学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2010年12月


38001480
Biological nano-mineralization of Ce phosphate by Saccharomyces cerevisiae
Jiang, M.; 大貫 敏彦; 香西 直文; 田中 万也; 鈴木 義規*; 坂本 文徳; 上石 瑛伍*; 宇都宮 聡*
Chemical Geology 277(1-2), p.61-69(2010) ; (JAEA-J 08138)
 酵母によるCeの濃集実験をpH3, 4, 5の溶液を用いて行った。溶液にPを添加しないにもかかわらず、細胞表面に針状のナノサイズのCe-リン酸塩鉱物が成長することを確認した。この結果は、細胞表面に吸着したCeが細胞内から浸出したPと結合してナノ鉱物化したことを示している。

38001481
Water transport in polymer electrolyte membranes investigated by dissipative particle dynamics simulation
澤田 真一; 八巻 徹也; 小沢 拓*; 鈴木 晶大*; 寺井 隆幸*; 前川 康成
ECS Transactions 33(1), p.1067-1078(2010) ; (JAEA-J 08139)
 燃料電池用電解質膜における水輸送現象を調べるため、散逸粒子動力学(DPD)シミュレーションを用いて膜内水の自己拡散係数DWを求めた。シミュレーションの対象としたのは、市販のNafion膜並びに放射線グラフト電解質膜である。(1)粗視化粒子(適当な原子集団に相当)を用いた分子モデリング,(2)水粒子の自己拡散係数DWParticleの算出,(3)DPDシミュレーションにおける単位時間の決定,(4)DPD単位におけるDWParticleからSI単位におけるDWへの換算、という手順により電解質膜内のDWを得た。グラフト電解質膜はNafionよりも小さなDWを示すことがわかった。これは、水分子とスルホン酸基の相互作用がより強く働くからであると考えられる。またいずれの電解質膜においても、拡散時間tが長くなるほど、障害物効果のためにDWは低下した。そこでDW-tの関係を定量的に解析し、水輸送経路である膜内親水性領域の幾何学形状を検討した。

38001482
Numerical matching scheme for stability analysis of flowing plasmas
白石 淳也; 徳田 伸二*
IEEE Transactions on Plasma Science 38(9), p.2169-2176(2010) ; (JAEA-J 08143)
 プラズマ流の安定性解析のための新しい接続法に関して、数値計算法及び数値的な特性について報告する。古典的な漸近接続法と同様、新しい接続法も領域を内部層と外部領域の二つに分ける。接続問題を解くには、共鳴面を含むよう内部層を設定する必要がある。内部層以外の領域は外部領域と呼ばれ、慣性を無視した理想MHD方程式(Newcomb方程式)により支配される。流れがない場合、共鳴は有理面で起きるから、有理面を(無限に薄い)内部層と思えばよい。しかし、流れがある場合、接続法を応用することはできない。というのも、共鳴が起きる場所があらかじめわからないからである(有限な領域のどこかで起きることはわかる)。したがって、従来の接続法を用いることはできない。新しい接続法では有限幅の内部層を用いる。新しい内部層は共鳴面が存在する領域をカバーできるため、接続法が応用できる。新しい接続法では、特異点が内部層に含まれているため外部領域は正則となる。そのため、新しい接続法は数値計算に適している。また、本手法は境界層理論に基づくから数値計算時間を大幅に縮減できる。

38001483
Electrical resistivity structure and helium isotopes around Naruko Volcano, northeastern Japan and its implication for the distribution of crustal magma
浅森 浩一; 梅田 浩司; 小川 康雄*; 及川 輝樹*
International Journal of Geophysics 2010, 7p.(2010) ; (JAEA-J 08144)
 地質環境の長期安定性を検討するうえでは、地下深部のマグマ・高温流体等の存在の有無を把握することが必要不可欠である。本件では、地下深部のマグマ・高温流体等の調査技術の開発の一環として、鳴子火山周辺地域を対象としたMT法による地下比抵抗構造調査及び温泉ガスの希ガス同位体比測定を実施した。その結果、当該火山下の地殻において、地下深部のマグマ及びそれに関連する水等の流体の存在を示唆する低比抵抗体が認められたほか、地表において有意に高いヘリウム同位体比が確認された。以上の結果は、当該調査技術がマグマ・高温流体等の存在の有無を確認する方法として有効であることを示していると考えられる。

38001484
Local structure of Li-substituted (Bi0.5Na0.5)TiO3
米田 安宏; 晝間 裕二*; 永田 肇*; 竹中 正*
Japanese Journal of Applied Physics 49(9), p.09ME09_1-09ME09_4(2010) ; (JAEA-J 08145)
 (Bi0.5Na0.5)TiO3(BNT)はrhombohedral-tetragonal相転移温度以下において脱分極温度(Td=200℃)が存在する。脱分極がtetragonal相において起こるため、平均構造はtetragonal構造のままである。一方、局所構造も脱分極温度においてはほとんど変化していないことから、ドメイン構造の変化だけが起こっていると考えられる。脱分極温度の低さが応用上のネックにもなりうるため、Tdを上昇させる試みがなされている。しかし、実際にはTdを上昇させることは非常に困難である。数少ない成功例の一つがAサイトのLi置換である。BNTのLi置換効果のミクロスコピックな機構を明らかにするためにLi置換BNTの構造解析を行った。BNTをLiで置換することによってAサイトイオン周辺の局所構造が変化することがわかった。Li置換によってAサイトのランダムネスが消失し、オーダーした構造が出現する。このオーダーした構造によってrhombohedral構造が安定化し脱分極温度を押し上げる要因になったと考えられる。

38001485
Time-resolved X-ray diffraction measurements of high-density InAs quantum dots on Sb/GaAs layers and the suppression of coalescence by Sb-irradiated growth interruption
角田 直輝*; 海津 利行*; 高橋 正光; 藤川 誠司; 山口 浩一*
Japanese Journal of Applied Physics 49(9), p.095602_1-095602_4(2010) ; (JAEA-J 08146)
 Self-assembly of high-density InAs quantum dots (QDs) on Sb-irradiated GaAs buffer layers was observed in-situ by a time-resolved X-ray diffraction (XRD) technique using a combination of XRD and molecular beam epitaxy. Evolution of dot height and lattice constant was analyzed during InAs QD growth and subsequent growth interruption (GI), and as a result, dislocated giant dots due to coalescence and coherent dots were separately evaluated. An Sb-irradiated GI (Sb-GI) method to be applied after InAs growth was attempted for the suppression of coalescence. Using this method, the XRD intensity of giant dots decreased, and the photoluminescence intensity of InAs QDs was enhanced. High-density InAs QDs without giant dots were produced by using the combination of the QD growth on the Sb-irradiated GaAs buffer layers and the Sb-GI.

38001486
Development of millimeter-wave planar antennas using low-loss materials
伊藤 直樹*; 間瀬 淳*; 近木 祐一郎*; 瀬古 典明; 玉田 正男; 嶋津 博士*; 坂田 栄二*
Japanese Journal of Applied Physics 49(10), p.106506_1-106506_5(2010) ; (JAEA-J 08147)
 ミリ波車載レーダやマイクロ波・ミリ波イメージングシステムの高性能化において、効率の良い小型平面アンテナの開発が不可欠である。アンテナ基板としては、低損失材料が有効であり、フッ素樹脂(PTFE)材料が使用されているが、フッ素樹脂基板と銅などの導体パターンの付着力が低いという問題があった。そこで、フッ素樹脂の表面を放射線グラフト重合により親水化処理を行うことで、低損失アンテナの作製を試みた。グラフト処理をしたサンプルに対して銅箔をスパッタし、剥離強度の測定を行ったところ、未処理のPTFEと比較して、約4倍程度の剥離強度の向上することができた。また、グラフト処理前後における比誘電率は大きく変化しないことから、グラフト重合による表面処理は、ミリ波などのアンテナ作製に有効であることがわかった。

38001487
Chromatography column system with controlled flow and temperature for engineering scale application
渡部 創; 後藤 一郎*; 佐野 雄一; 駒 義和
Journal of Engineering for Gas Turbines and Power 132(10), p.102903_1-102903_7(2010) ; (JAEA-J 08149)
 A bench scale extraction chromatography testing system was made. The column of the test system was equipped with ports for 6 external sensors at its top, middle and bottom levels for measuring the flow velocity or temperature, and for additional 6 heaters for simulating the decay heat of Am and Cm at the middle level of the column. The flow velocity distribution was almost constant except for the very near at the column wall, and it was almost uniform when the liquid flew from top to bottom direction with 4 cm/min of the velocity. The heaters scarcely influenced on the temperature profile inside the column when the power applied to the heater simulated the decay heat of Am, Cm and FPs. The decay heat generated in the column was transported to the effluents and the temperature inside column was kept almost constant.

38001488
Proton-induced photoconductivity increment and the thermal stability of a-Si:H thin film
佐藤 真一郎; 齋 均*; 大島 武; 今泉 充*; 島崎 一紀*; 近藤 道雄*
Journal of Non-Crystalline Solids 356(41-42), p.2114-2119(2010) ; (JAEA-J 08150)
 デバイスグレードの水素化アモルファスシリコン薄膜の、0.1, 1.0, 10MeV陽子線照射による光伝導度及び暗伝導度の変化を調べたところ、いずれの陽子線においても、照射とともに光伝導度は一旦上昇し、その後減少へと転じた。この結果は、光伝導度の変化がはじき出し損傷の蓄積によって起こるものではないことを示唆している。また、10MeV陽子線照射に伴う光伝導度の温度依存性の変化について調べたところ、光伝導度の上昇は、熱的に安定な成分と不安定な成分の2つからなることが判明した。このうち、熱的に不安定な成分は300Kから340Kの間で消失するが、340K以上では照射欠陥の熱回復効果が現れることも明らかとなった。

38001489
Assessment of FBR MONJU accident management reliability in causing reactor trip
素都 益武; 栗坂 健一
Journal of Nuclear Science and Technology 47(10), p.867-883(2010) ; (JAEA-J 08153)
 「もんじゅ」はループ型のナトリウム冷却高速増殖原型炉であり、電気出力は280MWである。「もんじゅ」におけるアクシデントマネジメント(AM)は3つの安全機能すなわち、原子炉停止機能,原子炉液位確保機能,崩壊熱除去機能に対して整備されている。これらの基本的な安全機能に対するAMの有効性をPSAの手法により評価する必要がある。本論文は原子炉停止AMについて、最適評価解析用S-COPDコードによるプラント過渡応答解析及びシミュレータ訓練結果に基づいて評価したものである。

38001490
Swelling behaviors in a fuel assembly for the wrapping wire and duct made of modified 316 austenitic stainless steel
山県 一郎; 赤坂 尚昭
Journal of Nuclear Science and Technology 47(10), p.898-907(2010) ; (JAEA-J 08154)
 高速炉で照射した改良型316オーステナイト鋼燃料集合体について、ラッピングワイヤとラッパ管のスエリング挙動を調査した。スエリングの温度依存性については、スエリングピーク温度がラッピングワイヤとラッパ管で異なっていた。また、走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡で材料中のボイド分布を観察し、表面からおよそ100μm以内でボイドが成長していることを確認した。この現象は、中性子照射における表面効果によるものであると推察した。

38001491
Measurement of atomospheric neutron and photon energy spectra at aviation altitudes using a phoswich-type neutron detector
高田 真志*; 矢島 千秋*; 保田 浩志*; 佐藤 達彦; 中村 尚司*
Journal of Nuclear Science and Technology 47(10), p.932-944(2010) ; (JAEA-J 08155)
 放射線医学総合研究所が開発したホスウィッチ型検出器を用いて、日本上空高度10.8kmにおける宇宙線中性子及び光子スペクトルを測定した。測定した中性子及び光子のエネルギー範囲は、それぞれ、7〜180MeV及び3.5〜42MeVである。得られた測定値を、ボナーボール中性子検出器による測定値や、LUIN2000, EXPACS及びRMCコードによる計算値と比較した。その結果、本研究による測定値は、過去における測定値と比較して、絶対値は一致するがスペクトルの形状が違うことがわかった。

38001492
Behavior of coated fuel particle of High-Temperature Gas-cooled Reactor under reactivity-initiated accident conditions
梅田 幹; 杉山 智之; 永瀬 文久; 更田 豊志; 植田 祥平; 沢 和弘
Journal of Nuclear Science and Technology 47(11), p.991-997(2010) ; (JAEA-J 08156)
 In order to clarify the failure mechanism and determine the failure limit of the High Temperature Gas-cooled Reactor (HTGR) fuel under reactivity-initiated accident (RIA) conditions, pulse irradiations were performed with unirradiated coated fuel particles at the Nuclear Safety Research Reactor (NSRR). The energy deposition ranged from 580 to 1,870 J/gUO2 in the pulse irradiations and the estimated peak temperature at the center of the fuel particle ranged from about 1,510 to 3,950 K. Detailed examinations after the pulse irradiations showed that the coated fuel particles failed above about 1,400 J/gUO2 where the peak fuel temperature reached over the melting point of UO2 fuel. It was also shown that the coated fuel particle was failed by the mechanical interaction between the melted and swelled fuel kernel and the coating layer under RIA conditions.

