学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2010年4月


38000491
Numerical study of fog deposition on vegetation for atmosphere-land interactions in semi-arid and arid regions
堅田 元喜; 永井 晴康; 梶野 瑞王*; 植田 洋匡*; 穂積 祐*
Agricultural and Forest Meteorology 150(3), p.340-353(2010) ; (JAEA-J 07052)
 本研究では、植生への霧水沈着を考慮した精緻な地表面モデルと気象モデルを用いて、乾燥地域における植生への霧水沈着と、その水・熱バランスへの影響を評価した。モデルによる霧水沈着の推定結果から、乾燥地域において霧水沈着が降水量よりも有効な水資源となりうることを示した。霧水沈着に伴う葉面水の蒸発は、蒸散を抑えることによって植物の水ストレスを軽減することがわかった。霧水沈着によって増加した葉面水及び土壌水の蒸発に伴う潜熱によって、日中の土壌及び葉面の温度が減少することを示した。さらに、葉面水の蒸発の増加に伴う蒸散の減少は、乾燥地域において強い水ストレスを受ける植物の光合成に利用される有効な水資源を供給することを明らかにした。

38000492
Quantitative estimation methods for concentrations and layer thicknesses of elements using edge-jump ratios of X-ray absorption spectra
大澤 崇人
Analytical Sciences 26(2), p.281-284(2010) ; (JAEA-J 07053)
 本研究は全電子収量法によって得られたX線吸収スペクトルのKエッジジャンプ比を用いた定量法の理論に関するものである。ここでは以下3つの方法を提案した。(1)均質な固体物質のバルク元素組成の定量法,(2)薄膜の膜圧の定量法,(3)ある加速電圧下で射ち込まれた原子の量の定量法。これらの推定法は元素の理論的光電子断面積,電子の停止力から計算されたオージェ電子有効距離、そして元素の深度分布をもとにしている。

38000493
Natural systems evidence for the alteration of clay under alkaline conditions; An Example from Searles Lake, California
Savage, D.*; Benbow, S.*; Watson, C.*; 高瀬 博康*; 小野 香理*; 小田 治恵; 本田 明
Applied Clay Science 47(1-2), p.72-81(2010) ; (JAEA-J 07054)
 サールズレーク(カリフォルニア州の湖)では、300万年の期間、アルカリ性の条件(pH9からpH10)でスメクタイトを含む泥岩が変質を被ってきた。300万年間に渡る堆積に伴う湖底面の上昇を取り入れながら、この自然事象のシミュレーションを実施した。さらに、シミュレーションでは、過去300万年間の水質の変化,高塩濃度に対応するためのPitzerモデル,堆積後の泥岩の圧密をモデル化して取り込んだ。スメクタイトの溶解速度式としては、スメクタイトの平衡からの離れ具合を反映した2種類の溶解速度式、地下水中のSiの濃度に依存した溶解速度式1種類の合計3種類の溶解速度式を適用した。その結果、サールズレークの現在のスメクタイトの残存量は"Cama-TST"モデルによって最もよく再現された。

38000494
Impacts of thermo-hydro-mechanical experiments on the microbial activity in compacted bentonite at the Kamaishi Mine, northeast Japan
青木 和弘; 杉田 裕; 千々松 正和*; 田崎 和江*
Applied Clay Science 47(1-2), p.147-154(2010) ; (JAEA-J 07055)
 岩手県の釜石鉱山においてベントナイト及び周辺岩盤(花崗閃緑岩)における微生物活動を調査した。母岩に関して、花崗閃緑岩の深部地下水の細菌及び可視微生物の全菌数が算出できた。また、硫酸還元菌,脱窒菌の存在も確認された。緩衝材の原位置での性能を試験する人工バリア試験という熱-水-応力連成試験を実施した。加熱フェーズ後と冷却フェーズ後にベントナイトのサンプルを取得し、天然の微生物が模擬処分環境で存在するか微生物分析を行った。試験の結果、従属栄養生物が存在するものの、含水比の小さいヒーターの周辺のベントナイト中では存在しないことが確認された。これは、処分後の廃棄体の温度が高い期間の廃棄体周辺では微生物の活動が極端に制限されることを示している。このような知見は、高レベル放射性廃棄物地層処分における微生物の影響の評価に有用である。

38000495
Non-adiabatic transition in C2H5OH+ on a light-dressed potential energy surface by ultrashort pump-and-probe laser pulses
矢澤 洋紀*; 塩山 正真*; 橋本 博*; 神成 文彦*; 板倉 隆二; 山内 薫*
Applied Physics B 98(2-3), p.275-282(2010) ; (JAEA-J 07056)
 ポンプ-プローブ励起スキームを用いてエタノールイオンの光ドレストポテンシャル曲面(LDPES)上における振動波束ダイナミクスについて調べた。パルス幅や波長といったパラメターに依存して波束ダイナミクスが変化するかに着目した。波長800nmの場合、C-O解離に繋がる励起状態への非断熱遷移は、プローブ光が180fsの遅延時間の時に促進される。一方、C-C結合切断については抑制される。したがって、このタイミングでのLDPES変形は、もともとC-C切断の方向に進んでいた波束の進行方向をC-O方向へと変えたと考えられる。プローブ光の波長を400nmにすると進行方向を変えることに繋がる非断熱遷移はより効率的になるが、遅延時間については、180fsが最もよい条件であった。

38000496
Application of pade approximation for calculation of epithermal neutron self-shielding factors of some materials dealing with Doppler broadening effects
Phuong, H. T.*; Nhon, M. V.*; Trang, V. T. T.*; 石塚 悦男
Applied Radiation and Isotopes 68(6), p.1177-1179(2010) ; (JAEA-J 07057)
 パデ近似法をk0標準法で使用される各種コンパレータ材料の熱外中性子自己遮へい因子計算に応用した。この方法は、ドップラーブロードニング効果を正しく補正でき、高精度であるとともに計算時間も短縮できる利点がある。また、本方法を拡張することによって、多くの共鳴ピークを有する他の材料の熱外中性子自己遮へい因子も容易に求めることができる。本方法を用いて、等方中性子場中のCo, Mo, Zr, Auの箔やワイヤーの熱外中性子自己遮へい因子を計算し、従来の計算値や実験値と比較した結果、十分な精度で評価できることが明らかとなった。

38000497
Neutron capture cross section to 113Cd isomer and s-process contribution to rare p-nuclide 115Sn
早川 岳人; 静間 俊行; 千葉 敏; 梶野 敏貴*; 初川 雄一; 岩本 信之; 篠原 伸夫; 原田 秀郎
Astrophysical Journal 707(2), p.859-865(2009) ; (JAEA-J 07058)
 Sn-115の天体起源は解明されていない。Sn-115は35核種類のp核に分類される。35核種類のp核のうち27核種類は超新星爆発の光核反応で生成された証拠が発見されているが、残りの8核種の起源は不明でありSn-115もその中に含まれる。われわれは、Cd-113のアイソマーを経由して遅い中性子捕獲反応過程(s過程)でSn-115が生成された可能性を追求した。その生成量の評価には、Cd-112からCd-113アイソマーへの中性子捕獲反応断面積が必要であるが、これまで信頼できるデータはどのエネルギー領域でも全く報告されていない。そこで、原子力機構の研究用原子炉JRR-3を用いてCd-112からCd-113アイソマーへの中性子捕獲反応断面積と共鳴積分を計測した。これらの値を元に、理論計算を行いSn-115のs過程による生成量を評価した。

38000498
Surface structure of LiNi0.8Co0.2O2; A New experimental technique using in situ X-ray diffraction and two-dimensional epitaxial film electrodes
坂本 和幸*; 平山 雅章*; 園山 範之*; 森 大輔*; 山田 淳夫*; 田村 和久; 水木 純一郎; 菅野 了次*
Chemistry of Materials 21(13), p.2632-2640(2009) ; (JAEA-J 07059)
 放射光を用いたX線回折とエピタキシャル薄膜電極を用いて、LiNi0.8Co0.2O2の充放電過程における表面とバルク構造の変化を調べた。(110)面電極では、充放電に伴うバルク構造の変化が確認できたのに対して、(003)面電極では、3〜5Vで(デ)インターカレーションが確認できなかったが3Vより負側で3次元的なリチウムの拡散が起こることが確認できた。このことから、電極表面近傍では、表面とバルクでは構造変化が異なることが明らかになった。

38000499
Real-time measurement and feedback control of ion temperature profile and toroidal rotation using fast CXRS system in JT-60U
吉田 麻衣子; 坂本 宜照; 末岡 通治; 川俣 陽一; 大山 直幸; 鈴木 隆博; 鎌田 裕; JT-60チーム
Fusion Engineering and Design 84(12), p.2206-2213(2009) ; (JAEA-J 07060)
 イオン温度とプラズマ回転計測の高度化及び実時間制御を目的に、まず、これまでの時間分解能を約1桁向上した高速荷電交換再結合分光装置を開発し、実時間でイオン温度とプラズマ回転速度の導出を可能にした。本計測器は、空間30点のイオン温度とプラズマ回転速度を2.5msで計測でき、そのうち任意の空間4点の値を実時間処理している。さらに制御ロジックの開発を行い、実際に空間2点間のイオン温度勾配の実時間制御を実施し、目標値に追随した計測値が得られ、イオン温度の内部輸送障壁の強さを制御することに成功した。さらに、広いダイナミックレンジにわたるトロイダル回転速度の実時間制御に世界で初めて成功した。

38000500
Study of fueling scenario and particle balance in a fusion reactor
竹永 秀信; 川島 寿人; 西尾 敏; 飛田 健次
Fusion Science and Technology 57(1), p.94-102(2009) ; (JAEA-J 07061)
 定常核融合炉での効率的な燃料供給シナリオについて、SlimCS設計パラメータ(2.95GW出力)を用いて考察した。トリチウムは少ない供給量で高い密度を維持するために主プラズマへ供給し、重水素は高密度とダイバータでの高リサイクリングを維持するために主プラズマ及び周辺プラズマへ供給する。主プラズマ供給粒子の閉じ込め時間を2s,周辺プラズマ供給粒子の閉じ込め時間を2ms,ダイバータでの排気効率を3%と仮定した場合の粒子バランスについて考察した。トリチウムに関しては、主プラズマへの供給率が2.5×1022/sの場合に定格出力に必要なトリチウム密度が維持される。重水素に関しては、主プラズマでの重水素密度を維持するための主プラズマへの供給率1.4×1022/sと、高リサイクリングを維持するための周辺プラズマへの供給率3.6×1023/sが必要である。結果として、重水素の総供給率はトリチウムの供給率より1桁以上大きくなっている。さらに、粒子閉じ込め時間を変化させた場合の供給量の変化を明らかにするとともに、トリチウムリテンションの許容値について考察した。

38000501
Antiferromagnetic interaction between A'-site Mn spins in A-site-ordered perovskite YMn3Al4O12
遠山 武則*; 斎藤 高志*; 水牧 仁一朗*; 安居院 あかね; 島川 祐一*
Inorganic Chemistry 49(5), p.2492-2495(2010) ; (JAEA-J 07062)
 Aサイト秩序型ペロブスカイトYMn3Al4O12が高圧で合成できた。この試料を放射光X線回折と放射光X線吸収分光を用いて評価した。A'サイトとMnサイトにはMn-Mnの交換相互作用に誘起される反強磁性相互作用があることがわかった。

38000502
Development of probabilistic fracture mechanics analysis codes for reactor pressure vessels and piping considering welding residual stress
鬼沢 邦雄; 西川 弘之; 伊藤 裕人
International Journal of Pressure Vessels and Piping 87(1), p.2-10(2010) ; (JAEA-J 07063)
 原子炉圧力容器に関して、確率論的破壊力学解析コードPASCAL2における肉盛溶接部に関する評価機能の改良を行い、確率論的解析を実施した。具体的には、肉盛溶接部内ではき裂が進展しないようにき裂進展モデルを改良し、肉盛溶接に伴う残留応力を考慮して加圧熱衝撃時における原子炉圧力容器の破損確率解析を行った。解析結果から、肉盛溶接部の存在が条件付破壊確率に及ぼす影響を評価した。また、国内外の最新の知見に基づき、応力腐食割れ(SCC)を考慮して配管溶接部の破損確率を評価する確率論的破壊力学解析コードPASCAL-SPを開発した。配管溶接継手部における溶接残留応力分布の不確かさや、供用期間中検査におけるSCC検出性及びサイジング精度をモデル化し、PASCAL-SPに導入した。このPASCAL-SPを用いて、溶接残留応力の不確かさ及び供用期間中検査の検査程度が配管の破断確率に及ぼす影響を評価した。

38000503
Recent Japanese research activities on probabilistic fracture mechanics for pressure vessel and piping of nuclear power plant
関東 康祐*; 鬼沢 邦雄; 町田 秀夫*; 礒部 仁博*; 吉村 忍*
International Journal of Pressure Vessels and Piping 87(1), p.11-16(2010) ; (JAEA-J 07064)
 本論文は、確率論的破壊力学(PFM)解析に関する国内の最近の動向をまとめたものである。原子力機構では、過去に日本機械学会や日本溶接協会に委託して研究委員会活動を行ってきた。この研究委員会は、現在も日本溶接協会において原子炉構造機器の健全性にかかわる確率論的評価手法を検討することを目的に活動を続けている。本論文では、最近の日本溶接協会のPFM小委員会における成果を述べる。まず、日本機械学会の維持規格に関するPFM解析の観点からの成果として、原子炉圧力容器の評価不要欠陥に対する確率論的な分析や、配管の健全性に及ぼす非破壊検査の影響を示す。また、リスク及び経済性に基づいた保守最適化に関する新たなPFM解析手法の開発を示す。さらに、本年から開始しているPFM解析に関する国際ラウンドロビン問題について述べる。

38000504
In tube shock wave driven by atmospheric millimeter-wave plasma
小田 靖久; 梶原 健; 高橋 幸司; 春日井 敦; 坂本 慶司; 小紫 公也*
Japanese Journal of Applied Physics 48(11), p.116001_1-116001_4(2009) ; (JAEA-J 07065)
 Atmospheric breakdown caused by a high power millimeter wave beam generates shock wave because plasma causes quick heating of atmospheric air. When the shock wave is supported by millimeter wave plasma generated in a tube, shock wave propagates in the constant velocity for whole tube length. In this study, the driving model of millimeter wave shock wave was proposed. The model is consisted by a normal shock supported by propagating heat supply area where ionization front of plasma locates. The model was compared to the measured properties of shock wave in a shock tube using a 170 GHz millimeter wave beam. The propagation velocity of the shock wave was identical to the velocity of the ionization front when the ionization front propagates in supersonic speed. Then pressure increment in the tube was independent to the power density. These results showed good agreement to the model calculation.

