学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2010年8月


38000991
Modification of a Porous Sheet (MAPS) for the high-performance solid-phase extraction of trace and ultratrace elements by radiation-induced graft polymerization
浅井 志保; 三好 和義*; 斎藤 恭一*
Analytical Sciences 26(6), p.649-658(2010) ; (JAEA-J 07606)
 本総説は、まず、一般的な固相抽出材料の基本的性質及び用途について説明し、その後、高効率な固相抽出材料設計のために考案した新規なシート状多孔体の作成法及びその性能評価について述べたものである。シート状多孔体は、放射線グラフト重合法を軸とする一連の化学反応によって細孔表面を修飾する。基材である高分子多孔性シートに放射線を照射してモノマーと接触させることによって細孔表面に高分子鎖を付与する。さらにその高分子鎖にイオン交換基やキレート形成基を導入することによって、細孔の表面に金属選択性を与える。得られたシートは、大きな流路径を持つことから高い処理能力を実現し、かつ高密度に官能基を配置できるために優れた吸着容量を達成できるという、従来材料にはない構造上の優位性を示す。模擬試料を用いた試験を例に、材料の基本性能を紹介するとともに、海水中の微量金属捕集などの種々の適用例についても述べた。

38000992
Computational fluid dynamic analysis of core bypass flow phenomena in a prismatic VHTR
佐藤 博之; Johnson, R.*; Schultz, R.*
Annals of Nuclear Energy 37(9), p.1172-1185(2010) ; (JAEA-J 07607)
 ブロック型高温ガス炉の炉心設計手法の開発を目的として、汎用流体解析ソフトウェアFLUENTを用い、隙間幅,出力分布,乱流モデル及び燃料体寸法をパラメータとした炉心バイパス流れ現象の流体解析評価を行った。解析結果から、想定される最大隙間幅を有する燃料体は隙間幅を有しない燃料体に比べて、燃料体内の温度差及び各流路における冷却材出口の最大温度差が約4倍に増加することを明らかにした。また、熱膨張や照射による収縮などに起因する燃料体の寸法変化が燃料温度に与える影響が大きいことを明らかにした。本結果から、今後、ブロック型高温ガス炉炉心設計に熱流体解析を十分適用できる目途を得た。

38000993
Comparison of Monte Carlo calculation methods for effective delayed neutron fraction
長家 康展; 千葉 豪; 森 貴正; Irwanto, D.*; 中島 健*
Annals of Nuclear Energy 37(10), p.1308-1315(2010) ; (JAEA-J 07608)
 実効遅発中性子割合(βeff)をモンテカルロ法で評価する手法が提案されており、その計算精度を調べた。1つはMeulekampらによって提案された手法で、もう1つは名内らによって提案された手法である。どちらの手法も小林によって定義されたインポータンス関数で重み付けられた遅発中性子割合であることが明らかにされた。これらの手法の計算精度について、簡単な形状のベンチマーク問題について調べた。その結果、Meulekampの方法は通常のβeff値と比べ、高速炉体系に対して約5%の差を生じ、名内の方法は裸の高速炉体系についてはよい一致を示すが、反射体つき高速炉体系について約10%の差を生じることがわかった。どちらの手法とも、熱体系について約2%以内の精度で通常のβeff値と一致することがわかった。

38000994
Biomimetic control based on a model of chemotaxis in Escherichia coli
辻 敏夫*; 鈴木 芳代; 滝口 昇*; 大竹 久夫*
Artificial Life 16(2), p.155-177(2010) ; (JAEA-J 07609)
 In this paper, we selected the bacterium Escherichia coli as a target organism because it has a relatively simple molecular and organizational structure, which can be characterized using biochemical and genetic analyses. We particularly focused on a motility response known as chemotaxis and developed a computer model that includes not only intracellular information processing but also motor control. After confirming the effectiveness and validity of the proposed model by a series of computer simulations, we applied it to a mobile robot control problem. This is probably the first study showing that a bacterial model can be used as an autonomous control algorithm.

38000995
Estimation of 222Rn concentration in the lower troposphere during precipitation using wet scavenging model for its decay products
竹安 正則; 武石 稔
Asian Journal of Atmospheric Environment 4(1), p.20-25(2010) ; (JAEA-J 07610)
 大気中に存在する222Rn壊変生成物は、降雨時に地表に沈着し、環境γ線線量率を変動させる。以前の研究において、大気中222Rn壊変生成物の降雨洗浄モデルを構築した。本研究では、この降雨洗浄モデルと環境γ線線量率の変動データを用いて、雨雲大気中222Rn濃度を推定することを試みた。さらに、茨城県東海村で大きな環境γ線線量率変動が観測された降雨時での大気中222Rnの起源について考察した。大きなγ線線量率変動が観測された降雨時に対して推定された雨雲大気中222Rn濃度は、これまでに日本上空で測定された濃度より比較的高い値であった。茨城県東海村の上空を出発点として後方流跡線解析を行った。その結果、高い線量率上昇が観測された降雨イベントでの上空大気中の222Rnの起源は、中国の北東地区と推定された。以上のことから、環境γ線線量率が大きく変動する降雨時の上空大気中222Rnは、大陸性気団により中国北東地区から輸送されてきたものであることが明らかとなった。

38000996
Laboratory measurements of infrared absorption spectra of hydrogen-ordered ice; A Step to the exploration of ice XI in space
荒川 雅; 鍵 裕之; 深澤 裕
Astrophysical Journal; Supplement Series 184(1), p.361-365(2009) ; (JAEA-J 07611)
 研究用原子炉から発する中性子を用いて氷中の水素の配置を研究し、通常の氷とは異なり、水素の配置が秩序化した氷(氷XIと呼ばれる)が宇宙に存在するとの仮説を提案している(Fukazawa et al. ApJ 2006)。この提案はサイエンス誌や新聞,テレビで報道されるなど一般にも関心が広がったが、仮説の実証方法ははっきりとしていなかった。今回、私たちは薄膜状の氷XIを作り、その赤外吸収のスペクトルを測定することに成功した。その結果、スペクトルに見える複数のピークが通常の氷より鋭くなることを発見した。天体望遠鏡や探査機によって、天王星から冥王星の距離に存在する氷の赤外スペクトルを測定すれば、氷XIが見つかると予測した。氷XIはプラスの水素が揃ったことで強誘電体の性質があり、電気的に強い力をもって結合する。もし赤外線の測定で宇宙に氷XIの存在が確認されたら、惑星の形成や物質の進化の過程に氷の電気的な力が大きく働いたといえる。現在、J-PARCの強い中性子ビームを用いて、秩序化の程度と赤外スペクトルの変化の関係を定量化しており、太陽系に一体どの程度の氷XIが存在するのか、その正確な量を観測と探査から解明していく。

38000997
Molecular dynamics free energy calculations to assess the possibility of water existence in protein nonpolar cavities
及川 雅隆; 米谷 佳晃
Biophysical Journal 98(12), p.2974-2983(2010) ; (JAEA-J 07612)
 Are protein nonpolar cavities filled with water molecules ? Though many experimental and theoretical investigations have been done, particularly for the nonpolar cavity of IL-1β, the results are still conflicting. To study this problem from the thermodynamic point of view, we calculated hydration free energies of four protein nonpolar cavities by means of the molecular dynamics thermodynamic integration method. Besides the IL-1β cavity, we selected the three largest nonpolar cavities from the structural database, in view of the simulation result of Vaitheeswaran et al. [Proc. Natl. Acad. Sci. (2004)] showing that larger nonpolar cavities are more expected to be hydrated. The calculated free energy changes were all positive; hydration of the nonpolar cavities was energetically unfavorable for all four cases. Because hydration of smaller cavities should happen more rarely, we conclude that existing protein nonpolar cavities are not likely to be hydrated. Although a possibility remains for much larger nonpolar cavities, such cases are not found experimentally. We present a hypothesis to explain this: hydrated nonpolar cavities are quite unstable and the conformation could not be maintained.

38000998
Molecular and crystal structures of plutonyl(VI) nitrate complexes with N-alkylated 2-pyrrolidone derivatives; Cocrystallization potentiality of UVI and PuVI
Kim, S.-Y.; 鷹尾 康一朗*; 芳賀 芳範; 山本 悦嗣; 川田 善尚; 森田 泰治; 西村 建二*; 池田 泰久*
Crystal Growth & Design 10(5), p.2033-2036(2010) ; (JAEA-J 07614)
 N-シクロヘキシル-2-ピロリドン(NCP)及びN-ネオペンチル-2-ピロリドン(NNpP)の硝酸プルトニル錯体を調製し、単結晶X線回折によりそれらの分子及び結晶構造を決定した。得られた化合物はいずれもPuO2(NO3)2(NRP)2(NRP=NCP, NNpP)という同様の組成を有しており、これは先に報告したU(VI)錯体とも共通する。各々のPuO2(NO3)2(NRP)2錯体は、エカトリアル面上トランス位に配置された2つのNRP及び2つの硝酸イオンから成る六方両錐型構造といった硝酸アクチニル(VI)錯体に特徴的な構造的性質を示した。PuO2(NO3)2(NCP)2とUO2(NO3)2(NCP)2の格子定数と分子構造は、UがPuに置換されているだけにもかかわらず、完全に異なる。一方、PuO2(NO3)2(NNpP)2とUO2(NO3)2(NNpP)2との比較では構造的性質は完全に一致する。以上の知見は、結晶工学の観点からわれわれの提案する使用済核燃料の高選択・制御性沈殿剤による高度化沈殿法再処理システムにおける沈殿剤として適するNRPの選択基準の一つとなり得る。

38000999
Surface plasmon excitation at topmost surface in reflection high-energy positron diffraction
深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦*
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology (Internet) 8, p.190-193(2010) ; (JAEA-J 07615)
 高速陽電子ビームによる結晶最表面での表面プラズモンの励起過程を調べるために、Si(111)-7×7, Al(111)-1×1, Bi(001)-1×1表面からの全反射陽電子のエネルギー損失スペクトルを測定した。全反射条件下における陽電子エネルギー損失スペクトルには、表面プラズモンの多重励起に伴う多数の損失ピークが観測された。ポアソン分布を用いたエネルギー損失スペクトルの解析から、全反射陽電子による表面プラズモンの平均励起回数は2.4-2.8回であることがわかった。さらに、ほぼ同一の実験条件で、電子によるエネルギー損失スペクトルも測定した。解析の結果、電子による表面プラズモンの平均励起回数は1.4-1.8回であることがわかった。陽電子は、全反射の効果により、電子と比較して約2倍の数の表面プラズモンを励起できることがわかった。また、Si(111)-7×7, Al(111)-1×1, Bi(001)-1×1表面の一連の測定から、表面プラズモンの励起過程に関して、元素依存性はほとんどないことが確かめられた。

38001000
Application potentiality of ion-beam mutation breeding technology in biofertilizer/biopesticide
鳴海 一成
FNCA Biofertilizer Newsletter (8), p.4-6(2010) ; (JAEA-J 07617)
 Mutation breeding is one of the valuable breeding techniques. Ionizing radiation, especially γ-rays, has been used for several decades to produce new plant varieties. In addition, mutation-breeding technology using ion beam irradiation has undergone major developments in recent years, and has been applied to various bioresources such as ornamental plants, crops and industrial microbes. Ion-beam mutation-breeding technology will be a promised way to produce biofertilizer/biopesticide inoculants for the next generation. Several collaborative studies have started to improve the phenotype of inoculants using the ion beam irradiation facility at Japan Atomic Energy Agency (JAEA).

38001001
Association of actinides with microorganisms and clay; Implications for radionuclide migration from waste-repository sites
大貫 敏彦; 香西 直文; 坂本 文徳; 尾崎 卓郎; 南川 卓也; 鈴木 義規; Francis, A. J.*
Geomicrobiology Journal 27(3), p.225-230(2010) ; (JAEA-J 07621)
 重元素と微生物との相互作用の機構解明研究で得られた以下の成果を紹介する。(1)Pu(IV), Th(IV), Eu(III)-DFO錯体の微生物への吸着,(2)Eu(III)-リンゴ酸錯体の微生物による分解。

38001002
Effects of citrate, NTA, and EDTA on the reduction of U(VI) by Shewanella putrefaciens
鈴木 義規; 田中 万也; 香西 直文; 大貫 敏彦
Geomicrobiology Journal 27(3), p.245-250(2010) ; (JAEA-J 07622)
 U(VI)-有機酸錯体を含む嫌気性培地でShewanella putrefaciensを培養し、培地中のUの酸化状態変化や生じた沈澱を調べた。比較的錯形成の弱いU(VI)-有機酸錯体(酢酸,アジピン酸)では、U(VI)は速やかにU(IV)に還元され、ウラニナイトの微粒子が形成された。比較的錯形成の強いU(VI)-有機酸錯体(シュウ酸,酒石酸,クエン酸)では、U(VI)はU(IV)に還元され、可溶性のU(IV)-有機酸錯体を形成した。以上の結果から、U(VI)-有機酸錯体の強さがShewanella putrefaciensによるU(VI)の還元に影響する可能性があることが示唆された。

38001003
Recent progress of the design activity for the poloidal field coil system in JT-60SA
土屋 勝彦; 木津 要; 村上 陽之; 淺川 修二; 倉持 勝也; 吉田 清; Tomarchio, V.*
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 20(3), p.525-529(2010) ; (JAEA-J 07623)
 JT-60SA装置を構成する超伝導コイルシステムのうち、中心ソレノイドと平衡磁場(EF)コイルからなるポロイダル磁場(PF)コイルシステムは日本が担当する。本コイルシステムに関する調達取り決めが、昨年末日欧間で合意され、本格的な建造フェイズに入った。この合意にあたっては、PFコイルの基本構造について、解析結果を根拠として、その成立性を確認する文書を添付しているが、実機の製作にあたっては、より合理化された構造となることが、製造のコスト及び工程面から求められている。本学会においては、ポロイダル磁場コイルシステムのうち、最も速く製造すべきEF4コイルの支持構造について、より合理化した構造を案出し、その成立性も確認した結果を報告する。また、これらPFコイルが設置されるトロイダル磁場コイルの最新の構造解析結果をふまえ、TFコイル運転時の変形がPFコイルの支持構造に及ぼす影響を考慮し、支持構造の最適化を進めていった結果について、TFコイルの影響を最も受けるEF1コイル、及びTFコイル設置前に製造すべきコイルの中でTFコイルの影響が最大となるEF6コイルを具体例に挙げて発表する。