38001493
Calculation of neutron nuclear data on rubidium and strontium isotopes for JENDL-4
柴田 恵一; 市原 晃; 国枝 賢
Journal of Nuclear Science and Technology 47(11), p.1055-1064(2010) ; (JAEA-J 08157)
 評価済み核データライブラリーJENDL-4のために85,86,87Rb及び84,86,87,88,89,90Sr中性子核データの理論計算を行った。計算した物理量は、全断面積,弾性・非弾性散乱断面積,放射性捕獲断面積,(n,p),(n,d),(n,t),(n,3He),(n,α),(n,np),(n,nd),(n,nα),(n,2n),(n,3n)反応断面積,放出粒子の角度分布及び放出粒子,γ線のエネルギー分布である。計算には統計模型コードであるPODを用いた。中性子に対しては、国枝等によって求められたチャネル結合光学模型パラメータを使用した。複合核過程に加えて、前平衡及び直接反応過程を考慮した。計算結果は、既存の実験値をよく再現しており、JENDL-4のデータとして採用することになった。

38001494
Local crystal structure of nano-manganese-oxide gold adsorbent
飯久保 智*; 古屋仲 秀樹*; 社本 真一; 竹内 謙*; 小原 真司*; 樹神 克明; Loong, C.-K.*
Journal of Physics and Chemistry of Solids 71(11), p.1603-1608(2010) ; (JAEA-J 08158)
 X線と中性子粉末回折データの2体分布関数解析を用いて、乾燥及び重水素化したナノ酸化マンガン粉末試料の局所結晶構造を調べた。プロトン化したサンプルは、海水のようなpptレベルの水溶液からでさえ、金吸着剤として極めて高い効率性を示す。ナノ酸化マンガン粒子がR-MnO2型の局所結晶構造を持つことをここで示し、ナノ粒子表面上の水素イオンの役割の可能性について議論する。

38001495
Quantum spin nanotubes; Frustration, competing orders and criticalities
坂井 徹; 佐藤 正寛*; 岡本 清美*; 奥西 巧一*; 糸井 千岳*
Journal of Physics; Condensed Matter 22(40), p.403201_1-403201_13(2010) ; (JAEA-J 08159)
 スピンナノチューブについての最近の理論的研究をレビューする。特に、S=1/23本鎖スピンチューブに焦点をあてる。3本鎖スピンラダーと違って、正三角形のユニットセルを持つスピンチューブはスピンギャップが開いている。ハバード模型に基づく有効理論によると、このユニットセルが二等辺三角形になる格子ひずみによりスピンギャップが消失する量子相転移が起きることが予測される。このことは、数値対角化と密度行列繰り込み群による数値解析により立証された。さらに、われわれは新しい磁場誘起秩序として、ネール秩序,ダイマー秩序,カイラル秩序,不均一秩序などが生じることや、新しいメカニズムによる磁化プラトー現象が起きることも、理論的に示すことに成功した。最近合成された実際のスピンチューブ物質についても簡単にレビューする。

38001496
Anisotropic transport properties of NpPd5Al2
松田 達磨; 芳賀 芳範; 青木 大*; 本間 佳哉*; 立岩 尚之; 山本 悦嗣; 大貫 惇睦
Journal of Physics; Conference Series 200, p.012113_1-012113_4(2010) ; (JAEA-J 08160)
 ZrNi2Al5-型結晶構造の異方的超伝導体NpPd5Al2について、電気抵抗及びホール効果測定を行った。電気抵抗の温度依存性は、異方的で、電流方向[001]では、すべての温度範囲で、[100]方向より大きい値を示す。高温では、近藤効果に特徴的な − logTの振る舞いを示す。ホール抵抗の磁場依存性は、55kOeまで線形な振る舞いを示す。ホール係数は、c軸方向で負の値を示すが、a軸方向では、温度の上昇とともに劇的に負から正の値へと変化することがわかった。

38001497
Appropriate pressure-transmitting media for cryogenic experiment in the diamond anvil cell up to 10 GPa
立岩 尚之; 芳賀 芳範
Journal of Physics; Conference Series 215, p.012178_1-012178_7(2010) ; (JAEA-J 08161)
 高圧下/低温下物性測定実験の際に用いる適切な圧力媒体の選定のため、各種圧力媒体の圧力特性をルビー蛍光法で10GPaまで調べた。調査した合計14種類の媒体は以下の通り。フロリナート混合液,ダフネ7373/7474オイル,NaCl,シリコオイル,ワセリン,プロパーノール,ペンタン混合液,メタノール/エタノール混合液,石油エーテル,窒素,アルゴン,ヘリウム。ルビー蛍光R1ピークのブロード化から圧力媒体の非静水圧性を調べた。室温では圧力媒体が固化するに伴い非静水圧性が発生する。77K, 4.2Kでは低圧領域から非静水圧性が生じることが明らかにされた。R1ピークの77K, 5GPaにおける半値全幅ΔFWHMの値から媒体を3つのグループに分類した。

38001498
Certificated reference material IAEA-418; 129I in mediterranean sea water
Pham, M. K.*; Betti, M.*; Povinec, P. P.*; Alfimov, V.*; Biddulph, D.*; Gastaud, J.*; Kieser, W. E.*; López, Gutiérrez, J. M.*; Possnert, G.*; Sanchez-Cabeza, J. A.*; 鈴木 崇史
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 286(1), p.121-127(2010) ; (JAEA-J 08162)
 本論文は認証標準物質IAEA-418(地中海海水)中の129I濃度測定結果について報告するものである。この海水は9機関に配布され、8機関は加速器質量分析法(AMS)で、1機関は中性子放射化分析法(NAA)で129I濃度を測定した。129I濃度の認証は、NAAでは海水中の129I濃度が検出限界以下であったこと、またAMSで測定した機関の内1機関の測定値が棄却検定によって棄却されたため、7機関の測定結果によって行われた。この認証標準物質に与えられた129I濃度は中央値が2.3×108atom/Lであり、95%信頼区間では(2.2〜2.8)×108atom/Lであった。

38001499
Status report of J-PARC
大内 伸夫
Journal of the Korean Physical Society 56(6), p.1921-1927(2010) ; (JAEA-J 08163)
 J-PARCは現在第1フェーズにあり、3台の加速器(リニアック,3GeVシンクロトロン:RCS, 50GeVシンクトロトン:MR)並びに3実験施設(物質生命科学実験施設:MLF,ハドロン実験施設,ニュートリノ実験施設)で構成されている。2008年には、RCSのビーム調整試験の後、MRでは最初のビーム入射,周回及び30GeVへの加速に成功し、MLFでは最初の中性子並びにミューオン生成に成功した。また、2008年12月にはMLFの供用運転が開始された。さらに、RCSでは高ビームパワー実証試験において、322kW等価の1ショット運転が実施された。2009年には、MRから最初のビームがハドロン実験施設並びにニュートリノ実験施設に入射された。したがって、これまでにすべての実験施設に陽子ビームが到達している。ここでは、2008年,2009年におけるJ-PARCの進捗現状について報告する。

38001500
Eestimation of production yield of 99Mo for medical use using neutrons from natC(d,n) at Ed = 40 MeV
湊 太志; 永井 泰樹
Journal of the Physical Society of Japan 79(9), p.093201_1-093201_3(2010) ; (JAEA-J 08164)
 核医学による診断で重要な99Moの100Mo(n,2n)99Mo反応による生成量を見積もった。入射中性子のエネルギー・角度分布はSPIRAL2で行われた最新の40MeV, 5mA重陽子ビームによるnatC(d,n)反応データを用い、(n,2n)反応断面積はJENDL3.3のデータを用いた。natCと100Moサンプルを異なる間隔に置き、100Mo円柱型サンプルの半径及び厚さと99Moの生成量との相関を調べた。その結果、natCとサンプル(250g)の間隔を2cmにし、2日間中性子ビームを照射することでおよそ7.1TBqの99Moを得られることがわかった。この結果により、数台の加速器を利用することで日本の99Mo需要(37TBq/週)を補うことができる可能性があることがわかった。

38001501
Fermi surface properties of ferromagnet UCu2Si2
松田 達磨; 池田 修悟*; 山本 悦嗣; 芳賀 芳範; 宍戸 寛明*; 山上 浩志; 摂待 力生*; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 79(11), p.114712_1-114712_4(2010) ; (JAEA-J 08165)
 Snフラックス法により正方晶UCu2Si2の単結晶育成及びドハース・ファンアルフェン効果測定に成功した。UCu2Si2は、温度106K以下において反強磁性転移し、続く100K以下において強磁性転移する。この強磁性状態において、5×106から7×107 Oeのドハース・ファンアルフェンシグナルを観測した。それぞれに対応するサイクロトロン有効質量は、1.4から4.2m0で、電子比熱係数の値γ=20mJ/K2·molと矛盾がない。これらの実験結果は、5f電子を遍歴とした、スピン及び軌道分極モデルでおおまかに説明される。

38001502
Enhanced micronucleus formation in the descendants of γ-ray-irradiated tobacco cells; Evidence for radiation-induced genomic instability in plant cells
横田 裕一郎; 舟山 知夫; 長谷 純宏; 浜田 信行*; 小林 泰彦; 田中 淳; 鳴海 一成
Mutation Research; Fundamental and Molecular Mechanisms of Mutagenesis 691(1-2), p.41-46(2010) ; (JAEA-J 08166)
 電離放射線を照射した哺乳類細胞や酵母では、その子孫細胞において、直接照射されていないにもかかわらず、染色体異常や突然変異の頻度が高い現象(放射線誘発ゲノム不安定性)が報告されてきた。本研究の目的は、高等植物に放射線誘発ゲノム不安定性が生じるか否かを明らかにすることである。そこで、γ線を照射したタバコ細胞とその子孫細胞において、微小核頻度と増殖を調べた。照射細胞の細胞周期は、照射の24時間前後で一過性に停止した。一方、微小核頻度は照射後48時間で最大となった。照射細胞の約半数は微小核を有したが、照射細胞は非照射細胞と同程度に旺盛な増殖を示した。照射細胞は照射後4週間で2の21乗倍に増殖したが、微小核頻度は非照射細胞と比べてなお2倍高かった。この実験結果は、照射子孫細胞において微小核が誘発され続けていることを示しており、タバコ細胞における放射線誘発ゲノム不安定性の直接の証拠となる。

38001503
Experimental study on fluid mixing phenomena in T-pipe junction with upstream elbow
木村 暢之; 小川 博志*; 上出 英樹
Nuclear Engineering and Design 240(10), p.3055-3066(2010) ; (JAEA-J 08167)
 T字管体系の配管合流部のサーマルストライピング現象について、主配管上流側のエルボがフローパターン及び温度変動に与える影響を評価するために水実験を実施した。エルボによる偏流と2次流れの影響が見られ、エルボがない体系と比べフローパターンが変化することがわかった。温度分布計測の結果から、エルボの影響により温度変動強度が広い範囲で大きい値を示すことを明らかにした。また、高速度PIV(粒子画像流速測定法)を用いた混合部の流速分布と変動挙動の計測により、エルボによる外乱が温度変動に影響を与えることがわかった。

38001504
Energetic particle driven instability in wall-stabilized high-β plasmas
松永 剛; 篠原 孝司; 相羽 信行; 坂本 宜照; 諫山 明彦; 朝倉 伸幸; 鈴木 隆博; 武智 学; 大山 直幸; 浦野 創; JT-60チーム
Nuclear Fusion 50(8), p.084003_1-084003_8(2010) ; (JAEA-J 08168)
 We have observed a fishbone like bursting mode in high-β plasmas above the ideal β-limit without a conducting wall. The mode frequency is chirping down, and its initial value is close to precession frequency of trapped fast ions produced by perpendicularly injected neutral beams. This mode can often induce the resistive wall mode (RWM) onset. The mode is mainly observed in the high-βN plasma where ideal kink-ballooning mode (IKBM) and RWM are marginally stable. Since this mode and RWM were simultaneously observed, the mode is attributed to the interaction between the trapped fast ions and a marginally stable IKBM stabilized by conducting wall. From these results, the observed mode was named as "Energetic particle driven Wall Mode (EWM)." Interestingly, the EWM can change edge localized mode (ELM) behavior. Namely, it was observed that ELM was synchronized with the EWM.