38000505
Reduction behavior of neptunium(V) at a gold or platinum electrode during controlled potential electrolysis and procedures for electrochemical preparations of neptunium(IV) and (III)
北辻 章浩; 木村 貴海; 木原 壯林*
Journal of Electroanalytical Chemistry 641(1-2), p.83-89(2010) ; (JAEA-J 07066)
 過塩素酸溶液中のNp(V)を、金及び白金電極を用いて定電位差バルク電解法により4価あるいは3価へ還元したところ、特異な電解挙動を示した。電解挙動やボルタンメトリーにより電極反応を詳しく調べ、次の還元機構を明らかにした。金電極ではNp(V)は直接還元されないが、Np(III)が共存すると電子交換による化学反応によりNp(IV)へ還元が進む。このNp(III)はNp(IV)の電解還元により生成し、電子移動メディエータとして働く。白金電極の場合、白金電極が持つ電極触媒効果により電極上に還元的吸着した水素原子がNp(V)をNp(IV)に還元する。生成したNp(IV)は、金電極の場合と同様に電子移動メディエータとして働きNp(V)を還元する。金電極を用いた場合の触媒還元反応をモデル化し、デジタルシミュレーションによる計算結果を実験データと比較したところ、よく一致した。これらの実験データに基づき、Np(IV)とNp(III)のバルク電解調製法を提案した。

38000506
Mechanical properties and microstructural stability of 11Cr-ferritic/martensitic steel cladding under irradiation
矢野 康英; 山下 真一郎; 大塚 智史; 皆藤 威二; 赤坂 尚昭; 柴山 環樹*; 渡辺 精一*; 高橋 平七郎
Journal of Nuclear Materials 398(1-3), p.59-63(2010) ; (JAEA-J 07067)
 11Crフェライト/マルテンサイト鋼(PNC-FMS)についてFFTF/MOTAで炉内クリープ破断試験を823Kから943Kで実施した。また、引張及び急速加熱バースト試験用の被覆管は照射温度693から1013K、照射量3.5から102dpaで高速実験炉「常陽」を用いて照射された。引張及び急速加熱バースト試験では、照射温度873K以下での強度低下は確認されなかったが、照射温度903K以上では顕著な強度低下がみられた。一方、炉内クリープ破断強度は、すべての照射温度で炉外のクリープ強度と同等あるいはそれ以上の強度を示した。このクリープ破断特性は、短時間強度と異なる挙動を示すことが明らかとなった。

38000507
Oxidation behaviour of P122 and a 9Cr-2W ODS steel at 550℃ in oxygen-containing flowing lead-bismuth eutectic
Schroer, C.*; Konys, J.*; 古川 智弘; 青砥 紀身
Journal of Nuclear Materials 398(1-3), p.109-115(2010) ; (JAEA-J 07068)
 12Cr-2Wフェライト/マルテンサイト鋼P122及び9Cr-2WODS鋼について、ドイツ・カールスルーエ研究所が所有する流動鉛ビスマス試験装置CORRIDAを用いて長時間の腐食試験を実施した。試験温度及び試験部流速は、550℃, 2m/secであり、鉛ビスマス中の溶存酸素濃度制御目標値は10-6mass%である。溶存酸素濃度制御の初期問題により、一部の試験片は種々の溶存酸素濃度条件に曝され、一時的にではあるが10-9mass%を記録したものの、平均の溶存酸素濃度としては1.6×10-6mass%O2で推移した。1.6×10-6mass%O2条件下において、P122は最大10,000h, ODS鋼は最大20,000hの浸漬を行った。本試験条件において、両鋼種は、鋼表面に形成されたスピネル型酸化物からなる酸化層と部分的に形成された内部酸化層によって保護されていた。両鋼種の減肉量を評価するために、表面酸化層の厚さを計測した。10-6mass%の酸素濃度条件下では、浸漬時間に対して対数近似則及び累乗近似則で減肉量をうまく表現することがわかった。

38000508
Release conditions of dust particle from plasma-facing wall in oblique magnetic field
冨田 幸博*; 河村 学思*; Smirnov, R.*; 滝塚 知典; Tskhakaya, D.*
Journal of Nuclear Materials 390-391, p.164-167(2009) ; (JAEA-J 07069)
 斜行磁場中の垂直なプラズマ対向壁からの球形ダスト粒子の離脱条件を解析的に調べた。ポアソン方程式か、ダストの離脱力を決めるシース電場を求めた。電場は磁場が壁に平行に近くなるほど減少する。一方プラズマ流は適度な斜行磁場中で大きくなる。強磁場中では、離脱可能ダストの半径は磁場入射が壁に鋭角になるほど大きくなる。また弱磁場中では、中間入射角のとき、すべてのダストが離脱できなくなる。

38000509
Kinetic effect of thermal force on impurity transport; Simulation of JT-60SA divertor with integrated divertor code SONIC
清水 勝宏; 滝塚 知典; 川島 寿人
Journal of Nuclear Materials 390-391, p.307-310(2009) ; (JAEA-J 07070)
 トカマク型核融合炉のダイバータ板熱負荷を低減するには、ダイバータプラズマを冷却する必要がある。そのために、不純物制御法(ダイバータ領域に不純物を保持する)を確立する必要がある。この制御法確立を目指して、不純物の発生,輸送に関するシミュレーション研究を行っている。これまで、不純物輸送は、多くの場合流体モデルで扱われてきたが、われわれはモンテカルロ手法を用いた不純物輸送コードIMPMCを開発した。モンテカルロ法によるモデリングにより、運動論効果や複雑な炭化水素の解離過程を考慮することができる。今回、運動論効果に注目し、JT-60SAの非接触プラズマにおけるヘリウムの輸送について調べた。ダイバータにおけるリサイクリングを無視した時には、ヘリウムのダイバータにおける密度は、これまでの流体モデルの計算と比べて約2倍程度増大することがわかった。しかし、この効果は、リサイクリングによって、相対的に小さくなることが明らかになった。

38000510
Investigation of C IV line broadening mechanisms for plasma diagnostics in magnetic fusion devices
Koubiti, M.*; 仲野 友英; Capes, H.*; Ferri, S.*; Godbert-Mouret, L.*; Marandet, Y.*; Rosato, J.*; Stamm, R.*
Journal of Nuclear Materials 390-391, p.1142-1144(2009) ; (JAEA-J 07071)
 トカマク装置の非接触ダイバータプラズマにおいてX点付近の強い放射領域では、リチウム様炭素イオンのスペクトル線の強度比を解析することにより、電子密度が1022m-3、電子温度が1-10eVと測定されたことが報告されている。この高い電子密度を確認するためにスペクトル線の拡がりを解析することを提案した。ここではリチウム様炭素イオンのスペクトル線C IV(n=6-7:λ=772.6nm)の拡がりを独自に改良したPPPコードを用いたシミュレーションにより計算した。上記の温度と密度の範囲では温度によるドップラー拡がりと密度によるシュタルク拡がりがスペクトル線の拡がりに同程度寄与することがわかった。よって、この解析によって温度と密度を同時に定めることも可能であるが、精度の観点からは独立した計測によりこれらのパラメータを検証すべきである。

38000511
Thermodynamic properties of lanthanides and actinides for reductive ectraction of minor actinides
戸田 太郎*; 丸山 雄大*; 森谷 公一*; 森山 裕丈*; 林 博和
Journal of Nuclear Science and Technology 46(1), p.18-25(2009) ; (JAEA-J 07072)
 乾式法によるマイナーアクチノイド(MA)の溶融塩/液体金属系における還元抽出工程の基礎データとなる溶融塩相及び液体金属相におけるランタノイド及びアクチノイドの過剰熱力学量について理論的な考察を行った。既に報告されているデータを解析した結果、各元素の過剰エンタルピーと過剰エントロピーは、溶融塩相では金属イオン周辺の配位構造に影響を与えるイオン半径のみの関数で表され、液体金属相では合金生成を考慮したMiedimaのモデルによって表されることがわかった。これらの関係を用いてこれまでに実験データが報告されていない系の過剰熱力学量を評価し、溶融塩/液体金属系におけるMAとランタノイドの分離係数を計算した。その結果、液体金属相としてビスマスやカドミウムを用いるよりもアルミニウムやガリウムを用いる系の方が高い分離係数が得られることを示した。

38000512
Evaluation of neutron nuclear data on Arsenic-75 for JENDL-4
柴田 恵一; 千葉 豪; 市原 晃; 国枝 賢
Journal of Nuclear Science and Technology 47(1), p.40-46(2010) ; (JAEA-J 07073)
 評価済み核データライブラリーJENDL-4のために75As中性子核データを10-5eVから20MeVのエネルギー範囲で評価した。熱中性子捕獲断面積は最近の測定値を考慮して更新した。分離共鳴領域以上のエネルギーでは、統計模型を用いて評価計算を行った。中性子に対してはチャネル結合光学模型ポテンシャルを用いた。複合核過程に加えて、前平衡過程及び直接過程を考慮した。計算結果は既存の実験値とよく一致していることがわかった。今回得られた評価値を用いた計算は、14MeV中性子入射による砒素を含む球体系からの漏洩中性子スペクトルの実験値をよく再現する。評価値はJENDL-4のデータとして採用される。

38000513
Am/Eu Separation with a new ligand, N,N,N',N'-tetrakis((4-butoxypyridin-2-yl)methyl)ethylenediamine (TBPEN), a hydrophobic derivative of TPEN
松村 達郎; 稲葉 優介*; 森 敦紀*; 竹下 健二*
Journal of Nuclear Science and Technology 47(2), p.123-126(2010) ; (JAEA-J 07074)
 分離変換技術における重要な開発課題であるMA/Ln分離のため、TPENの誘導体を利用した分離プロセスの開発を進めている。TPENは、Am(III)とEu(III)の分離に良好な特性を持つ6座の窒素ドナー配位子であるが、実プロセスへの応用には改良すべき特性が存在する。特に重要な点として、水への溶解度がある。TPENは、10-4mol/l程度溶解し、これが濃度の高いAm(III)を含む廃液を処理しようとする場合に問題となる。われわれは、TPEN分子を分離性能を損なわずに疎水化することを試み、TPEN分子のピリジル基にアルキル基を結合させることによって開発に成功した。新たに合成した配位子TBPEN(N,N,N',N'-tetrakis((5-butoxypyridin-2-yl)methylethylenediamine)は、良好な分離特性を示し、分離係数SFAm/Euの最大値は、pH3.02において91であった。この結果は、TPENと比較して、より酸性に近い条件で有効な分離性能を発揮することを意味し、この改良法が有効であることを示している。今後、この開発方針によってより有効な特性を持つ誘導体の開発を進める計画である。

38000514
Pitting damage and residual stress induced by cavitation erosion on mercury target vessel
鈴木 裕士; 二川 正敏; 菖蒲 敬久; 涌井 隆; 直江 崇
Journal of Nuclear Science and Technology 47(2), p.136-141(2010) ; (JAEA-J 07075)
 パルス中性子源の水銀ターゲット容器に生じるキャビテーション損傷を残留応力と塑性変形の観点から評価した。SUS316Lの板材(316SS)とそれを20%冷間圧延した板材(316CW)の残留応力分布と塑性域をX線回折法により測定した。キャビテーション損傷を受けた試験片について回折線幅を評価した結果、316SSの塑性域は316CWの塑性域よりも深いことを確認した。また、316SSの内部圧縮残留応力は316CWよりも大きいことを確認した。これら塑性ひずみと残留応力分布はピット底から発生するき裂の進展に影響する。さらに、キャビテーション損傷を受けた試験片について、塑性ひずみや残留応力分布に基づくエネルギーバランスを考慮することで、316SSと316CWの疲労限低下の違いを説明できた。