38001004
A New method for isotope ratio measurement of uranium in trace amount by thermal ionization mass spectrometry; The Continuous heating method
鈴木 大輔; 國分 陽子; 桜井 聡; Lee, C. G.; 間柄 正明; 井口 一成*; 木村 貴海
International Journal of Mass Spectrometry 294(1), p.23-27(2010) ; (JAEA-J 07625)
 サブピコグラムから数十ピコグラムのウランの同位体比を精確に測定するために、表面電離型質量分析装置による新しい同位体比測定法、「連続昇温法」を開発した。本法は、試料が蒸発している間すべてのシグナルを測定するが、その中で高いシグナルのみを同位体比算出に利用する。それに加えて、測定条件及び同位体比算出法を標準化することにより、試料量や測定者の経験によらず、高い再現性で分析できる。さらに、質量分別効果の正確な補正も可能である。同位体標準試料の235U/238U比を、本法及びこれまで使われていた従来法、トータルエバポレーション法で測定したところ、試料量が多い場合は、3つの手法の測定結果に差は見られないが、サブピコグラムの試料を測定した場合、本法の測定結果が最も精確であった。本法は、極微量の試料の同位体比測定法として、さまざまな分野でその適用が期待される。

38001005
Distinct element analysis for Class II behavior of rocks under uniaxial compression
清水 浩之*; 小山 倫史*; 石田 毅*; 千々松 正和*; 藤田 朝雄; 中間 茂雄
International Journal of Rock Mechanics and Mining Sciences 47(2), p.323-333(2010) ; (JAEA-J 07626)
 In this study, the radial strain control method for uniaxial compression tests was introduced in the Distinct Element Method (DEM) codes and the Class II behavior of rocks was simulated. The microscopic parameters used in the DEM models were determined based on laboratory uniaxial compression tests and Brazilian tests carried at Äspö Hard Rock Laboratory, Sweden. The numerical simulation results show good agreement with the complete stress-strain curves for Class II obtained from the laboratory experiments. These results suggest that the DEM can reproduce the Class II behavior of the rock successfully. The mechanism of the Class II behavior was also discussed in detail from the microscopic point of view. The loading condition and microscopic structure of rocks will play an important role for the Class II behavior.

38001006
Electro-deposition behavior of minor actinides with liquid cadmium cathodes
小藤 博英; 福嶋 峰夫; 北脇 慎一; 明珍 宗孝; Kormilitsyn, M. V.*; 寺井 隆幸*
IOP Conference Series; Materials Science and Engineering 9, p.012010_1-012010_8(2010) ; (JAEA-J 07627)
 Transuranic elements would be electro-deposited simultaneously with liquid cadmium cathode (LCC) and be decontaminated from fission products (FP) dissolved in molten 3LiCl-2KCl in the electrorefining step of the metal electrorefining process. Some lab-scale experiments of electrolysis were carried out with uranium (U), plutonium (Pu) and minor actinides elements (MA) in order to evaluate the performance of LCC. As the results of experiments, it was confirmed that neptunium (Np), americium (Am) and curium (Cm) could be recovered with Pu into LCC by the electrolysis operation. The separation factors of MA vs. Pu were estimated to be about 0.7 to 2.5.

38001007
29Si-NMR study of magnetic anisotropy and hyperfine interactions in the uranium-based ferromagnet UNiSi2
酒井 宏典; Baek, S.-H.*; Bauer, E. D.*; Ronning, F.*; Thompson, J. D.*
IOP Conference Series; Materials Science and Engineering 9, p.012097_1-012097_7(2010) ; (JAEA-J 07628)
 UNiSi2は斜方晶CeNiSi2型結晶構造を持つキュリー温度95Kの強磁性体である。U原子の二重層がb軸方向に積層したような結晶構造を持ち、Siサイトには局所的に斜方対称性を持つ2つのサイトが存在する。磁化測定から、c軸方向が磁気容易軸であり、b軸が困難軸である。粉末試料,磁場配向粉末試料に対して29Si核NMR測定を行い、2つのSiサイトのナイトシフトを見積もった。その結果、超微細結合定数は等方的であり、ナイトシフトの異方性はバルク帯磁率の異方性に対応していることがわかった。核スピン緩和率測定では、緩和率が温度に対して一定な振る舞いをしていて、この系の5f電子が局在的であることを示唆した。

38001008
Study of ion-beam-induced damage and luminescence properties in terbium-implanted AlGaN
Park, J.-H.*; 若原 昭浩*; 岡田 浩*; 古川 雄三*; Kim, Y.-T.*; Chang, H.-J.*; Song, J.*; Shin, S.*; Lee, J.-H.*; 佐藤 真一郎; 大島 武
Japanese Journal of Applied Physics 49(3), p.032401_1-032401_5(2010) ; (JAEA-J 07629)
 Terbium (Tb) ions were implanted into Al0.35Ga0.65N epitaxial layers at room temperature to investigate ion-beam-induced damage and luminescence properties at various doses of 1× 1012 - 2.8× 1016 Tb/cm2. Rutherford backscattering spectrometry/channeling (RBS/channeling) reveals that on-beam-induced damage level steeply increases and that the damage cannot be fully recovered even after rapid thermal annealing at 1100 ℃, when the dose exceeds 5× 1014 Tb/cm2. On the other hand, cathodoluminescence (CL) intensity related to Tb3+ transitions increased initially and saturated above a dose of 1× 1013 Tb/cm2. The results suggest that Tb-related luminescence properties are much susceptible to defects and nonradiative defects, namely, Tb-defect complexes, are formed under low-dose conditions even at a very low structural defect density.

38001009
Modeling of radiative properties of Sn plasmas for extreme-ultraviolet source
佐々木 明; 砂原 淳*; 古河 裕之*; 西原 功修*; 藤岡 慎介*; 西川 亘*; 小池 文博*; 大橋 隼人*; 田沼 肇*
Journal of Applied Physics 107(11), p.113303_1-113303_11(2010) ; (JAEA-J 07631)
 半導体露光技術用のEUV光源のためのSnプラズマの原子過程の研究を行った。Snの原子モデルをHULLACコードによって計算した原子データをもとに構築した。EUV発光に寄与するSnイオンの共鳴線,サテライト線を同定した。5価から13価までのイオンの4d-4f, 4p-4d遷移の波長を、電荷交換分光法との比較,EUV光源の発光スペクトルや、オパシティ計測の結果との比較により検証した。開発したモデルは、典型的なEUV光源の発光スペクトルをよく再現することを確認した。発光に寄与するイオン種とその励起状態をすべて取り入れた衝突輻射モデルを構築し、輻射流体シミュレーションで用いる、プラズマの輻射放出・吸収係数の計算を行った。

38001010
Seasonal variation in serum lipid levels in Japanese workers
亀崎 文彦; 園田 信成*; 友常 祐介; 湯中 弘美; 尾辻 豊*
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis 17(6), p.638-643(2010) ; (JAEA-J 07632)
 Seasonal variation in serum lipid levels in Japanese population remains unclear. The aim of this study was to determine whether the variation in lipid levels exists in Japanese workers. We investigated a total of 1,331 employees in our institution (1,192 men, 44±10 years; 139 women, 38±11 years) who underwent health checkups in both June (summer) and December (winter), 2008. Serum levels of low-density lipoprotein (LDL) and high-density lipoprotein (HDL) cholesterol, and triglyceride were significantly higher in winter than in summer (129.1±31.2 mg/dL versus 125.2±30.2 mg/dL, p < 0.0001; 65.9±16.8 mg/dL versus 63.5±16.1 mg/dL, p <0.0001; 110.4±67.5 mg/dL versus 107.5±70.4 mg/dL, p < 0.05; respectively), although the ratio of LDL to HDL cholesterol was comparable (2.11±0.81 in summer versus 2.12±0.81 in winter). Frequency of study subjects diagnosed hypercholesterolemia defined as LDL cholesterol ≥140 mg/dL was significantly higher in winter than in summer (34.5% versus 30.9%, p < 0.0001). In Japanese workers, we demonstrated that there is seasonal variation in serum lipid levels and prevalence of hypercholesterolemia. This result indicates that we have to give careful consideration to the season of blood sampling in clinical diagnosis and management decisions of hypercholesterolemia.

38001011
Onsager-Machlup action-based path sampling and its combination with replica exchange for diffusive and multiple pathways
藤崎 弘士*; 志賀 基之; 木寺 詔紀*
Journal of Chemical Physics 132(13), p.134101_1-134101_8(2010) ; (JAEA-J 07633)
 化学反応に対し、起伏の多いエネルギー面上の複雑な反応経路を探索する方法として、Onsager Machlupの作用をもとにした新たなサンプリング法を提案する。また、推測した経路の初期値でトラップされてしまうことを防ぐために有効な手段として、レプリカ交換法と組合せる。簡単な二次元のモデル系に適用することを通して、この方法の原理とアルゴリズムの実証を行う。

38001012
Efficient ab initio path integral hybrid Monte Carlo based on the fourth-order Trotter expansion; Application to fluoride ion-water cluster
鈴木 机倫*; 立川 仁典*; 志賀 基之
Journal of Chemical Physics 132(14), p.144108_1-144108_7(2010) ; (JAEA-J 07634)
 分子シミュレーションの1つの有効な新手法として、四次トロッター分解に基づいた効率的な経路積分ハイブリッドモンテカルロ法(PIHMC)を提案する。すなわち、二次の有効的な力を用いて短い試行トラジェクトリを生成することで計算のかかるヘシアン行列を避けつつ、最終的なアクセプタンスは四次の有効ポテンシャルで決めるというものである。計算効率について、標準的な2次,4次のPIHMCや経路積分分子動力学法(PIMD)と比較する。この方法を用いて、室温でのフッ素水イオン系の第一原理PIHMC計算を行い、その幾何学的同位体効果について焦点を当てて議論する。

38001013
Synthesis and properties of ceramic fibers from polycarbosilane/polymethylphenylsiloxane polymer blends
北 憲一郎; 成澤 雅紀*; 中平 敦*; 間渕 博*; 杉本 雅樹; 吉川 正人
Journal of Materials Science 45(13), p.3397-3404(2010) ; (JAEA-J 07635)
 ポリカルボシラン(PCS)にポリシロキサンの1種であるポリメチルフェニルシロキサン(PMPhS)を混合したポリマーブレンドを用いて、炭化ケイ素(SiC)系繊維を作製した。PCSに対してPMPhSは30mass%まで相溶し、そのポリマーブレンドは513K以上で加熱すると透明な液状ポリマーと化した。また、PMPhSを混合すると軟化点も低下した。PCSへのPMPhSの15mass%混合が、平均直径14.4μmの細径高分子繊維を得るために適した条件であり、1273Kで焼成した橋かけ高分子繊維のセラミック収率は85.5%であった。細径であるにもかかわらず、引張強度は1273K焼成後で0.78GPaを示すこのSiC系繊維を、さらに1673∼1773Kで焼成した場合、ナノ結晶粒からなる特有のミクロ構造を持つ多孔質なSiC系繊維が得られ、その表面積は70∼150m2/gであった。

38001014
Annealing effects on hydrogen ordering in KOD-doped ice observed using neutron diffraction
荒川 雅*; 鍵 裕之; 深澤 裕
Journal of Molecular Structure 972(1-3), p.111-114(2010) ; (JAEA-J 07636)
 これまでの研究では、氷XIの核形成は65K以下で起こると考えられてきた。しかし、本研究では、過去に氷XIを経験した試料においては、これまでに報告されてきたよりも高い温度(70K, 72K)でXIの成長が観測された。水素秩序化を経験したことのある氷には、110Kにおいても微小(数nm以下)な水素秩序化領域が存在し、それがテンプレートとなり、XIの成長が起こったことが示唆された。本成果は、普通の氷Ihの中の短周期の水素秩序化構造の存在を示す、極めて重要な発見である。

38001015
Analytical validation of uncertainty in reactor physics parameters for nuclear transmutation systems
菅原 隆徳; 西原 健司; 辻本 和文; 佐々 敏信; 大井川 宏之
Journal of Nuclear Science and Technology 47(6), p.521-530(2010) ; (JAEA-J 07643)
 核変換システムについて、計算結果として得られる炉物理パラメータの信頼性を確認するため、JENDL-3.3に整備された共分散データにより計算される不確かさと、モンテカルロ計算において核データライブラリを変えた場合の炉物理パラメータの差との比較を行った。核変換システムとしては、加速器駆動未臨界システム(ADS)とマイナーアクチノイド装荷高速炉を対象とした。その結果、JENDL-3.3の共分散データによって計算された不確かさは、核データライブラリ間の差よりも小さく、不確かさを過小評価している可能性があるとの結果を得た。この不一致の理由として、JENDL-3.3の主要な核種・反応の共分散データは、各核データライブラリ間の断面積の相対差よりも、一部過小評価している点が挙げられる。核変換システムの炉物理パラメータの不確かさの議論を行うためには、積分実験による検証を行い、併せて共分散データに基づく不確かさの利用方法について議論をする必要がある。