38001505
Comparison of secondary ion emission yields for poly-tyrosine between cluster and heavy ion impacts
平田 浩一*; 齋藤 勇一; 千葉 敦也; 山田 圭介; 高橋 康之; 鳴海 一雅
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 268(19), p.2930-2932(2010) ; (JAEA-J 08169)
 Emission yields of secondary ions necessary for the identification of poly-tyrosine were compared for incident ion impacts of energetic cluster ions (0.8 MeV C8+, 2.4 MeV C8+, and 4.0 MeV C8+) and swift heavy monoatomic molybdenum ions (4.0 MeV Mo+ and 14 MeV Mo4+) with similar mass to that of the cluster by time-of-flight secondary ion mass analysis combined with secondary ion electric current measurements. The comparison revealed that (1) secondary ion emission yields per C8+ impact increase with increasing incident energy within the energy range examined, (2) the 4.0 MeV C8+ impact provides higher emission yields than the impact of the monoatomic Mo ion with the same incident energy (4.0 MeV Mo+), and (3) the 2.4 MeV C8+ impact exhibits comparable emission yields to that for the Mo ion impact with higher incident energy (14 MeV Mo4+). Energetic cluster ion impacts effectively produce the characteristic secondary ions for poly-tyrosine, which is advantageous for highly sensitive amino acid detection in proteins using time-of-flight secondary ion mass analysis.

38001506
Binomial distribution function for intuitive understanding of fluence dependence of non-amorphized ion-track area
石川 法人; 大原 宏太; 太田 靖之*; 道上 修*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 268(19), p.3273-3276(2010) ; (JAEA-J 08170)
 高エネルギーイオン(200MeV Au)を照射したCeO2薄膜について電子的エネルギー伝達に伴う照射損傷をラマン分光法により解析した。CeO2に起因するF2gピークのほかに、照射後に高波数側にブロードなピークが発達することがわかった。その結果は、計算による予測と同様の振る舞いであること、さらに真空熱アニールしたCeO2試料と同様の振る舞いであることから、照射に伴う酸素欠損に起因すると結論付けた。

38001507
Exotic superconducting state embedded in the hidden order state of URu2Si2
松田 祐司*; 岡崎 竜二*; 笠原 裕一*; 宍戸 寛明*; 芝内 孝禎*; 芳賀 芳範; 松田 達磨; 大貫 惇睦
Physica C 470(20), p.1013-1017(2010) ; (JAEA-J 08171)
 We report charge and thermal transport measurements on ultra clean single crystals of the superconductor with the hidden-order state URu2Si2. The results provide strong evidence for a new type of unconventional superconductivity with two distinct gaps having different nodal topology. We propose a gap function with chiral d-wave form. We also demonstrate that a distinct flux line lattice melting transition with outstanding characters occurs well below the upper critical fields even at sub-Kelvin temperature.

38001508
Fermi surface properties of YbCu2Si2
松田 達磨; Dung, N. D.*; 芳賀 芳範; 池田 修悟*; 山本 悦嗣; 石倉 達朗*; 遠藤 豊明*; 竹内 徹也*; 摂待 力生*; 大貫 惇睦
Physica Status Solidi (B) 247(3), p.757-759(2010) ; (JAEA-J 08172)
 われわれは、重い電子系YbCu2Si2の純良単結晶育成に成功した。電子比熱係数は150mJ/K2·molと、電気抵抗における門脇-Woods関係から得られる値と矛盾がない。ドハース・ファンアルフェン効果による信号の観測に成功し、大きなサイクロトロン有効質量の観測にも成功した。これらの結果を4f電子を持たないYCu2Si2の結果と比較を行った結果、大きなフェルミ面のトポロジーの違いとサイクロトロン有効質量の違いがみられ、このことから、Ybの4f電子が大きくフェルミ面に寄与していることが明らかとなった。

38001509
Energy scale of the electron-boson spectral function and superconductivity in NpPd5Al2
Ummarino, G. A.*; Caciuffo, R.*; 中堂 博之; 神戸 振作
Physical Review B 82(10), p.104510_1-104510_7(2010) ; (JAEA-J 08173)
 重い電子系dは超伝導体NpPd5Al2の電子-ボゾンスぺクトルのエネルギースケールをエリアシュベルグ理論を用いて予測した。ここでボゾン励起として反強磁性揺らぎを考え、Tcとエネルギーギャップを実験値として利用した。得られたΩ0は2-2.5meVであった。これはNMRから見積もった磁気揺らぎエネルギーとよく一致している。また臨界磁場,ナイトシフト,スピン格子緩和時間の温度依存も実験結果と良い一致を示した。また磁場侵入長やトンネルスペクトルの予想も計算した。

38001510
Impurity scattering rate and coherence factor in vortex core of sign-reversing s-wave superconductors
永井 佑紀; 加藤 雄介*
Physical Review B 82(17), p.174507_1-174507_12(2010) ; (JAEA-J 08174)
 超伝導秩序変数の内部位相差を検出する手法として、符号反転s波超伝導体の超伝導渦糸コアにおける準粒子の不純物散乱率を研究した。不純物散乱率は走査型トンネル顕微鏡における準粒子干渉効果として測ることができる。Andreev束縛状態に対するBorn近似とKramer-Pesch近似を用いることで、超伝導渦糸コア中においては符号反転前方散乱が支配的であることを示す。符号反転s波超伝導体の渦糸コアにおけるコヒーレンス因子によって、Andreev束縛状態間の不純物散乱率は特徴的な振る舞いを示すことがわかった。

38001511
Cross-shell excitations near the "island of inversion"; Structure of 30Mg
Daecon, A. N.*; Smith, J. F.*; Freeman, S. J.*; Janssens, R. V. F.*; Carpenter, M. P.*; Hadinia, B.*; Hoffman, C. R.*; Kay, B. P.*; Lauritsen, T.*; Lister, C. J.*; O'Donnell, D.*; Ollier, J.*; 大塚 孝治*; Seweryniak, D.*; Spohr, K.-M.*; Steppenbeck, D.*; Tabor, S. L.*; Tripathi, V.*; 宇都野 穣; Wady, P. T.*; Zhu, S.*
Physical Review C 82(3), p.034305_1-034305_7(2010) ; (JAEA-J 08175)
 30Mgは、中性子数20の魔法数が消滅する「逆転の島」と呼ばれている領域の境界にあたり、その詳しい核構造は興味が持たれている。この研究では、アルゴンヌ国立研究所において30Mgの励起状態を14C(18O,2p)反応にて生成し、そこからの脱励起γ線を観測することによってエネルギー準位を構築した。その結果、励起エネルギー2-4MeV領域に魔法数消滅が起きないことを前提とした理論計算では得られない状態が複数観測された。モンテカルロ殻模型による大規模計算と比較したところ、これらの状態は、2個の中性子が中性子数20の殻ギャップを超えて励起した状態と対応させることができた。すなわち、30Mgではかなり低い励起エネルギーに殻ギャップを超えた励起状態が存在することが明らかとなり、「逆転の島」の境界に属することがはっきりした。

38001512
Neutrino reactions on 138La and 180Ta via charged and neutral currents by the quasiparticle random-phase approximation
Cheoun, M.-K.*; Ha, E.*; 早川 岳人; 梶野 敏貴*; 千葉 敏
Physical Review C 82(3), p.035504_1-035504_7(2010) ; (JAEA-J 08176)
 重原子核138La及び180Taの宇宙論的起源を探るためにニュートリノ反応断面積を計算した。準粒子乱雑位相近似に基づいて、荷電カレント及び中性カレント相互作用を考慮した。荷電カレント反応断面積は(3He,t)反応から導出したガモフ·テラー強度に対する経験値をよく再現できていることがわかった。また、中性カレント断面積は荷電カレントに比べて4〜5倍程度小さいことがわかった。これらの断面積を超新星ニュートリノのスペクトルで重み付けして、今後の元素合成計算に必要な反応率を求めた。

38001513
Quantum renormalization of the spin hall effect
Gu, B.; Gan, J.-Y.*; Bulut, N.*; Ziman, T.*; Guo, G.-Y.*; 永長 直人*; 前川 禎通
Physical Review Letters 105(8), p.086401_1-086401_4(2010) ; (JAEA-J 08177)
 金に含まれる鉄不純物のスピン軌道相互作用による輸送特性を、多軌道アンダーソン模型に量子モンテカルロ法を用いて研究を行った。そして、初めてスピン軌道相互作用がスピン揺らぎにより強い変更を受けることを明らかにした。この仕組みにより、最近観測された金の中の鉄不純物による巨大なスピンホール効果を説明することができた。一方、この効果は異常ホール効果には現れないものである。加えて、スピン軌道相互作用がクーロン相互作用によっても大きな変更を受けることを示した。これらの結果により、金の中の鉄不純物の軌道角運動量に関するこれまでの矛盾を解決することができた。

38001514
Observation of magnetized soliton remnants in the wake of intense laser pulse propagation through plasmas
Romagnani, L.*; Bigongiari, A.*; Kar, S.*; Bulanov, S. V.; Cecchetti, C. A.*; Esirkepov, T. Z.; Galimberti, M.*; Jung, R.*; Liseykina, T. V.*; Osterholz, J.*; Pegoraro, F.*; Willi, O.*; Borghesi, M.*
Physical Review Letters 105(17), p.175002_1-175002_4(2010) ; (JAEA-J 08178)
 Slowly evolving, regularly spaced patterns have been observed in proton projection images of plasma channels drilled by intense laser pulses propagating in an ionized gas jet. The analysis suggests the formation of rows of magnetized soliton remnants, with a quasistatic magnetic field associated with vortex like electron currents resembling those of magnetic vortices.

38001515
Superdeformation in asymmetric N>Z nucleus 40Ar
井手口 栄治*; 太田 晋輔*; 森川 恒安*; 大島 真澄; 小泉 光生; 藤 暢輔; 木村 敦; 原田 秀郎; 古高 和禎; 中村 詔司; 北谷 文人; 初川 雄一; 静間 俊行; 菅原 昌彦*; 宮武 宇也; 渡辺 裕*; 平山 賀一*; 大井 万紀人*
Physics Letters B 686(1), p.18-22(2010) ; (JAEA-J 08179)
 タンデム加速器からの70 MeV 18Oビームを26Mgターゲットに照射し、40Arの高励起状態を生成した。多重γ線検出装置GEMINI-IIを用いて多重γ線測定を行い、40Arにおいて2+から12+までの5本のγ線遷移からなる回転バンドを発見した。得られた遷移四重極モーメント1.45±0.15ebはこのバンドが超変形(長軸と短軸の比が2:1に近いラグビーボール型変形)を有することを示唆した。cranked Hartee Fock Bogoliubov計算により、このバンドの性質を調べ、多粒子,多空孔配位であることを確かめた。

38001516
Correlation between laser accelerated MeV proton and electron beams using simple fluid model for target normal sheath acceleration
反保 元伸; 粟野 信哉*; Bolton, P.; 近藤 公伯; 三間 圀興*; 森 芳孝*; 中村 浩隆*; 中堤 基彰*; Stephens, R. B.*; 田中 和夫*; 谷本 壮*; 薮内 俊毅*; 兒玉 了祐*
Physics of Plasmas 17(7), p.073110_1-073110_5(2010) ; (JAEA-J 08180)
 High density energetic electrons that are created by intense laser plasma interactions drive MeV proton acceleration. Correlations between accelerated MeV protons and electrons are experimentally investigated at laser intensities in the range, 1018 - 1019 W/cm2 with S-polarization. Observed proton maximum energies are linearly proportional to the electron slope temperatures with a scaling coefficient of about 10. Experimental results also indicate that, in the context of the simple analytical fluid model for transverse normal sheath acceleration, the ion (proton) density is comparable to density of the hot electron cloud near the target rear surface if an empirical acceleration time is assumed.

