の劣化が生じないことを示した。誘導運転シナリオの燃焼フェーズに最適化した視線配置は、ITERポロイダル偏光計側装置の有望な視線配置であると言える。

37000756
Ising spin glass on Bethe-like lattices
横田 光史
Progress of Theoretical Physics 121(3), p.603-625(2009) ; (JAEA-J 05795)
 スピングラス転移温度近傍でのレプリカ対称性の破れに焦点を当てて、カクタス格子上のイジングスピングラスを調べた。小さなループがもたらすフラストレーションの効果を見るために、スピングラス秩序関数と小さな磁場中のAT線を求めた。現実の格子上における短距離相互作用モデルの近似として、それらの結果を小さなループのないベーテ格子上のモデルにおける結果と比較した。三角,四面体,正方形カクタス格子上のモデルを取り扱った。スピングラス秩序関数の傾きに関しては、対応するベーテ格子上のモデルと比べて、カクタス格子上のモデルにおける値が小さくなるという結論を得た。また、磁場中のレプリカ対称性の破れる領域の広さに関しては、三角及び四面体カクタスでループ数が最小の場合を除いて、対応するベーテ格子上のモデルに比べて、カクタス格子上のモデルでは広くなるという結論を得た。これらの結論を得るために、レプリカ法でスピングラス秩序関数間に成り立つ方程式を用いた。この方程式とレプリカ法を用いないで導かれる方程式との関係を明らかにした。

37000757
A Method for the analysis of domain movements in large biomolecular complexes
Poornam, G. P.*; 松本 淳; 石田 恒; Hayward, S.*
Proteins: Structure, Function, and Genetics 76(1), p.201-212(2008) ; (JAEA-J 05796)
 A new method for the analysis of domain movements in large, multichain, biomolecular complexes is presented. The method is applicable to any molecule for which two atomic structures are available that represent a conformational change indicating a possible domain movement. The method is blind to atomic bonding and atom type and can, therefore, be applied to biomolecular complexes containing different constituent molecules such as protein, RNA, or DNA. Here, we report on the application of the method to biomolecules covering a considerable size range: hemoglobin, liver alcohol dehydrogenase, S-Adenosylhomocysteine hydrolase, aspartate transcarbamylase, and the 70S ribosome. The results provide a depiction of the conformational change within each molecule that is easily understood, giving a perspective that is expected to lead to new insights.

37000758
Radiation-induced luminescence from TiO2 by 10-keV N+ ion irradiation
北澤 真一; 山本 春也; 浅野 雅春; 齋藤 勇一; 石山 新太郎
Radiation Physics and Chemistry 77(10-12), p.1333-1336(2008) ; (JAEA-J 05797)
 二酸化チタン内部でのエネルギー移行を調べるために10keVのエネルギーの窒素のイオン照射による室温状態でのラジオ・ルミネッセンス(RIL)の研究を行った。二酸化チタン試料は、ゾルゲル法及び直接酸化法により作製した。紫外-可視領域のRILスペクトルには、結晶欠陥による可視光のバンドが2.0eVに、二酸化チタン結晶内のTi3+ 3dとO2- 2s間の放射遷移による紫外光のバンドが2.0eVに観測され、ローレンツ曲線によるフィッティングにより解析した。二酸化チタンの結晶によるバンドギャップによる違いがバンドの強度比に現れないことから、RILは十分に大きなエネルギーによる励起状態から緩和されて生成した準位からの放射遷移によると考えられる。この研究により、二酸化チタンの励起・緩和過程の一部が解明された。

37000759
Redox equilibria of Pu4+/Pu3+ and PuO22+/Pu4+ couples in molten NaCl-CsCl eutectic as measured by absorption spectrophotometry
永井 崇之; 上原 章寛*; 藤井 俊行*; 白井 理*; 明珍 宗孝; 山名 元*
Radiochimica Acta 97(4-5), p.209-212(2009) ; (JAEA-J 05798)
 使用済MOX燃料の再処理プロセスを実用化するため、溶融塩中におけるウラン及びプルトニウムの酸化還元挙動は重要な情報となる。酸化物電解法による乾式再処理プロセスでは、溶融NaCl-CsCl共晶塩中に使用済燃料を溶解し、溶存したU(VI)イオン及びPu(VI)イオンを電解により二酸化物として析出させる。本研究では、923Kの溶融NaCl-CsCl共晶塩中におけるPu4+/Pu3+対及びPuO22+/Pu4+対の見かけ上の酸化還元電位を求めた。溶融塩中のPu3+, Pu4+及びPuO22+の存在割合は、紫外可視近赤外吸光分光測定により求めた。PuO2は、塩素ガスを供給して溶融NaCl-CsCl共晶塩に溶解させた。プルトニウムの原子価(Pu0, Pu3+, Pu4+及びPuO22+)は、塩素ガス,酸素ガス及びアルゴンガスの流量比を変えることで調整した。

37000760
Development of a high-brightness and low-divergence lithium neutral beam for a Zeeman polarimetry on JT-60U
小島 有志; 神谷 健作; 井口 春和*; 藤田 隆明; 垣内 秀人*; 鎌田 裕
Review of Scientific Instruments 79(9), p.093502_1-093502_5(2008) ; (JAEA-J 05799)
 JT-60Uにおける周辺電流分布計測を目的として、高輝度・低発散角を有する中性リチウムビーム源の開発に成功した。リチウムビームプローブではゼーマン偏光成分を検出することにより、磁場のピッチ角から電流分布,放射強度分布から密度分布を計測する。JT-60Uにおけるリチウムビームプローブには6.5mの長距離ビーム輸送が必要であるため、高輝度で低発散角のリチウムビームが不可欠である。高S/Nを稼ぐための高輝度リチウムイオン源として電子ビーム加熱型イオン源を開発し、収束性を高めるために中心ピーク型の温度分布に調整し、イオン放出面を凹型にした。このイオン源を用いて、10keVのリチウムイオンビームを10mA引き出すことに成功し、50秒間の長時間引き出しを達成した。ビームエネルギーはJT-60Uのペデスタル密度に対応するため、10keVの低エネルギーが必要であるが、低エネルギー大電流ビームは非常に空間電荷が強く、空間電荷を考慮した軌道計算が必要である。よって、ゼーマン偏光計測のための低発散角を目的として、軌道計算を行うことによりイオン銃の電極形状を最適化し、実際に実験を行って0.2度の発散角を達成した。