38001016
Interpolation and Extrapolation method to analyze irradiation-induced dimensional change data of graphite for design of core components in Very High Temperature Reactor (VHTR)
柴田 大受; 國本 英治*; 衛藤 基邦*; 塩沢 周策; 沢 和弘; 奥 達雄*; 丸山 忠司*
Journal of Nuclear Science and Technology 47(7), p.591-598(2010) ; (JAEA-J 07644)
 超高温ガス炉(VHTR)の炉内には、黒鉛構造物が用いられる。著者らは、HTGRやVHTRの黒鉛構造物についての技術的検討を行い、日本原子力学会「高温ガス炉黒鉛構造物規格化のための調査検討」特別専門委員会での議論を経て、黒鉛構造物の規格原案として取りまとめた。その中で、黒鉛構造物の設計に用いるIG-110黒鉛の寸法変化を含む照射特性変化に関して、H-451黒鉛,ATR-2E黒鉛の照射データを活用し、高速中性子照射量6×1026n/m2(E>0.1MeV)までの範囲で、IG-110黒鉛の既存の照射データの内外挿により評価曲線を導出することに成功した。本研究では、照射寸法変化データの2次式の内外挿方法の有効性について、3次式との比較検討を行った。その結果、現時点で利用可能なIG-110黒鉛については、提案した2次式による内外挿方法が妥当であることを明らかにした。

38001017
Development of advanced fuel handling machine for JSFR
加藤 篤志; 近澤 佳隆; 小幡 宏幸*; 小竹 庄司*
Journal of Nuclear Science and Technology 47(7), p.642-651(2010) ; (JAEA-J 07645)
 ループ型ナトリウム冷却大型炉の炉容器のコンパクト化を実現するために、狭隘な炉上部機構のスリット内を移動して燃料交換をする燃料交換機の実規模試験装置を製作し、要求される位置精度などが得られることを確認した。また、実機設計に資するためのモデルの改良を実施し、位置精度及び挙動解析が可能である見込みを得た。

38001018
Sensitivity analysis of fission product concentrations for light water reactor burned fuel
千葉 豪; 奥村 啓介; 大泉 昭人*; 齊藤 正樹*
Journal of Nuclear Science and Technology 47(7), p.652-660(2010) ; (JAEA-J 07646)
 核分裂生成物生成量(FPC)の正確な予測のために必要な核データを特定するため、燃焼感度理論に基づきFPCの感度解析を行った。着目した核種は、燃焼度クレジットに重要となる12の核分裂生成物とした。本研究では、UO2セル及びMOXセルのいずれに対しても、FPCの予測に重要となる核データを特定した。大部分のFPCに対する感度においてはUO2セルとMOXセルとで大きな差異は観察されなかったが、Gd-155など幾つかのFP核種において燃料の違いによる大きな差異が見られた。この原因として、U-235とPu-239の核分裂収率の差,燃料間の中性子束のエネルギースペクトルの差が挙げられることを示した。

38001019
First observation of picosecond kinetics of hydrated electrons in supercritical water
室屋 裕佐*; Lin, M.; De Waele, V.*; 籏野 嘉彦; 勝村 庸介; Mostafavi, M.*
Journal of Physical Chemistry Letters 1(1), p.331-335(2010) ; (JAEA-J 07647)
 ピコ秒の時間分解能で実験可能な超臨界水のパルスラジオリシス実験システムを完成させいた。水和電子の挙動を近赤外領域で50ピコ秒から6ナノ秒の時間領域で測定した。超臨界水中の水和電子は密度に依存して500ピコ秒より短い時間で減衰する。この減衰は水和電子とH3O+との反応が支配的である。

38001020
Temporal evolutions of electron temperature and density with edge localized mode in the JT-60U divertor plasma
仲野 友英; 久保 博孝; 朝倉 伸幸
Journal of Physics B; Atomic, Molecular and Optical Physics 43(14), p.144014_1-144014_7(2010) ; (JAEA-J 07649)
 ELMが発生している間の電子温度と電子密度の変化を20kHzで測定した3本の中性ヘリウムの発光線の強度比より定めた。電子温度と電子密度はELMの指標であるDα発光線が最大となる450μs前から増加を始める。Dα発光線が最大となる時刻で電子温度は低下し始め、一方で電子密度はさらにその300μs後から低下し始める。電子温度の時間的な変化はELMによってダイバータへ輸送されたプラズマによるダイバータプラズマの加熱(温度上昇)と、再放出された中性粒子を電離するためのエネルギー消費(温度低下)によると解釈される。電子密度の時間的な変化は中性粒子の電離によって供給される電子によって決まる。

38001021
X-ray imaging of radioresistant Deinococcus radiodurans
竹本 邦子*; 鳴海 一成; 佐藤 勝也; 難波 秀利*; 木原 裕*
Journal of Physics; Conference Series 186, p.012096_1-012096_3(2009) ; (JAEA-J 07650)
 Soft X-ray microscope is expected to be one of the promising tools for observing living cells and tissues with nm order resolution. However, in order to observe living cells, there are several problems to be solved. The most serious problem is radiation damage. Deinococcus radiodurans has been known to withstand radiation levels up to 1,000 times than that would kill normal human cells. Soft X-ray microscope was applied to the visualization of D. radiodurans. The first X-ray microscopic observation of air-dried cells at room temperature was successfully performed. In combination of antifreeze solution and subzero temperature, along with carbon window, the cell observation will be more closely to the living condition.

38001022
Quantum criticality in a uranium heavy fermion system revealed with NMR spin-spin relaxation
神戸 振作; 酒井 宏典; 徳永 陽; 松田 達磨; 芳賀 芳範; 安岡 弘志; 中堂 博之; Walstedt, R. E.*
Journal of Physics; Conference Series 200, p.012076_1-012076_4(2010) ; (JAEA-J 07651)
 重い電子系の量子臨界挙動を解明するため、NMRスピン-スピン緩和におけるガウス型緩和率1/T2Gの利用を提案する。スピン-格子緩和率1/T1は動的帯磁率と関係しているが、1/T2Gは静的帯磁率と関係している。この2つの量を組合せた量であるT1T/T2G2が量子臨界の解明に有効であることがわかった。その例として重い電子系USn3での温度依存について議論する。

38001023
Powder X-ray diffraction study of Ne up to 240 GPa
竹村 謙一*; 綿貫 徹; 大和田 謙二; 町田 晃彦; 大村 彩子*; 青木 勝敏
Journal of Physics; Conference Series 215, p.012017_1-012017_4(2010) ; (JAEA-J 07652)
 Neの粉末回折実験を237GPaの超高圧まで行った。特に弱い200反射を観測するために、回折側にチューブクロススリットを設置し、それにより試料以外のアンビルからの散乱X線を大幅に除去することができた。超高圧状態でのNeでは回折線の111と200の位置の圧力依存性には差がみられ、超高圧状態では、大きな一軸性応力が生じていることがわかった。また、解析からは111面が最も影響されないような一軸性応力が生じていることが明らかとなった。

38001024
Structural stability of an icosahedral Cd-Yb quasicrystal and its crystalline approximant under high pressure
綿貫 徹; 佐藤 卓*; Tsai, A. P.*
Journal of Physics; Conference Series 215, p.012019_1-012019_4(2010) ; (JAEA-J 07653)
 Cd-Yb準結晶とその近似結晶、及び同型構造を持つCd-Eu合金について高圧下における構造安定性を調べた。放射光による回折実験をヘリウム圧力媒体を用いた静水圧条件下で40GPaまで行った結果、それらの正二十面体格子あるいはbcc格子が高圧でも安定であることが明らかとなった。周期,準周期によらず安定であったことは、それらを構成する原子クラスターの性質による、特に、その中心対称充填構造が低対称変形を阻害し、格子変形も生じなかったものと考えられる。

38001025
Structure and phase transition of low-dimensional metals on Si(111) surfaces studied by reflection high-energy positron diffraction
深谷 有喜; 橋本 美絵; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Journal of Physics; Conference Series 225, p.012008_1-012008_8(2010) ; (JAEA-J 07654)
 近年、原子サイズのワイヤーやシートなどの低次元構造の物性に注目が集まっている。例えば、理想的な一次元金属鎖は、パイエルス転移により、低温で金属絶縁体転移を起こす。現在では、結晶表面上への異種原子の吸着により、バルクでは見られないさまざまな一次元・二次元の超構造の作製が可能になってきている。反射高速陽電子回折は、表面敏感な表面構造解析手法である。陽電子ビームが結晶表面に対して低い視射角で入射すると、全反射を起こす。全反射条件下において、結晶への陽電子の浸入深さは約0.2nm以下となる。したがって、全反射回折時における反射強度は、最表面構造に非常に敏感なものとなる。われわれは、結晶表面上の超構造を調べるために反射高速陽電子回折装置を開発してきた。これまでに、反射高速陽電子回折装置を用いて、結晶表面上の超構造の詳細な原子配置とその相転移について調べてきた。本研究では、反射高速陽電子回折を用いることによって明らかにした、Si(111)-√3×√3-Ag表面とSi(111)-4×1-In表面における構造と相転移について報告する。

38001026
Surface plasmon excitation at metal surfaces studied by reflection high-energy positron diffraction
深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Journal of Physics; Conference Series 225, p.012009_1-012009_5(2010) ; (JAEA-J 07655)
 表面プラズモンは固体表面における電子の集団励起であり、そのエネルギーは体積プラズモンエネルギーに1/√2を乗じたものになる。通常、表面プラズモンの励起過程は、低速の電子ビームを用いて行われる。最近、反射高速電子回折を用いて、表面から反射した高速電子をエネルギー分析することにより、表面プラズモン励起の研究が行われ始めた。本研究では、反射高速陽電子回折を用い、Al(111)-1×1表面における陽電子エネルギー損失スペクトルを測定し、全反射した陽電子による表面プラズモン励起過程を調べた。陽電子エネルギー損失スペクトルには、Al(111)の表面プラズモン励起に伴う多重の損失ピークが観測された。エネルギー損失スペクトルの形状は、陽電子と電子とでは大きく異なっており、ポアソン分布を用いた解析から、全反射した陽電子による表面プラズモンの平均励起回数は2.8回であることがわかった。この値は、電子のものに比べると約2倍大きい。陽電子は、全反射を起こすことにより、表面との相互作用距離が長くなり、結果として表面プラズモンをより多く励起したと考えられる。

38001027
Doppler broadening of annihilation radiation of some single-element materials from the second to the sixth periods
河裾 厚男; 前川 雅樹; 別役 潔*
Journal of Physics; Conference Series 225, p.012027_1-012027_5(2010) ; (JAEA-J 07656)
 ドップラー拡がり測定から得られる電子運動量分布は、材料中の格子欠陥の同定において有用である。ドップラー拡がりスペクトルの解析には、精密な理論計算が必要である。従来開発された擬ポテンシャル法では、内殻近傍の波動関数の計算に問題があることが指摘されていた。この難点を回避するためには、全電子計算を行う必要がある。そこでわれわれは、Projector-Augmented Wave法を用いて、ドップラー拡がりスペクトルを計算し、実験結果との照合を行った。

38001028
Development of a spin-polarized positron source
河裾 厚男; 深谷 有喜; 前川 雅樹; 薮内 敦
Journal of Physics; Conference Series 225, p.012028_1-012028_4(2010) ; (JAEA-J 07657)
 ベータ崩壊核種から放出される陽電子は縦方向にスピン偏極している。この陽電子のスピン偏極性を今後物性研究に活用することを目的として、高強度スピン偏極陽電子源とそれを用いたスピン偏極陽電子ビームを開発する。高Q値になるほどスピン偏極率が高くなることを考慮して、本研究開発では68Ge-68Ga線源を開発する。具体的には、67Ga安定同位体の液体金属ターゲットに高エネルギープロトンビームを照射し、核反応を利用して、68Ge-68Ga線源を得る。最適な照射条件や線源カプセルの設計について報告する。

38001029
Characterization of helium bubbles in Si by a slow positron beam
前川 雅樹; 河裾 厚男
Journal of Physics; Conference Series 225, p.012032_1-012032_7(2010) ; (JAEA-J 07658)
 高ドーズのヘリウムイオン照射により、シリコン中に形成するヘリウムバブルを陽電子消滅法により観察した。へリウムイオン照射試料に対し、消滅γ線のピーク強度(Sパラメータ)の熱焼鈍挙動を測定した。照射直後では注入欠陥により上昇するSパラメータは、300℃の熱アニールではヘリウムバブルとの消滅により減少した。900℃の熱アニールではヘリウムが脱離したあとに生成するマイクロボイドによりSパラメータが大きく増大することがわかった。陽電子はヘリウムバブルやマイクロボイドなどのイオン照射誘起構造と相互作用し、その生成消滅過程を検出できることが明らかとなった。

38001030
Evaluation of stainless steel under tensile stress using positron microbeam
前川 雅樹; 薮内 敦; 河裾 厚男
Journal of Physics; Conference Series 225, p.012033_1-012033_4(2010) ; (JAEA-J 07659)
 われわれは陽電子マイクロビーム装置(最小ビーム径は1.9ミクロン)を開発した。これを用いることで微小試料の空孔型欠陥の測定が可能となる。この特性を活かし、高温・高圧・高応力下など極限状態にある試料の物性評価への応用を行っている。このような極限環境は、試料サイズが小さいほどより高精度に環境制御が可能となることが期待される。ここでは、引っ張り応力下で亀裂を生じた金属の応力印加状態での測定及び融点直下にある半導体試料の高温その場測定について計測した結果を報告する。

38001031
Free-volume structure of fluoropolymer-based radiation-grafted electrolyte membranes investigated by positron annihilation lifetime spectroscopy
澤田 真一; 河裾 厚男; 前川 雅樹; 薮内 敦; 前川 康成
Journal of Physics; Conference Series 225, p.012048_1-012048_6(2010) ; (JAEA-J 07660)
 固体高分子型燃料電池用の電解質膜はナノメートルスケールのミクロ空孔を有しており、この空孔構造が水・プロトンの輸送特性や燃料ガスの透過性,機械的特性などに影響を及ぼすと考えられる。さまざまな材料中のミクロ空孔を調べる最適な手法としては、陽電子消滅寿命(PAL)測定法が盛んに利用されている。そこで本研究では、PAL測定によって、架橋ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を基材とする放射線グラフト電解質膜のミクロ空孔構造を評価した。得られたPALスペクトルから、膜内におけるo-Psの消滅パターンは2種類あることがわかった。これらのo-Psの寿命は2.0-2.1nsと4.3-4.5nsであり、それぞれ0.28-0.30nm, 0.44-0.45nmの空孔サイズに相当する。小さい空孔はPTFEの結晶及びグラフト鎖領域に存在し、一方、大きい空孔はPTFEの非晶領域にあることが示唆された。