38001517
Wave-action conservation law for eigenmodes and continuum modes
廣田 真; 徳田 伸二*
Physics of Plasmas 17(8), p.082109_1-082109_11(2010) ; (JAEA-J 08181)
 準定常な平衡状態における固有モードや連続モードに対し、波の作用の不変性を一般的な枠組みにおいて詳しく調べた。この枠組みは理想磁気流体力学系やVlasov-Maxwell系を含んでいる。変分原理に対する平均化法を駆使することにより、それぞれのモードに相当する波の作用は、その振動数(スペクトル)が他のものと十分に孤立していれば保存することを示した。一方で、振動数が近いモード間では波の作用の保存的な交換が起こりうる。この一般的な保存則の応用例として、固有モードと連続モードの共鳴が引き起こすランダウ減衰(又は成長)を考察した。減衰率(又は成長率)は連続スペクトルの線幅(=位相混合の速さ)と密接に関係しており、これは波の作用の保存則を課すことによって見積もることができる。これにより、分散関係式の解析接続を用いる従来の手法とは別の観点から減衰/成長率を評価できる。

38001518
Interaction of high contrast laser pulse with foam-attached target
中村 龍史; 反保 元伸; 兒玉 了祐*; Bulanov, S. V.; 神門 正城
Physics of Plasmas 17(11), p.113107_1-113107_6(2010) ; (JAEA-J 08182)
 レーザーからプラズマへのエネルギー変換効率の増加を目的に、高コントラストレーザーとフォームターゲットと相互作用の解明を粒子シミュレーションコードを用いて行った。レーザーと物質との相互作用領域には、プレパルスにより生成される膨張プラズマが存在する。この相互作用領域のプラズマ密度分布を制御するために、密度が固体密度に比べ2〜3桁程度低いフォームターゲットを利用することを提案する。フォームによるプラズマ密度分布の制御には、同時に高コントラストレーザーを使う必要がある。このため、レーザー・フォーム相互作用においてはメインパルスによるターゲットのイオン化プロセスが重要な過程となる。シミュレーションの結果、イオン化によりイオン密度の周期構造が現れることが明らかとなった。また、フォームターゲットを体積加熱する結果、高エネルギー電子の発生量が増大し、エネルギー変換効率が大幅に増加することがわかった。フォームターゲットのパラメターを適切に選ぶことで、レーザー加速イオンのエネルギーの増大が可能であることを示した。

38001519
Spatial distribution of Δ14C values of organic matter in surface sediments off Saru River in northern Japan, one year after a flood event in 2006
長尾 誠也*; 入野 智久*; 荒巻 能史*; 池原 研*; 片山 肇*; 乙坂 重嘉; 内田 昌男*; 柴田 康行*
Radiocarbon 52(3), p.1068-1077(2010) ; (JAEA-J 08183)
 河川からの有機物の流出が陸棚域における有機物の分布に及ぼす影響を、北海道沙流川沖で得られた有機物中のΔ14C値とδ13C値の測定結果から議論した。陸棚域における堆積物は、大規模な河川粒子の流出のあった2006年の翌年に採取した。沙流川の懸濁粒子と堆積物は2007年から2008年にかけて採取した。陸棚堆積物中の有機物が持つΔ14C値は、-665から-77パーミルの範囲であった。このうち、上層のシルトや鉱物成分が持つΔ14C値は-240から-77パーミル、下層の砂質成分のそれは-665から-386パーミルであった。平常時の河川水中の粒子が持つΔ14C値は-292から-247パーミルであった。以上の分布から、河川流出が大きな時期には比較的古い(Δ値の低い)有機物粒子が陸棚域に堆積し、その後に海洋表層で生産された新しい粒子が堆積したと推測された。

38001520
Decolorization of secondary treated water from livestock urine waste
瀧上 眞知子*; 長澤 尚胤; 廣木 章博; 笠井 昇; 吉井 文男; 玉田 正男; 瀧上 昭治*; 柴田 卓弥*; 明田川 康*; 尾崎 益雄*
Transactions of the Materials Research Society of Japan 35(3), p.647-650(2010) ; (JAEA-J 08184)
 家畜尿汚水の二次処理水に含有する腐植様着色物質が含有する排水の処理方法及び処理システムを開発した。本技術は、ビニロン繊維にカチオン性モノマーであるN,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを放射線グラフト重合させた繊維状の吸着材を設置した腐植様着色物質を吸着・除去させる排水処理方法であり、脱着による腐植様着色物質の回収並びに繊維状物の繰り返し利用を可能にしたシステムである。ビニロン繊維にγ線を60kGy照射し、窒素置換した20%のモノマー溶液中で2時間グラフト反応して、グラフト率が約100%から150%有する吸着材を作製した。グラフト率が100%以上有する吸着材は、腐植様着色物質を吸着し、二次処理水の色度を90%以上低下させた。本技術は、家畜汚水,河川,土壌廃水からの腐植酸用物質回収材料として、農業,工業,環境等の広範囲な分野への応用が期待される。

38001521
シーケンシャルインジェクション法を用いたPuの定量
山本 昌彦
ぶんせき 2010(10), p.546(2010) ; (JAEA-J 08185)
 最近、プルトニウムの分析において、シーケンシャルインジェクション法を適用した分析の自動化,迅速化が研究論文として報告されている。本件は、これら研究論文の概要を、分析化学会の学会誌「ぶんせき」のトピックス欄に紹介するものである。

38001522
原子力船「むつ」原子炉容器の一括撤去工法の検討
長根 悟; 北原 勝美; 吉川 静次; 宮坂 靖彦*; 福村 信男*; 西沢 市王*
デコミッショニング技報 (42), p.2-10(2010) ; (JAEA-J 08186)
 原子力船「むつ」の中央部分に搭載された原子炉室は、1996年から附帯陸上施設の原子炉室保管棟に安全に保管,展示されている。主要な放射性廃棄物である原子炉容器及び炉内構造物等は、将来の合理的な廃止措置計画を考えるうえで特に重要な機器であると位置づけている。本報告では、原子炉容器と炉内構造物を収納容器又は追加遮へいにより廃棄体化し、撤去する一括撤去工法について述べる。原子炉容器の一括廃棄体(最大100トン)は、放射能濃度上限値からピット処分に区分され、また、容器密封処置を含む輸送上の要求に基づきIP-2型容器相当の輸送物に該当する。

38001523
レーザプラズマX線マイクロビーム照射装置の開発と放射線生物学研究応用
佐藤 克俊; 錦野 将元; 沼崎 穂高*; 河内 哲哉; 手島 昭樹*; 西村 博明*
電気学会論文誌,C 130(10), p.1800-1805(2010) ; (JAEA-J 08187)
 近年のレーザ技術の発展により、高強度超短パルスレーザが利用できるようになった。高強度超短パルスレーザを金属ターゲットに照射するとターゲット表面にプラズマが生成される。このプラズマから発生する高速電子と金属ターゲットの相互作用により制動X線と特性X線が発生する。このX線は、レーザプラズマX線と呼ばれており、従来のX線管や加速器を用いて発生させたX線と比較して、超短パルス,高輝度,単一エネルギー,集光可能であるという特徴を持つ。この特徴は、X線マイクロビーム照射装置に最適である。現在、われわれはレーザプラズマX線源の医学,生命化学応用として細胞照射用X線マイクロビーム照射装置の開発と、がん細胞における放射線応答及びバイスタンダー効果に関する研究を行っている。本論文では、レーザプラズマX線マイクロビーム照射装置の概要,現在得られている細胞照射実験結果,レーザプラズマX線源の放射線生物学研究上での利点等について述べる。

38001524
放射光光電子分光による重水素イオン注入V25Cr40Ti35表面の熱変性分析
戸出 真由美; Harries, J.; 寺岡 有殿; 吉越 章隆
電気学会論文誌,C 130(10), p.1819-1820(2010) ; (JAEA-J 08188)
 水素貯蔵合金の表面皮膜の熱変性過程と水素の脱離温度特性を、放射光光電子分光法で観測した。実験はSPring-8の原子力機構専用軟X線ビームライン(BL23SU)に設置した表面反応分析装置(SUREAC2000)を用いて行った。自然酸化膜付きのV25Cr40Ti35と、自然酸化膜上から重水素イオンを注入したV25Cr40Ti35のSR-XPS測定を行った。非重水素化VCrTiでは373Kから473Kの間、重水素化では473Kから573Kの間で酸化膜が著しく変質した。重水素イオンを注入すると自然酸化膜の熱安定性が100度程度安定化することが観測された。

38001525
リニアック
長谷川 和男
電気学会誌 130(11), p.739-741(2010) ; (JAEA-J 08189)
 J-PARC加速器の初段となるリニアックは、181MeVまで加速して3GeVシンクロトロンに入射する運転を行っている。リニアックには、エネルギーやビーム強度とともに、低いエミッタンスと正確なエネルギーという厳しい要求が求められており、それを実現するために加速空洞の精密な製作や据え付け、高周波電場の制御を精密に行うなどの工夫を取り入れている。リニアックは2007年1月に所期のエネルギーである181MeV加速を達成した。しかし2008年9月にRFQの放電が多発し、安定な運転が継続できない問題が顕在化した。そこでクライオポンプの追加などの真空性能向上の対策を施し、実用運転できるまでに性能が回復した。さらに、性能向上として400MeVまでエネルギーを増強してビームパワーの向上を図る計画が進められ、そのためのACS型加速空洞の量産を行っている。本稿では、こうしたリニアックの特徴や運転経験,性能向上について解説する。

38001526
原子力施設の廃止措置とは何か,6; 廃止措置に必要な技術
柳原 敏
エネルギーレビュー 30(10), p.54-55(2010) ; (JAEA-J 08190)
 廃止措置にかかわる作業はさまざまな技術の組合せによって実施される。この際、考慮すべきことは、作業者の安全(放射線安全及び工業安全)を確保すること、廃棄物の発生量を抑える等環境への負荷をできる限り低減すること、合理的な作業の実施により費用を抑えることなどである。廃止措置に必要となる技術は、施設特性の評価,機器・構造物の解体,除染技術,放射性廃棄物の処理処分技術に分類することができる。また、廃止措置プロジェクトの資源量,費用,工程,リスク評価などの評価を含むプロジェクト・マネイジメントは重要な課題である。本報告ではこれらの技術について概説する。

38001527
八丈島における222Rn散逸率の評価とその大気中濃度への影響
大倉 毅史; 山澤 弘実*; 森泉 純*; 平尾 茂一*; 飯田 孝夫*
保健物理 45(3), p.270-277(2010) ; (JAEA-J 08193)
 八丈島で観測されている大気中222Rnに対する島起源の222Rn寄与を評価するために、八丈島島内で土壌-大気222Rn散逸率及び土壌中226Ra含有量の測定を行った。名古屋での222Rn散逸率及び乾燥土壌中226Ra含有量がそれぞれ9.7mBq m-2s-1, 23.2Bq kg-1であったのに対し、八丈島での222Rn散逸率及び乾燥土壌中226Ra含有量は、それぞれ0.88mBq m-2s-1, 6.8Bq kg-1であった。土壌中226Ra含有量が少ないことが、222Rn散逸率が低い一因である。この222Rn散逸率を用いて、島起源222Rnの寄与を簡便なモデルにより見積もったところ、島起源222Rnによる濃度上昇は、平均的な夜間の状態で、0.035〜0.072Bq m-3(寄与率4〜12%)あり、昼間の状態ではさらに小さくなる。これらの結果から、測定器の特性を踏まえると、長距離輸送によってもたらされた大気中222Rn(0.5〜3.0Bq m-3)に比較して島起源222Rnの影響は無視できる程度に小さい。八丈島で観測される222Rnは、大陸や日本列島で散逸した長距離輸送成分222Rnを観察するのに適しているといえる。

38001528
放射線グラフト吸着材による希少金属捕集技術への応用
瀬古 典明
Isotope News (678), p.6-9(2010) ; (JAEA-J 08195)
 スカンジウムとバナジウムに対して吸着性能が良好な官能基として、リン酸基及びアミドキシム基を不織布基材に導入して吸着材を作製した。2×5cm程度に切り出した各吸着材をプラスチック製の籠に充填し、1時間から1日間温泉水に浸漬させて試験を行った結果、吸着量は、浸漬時間の増加に伴い吸着量は増加し、わずか23時間の浸漬で鉱石中のスカンジウム濃度と比較して温泉排水中では2倍、源泉においては15倍に濃縮できることがわかった。これにより、温泉中に溶けている金属を資源として活用できることを示した。

38001529
パネル討論,3; 放射線誘起による突然変異育種の現状と展望
鳴海 一成
Isotope News (678), p.20-21(2010) ; (JAEA-J 08196)
 植物及び微生物に放射線を照射することで品種改良を行う突然変異育種は、古くはγ線源を用いて、また、近年ではイオンビームを用いて、盛んに行われている。さらに、この技術は日本国内に留まらず、東南アジア各国にも広がりを見せている。まず、農業生物資源研究所・放射線育種場の西村実氏が、γ線源を用いた突然変異育種の研究開発を紹介した。次に、日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所のイオン照射研究施設TIARAのAVFサイクロトロンを用いた研究開発を筆者が紹介した。続いて、理化学研究所仁科加速器センターの阿部知子氏が、重イオンビームを用いた突然変異育種について紹介した。キリンホールディングスの岡村正愛氏は、企業の立場から、イオンビーム育種を用いた新品種の開発とその実用化戦略の経験について講演した。最後に、日本原子力研究開発機構の田中淳氏が、アジアにおける突然変異育種の動向について、アジア原子力協力フォーラム(FNCA)の枠組みで行われている放射線育種プロジェクトの取り組みを紹介した。