38000515
Evaluation of neutron nuclear data on hafnium isotopes for JENDL-4
柴田 恵一
Journal of Nuclear Science and Technology 47(2), p.160-168(2010) ; (JAEA-J 07076)
 評価済み核データライブラリーJENDL-4のために174,176,177-182Hf中性子核データを10-5eVから20MeVのエネルギー範囲で評価した。不安定核である181,182Hfは廃棄物処理の観点から今回新たに評価対象とした。分離共鳴パラメータは最新の実験値を考慮して更新した。分離共鳴領域以上のエネルギーでは、統計模型を用いて評価計算を行った。中性子に対してはチャネル結合光学模型ポテンシャルを用い、透過係数,全断面積,形状弾性散乱断面積,非弾性散乱断面積の直接過程成分を求めた。複合核過程に加えて、前平衡過程及び直接反応過程を考慮した。評価結果は既存の実験値をよく再現しており、JENDL-4のデータとして採用することになった。

38000516
Terminal solid solubility of hydrogen in hafnium
扇柳 仁; 知見 康弘; 島田 祥雄*; 中村 武彦; 安部 勝洋*
Journal of Nuclear Science and Technology 47(2), p.197-201(2010) ; (JAEA-J 07077)
 BWRの制御棒材料として用いられているハフニウム(Hf)の基本的特性を調べるため、未照射Hf材料(板材及び棒材)及び比較材としてジルカロイ-2(Zry-2)板材の水素固溶限を測定した。本測定では、水素ガス中加熱等により種々の水素含有量のHf及びZry-2試料を調製し、示差走査型熱量測定によりこれら試料中での水素化物の固溶及び析出温度等を測定した。Hfの水素固溶限はZry-2の1/7程度であり、制御棒の使用温度(約300℃)において10〜15ppm程度であった。本研究で得られたZry-2の水素固溶限は文献値と一致し、試験データの信頼性が確認された。また、Hf中での水素化物の固溶及び析出における活性化エネルギーはそれぞれ42.0kJ/mol及び40.9kJ/molであり、Zry-2での報告値(固溶時:36.5kJ/mol,析出時:28.1kJ/mol(>533K)及び21.0kJ/mol(<533K))よりも大きいことがわかった。

38000517
Identification of radical position of fission gas release in high-burnup fuel pellets under RIA conditions
笹島 栄夫; 杉山 智之; 中頭 利則; 永瀬 文久; 中村 武彦; 更田 豊志
Journal of Nuclear Science and Technology 47(2), p.202-210(2010) ; (JAEA-J 07078)
 高燃焼度燃料を対象として、反応度事故(RIA)模擬したパルス照射実験をNSRRにおいて実施した。パルス照射後のパンクチャー試験より、FPガス組成((Xe/Kr)比)を測定した。XeとKrの生成割合がペレット径方向位置に応じて異なることから主たるガス放出の位置を推定した。高燃焼度PWR燃料では、ペレット径方向の全領域からFPガス放出が生じていることを示した。一方、高燃焼度BWR燃料では、ペレット中心、又は、中間領域から放出されたことを示した。計算コードによるパルス照射時のペレット熱応力分布の解析結果も、測定結果を支持するものであった。これらよりRIA時のFPガス放出について、ペレット外周部に存在するリム部からの選択的な放出がなかったことを示した。

38000518
Incommensurate structures of intermediate phase and martensite phase in Ni2MnGa
串田 悠彰*; 福田 康太*; 寺井 智之*; 福田 敬*; 掛下 知行*; 大庭 卓也*; 長壁 豊隆; 加倉井 和久; 加藤 健一*
Journal of Physics; Conference Series 165, p.012054_1-012054_4(2009) ; (JAEA-J 07079)
 Neutron diffraction measurements using single crystal and powder synchrotron X-ray diffraction measurements revealed that an intermediate (I-) phase and a martensite (M-) phase in Ni2MnGa have incommensurate modulated structures. The modulation vectors of the I- and M-phases are nearly equal to q = 0.341 at 210 K and q = 0.427 at 100 K, respectively. Moreover, displacements of Ni, Mn and Ga atoms in both the I- and M-phase are expressed by sinusoidal waves with the same phase and almost the same amplitudes.

38000519
Magneto-electric effect in charge-ordered LuFe2O4
神戸 高志*; 小松 拓磨*; 道内 尊正*; 早川 弘毅*; 大石 大輔*; 花咲 徳亮*; 吉井 賢資; 池田 直*
Journal of Physics; Conference Series 200, p.012077_1-012077_4(2010) ; (JAEA-J 07080)
 電荷秩序を起源として強誘電体となる鉄酸化物LuFe2O4について、外部磁場下において誘電率測定を行い、電気磁気効果を観測した。330K以下の三次元鉄電荷秩序を持つ強誘電相において、本系の誘電応答は外部磁場に強く依存して変化することがわかった。外部磁場依存性は、磁気転移温度(240K)近傍において増強されることも見いだした。これは誘電性と磁性の相関が存在することを強く示唆する。また、本測定から観測された、磁気転移温度以上の電気磁気効果と、試料の酸素量などについての関係も報告し、観測された電気磁気効果の起源などについて議論する。

38000520
Doping effect on charge ordered structure in RFe2O4(R=Lu and Yb)
松尾 祥史*; 森 茂生*; 平田 秋彦*; 吉井 賢資; 池田 直*
Journal of Physics; Conference Series 200, p.012128_1-012128_4(2010) ; (JAEA-J 07081)
 鉄電荷秩序により強誘電性を発現する鉄酸化物RFe2O4(R=Ho-Lu, Y)の性質を明らかにするため、その鉄サイト置換物質RFeCuO4(R=Yb, Lu)とともに、物性と電荷秩序構造について調べた。誘電率測定から、RFeCuO4は常誘電体であることを観測した。また、この物質及び母体物質RFe2O4に対する電子線回折実験から、鉄サイトに銅を置換することにより鉄電荷秩序が抑えられること、また、誘電性を持つドメインのサイズが小さくなることを観測した。さらに磁化測定を行い、銅置換によって磁気転移温度が大幅に下がることを観測した。これらの結果から、RFe2O4及び鉄サイト置換系では、誘電性を持つドメインの状態(サイズや分布状態など)が物性を左右していることを議論する。

38000521
Field-induced incommensurate-to-commensurate transition in the triangular lattice antiferromagnet GdPd2Al3
稲見 俊哉; 寺田 典樹*; 北澤 英明*; 酒井 治*
Journal of Physics; Conference Series 200, p.032022_1-032022_4(2010) ; (JAEA-J 07082)
 We have carried out resonant magnetic X-ray diffraction experiments under magnetic fields up to 0.15 T at 4 K on the stacked triangular lattice antiferromagnet GdPd2Al3, which exhibits a helical magnetic structure of extremely long incommensurate modulation below T N2 (= 13.3 K). A helical-to-fan transition is expected when a magnetic field is applied in the spin plane, while we observed a first-order incommensurate-to-commensurate transition around 0.04 T. This result indicates that the free energy has a double-well structure around the K-point.

38000522
Resonant magnetic X-ray diffraction study on the successive metamagnetic transitions of TbB4 up to 30T
稲見 俊哉; 大和田 謙二; 松田 康弘*; Ouyang, Z. W.*; 野尻 浩之*; 松村 武*; 奥山 大輔*; 村上 洋一*
Journal of Physics; Conference Series 211, p.012010_1-012010_6(2010) ; (JAEA-J 07083)
 Quite recently, successive metamagnetic transitions between 16T and 28T were reported on the rare-earth tetraboride TbB4. Considerable attentions have been attracted on this peculiar bahavior. Recently, X-ray diffraction experiments under pulsed high magnetic field have been developed at several places. In order to examine the magnetic structures at high magnetic fields, we applied this technique to TbB4. Small magnetic X-ray scattering cross section was overcome by utilizing resonance enhancement. The obtained field, polarization, and scattering angle dependence of magnetic reflections indicates that magnetic moments perpendicular to the magnetic field exist in the high-field plateau phases. This result is inconsistent with normalfractional magnetization plateau phases that posses only magnetic moments parallel or antiparallel to the field. In order to resolve this discrepancy, we propose magnetic structures that consist of Ising spins and XY spins.

38000523
Development and verification of unstructured adaptive mesh technique with edge compatibility
伊藤 啓; 功刀 資彰*; 大島 宏之
Journal of Power and Energy Systems (Internet) 4(1), p.72-83(2009) ; (JAEA-J 07084)
 ナトリウム冷却大型炉(JSFR)の設計研究において、自由液面からのガス巻込み防止は重要な課題の1つである。このため、ガス巻込み現象を精度よく解析できる高精度気液二相流数値解析手法の開発を進めている。本手法では、JSFR体系を正確に模擬するために非構造格子を採用し、界面流れを解析するために高精度Volume-of-fluid法を採用している。また、JSFRにおける局所的なガス巻込み発生領域に対して動的に詳細格子を適用できる非構造解適合格子法の開発を実施しており、本研究ではその一環として、二次元非構造解適合格子法の開発を検証について述べる。開発した二次元非構造解適合格子法ではIsotropicセル分割法を採用し、Connectionセル法によって詳細化セルと非詳細化セル間のエッジ不整合を防止している。検証として、正方形キャビティ問題の解析を実施する。

38000524
Evaluation of Monju core damage risk with change of AOT using probabilistic method
素都 益武; 栗坂 健一
Journal of Power and Energy Systems (Internet) 4(1), p.84-93(2010) ; (JAEA-J 07085)
 「もんじゅ」は、発電機出力280MWのループ型ナトリウム冷却高速増殖原型炉である。「もんじゅ」における保安規定においては運転上の制限が定められており、これに対する許容待機除外時間について、PSA手法をもとに評価した。評価の結果、現状のAOTの延長は可能であり、幾つか検討すべき課題が得られた。

38000525
Development of observation techniques in reactor vessel of experimental fast reactor Joyo
高松 操; 今泉 和幸; 長井 秋則; 関根 隆; 前田 幸基
Journal of Power and Energy Systems (Internet) 4(1), p.113-125(2010) ; (JAEA-J 07086)
 高速実験炉「常陽」では、炉内干渉物対策の一環として、ビデオカメラを用いた炉心構成要素頂部の観察,ファイバースコープを用いた炉心上部機構下面の観察を実施した。炉心構成要素頂部の観察は、回転プラグの炉内検査孔上にデジタルビデオカメラを設置した簡易なシステムにより実施した。炉心構成要素頂部に異物や損傷がないことを確認するとともに、当該システムが約1mmの分解能を有することを確認した。炉心上部機構下面の観察においては、炉心上部機構下面部と炉心構成要素頂部の間隙約70mmにファイバースコープを挿入する観察装置を新規に開発し、炉心上部機構の下面を観察した。本装置により、厚さ約0.8mmの整流格子を判別し、炉心上部機構下面の状況を把握することができた。これらの観察により、Na冷却型高速炉の炉容器内観察の高度化に資する有用な知見を得ることができた。

38000526
Experimental analyses by SIMMER-III on fuel-pin disruption and low-energy disrupted core motion
山野 秀将; 飛田 吉春
Journal of Power and Energy Systems (Internet) 4(1), p.164-179(2010) ; (JAEA-J 07087)
 2次元オイラー型多成分多相流解析コードSIMMER-IIIによる実験解析について述べる。ここでは、炉心崩壊事故における主要現象である2つの分野、すなわち、燃料ピン崩壊挙動及び低エネルギー損傷炉心物質の運動挙動を対象とする。燃料ピン崩壊挙動を解析するため、CABRI-EFM1及びCABRI-E7炉内実験を選定した。SIMMER-IIIによる計算はCABRI-EFM1実験で観察された熱的破損モードで特徴づけられる燃料ピン崩壊及び分散挙動とよく一致する結果を得た。CABRI-E7実験で見られた機械的破損もまたおおむね再現できた。低エネルギー損傷炉心は主として燃料粒子と液体スティールあるいは液体燃料で構成される。そのような混合物条件下では、融体侵入長が有意に減少するということがTHEFIS炉外実験で得られた。SIMMER-IIIは実験で観察された融体の固化・閉塞をよく模擬できた。

38000527
Production of no-carrier-added 64Cu and applications to molecular imaging by PET and PETIS as a biomedical tracer
渡邉 茂樹; 飯田 靖彦*; 鈴井 伸郎; 片渕 竜也*; 石井 里美; 河地 有木; 花岡 宏史*; 渡辺 智; 松橋 信平; 遠藤 啓吾*; 石岡 典子
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 280(1), p.199-205(2009) ; (JAEA-J 07088)
 Copper-64 was produced by the 64Ni(p,n)64Cu reaction using enriched-64NiO target. We investigated and compared the production yield of 64Cu for proton beams of various energies by using a thick target. Enriched-64Ni was recovered with high yield by simple procedures. Imaging studies using positron emission tomography (PET) and positron emitting tracer imaging system (PETIS) were performed. We obtained clear images in PET and PETIS studies. The results of this study indicate that 64Cu can be utilized as a biomedical tracer for the molecular imaging both in animals and plants.