38001032
Current status and performance of the J-PARC accelerators
佐甲 博之
Journal of Power and Energy Systems (Internet) 4(1), p.218-233(2009) ; (JAEA-J 07661)
 J-PARCはMW級の陽子ビームによる物質生命科学,原子核・素粒子物理学,原子力工学等の多目的研究施設である。加速器系は400MeVリニアック,3GeVの速い繰り返しシンクロトロン(RCS),50GeV主リングから構成される。3GeVと数10GeVにおいてMW級のビームを生成し、かつビーム損失を機器の維持管理が可能なレベルに局所化し抑制する必要がある。このためRCSにおける水冷不要のセラミックダクト,磁性金属による高電場高周波系,リニアックでの小型ドリフトチューブ四重極電磁石等の新先端技術を開発した。リニアックは稼働率が非常に高く安定なビーム運転を継続しており、RCSでは2008年9月に0.21MWの出力を記録し、同時にビーム損失をコリメータに局所化した。線形加速器はAnnular-Coupled Structure Linacの導入により400MeVへ増強される予定である。第二期建設計画では600MeV超伝導線形加速器を導入し加速器駆動システムによる核変換技術の研究を行い、またMRを50GeVへ増強する予定である。

38001033
Quantum-beam technology; A Versatile tool for developing polymer electrolyte fuel-cell membranes
八巻 徹也
Journal of Power Sources 195(18), p.5848-5855(2010) ; (JAEA-J 07662)
 日本原子力研究開発機構では、独自の量子ビーム技術を駆使して、燃料電池に応用可能な高分子電解質膜の開発を進めている。本招待講演では、発表者らによるその活動について、(1)γ線・電子線による架橋・グラフト反応を利用した電解質膜の作製,(2)イオンビームによるナノ構造制御電解質膜の作製,(3)中性子小角散乱法による膜構造解析への展開、などのトピックをレビューする。

38001034
Magnetization process of kagome-lattice Heisenberg antiferromagnet
中野 博生*; 坂井 徹
Journal of the Physical Society of Japan 79(5), p.053707_1-053707_4(2010) ; (JAEA-J 07665)
 カゴメ格子反強磁性体の磁化過程を研究した。特に微分磁化に着目して数値対角化により解析した結果、飽和磁化の3分の1のところに生じると考えられていた磁化プラトーは、従来のものとは全く異なる新しい振る舞いをすることが判明した。われわれは、この新しい磁場誘起現象を磁化ランプと名づける。

38001035
First neutron production utilizing J-PARC pulsed spallation neutron source JSNS and neutronic performance demonstrated
前川 藤夫; 原田 正英; 及川 健一; 勅使河原 誠; 甲斐 哲也; 明午 伸一郎; 大井 元貴; 坂元 眞一; 高田 弘; 二川 正敏; 加藤 崇; 池田 裕二郎; 渡辺 昇*; 神山 崇; 鳥居 周輝*; 梶本 亮一; 中村 充孝
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 620(2-3), p.159-165(2010) ; (JAEA-J 07668)
 J-PARCの1MWパルス核破砕中性子源JSNSは、2008年5月30日、運転開始に成功した。以来、JSNSのモデレータ設計と中性子性能の優れた特徴を実証するため、幾つかの中性子実験装置において、中性子スペクトル強度,絶対中性子束,中性子パルス形状の時間構造等の測定を行ってきた。モデレータ設計の期待どおり、エネルギースペクトルの測定値にはパラ水素の特徴が明瞭に示された。0.4eV以下の中性子束測定値は設計値と±20%で一致したことから、JSNS設計計算の信頼性が示された。モデレータと中性子実験装置の適切な設計により、世界クラスの高分解能回折データ取得に成功した。さらに、大型円筒形の結合型モデレータの優れた設計により、世界クラスの高強度中性子束を提供可能であることが示された。

38001036
Measurements and Monte Carlo calculations of neutron production cross-sections at 180° for the 140 MeV proton incident reactions on carbon, iron, and gold
岩元 洋介; 佐藤 大樹; 萩原 雅之*; 八島 浩*; 中根 佳弘; 民井 淳*; 岩瀬 広*; 遠藤 章; 中島 宏; 坂本 幸夫; 畑中 吉次*; 仁井田 浩二*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 620(2-3), p.484-489(2010) ; (JAEA-J 07669)
 中性子放出強度に関する180度方向のエネルギースペクトルは、角度依存性を示すデータのベースラインとなっており、中性子生成反応機構解明で重要なデータとなっている。そこで、陽子入射による炭素,鉄及び金ターゲットの180度方向の中性子生成収率測定を大阪大学核物理研究センターRCNPで行った。測定データをPHITSコードに組み込まれている物理モデル(Bertini, ISOBAR, JQMD)と比較したところ、中重核である鉄及び金に関しては、ISOBARとJQMDによる計算結果はおおむね実験結果を再現し、特に金に関しては一致が良かった。一方炭素に関しては軽核で核構造の影響が大きく、現状の物理モデルではそれを再現できないためすべての計算結果で一致は良くなく、物理モデルの改良が必要であることがわかった。

38001037
Single-shot picosecond interferometry with one-nanometer resolution for dynamical surface morphology using a soft X-ray laser
末元 徹; 寺川 康太*; 越智 義浩; 富田 卓朗*; 山本 稔; 長谷川 登; 出来 真斗*; 南 康夫*; 河内 哲哉
Optics Express 18(13), p.14114-14122(2010) ; (JAEA-J 07670)
 波長13.9nmのプラズマ軟X線レーザーを用い、ダブルロイズ鏡配置によるポンププローブ干渉計を構築した。テストパタンを用いて空間分解能を評価した結果、二次元平面内にて1.8ミクロン,深さ方向に1nmを達成した。本装置により、時間分解能7psにて固体表面におけるナノメートルスケールの動態をシングルショットで観測することが可能である。白金薄膜に70fsレーザーを照射した際の初期におけるアブレーション過程の観測に成功した。 

38001038
High temporal and spatial quality petawatt-class Ti:sapphire chirped-pulse amplification laser system
桐山 博光; 森 道昭; 中井 善基; 下村 拓也; 笹尾 一; 田上 学*; 金沢 修平; 若井 大介*; 笹尾 文崇*; 岡田 大; 大東 出; 鈴木 将之; 近藤 修司; 近藤 公伯; 杉山 僚; Bolton, P.; 横山 淳; 大道 博行; 河西 俊一; 木村 豊秋*; 田島 俊樹
Optics Letters 35(10), p.1497-1499(2010) ; (JAEA-J 07671)
 高強度チタンサファイアCPA(チャープパルス増幅)レーザーにおいて、30μJの高エネルギーシーダーを用いることにより光パラメトリックチャープパルス増幅器(OPCPA)を低利得で動作させることで、5×10-11の高いコントラスト(主パルスに対する背景光び強度比)を達成した。また、大口径チタンサファイアレーザー増幅器に対して液体のクラッディングを初めて導入して寄生発振を抑制するとともに回折光学素子を用いた空間ビーム均質化を行いフィリングファクター(空間的なビームのピーク強度に対する平均強度)を80%程度にまで向上させることで、理論限界に近い増幅効率で30J以上の大出力を得た。

38001039
Diagnosis of quantum criticality by nuclear spin-echo decay method
神戸 振作; 酒井 宏典; 徳永 陽; 中堂 博之; Walstedt, R. E.*
Physica Status Solidi (B) 247(3), p.520-524(2010) ; (JAEA-J 07674)
 重い電子系の量子臨界挙動の診断にはNMRスピンエコー減衰法を用いて決めるスピン-スピン緩和時間が有効である。スピン-格子緩和時間と合わせて、T1T/T2G2 ∼ Tφの臨界指数φが量子臨界の起原により異なることを見いだした。重い電子系USn3のT1T/T2G2は低温で一定となり、SDW磁気不安定性による量子臨界が起きていることを見いだした。

38001040
Gradual development of Γ5g antiferromagnetic moment in the giant negative thermal expansion material Mn3Cu1-xGexN (x∼ 0.5)
樹神 克明; 飯久保 智*; 竹中 康司*; 瀧川 仁*; 高木 英典*; 社本 真一
Physical Review B 81(22), p.224419_1-224419_8(2010) ; (JAEA-J 07675)
 The anti-perovskite compound Mn3Cu1-xGexN with x ∼ 0.5 has a giant negative thermal expansion coefficient due to the magneto-volume effect near room temperature. Competition between the Γ5g and Γ4g antiferromagnetic structures around the magnetic ordering temperature could be the driving force for such a phenomenon. In order to examine this possibility, we performed neutron diffraction experiments on Mn3Cu0.5Ge0.5N and 14N nuclear magnetic resonance (NMR) experiments on Mn3Cu0.6Ge0.4N. As a reference material, we also investigated Mn3NiN, whose spin structure is represented by a linear combination of the Γ5g and Γ4g antiferromagnetic components. We conclude that in Mn3Cu1-xGexN (x ∼ 0.5), the Γ4g antiferromagnetic component is nearly absent and the competition between the Γ5g and Γ4g antiferromagnetic structures is irelevant to the giant negative thermal expansion coefficient. The Γ5g antiferromagnetic ordered moment gradually develops with decreasing temperature. This provides a thorough justification for the analysis presented in the previous letter [Iikubo et al.: Phys. Rev. Lett. 101 205901 (2008)].

38001041
Scanning SQUID microscope study of vortex polygons and shells in weak-pinning disks of an amorphous superconducting film
小久保 伸人*; 岡安 悟; 神田 晶申*; 篠崎 文重*
Physical Review B 82(1), p.014501_1-014501_7(2010) ; (JAEA-J 07676)
 メゾスケールのアモルファスMoGe薄膜での磁束量子の直接観察を走査型SQUID顕微鏡を用いて行った。このアモルファス薄膜には弱いピン止め中心が存在するので、磁束量子は準対称的な配置の多角形構造や同心殻構造を自発的にとる。系統的な測定により、磁束量子配列の磁場依存だけではなく、円盤の中心に対してどのように大きさや回転が変化するのかが明らかになった。結果は同様の試料での理論的取り扱いとよい一致を示す。ピン止め中心がひとつだけある円盤試料での一連の磁束量子配列像から、磁束量子配列の対称性を決めるユニークな対称中心線が明らかになり、これは殻構造を形成する際の磁束量子の埋まり方やマジックナンバーに影響を与えることがわかった。

38001042
Two-proton knockout from 32Mg; Intruder amplitudes in 30Ne and implications for the binding of 29,31F
Fallon, P.*; Rodriguez-Vieitez, E.*; Macchiavelli, A. O.*; Gade, A.*; Tostevin, J. A.*; Adrich, P.*; Bazin, D.*; Bowen, M.*; Campbell, C. M.*; Clark, R. M.*; Cook, J. M.*; Cromaz, M.*; Dinca, D. C.*; Glasmacher, T.*; Lee, I. Y.*; McDaniel, S.*; Mueller, W. F.*; Prussin, S. G.*; Ratkiewicz, A.*; Siwek, K.*; Terry, J. R.*; Weisshaar, D.*; Wiedeking, M.*; 米田 健一郎*; Brown, B. A.*; 大塚 孝治*; 宇都野 穣
Physical Review C 81, p.041302_1-041302_5(2010) ; (JAEA-J 07677)
 ミシガン州立大学の超伝導サイクロトロン研究所にて、不安定核32MgビームをBe標的に当てることによって30Neが生成される断面積を測定し、その脱励起γ線を測定した。30Neの4+と見られる状態を初めて観測するとともに、その断面積から、30Neの核構造の情報を引き出した。この領域で標準的な核構造計算である、SDPF-M相互作用を用いたモンテカルロ殻模型計算による分光学的因子をグラウバー模型に代入して包括的断面積を計算したところ、実験値を過大評価した。核構造の観点からその原因について考察したところ、30Ne核では従来考えられてきたよりも4粒子4空孔励起の侵入者配位が多く、それによって30Neと32Mgの中性子部分の波動関数との重なりが小さいためであると結論づけた。この増大した4粒子4空孔励起のアイデアは、フッ素同位体において中性子ドリップ線が著しく延びる現象も説明することができる。

38001043
Structure of 33Mg sheds new light on the N=20 island of inversion
Kanungo, R.*; Nociforo, C.*; Prochazka, A.*; 宇都野 穣; Aumann, T.*; Boutin, D.*; Cortina-Gil, D.*; Davids, B.*; Diakaki, M.*; Farinon, F.*; Geissel, H.*; Gernhäuser, R.*; Gerl, J.*; Janik, R.*; Jonson, B.*; Kindler, B.*; Knöbel, R.*; Krücken, R.*; Lantz, M.*; Lenske, H.*; Litvinov, Y.*; Mahata, K.*; Maierbeck, P.*; Musumarra, A.*; Nilsson, T.*; 大塚 孝治*; Perro, C.*; Scheidenberger, C.*; Sitar, B.*; Strmen, P.*; Sun, B.*; Szarka, I.*; 谷畑 勇夫*; Weick, H.*; Winkler, M.*
Physics Letters B 685(4-5), p.253-257(2010) ; (JAEA-J 07678)
 ドイツ重イオン研究所(GSI)にて、33Mg核の最外殻の中性子軌道についての情報を得ることを目的として、898A MeVの中性子過剰核33Mgビームを炭素標的に当てて1中性子を分離する反応の縦運動量分布を測定した。得られた運動量分布の幅が狭いことから、最外殻の中性子軌道は単純な殻模型的な軌道である、f7/2軌道でなく、p3/2軌道が多く混入していることがわかった。この領域をよく記述できるSDPF-M相互作用を用いたモンテカルロ殻模型計算によって束縛状態の分光学的因子を計算し、それをグラウバー模型に代入して運動量分布を計算した。その結果、これまでよく使われてきた有効相互作用による核構造計算ではf7/2成分が多すぎたが、p3/2の1粒子エネルギーを下げることによって実験値を再現することに成功した。