38001530
灰色文献をめぐる動向; 灰色文献国際会議の議論を中心に
池田 貴儀
情報管理 53(8), p.428-440(2010) ; (JAEA-J 08197)
 本稿は、灰色文献の現状と課題の整理を行いながら、今日の灰色文献をめぐる動向について論考するものである。特に、インターネットの普及は、資料の多くが電子化されWeb上で公開される機会が増加するという灰色文献の流通の面だけでなく、灰色文献の範囲や灰色文献そのものの在り方にも大きな変化をもたらしつつある。本稿ではまず、灰色文献とは何かについて概略を説明し、その特徴,定義,範囲について整理する。加えて、灰色文献国際会議における議論を中心とした世界的な灰色文献の動向について触れる。最後に、灰色文献への現場の取り組みとして日本原子力研究開発機構図書館の事例について、紹介する。

38001531
核融合炉
飛田 健次
火力原子力発電 61(10), p.1026-1031(2010) ; (JAEA-J 08198)
 2000年以降の我が国における核融合炉研究の概要と進展をまとめた。現在の核融合開発において中核を担う装置はITERである。炉心プラズマの研究ではITERの運転に見通しをつける研究がJT-60で精力的に実施された。その一例が、高いベータ値を長時間維持する研究であり、ITERの標準運転で必要な値(約2)を上回る規格化ベータ値2.5を約30秒間持続することに成功した。工学技術の研究開発では、ITERへの調達のため工学関連機器の開発と製作が進行中である。特に、超伝導コイルでの開発では、50MN/mにも及ぶ強大な電磁力に耐え1個当たりの重量が約300トンという大規模コイルの製作に関連する幾つかの課題を克服し、所定の精度を満たしつつ工程内で機器製作を実施できる見通しを得た。また、プラズマ加熱・電流駆動のための170GHz高周波源の開発では、高効率発振領域に安定移行する発振技術の開拓により、ITERの要求値を上回る出力1MW,効率55%, 800秒間の発振を世界に先駆けて達成した。ITER計画と合わせて、幅広いアプローチ計画が進行中であり、その概要を解説する。

38001532
高温ガス炉
日野 竜太郎; 小川 益郎
火力原子力発電 61(10), p.1032-1037(2010) ; (JAEA-J 08199)
 原子力エネルギー利用の多様化を図り、地球温暖化ガスを削減するうえで、最高950℃の高温熱を取り出して発電のみならず水素製造等を行える高温ガス炉は極めて魅力的な原子炉システムである。本報では、高温ガス炉の優れた特長と世界の動向、世界をリードする日本の高温ガス炉開発の中核である日本原子力研究開発機構における研究開発の概要を紹介する。研究開発では、高温工学試験研究炉HTTRによる安全性実証や高温連続運転で得られた最近の成果について述べ、HTTR試験成果をベースにして実施した商用ガスタービン発電システム及び水素製造/発電を行うコジェネレーションシステムの設計、さらに、今後の展開を含めた将来展望について紹介する。

38001533
地震時における燃料集合体内沸騰二相流挙動の数値的可視化
高瀬 和之; 三澤 丈治; 吉田 啓之
可視化情報 30(Suppl.2), p.25-26(2010) ; (JAEA-J 08200)
 地震発生時の原子炉燃料集合体の健全性を正確に評価するためには、燃料棒被覆管等の構造材への地震の影響を明らかにすることが必要であり、このためには、地震による沸騰二相流挙動への影響を詳細に把握することが必要である。しかしながら、原子炉内沸騰二相流挙動を実験的に評価することは容易ではないため、解析的に評価できる手法の開発が期待されている。そこで、日本原子力研究開発機構では、地震時における原子炉燃料集合体内沸騰二相流挙動の高精度予測を実現するために、原子炉定常運転時の沸騰二相流解析で実績のあるACE-3Dコードの改良を行っている。本報では、改良したACE-3Dコードの地震時沸騰二相流解析への適用性を調べるために、原子炉燃料集合体を簡略模擬した体系で解析を行い、振動周期や振動方向が沸騰二相流挙動に及ぼす影響を可視化表示した結果をもとに報告する。

38001534
レーザー溶接シミュレーションのための予備的検討
北村 竜明*; 坂本 健作; 高瀬 和之
可視化情報 30(Suppl.2), p.359-360(2010) ; (JAEA-J 08201)
 原子炉本体やその付帯設備等の健全性を確保する補修技術の確立を目的として、3次元微細加工が可能なレーザーを利用した金属材料溶接技術の開発が行われている。この開発の一環として、金属材料溶接技術の最適化を目指して、レーザー照射による金属材料の溶融挙動を数値シミュレーションによって定量評価する手法の開発を行っている。本報告では、予備的に実施した金属溶融シミュレーションをもとに、可視化処理することにより、実験では確認ができなかった金属材料の溶融から凝固する挙動の過程を把握できることを確認した。これによって、溶接技術最適化のための数値シミュレーション技術の開発の見通しを得た。

38001535
低温・高圧下物性測定実験で使用される圧力伝達媒体の系統評価
立岩 尚之; 芳賀 芳範
固体物理 45(4), p.225-234(2010) ; (JAEA-J 08202)
 ダイヤモンドアンビルセルを用いて、低温/高圧下物性測定実験に用いられる合計14種類の圧力媒体についてルビー蛍光法でその静水圧性のテストを行った。ルビー蛍光R1線のブロード化を定量的に見積り、圧力媒体を三種類に分類した。アルゴン/窒素/ヘリウム媒体は10GPaまで良質な静水圧を低温領域まで維持することが明らかにされた。

38001536
高速増殖炉の安全性; 敦賀短期大学「原子力安全学」から
北端 琢也
日本安全学教育研究会誌 3, p.65-71(2010) ; (JAEA-J 08203)
 筆者らは敦賀短期大学において平成15年度から原子力立地県の学生が一市民として原子力に対して健全な判断ができるリテラシーとしての知識を身につけることを目的として「原子力安全学」での講義を行ってきた。本稿は、「原子力安全学」の最終回の講義である「高速増殖炉の安全性」について紹介する。具体的には、高速炉が包含するボイド反応度が正となる可能性,再臨界の可能性などが本質的な安全に対する事項であるが、派生する問題としてナトリウム・水反応,ナトリウム漏えいなどが上げられる。これらの事項について説明しさらにトラブル事例集等、日本原子力研究開発機構が実施しているPA活動を紹介する。

38001537
高分解能X線非弾性散乱実験と計算機実験によるPb(In1/2Nb1/2)O3の研究; 反強誘電状態からリラクサーまでを制御するBサイトランダムネスの効果
大和田 謙二; 富田 裕介*
日本物理学会誌 65(10), p.800-804(2010) ; (JAEA-J 08204)
 鉛ペロヴスカイトリラクサーPINにおけるBサイトランダムネスの効果について実験・理論両面からアプローチし、考察を行った。PINにおけるフォノン分散計測がX線非弾性散乱により可能になったことで、PINにはその状態にかかわらず本質的に強誘電不安定性が存在することが明らかとなった。一方、O-PINでは反強誘電相転移に関与する反強誘電不安定性が観測された。以上から、Bサイトランダムネスは反強誘電モードの不安定化を促進・抑制する機能を持っており、反強誘電状態,強誘電状態,リラクサー状態を「相対的」に安定化させるものと推測される。他方、双極子相互作用とBサイトの原子配置を反映する軸異方性の2つから構成される理論模型では、周期的な軸異方性の下では反強誘電状態が安定であることを示した。また、軸異方性の配置が乱れると本来安定であった強誘電状態が局所的に現れ、軸異方性(Bサイト)のランダムネスが反強誘電状態・強誘電状態の発現を支配していることを示した。

38001538
国際放射線防護委員会(ICRP)2007年勧告の国内法令取入れに対する若手独自の観点からの考え
荻野 晴之*; 河野 恭彦; 山外 功太郎; 藤原 慶子*; 鈴木 ちひろ*
日本原子力学会誌 52(8), p.458-461(2010) ; (JAEA-J 08206)
 我が国における放射線障害防止にかかわる現行の諸法令は、国際放射線防護委員会(ICRP)のICRP1990年勧告に基づいて定められている。ICRPは2007年に17年ぶりの主勧告の改訂を行い、ICRP1990年勧告に代わるICRP2007年勧告を公表した。これを受け、現在、文部科学省に置かれた放射線審議会により、ICRP2007年勧告の国内法令取入れに関する審議がなされている。本稿では、放射線審議会における検討の中でも重要な事項として挙げられている「女性の線量限度」,「電離健康診断」,「緊急時被ばく」,「監視区域」,「線量拘束値」について、放射線防護に携わる若手の考えを提言した。

38001539
緊急時被ばく
本間 俊充
日本原子力学会誌 52(9), p.578-582(2010) ; (JAEA-J 08207)
 連載講座「ICRP新勧告; 放射線防護の考え方と基準」の第6回として、ICRP新勧告の緊急時被ばく状況における放射線防護の基本的考え方について紹介する。2007年勧告は、それまでの行為と介入というプロセスに基づいた防護のアプローチから、計画被ばく/緊急時被ばく/現存被ばくといった被ばく状況の特性に基づいたアプローチへと発展した。緊急時被ばく状況の放射線防護の考え方は1990年勧告で介入として扱われていた考え方から大きく進展している。その中心は、緊急事態において個々の防護措置の効果を評価する代わりに、すべての被ばく経路とすべての防護措置を考慮に入れて、総合的な防護戦略を考える中で最適な一連の防護措置を決定するという新しいアプローチである。はじめに緊急事態に対する2007年勧告以前のICRPの防護の考え方を振り返り、それと対比することによって、よりわかりやすく2007年勧告の考え方について解説した。

38001540
原子力発電所の設計と評価における地震安全の論理
大橋 弘忠*; 成宮 祥介*; 宮田 浩一*; 渡邉 憲夫
日本原子力学会誌 52(11), p.732-736(2010) ; (JAEA-J 08208)
 我が国では近年、幾つかの原子力発電所で設計想定を超える大きな地震動がもたらされたが、地震による被害は軽微なものであり、原子力発電所の安全は確保された。それにもかかわらず、国民の間では設計想定を少しでも超える地震動が発生すると原子力発電所の多くの設備が損傷するのではないかという懸念が拡がり、地震に対する原子力発電所の安全性を改めて見える形にしていくことが求められている。これを受けて、日本原子力学会原子力発電所地震安全特別専門委員会では、安全分科会において、地震に対する安全確保の基準,考え方,評価の方法など多方面からの再検討を行い、地震安全の論理を取りまとめたのでその概要を紹介する。

38001541
In-situ analyses of chemical state and ionic distribution in the extraction chromatography column
渡部 創; 佐野 雄一; 明珍 宗孝; 岡本 芳浩; 塩飽 秀啓; 池田 篤史; 鈴木 伸一; 矢板 毅
日本イオン交換学会誌 21(3), p.189-194(2010) ; (JAEA-J 08209)
 Y-K edge X-ray absorption measurements on the extraction chromatography column revealed that distribution of Y ion and local structure around Y ion inside the column can be evaluated simultaneously. The ionic distribution and the local structure were derived from the X-ray absorption intensity and EXAFS analysis, respectively. Density profile of Y ion inside the packed column moved to downstream of the column and local structural parameters of the nearest O around Y changed by supplying eluent. The X-ray absorption spectroscopy of more than one element in the column is expected to reveal the separation mechanism of the extraction chromatography.