38000528
Adsorptivity of polyvinylpolypyrrolidone for selective separation of U(VI) from nitric acid media
野上 雅伸*; 杉山 雄一*; 川崎 武志*; 原田 雅幸*; 森田 泰治; 菊池 俊明*; 池田 泰久*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 283(2), p.541-546(2010) ; (JAEA-J 07089)
 硝酸溶液からのU(VI)分離用吸着剤開発として、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)によるさまざまな元素の吸着性を検討した。PVPPは、広い範囲の濃度の硝酸溶液よりU(VI)を強く吸着することがわかり、強い結合にはカルボニル基の酸素とピロリドン環の窒素がともに関与していることが示唆された。核分裂生成物では、Pd(II)とTc(VII)の模擬元素であるRe(VII)以外はほとんど吸着されないこと、Pd(II)とRe(VII)は低濃度硝酸溶液からわずかに吸着されるが、Pd(II)の吸着速度はU(VI)のそれに比べ極端に遅いことがわかった。これらの結果は、PVPPによる吸着法がU(VI)の他の元素からの分離に適用できることを示す。

38000529
Heavy fermion state in YbIr2Zn20
吉内 伸吾*; 戸田 雅敏*; 松下 昌輝*; 安井 慎一*; 広瀬 雄介*; 大家 政洋*; 片山 敬亮*; 本多 史憲*; 杉山 清寛*; 萩原 政幸*; 金道 浩一*; 竹内 徹也*; 山本 悦嗣; 芳賀 芳範; 摂待 力生*; 田中 斗志貴*; 久保 康則*; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 78(12), p.123711_1-123711_4(2009) ; (JAEA-J 07091)
 High-field magnetization and de Haas-van Alphen effect were measured on a heavy fermion compound YbIr2Zn20. Large cyclotron masses ranging from 4 to 27 m0 were detected in the dHvA experiment, and are found to be reduced at magnetic fields higher than 120 kOe. From the present experimental results together with the 4f-itinerant band calculations, the 4f electrons are considered to form heavy fermion state.

38000530
Magnetic and Fermi surface properties of CePd5Al2 and PrPd5Al2
中野 泰典*; 本多 史憲*; 竹内 徹也*; 杉山 清寛*; 萩原 政幸*; 金道 浩一*; 山本 悦嗣; 芳賀 芳範; 摂待 力生*; 山上 浩志*; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 79(2), p.024702_1-024702_9(2010) ; (JAEA-J 07092)
 Single crystals of new rare-earth compounds CePd5Al2 and PrPd5Al2 were successfully grown. Magnetic property measurements have shown the existence of the crystal-electric-field effect in these compounds with a magnetic ground state for CePd5Al2 and a singlet ground state for PrPd5Al2. Fermi surfaces were determined for both compounds by the de Haas-van Alphen experiments, revealing a localized nature of f-electrons.

38000531
Correlation effects among thermal displacements of atoms in VSe by diffuse neutron scattering measurement
佐久間 隆*; Xianglian*; Siagian, S.*; Basar, K.*; 高橋 東之*; 井川 直樹; 神嶋 修*
Journal of Thermal Analysis and Calorimetry 99(1), p.173-176(2009) ; (JAEA-J 07093)
 VSeの中性子回折実験データの解析において、原子熱振動の相間効果を含んだ散漫散乱理論をリートベルト解析のバックグラウンド関数に取り入れた。六方晶VSeの散漫散乱強度の振動機構はSe-Se原子間の相間効果によって説明できた。この相間効果値は結晶構造にはよらず、原子間距離に依存することが明らかになった。

38000532
A Study of hydraulic properties in a single fracture with in-plane heterogeneity; An Evaluation using optical measurements of a transparent replica
澤田 淳; 佐藤 久
Nuclear Engineering and Technology 42(1), p.9-16(2010) ; (JAEA-J 07095)
 亀裂を対象とした平行平板モデルに用いられるパラメータ値の設定方法の検討に必要な単一亀裂内のデータ取得のために、亀裂の透明レプリカを用いた実験的検討を行った。光学的計測手法により亀裂開口幅分布やトレーサー試験時のトレーサー濃度データを高い空間解像度で定量的に取得した。亀裂開口幅分布の算術平均値,トレーサー試験から求めた開口幅,亀裂内体積測定から求めた平均開口幅などの異なる計測手法から求めた開口幅の値が一致することが示され、本試験データが良い精度で取得できていることを示している。亀裂開口幅データから局所的に三乗則が成り立つと仮定して実施した数値解析から得られる亀裂の透水量は透水試験の値より10%〜100%大きな値となった。また、定量的なトレーサー濃度分布のデータは不均質亀裂内の移流分散の数値解析コードの検証にとても有用である。

38000533
Kinetic modelling of impurity transport in detached plasma for integrated divertor simulation with SONIC (SOLDOR/NEUT2D/IMPMC/EDDY)
清水 勝宏; 滝塚 知典; 大宅 薫*; 井内 健介*; 仲野 友英; 高山 有道*; 川島 寿人; 星野 一生
Nuclear Fusion 49(6), p.065028_1-065028_9(2009) ; (JAEA-J 07096)
 統合ダイバータコードSONICを開発した。モンテカルロ固有の問題を解決し、モンテカルロ不純物輸送コードIMPMCとダイバータコードSOLDOR/NEUT2Dの自己無撞着な結合に成功した。運動論効果や複雑な炭化水素の解離過程を考慮するには、モンテカルロモデリングが必要である。統合ダイバータコードは、EDDYコードとの結合をさらに行うことで、ダイバータ板における損耗/再堆積の過程を含めて不純物の輸送を調べることが可能となる。JT-60Uで観測されたX点 ダイバータのダイナミクスを調べた。シミュレーションの結果、X点近傍での大きな放射損失は、ドームからスパッタされた炭化水素によるものであることがわかった。リサイクリングがない時には、温度勾配力の運動論効果により、従来の流体による評価に比べてヘリウム圧縮が改善する。しかし、ダイバータにおけるリサイクリングによりこの効果は相対的に小さくなることがわかった。

38000534
Development of three-dimensional prompt γ-ray analysis system
瀬川 麻里子; 松江 秀明; 呉田 昌俊
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 605(1-2), p.54-56(2009) ; (JAEA-J 07097)
 本研究では、中性子を試料に照射しその際に放射される即発γ線を利用した従来のバルク分析法(neutron induced Prompt γ-ray Analysis)に加え新たにコンピュータ断層撮影解析技術(CT)を導入することによって、試料の内部構造情報と同時に多元素分布情報を3次元的に得られる新しい分析技術(PGACT)の開発に成功した。PGACTは物質に対し高い透過力を持つ中性子を入射ビームとして用いるため、試料内部の元素分布情報を非破壊で得られるという特徴を有する。また蛍光X線分析では難しい水素,ホウ素,ケイ素等の軽元素及びカドミウムや水銀等の有害元素に高い感度を持つ。以上から、本分析技術は材料構造・環境・考古学分析など、非破壊分析が望まれる広い分野への技術応用が期待できる。本講演ではPGACTシステム開発及びJRR3熱中性子ポートにて行ったPGACT・3次元構造及び元素分布可視化構築実証実験の結果について発表する。

38000535
Evaluation and use of the prompt fission neutron spectrum and spectra covariance matrices in criticality and shielding
Kodeli, I.*; Trkov, A.*; Capote, R.*; 長家 康展; Maslov, V.*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 610(2), p.540-552(2009) ; (JAEA-J 07098)
 235U, 238U, 239Puの核分裂スペクトル共分散行列を、2つの経験的なスペクトル式(WattとKornilovスペクトル)に対し、モンテカルロ法を用いて評価した。また、JENDL-3.3のような既存の評価と比較した。評価した核分裂スペクトルを、遮蔽計算(VENUS-3ベンチマーク,圧力容器ドジメトリ),高速炉と熱炉体系(SNEAK, KRITZ)臨界計算に適用し、その共分散行列と対応した感度プロファイルの検証手法とともに、妥当性を評価した。Kornilovモデルに対する新しいパラメータセットはベンチマークパフォーマンスを向上するとともに、最近測定された微分スペクトルへの適合性を改善することがわかった。また、実効増倍率と検出器応答に対して核分裂スペクトルに起因する不確定性を計算する際、核分裂スペクトル共分散行列の適切な規格化を保証するために、規格化した感度係数を用いることがよいことがわかった。

38000536
Superconducting twin quarter wave resonator for acceleration of low velocity heavy ions
株本 裕史; 竹内 末広; 松田 誠; 石崎 暢洋; 乙川 義憲
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 612(2), p.221-224(2010) ; (JAEA-J 07099)
 タンデム加速器及びTRIAC施設からの低速度重イオンを加速するために、超伝導2芯1/4波長型空洞共振器(Twin-QWR)のプロトタイプを製作した。加速空洞は中心導体が2本入る3ギャップの構造となっており、共振周波数は129.8MHz、最適ビーム速度は光速の6%に設計されている。中心導体は超伝導体のニオブでできており、外部胴体はニオブと銅を爆発圧着して製作したクラッド板でできている。中心導体と外部胴体はニオブ製のコンタクトリングで接続される構造になっており、中心導体のみを取り出して表面処理や熱処理を施すことができる。空洞の試験を行いRF電力で4Wを入力したときの加速電界が5.8MV/mを確認しており、所期の性能を達成した。

38000537
Japan Spallation Neutron Source (JSNS) of J-PARC
新井 正敏; 前川 藤夫
Nuclear Physics News 19(4), p.34-39(2009) ; (JAEA-J 07101)
 J-PARCの1MWパルス核破砕中性子源(JSNS)では、2008年5月に初の中性子発生を行い、運転を開始した。その優れたモデレータの設計により、中性子パルスの分解能と単位出力あたりの強度において、世界最高性能であることを実証した。実測した中性子性能は設計計算値とよく一致し、粒子輸送シミュレーション計算において物理現象が精度よく記述できていることを確認した。JSNSでは、科学的研究のみならず産業応用までを目指した中性子実験装置群を建設している。一例として非弾性散乱実験装置では、周波数増倍法という新たな手法を導入し、多数の入射エネルギーによる非弾性散乱信号の同時測定に成功した。本手法は、将来の中性子利用研究の発展に多大な寄与するものである。

38000538
Technological feasibility of two-loop cooling system in JSFR
山野 秀将; 久保 重信*; 栗坂 健一; 島川 佳郎*; 佐郷 ひろみ*
Nuclear Technology 170(1), p.159-169(2010) ; (JAEA-J 07102)
 先進大型ナトリウム冷却高速炉(JSFRと呼ばれる)では革新的な2ループ冷却系を採用している。この冷却系設計では、大きな技術的課題として1ループあたりの冷却材流量の増加による流動・構造健全性,1ループ配管の破断・破損に対する安全設計、及び崩壊熱除去系の信頼性の確保が挙がっている。本論文では、流力振動による配管の構造健全性は1/3縮尺ホットレグ配管試験で調べられた。試験データで検証された流力振動評価手法によって、JSFR設計におけるホットレグ配管の構造健全性が確認された。また、実験的研究によって、ガス巻き込み及び液中渦を含む流動課題については幾つかの設計方策で防ぐことができた。安全性については、この研究では安全評価を実施し、適切な安全設計を適用することによって1ループ配管の破断・破損に対して2ループシステムが妥当であることを確認した。崩壊熱除去系については、適切な安全設計を導入することによって、2ループシステムに適合した自然循環崩壊熱除去系が設計されている。この論文では、崩壊熱除去系の成立性が確率論的安全評価及び安全評価によって示された。

38000539
Minor actinide-bearing oxide fuel core design study for the JSFR
永沼 正行; 小川 隆; 大木 繁夫; 水野 朋保; 小竹 庄司*
Nuclear Technology 170(1), p.170-180(2010) ; (JAEA-J 07103)
 FaCTプロジェクトでは、Na冷却MOX燃料炉心が主概念として選定された。本論文では、TRU組成のJSFR炉心・燃料設計への影響に着目した検討を実施した。LWRからFBRの移行時期においては、LWR使用済燃料からリサイクルされた高MA含有率の燃料がJSFR炉心に供給される可能性がある。高MA含有燃料は、炉心反応度特性,燃料物性(融点・熱伝導度),ガス生成量等を通じて炉心・燃料設計に影響を与える。そこで、これらの影響を定量的に把握するため、FBR平衡時期の組成(FBR多重リサイクル組成: MA含有率1wt%程度),移行時期の組成(LWRリサイクル組成: 代表的なMA含有率として3wt%を暫定)の2種類の組成を用いたJSFR MOX燃料炉心の設計検討を行った。結果として、FBR多重リサイクル組成からLWRリサイクル組成に変更することで、冷却材ボイド反応度は10%増加,線出力制限値は1〜2%低下,ガスプレナム長は5%増加するが、TRU組成の炉心・燃料設計への影響は比較的小さいことが示された。

38000540
Characterization of attosecond XUV pulses utilizing a broadband UV 〜 VUV pumping
Chen, J.*; 板倉 隆二; 中嶋 隆*
Optics Express 18(3), p.2020-2035(2010) ; (JAEA-J 07104)
 本研究は、アト秒XUVパルスの簡便な波形計測法の提案を行う。紫外から真空紫外領域の広帯域ポンプパルスによって原子のコヒーレント状態を作り、そこから時間遅延をおいたアト秒XUVパルスにてイオン化を起される。XUVパルスの周波数位相の情報は、光電子スペクトル上にビート干渉のずれとして表れ、通常のSPIDERのアルゴリズムを用いて求めることができる。

38000541
Single-differential and integral cross sections for electron-impact ionization for the damage of carbon clusters irradiated with X-ray free-electron lasers
甲斐 健師
Physical Review A 81(2), p.023201_1-023201_7(2010) ; (JAEA-J 07105)
 Single-differential and integral cross sections for electron-impact ionization of the C atom and its ions were calculated to study the distribution of free-electron energies in carbon clusters after being irradiated with an X-ray free electron laser (XFEL). The damage to carbon clusters irradiated with the XFEL was also investigated with time-dependent rate equations, considering photoionization, Compton scattering, Auger decay and electron-impact ionization of the C atom and its ions. The results show that the electron-impact ionization becomes a more important process as the X-ray flux decreases, while the effect of Auger decay gradually appears as the X-ray flux increases. The energy dependence of the incident X-ray was also investigated to evaluate the resolution of the diffraction pattern. These results indicate that we should make the XFEL pulse a few fs and about 16 keV, in order to suppress damage, and obtain desired resolution of the diffraction pattern.