37000761
Radiation-induced luminescence from TiO2 by 10 keV O+, N+ and Ar+ ion irradiation
北澤 真一; 齋藤 勇一; 山本 春也; 浅野 雅春; 石山 新太郎
Thin Solid Films 517(13), p.3735-3737(2009) ; (JAEA-J 05800)
 二酸化チタン内部でのエネルギー移行を調べるために10keVのエネルギーの酸素,窒素及びアルゴンのイオン照射による室温状態でのラジオ・ルミネッセンス(RIL)の研究を行った。紫外-可視領域のスペクトルには、多くの原子からのピークと3つのバンドが観測された。2つの可視光のバンドは結晶欠陥によるもので、紫外のバンドは二酸化チタン結晶内のTi3+ 3dとO2- 2s間の放射遷移による。この実験結果から、RILは十分に大きなエネルギーによる励起状態から緩和されて生成した準位からの放射遷移によると考えられる。この研究により、二酸化チタンの励起・緩和過程の一部が解明された。

37000762
Bahavior of HTGR particle fuel under reactivity initiated accident condition
梅田 幹; 植田 祥平; 杉山 智之
Transactions of the American Nuclear Society 98, p.987(2008) ; (JAEA-J 05801)
 Pulse irradiation experiments using the Nuclear Safety Research Reactor (NSRR) were performed in order to clarify the failure mechanism of the HTGR fuel coating and evaluate the failure limit under RIA condition. Unirradiated TRISO-coated particle was used for the experiments. The energy deposition in the experiments ranged from 580 to 1870 J/gUO2 and the corresponding peak temperatures at the center of fuel particles were estimated from 1240 to 3680 ℃ by the computer analysis. Visual observation, X-ray radiography, ceramography, etc. were carried out after the pulse irradiation. The coated fuel particle started to fail at 1440 J/gUO2 (at which the corresponding peak fuel temperature was 2970 ℃) and mostly failed above 1870 J/gUO2 (3680 ℃). The ceramograph indicated that the fuel kernel expanded and the PyC buffer layer became dense in case of fuel failure. The columnar grain growth and the void generation were also observed at the center of the fuel kernel above 1640 J/gUO2 (3210 ℃) by ceramograph. It was suggested from the results that the thermal expansion due to the melting of fuel kernel might be a key factor in the fuel particle failure within the range of the present experimental conditions.

37000763
Antiferroelectric correlation in relaxor Pb(In1/2Nb1/2)O3 and ferroelectric correlation in antiferroelectric Pb(In1/2Nb1/2)O3
大和田 謙二; 廣田 和馬*; 寺内 暉*; 福田 竜生; 筒井 智嗣*; Baron, A. Q. R.*; 水木 純一郎; 大和 英弘*; 安田 直彦*
Transactions of the Materials Research Society of Japan 34(1), p.19-22(2009) ; (JAEA-J 05802)
 Pb(In1/2Nb1/2)O3(PIN)はBサイトの秩序度を変えることにより、反強誘電体(完全秩序化),強誘電体(部分秩序化),リラクサー(完全無秩序化)の状態を取りうる。筆者らがこれまでに行ったX線非弾性散乱の結果から、PINにおいては反強誘電,強誘電不安定性が共存しBサイトのランダムネスによってその不安定性が制御され、反強誘電からリラクサーまでの各相が現れるモデルを提案した。今回われわれは、このモデルの妥当性を調べるためにリラクサーPINのフォノン,反強誘電PINの散漫散乱に注目した。リラクサーPINのフォノンはゾーン境界で反強誘電相関を示す弱いソフト化を示した。一方、反強誘電PINにおいてはゾーン中心において散漫散乱が観測され強誘電相関の存在を示唆する結果を得た。これらの結果は、われわれの提案した反強誘電相関と強誘電相関の共存を示すものである。

37000764
低レベル放射性廃棄物が残してくれた恩恵
柳澤 和章; 久米 民和*; 幕内 恵三*; 井上 登美夫*; 菰田 文男*; 前田 充*
デコミッショニング技報 (39), p.44-61(2009) ; (JAEA-J 05803)
 低レベル廃棄物となった放射性物質が私たちに残してくれた恩恵について考えた。今回は、我が国の工業,農業及び医学・医療における放射線利用の直接経済規模という切り口で、その恩恵の定量化を行った。その結果2006年時点で、工業分野で約2兆円、農業分野で約0.3兆円、医学・医療分野で約1.5兆円となり、放射線利用全体では約4兆円となっていた。放射線利用による恩恵により、私たちはドライブやインターネットを楽しみ、食を楽しめる。核医学による診断や治療で何百万というヒトの命が延命され、生活の質が改善され、痛みや苦痛が和らげられている。放射線利用の恩恵を理解している国民は現状ではそう多くない(20%以下)と思われるが、本報告書が理解の一助となれば幸いである。

37000765
数値シミュレーションによるNb3Sn素線の波状曲げ変形時の超電導特性の評価
村上 陽之*; 植田 浩史*; 石山 敦士*; 小泉 徳潔; 奥野 清
電気学会論文誌,B 128(6), p.853-859(2008) ; (JAEA-J 05804)
 ITER-EDAの中で開発されたNb3Snモデル・コイル導体で、電磁力によって素線が波状に曲げ変形し、臨界電流性能が劣化する現象が観測された。素線の曲げ変形による臨界電流性能の劣化機構を解明するために、数値解析コードを開発した。解析結果は、単一素線の波状曲げ変形試験結果とよく一致し、コードの妥当性を示すことができた。さらに、素線に加わる横荷重のピッチ,温度,銅の汚染防止用のタンタル・バリアの厚さ,ブロンズのRRRなどをパラメータとして計算を行い、荷重のピッチを短くすること、及びタンタル・バリアの厚さを厚くすることが劣化を防止するために有効であることを示した。