38001542
Zinc isotope fractionation in anion exchange in hydrochloric acid solution
鈴木 達也*; 野村 雅夫*; 藤井 靖彦*; 池田 篤史; 高岡 徹*; 小熊 幸一*
日本イオン交換学会誌 21(3), p.328-333(2010) ; (JAEA-J 08210)
 塩酸溶液系陰イオン交換樹脂中における亜鉛の同位体分別現象をクロマトグラフィー実験によって検討した。その結果、亜鉛の重同位体種は溶液層に濃縮する傾向があり、その同位体分別係数は塩酸濃度1Mで最大になることがわかった。一方で、亜鉛の陰イオン交換樹脂中への分配係数は、同位体分別係数が最大になる1Mよりもさらに高濃度の2M周辺で最大値を取ることがわかった。この同位体分別係数と分配係数が異なる塩酸濃度で最大値をとる現象について、錯形成定数から推定される亜鉛-塩化物錯体の化学種分布や、X線吸収分光法から求められた錯体構造等をもとに、さらに詳細な議論を実施した。

38001543
静電容量式ボイド率計の高温高圧条件への適用研究
渡辺 博典; 光武 徹*; 柴田 光彦; 高瀬 和之
日本機械学会論文集,B 76(769), p.1379-1385(2010) ; (JAEA-J 08211)
 流路チャンネル内の気相が占める体積率(ボイド率)は、気液二相流の諸特性を明らかにするために重要な特性量であるため、さまざまな計測が行われてきた。軽水炉炉心圧力条件(BWR, 7MPa)のボイド率計測では電気式ボイド率計測法を適用して行われた。近年、高速増殖炉の開発が進められており、日本原子力研究開発機構で行っている試験では、高速増殖炉用蒸気発生器の熱水力設計の基礎データ取得のため、模擬試験ループ二次側の水-蒸気二相流のボイド率計測に静電容量ボイド率計を開発・適用した。圧力は、18MPaであり、このような高い圧力条件下のボイド率計測は従来行われたことがなかった。実試験に適用した結果以下の計測結果が得られた。(1)水質の影響がなくほぼ全領域のボイド率計測ができる。(2)瞬時(リアルタイム)に計測できる。(3)18MPaの高温高圧条件下で実用的に計測できる。

38001544
感度解析について
香田 正人*; 本間 俊充
オペレーションズ・リサーチ 55(10), p.613-621(2010) ; (JAEA-J 08212)
 感度解析における代表的な方法論や基本的な概念・考え方について、現代的アプローチに基づく新しい技術展開を解説する。本稿第1章では感度解析技術において基本となる考え方について述べる。第2, 3章では各々、局所的感度解析(ローカル感度解析)とグローバル感度解析の代表的な方法論や基本的な概念・考え方について解説する。

38001545
FAST手法による感度解析について
劉 峭
オペレーションズ・リサーチ 55(10), p.622-626(2010) ; (JAEA-J 08213)
 FAST(Fourier Amplitude Sensitivity Test)手法は、モデルの入力変数の不確実さによる出力変数の不確実さへの影響を評価する手法であり、グローバル感度解析として最初に提案されたものである。FAST手法の特徴とは、各入力変数にそれぞれ異なる特性周波数を割り振り、高次元の入力変数空間を1次元空間に変換させ、各入力変数によるモデル出力変数の分散への寄与が、フーリエ変換により得られた特性周波数及びその高次周波数のフーリエ係数から効率よく求められると言うことである。本文は、エルゴード定理による高次元の入力変数空間を1次元空間に変化させるための探索関数の決め方,各入力変数の特徴周波数の選択手法及びフーリエ変換による出力変数の分散の計算手法などを詳細に紹介した。本解説により不確実状況下での意思決定におけるFAST手法の新しい展開に期待する。

38001546
Global感度解析; Sobol'法
本間 俊充
オペレーションズ・リサーチ 55(10), p.627-631(2010) ; (JAEA-J 08214)
 分散に基づくグローバル感度解析の代表的手法の一つとして、Sobol'法について述べる。Sobol'法の感度指標は、分散低減に基づくパラメータの「重要度指標」を一般化したもので、入力変数の不確実さに起因するモデル出力の不確実さ、すなわち分散に対する入力変数の寄与を表す。本稿では、その数学的定式化と実際の計算手順及び適用例について解説する。

38001547
エネルギー回収型リニアック(ERL)におけるビーム物理
羽島 良一
プラズマ・核融合学会誌 86(8), p.473-477(2010) ; (JAEA-J 08215)
 エネルギー回収型リニアック(ERL)は、蓄積リング光源を上回る高輝度X線が得られる次世代放射光源として期待されている。本章では、ERLにおいて高品質かつ大電流の電子ビームを実現するために考慮すべきビーム物理上の諸問題について概説する。

38001548
高コントラスト・高ビーム品質・高強度レーザーの開発
桐山 博光; 森 道昭; 中井 善基*; 下村 拓也; 笹尾 一*; 田中 桃子; 越智 義浩; 田上 学*; 近藤 修司; 金沢 修平; 大東 出; 岡田 大; 若井 大介; 笹尾 文崇*; 鈴木 将之; 小菅 淳; 近藤 公伯; 杉山 僚; Bulanov, S. V.; Bolton, P.; 横山 淳; 大道 博行; 河西 俊一; 木村 豊秋*; 田島 俊樹
レーザー研究 38(9), p.669-675(2010) ; (JAEA-J 08216)
 高強度レーザーの時間・空間制御技術に関するレビューである。時間制御技術は主パルスと背景光の強度比を向上させる高コントラスト化であり、先駆けて開発した高エネルギーシード型低利得光パラメトリックチャープパルス増幅手法について紹介する。空間制御技術は高エネルギービームの空間強度均質化であり、回折光学素子を用いた手法について紹介する。これらの手法の特徴を詳細に紹介するとともに、これらの制御技術を用いて得られた時間・空間特性についても報告する。

38001549
Proton generation and terahertz radiation from a thin-foil target with a high-intensity laser
匂坂 明人; Pirozhkov, A. S.; 森 道昭; 余語 覚文; 小倉 浩一; 織茂 聡; 西内 満美子; Ma, J.*; 桐山 博光; 金沢 修平; 近藤 修司; 中井 善基*; 下村 拓也; 田上 学*; 圷 敦; 岡田 大; 本村 朋洋*; 大道 博行; 近藤 公伯; Bulanov, S. V.; Esirkepov, T. Z.; 菜嶋 茂喜*; 細田 誠*; 長友 英夫*; 大石 祐嗣*; 根本 孝七*; Choi, I. W.*; Lee, S. K.*; Lee, J.*
レーザー研究 38(9), p.702-705(2010) ; (JAEA-J 08217)
 高強度レーザーと薄膜との相互作用により、高エネルギーの粒子,硬X線,高次高調波,テラヘルツ(THz)波などが発生する。特に高エネルギー陽子については、医療用としての小型加速器への利用が期待されている。本研究では、薄膜ターゲット照射による陽子ビームとTHz波の同時発生について調べた。原子力機構設置のチタンサファイアレーザー(J-KAREN)を用いて、薄膜ターゲットへの照射実験を行った。その結果、ターゲット裏面方向の陽子とレーザー反射方向のTHz波の同時発生を測定した。また、プリプラズマを抑制することで陽子の高エネルギー化を確認した。

38001550
グリズム対を用いた光ファイバパルス伸張型チャープパルス増幅システムでの残留3次分散補償
小川 奏; 赤羽 温; 辻 公一; 山川 考一
レーザー研究 38(10), p.779-783(2010) ; (JAEA-J 08218)
 イッテルビウム(Yb)添加YLF結晶を増幅媒質とするチャープパルス再生増幅器システムにグリズムを導入することでファイバパルス伸張器による3次分散を補償し、コンパクトでありながらペデスタルが低減された高エネルギーかつ高ピーク出力が可能なCPAレーザーシステムを考案,実験を行った。パルス圧縮された出力パルスをBBO結晶を用いた自己相関器を用いて自己相関波形計測を行った結果、回折格子対のみでは2.5psであったパルス幅が、グリズムを加えることで1.9psへと圧縮され、ピーク強度もおよそ2倍に向上した。

38001551
Extraction chromatographic separation of trivalent minor actinides using iHex-BTP/SiO2-P resin
駿河谷 直樹; 佐野 雄一; 山本 昌彦; 黒沢 明; 檜山 敏明
American Chemical Society, ACS Symposium Series 1046, "Nuclear Energy and the Environment" , p.131-139(2010) ; (JAEA-J 08219)
 Extraction chromatographic separation of the long-lived trivalent minor actinides, Am(III) and Cm(III), has been performed to study the potential application of 2,6-bis(5,6-di-iso-hexyl-1,2,4-triazin-3-yl)-pyridine (iHex-BTP) impregnated into the porous silica support coated with styrene-divinylbenzene (SiO2-P). The adsorption and elution characteristics of Am(III) and Cm(III) in nitric acid media have been investigated under some acid conditions to separate them from lanthanides using a column packed with iHex-BTP/SiO2-P resins. Depending on the concentration of nitric acid solution as well as aqueous flow rate, a certain condition allowed us to selectively recover the fractions containing Am(III) and Cm(III) in a feed sample solution derived from PUREX raffinate. The proposed separation procedure and extraction profiles will be discussed in this presentation.

38001552
Radiation detection and measurement in patients contaminated with alpha emitters
百瀬 琢麿; 栗原 治; 高田 千恵; 古田 定昭
Proceedings of 1st International Symposium on Radiation Emergency Medicine at Hirosaki University , p.65-72(2010) ; (JAEA-J 08220)
 核燃料取扱施設等で扱われているプルトニウム等の人工放射性核種の放射線管理方法について紹介する。再処理施設で行われている放射能除染方法,汚染管理のためのさまざまな測定方法及び内部被ばくを検知するモニタリング方法について述べる。その中でも特に、オートラジオグラフィを利用したスミヤ試料のα核種の測定方法や鼻スミヤのサンプリング及び測定方法及びα核種の体内及び体外測定について紹介する。また、α核種の吸入事故の際の被ばく量推定のための計算コードについても紹介する。

38001553
MOX fuel performance and database development for MOX fuel use in LWRs
小澤 隆之; 生澤 佳久
Proceedings of 2010 LWR Fuel Performance Meeting/TopFuel/WRFPM (CD-ROM) , p.72-81(2010) ; (JAEA-J 08221)
 エネルギー資源の有効利用のため、軽水炉(LWR)の使用済燃料の再処理によって取り出したプルトニウムを再利用しており、このような核燃料サイクルでは、プルトニウムをウラン-プルトニウム混合酸化物として用いている。日本においては、2003年の運転終了までFUGENにおいて772体のMOX燃料集合体が健全に使用され、これは熱炉でのMOX燃料利用実績として世界最多となっている。FUGENで照射したMOX燃料集合体に対して、MOX燃料挙動評価に必要な照射後試験を実施し、有用なデータを得ることができた。また、ノルウェーのハルデン炉(HBWR)において、炉内計装を取り付けたMOX燃料集合体を用いた幾つかの照射試験(定常照射試験,ランプ試験,負荷追従試験)を実施した。このようなFUGEN及びHBWRで得られた経験を、将来のLWRにおけるMOX燃料利用の信頼性向上に資するため、MOX燃料データベースを構築した。

38001554
ECP measurements under neutron and γ ray in in-pile loop and their data evaluation by water radiolysis calculations
塙 悟史; 中村 武彦; 内田 俊介; Kus, P.*; Vsolak, R.*; Kysela, J.*
Proceedings of 2010 Nulcear Plant Chemistry Conference (NPC 2010)/8th Internatinal Radiolysis, Electrochemistry & Materials Performance Workshop (CD-ROM) , 10p.(2010) ; (JAEA-J 08222)
 原子力プラントへ適用できる信頼性の高い腐食電位(ECP)センサーの開発を目標に、照射下でのECPセンサーの性能試験が実施された。本検討では、照射下ECP測定データを精査するとともに、腐食環境とECPの変化をラジオリシスコードで評価した。具体的には、数種類のECPセンサーについて、異なる照射条件や水質条件におけるセンサー出力を比較して相関を求め、ラジオリシス/ECPの解析結果と比較した。その結果、還元条件であっても照射量が増加することでECPの測定値は高くなる傾向を示し、その程度は水の放射線分解で生成する過酸化水素によりもたらされるECP変化と同等であった。これらの結果より、照射下でのECP測定やラジオリシス/ECP解析が照射場の腐食環境評価に有用であることを確認した。

38001555
Correlation between the averaged internal structure and the coercive force of neodymium-iron-boron (Nd-Fe-B) sintered magnets investigated by small-angle neutron scattering
武田 全康; 鈴木 淳市; 山口 大輔; 秋屋 貴博*; 加藤 宏朗*; 宇根 康裕*; 佐川 眞人*
Proceedings of 21st International Workshop on Rare-Earth Permanent Magnets and their Applications (REPM 2010) , p.161-164(2010) ; (JAEA-J 08223)
 現状では希少金属であるDyの添加が不可欠な高温で使われるNd-Fe-B焼結磁石のDy使用量を減らすのに鍵となる、焼結磁石内部の平均構造に関する情報を得るために、原子力研究開発機構の研究用原子炉JRR-3に設置されている小角散乱装置、SANS-J-IIを用いて、中性子小角散乱測定を行った。2次元検出器上で観測された中性子小角散乱の強度マップは、焼結や焼結後の熱処理条件で大きく変わり、中性子小角散乱法が、焼結磁石内部の平均構造を調べるのに、非常に有効な研究手段であることを示している。

38001556
Bypass flow computations using a one-twelfth symmetric sector for normal operation in a 350 MWth prismatic VHTR
Johnson, R.*; 佐藤 博之
Proceedings of 5th International Topical Meeting on High Temperature Reactor Technology (HTR 2010) (CD-ROM) , 8p.(2010) ; (JAEA-J 08224)
 次世代原子力プラント(NGNP)での採用が検討されている、熱出力350MWのブロック型高温ガス炉を対象として隙間幅,出力分布及び燃料体寸法をパラメータとした炉心バイパス流れ現象の流体解析評価を行った。解析結果から、想定される最大隙間幅を有する燃料体は隙間幅を有しない燃料体に比べて、各流路における冷却材出口の最大温度差が約4倍に増加することを明らかにした。また、熱膨張や照射による収縮などに起因する燃料体の寸法変化が燃料温度に与える影響が大きいことを明らかにした。本結果から、今後、ブロック型高温ガス炉炉心設計に熱流体解析を十分適用できる目途を得た。