38001044
Application of the Bayesian analysis to the modified Rutherford equation for NTM stabilization
Urso, L.*; Fisher, R.*; 諫山 明彦; ASDEX Upgradeチーム; JT-60チーム
Plasma Physics and Controlled Fusion 52(5), p.055012_1-055012_16(2010) ; (JAEA-J 07681)
 新古典テアリングモード(NTM)の時間発展を記述する式として修正Rutherford方程式(MRE)が用いられている。MREには未定係数が含まれていて、実験データからその値を決めているが、用いた実験データの誤差が未定係数の値に与える影響は定量的には評価されてこなかった。また、どの物理量の不確定性が未定係数に大きく影響を与えるかも明確ではなかった。今回、ベイズ確率理論に基づいた新しいデータ解析手法を導入し、この評価を行った。その結果、未定係数の値の誤差を小さくするためには、磁気島幅,自発電流密度,局所的な磁気シアを正確に評価することが重要であることがわかった。また、今回解析した実験データにおいては、NTM安定化に必要な電子サイクロトロン波パワーの誤差として20%程度であることがわかった。同様の解析手法は他の物理モデルにも適用できると考えられる。

38001045
An Imaging plate technique for evaluating energy attenuation in evaporated samples with different surface conditions
西藤 文博; 小嵐 淳; 栗原 治; Kim, E.*
Radiation Protection Dosimetry 139(4), p.584-589(2010) ; (JAEA-J 07682)
 Samples were prepared by evaporating 241Am solution on stainless steel disks with well-polished and non-polished surfaces. The samples were measured with an imaging plate (IP), and then the obtained images were analyzed to evaluate the distribution of radiation sources on the prepared samples. The images for the polished disks generally showed lower uniformity in the distribution than those for the non-polished disks. However, the detailed analysis of the images revealed a poor correlation between the source distribution and the attenuation of radiation energy for the disk samples, indicating that the non-uniformity of distribution was not a primary cause of the attenuation of radiation energy for the samples. The accuracy of activity determination with the IP was also evaluated to show its applicability to the practical use for radiation controls. The IP technique gave accurate estimate of the activity for a known nuclide when the solution samples were prepared on well-polished disks by the direct evaporation method.

38001046
A Cubic-anvil high-pressure device for pulsed neutron powder diffraction
阿部 淳; 荒川 雅*; 服部 高典; 有馬 寛; 鍵 裕之; 小松 一生*; 佐野 亜沙美; 上床 美也*; 松林 和幸*; Harjo, S.; 盛合 敦; 伊藤 崇芳; 相澤 一也; 新井 正敏; 内海 渉
Review of Scientific Instruments 81(4), p.043910_1-043910_5(2010) ; (JAEA-J 07685)
 キュービックアンビルセルを中性子回折実験用に小型化し、J-PARC/MLFの工学材料回折装置「匠」で高圧下での粉末回折測定を行った。アンビル材,圧媒体の開発やバックグラウンドと試料以外からの高圧装置部品に由来する回折ピーク強度を減少させ、高圧下における試料からのきれいな回折パターンを測定することに成功した。本研究結果は、キュービックタイプの高圧実験装置とJ-PARCのパルス中性子源の組合せが、高圧下における物性研究の有力な手段になることを示している。

38001047
Early introduction core design for advanced LWR concept of FLWR to recycle Pu or TRU
大久保 努; 中野 佳洋; 内川 貞夫; 深谷 裕司
Revue Gënërale Nuclëaire (6), p.83-89(2010) ; (JAEA-J 07686)
 成熟した軽水炉技術に立脚してPuやTRUのリサイクルによって将来の持続的なエネルギー供給に貢献するため、新型軽水炉概念FLWRの提案・検討が行われている。本概念はMOX燃料を用いた稠密炉心を使用し、時系列的な2つのステップで構成されている。第1ステップは、早期導入を実現する高転換型炉概念HC-FLWRであり、軽水炉及びプルサーマル技術からのスムースな連続性の確保を目指したものである。第2ステップは、低減速軽水炉概念RMWRであり、1.0を超える高転換比を実現してPuやTRUの多重リサイクルによって長期的持続的なエネルギー供給に適するものである。重要な点は、この2つの炉心概念では整合性を有する同じ形の燃料集合体を利用する点であり、このことにより、同一の原子炉において前者から後者への移行が将来の燃料サイクル環境の状況に柔軟に対応して行うことが可能である。本論文では、FLWRの早期導入炉心の設計に重点を置きながら、FLWR研究開発における炉心設計の進め方とともに紹介する。

38001048
Detection and activity of iodine-131 in brown algae collected in the Japanese coastal areas
森田 貴己*; 丹羽 健太郎*; 藤本 賢*; 葛西 広海*; 山田 東也*; 西内 耕*; 坂本 竜哉*; 牛堂 和一郎*; 田井野 清也*; 林 芳弘*; 竹野 功璽*; 西垣 友和*; 藤原 邦浩*; 荒武 久道*; 鴨下 真吾*; 橋本 寛*; 小林 卓也; 乙坂 重嘉; 今中 哲二*
Science of the Total Environment 408(16), p.3443-3447(2010) ; (JAEA-J 07687)
 日本沿岸域で採取した褐藻からヨウ素-131(131I)が検出された。褐藻は高い濃縮係数によって放射性核種を体内に蓄積することから、放射性ヨウ素の生物指標として広く使われている。測定された褐藻に含まれる131Iの比放射能の最大値は0.37±0.010Bq/kg-wetであった。本研究で採取したすべての褐藻からセシウム-137(137Cs)も検出された。これらの海藻における131Iと137Csの比放射能には相関はなかった。137Csの比放射能は0.0034±0.00075から0.090±0.014 Bq/kg-wetの範囲であった。褐藻中137Csの低い比放射能と変動幅の少ない濃度から、137Csのソースが過去の核実験であることを示唆している。原子力発電所や核燃料再処理施設は131Iの汚染源であることは知られているが、131Iが検出された海域と核関連施設が立地する地域との関連はなかった。131Iが検出されたほとんどの海域は多くの人口を抱える大都市近傍であった。131Iは医療の放射線診断や治療にしばしば用いられる。本研究結果から、著者らは褐藻から検出された131Iのソースは、原子力発電施設起因ではなく、放射線治療行為によるものであると考えている。

38001049
割れ目が卓越する岩盤に大深度立坑を掘削する際の突発湧水リスク評価手法の提案
本島 貴之*; 尾上 博則*; 井尻 裕二*; 大津 宏康*; 三枝 博光
土木学会論文集,C 66(2), p.370-386(2010) ; (JAEA-J 07688)
 割れ目が発達した岩盤中に大深度立坑を掘削する際には、不連続面からの突発湧水リスクが大きいことが知られている。湧水リスクを割れ目ネットワークモデルを用いて算出する場合、ネットワークモデル構造の複雑さから数値解析に時間を要し、モンテカルロシミュレーションによる低頻度事象の再現性が課題となる。本研究では低頻度事象を精度よく再現するため、理論式に基づく湧水リスクの簡易評価式を提案する。また、瑞浪超深地層研究所での立坑工事を例として、同評価式を適用したシミュレーションを行い、調査した割れ目特性と湧水リスクの関係、すなわち割れ目特性のリスクに対する寄与度が定量的に把握した。これにより調査が進展して割れ目特性の確度が上がった場合の湧水リスクの変動度合いを定量的に把握することが可能となった。

38001050
きっづ光科学館ふぉとんにおけるエネルギー環境教育の展開; 地域の行政,教育機関及び学校と連携した活動
星屋 泰二; 西村 昭彦; 佐々木 和也*; 西川 雅弘*
エネルギー環境教育研究 4(2), p.49-56(2010) ; (JAEA-J 07689)
 きっづ光科学館ふぉとんは、日本原子力研究開発機構関西光科学研究所に附置され、展示,映像及び実験・工作の三つの方法から光の不思議に迫り、科学する心を育む国内外で唯一の光科学をテーマとする体験学習型科学館として運営されている。とりわけ、地域の行政,教育機関及び学校と連携して行う連携講座,サイエンス・フェスティバル,教員研修等で実施する実験・工作教室等、多種多様な活動を展開している。理解度や探究心,効果の視点から、最近実施した連携講座,実験屋台村,サイエンスウォーカーなどエネルギー環境教育活動の概要について概説する。

38001051
ハイブリッド計測による配管ヘルスモニタリング法の研究
田川 明広; 小島 史男*
保全学 9(1), p.45-50(2010) ; (JAEA-J 07694)
 本研究の目的は、2つ以上の物理量(配管表面温度,配管肉厚,配管内部流体温度)を1つの電磁超音波探触子(EMAT)を用いて測定することができる、ハイブリッドセンサの研究である。本測定方法は、それぞれの測定結果により補正し合えるため、測定精度が向上する。配管表面温度は、EMATコイルの温度変化による直流抵抗値を測定することによって測定できる。その結果、決定係数0.99以上の精度で再現できることを確認した。配管肉厚については、パルスエコー法とパルエスエコー共振法の2種類の測定方法により、10mm, 200℃でも測定できることを確認した。水温は、対向配置したEMAT間の超音波到達時間を測定することで音速を求め、音速から水温を求めることができた。

38001052
人形峠環境技術センターにおける鉱山跡措置の概要
齊藤 宏; 瀧 富弘
Journal of MMIJ 126(6), p.239-242(2010) ; (JAEA-J 07695)
 日本原子力研究開発機構人形峠環境技術センターでは、事業休止中の核原料物質鉱山である人形峠鉱山及び東郷鉱山を鉱山保安法等に基づいて管理している。これら鉱山施設に対し、鉱害防止及び放射線防護の観点から跡措置(「鉱山跡措置」)を行うこととしており、現在は、基本的な考え方の整理や基礎データの取得を行いつつ、今後の恒久的な鉱山跡措置の計画策定や設計等を行っている。対象施設は、鉱さいたい積場,露天採掘場跡地,捨石たい積場等であるが、中でも鉱さいたい積場を最優先課題としており、これまでに、必要なデータの取得,工法・進め方の検討,設計等を行っている。

38001053
高出力パルス核破砕中性子源におけるキャビテーション
二川 正敏; 田中 伸厚*
混相流 24(2), p.138-145(2010) ; (JAEA-J 07696)
 高出力核破砕パルス中性子源水銀ターゲットの開発の現状について解説した。まず、高出力化の課題を概観する。ここでは、陽子線入射により生じる圧力波が水銀中にキャビテーションを発生させること、それにより容器壁面に付加される損傷について定量的に評価した結果を示している。次に、その抑制技術として、容器材料側及び水銀側からのアプローチについて紹介する。材料側ではプラズマ炭化と窒化処理技術の開発について、水銀側では圧力波低減技術として流動水銀中への気泡注入技術、また水銀流れの効果について述べている。これらの成果に基づき、実機に装着すべく機器設計を精力的に行っている。

38001054
高速増殖原型炉「もんじゅ」の運転再開
佐久間 祐一
N-current 3-2(13), p.1(2010) ; (JAEA-J 07697)
 高速増殖原型炉もんじゅは、平成7年12月の2次主冷却系ナトリウム漏えい事故後、14年近く停止していた。原子力機構は、「もんじゅ」の運転再開を機構における最大,最優先のミッションと位置づけ、安全確保を第一に機構の総力を挙げ改善活動に取り組んだ。その結果、平成22年5月6日に待望の運転再開を果たし、5月8日に臨界に達した。「もんじゅ」の性能試験は、プラントを14年間という長期間停止していたこと、さらに燃料が長期間保管状態にあることを踏まえ、「炉心確認試験」,「40%出力プラント確認試験」,「出力上昇試験」と段階的に出力を上げながら確実に進めていく計画である。今後は、7月下旬まで炉心確認試験を行い、その後、一つ一つステップを踏んで安全確保を最優先に、着実に性能試験を実施していく予定である。そして、これらの性能試験や引き続く本格運転を通じて、高速増殖炉の発電プラントとしての信頼性の実証,ナトリウム取扱技術の確立を目指すとともに、得られる貴重なデータは高速増殖炉の実用化に反映していく。

38001055
内視鏡画像における組織形状計測システムの開発と基礎検証
岡 潔; 関 健史*; 内藤 岳人*; 渡邉 真也*; 若林 貴夫*; 長縄 明大*; 乾 和郎*; 芳野 純治*
日本画像医学雑誌 28(1), p.12-24(2010) ; (JAEA-J 07698)
 これまでに開発してきた「胎児外科治療用レーザー鉗子型内視鏡」に搭載した距離計測機能に着目し、従来使用されている上部消化器内視鏡との組合せにより、胃内の病変部の形状計測を行うことを提案した。すなわち、対象の形状を簡易的に計測可能な機能を内視鏡に付加する代わりに、システム全体は可能な限りシンプルな構成とし、従来の内視鏡をそのまま使用可能にすることでシステム全体の低コスト化を図った。さらには、別途開発を進めた外径φ1.1mmの複合型光ファイバスコープを従来の内視鏡に組み込むことで、本ファイバの特徴である、(1)ファイバスコープ映像の取得,(2)治療用レーザーの照射,(3)半導体レーザーによる距離計測及び血流計測を同時に行える機能をそのまま従来の内視鏡に付加できることを提案した。また、健常者の胃壁に対して本システムを適用する臨床試験を実施し、実際に適用可能であることを示した。