37000766
Study of mechanism of mixed conduction due to electrons and oxygen ions in (La0.75Sr0.25)MnO3.00 and (Ba0.5Sr0.5)(Co0.8Fe0.2)O2.33 through rietveld refinement and MEM analysis
伊藤 孝憲*; 白崎 紗央里*; 藤江 良紀*; 北村 尚斗*; 井手本 康*; 大坂 恵一*; 廣沢 一郎*; 井川 直樹
電気化学および工業物理化学 77(2), p.161-168(2009) ; (JAEA-J 05805)
 電子伝導と酸素イオン伝導の混合伝導体である(La0.75Sr0.25)MnO3.00と(Ba0.5Sr0.5)(Co0.8Fe0.2)O2.33の結晶構造を中性子回折法によって、電子密度分布を放射光X線回折法によって解析した。(La0.75Sr0.25)MnO3.00は空間群がR 3cであり、(La,Sr), Mn, Oが各々6a, 6b, 18eサイトを占める。(Ba0.5Sr0.5)(Co0.8Fe0.2)O2.33Pnmaを取り、(Ba,Sr), (Co/Fe), O1, O2が各々8a, 8a, 4c, 8dサイトを占め、また、O1及びO2の占有率は0.59, 0.87であることがわかった。(La0.75Sr0.25)MnO3.00におけるMn-O面と(Ba0.5Sr0.5)(Co0.8Fe0.2)O2.33における(Co, Fe)-O2面は強い共有結合を持つことから電子伝導に寄与し、(Ba0.5Sr0.5)(Co0.8Fe0.2)O2.33における(Ba, Sr)-O1面は高い酸素欠損率を有する強いイオン結合性を持つことから酸素イオン伝導に寄与することが明らかになった。

37000767
石油王国と原子力エネルギー
柳澤 和章
原子力eye 55(3), p.27-32(2009) ; (JAEA-J 05806)
 湾岸協力諸国(GCC)が原子力技術の平和利用に関する国際シンポジウムをアブドッラ・ビン・アブドッルアジーズ・アール・サウード国王の支援のもと、サウジアラビアの第二の都市ジェッダにあるアブドルアジズ王立大学で開催した。サウジアラビアの原子力研究開発への第一歩を意味する国際会議である。この記念すべき第1回国際シンポジウムに報告者は出席し、原子炉事故に関する講演を行う栄誉を得た。会議では、原子力エネルギーと核燃料サイクル,研究炉,ラジオアイソトープの応用と放射線防護に関するさまざまな議論が展開された。その中から幾つかのトピックスを紹介する。

37000768
原子力機構・放射線標準施設における252Cf線源を利用した中性子照射場の基準量設定
三枝 純
放計協ニュース (43), p.4-5(2009) ; (JAEA-J 05807)
 日本原子力研究開発機構・放射線標準施設(FRS)では平成20年に252Cf線源(2GBq)の更新を行った。線源の更新に伴い、FRSの速中性子照射場と熱中性子照射場の基準量を再設定した。これらの基準量の評価方法と結果について解説する。

37000769
被ばく線量モニタリングのための実用量について
吉澤 道夫
保健物理 44(1), p.36-45(2009) ; (JAEA-J 05809)
 国際放射線単位測定委員会(ICRU)は、周辺線量当量,方向性線量当量及び個人線量当量という、外部被ばくモニタリングのための実用量(Operational Quantities)を勧告している。実用量については、その必要性を含めて、多くの議論がなされてきた。実用量には長い歴史があり、ICRUは実用量に関する多くのレポートを出版している。本稿では、関連するICRPレポートとICRP2007年勧告における実用量の発展を解説する。

37000770
東海再処理施設から海洋放出されたトリチウムの海水中濃度及び拡散状況
中野 政尚; 國分 祐司; 武石 稔
保健物理 44(1), p.60-65(2009) ; (JAEA-J 05810)
 1978年から30年間に渡る東海再処理施設周辺海域の環境影響詳細調査によって10,800件の海水中トリチウム濃度を測定した。海水中濃度,希釈倍率,拡散状況等について検討した。その結果、再処理施設からの排水放出に起因するトリチウム濃度がスポット的に観測されたが、あらかじめ安全審査で評価された希釈倍率以上に希釈された正常な拡散であり、またその濃度は法令に定める周辺監視区域外の水中の濃度限度に比べて十分に低く、環境安全上問題となるレベルではないことが確認された。

37000771
Development of the methodology on priority of element-specific biosphere parameters for geological disposal applicable to any proposed repository site
加藤 智子; 鈴木 祐二*; 大井 貴夫
保健物理 44(1), p.72-79(2009) ; (JAEA-J 05811)
 放射性廃棄物の地層処分生物圏評価に用いるパラメータには、処分場サイトの地質環境特性に応じて設定される物質移行パラメータや、サイトの地表環境特性を反映しつつ、評価対象とする元素の特性に応じて設定されるパラメータ(以下、元素固有パラメータ)がある。生物圏評価で用いるパラメータの数は膨大であるため、効率的な方法に基づくパラメータの設定が求められる。本検討では、既存のデータベースの利用可能性を判定するためのフローを作成したうえで、評価上重要となる核種について、サイトでデータを取得すべき元素固有パラメータを特定し、実際のサイトでの調査の効率化に資する情報を提示した。

37000772
放射線取り扱い施設における重度被ばく者の線量評価システム
高橋 史明; 重森 祐志*; 関 暁之
保全学 8(1), p.56-61(2009) ; (JAEA-J 05812)
 放射線取り扱い施設で、人為,技術的なエラー要因により、多量の放射線による被ばく者が発生する可能性は完全に排除できない。万一、保全検査時に被ばくが発生した場合は、健康被害を最小限にする医療措置の方針を、被ばくの程度(全身の被ばく線量)に基づき決定する。その後、具体的な医療措置を遂行するには、体内の線量分布の情報が必要となる。放射線輸送計算コードを利用した場合、被ばく者の体内の線量を解析できるという特長がある。一方で、放射線輸送計算による解析においては、入力ファイルの作成,出力ファイルに基づく線量情報の提示は煩雑な手順などを必要とし、人的なエラーが発生する可能性がある。そこで、入力条件をPC画面で逐次確認しながら対話形式で入力ファイルを作成できるプログラムなどを組み入れて、放射線輸送計算コードを効率的に利用する線量評価システムを開発した。この成果は放射線取り扱い施設における保全検査時の被ばく評価に利用可能である。