38001557
Surface heat flux and temperature measurements in nucleate pool boiling
Liu, W.; 高瀬 和之
Proceedings of 8th International Topical Meeting on Nuclear Thermal-Hydraulics, Operation and Safety (NUTHOS-8) (CD-ROM) , 10p.(2010) ; (JAEA-J 08225)
 沸騰メカニズムを把握するために、流れを乱す伝熱面上へのセンサーの設置が不要で、伝熱面温度・熱流束を同時計測できるシステムを開発した。本計測システムは、高速度で伝熱体内部温度を計測する一次系と、多チャンネルで計測される伝熱体内部温度データをもとに伝熱面温度と熱流束の変化を逆問題解析によって求める二次系から構成される。共同陽極を持つ微細熱電対群を伝熱面表面から数ミクロンの深さに配置することによって、本計測システムにより現象の速い非定常沸騰サイクルの追従に成功した。本報では、開発したシステムを用いて、半無限体逆問題解析を適用して沸騰サイクルにおける気泡直下の伝熱面表面熱流束と表面温度を計測した結果について報告する。本開発の計測システムによって、大きな変形した気泡の形成に伴う伝熱面温度の低下や熱流束の上昇を定量的に計測できることがわかった。

38001558
Thermal-hydraulic analysis of MONJU upper plenum under 40% rated power operational condition
本多 慶; 大平 博昭; 素都 益武; 吉川 信治
Proceedings of 8th International Topical Meeting on Nuclear Thermal-Hydraulics, Operation and Safety (NUTHOS-8) (CD-ROM) , 12p.(2010) ; (JAEA-J 08226)
 本研究では、FrontFlow/Redを用いて「もんじゅ」上部プレナムの詳細熱流動解析を行った。今回のモデルでは、極めて微細なメッシュ分割を行い、フローガイドチューブ,燃料取扱機構などを忠実に模擬した。また、対流項には1次風上差分、拡散項には2次中心差分を適用、乱流モデルにはRNG k-εモデルを適用した。解析の結果、UIS以外の上部プレナムに設置されている構造は温度,速度にあまり影響を与えないこと、今回の結果とUCS領域をポーラスモデルで解析した結果の特徴は類似した傾向を持つこと、そして集合体出口温度とUCS領域において測定される温度の差は比較的小さいことが示された。

38001559
Development of level 2 PSA methodology for sodium-cooled fast reactors, 1; Overview of evaluation technology development
中井 良大; 鈴木 徹; 神山 健司; 清野 裕; 小山 和也*; 守田 幸路*
Proceedings of 8th International Topical Meeting on Nuclear Thermal-Hydraulics, Operation and Safety (NUTHOS-8) (CD-ROM) , 12p.(2010) ; (JAEA-J 08227)
 ナトリウム冷却高速炉の炉心損傷シーケンスを系統的に評価するため、レベル2PSA評価手法を確立した。既存の評価ツールに加えて、MUTRANとSIMMER-LTコードを炉心物質再配置過程の評価のために開発した。また、ナトリウム冷却高速炉の炉外事象過程の特徴を考慮した評価を行うため、評価モデルのCORCONとVANESAを新規に実施した試験に基づき改良した。ナトリウム冷却高速炉のレベル2PSAのイベントツリーを構築・定量化するための技術的知見をデータベースとしてまとめた。これにより、ナトリウム冷却高速炉のレベル2PSAの技術的基盤が整備された。

38001560
Development of a uniform beam irradiation system by the nonlinear focusing method
百合 庸介; 湯山 貴裕; 石坂 知久; 石堀 郁夫; 奥村 進
Proceedings of 9th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Applications (RASEDA-9) , p.121-124(2010) ; (JAEA-J 08228)
 A research and development study has been in progress on the formation and irradiation of a uniform ion beam using multipole magnets at TIARA of JAEA. The uniform beam irradiation system is based on the nonlinear focusing method, which enables us to make the beam's Gaussian distribution uniform and irradiate any position on a large-area sample at a constant particle fluence rate. In this paper, several measurement techniques have been investigated to tune the beam in real time and evaluate characteristics of a large-area uniform beam. By measuring the 2D relative distribution using radiochromic films, we have confirmed that a uniform proton beam of 6 cm square with 6 % uniformity is formed. Features of the uniform irradiation by means of the nonlinear focusing method are also discussed.

38001561
Cocktail beam acceleration technique for quick change of microbeam at the JAEA AVF cyclotron
倉島 俊; 吉田 健一; 佐藤 隆博; 宮脇 信正; 柏木 啓次; 奥村 進; 神谷 富裕; 横田 渉
Proceedings of 9th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Applications (RASEDA-9) , p.234-237(2010) ; (JAEA-J 08229)
 A heavy-ion microbeam is provided for the TIBIC experiment and living-cell irradiation in biotechnology at the JAEA AVF cyclotron facility. A microbeam of 260-MeV 20Ne7+ with a spot size less than 1 μm in diameter is formed using a flat-top acceleration system. Users of the microbeam need a wide range of linear energy transfer (LET), and the ion species and/or energy have to be changed in order to vary LET. However, it takes a few hours to tune the cyclotron for the microbeam formation so that a microbeam of one species is usually provided in one beam time. A cocktail beam acceleration technique has been adopted to change the ion species quickly. In this technique, ion species having almost the same mass to charge ratio (M/Q) are injected into the cyclotron simultaneously, and only one ion species whose cyclotron resonance frequency is equal to the acceleration frequency is extracted from the cyclotron. Another species is extracted by slightly shifting the acceleration frequency. The magnetic rigidity of extracted beams is the same, therefore, lens parameters of the beam transport line are not required to be changed basically. Quick change of ion species of microbeam from 260-MeV 20Ne7+ to 520-MeV 40Ar14+ was examined for a cocktail with M/Q = 2.85 and successfully performed within 30 minutes.

38001562
Numerical simulations of thermal-mixing in T-junction piping system using large eddy simulation approach
田中 正暁; 大島 宏之
Proceedings of CFD for Nuclear Reactor Safety Applications (CFD4NRS-3) Workshop (CD-ROM) , 12p.(2010) ; (JAEA-J 08230)
 構造中の高サイクル熱疲労現象に関係する流体混合現象を評価するために、ラージエディシミュレーション(LES)法を採用した数値解析コードMUGTHESを開発している。解析コードの検証(Verification and Validation)について概要と実施内容の一部を説明するとともに、実問題に対するMUGTHESの検証の一環として実施した原子力機構のT字管体系での水流動試験(WATLON)の数値解析結果について述べる。T字合流部を対象とした数値解析では、流速及び流体温度について計測結果との比較により解析結果の妥当性を示し、流体混合現象に対するLES法を用いたMUGTHESの適用性を示した。さらに、流体混合の過程で生じる大規模渦構造の形成と温度変動発生メカニズムとの関係について知見を得た。

38001563
Spatio-temporal mapping; A Technique for overview visualization of time-series datasets
宮村 浩子; 林 幸子*; 鈴木 喜雄; 武宮 博
Proceedings of Joint International Conference of 7th Supercomputing in Nuclear Application and the 3rd Monte Carlo (SNA + MC 2010) (USB Flash Drive) , 4p.(2010) ; (JAEA-J 08231)
 われわれは、時空間マップとマップをデザインする機能を提案する。時空間マップは空間・時間情報をマッピングする技術である。このマップでは、物理量の変化を2次元空間に割り当てている。この時空間マップは、例えばデータマップの解像度や色に割り当てている物理量など、観察者が対話的にマップを変えながら観察することでより特徴を把握できる。そこで、データマップをユーザが対話的にデザインする機能を併せて開発し、提案する。

38001564
Verification of detailed two-phase flow simulation code TPFIT to water jet experiment
吉田 啓之; 鈴木 貴行*; 高瀬 和之; 小泉 安郎*
Proceedings of Joint International Conference of 7th Supercomputing in Nuclear Application and the 3rd Monte Carlo (SNA + MC 2010) (USB Flash Drive) , 4p.(2010) ; (JAEA-J 08232)
 In this study, the detailed two-phase flow simulation code TPFIT developed in the JAEA was applied to the water jet experiment as a first step of the validation work of the TPFIT for annular and dispersed flow. The liquid film that flowed on the fuel rod surface under the annular two-phase flow condition was imitated as the water jet. In the experiment, water gushed out downward from the nozzle to the atmosphere, and the water jet shapes were observed by a high-speed camera. Results of the detailed numerical simulation of the TPFIT were compared with the measured data including water jet shapes, water jet collapse length and length of water jet surface wave. In the results, the TPFIT could predict length of water jet surface wave. However, the predicted collapse length did not agree with the measured values. It is concluded that the evaluation method of surface tension force must be modified to improve accuracy of numerical simulations.

38001565
Structural simulation and modeling for assembly in real space
中島 憲宏; 西田 明美; 鈴木 喜雄; 山田 知典; 武宮 博; 伊与久 達夫
Proceedings of Joint International Conference of 7th Supercomputing in Nuclear Application and the 3rd Monte Carlo (SNA + MC 2010) (USB Flash Drive) , 4p.(2010) ; (JAEA-J 08233)
 FIESTA(組立構造物のための有限要素構造解析)は、仮想実験施設であり、大規模なシミュレーション(デジタル空間に現実世界をもたらすためのシミュレーション)である。現実世界の原子力発電施設のような巨大で複雑な構造物をシミュレーションするためには、方法論の確立とデジタル空間で再現する技術が必要である。FIESTAは、デジタル空間に再現するための方法論として組立構造解析を提案した。組立構造物のための構造解析の最初の試みは、設備の部品を集積することで、構造物全体を有限要素解析する。組立構造物の解析には多大な計算が必要となるため、並列分散コンピューティング環境を活用した。JAEAの実験炉をモデル化して数値実験した結果を示し、組立構造物のシミュレーションを検証した。

38001566
Numerical analysis on thermal-hydraulics of supercritical water flowing in a tight-lattice fuel bundle
中塚 亨; 三澤 丈治; 吉田 啓之; 高瀬 和之
Proceedings of Joint International Conference of 7th Supercomputing in Nuclear Application and the 3rd Monte Carlo (SNA + MC 2010) (USB Flash Drive) , 4p.(2010) ; (JAEA-J 08234)
 冷却材に超臨界圧水を用いたスーパー高速炉の実現性を評価するため、スーパー高速炉の稠密燃料集合体を簡略模擬した19本稠密燃料バンドル内超臨界圧水の伝熱流動解析を行った。超臨界圧領域に拡張した三次元二流体モデル解析コードACE-3Dを用い、定格運転条件と等しい質量速度,入口エンタルピーを解析条件として与えた。燃料集合体断面の局所出力分布は均一、軸方向には核計算より得られた中心付近で出力が最大となる出力分布を与えた。流路内にハニカム形状の構造物を配置し、グリッドスペーサの影響を考慮した。その結果、現行軽水炉と同様、燃料集合体周辺部と比較して中心部の温度が高くなり、最高被覆管表面温度(MCST)は、中心燃料棒上部のギャップ部に面する領域で生じた。その値は燃料棒健全性の判断基準である650℃以下を満足し、燃料集合体の実現性を確認することができた。スペーサを考慮することにより、燃料集合体内の温度分布の均一化や、それに伴う燃料棒表面温度の低下が明らかとなったが、本解析では、MCSTはスペーサがない場合と同様であった。スペーサの形状や配置の最適化により、MCSTをさらに下げることが可能と思われる。

38001567
Application of GPU to Multi-interfaces Advection and Reconstruction Solver (MARS)
永武 拓; 功刀 資彰*; 高瀬 和之
Proceedings of Joint International Conference of 7th Supercomputing in Nuclear Application and the 3rd Monte Carlo (SNA + MC 2010) (USB Flash Drive) , 5p.(2010) ; (JAEA-J 08235)
 原子力分野において、大型計算を行うための高性能の計算機システムが必要となっている。この高性能計算機に関して、近年GPU(Graphics Processing Unit)が注目されている。GPUはコンピュータの画面描写のためのシステムであり、CPU(Central Processing Unit)の負荷を軽減する目的で開発されてきた。近年は高いクオリティーの3次元物体描画に対応するため、多数の演算ユニットと広いメモリバンドを有するようにGPUは拡張され、CPUと比較して数十倍程度と非常に高い演算能力を持つようになった。この結果、GPUを学術計算等に用いる試みが世界中でなされている。本研究では混相流解析手法の一つであるMARS(Multi-interfaces Advection and Reconstruction Solver)をGPUに適応することを目的とし研究を行った。MARSは気液界面輸送時の体積・形状保存性に優れており、現在までに種々の混相流熱流動現象に対して高い予測精度を示している。具体的には界面追跡法及びポアソンソルバーの高速化について、GPU向けのチューニングを行いCPUとのパフォーマンスを比較・検討した結果、当初予測したとおりに高速化を行える見通しを得ることができた。