38001056
低減速軽水炉の燃料集合体局所出力分布の限界出力への影響評価
中塚 亨; 中野 佳洋; 大久保 努
日本原子力学会和文論文誌 9(2), p.139-149(2010) ; (JAEA-J 07699)
 低減速軽水炉の燃料製造上の負荷低減の可能性を検討する観点から、Puf燃料富化度の種類を減らして外周部に出力ピークを有する燃料集合体の熱的検討を実施した。Puf富化度の種類を減らした燃料集合体核設計より得られた出力ピークを参考として、上下MOX部の最外周燃料棒の出力比を変えた条件でサブチャンネル解析コードNASCAにより限界出力を評価した。その結果、周辺燃料部に出力ピークを有する場合、外周部におけるクオリティの低下が緩和され、燃料集合体の径方向断面内でのサブチャンネル間のクオリティ分布が平坦化される方向に向かうことから、平坦な局所出力分布の燃料集合体と比べて限界出力が向上した。Puf富化度を均一とした燃料の核設計と同程度の出力比を最外周燃料棒に与えた解析を行った結果、出力を平坦化した場合に比べて限界出力が向上した。この結果、燃料のPuf富化度の種類を低減し、燃料集合体周辺部にあえて出力ピークを許容した場合においても、従来の5種類のPuf富化度燃料を装荷する設計と同等の熱的余裕を保持できる見込みが得られた。

38001057
原子力平和利用推進に伴う核不拡散問題への国際的な取組み; 「原子力平和利用と核不拡散,核軍縮にかかわる国際フォーラム」の結果より
久野 祐輔; 直井 洋介; 山村 司
日本原子力学会誌 52(6), p.346-351(2010) ; (JAEA-J 07700)
 我が国は、これまで核不拡散にかかわる国際規範を確実に遵守しつつ、原子力の平和利用を推進してきた。また核軍縮の促進に対しても強力な後押しの役割を果たしてきた。しかし一方で、核拡散に対する懸念は世界的に高まっており、原子力の平和利用をも脅かす状況にある。今後、平和利用-核不拡散(軍縮)において日本が具体的に世界をリードし貢献していくことがますます重要になってきているが、そのためには多くのチャレンジを乗り越える必要がある。本報告では「原子力平和利用と核不拡散,核軍縮にかかわる国際フォーラム」(2009年12月開催)においてなされた議論について整理し紹介するとともに今後の課題・取り組みについて考察する。

38001058
社会から信頼される原子力専門家に求められるスキル; 非言語コミュニケーションの重要性を確認するための試行調査
郡司 郁子
日本原子力学会誌 52(7), p.40-44(2010) ; (JAEA-J 07701)
 原子力が社会と共生していくためには、優れた技術力・開発力のみならず、社会からの信頼も重要である。社会から信頼を得るためには、知性と感性を兼ね備えた原子力専門家が社会との双方向コミュニケーションを推進することが重要である。ここでは、おもに文献調査から得られた知見及び社会とのコミュニケーションを実践し、信頼の構築を目指す原子力専門家に必要とされるスキル、特に非言語コミュニケーションの重要性を確認するために行った試行調査の結果について紹介する。

38001059
Cellプロセッサにおける境界値問題のための有限要素法の高速実装
櫛田 慶幸; 武宮 博
日本計算工学会論文集(インターネット) 2010, 10p.(2010) ; (JAEA-J 07702)
 近年、一つのシリコンチップのなかに複数の処理装置を封入したマルチコアプロセッサーがハイパフォーマンスコンピューティング分野で用いられるようになってきた。なかでも、世界最高性能の計算機であるRoadrunnerに搭載される非均質マルチコアプロセッサーCellは従来のプロセッサーに比べ高い処理性能を持つものの、従来のアルゴリズムを用いた場合はデータ転送速度がボトルネックになりシングルプロセッサーと同程度の性能しか発揮できないことがわかっている。特に、原子炉構造物の解析などに使われる有限要素法はデータ転送が多く発生するためCellでの高速化は困難である。このため、本研究では、Cellの高い計算能力を生かし、従来手法に比べ計算量を増加させながらもデータ転送時間を減じるアルゴリズムを開発し、全体の経過時間を短縮することに成功した。この成果は、今後ますます計算能力とデータ転送能力が乖離してゆくことが予想されるマルチコアプロセッサーの効果的な利用に寄与するものである。

38001060
イレウスチューブを用いた小腸全域検査のためのバルーン内圧制御
関 健史*; 長縄 明大*; 岡 潔; 芳野 純治*
日本コンピュータ外科学会誌 12(1), p.33-42(2010) ; (JAEA-J 07703)
 著者らは、腸閉塞患者向けのイレウスチューブ型小腸内視鏡の開発を行っている。このイレウスチューブ型小腸内視鏡を用いて小腸内全域検査を行う方法は、体内から内視鏡を抜去する際に、イレウスチューブ先端のバルーン内圧力を調整して腸管を適切に把持し、手繰り寄せた状態の腸管を少しずつ解放しながら一定の速度で引き抜くことにより検査を行うものである。本研究では、小腸内全域検査を行う際にバルーン内圧力を適切に制御するための制御ユニットを開発し、その性能を検証した。まず、バルーン内圧を設定圧力にするため、目標圧力応答試験を行った結果、0.6%以内の制御精度で追従させることができた。また、腸管からバルーンへ加わる内圧変化を除去する基礎検証として行った試験では、制御を行わない場合と比較して、圧力変動を20分の1程度に抑えることができた。さらに、腸管を模擬したモデルに挿入し引き抜き試験を行ったところ、バルーン内圧を変化させず一定に保持することができ、安定した引き抜きを行うことができた。以上の結果から、イレウスチューブ型小腸内視鏡に制御ユニットを組み込むことで、内視鏡を一定速度で引き抜きながら小腸内全域検査を行える可能性を示すことができた。

38001061
テストブランケットモジュールにおける伝熱流動の問題
関 洋治; 榎枝 幹男
プラズマ・核融合学会誌 85(8), p.551-555(2009) ; (JAEA-J 07704)
 テストブランケットモジュール(TBM)は、原型炉ブランケットの機能をITERの核融合環境下で試験し、設計手法を検証するものである。伝熱流動の課題は、狭隘な冷却流路での十分な冷却性能の確保である。本報では、現在提案されているTBMを概観して、伝熱流動の観点から以下のように設計の重要事項を整理した。(1)第一壁などのTBMの箱構造と増殖部の冷却パネルの伝熱流動については、すべてのモジュールに共通して、狭隘な冷却チャンネルを並列に冷却材を流し、両々配分と圧損を最小にしつつ適切な冷却能力を確保すること、(2)固体増殖材微小球充填層、あるいは液体リチウム鉛増殖材層では、冷却パネルによる冷却が有効に行われること、(3)液体増殖材で自己冷却を行うTBMでは、MHD効果を考慮した流動伝熱の予測手法の確立と圧損低減を達成すること、(4)TBM試験にあたっては、これらの課題への対策を検討し、原型炉ブランケットの設計手法の検証と、その成立性を予測するデータ取得を確実に行うことが最も重要であることを示した。

38001062
粉末中性子回折による強誘電体の氷の研究; 宇宙進化の謎解明を目指して
深澤 裕
Radioisotopes 59(3), p.239-247(2010) ; (JAEA-J 07707)
 氷はありふれていながらも興味深い性質を持つ物質である。氷の水素の配置が秩序化すれば、普通の氷と異なり、電荷に偏りを持つ強誘電体になる。強誘電体の氷は、万有引力よりはるかに強い電気的な力があり、宇宙での物質進化や惑星形成を促進すると考えられる。最近、粉末中性子回折の実験から、強誘電体の氷が発生する温度と圧力,成長に要する時間等を明らかにした。その結果に基づいて、冥王星などの天体に、表面から内部にかけて強誘電体の氷が大量に存在するとの仮説を提案した。さらに、この仮説の実証に必要な観測方法を考案した。

38001063
化学における単結晶中性子構造解析
細谷 孝明*; 大原 高志
Radioisotopes 59(4), p.279-287(2010) ; (JAEA-J 07708)
 水素原子やプロトンが重要な役割を担う反応において、単結晶中性子構造解析はその反応機構を解明する強力な手法である。特に、水素原子やプロトンの移動は最も基本的で重要な現象であり、多くの有機反応,無機反応,酵素反応及び触媒反応等でしばしば観察される。本稿では、化学における単結晶中性子構造解析の応用例を幾つか紹介する。

38001064
中性子と放射光の相補的な利用による創薬標的タンパク質の立体構造解析
黒木 良太; 玉田 太郎; 栗原 和男; 大原 高志; 安達 基泰
薬学雑誌 130(5), p.657-664(2010) ; (JAEA-J 07710)
 タンパク質分子中の正確な原子位置は、結晶構造解析によって得ることができる。高分解能X線構造解析は、タンパク質分子を構成する原子の大部分の原子位置情報を与えるが、水素の情報を得ることは難しい。中性子回折は、この水素原子の位置情報をX線回折より決定された構造情報に加えることが可能である。ここでは、X線と中性子回折の両方を用いた結晶構造解析から最近得られた、創薬標的タンパク質であるブタ膵臓エラスターゼとヒト免疫不全ウイルス(HIV)1型プロテアーゼに関する研究成果を示す。膵臓エラスターゼでは、その阻害剤との複合体による同一結晶から、X線回折データ(1.2Å分解能)と中性子回折データ(1.65Å)の両データを取得し全原子構造を決定した。HIVプロテアーゼにおいても、その阻害剤との複合体結晶から得たX線回折データ(1.4Å)と中性子回折データ(1.9Å)を用いて構造解析を行った。両試料に対しては、さらに別途、超高分解能X線回折データ(それぞれ0.94Å, 0.93Å)も取得し上述の構造と比較した。以上の構造解析結果から、両酵素の触媒メカニズムの解明において議論となっている活性残基における水素原子位置及び解離状態を明らかにした。

38001065
Development of polarization interferometer for Thomson scattering diagnostics in JT-60U
波多江 仰紀; Howard, J.*; 海老塚 昇*; 平野 洋一*; 小口 治久*; 北村 繁; 佐久間 猛; 濱野 隆
Journal of Plasma and Fusion Research SERIES, Vol.8 , p.680-684(2009) ; (JAEA-J 07712)
 フーリエ変換分光の手法をトムソン散乱計測に初めて導入し、電子温度・密度測定の測定性能を向上させる手法を確立することを目指して、トムソン散乱のための偏光干渉計を開発中である。逆磁場ピンチ装置TPE-RXにおいて、既存のYAGレーザートムソン散乱システムを利用し、本計測手法の原理実証試験を行った。既存の干渉フィルターポリクロメーターと偏光干渉計を交互に用い、空間1点(プラズマ中心近傍)の電子温度の測定を行った結果、双方でほぼ同様の電子温度を得て、本方式による有効性を実証した。次のステップとして、本方式の実用性を実証するために、JT-60Uのための多チャンネル偏光干渉計を開発中である。ルビーレーザーによるトムソン散乱光をウォラストンプリズムへ入射し、結晶内の光路長を空間的に変化させることにより、インターフェログラムをICCD検出器で測定する。各種光源を用いた較正試験では、光源の波長に応じたインターフェログラムが取得でき、FFT処理を行うことによりスペクトルの再構成を行うことができた。

38001066
Real-time photoelectron spectroscopy study of 3C-SiC nucleation and growth on Si(001) surface by carbonization with ethylene
穂積 英彬*; 小川 修一*; 吉越 章隆; 石塚 眞治*; Harries, J.; 寺岡 有殿; 高桑 雄二*
JSPS 141 Committee Activity Report , p.317-322(2009) ; (JAEA-J 07713)
 Si(001)表面へのC2H4曝露による3C-SiC合金層形成において核発生までに時間遅れが存在する。この時間遅れではSi1-xCx合金層が形成されるが、その化学結合状態の変化は未だ明らかになっていない。そこで、3C-SiC合金層形成過程を明らかにするため、Si(001)基板の炭化反応過程をリアルタイムXPSで観察した。実験はSPring-8のBL23SUの表面化学反応解析装置にて行った。C1sのピーク分離からSiCの核発生は約8000sとわかり、このときのC1s, Si2p光電子強度から臨界炭素濃度は17%であると求まった。

38001067
Correlation effects among thermal displacements of atoms from diffuse neutron scattering measurements
佐久間 隆*; Mohapatra, S. R.*; 横川 穣*; 清水 識文*; 磯崎 信宏*; 上原 寛之*; Xianglian*; Basar, K.*; 高橋 東之*; 神嶋 修*; 井川 直樹
Proceedings of 12th Asian Conference on Solid State Ionics and 15th Chinese Conference on Solid State Ionics , p.439-445(2010) ; (JAEA-J 07715)
 イオン結晶,共有結晶及び金属結晶からの中性子散漫散乱に関して、原子の熱変位の相関効果を解析した。室温での最近接に位置する元素間での相関効果の値は結合状態によらず約0.7であり、この値は原子間距離の増加あるいは温度の低下に従って減少することが明らかになった。

38001068
J-PARC upgrade
大内 伸夫
Proceedings of 14th International Conference on RF Superconductivity (SRF 2009) , p.934-940(2009) ; (JAEA-J 07716)
 J-PARCは現在第1期計画である。現在までにすべての実験施設に陽子ビームが到達しており、2008年には物質生命科学実験施設の供用運転が開始された。400から600MeVの超伝導陽子リニアックと核変換実験施設は第2期計画に計画されている。超伝導陽子リニアックは、11台のクライオモジュールで構成され、各クライオモジュールには2台の972MHz,9セル楕円空洞が実装される。1台のクライストロンで2台の空洞を励振するため、パルス運転時のローレンツ力デチューニングの下で2台の空洞の位相安定性が最も重要な開発項目である。ローレンツ力デチューニングが小さくなるように設計されたクライオモジュールは既に製作されており、2台の空洞の同時運転を試験した。温度2Kにおいては、要求を十分満足する位相安定性を得ることができた。しかしながら温度4Kにおいては、マイクロフォニックノイズによって位相安定性が低下することが確認された。