37000773
Synchrotron radiation photoemission spectroscopy for native oxide layer on Vanadium and VCrTa
寺岡 有殿; 吉越 章隆; Harries, J.
Journal of Surface Analysis 15(3), p.303-306(2009) ; (JAEA-J 05813)
 水素貯蔵金属であるV(111)、多結晶バナジウム、VCrTa合金の表面酸化膜と水素脱離温度との関係を研究するために、自然酸化膜で覆われたそれら金属表面を軟X線放射光を用いて光電子分光分析した。酸化膜の深さ分析を放射光のエネルギーを変えることで行い、膜厚を推定した。V(111)の自然酸化膜は713Kに加熱することで消失したが、多結晶バナジウムとVCrTa合金では873Kでも酸素は残留した。その場合、VとCrの酸化物は消失するが、Taの酸化物が残留することがわかった。加熱によって酸化の組み換えが起こったと考えられる。したがってTaの酸化がVCrTaの酸化膜を決定するといえる。さらに、人工酸化膜形成を超音速分子線で制御できることも見いだされた。

37000774
水素貯蔵材料の高圧中性子散乱実験
町田 晃彦; 大友 季哉*; 服部 高典; 深澤 裕
高圧力の科学と技術 19(1), p.24-30(2009) ; (JAEA-J 05814)
 水素貯蔵材料又は水素化物における興味として、格子間に位置する水素と周りの金属原子との相互作用を理解することがその一つとして挙げられる。中性子散乱実験は、格子間水素の位置を決定できる実験手法であり、水素-金属間相互作用の研究に最適な手法である。高圧下で高水素密度状態を実現した際に金属格子が特異な構造変化を示すことが放射光X線回折実験から調べられているが、高圧下中性子散乱実験により、構造変化における水素位置の変化も明らかにでき、水素原子の役割もより明確になるものと期待される。本解説ではJ-PARC並びにJRR-3で準備を進めているパリ・エディンバラ高圧セルと水素ガス圧セルについて述べる。

37000775
漏えい磁束密度測定によるオーステナイト系ステンレス鋼の材料劣化診断
高屋 茂; 根本 義之; 内一 哲哉*; 欅田 理*
日本AEM学会誌 17(1), p.156-161(2009) ; (JAEA-J 05815)
 著者らは、以前の研究で、高純度モデルオーステナイト系ステンレス鋼について漏えい磁束密度と照射誘起応力腐食割れ感受性に相関があることを実験的に示した。本研究は、この相関の機構を検討することを目的としている。化学組成の変化や格子欠陥が漏えい磁束密度に与える影響を評価するために、照射誘起偏析模擬材を用いて高温環境下での引張試験を行い、その試験前後で漏えい磁束密度の測定を行った。さらに、磁気モーメントの化学組成と空孔への依存性を第一原理計算により評価した。その結果から、照射材の漏えい磁束密度は、空孔の有無にかかわらず、厳しい照射偏析領域において増加していると考えられることを示した。

37000776
化学反応シミュレーションの現状と課題
池田 隆司; Boero, M.*; 森川 良忠*
日本物理学会誌 64(4), p.256-262(2009) ; (JAEA-J 05816)
 経験パラメータを用いない第一原理電子状態計算に基づいたシミュレーションにより、気相反応のみならず凝縮系での化学反応の素過程が原子・分子レベルでよく理解できるようになってきた。本稿では、第一原理計算に基づいた化学反応シミュレーションの現状を、表面,界面、及び生体系での反応を例に概観し、課題についてまとめる。

37000777
高度解析技術が原子力材料研究に与えたインパクト; 最新技術でここまでわかってきた!
木村 晃彦*; 永井 康介*; 藤井 克彦*; 西山 裕孝; 曽根田 直樹*
日本原子力学会誌 50(10), p.630-633(2008) ; (JAEA-J 05817)
 近年、原子力材料研究の進展が極めて著しい。それを可能にしたのは原子力材料研究者による高度解析技術の開発であり、その技術開発を支えたのが分析機器,観察装置及び計算機の性能の向上である。本解説は、軽水炉圧力容器鋼の照射脆化のメカニズムの理解に不可欠であったナノスケールの照射欠陥などの微細組織の同定やその発達過程の解明において、その解決が困難とされていた学問的課題が高度解析技術により、いかに解決されてきたか、また、そのことが照射脆化予測に与えるインパクトについて記述したものである。西山は、原子炉圧力容器鋼の粒界脆化に関する部分を執筆し、不純物元素であるリン等の粒界偏析がなぜ粒界強度の低下を引き起こすかについて、実験データを示しながら第一原理計算によって明らかにできたことを解説した。

37000778
原子力機構,炉外でのレンズ状ボイドスイープ現象模擬に成功
石井 徹哉
日本原子力学会誌 51(5), p.366-367(2009) ; (JAEA-J 05818)
 原子力機構では、高速炉を利用したMA燃焼処分概念の実用化を目指し、高濃度Am含有酸化物型燃料や不活性母材型燃料の製造技術開発・物性研究を実施している。これらの新概念燃料の照射挙動は、「常陽」等の実験炉を利用した照射試験により確認することが一般的であるが、多大な試験費と長期の試験時間が必要となる。そのため、研究開発効率向上の観点から、照射試験を代替できる炉外実験手法の確立が望まれていた。そこで原子力機構では、ニュークリア・デベロップメント、並びに、助川電気工業の協力の下、高濃度Am含有酸化物燃料の照射挙動模擬を主目的として、1970年代に国内外で利用された方式を参考にした、遮蔽型試験施設(グローブボックスあるいはホットセル)内実施型の温度勾配下恒温加熱試験手法の開発を進めてきたが、このたび、ニュークリア・デベロップメント株式会社の試験施設に設置した試作試験装置によるUO2ペレットを用いた燃料挙動模擬性検証試験において、高速炉用酸化物燃料の照射挙動として最も特徴的な、レンズ状ボイドスイープ現象の再現に成功し、開発中の試験手法の有効性を確認した。