38000542
Theory of vortex structure in Josephson junctions with multiple tunneling channels; Vortex enlargement as a probe of ±s-wave superconductivity
太田 幸宏; 町田 昌彦; 小山 富男*; 松本 秀樹*
Physical Review B 81(1), p.014502_1-014502_5(2010) ; (JAEA-J 07107)
 多ギャップ超伝導体に起因する多重トンネルチャネル有するジョセフソン接合について、そのジョセフソン渦構造を調べる。まず、ヘテロ型接合及び粒間接合に着目し、各々について結合サイン-ゴルドン方程式を導出する。その解に基づき、通常のs波対称性の場合に比べて±s波の場合ではジョセフソン渦の広がりが劇的に拡大することを示す。これは±s波対称性の場合、複数あるジョセフソン電流間での相殺が発生するためである。こうした異常拡大したジョセフソン渦構造を提示し、その広がりの評価について調べる。

38000543
Muon spin rotation measurements of heterogeneous field response in overdoped La2-xSrxCuO4
MacDougall, G. J.*; Savici, A. T.*; Aczel, A. A.*; Birgeneau, R. J.*; Kim, H.*; Kim, S.-J.*; 伊藤 利充*; Rodriguez, J. A.*; Russo, P. L.*; 植村 泰朋*; 脇本 秀一; Wiebe, C. R.*; Luke, G. M.*
Physical Review B 81(1), p.014508_1-014508_7(2010) ; (JAEA-J 07108)
 Transverse-field muon spin rotation measurements of overdoped La2-xSrxCuO4 reveal a large broadening of the local magnetic field distribution in response to applied field, persisting to high temperatures. The field response is approximately Curie-Weiss-like in temperature and is largest for the highest doping investigated. Such behavior is contrary to the canonical Fermi-liquid picture commonly associated with the overdoped cuprates and implies extensive heterogeneity in this region of the phase diagram. A possible explanation for the result lies in regions of staggered magnetization about dopant cations, analogous to what is argued to exist in underdoped systems.

38000544
E1 and E2 cross sections of the 12C(α,γ0)16O reaction using pulsed α beams
牧井 宏之; 永井 泰樹*; 嶋 達志*; 瀬川 麻里子; 三島 賢二*; 上田 仁*; 井頭 政之*; 大崎 敏郎*
Physical Review C 80(6), p.065802_1-065802_16(2009) ; (JAEA-J 07109)
 12C(α,γ0)16O反応により放出されたγ線の角度分布の測定をE eff = 1.6 and 1.4 MeVで行った。12C(α,γ0)16O反応によるイベントは飛行時間法を用いて13C(α,n)16Oによる中性子起因のバックグラウンドから分離して測定し、得られたγ線ピークは残留核16Oの反跳によるドップラーシフトと入射α粒子の標的中でのエネルギー損失を反映した特徴的なものとなった。得られた天体物理的S因子はR-matrix理論により計算された結果とよく一致した。

38000545
Red-purple flower due to delphinidin 3,5-diglucosides, a novel pigment for Cyclamen spp., generated by ion-beam irradiation
近藤 恵美子*; 中山 真義*; 亀有 直子*; 谷川 奈津*; 森田 裕将*; 秋田 祐介; 長谷 純宏; 田中 淳; 石坂 宏*
Plant Biotechnology 26(5), p.565-569(2009) ; (JAEA-J 07110)
 香りシクラメンシリーズのバリエーションの増加のために、紫の花が咲き、主要アントシアニンとしてマルビジン3,5-ジグルコサイドを含む香りシクラメン品種(C. persicum × C. purpurascens)「香りの舞」の黄化葉柄に320MeVの炭素イオンビームを0〜16Gyの強さで照射した。M1植物の自家受粉により得られたM2植物から変異体が選抜された。そのうち、2Gyを照射して得られたM2植物68個体中9個体は、これまでの紫の花と葉は異なる赤紫の花が咲いた。その花の色素を抽出し液体クロマトグラフィー(HPLC)で解析したところ、その主要アントシアニンは、デルフィニジン3,5-ジグルコサイドであった。花の形態や香り成分等、花の色以外の要素はこれまでのシクラメン品種とは大差がなかったことから、この変異体は花の色素合成にかかわる遺伝子にのみ変異が生じたと考えられる。デルフィニジン3,5-ジグルコサイドを主な色素として持つシクラメンはこれまで報告されておらず、この変異個体は商業的な価値があるだけでなく、シクラメンの貴重な遺伝子資源としても有用である。

38000546
Magnetic island formation by external cyclic perturbation in rotating and non-rotating plasmas
石井 康友
Plasma and Fusion Research (Internet) 5, p.002_1-002_7(2010) ; (JAEA-J 07111)
 本論文では、ティアリングモードに対して安定な共鳴面において、外部揺動により磁気島が発生する新しい物理機構を報告している。磁場閉じ込めプラズマでは、閉じ込め性能の劣化をもたらす磁気島の抑制・制御が緊急の研究課題である。新古典ティアリングモード(NTM)では、ティアリング安定な共鳴面に、他の巨視的電磁流体(MHD)現象が外部揺動となって種磁気島が形成される。プラズマ中心領域や端領域で発生するMHDモードが、このような巨視的MHD現象として考えられる。しかしながら、これまでの理論モデルでは、観測される巨視的MHD現象とNTM発生との因果関係の説明が困難であった。本研究では、トカマク・プラズマ中で一般的に存在するプラズマ流効果を含むMHDシミュレーションにより、外部揺動の振幅が臨界値以下でも磁気島の急激な成長が起こる物理機構を発見した。本研究では、実験的に観測される巨視的MHD現象とNTM発生との間の因果関係を説明する新しい物理モデルを提案した。

38000547
Transport of heavy hydrocarbon and its redeposition on plasma facing walls
大宅 薫*; 井内 健介*; 菊原 康之*; 仲野 友英; 河田 純*; 川染 勇人*; 上田 良夫*; 田辺 哲朗*
Plasma and Fusion Research (Internet) 8, p.419-423(2009) ; (JAEA-J 07112)
 CH4, C2H4及びC2H6のプラズマ対抗壁近傍での輸送と再たい積をEDDYコードを用いて調べた。計算結果では、C2H4及びC2H6はCH4と比較して発生場所の近傍に再たい積することが示された。これはJT-60Uでの分光測定結果と定性的に一致する。また、EDDYコードで計算されたC2の発光に対するC2H4の電離事象数及びCHの発光に対するCH4の電離事象数は電子温度が10eV以上の範囲ではJT-60Uでの分光測定結果と定量的に一致した。

38000548
Monte Carlo simulations of photon absorbed fractions in a frog voxel phantom
木名瀬 栄
Proceedings of the IEEE 97(12), p.2086-2097(2009) ; (JAEA-J 07113)
 For radiation protection of the environment, a voxel-based frog phantom was developed using cryosection data, which have been available on a website of the Lawrence Berkeley National Laboratory. The voxel-based frog phantom has a mass of 33.7g. In the present study, the voxel-based frog phantom was applied to evaluating photon AFs in the segmented organs/tissues. The sources were assumed to be monoenergetic in the photon energy range from 10 keV to 4 MeV. The radiation transport was simulated using the Monte Carlo method. Consequently, it was confirmed that the photon AFs for organ self-absorption are dependent on the masses of the source/target organs. It would appear that the photon AFs for organ self-absorption are expressed by a continuous function of photon energy emitted by the source. The photon AFs for organ cross-fire might be subject to the geometry effect such as size and shape of source/target and distance between the source and target.

38000549
Ξ-nucleus potential and (K-,K+) inclusive spectrum at Ξ- production threshold region
河野 道郎*; 橋本 慎太郎
Progress of Theoretical Physics 123(1), p.157-167(2010) ; (JAEA-J 07114)
 SU6のクォーク模型に基づくバリオン間相互作用によってΞ-原子核間ポテンシャルは非常に弱くなることが示唆されており、この観点に立って(K-,K+-生成反応の包括スペクトルを今一度解析する。包括的スペクトルの評価は半古典歪曲波模型(SCDW)によって行う。SCDWで導入される近似の検証をグリーン関数法で用いられる強度関数との比較を通じて行い、定量的にその有効性を示す。現在数少ないΞ生成閾値近傍の実験データを説明するのに、これまでは通常のWoods-Saxon型を仮定した-15MeV程度の引力がΞ-原子核間ポテンシャルが必要であるとされてきたが、必ずしもそうではなく、むしろほとんど0であるほうが望ましいことを示す。

38000550
Pulse radiolysis study of ion-species effects on the solvated electron in alkylammonium ionic liquids
近藤 孝文*; 浅野 晃*; Yang, J.*; 法澤 公寛*; 高橋 憲司*; 田口 光正; 永石 隆二; 加藤 隆二*; 吉田 陽一*
Radiation Physics and Chemistry 78(12), p.1157-1160(2009) ; (JAEA-J 07115)
 ナノ秒及びピコ秒のパルスラジオリシス法を用いて、アンモニア系のイオン液体(DEMMA-TFSI, DEMMA-BF4, TMPA-TFSI, PP13-TFSI, P13-TFSI and P14-TFSI)中の溶媒和電子の吸収スペクトル並びに反応挙動を研究した。吸収スペクトルはすべてのイオン液体で1100nmに吸収ピークをもち、そのモル吸光係数は1.5-2.3×104dm3mol-1cm-1であった。溶媒和電子とピリジンとの反応の速度定数は1.5-3.5×108dm3mol-1s-1で、粘性係数から評価した拡散律速に比べ1桁大きな値を示した。また、溶媒和前の電子もピリジンと反応し、溶媒和電子に比べて3桁も大きい速度定数7.9×1011dm3mol-1s-1を得た。

38000551
A Parameter study of pencil beam proton dose distributions for the treatment of ocular melanoma utilizing spot scanning
Sutherland, K.*; 宮島 悟史*; 伊達 広行*; 白土 博樹*; 石川 正純*; 村上 昌雄*; 山極 満; Bolton, P.; 田島 俊樹
Radiological Physics and Technology 3(1), p.16-22(2010) ; (JAEA-J 07116)
 Results of Monte Carlo calculated dose distributions of proton treatment of ocular melanoma are presented. An efficient spot-scanning method utilizing active energy modulation which also minimizes the number of target spots was developed. We simulated various parameter values for the particle energy spread and the pencil-beam diameter in order to determine values suitable for medical treatment. We found that a 2.5-mm-diameter proton beam with a 5% Gaussian energy spread is suitable for treatment of ocular melanoma while preserving vision for the typical case that we simulated. The energy spectra and required proton current were also calculated and are reported. The results are intended to serve as a guideline for a new class of low-cost, compact accelerators.

38000552
Long pulse H- ion beam acceleration in MeV accelerator
谷口 正樹; 水野 貴敏; 梅田 尚孝; 柏木 美恵子; 渡邊 和弘; 戸張 博之; 小島 有志; 田中 豊; 大楽 正幸; 花田 磨砂也; 坂本 慶司; 井上 多加志
Review of Scientific Instruments 81(2), p.02B101_1-02B101_3(2010) ; (JAEA-J 07117)
 原子力機構では、ITER NBI用負イオン加速器として、5段の静電加速器であるMeV級加速器の開発を行っている。MeV級加速器では、2007年までに796keV, 320mAの負イオン加速に成功したが、積極的な冷却機構を持たない慣性冷却電極のため、パルス幅が0.2sに制限されていた。本研究では、MeV級加速器に水冷加速電極を組み込んで長パルス・大電流負イオン加速試験を行った。その結果、最適パービアンス条件下で750keV, 221mA, 5sの負イオン加速に成功した。また、負イオン加速の最大積算エネルギーは、1.01MJ(651keV, 155mA, 10s)であった。上記以上の大パワー加速では、第3加速電極、及び接地電極への熱負荷が過大となり、絶縁破壊が頻発した。試験後の加速器を分解・観察した結果、ビーム偏向によりこれらの電極が溶融し、絶縁破壊が生じたことが明らかとなった。

38000553
Analysis of secondary particle behavior in multiaperture, multigrid accelerator for the ITER neutral beam injector
水野 貴敏; 谷口 正樹; 柏木 美恵子; 梅田 尚孝; 戸張 博之; 渡邊 和弘; 大楽 正幸; 坂本 慶司; 井上 多加志
Review of Scientific Instruments 81(2), p.02B103_1-02B103_3(2010) ; (JAEA-J 07118)
 ITER NBIでは1MeV, 40Aの負イオンビームを最大3,600sに渡り加速することが求められる。その実現には負イオンの加速途中で発生する電子,原子及び正イオンといった二次粒子の挙動を解明し、電極熱負荷を低減する必要がある。そこで、カダラッシュ研究所の開発した解析コード(EAMCC)を用いて原子力機構のMeV級加速器での長パルス加速実験を対象とした加速器内の二次粒子挙動の解析を行った。600keVビーム加速を対象とした解析から、第3加速電極(A3G)に多くのストリッピング電子が衝突することにより、A3Gの熱負荷がA3Gより下流の電極と比べて高くなることがわかった。これは、長パルス加速実験で用いられた加速器では加速段数合理化のためにA3Gの上流の第2加速電極(A2G)を省いたことが原因であることがわかった。