38001069
Investigation of an on-line pipe wall defect monitoring sensor
田川 明広; 藤木 一成; 小島 史男*
Proceedings of 14th International Symposium on Applied Electromagnetics and Mechanics (ISEM 2009) , p.207-208(2009) ; (JAEA-J 07717)
 本研究は、電磁超音波探触子(EMAT)を用いたオンライン配管モニタリング用の欠陥検出センサの研究である。これまでの研究では、欠陥検出には、接触媒質が不要だが機械的走査が必要であった。本研究では、2つのセパレートコイルを使うことで、機械走査なく欠陥検出可能としたものである。

38001070
Development of high temperature gas-cooled reactor fuel for extended burnup
植田 祥平; 相原 純; 本田 真樹*; 降旗 昇*; 沢 和弘
Proceedings of 18th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-18) (CD-ROM) , 2p.(2010) ; (JAEA-J 07720)
 超高温ガス炉(VHTR)燃料においては、HTTRの3.6%FIMAより遥かに大きな燃焼度(15∼20%FIMA)まで安全性を保つ必要がある。TRISO燃料の健全性を高燃焼度まで保つためには、機械的強度向上と内圧上昇緩和のために、SiC層とバッファ層を厚くする必要がある。原子力機構においては、過去に高燃焼度用燃料を開発し、9%FIMAまでの性能を確認した。今回の研究開発においては、新たに高燃焼度用燃料を製造した。真球度その他によって示されるように、この新しい燃料の品質は過去の燃料よりも高品質であった。

38001071
Stability of radiation grafted membranes in electro-electrodialysis of HIx solution
田中 伸幸; 八巻 徹也; 浅野 雅春; 前川 康成; 小貫 薫; 日野 竜太郎
Proceedings of 18th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-18) (CD-ROM) , 5p.(2010) ; (JAEA-J 07721)
 熱化学水素製造法ISプロセスに対する電解電気透析法(EED)の適用性評価の一環として、原子力機構が開発した放射線グラフト法を用いて作製した高分子電解質膜の高温安定性を検討した。通算100∼150時間のEED試験(ヨウ化水素酸, 100℃)を行い、セル電圧及びイオン交換容量の変化挙動を調べた結果、製膜に際して架橋処理を行うことが高温安定性向上に有効であることがわかった。

38001072
Fracture strength estimation of SiC block for IS process
竹上 弘彰; 寺田 敦彦; 小貫 薫; 日野 竜太郎
Proceedings of 18th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-18) (CD-ROM) , 6p.(2010) ; (JAEA-J 07722)
 将来の水素社会到来による大規模水素需要に対応するため、原子力機構では高温ガス炉を用いたISプロセス熱化学水素製造法の研究開発を行っている。本研究では、重要機器の一つである硫酸分解器に用いる大型SiC製ブロックの強度評価手法を検討した。有効体積を用いた強度評価に用いるワイブル係数をSiC構造体に最適化することにより、実機評価を不要とするSiC構造体の強度推定法を提案した。さらに、実機を模擬した小型構造体として、小型ブロックモデル試験体を用いた破壊試験を行い、提案した強度評価手法を検証した。破壊試験の結果、小型ブロックの強度は強度推定値を上回っており、強度推定法が有効であることを確認した。

38001073
Conceptual structure design of high temperature isolation valve for high temperature gas cooled reactor
高田 昌二; 阿部 健二; 稲垣 嘉之
Proceedings of 18th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-18) (CD-ROM) , 6p.(2010) ; (JAEA-J 07723)
 高温隔離弁は高温ガス炉水素製造システムの安全性を確保するうえでの必要不可欠の機器である。中間熱交換器や化学反応器の伝熱管破損事故において、原子炉から水素製造システムへの放射性物質の放出や、可燃性ガスの原子炉への進入を防止する。900℃を超えるヘリウムガス雰囲気で使用するアングル型高温隔離弁の概念構造設計を行った。ハステロイXR製の弁座を弁箱の内側に溶接し、内部断熱構造とするとともに、バルブメーカーの製作実績に基づき、弁座頂部の内径は445mmとした。3次元有限要素解析コードにより金属構造物の温度分布と熱応力を評価した。数値解析結果は、熱応力が弁座頂部から弁座付根に向かって単調減少し、弁座付根において局所的に増加することを示した。この結果をもとに、熱応力を低減するために、弁座高さ,弁座と弁箱の直径比を最適化し、弁箱・弁座溶接継ぎ手部での熱膨張差を低減して、応力を設計許容応力120MPa以下に抑制できた。また、通常運転時の起動・停止、並びに、減圧事故時における温度・圧力履歴によるクリープ疲労損傷は許容値を下回り、健全性を確保できることを明らかにした。

38001074
Sodium-water reaction elucidation with counter-flow diffusion flame experiment and its numerical simulation
山口 彰*; 高田 孝*; 大島 宏之; 曽我部 丞司*; 出口 祥啓*; 菊地 晋
Proceedings of 18th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-18) (CD-ROM) , 8p.(2010) ; (JAEA-J 07724)
 ナトリウム冷却高速炉の蒸気発生器伝熱管が破損すると、高圧の蒸気がナトリウム中に噴出し、ナトリウム-水反応を引き起こす。そのため、ナトリウム-水反応評価は、ナトリウム冷却高速炉における重要な安全課題である。本研究では、ナトリウム-水反応メカニズム及び反応過程を解明することを目的に、減圧条件でナトリウム-水対向流拡散試験を実施し、反応モデルなどをパラメータとした数値解析の結果と比較検討を行った。

38001075
Thermal-hydraulic experiments under high pressure condition
Liu, W.; 玉井 秀定; 高瀬 和之; 早船 浩樹; 二神 敏; 木曽原 直之
Proceedings of 18th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-18) (CD-ROM) , 9p.(2010) ; (JAEA-J 07725)
 原子力機構では、次世代FBRで採用が検討されている、直管型蒸気発生器(SG)の熱設計手法を構築するため、実機SGを模擬した高圧条件下で試験を実施し、沸騰二相流に対する詳細なデータを取得するとともに、取得したデータをもとにボイド率や圧力損失に関する既存相関式の妥当性の評価を行っている。本報では、15MPaの圧力条件下で試験を行い、二相流圧力損失に関する既存相関式の適用性について定量的に評価した結果について報告する。一連の試験の結果、次のことが明らかになった。(1)伝熱管出入口間の圧力損失は、位置損失,摩擦損失と加速損失の和としてあらわれる。(2)位置損失や加速損失の計算に必要であるボイド率に関してはドリフトフラックスモデルの適用が可能である。(3)摩擦損失に関してはChisholm式又は均質流モデルを使って高精度に予測可能である。

38001076
Reconstructions of the control system for the charge exchange system at the 3GeV RCS in J-PARC
川瀬 雅人; 吉本 政弘; 竹田 修; 山崎 良雄; 金正 倫計
Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet) , p.214-216(2010) ; (JAEA-J 07727)
 J-PARC 3GeVシンクロトロンの荷電変換膜は、真空状態で交換しなくてはならない。荷電変換装置は、荷電変換膜交換,入射位置への移動などのすべての処理を、真空中で行うことができる。荷電変換装置は、真空系と駆動系から構成されている。そのため、真空系,駆動系を一元管理し、制御できなければならない。真空系と駆動系を一元管理できていない装置の場合、駆動軸がリングに挿入中でもゲートバルブが閉になるような、重大事故につながる。そのため、真空系と駆動系を一元管理できる制御システムが必要になった。われわれは、本装置を一元管理する制御システムを開発した。荷電変換装置は、真空系ではPLC(Programmable Logic Controller)で、駆動系ではMCUと別々なコントローラで制御している。これらを一元管理するためにWorkStationを設置した。WorkStationからPLCとMCUを制御できるようになった。J-PARCは、EPICSを使用し加速器構成機器を遠隔制御している。本装置も、EPICS対応にしなければならない。本報告では、この荷電変換装置制御系について報告するものである。

38001077
High-intensity beam operations in the J-PARC 3-GeV RCS
發知 英明; 原田 寛之; Saha, P. K.; 菖蒲田 義博; 田村 文彦; 山本 風海; 山本 昌亘; 入江 吉郎*
Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet) , p.624-626(2010) ; (JAEA-J 07728)
 RCSでは、2009年の12月より、300kW相当のビーム出力試験を開始した。磁場の不完全性などを取り込んだ計算モデルを駆使して、ビームの電荷密度を制御するためのペイント入射の最適化等を行い、RCS内でのビーム損失量を最小化し、1%以下のビーム損失で加速・出力することに成功した。

38001078
Recent progress in the beam commissioning of J-PARC linac
池上 雅紀*; 佐甲 博之; 三浦 昭彦; Wei, G.
Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet) , p.774-776(2010) ; (JAEA-J 07729)
 2007年11月以来、J-PARCリニアックのビーム出力は1.2kWから7.2kWに増加した。この7.2kWは3GeVシンクロトロン(RCS)の120kW出力に相当する。われわれはまた18kWの大出力試験にも成功した。これはRCSでの300kW、つまり現状の機器構成での設計値に相当する。このビーム出力増強の過程で、われわれはビーム損失メカニズムを解明し、低減することに成功した。

38001079
Shot-by-shot beam position monitor system for beam transport line from RCS to MR in J-PARC
手島 昌己*; 荒川 大*; 橋本 義徳*; 佐藤 健一郎*; 外山 毅*; 山本 昇*; 林 直樹; 花村 幸篤*
Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet) , p.978-980(2010) ; (JAEA-J 07730)
 J-PARCのRCSからMRへのビーム輸送ライン(3-50BT)のビーム軌道を安定にするために、14台のビーム位置モニタを据付けた。これらの信号は、ローカル制御棟D01へ導き、14台のデジタルオシロスコープで観測する。データ取得システムは、ショットごとの計測が可能なものとした。

38001080
Performance of the main ring BPM during the beam commissioning at J-PARC
外山 毅*; 荒川 大*; 平松 成範*; 五十嵐 進*; Lee, S.*; 松本 浩*; 小田切 淳一*; 手島 昌己*; 飛山 真理*; 橋本 義徳*; 岡田 雅之*; 佐藤 健一郎*; 高野 淳平*; 林 直樹; 花村 幸篤*; 畠山 衆一郎
Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet) , p.981-983(2010) ; (JAEA-J 07731)
 J-PARC MRのビームコミッショニング中のBPMの運用経験について報告する。サブジェクトは、(1)特にビームダクトの段差の影響,(2)1秒平均に対し30ミクロンの位置分解能,(3)ビームを使った位置校正である。

38001081
A Negative ion beam probe for diagnostics of a high intensity ion beam
神藤 勝啓; 和田 元*; 金子 修*; 津守 克嘉*; 西浦 正樹*; 笹尾 眞實子*; 木崎 雅志*
Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet) , p.999-1001(2010) ; (JAEA-J 07732)
 大出力正イオンビームのプロファイルを診断するための新方式として、われわれは負イオンビームプローブシステムを提案した。IFMIFの2本の線形加速器は加速器駆動型中性子源として、各々が40MeV/125mA連続重陽子ビームを供給する。連続運転中は極大電流ビームと高放射線レベルのために、ビーム光学やメンテナンス等の観点からビーム輸送系で通常の診断方式による測定は困難である。高エネルギー粒子との衝突により容易に付加電子が脱離する負イオンのビームを正イオンビームに対して遠方より垂直に入射して、ビーム=ビーム相互作用による負イオンビームの減衰量を各位置で調べることにより、ビームプロファイルを診断することが可能になる。われわれは平成21年度よりこの新しいビームプロファイルモニターシステムの原理検証実験を開始した。本発表では、その実験原理及び方法、本研究のために製作したシート状ビーム生成用水素負イオン源の性能評価とともに、IFMIFビーム輸送系への応用の見通しについて報告する。

38001082
Beam based alignment of the beam position monitors at J-PARC RCS
林 直樹; 原田 寛之; 發知 英明; 外山 毅*; 手島 昌己*
Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet) , p.1005-1007(2010) ; (JAEA-J 07733)
 J-PARC RCSは、MWクラスの速い繰返しのシンクロトロンで、ダクトのアパチャーは、直径250mm以上で設計された。このように大きなチェンバーサイズにもかかわらず、BPMは、光学パラメータを決めるため精度良いデータを提供している。この目的には、相対位置精度,分解能が重要であるが、さらに高いビーム強度のためには、ビームの絶対位置と精密なCOD補正が必須である。BPM検出器は、注意深く据付られているが、ビームを使った絶対位置測量が必要である。もし、個々の四極電磁石が独立に制御できれば、簡単なBBA手法が使えるが、RCSではそうではない。RCSには、7つの四極電磁石ファミリーがあり、一度にはファミリーごとにしか制御できない。われわれは、従来の手法を複数の四極電磁石が変わる場合でも適用できるように発展させ、RCSに適用した。ここでは、この手法と実験的結果について述べる。

38001083
Intrabeam scattering at low temperature range
Yu, P.*; He, Z.*; Wei, J.*; Sessler, A. M.*; 岡本 宏巳*; 百合 庸介
Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet) , p.1943-1945(2010) ; (JAEA-J 07734)
 In the process of beam cooling, the main heating source is intra-beam scattering (IBS), in which Coulomb collisions among particles lead to a growth of the beam's 6D phase-space volume. The results of molecular dynamics simulations have shown an increase of heating rate as the temperature increases from absolute zero, then a peak in the heating rate, and subsequent decrease with increasing temperature. On the other hand, in the traditional IBS theory, heating rate increases monotonically as the temperature becomes lower and lower. In this paper, we attempt to extend the traditional IBS theory valid at high temperatures to relatively low temperature range, by including some many-body effects in the traditional IBS theory. In particular, we take into account the static and dynamic effect of the self-electromagnetic field of the beam. We shall show how these effects modify the traditional theory, and present the evaluation of IBS heating rate of an ion beam in the low temperature range.