37000779
使用済燃料の臨界安全管理の現実; 「燃焼度クレジット」の概念と導入への課題
須山 賢也
日本原子力学会誌 51(5), p.391-395(2009) ; (JAEA-J 05819)
 使用済燃料の管理においては、臨界安全管理を行うことが厳密に要求される。核燃料の燃焼に伴う反応度の低下を考慮しその臨界安全性を評価する考え方を、「燃焼度クレジット」という。本稿ではこの燃焼度クレジットの概念の概要とそのために必要な技術開発の現状を概観し、今後我が国において燃焼度クレジットを導入するために克服するべき点を論じる。

37000780
構造格子を用いたメッシュフリー有限要素解析における境界要素積分手法
山田 知典; 長嶋 利夫*
日本計算工学会論文集(インターネット) 2009(6), 7p.(2009) ; (JAEA-J 05820)
 従来の有限要素解析における要素生成の困難さを排除するためエレメントフリーガラーキン法(EFGM)を代表とする多くのメッシュフリー法が提案され久しい。これらの構造格子を利用したメッシュフリー法は解析対象の形状とメッシュ表面が一致するとは限らないため、境界条件、特に変位拘束等の基本境界条件をどのように適用するかという問題と境界上に存在する要素(境界要素)においていかに効率よく要素剛性行列を積分するかという問題が残されている。本研究ではメッシュフリー法の一種であるStructured eXtended FEMの定式化においてNewton-Cotes積分を利用した境界要素における効率的な要素剛性行列積分手法を示す。

37000781
ミニチャンネルのボイド率計測技術開発
渡辺 博典; 光武 徹*; 柿崎 禎之*; 高瀬 和之
日本機械学会論文集,B 75(751), p.155-157(2009) ; (JAEA-J 05821)
 近年、CPU用小型冷却器,小型医療機器,燃料電池,自動車機器分野などのマイクロマシーンの開発が行われており、マイクロチャンネル(極細管)内のボイド率計測技術の必要性が高まっている。マイクロチャンネルにおける二相流流れは液相の表面張力の影響が相対的に強くなるため、流動様式が通常管と異なることが報告されているが、定量的な評価が必要なボイド率の計測は行われていなかった。そこで、内径10mm以上の通常管に対して著者らが開発した静電容量(C)計測法をマイクロチャンネルへ応用する研究を行い、マイクロチャンネル・ボイド率計測技術を開発した。特性試験の結果から計測特性式を確定し、水質によらず、全領域のボイド率をリアルタイム計測できることを確認した。電極はリング電極体系及びワイヤ電極体系の2種を用いた。大気圧条件下のマイクロチャンネル内二相流に適用した場合、一連の研究からボイド率とキャパシタンスとの関係は、リング型電極に対して線形関係,対向ワイヤ電極に対して双曲線関係となることを明らかにした。また電極形状など計測に与える影響因子の解明を行い、計測特性式の適用条件を明らかにした。

37000782
移動境界問題解析手法X-FEMによる融解・凝固現象の数値解析
内堀 昭寛; 大島 宏之
日本機械学会論文集,B 75(751), p.461-463(2009) ; (JAEA-J 05822)
 核燃料サイクルには燃料や廃棄物の融解・凝固プロセスが存在する。それらプロセスの成立性評価に利用することを目的とし、拡張有限要素法(eXtended Finite Element Method: X-FEM)を用いた融解・凝固現象の数値解析手法を開発している。X-FEMは、界面が移動する現象を固定メッシュ上でも精度よく再現することができるという利点を有するが、融解・凝固現象への適用については報告例が少なく、適用方法が十分に確立されているとはいえない状況である。特に、液相流動の現れる問題に対して適用性を検証した例は見られない。本研究では、融解・凝固現象に対するX-FEMの適用方法を検討し、熱移動のみが発生する2次元問題や液相流動の現れる2次元問題に対して検証解析を実施した。数値解析の結果は、近似解析解あるいは実験結果と精度よく一致し、開発した数値解析手法が妥当であることを確認した。

37000783
高速炉上部プレナム内温度成層化に関する解析手法の基本検証
大野 修司; 大木 裕*; 菅原 章博*; 大島 宏之
日本機械学会論文集,B 75(751), p.464-465(2009) ; (JAEA-J 05823)
 実用化高速炉の原子炉上部プレナムにおける温度成層化現象を高精度で評価するための手法整備の一環として、多次元熱流動解析コードAQUAと商用CFDコードによる基礎的体系下の水試験の解析を実施した。解析値と試験測定値の比較から、鉛直方向計算格子幅を適正化することで解析コードによらず成層界面の形成・上昇・揺動挙動及び界面温度勾配を適切に予測できることを示した。乱流モデルに標準k-e, RNG k-e及びRSMを適用した場合の比較では、いずれのモデルともに成層化の基本現象をおおむね再現した。

37000784
圧力-表面張力の適切なバランスを考慮した高精度VOF法の開発と高速炉ガス巻込み現象への適用
伊藤 啓; 功刀 資彰*; 大島 宏之; 河村 拓己*
日本機械学会論文集,B 75(751), p.466-467(2009) ; (JAEA-J 05824)
 高速炉におけるガス巻込み現象を直接評価することを目的として、高精度Volume-of-fluid法に基づく数値解析手法の研究を行っている。ガス巻込みの解析においては複雑な体系形状を正確に模擬することが必要であるため、本研究では、非構造格子を用いて解析領域の分割を行っている。本論文では、高精度Volume-of-fluid法における各計算手順の、非構造格子系での定式化に関する概要を述べる。加えて、表面張力計算手法の概要に関しても記述する。さらに、気液界面近傍の速度分布に関する非物理的挙動が、圧力勾配の不適切な定式化によって誘起されることを示し、圧力と表面張力の正しい釣合いを考慮した適切な定式化を導出する。開発した解析手法は、ガス巻込み基礎実験を対象として検証を行い、解析結果において、実験と同様のメカニズムでガス巻込みが発生することを明らかにした。