38000554
Achievement and improvement of the JT-60U negative ion source for JT-60 super advanced
小島 有志; 花田 磨砂也; 田中 豊; 井上 多加志; 渡邊 和弘; 谷口 正樹; 柏木 美恵子; 梅田 尚孝; 戸張 博之; Grisham, L. R.*; JT-60NBI開発グループ
Review of Scientific Instruments 81(2), p.02B112_1-02B112_5(2010) ; (JAEA-J 07119)
 JT-60NNBIは実規模サイズの負イオン源を利用した世界で唯一の高エネルギーNBI装置である。今まで、400keVで35Aの負イオンビーム加速に成功し、5.8MW, 0.9sの最大入射パワーを達成している。また、ビームレット同士の反発を補正し、電極熱負荷を低減したことにより、3MW, 30sの長パルス入射にも成功している。それにより、JT-60Uの高ベータプラズマの開発に大きく貢献してきた。JT-60の改修のための停止期間には、JT-60SAに向けての改良として大きな問題であった負イオン源の耐電圧改善を図っている。それは、負イオン源の耐電圧性能を改善することにより、より高パワー・長パルスのビームを安定に入射することが目的である。今回電極間の距離を延ばすとともに局所電界を低減することによって耐電圧の改善に成功し、JT-60での標準運転より厳しい条件であるガスを導入しない無負荷耐電圧で設計値を超える500kVを達成した。また、設計値である490kVを40秒間絶縁破壊することなく保持することに成功した。これらの成果によりJT-60SAに向けた負イオン源の耐電圧改善について見通しを得た。

38000555
Application of laser produced plasma Kα X-ray probe in radiation biology
錦野 将元; 佐藤 克俊; 長谷川 登; 石野 雅彦; 大島 慎介*; 岡野 泰彬*; 河内 哲哉; 沼崎 穂高*; 手島 昭樹*; 西村 博明*
Review of Scientific Instruments 81(2), p.026107_1-026107_3(2010) ; (JAEA-J 07120)
 放射線生物学研究に向けたレーザープラズマX線照射装置の開発を行った。超短パルスレーザーを銅ターゲットに照射することにより8.0keV, 1psのK殻特性X線パルスを発生させた。ポリキャピラリーX線レンズを用いてレーザープラズマX線を集光し、ヒト肺腺がん細胞A549に照射を行い放射線生物影響の確認を行った。X線照射終了30分後に抗γH2AX抗体を用いた免疫蛍光染色法によりDNA二本鎖切断部位の検出を行った。免疫蛍光染色の結果、レーザープラズマX線の照射により誘発されたγH2AXのフォーカス形成を確認した。X線集光径の縮小及び、X線発生効率の向上によりX線照射線量率を増加させ、癌細胞内の局所領域における超短パルスX線による放射線生物影響研究を展開していく予定にしている。

38000556
2,2'-(Methylimino)bis(N,N-dioctylacetamide) (MIDOA), a new tridentate extractant for technetium(VII), rhenium(VII), palladium(II), and plutonium(IV)
佐々木 祐二; 小澤 正基; 木村 貴海; 大橋 弘三郎*
Solvent Extraction and Ion Exchange 27(3), p.378-394(2009) ; (JAEA-J 07121)
 メチルイミノビスジオクチルアセトアミド(MIDOA)は新しいTc用の抽出剤として開発された。MIDOAはTODGA(テトラオクチルジグリコールアミド)と類似の骨格を持ち、窒素原子が酸素原子に代わってアルキル基中に導入されている。MIDOAは高い疎水性を持ち硝酸-ドデカン系で抽出に利用できる。Tc(VII), Cr(VII), Re(VII), Mo(VI), W(VI), Pd(II), Pu(IV)分配比が高く、MIDOAにより抽出できることを明らかにした。一方、分配比は硝酸濃度増加とともに減少し、また1:1錯体を形成することも確認した。また、MIDOAの誘導体(メチルイミノビスジドデシルアセトアミド,イミノビスジドデシルアセトアミド)もMIDOAと同様な抽出性能を示すことを明らかにした。

38000557
ESR study of free radicals in mango
菊地 正博; Hussain, M. S.*; 森下 憲雄; 鵜飼 光子*; 小林 泰彦; 下山 雄平*
Spectrochimica Acta, Part A 75(1), p.310-313(2010) ; (JAEA-J 07122)
 照射された生鮮マンゴーに誘起されたラジカルに関して電子スピン共鳴(ESR)分光法による研究が行われた。生鮮状態のマンゴーはγ線で照射され、凍結乾燥後に粉末に磨砕された。粉末のESRスペクトルは、g=2.004の強いメインピークと、そのメインピークを中心とする1対のピークが検出された。メインピークは、果肉と果皮の両方の検体で検出された。このピーク高は照射後の保存中に徐々に減少した。一方、サイドピークは照射9日後でさえ、はっきりした線量応答関係を示した。したがって、サイドピークは生鮮マンゴーの照射を見分ける有用な手法を提供する。

38000558
加速器質量分析装置による129I測定と環境研究への応用
鈴木 崇史
ぶんせき 2010(2), p.66-70(2010) ; (JAEA-J 07123)
 加速器質量分析装置(AMS)による長寿命放射性核種の測定は環境科学,考古学,薬学等の分野で精力的に利用されている分析手法である。本論文ではAMSによる129I測定方法について概説し、環境モニタリングとしての応用及び物質循環研究への応用として129Iをトレーサーとして利用した研究例を解説する。

38000559
中性子散乱の最前線; 結晶PDF解析を中心として
社本 真一
物性研究 93(6), p.754-781(2010) ; (JAEA-J 07124)
 中性子は磁気モーメントを持つが、電荷を持たない粒子である。室温の水などで速度を減速された中性子は、その波長とともに運動量とエネルギーの関係において、物質内の電子スピンや格子の素励起を調べるのに非常に適している。またパルス中性子では広い逆格子空間の散乱パターンを飛行時間法により効率よく測定できることから、その散乱パターンをフーリエ変換することで実空間での二体分布関数(対相関関数)を正確に求めることができる。その特徴を利用して、周期構造をもたないアモルファスの構造から結晶性の物質の構造まで、幅広く物質の構造解析に用いられる。さらにその中間に存在する乱れた結晶性物質やナノ物質の構造解析も可能である。ここではパルス中性子を利用した構造の研究について紹介しながら、一部ではあるがJ-PARC物質・生命科学実験施設の散乱装置も併せて紹介する。さらに実空間の構造の乱れ、及びその物性とのかかわりについて、最近の研究例を含めてわかりやすく紹介したい。

38000560
低アスペクト炉におけるプラズマ電流分布の評価
仙石 盛夫
電気学会論文誌,A 129(9), p.585-588(2009) ; (JAEA-J 07125)
 トカマクのブートストラップ電流分布を迅速に評価するために、新しい近似法を開発した。その結果変数範囲の全域にわたり、分布勾配に掛かるすべての新古典拡散係数は逆アスペクト比,ε,有効電荷数,Zeff、及び実効衝突周波数,ν*、のみの多項式として表現できることを示した。これにより得られた電流分布は、内部輸送障壁のある場合のITERベンチマーク輸送コードによる結果と良い一致を見た。この近似法を核融合商用炉VECTOR(低アスペクトトカマク炉)の解析に適用した結果、ブートストラップ電流割合,IBS/Ipは正磁気シア, 弱負磁気シア及び強負磁気シア(電流ホール形成)の場合にそれぞれ〜55%, 〜60%及び〜100%と評価された。

38000561
Separation factor of americium from cerium in molten chloride-liquid gallium reductive extraction system
戸田 太郎*; 丸山 雄大*; 森谷 公一*; 森山 裕丈*; 林 博和
電気化学及び工業物理化学 77(8), p.649-651(2009) ; (JAEA-J 07126)
 LiCl-KCl共晶溶融塩/液体ガリウム系(773K)におけるアメリシウムとセリウムの分配係数をZrCl4を共存させて塩中の酸化物イオン濃度を制御しMO(n-2)+イオンの生成を抑制した条件で測定した。得られた分配係数から得られたアメリシウム/セリウムの分離係数は約100であった。本実験結果を他の系の報告値及び理論的予想値と比較することによって、ガリウムを使用した系はビスマスやカドミウムを用いた還元抽出系よりもアメリシウム/セリウムの分離性能が大きいことを明らかにした。

38000562
海水に潜むウラン資源
玉田 正男
電気協会報 (1024), p.30-33(2010) ; (JAEA-J 07127)
 海水中には鉱山ウランの1,000倍量のウラン資源が存在するが、その濃度は3ppbと極めて低い。放射線グラフト重合法により、接ぎ木のようにアミドキシム基をポリエチレン基材に導入してウラン捕集材を合成した。青森県むつ関根浜沖合で海域試験を行い、布状の捕集材を積層した捕集材を吸着床に充填して、1kgのウランをイエローケーキとして回収することに成功した。沖縄県恩納村沖合では、海底から垂直に立ち上げ係留可能なモール状捕集材を係留し、30日の海水への浸漬で1.5g-U/kg-捕集材の性能が達成されている。年間1200tの規模の捕集によるコスト試算では、モール状捕集材が18回繰り返して使用できた場合、ウランのコストは週間スポット価格の2倍程度の2.5万円となる。

38000563
原子力ルネッサンスと核不拡散; どう克服するか、原子力平和利用における核不拡散問題
久野 祐輔
エネルギー・資源 31(2), p.64-68(2010) ; (JAEA-J 07128)
 我が国は、原子力の平和利用推進に向け、これまで、保障措置を中心にさまざまな核不拡散への積極的な努力や貢献を行ってきた。その結果、非核兵器国では唯一、フルスケールでの燃料サイクルを確立するという、世界で特異ともいえる状況を築きあげてきた。しかしながら、世界的な原子力の平和利用の拡大機運の中、世界で多数の国家が原子力発電を導入しようとするにつれ、幾つかの国において核燃料サイクルを持とうとする動きが生じてくることは明白であり、濃縮や再処理といった機微技術の拡散に対し、国際社会はどのように対処していくのかという問題に直面していると言える。このような状況下で、我が国の非核兵器国-核燃料サイクル政策という特異性は、今後も常に論議の対象となると思われるため、平和利用と核不拡散対策の両立のために、自ら積極的に有効な手立てを打ち出していくことが重要であると考える。本稿では、最近の核不拡散への対応策に関する議論を紹介しながら、原子力利用推進にあたり、今後このような問題に対しどのように取り組んでいけば良いかについて述べる。

38000564
JMTRでの軽水炉燃材料の健全性試験計画
伊勢 英夫; 扇柳 仁; 中村 仁一; 笹島 栄夫; 高佐 明; 塙 悟史; 川口 佳彦; 知見 康弘; 西山 裕孝; 中村 武彦
FAPIG (180), p.22-25(2010) ; (JAEA-J 07129)
 日本原子力研究開発機構では、軽水炉の開発や安全確保などに資するため、Japan Materials Testing Reactor (JMTR)を改修して2011年度に再稼働する計画を進めており、軽水炉燃料及び材料の照射にかかわる健全性を調べるための試験装置の整備を改修と並行して行っている。本稿では、この燃料及び材料照射試験計画の概要について述べる。

38000565
核燃料供給保証; JAEAの提案と課題,1; 日本提案とその具体化
直井 洋介; 小林 直樹*; 若林 修二; 田崎 真樹子
原子力eye 56(2), p.52-56(2010) ; (JAEA-J 07130)
 核燃料供給保証に関する日本国政府の「IAEA核燃料供給登録システム提案(INFCIRC/683)」をベースとした供給保証システムについて検討した。より現実的な供給保証システムとなるよう、日本提案の具体化を試みた。

38000566
核燃料供給保証; JAEAの提案と課題,2; 供給保証システム提案
直井 洋介; 小林 直樹*; 若林 修二; 田崎 真樹子
原子力eye 56(3), p.33-37(2010) ; (JAEA-J 07132)
 核燃料供給保証に関する日本国政府の「IAEA核燃料供給登録システム提案(INFCIRC/683)」をベースとした供給保証システムについて検討し、供給保証に必要な追加的なコストと所要期間の想定を行うなど、より現実的なシステムとして提案を試みた。

38000567
核燃料供給保証; JAEAの提案と課題,3; 主な課題と解決策の検討
直井 洋介; 小林 直樹*; 若林 修二; 田崎 真樹子
原子力eye 56(4), p.50-53(2010) ; (JAEA-J 07133)
 核燃料供給保証に関する日本国政府の「IAEA核燃料供給登録システム提案(INFCIRC/683)」をベースとした供給保証システムについて検討した。より現実的なシステムについて提案を試みるために、主な課題と解決策について検討した。

38000568
J-PARC 1MWパルス核破砕中性子源
前川 藤夫
放射化分析 (25), p.15-25(2010) ; (JAEA-J 07135)
 J-PARC 1MWパルス核破砕中性子源の概要を解説するとともに、放射化分析を研究テーマとするユーザーに向けてJ-PARC中性子源ではどのような性能の中性子ビームが利用可能であるかを述べ、将来のJ-PARC利用を促す記事である。