38001568
On-the-fly computing on many-core processors in nuclear applications
櫛田 慶幸
Proceedings of Joint International Conference of 7th Supercomputing in Nuclear Application and the 3rd Monte Carlo (SNA + MC 2010) (USB Flash Drive) , 6p.(2010) ; (JAEA-J 08236)
 原子力分野におけるアプリケーションプログラムの幾つかは、非常に高い計算能力を専有利用可能な計算環境を必要とする。このようなアプリケーションプログラムの共通点は、ある時間以内に計算を完了させなければならない即時解析が要求されるということである。いわゆるスーパーコンピューターは、多人数で共有されているためこのような用途には向かない。しかし、今日現れてきたメニーコアプロセッサーは、非常に高い計算能力を低価格で提供しており、専有利用環境の構築に適している。本論文では、二つの例についてメニーコアプロセッサーを利用した即時解析の実現性を議論する。

38001569
Development of numerical simulation code for thermal striping phenomena in Japan sodium cooled fast reactor
田中 正暁; 村上 諭*; 大木 裕*; 大島 宏之
Proceedings of Joint International Conference of 7th Supercomputing in Nuclear Application and the 3rd Monte Carlo (SNA + MC 2010) (USB Flash Drive) , 6p.(2010) ; (JAEA-J 08237)
 原子力機構におけるナトリウム冷却大型高速炉(JSFR)で発生する熱疲労現象の評価手法開発の全体計画及び現在の進捗状況について概説する。本現象評価に必要な数値解析コードの整備及び当該数値解析コードの検証過程について説明し、検証の一環として実施した実問題への適用例としてT字管体系での熱流動解析結果及び実炉を対象としてサーマルストライピング現象が顕在する制御棒チャンネル及び周辺ブランケット燃料集合体周辺での熱流動解析から得られた知見について示す。

38001570
Fault-tolerant mechanism of both job execution and file transfer for integrated nuclear energy simulation
立川 崇之; 手島 直哉; 鈴木 喜雄; 武宮 博
Proceedings of Joint International Conference of 7th Supercomputing in Nuclear Application and the 3rd Monte Carlo (SNA + MC 2010) (USB Flash Drive) , 6p.(2010) ; (JAEA-J 08238)
 原子力エネルギー分野では、さまざまな物理現象,大スケールのシステムの挙動を扱うための大規模な統合シミュレーションが開発されている。統合シミュレーションでは、各々のコードがシステム内の各々の物理過程,各パーツを取り扱うようにして、複数のコードを連携して実行する。各コードは別々の組織によって開発され、特定の計算機での実行に適したように最適化されていることが多く、グリッド基盤を活用した連携実行が有用である。大規模シミュレーションは長時間にわたって実行されるため、実行中の耐故障性を考慮する必要がある。耐故障性は実行ジョブのみならず、ジョブ間のファイル転送に対しても考慮する必要がある。このため、われわれはエラー検知,ジョブ再投入,ジョブ間のファイル再転送機能を要する耐故障性機構を開発した。この機構を原子力エネルギーシステムに対して適用し、統合シミュレーションのエラー検知及び自動修復を行い、長時間実行を自動的に継続できることを示した。

38001571
Development of method for evaluation of three dimensional distribution of in situ stress state and preliminary estimation of applicability
丹野 剛男; 平野 享*; 松井 裕哉
Rock Stress and Earthquakes; Proceedings of 5th International Symposium on In-situ Rock Stress (ISRS-5) , p.521-526(2010) ; (JAEA-J 08239)
 日本原子力研究開発機構は、地表からの調査段階で実施した初期応力測定結果から施設スケールにおける初期応力分布を精度良く評価する手法を開発してきた。本評価手法では、応力場が重力に起因する応力成分と地殻運動による水平応力成分から形成されると仮定し、また、領域内の初期応力状態に影響する岩種の相違や断層などの地質的不均一性のモデル化が必要であるとした。これを踏まえて、3次元有限要素法及び3次元境界要素法を用いた二種類の数値モデルを構築した。次いで、その検証として、これらのモデルを用いて、瑞浪超深地層研究所周辺の初期応力評価を行った。その評価において、外力は未知数であるが、初期応力測定結果を用いた逆解析で求めることができ、この外力を用いて、順解析により瑞浪超深地層研究所周辺の応力状態を計算した。現在施工中である瑞浪超深地層研究所の深度100m及び深度200mで応力測定を実施し、解析結果と比較した。その結果、解析された初期応力状態は、モデル化された地質的不均一性に依存して二種類の解析モデルで異なるものの、深度100m及び深度200mの測定結果とおおむね一致した。

38001572
水文諸量の空間分布推定に基づく幌延調査流域の流出解析
山本 陽一; 前川 恵輔; 横田 秀晴; 向井 和行*; 石井 啓滋*
土木学会平成22年度全国大会第65回年次学術講演会講演概要集(DVD-ROM) , p.525-526(2010) ; (JAEA-J 08240)
 幌延深地層研究計画の一環として北海道幌延町で進めている表層水理調査では気象観測,河川流量調査及び地下水位,土壌水分,水質の観測等を行っており、これらの観測値に基づいて地下水流動解析の境界条件や初期条件の把握を行うこととしている。調査・研究の進展により、例えば地下水涵養量の推定では観測点の空間代表性に関して無視できない問題が顕在化した。そこで、幌延町のような積雪寒冷地に適用可能な気象要素の空間分布推定方法を検討し、推定された気象要素を入力データとした長期流出解析を実施した。気象要素の空間分布推定法を検討した結果、降雨量は流域全体でほぼ一様、降雪量は植生や地形に応じて推定する必要があると判断された。タンクモデルによる流出解析は流出量を良好に再現することができたことから、降雪水量・融雪水量の推定手法は妥当と考えられた。また、再現された水収支から、流域間の地下水流動や貯留量の年変動が示唆された。なお、本件の成果は表層水理調査における領域設定や調査手法の妥当性評価の基礎資料に資する。

38001573
原子力発電所の運転可能年数に関する意見
鈴木 雅秀
エネルギー政策研究特別号,7 , p.24-27(2010) ; (JAEA-J 08241)
 プラント運転期間については、日本や他多くの国では、法令上の運転期間があらかじめ定められておらず、一定期間に実施する定期安全レビューや、運転開始以降30年を経過する前に実施する高経年化技術評価等に基づいた判断などから、運転を継続していくことになる。すなわち、原理的にはプラントの性能次第で運転年数は伸ばすことができる。原子力発電所の運転期間は"beyond 60"(60年超)を視野に入れた時代に突入しており、この中で、プラントを構成する材料の経年劣化対策をどう考え、管理あるいは規制体系の中でどう位置づけるかが最も重要なポイントのひとつになる。経年管理の仕組みをいかに合理的にルール化し、最新の知見を反映させながらそれを長期間に渡って有効に機能させていくことが重要である。ここでは、「原子力発電所の運転可能年数」に関して、研究を実施してきた研究機関に所属する研究者の立場から、おもに研究にかかわる施設基盤との関連から議論を行う。

38001574
安全性の論証構造を用いた関係者間コミュニケーションの共有プラットフォーム
大澤 英昭; 日置 一雅; 牧野 仁史; 仙波 毅; 梅木 博之; 高瀬 博康*
研究・技術計画学会第25回年次学術大会及び総会講演要旨集(CD-ROM) , p.55-60(2010) ; (JAEA-J 08242)
 日本原子力研究開発機構では、地層処分の安全性を説明するうえで必要となる多様かつ大量な情報をユーザーの要望に応じて知識として提供し、信頼性を高めるために必要となる新たな知識の創造や関係者のコミュニケーションのための共有プラットフォームとするとともに、次世代への知識継承などを支援する知識マネジメントシステム(KMS)の開発を進めている。本稿では、地層処分の安全性の説明のための論証構造等に基づく新たなコミュニケーションの共有プラットフォームの基本的コンセプトとそれに基づくKMSの開発状況を紹介する。

38001575
気流混合現象の実験的研究
上地 優; 寺田 敦彦; 杉山 均*
日本機械学会関東支部山梨講演会(2010)講演論文集 , p.98-99(2010) ; (JAEA-J 08243)
 日本原子力研究開発機構では、高温ガス炉の熱利用システム開発の一つとして、数値シミュレーションを用いたプロセスガス反応器の設計研究を行っている。しかし、反応器内のはく離を伴う気流混合現象の数値解析では、複雑な乱流場により精度が必ずしも十分ではない。また、このような流れ場の解析モデル検証に必要な実験データも乏しい。そこで、数値解析コードの検証のための実験データ取得のために、実験的研究として内部に流量調整ドアを設置した矩形屈曲管路内の気流混合現象の可視化及びPIV(Particle Image Velocimetry: 粒子画像流速測定法)測定を行った。その結果、数値解析検証に必要な噴流混合部の速度場データを取得し、はく離により誘発した乱れが、混合に影響を与えることがわかった。

38001576
DNAの水和とダイナミクスの塩基配列依存性; DNA-タンパク質,DNA-低分子認識の理解に向けて
米谷 佳晃; 河野 秀俊
揺らぎと生体機能 , p.66-71(2010) ; (JAEA-J 08245)
 DNAの水和は、生命現象の根幹となる分子間相互作用の性質を理解するうえで重要である。近年、分子動力学シミュレーションにより、DNAのマイナーグルーブに現れる水和パターンに塩基配列依存性があること、また、水和水の挙動がDNAの構造揺らぎと密接に関係していることがわかってきた。本稿では、それらの知見について紹介するとともに、塩基配列によって異なる水和の性質がDNAとタンパク質,低分子の相互作用にどのように関連しているか議論する。

38001577
Development on in-reactor observation system using cherenkov light
土谷 邦彦; 北岸 茂; 長尾 美春; 竹本 紀之; 那珂 通裕; 木村 明博; 佐野 忠史*; 宇根崎 博信*; 義本 孝明*; 中島 健*; 藤原 靖幸*; 奥村 清*; 山本 修二*
KURRI Progress Report 2009 , p.196(2010) ; (JAEA-J 08246)
 チェレンコフ光を利用した計測技術として、チェレンコフ光測定装置(CVD: Cerenkov Viewing Device)による使用済燃料の監視及びモニタリングがあり、IAEAの使用済燃料の査察に用いられている。一方、チェレンコフ光による原子炉内の計測技術はこれまで実施されておらず、京都大学研究用原子炉(KUR)や原子力機構JRR-3のプール型研究炉では、運転管理として原子炉の炉心部をCCDカメラで観察しているのみであり、定量的な評価は行われていない。本研究では、原子炉出力変化時におけるチェレンコフ光の輝度などの変化を定量的に測定・評価することにより、通常の計装では検出できない炉心内の核的・熱的情報をリアルタイムで取得するための炉内監視システムの開発を行った。予備試験として、原子力機構が準備する観察装置を用いて、各種フィルターの減衰率評価及び画像解析を行った。この予備試験結果により、KURに設置する炉内監視システムを構築し、次年度からKUR起動・停止時におけるチェレンコフ光の変化を計測する。

38001578
中性子照射試験温度計測用K型及びN型多対式熱電対の技術開発
北岸 茂; 井上 修一; 斎藤 隆; 近江 正男; 土谷 邦彦
UTNL-R-0475 , p.2_5_1-2_5_9(2010) ; (JAEA-J 08247)
 材料試験炉(JMTR)を用いた燃材料の中性子照射試験では、中性子照射量,照射温度等を正確に測定することは必要不可欠である。特に温度測定では、熱電対が使用されているが、照射キャプセルの内容器(直径20〜30mm)に熱電対を取り付ける本数には制限があった。このため、低温領域(200〜300℃)から高温領域(1000〜1200℃)までの広い温度範囲において、1本の細径シースに最大7点までの測温接点を有し、かつ軸方向温度分布が測定可能な細径多対式熱電対の開発を開始した。本発表では、1000℃以下での温度測定では、K型多対式熱電対を用いることで、照射環境下において測定できることを確認した。また、1000℃以上での温度測定では、新たにN型多対式熱電対を設計・試作し、炉外試験を通じて製作性と電気的性能を確認した。この結果、シース外径φ1.8mm、測温接点の軸方向における寸法公差が±1mm以内で製作が可能でかつ各測温接点での温度特性及びシース-素線間の絶縁性が良好であることから、多対式熱電対の製作の見通しを得た。

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