37000785
富士山頂における雷活動に起因した高エネルギー放射線の観測
鳥居 建男; 杉田 武志*; 田辺 朝知子*; 木村 嘉尚*; 鴨川 仁*; 矢島 千秋*; 保田 浩志*
大気電気学会誌 3(1), p.111-112(2009) ; (JAEA-J 05827)
 夏季雷活動に起因すると考えられる放射線変動(複数形)が富士山頂において観測された。それらは数分から最長20分間続く緩やかな変動であり、10MeV超の連続スペクトルを持つ高エネルギーγ線であった。これらの変動の特徴から、個々の雷放電との関係は認められず、雷雲の高電界に起因して大気中の高エネルギー電子が加速され生成された逃走電子からの制動放射線であると考えられた。観測に使用した5インチNaI検出器はγ線(光子)に高感度であるが、高エネルギー電子の入射により発生した光子と弁別ができない。高エネルギー電子の入射も含めたスペクトル解析との比較の結果、光子のみの解析で十分に収束することから、入射粒子の大部分は光子と考えられる。

37000786
Reduction of effective carrier density and charge collection efficiency in SiC devices due to radiations
小野田 忍; 岩本 直也; 平尾 敏雄; 河野 勝泰*; 児島 一聡*; 大島 武
AIP Conference Proceedings 1099 , p.1010-1013(2009) ; (JAEA-J 05828)
 耐放射線性の粒子検出器としての利用が期待される6H-SiCの接合型半導体ダイオードに、γ線,1MeV電子線,65MeV陽子線を照射することで損傷を導入し、粒子検出器の性能を示す指標である電荷収集効率(CCE: Charge Collection Efficiency)の低下を評価した。また、CCEと密接な関係にある実効キャリア濃度に関しての評価を行った。その結果、照射量が増加するに従い、CCE及び実効キャリア濃度が減少していくことがわかった。さらに、今まで報告例のあまりないSiCの損傷係数を、CCE及び実効キャリア濃度の双方に対して算出した。その結果、これらの損傷係数は非イオン化エネルギー損失(NIEL: Non-Ionizing Energy Loss)を指標としたスケーリングによって表現できることを見いだした。

37000787
Change in ion beam induced current from Si metal-oxide-semiconductor capacitors after γ-ray irradiation
大島 武; 小野田 忍; 平尾 敏雄; 高橋 芳浩*; Vizkelethy, G.*; Doyle, B. L.*
AIP Conference Proceedings 1099 , p.1014-1017(2009) ; (JAEA-J 05829)
 トータルドーズ効果がシングルイベント効果に及ぼす影響を明らかにする目的で、n型及びp型シリコン(Si)基板上に金属-酸化膜-半導体(MOS)キャパシタを作製し、γ線照射前後のイオンビーム誘起過渡電流(TIBIC)測定を行った。室温にて6.3kGy(SiO2)のγ線照射を行ったMOSキャパシタの容量-電圧特性からフラットバンドシフトを求めたところ、n型は12.3V、p型は15.2Vという値が得られた。酸素15MeVマイクロビーム入射によるTIBIC測定を行ったところ、γ線照射によりn型ではTIBICシグナルのピークが低下、p型では増加した。TIBICシグナルピークの印加電圧依存性を調べたところ、n型では13V、p型では15Vシフトさせると照射前後で印加電圧依存性が一致することが見いだされた。この値は、フラットバンドシフトと良い一致を示しており、このことより、γ線照射により酸化膜中に発生した固定電荷に起因するゲート電圧のシフトがTIBICシグナルに影響したといえる。

37000788
Progress in R&D efforts on the energy recovery linac in Japan
坂中 章悟*; 吾郷 智紀*; 榎本 収志*; 福田 茂樹*; 古川 和朗*; 古屋 貴章*; 芳賀 開一*; 原田 健太郎*; 平松 成範*; 本田 融*; 本田 洋介*; 細山 謙二*; 伊澤 正陽*; 加古 永治*; 春日 俊夫*; 河田 洋*; 菊池 光男*; 小早川 久*; 小林 幸則*; 松本 利広*; 道園 真一郎*; 三橋 利行*; 三浦 孝子*; 宮島 司*; 武藤 俊哉*; 長橋 進也*; 内藤 孝*; 野上 隆史*; 野口 修一*; 帯名 崇*; 大沢 哲*; 尾崎 俊幸*; 佐々木 洋征*; 佐々木 慎一*; 佐藤 康太郎*; 佐藤 政則*; 島田 美帆*; 塩屋 達郎*; 宍戸 寿郎*; 諏訪田 剛*; 高橋 毅*; 谷本 育律*; 多和田 正文*; 飛山 真理*; 土屋 公央*; 内山 隆司*; 梅森 健成*; 山本 樹*; 羽島 良一; 飯島 北斗; 菊澤 信宏; 峰原 英介; 永井 良治; 西森 信行; 沢村 勝; 中村 典雄*; 石井 篤*; 伊藤 功*; 川崎 泰介*; 工藤 博文*; 阪井 寛志*; 渋谷 孝*; 篠江 憲治*; 白神 剛志*; 高木 宏之*; 加藤 政博*; 栗木 雅夫*; 吉冨 大*; 小林 洋平*; 鳥塚 健二*; 花木 博文*
Proceedings of 11th European Particle Accelerator Conference (EPAC '08) (CD-ROM) , p.205-207(2008) ; (JAEA-J 05830)
 コヒーレントX線,フェムト秒X線の発生が可能な次世代放射光源としてエネルギー回収型リニアック(ERL)が提案されており、その実現に向けた要素技術の研究開発が日本国内の複数研究機関の協力のもと進められている。本稿では、ERL放射光源の研究開発の現状を報告する。