38000569
複合型光ファイバを用いた1インチ伝熱配管用観察補修レーザー加工ヘッドの開発
岡 潔; 西村 昭彦; 関 健史*; 赤津 朋宏*; 山下 卓哉
保全学 8(4), p.37-42(2010) ; (JAEA-J 07136)
 現在のFBR原型炉であるもんじゅの熱交換器は蒸発器と加熱器を組合せた構造であり、蒸発器の伝熱管内には高温水と蒸気が混相流として流れ、外側を液体ナトリウムが流れる。これまでは渦電流深傷(Eddy Current Testing: ECT)による検査により伝熱管に欠陥が発見された場合、伝熱管を施栓により塞ぐのが対処の基本であった。しかしながら、施栓の割合が高くなると、有効伝熱面積が減少するため、熱交換率が低下することとなる。そこで、FBRで使用する伝熱管配管の検査・補修のための統合ツール開発を目的とし、本報告では、複合型光ファイバスコープ及びレーザー加工ヘッドの製作を行い、基礎的な動作検証を行った結果を述べる。

38000570
Numerical simulation of the influence of humic-complexation on the migration of radionuclide through porous media; A Consideration of the sensitivity of analytical parameters
田中 忠夫; 向井 雅之
Humic Substances Research 5-6(1), p.35-43(2009) ; (JAEA-J 07137)
 環境中に存在するフミン酸などの腐植物質は多くの陽イオン性金属元素と錯体を形成することから、放射性廃棄物の処分によって環境中へもたらされる放射性金属元素に対しても環境中移行現象に影響を及ぼす可能性が指摘されている。本検討では、腐植物質が存在する環境を想定し、多孔質媒体中を移行する陽イオン性放射性核種の移行に及ぼす錯形成の影響を解析した。解析においては、陽イオン種と錯体種の間での化学形変化を瞬時平衡反応あるいは一次の速度依存反応とみなした。数値解析結果は、地質環境中における放射性核種の移行に及ぼす腐植物質錯体形成の影響を具現化した。腐植物質共存下での放射性核種の移行性は、陽イオン種と錯体種の分配係数の大小関係によって支配されることを示した。また、瞬時平衡反応系における錯体の安定度定数あるいは錯形成反応における速度定数が放射性核種の移行に大きく影響することを示した。

38000571
幌延の地下研を例とした放射性廃棄物地層処分技術と地盤工学
杉田 裕
地盤工学会誌 57(2), p.14-17(2009) ; (JAEA-J 07138)
 地盤工学と地層処分のかかわりの例として、幌延深地層研究計画における立坑掘削で採用している情報化施工の取り組みを報告する。日本原子力研究開発機構は、高レベル放射性廃棄物地層処分の研究のための堆積岩を対象とした地下研究施設の建設を北海道幌延町において進めている。本立坑の掘削は最新の技術とされる情報化施工によって進められているが、これは、掘削前に設計された支保工の妥当性を、掘削で得られる地質情報に基づいて評価しながら掘削するものであり、今後の地盤工学の先駆けとなるものである。

38000572
ブンゼン反応の生成物組成に対する二酸化硫黄分圧及び反応温度の影響
今井 良行; 中島 隼人; 久保 真治; 小貫 薫
化学工学論文集 36(1), p.70-73(2010) ; (JAEA-J 07139)
 熱化学水素製造法ISプロセスの要素反応であるブンゼン反応について、ヨウ素飽和条件において二酸化硫黄分圧及び反応温度が生成するポリヨウ化水素酸相の組成に与える影響を調べた。理想的脱硫を仮定したポリヨウ化水素酸相のヨウ化水素酸濃度(HI/(HI/H2O))は、二酸化硫黄分圧及び反応温度に応じて単調増加の傾向を示した。試験結果をもとに二酸化硫黄分圧及び反応温度の関数としてヨウ化水素酸濃度の実験式を得た。

38000573
伊自良川における降雨時の水質変化特性
高橋 慎也*; 井上 隆信*; 対馬 孝治*; 崎岡 聖導*; 松永 武
環境工学研究論文集 46, p.565-572(2009) ; (JAEA-J 07140)
 岐阜県伊自良川上流の渓流を対象として、降雨時の水質変化とその要因を、主要イオン濃度・pH・電気伝導度・流量観測・水の水素安定同位体比分析を用いた流量の成分分離により解析した。対象河川では、降雨による流量増加時に、ほとんどの主要イオン濃度,pH,電気伝導度が低下し、pH及び電気伝導度の変化量は降雨量と負の相関関係にあった。水の水素安定同位体比測定を用いた流量の成分分離の結果、降水流出成分比率は降雨量によって全く異なり、降雨量が多い場合は降水流出成分の寄与が大きくなることが示された。成分分離結果をもとにして、平水時河川水と降雨の主要イオン濃度から算出した降雨時のイオン濃度の変化から、対象河川における水質変化の主な要因は降水流出成分の寄与であることが示された。

38000574
金属遮蔽された爆発物の非破壊測定法の開発
早川 岳人; 羽島 良一; 豊川 弘之*; 大垣 英明*
検査技術 15(3), p.47-50(2010) ; (JAEA-J 07141)
 原子力機構を中心とする研究グループは、金属で厳重に遮蔽された爆発物の非破壊測定法の開発を行っている。本手法では、エネルギー可変であるレーザーコンプトン散乱γ線による核蛍光散乱を用いて、内部に存在する爆発物を非破壊で検知及び同定する。数MeVのエネルギーのγ線を用いるため、厚さ数cm程度の鉄などを透過して計測することが可能である。本手法では、精度よく炭素/窒素,酸素/窒素の比を計測することができるため、内部に隠蔽されている物質の種類も特定可能である。小型加速器によるレーザーコンプトン散乱γ線源が開発されれば、港湾や空港でコンテナを非破壊で検査可能になる。

38000575
MOX燃料加工施設における臨界事象発生頻度概略評価手法の開発
玉置 等史; 木本 達也*; 濱口 義兼*; 吉田 一雄
日本原子力学会和文論文誌 9(1), p.40-51(2010) ; (JAEA-J 07142)
 MOX燃料加工施設における臨界事象の発生は、質量,富化度等の多様なパラメータの組合せで決まる。施設内でMOXを取り扱う装置等は、臨界事故を防止するため二重偶発性の原則に基づき設計,運転される。このため複数のパラメータを考慮した臨界条件を臨界計算コードを用いて定量的に把握し、これをもとに臨界に至る事故シナリオを分析する必要がある。また、建設予定の商用MOX燃料加工施設においては質量管理に計算機を用いた管理計算機システムが導入される予定であるため、質量管理の失敗シナリオの分析には、ソフトウェアの信頼性評価が重要となる。そこで、臨界計算コードによる臨界発生条件に基づいた事故シナリオを同定する手順及び管理計算機システムの誤作動等を分析する手順から成る臨界事象発生頻度評価手法を開発した。この手順に従いモデルMOX燃料加工施設を対象に評価を実施し、具体的な評価例を示すとともに、その有用性を確認した。

38000576
核燃料施設の事故影響評価手法に関する調査,2; 溶液沸騰事象での放射性物質の移行割合に関する基礎的データと試解析
吉田 一雄; 林 和也*
日本原子力学会和文論文誌 9(1), p.60-70(2010) ; (JAEA-J 07143)
 日本原子力学会の「核燃料施設事故影響評価手法調査専門委員会」では、日本原子力研究開発機構からの委託を受けて、核燃料施設のPSA手法のうち、特に事故時の影響評価のための解析手法に重点をおいて確率論的安全評価(PSA)に適用可能な解析手法の現状を調査した。調査は、核燃料施設でのPSA適用に向けた課題を検討し、これにより、定量的性能目標の策定,リスク情報を活用した安全管理/規制の参考となる情報を得ることを目的としている。核燃料施設で想定される主要な異常事象(臨界,火災,爆発,溶液沸騰)において、施設外に放出される放射性物質の量を評価するための手法を中心に調査した。本報では、再処理施設の溶液沸騰でのエアロゾル発生割合に関する基礎的な実験データとこれに基づく試解析について述べる。

38000577
核燃料施設の事故影響評価手法に関する調査,3; 放射線分解水素爆発事象の事故影響評価手法に関する基礎的データ
石田 倫彦; 林 芳昭*; 上田 吉徳*; 吉田 一雄
日本原子力学会和文論文誌 9(1), p.71-81(2010) ; (JAEA-J 07144)
 原子力発電施設を対象としたリスク情報活用が実用段階を迎えるなか、核燃料施設のリスク情報活用に資する核燃料施設の特徴を踏まえた確率論的安全評価(PSA: Probabilistic Safety Assessment )の確立が望まれている。こうした状況を踏まえ、核燃料施設事故影響評価手法調査専門委員会では、平成16年度より日本原子力研究開発機構からの受託業務として、核燃料施設のPSA手法のうち、特に事故時の影響評価のための解析手法に重点をおいてPSAに適用可能な解析手法について調査検討を実施してきた。本報では、再処理施設における放射線分解水素ガスの爆発事象に着目し、事故シナリオ検討及び事故影響評価に関する調査結果を紹介する。

38000578
核燃料施設の事故影響評価手法に関する調査,4; 火災爆発事象の影響評価手法の検討
阿部 仁; 田代 信介; 上田 吉徳*
日本原子力学会和文論文誌 9(1), p.82-95(2010) ; (JAEA-J 07145)
 再処理施設や核燃料加工施設のような核燃料施設(NFF)に対する確率論的安全評価(PSA)の適用に向けた検討に資することを目的として、「核燃料施設事故影響手法調査」特別専門委員会が、(独)日本原子力研究開発機構からの委託の下、(社)日本原子力学会に組織された。同委員会では事故事象の定量的評価あるいはNFFに対するPSAの適用によってもたらされるリスク情報を活用した安全規制の確立のために必要となる有用な情報を収集することである。同委員会ではおもに、NFFにおいて想定される環境への放射性物質の放出を伴う主要な異常事象(例えば、臨界,溶融ガラス漏洩,水素爆発,放射性溶液の沸騰,火災(含,TBP錯体の急激な熱分解)等)進展の解析手法の調査を実施してきた。これらの調査結果を6報のシリーズにまとめて報告する。そのうち本報では、火災爆発事象に対する安全性の評価のための基礎データ及び評価手法に関する調査結果をまとめたものである。

38000579
ディスラプションを制御する; 物理現象の理解と制御技術の進展
河野 康則; 杉原 正芳*; 飛田 健次
プラズマ・核融合学会誌 86(1), p.3-16(2010) ; (JAEA-J 07147)
 トカマクにおけるディスラプションの物理現象及び制御技術について解説する。まず、ディスラプションを特徴づける物理現象として、電流消滅,熱消滅,ハロー電流,逃走電子について解説し、ディスラプションを制御するための要素技術として、予測,回避,緩和について説明する。さらに、ITERにおけるディスラプション時の電磁力や熱負荷に関する予測及び対策、現在想定されている緩和方法について解説する。最後に、原型炉におけるディスラプションの考え方及び回避・緩和方法について概説する。

38000580
人工知能技術を用いた坑道掘削に伴う間隙水圧の変動予測解析
竹内 真司; 乳根 達矢*; Mebruck, N.*; 渡辺 邦夫*
水工学論文集(CD-ROM) 54, p.409-414(2010) ; (JAEA-J 07149)
 亀裂性岩盤でのトンネルや立坑掘削はサイト周辺の水圧変化を発生させる。高透水性の水みちが存在する場合、その影響は場所により異なることが予想される。そのため水圧変動をリアルタイムで予測し、異常の兆候を捉え、これに対処することにより地下水状態を適切に維持することは、周辺環境への影響を低減するうえで非常に重要である。これは、地層処分のサイト調査における環境影響評価の有効な手法の1つと考えられる。本論では、原子力機構が開発した、人工知能技術(遺伝的アルゴリズム及びニューラルネットワーク)による水圧変動の予測解析システムを用いて、瑞浪超深地層研究所及び周辺のボーリング孔で取得した観測データに適用した結果について論述する。その結果、当地域の水圧変動は4つのパターンに分類可能であることを確認した。また、同じ変動パターンを有するデータ群を用いることで、任意地点の水圧変動を予測可能であることが明らかとなった。

38000581
Diffusion of cesium and iodine in compacted sodium montmorillonite under different saline conditions
舘 幸男; 四辻 健治; 清田 佳美; 油井 三和
Materials Research Society Symposium Proceedings, Vol.1193 , p.545-552(2009) ; (JAEA-J 07150)
 圧密モンモリロナイト中の陽イオンと陰イオンの拡散収着挙動の塩濃度影響を、実験的評価とモデル評価の両面から評価した。精製ナトリウム型モンモリロナイトを乾燥密度800kg/m3に調整し、0.01, 0.1, 0.5Mの3種類のNaCl溶液で飽和させた系で、Through-diffusion試験によって、セシウムとヨウ素の実効拡散係数と容量因子を取得した。信頼性の高いデータ取得の観点から、トレーサー減衰曲線,破過曲線,内部プロファイルの複数のカーブからパラメータを決定する手法の適用を試み、さらにin-diffusion試験,バッチ収着試験との比較を行った。取得された実効拡散係数は、陽イオンのセシウムでは塩濃度とともに減少し、陰イオンのヨウ素では逆の傾向を示した。セシウムの収着分配係数については、塩濃度とともに減少する傾向が得られ、バッチ収着試験の結果と整合的であった。これらの陽イオン・陰イオンの実効拡散係数の塩濃度依存性は、電気二重層に基づく拡散モデルによって解釈し、さらに収着モデルと組合せることにより、収着効果を含む見かけの拡散係数を説明できた。