37000789
Results of vertical tests for the KEK-ERL single cell superconducting cavities
梅森 健成*; 古屋 貴章*; 高橋 毅*; 阪井 寛志*; 篠江 憲治*; 沢村 勝
Proceedings of 11th European Particle Accelerator Conference (EPAC '08) (CD-ROM) , p.925-927(2008) ; (JAEA-J 05831)
 エネルギー回収型リニアックのためのLバンド超伝導空洞を開発している。空洞設計の問題点を検証するために2種類の単セル空洞を製作した。1つはセンターセルのみの構造、もう1つは複雑なビームパイプ構造を有するエンドセル構造の空洞である。一連の表面処理を行い、2Kの縦測定により空洞性能を評価した。温度及びX線センサーを取り付けた回転マッピングシステムを用いて空洞性能の診断を行った。両空洞ともERL空洞に要求される性能を満足するものであった。

37000790
Intergranular embrittlement and irradiation hardening due to phosphorus in reactor pressure vessel steels
西山 裕孝; 鬼沢 邦雄; 松澤 寛*
Proceedings of 16th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-16) (CD-ROM) , 6p.(2008) ; (JAEA-J 05832)
 中性子照射した原子炉圧力容器鋼で、粒界のリン偏析と照射硬化が延性脆性遷移温度(DBTT)に及ぼす影響を、オージェ電子分光分析,局所電極型アトムプローブ、及び陽電子消滅法による組織分析を用いながら検討した。中性子照射により粒界のリン偏析が誘起されることを示した。また、材料中のリン含有率が高くなると照射硬化が大きくなることを示した。これは、照射によって生成した空孔によって安定化されたリン集合体によるものであることを明らかにした。粒界のリン濃度及び照射硬化とDBTTの関係、並びに破面観察から、中性子照射によって粒界におけるリンの脆化能が小さくなる現象を見いだし、脆化の主要因は照射硬化によることを示した。これらの結果に基づき、原子炉圧力容器の長期使用により粒界脆化が顕在化する可能性について議論した。

37000791
Breeder-type operation based on the LWR-MOX fuel technologies in light water reactors with hard neutron spectrum (FLWR)
内川 貞夫; 大久保 努; 中野 佳洋
Proceedings of 2009 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '09) (CD-ROM) , p.9022_1-9022_9(2009) ; (JAEA-J 05833)
 軽水冷却高速炉(FLWR)においてプルサーマル燃料技術に立脚して増殖型運転を実現する燃料集合体概念として、MOX燃料棒とUO2燃料棒を非均質に配置した新たな設計概念を構築し、使用するMOX燃料ペレットのプルトニウム最大富化度をプルサーマル用燃料加工施設での取扱可能範囲としながら、核分裂プルトニウム残存比1.0以上を実現できる見通しを得た。

37000792
Design study of nuclear power systems for deep space explorers, 1; Criticality of low enriched uranium fueled core
久語 輝彦; 秋江 拓志; 山路 哲史; 鍋島 邦彦; 岩村 公道; 秋本 肇
Proceedings of 2009 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '09) (CD-ROM) , p.9371_1-9371_8(2009) ; (JAEA-J 05834)
 原子炉と熱電変換素子の組合せによる電力供給システムは、深宇宙探査機の推進用システムの有望な概念と考えられる。本システムでは核拡散抵抗性の観点から低濃縮ウラン燃料を使用することとし、低濃縮ウラン燃料炉心の臨界性を調査した。燃料として酸化物燃料,窒化物燃料及び金属燃料を、減速材として、ジルコニウムやイットリウムの金属水素化物,ベリリウム,ベリリウム化合物,黒鉛を対象とした。反射体として、ベリリウム,ベリリウム酸化物,ベリリウム化合物,黒鉛を考慮した。燃料,減速材及び構造材の割合及び反射体厚さを変えながら低濃縮ウラン燃料炉心の臨界性を調査した。原子炉重量の低減を目指すうえで、高速中性子スペクトルの炉心より熱中性子スペクトルの炉心が、また減速材としてベリリウムや黒鉛よりも金属水素化物が良好であるとわかった。窒化物燃料,イットリウム水素化物減速材及びベリリウム反射体を組合せた原子炉の重量は、約500kgとなった。

37000793
The Regulation of the nascent polypeptide in the ribosomal exit tunnel
石田 恒; 河野 秀俊
Research Advances in Nucleic Acids Research , p.19-34(2009) ; (JAEA-J 05836)
 Ribosome is the macromolecular machine composed of RNA and protein used in the expression of the genetic code for the synthesis of polypeptides. The polypeptide is generated at the peptidyl transferase center and then passes through a tunnel in ribosome. It is known that some nascent polypeptides specifically interact with the tunnel in ribosome and regulate the function of ribosome. The tunnel is also thought to play an active role in the passage of the nascent polypeptides through the tunnel. In this review, we summarise both experimental and theoretical research on the regulation of the nascent polypeptide in the ribosomal tunnel and the role of the tunnel in the passage of the polypeptide.

37000794
地層処分の安全評価における長期の時間スケールに伴う不確実性の取り扱いに関する研究
宮原 要
九州大学博士論文 , 121p.(2009) ; (JAEA-J 05837)
 本研究では、HLW地層処分の長期の時間スケールに伴う不確実性の取り扱いとして以下の2つの課題に取り組んだ。(1)将来の人間の生活環境の変化にかかわる線量評価の不確実性を補完する指標としてフラックスを用い、処分場から移行する核種のフラックス(処分場起源フラックス)と地下水中に天然に存在する核種のフラックス(ナチュラルフラックス)を比較する評価手法を提案した。処分場起源フラックスとナチュラルフラックスに共通の評価点として、下流側断層破砕帯から帯水層への地下水の流出点を選ぶことにより、フラックスの比較により各バリアの性能を例示し、処分システムが頑健であることを示した。(2)極めて起こる可能性が低い破壊的な天然現象として断層が処分場を横切る事象について解析を行った。解析においては断層活動による擾乱にかかわるプロセスを明確化することに基づき段階的な手順を設定し、合理的なケース設定を行った。最も厳しい条件の組合せによっても、破壊的な断層活動の影響に関し処分システムが有効に機能し、断層活動の影響を緩和できることを例証した。