38000582
High speed eigenvalue solver on the Cell cluster system for controlling nuclear fusion plasma
櫛田 慶幸; 武宮 博; 徳田 伸二*
Proceedings of 18th Euromicro International Conference on Parallel, Distributed and Network-Based Computing (PDP 2010) , p.482-488(2010) ; (JAEA-J 07151)
 本研究では、高い計算能力を持ち2009年10月現在世界最高性能のスーパーコンピューターであるRoadrunnerにも搭載されているCellプロセッサーを使うことで、核融合モニタリングシステムに必要不可欠な高速固有値解析システムを開発した。核融合モニタリングシステムのための固有値解析システム構築は次の二つの理由で、現在のスーパーコンピュータでは困難であった。(1)スーパーコンピューターはユーザーが占有できる時間が限られており、モニタリングに必要な時間の間利用できない。(2)現在のスーパーコンピューターはネットワークで多数の計算ユニットを接続する形式であるが、これではネットワークによるオーバーヘッドが大きくモニタリングシステムに必要な時間解像度から考えられる計算時間に計算を終わらせることができない。そのため本研究では、価格性能比が高く、現在の計算ユニットよりも高速なCellプロセッサーを用いることで困難を克服し、モニタリングシステムに必要な計算速度を持ちながら、スーパーコンピューターよりも遥かに低価格で構築できるシステムを構築した。論文では、Cellを利用するために必要なプログラムの詳細とシステムの性能について述べる。

38000583
Recent research and development on partitioning and transmutation by "double-strata fuel cycle concept" in JAEA
湊 和生; 森田 泰治; 木村 貴海; 大井川 宏之; 荒井 康夫; 佐々 敏信
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycle; Sustainable Options & Industrial Perspectives (Global 2009) (CD-ROM) , p.504-512(2009) ; (JAEA-J 07152)
 原子力機構においては、分離変換技術の研究開発を20年以上に渡って行ってきている。2000年に原子力委員会による第1回のチェックアンドレビューがあり、その結果に基づいて、研究開発を進めてきた。階層型燃料サイクルによる分離変換技術の研究開発では、マイナーアクチノイドの分離研究,マイナーアクチノイド窒化物燃料の研究,核変換専用システムである加速器駆動システムの研究を行ってきた。また、分離変換技術を導入した際の放射性廃棄物処分の負担軽減についても検討した。2008年9月から2009年3月に第2回のチェックアンドレビューが行われ、今後の分離変換技術の研究開発に対して指針が出された。

38000584
Geomechanical model for sedimentary soft rock based on surface-based investigations
杉田 裕; 真田 祐幸; 松井 裕哉
Proceedings of International Symposium on Rock Mechanics "Rock Characterization, Modelling and Engineering Design Methods" (SINOROCK 2009) (CD-ROM) , 5p.(2009) ; (JAEA-J 07153)
 日本原子力研究開発機構は、北海道幌延町において新第三紀堆積岩を対象とし、地下施設建設を伴う研究プロジェクト(幌延深地層研究計画)を進めている。本報告は、地表からの調査結果に基づく、地下施設の建設時の岩盤の力学的挙動を予測するための物理的,力学的物性を設定するための岩盤力学概念モデルの構築について示す。地表からのボーリング調査に基づく岩盤物性の評価結果から、現在の地質構造は褶曲や断層などにより複雑になっているが、岩盤は深度方向に3つのゾーンに区分でき、堆積時の地質構造に応じた力学特性を持っていることがわかった。これらの結果から、地質構造(層序,褶曲や断層による変位など)を考慮することで、三次元的な岩盤力学概念モデルを合理的に構築することができた。

38000585
物理学と核融合
菊池 満
物理学と核融合 , 258p.(2009) ; (JAEA-J 07154)
 本書は、核融合の原理とプラズマ閉じ込めの最新の物理体系を概観することを目的とし、広く物理教育を受けた大学院生以上を読者と想定している。将来の活躍の場の可能性として座右において頂きたいという思いで記述した。本書は、理工系の大学教程で量子力学や解析力学の基本を習得した方であれば読みこなせる内容とした。本書の序章では、湯川秀樹と核融合のかかわりを交えつつ物理と核融合のかかわりについて述べ、1-2章では、宇宙の創成と水素,太陽の中心部の反応,地上に太陽を実現する努力の始まりと研究対象としてのプラズマ、そして核融合が起こるミクロな世界を支配する方程式と"地上の太陽"を実現する重水素,三重水素,中性子,ヘリウムの性質と核融合反応論を導入した。本書の中核である3-9章では、磁場閉じ込めの物理体系を記述した。第10章では、地球環境問題を踏まえてエネルギー開発としての核融合研究の意義を述べるとともに、研究の現状と将来展望を述べている。

38000586
JAEA-AMS-TONOの現状
國分 陽子; 鈴木 元孝; 石丸 恒存; 西澤 章光*; 大脇 好夫*; 西尾 智博*
第22回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集 , p.42-45(2010) ; (JAEA-J 07155)
 日本原子力研究開発機構東濃地科学センターでは、平成9年に天然試料の同位体分析を目的としてタンデム型加速器質量分析計JAEA-AMS-TONO(NEC製15SDH-2ペレトロン)を導入した。おもに放射性炭素の測定を行い、堆積物や地下水などの地球科学にかかわる各種試料の年代決定等に貢献してきた。平成18年度より施設共用が開始され、外部機関からの試料の受け入れも実施している。本発表では平成20年度の運転状況及び装置の改善点について報告する。平成20年度の実績として879件の測定を行い、ビーム発生時間は1102時間であった。イオンビームの安定化を図るため、入射側ビームラインのアライメントを再度行い、イオン源オーブン温度制御,ホイール回転軸及びコロナプローブの改善等を行った。

38000587
高圧純水洗浄による超伝導ブースターの性能回復
株本 裕史; 竹内 末広; 石崎 暢洋; 吉田 崇宏*; 石黒 貴之*; 山口 和司*
第22回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集 , p.129-132(2010) ; (JAEA-J 07156)
 原子力機構東海タンデム加速器の後段には重イオンのエネルギーを増強するための超伝導ブースターが設置されており、1994年の運転開始以来、毎年40日程度のマシンタイムを提供している。建設当初は1空洞あたりに4WのRF電力を入力したときの加速電界が5.0MV/m前後であったが、現在では4.0MV/m付近まで低下してきている。超伝導加速空洞では表面のクリーンさが非常に重要であり、内部のニオブ表面へ金属粉やゴミ等が蓄積すると、高電界を発生させた時にトンネル効果で電子の電界放出現象(フィールドエミッション)が起こる。電子は高周波電場により加速されてニオブ表面に衝突し、発熱や2次電子放出を引き起こすため加速電界が著しく制限される。われわれは高圧純水洗浄の技術を用いて性能の回復を試みることにした。洗浄装置を製作して試験を行ったところ良好な結果が得られており、オンラインの空洞に対しても適用する予定である。

38000588
原子炉解体粉塵の抑制に関する研究
重田 達雄*; 天田 健一*; 笹瀬 雅人*; 遠藤 伸之*; 長友 仁郎*
平成20年度財団法人若狭湾エネルギー研究センター研究成果報告集,11 , p.87(2009) ; (JAEA-J 07157)
 新型転換炉原型炉施設「ふげん」の廃止措置においては、放射能レベルが比較的高い原子炉を水中解体することとしており、原子炉解体時における粉塵をいかに抑制していくかという点が、作業安全上重要となる。「ふげん」は、炉心を構成する圧力管(Zr-2.5%Nb合金),カランドリア管(Zry-2)にジルコニウム合金が使用されているが、これらの水中切断時における粉塵挙動データが少ないことから、炉心を構成する材料の水中解体を模擬できる水中切断時粉塵挙動評価試験システムを構築し、粉塵挙動データを取得している。本年度は、昨年度に実施した圧力管とステンレス鋼管を対象とした水中熱的切断試験に引き続き、カランドリア管を対象とした試験及び試験体形状にかかわる影響調査試験を実施し、気中及び水中への粉塵移行率は、圧力管やステンレス鋼管と同様に切断速度とプラズマガス種の影響が大きいことがわかった。

38000589
次世代核燃料サイクルの低除染/MA混合MOXの検認について
勝村 聡一郎; 瀬谷 道夫; 若井田 育夫
核物質管理学会(INMM)日本支部第30回年次大会論文集(CD-ROM) , 9p.(2009) ; (JAEA-J 07158)
 次世代核燃料製造施設では、244Cmを含んだMA(マイナーアクチニド)を伴う低除染MOX燃料(低除染/MA混合MOX)が扱われる。現在、高除染PuあるいはMOXに適用されている保障措置NDA装置では、中性子同時計数法で240Pu実効質量を、またγ線スペクトル分析を用いてPu同位体組成比を求め、施設者が申告したPu量の定量的検認を行っている。低除染/MA混合MOXでは、240Puの0.01%を超えるわずかの244Cm混合でも、244Cmの自発核分裂中性子発生量が240Puからの自発核分裂中性子発生量を超える。これは244Cmの自発中性子発生量が240Puの約104倍であることによる。また、MOX内の核分裂生成物からのβ崩壊電子の制動放射による高いγ線のバックグランドからγ線スペクトル分析によるPu同位体組成比分析の精度が悪くなるか、γ線スペクトル分析が困難となる。このため低除染/MA混合MOXには新たな検認アプローチが求められる。本報告では、将来の低除染/MA混合MOXの検認の課題を説明するとともに、対応策の一つとしてLIBS(レーザー誘起プラズマ発光分光法)+AIRAS(アブレーション共鳴吸収分光法)の適用を紹介する。

38000590
高精度液位測定装置に用いられる水晶振動型差圧センサの保守管理; 精度の維持及び故障時の兆候
向 泰宣; 小磯 勝也; 中村 仁宣; 細馬 隆; 吉元 勝起; 林 宏幸*
核物質管理学会(INMM)日本支部第30回年次大会論文集(CD-ROM) , 9p.(2009) ; (JAEA-J 07159)
 エレクトロマノメータ(ELTM)は、計量管理/保障措置及び運転管理の目的で、計量槽の液位/密度/液量を高精度で測定する装置である。JAEAでは、プルトニウム転換技術開発施設での槽の初期校正(1982)以来、水晶振動型差圧センサを用いたELTMを開発・実用化し、直近15年間の校正・測定結果として、基準圧力との差のσが±2Pa、測定密度と分析密度の差のσが±0.002g/cm3の精度を維持している。しかしながら、これまでに経験したことのない測定値のドリフトを2008年に確認した。調査の結果、正常なセンサでは変化が認められないT0値(差圧=0の振動周期)が、不具合を生じたセンサでは約7%変化していた。これは経年劣化によるものであることから、当該センサの交換時期を判断するうえで、T0値の監視が有効であると言う重要な知見を得た。本報告では、実際に得られたELTMの長期的測定精度及び当該センサの交換を含めた保守管理方法について述べる。

38000591
核燃料供給保証に関するJAEA提案
若林 修二; 小林 直樹*; 直井 洋介; 田崎 真樹子; 千崎 雅生
核物質管理学会(INMM)日本支部第30回年次大会論文集(CD-ROM) , 9p.(2009) ; (JAEA-J 07160)
 原子力の平和利用と核不拡散の両立を目指した核燃料供給保証(以下、供給保証)について国際的な議論が展開されている。供給保証は、新興の原子力利用国等への核燃料供給が政治的な理由により途絶された場合に、IAEAを中心としたシステムにより、核燃料を臨時的に供給しようという、いわば、保険的なシステムである。現在の供給保証論議は、IAEA事務局長の論文を発端とし、米国の17.4tのHEUを希釈し供給保証に提供する提案,米国のNTIの提案,日本のIAEA核燃料供給登録システム提案,露国の国際ウラン濃縮センター提案等がある。供給保証に関する国際的な議論を促進するために、日本提案をベースとした供給保証システムについて検討し、供給保証に必要な追加的なコストと所要期間の想定を行うなど、より現実的なシステムの提案を試みた。

38000592
NDAによる高濃度プルトニウム溶液中のプルトニウム量直接測定技術にかかわる適用性調査検討; アドバンスド溶液測定・監視システム(ASMS)
中村 仁宣; 高谷 暁和; 向 泰宣; 細馬 隆; 吉元 勝起; 田村 崇之*; 岩本 友則*
核物質管理学会(INMM)日本支部第30回年次大会論文集(CD-ROM) , 9p.(2009) ; (JAEA-J 07161)
 JNFLとJAEAは2007年より共同でASMSの開発に着手した。その目的は、主要な槽内の高濃度プルトニウム溶液中のPu量をNDAにて直接測定する技術の確立である。それにより、ASMSはPu量の直接測定や連続監視が可能となり、中間在庫検認(IIV)等におけるサンプリングや破壊分析の代替となり、安全維持を目的としたプロセス監視にも対応できる。その不確かさについては、NDAにおいて部分欠損検知可能なレベルに相当する6%以下を目標とした。ASMSの測定原理はMOX粉末のものを応用できるが、溶液の特性上、アルファ値の変動を考慮する必要がある。このため、簡易な測定システムにより、硝酸プルトニウム溶液を用いた校正試験をプルトニウム転換技術開発施設(PCDF)において行った。その結果、MCNP計算値と実測値(Singles及びDoubles計数率)に良い一致を得ることができた。本発表においては、解決すべき課題,ASMSの利点や検出器のセットアップ、並びに予備校正の評価結果を示す。

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