37000795
原子炉容器の破損確率に及ぼす破壊靱性評価式及び過渡事象の影響
鬼沢 邦雄
日本機械学会M&M2007材料力学カンファレンス講演論文集(CD-ROM) , p.234-235(2007) ; (JAEA-J 05838)
 加圧熱衝撃等の過渡事象時における原子炉容器の破損確率に関して、先行している米国における解析事例をもとに、原子力機構で開発した確率論的破壊力学(PFM)解析コードPASCAL2を用いて、破壊靱性評価式及び過渡事象の影響を調べた。米国原子力規制委員会のPFM解析コードFAVORに導入されている最新の破壊靱性(KIc)評価式は、従来のORNL提案によるワイブル分布型のKIc評価式と比較して、平均値を大きく評価するとともに、条件付き裂進展確率は低い値を示すことが示された。また、米国の代表的プラントの主要な過渡事象を用いてPASCAL2により実施した国内プラント相当の破損頻度に関する試計算では、き裂進展頻度に対してLOCAの影響が最も大きいことを示した。

37000796
原子炉容器の破損確率に及ぼすき裂分布及び過渡事象の影響
鬼沢 邦雄; 松澤 寛*
日本機械学会M&M2008材料力学カンファレンス講演論文集(CD-ROM) , p.OS0305_1-OS0305_2(2008) ; (JAEA-J 05839)
 確率論的手法による原子炉圧力容器の構造健全性評価手法に関して、米国NRCにより進められているBeaver-Valley発電所の原子炉容器に対する破損確率解析をもとに、き裂存在確率及び過渡事象についての比較検討を行った、応力拡大係数と温度の関係などを比較するとともに、確率論的破壊力学解析コードPASCAL2を用いた決定論及び確率論的解析を実施し、両解析結果の相関について検討した。PASCAL2による破損確率の試計算では、初期き裂分布及び過渡事象が破損確率に及ぼす影響を検討した。破損確率に及ぼすき裂分布の影響は大きく、米国代表プラント解析例のき裂分布は低い破壊確率を示した。また、過渡事象は、破損確率と決定論的な安全裕度との相関には大きな影響を及ぼさないことが明らかになった。

37000797
配管溶接部の溶接残留応力とき裂進展速度に及ぼす過大荷重の影響
勝山 仁哉; 鬼沢 邦雄
日本機械学会M&M2008材料力学カンファレンス講演論文集(CD-ROM) , p.GS0407_1-GS0407_2(2008) ; (JAEA-J 05840)
 圧力バウンダリ配管における応力腐食割れ(SCC)進展の重要因子の1つである溶接残留応力について、地震等の弾性域を超える荷重が負荷された際の残留応力状態の変化を解析により求めた。有限要素法を用いた熱弾塑性解析により、配管突合せ溶接部における溶接残留応力を求めた後、負荷方向及び荷重を変化させ、SCC想定位置における溶接残留応力分布を評価し、比較を行った。この結果、負荷を受けると残留応力分布は緩和し、SCC進展は抑制されることを示した。

37000798
J-PARCリングにおける高周波加速調整
田村 文彦; Schnase, A.; 野村 昌弘; 山本 昌亘; 鈴木 寛光; 島田 太平; 長谷川 豪志; 吉井 正人*; 大森 千広*; 戸田 信*; 高木 昭*; 原 圭吾*; 絵面 栄二*; 穴見 昌三*
Proceedings of 5th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 33rd Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.337-339(2008) ; (JAEA-J 05841)
 J-PARC RCSのビームコミッショニングは2007年10月に開始され、同月に3GeVまでの加速に成功し、2008年2月には1.07×1013個の陽子の加速に成功した。現在はMLF及びMRにビームを供給しながら、ビームパワーの増強のためのコミッショニングを行っている。MRのコミッショニングは2008年5月から開始され、入射エネルギー3GeVにおけるRFによる捕獲,1秒のビーム保持及び取り出しに成功している。現在、RCSには10台、MRには4台のMA(magnetic alloy)空胴がインストールされている。MA空胴により、大強度の陽子の加速に必要な高い加速電圧を発生させることができる。これらのハイパワーシステムを制御するために、RCS, MRともにフルデジタルのLLRF制御システムを採用した。フルデジタルのシステムを採用したことで、非常に高精度かつ再現性の高い周波数,電圧及び位相の制御を行うことができる。この発表では、ビーム電流,軌道等の例を示しながら、RCS及びMRのビームコミッショニングにおけるRFの調整の現状及び今後の見通しについて述べる。

37000799
J-PARC RCS縦方向シミュレーション
山本 昌亘; 穴見 昌三*; 絵面 栄二*; 長谷川 豪志; 原 圭吾*; 堀野 光喜*; 野村 昌弘; 大森 千広*; Schnase, A.; 島田 太平; 鈴木 寛光; 高田 耕治*; 高木 昭*; 田村 文彦; 戸田 信*; 吉井 正人*
Proceedings of 5th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 33rd Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.358-360(2008) ; (JAEA-J 05842)
 J-PARC Rapid Cycling Synchrotron(RCS)は2007年9月にビームコミッショニングを開始し、所定の3GeVまでの加速及び取り出しに成功した。ビーム強度を上げるための試験も行われており、大強度ビームを加速する際の入射時の空間電荷効果を抑えることもその一つである。RCSでは、マルチターン入射の手法を用いて入射を行っているが、その際通常の基本波RFのみを用いた手法ではバケツ中心の電荷密度が高くなってしまうため、2倍高調波,運動量オフセット,2倍高調波位相オフセットの各手法を組合せて、入射時のバンチングファクターを小さく抑える手法をシミュレーションにより検討した。ビーム試験の結果とシミュレーションとの比較について述べる。

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