38001084
Horizontal impedance of the kicker magnet of RCS at J-PARC
菖蒲田 義博; 外山 毅*; 神谷 潤一郎; 渡辺 真朗
Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet) , p.2024-2026(2010) ; (JAEA-J 07735)
 キッカーのインピーダンスの公式で有名なものがあるが、その実部と虚部はヒルベルト変換をみたさないことが知られている。一方、インピーダンスの測定法でループ法というものがあるが、これも直接にビームのインピーダンスを計測できる訳ではない。このレポートでは、理論的にキッカーのインピーダンスの公式を導出し、使うパラメータについては、ループ法で求めたものを使って、真のビームのインピーダンスがどのようになるかを示す。

38001085
High-voltage test of a 500-kV photocathode DC gun for the ERL light sources in Japan
永井 良治; 羽島 良一; 西森 信行; 武藤 俊哉*; 山本 将博*; 本田 洋介*; 宮島 司*; 栗木 雅夫*; 飯島 北斗*; 桑原 真人*; 奥見 正治*; 中西 彊*
Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet) , p.2341-2343(2010) ; (JAEA-J 07736)
 原子力機構, 高エネルギー加速器研究機構,広島大学,名古屋大学の共同研究により500-kV, 10-mA光陰極直流電子銃を開発している。われわれはサポートロッドから放出される電子によるセラミック管の損傷を防ぐために分割型セラミック管とガードリングを採用し、550kVまでの高電圧の印加に成功した。カソード電極,アノード電極及びビームラインは現在組立て中であり、まもなくビーム試験が開始される見込みである。高電圧試験と電子銃開発の現状の詳細について報告する。

38001086
Present status of the MPS and TS for IFMIF/EVEDA accelerator
高橋 博樹; 小島 敏行; 堤 和昌; 成田 隆宏; 榊 泰直; 前原 直
Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet) , p.2695-2697(2010) ; (JAEA-J 07737)
 IFMIF加速器、及び、その原型加速器の制御システムはCCS, LAN, PPS, MPS, TS, LCSの6サブシステムで構成される。現在、原型加速器で実証するための、制御系サブシステムの設計、及び、試作を行っている。IFMIF原型加速器は、J-PARC, SNSと同出力の大強度重陽子加速器である。そのため、制御システムには、特に、高速なビーム停止機構を実現するためのMPSや、装置の放射化を最小限にするようなコミッショニング運転を実現するためのTSが要求される。これを実現するために、2010年9月からEUにて実施されるInjectorの試験に併せて、MPS及びTSの試作機器の試験を実施し、その試験結果を評価する。そして、IFMIF原型加速器で使用する制御系実機の設計・製作に反映させる予定である。本件では、EUで行う試験のために、現在開発を進めているTSのモジュールや、MPSとTSの遠隔監視・操作を実現するためのEPICSドライバの開発状況を報告する。

38001087
The Data acquisition system of beam position monitors in J-PARC main ring
畠山 衆一郎; 林 直樹; 荒川 大*; 橋本 義徳*; 平松 成範*; 小田切 淳一*; 佐藤 健一郎*; 手島 昌己*; 飛山 真理*; 外山 毅*; 山本 昇*; 花村 幸篤*
Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet) , p.2698-2700(2010) ; (JAEA-J 07738)
 J-PARC主リングのビーム位置モニタのデータ処理システムは186台のLINUXベースのデータ処理回路(BPMC)と12台のEPICSの入出力コントローラ(IOC)から構成されている。これらはビームの閉軌道の歪み(COD)や1周ごとのビームのバンチの位置を測定するために重要なツールである。このレポートではさまざまな校正係数がどのようにあてはめられているかも含めてデータから位置情報への再構成の方法を述べる。

38001088
Control and pulsewidth-measurement of laser accelerated electron beams
小瀧 秀行; 林 由紀雄; 川瀬 啓悟; 森 道昭; 神門 正城; 本間 隆之; Koga, J. K.; Bulanov, S. V.
Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet) , p.3608-3610(2010) ; (JAEA-J 07739)
 Laser wakefield acceleration (LWFA) is regarded as a basis for the next-generation of charged particle accelerators. In experiments, it has been demonstrated that LWFA is capable of generating electron bunches with high quality: quasi-monoenergetic, low in emittance, and a very short duration of the order of ten femto-seconds. Such femtosecond bunches can be used to measure ultrafast phenomena. In applications of the laser accelerated electron beam, it is necessary to generate a stable electron beam and to control the electron beam. A 40 fs laser pulse with the energy of 200 mJ is focused onto a supersonic gas jet. We succeed to generate a stable electron beam by using a nitrogen gas target. The profile of the electron beam can be manipulated by rotating the laser polarization. When we use a S-polarized laser pulse, a 20 MeV electron beam is observed with an oscillation in the image of the energy spectrum. From the oscillation, the pulse width of the electron beam is calculated to at most a few tens fs. The direction of the electron beam can be controlled by changing the gas-jet position. The self-injected electron beam can be controlled by the control of the laser and gas jet.

38001089
Systematic beam loss study due to the foil scattering at the 3-GeV RCS of J-PARC
Saha, P. K.; 發知 英明; 原田 寛之; 吉本 政弘; 山本 風海; 山崎 良雄; 菅井 勲*
Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet) , p.3921-3923(2010) ; (JAEA-J 07740)
 荷電変換膜における多重クーロン散乱を含む原子核散乱によって生じるビーム損失は、J-PARC RCSにおける制御できないビーム損失の一つである。そのビーム損失をよく理解するために、最近ビーム実験とシミュレーションの双方を用いた研究を実行した。厚さの異なる7枚の荷電変換膜を用いてビーム損失を測定し、その結果がシミュレーションとよく一致することがわかった。このような荷電変換膜の厚さに対するビーム損失の詳しい理解は、現在の入射エネルギー181MeVのみならず、近い将来に増強される400MeV入射でのRCSのビーム出力の増強シナリオに対しても荷電変換膜の厚さや形状の最適化に用いられる。

38001090
First step analysis of hybrid type boron-doped carbon stripper foils for RCS of J-PARC
山崎 良雄; 吉本 政弘; 竹田 修; 金正 倫計; 菅井 勲*
Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet) , p.3924-3926(2010) ; (JAEA-J 07741)
 J-PARCでは、RCSにビームを入射するためにリニアックから供給されるH-ビームから電子をはぎ取るための比較的厚い荷電変換カーボンフォイルが必要である。必要となるフォイルの厚みは200μg/cm2程度で、この厚さは181MeVのH-ビームからH+への変換効率が99.7%に対応する。この目的のために、従来のカーボンにボロンをドープしたハイブリッドボロン添加カーボンフォイル(HBC)を開発し、フォイルの使用可能な寿命の大幅な改善ばかりでなく、長時間のイオンビーム照射中の高温度使用下でもフォイル厚さの減少や変形が起こりにくいフォイルとして確立された。そこで、われわれはこのカーボンフォイルにボロンをドープすることでなぜフォイルがビームに対し耐性を持つかを微視的観点から研究を始めた。まず、通常のカーボンフォイルとHBCフォイルを電子顕微鏡やイオンビーム分析による比較を試みた。

38001091
Design and shielding of a beam line from ELENA to ATRAP using electrostatic quadrupole lenses and bends
百合 庸介; Lee, E.*
Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet) , p.4146-4148(2010) ; (JAEA-J 07742)
 The construction of the Extra Low ENergy Antiprotons (ELENA) upgrade to the Antiproton Decelerator (AD) ring has been proposed at CERN to produce a greatly increased current of low energy antiprotons for various experiments including, of course, anti-hydrogen studies. This upgrade involves the addition of a small storage ring and electrostatic beam lines. 5.3 MeV antiproton beams from AD are decelerated down to 100 keV in the compact ring and transported to each experiment apparatus. In this paper, we describe an electrostatic beam line from ELENA to ATRAP and magnetic shielding of the low-energy beam line against the ATRAP solenoid magnet. A possible design of this system is displayed.

38001092
Uniform beam distribution by nonlinear focusing forces
百合 庸介; 石坂 知久; 湯山 貴裕; 石堀 郁夫; 奥村 進
Proceedings of 1st International Particle Accelerator Conference (IPAC '10) (Internet) , p.4149-4151(2010) ; (JAEA-J 07743)
 To achieve ultra-low-fluence large-area uniform irradiation of ion beams for advanced applications in the field of materials sciences and biotechnology, a uniform-beam irradiation system has been developed using multipole magnets at the Japan Atomic Energy Agency (JAEA) cyclotron facility. The system consists of a beam attenuator for the wide-range intensity control, an electrostatic beam chopper for the control of irradiation time, scattering foils for conditioning of the initial beam distribution, octupole magnets for transverse tail-folding, sextupole magnets for the correction of the beam misalignment, and the diagnostic station of the two-dimensional beam profile. In this paper, recent experimental results are described, especially on the formation of a beam with a uniform transverse distribution by the combination of the sextupole and octupole magnets.

38001093
Conceptual design study toward the demonstration reactor of JSFR
堺 公明; 小竹 庄司; 青砥 紀身; 伊藤 隆哉*; 神島 吉郎*; 大嶋 淳*
Proceedings of 2010 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '10) (CD-ROM) , p.521-530(2010) ; (JAEA-J 07745)
 原子力機構は、2050年よりも前の商業炉の導入を目指して、高速増殖炉実用化研究開発(FaCT)プロジェクトを進めている。そのため、2025年頃の実証炉の運転開始を目指し、実証炉に関する設計研究を実施している。これまで、150万kWe規模の実用炉に向けた実証炉として、75万kWe及び50万kWeのプラント概念を設計検討を進め、主要な原子炉構造や機器に関する比較評価するとともに、関連する研究開発を実施している。本報告は、それらの実施状況についてまとめたものである。

38001094
Development of the main components for JSFR
黒目 和也*; 村上 久友*; 辻田 芳宏*; 二神 敏; 早船 浩樹
Proceedings of 2010 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '10) (CD-ROM) , p.637-644(2010) ; (JAEA-J 07746)
 The Japan Atomic Energy Agency(JAEA), Mitsubishi FBR Systems, Inc (MFBR) and Mitsubishi Heavy Industries, Ltd.(MHI) have been cooperated to study the Japan Sodium-cooled Fast Reactor (JSFR) in the Fast Reactor Cycle Technology Development (FaCT) project. In order to improve the economic of commercialized FBR plant, many innovative design concepts are adopted and started to investigate. For example, two-loop piping system and integrated IHX/pump are adopted to reduce the number of components and volume of the building. And double-walled tube SG is adopted to improve the reliability. In the FaCT project, these concepts have been studied, and many tests and evaluation have been carried out. In this report, our activities for the main components of JSFR such as two-loop piping system, integrated IHX/Pump, and steam generator are summarized.

38001095
Endurance sodium experiment of selector-valve for failed fuel detection and location system in sodium-cooled large reactor
相澤 康介; 藤田 薫; 平田 慎吾; 笠原 直人
Proceedings of 2010 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '10) (CD-ROM) , p.645-652(2010) ; (JAEA-J 07747)
 高速増殖炉サイクル実用化研究開発(FaCT)で設計を進めているナトリウム冷却大型炉(JSFR)では、すべての燃料集合体を対象にセレクタバルブ方式破損燃料位置検出器(FFDL)を開発している。セレクタバルブ方式FFDLは、各燃料集合体出口にサンプリング管を設置して、サンプリング管により採取したナトリウムを回転プラグ上に設置した遅発中性子検出器及び核分裂性生成物ガス検出器で分析することにより、破損燃料を同定するものである。本検討では、JSFRに適合するセレクタバルブ方式FFDL構造を具体化するとともに、耐久試験の要求条件を検討し、これをもとに実規模のセレクタバルブを模擬した耐久試験装置の設計・製作を実施した。製作したセレクタバルブ耐久試験装置を用いて、ナトリウム中耐久試験を実施し、セレクタバルブ摺動部の耐久性を評価した。

38001096
Development of the JSFR fuel handling system and mockup experiments of fuel handling machine in abnormal conditions
加藤 篤志; 平田 慎吾; 近澤 佳隆; 宇都 成昭; 小幡 宏幸*; 小竹 庄司*; 鵜沢 将行*
Proceedings of 2010 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '10) (CD-ROM) , p.692-699(2010) ; (JAEA-J 07748)
 JSFRに採用する燃料交換機の異常時の対応性を把握するため、実規模モックアップを用いた試験を実施した。

38001097
Application of integrated safety assessment methodology (ISAM) to Japanese sodium-cooled fast reactor (JSFR)
栗坂 健一; 島川 佳郎*
Proceedings of 2010 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '10) (CD-ROM) , p.1220-1227(2010) ; (JAEA-J 07749)
 原子力機構が参画しているGeneration IV国際フォーラム(GIF)のリスク及び安全性作業グループ(RSWG)において、新たに総合安全性評価手法(ISAM)が開発された。ISAMは5個の異なる解析手法から構成される。それらは、定性的安全特性レビュー(QSR),現象同定及び重要度ランク表(PIRT),目的と達成手段の樹形図(OPT),決定論及び現象論的解析(DPA),確率論的安全評価(PSA)である。これらのうち、PIRT, OPT, DPA及びPSAについて、JSFRへの予備的な適用を実施した。JSFRは革新的な安全特性として自己作動型炉停止機構(SASS)及び自然循環崩壊熱除去能力を備えており、通常手段での炉停止失敗を伴う流量喪失時におけるSASSによる炉停止の検討に予備的なPIRTを適用した。また、JSFRの安全設計が深層防護に基づく適切な方法で行われていることを確認するために、OPTを構築した。OPTに示された一部の達成手段は崩壊熱除去の安全設計要件を特徴づけるものであり、DPAによって要件の充足性は確認された。また、それらの設計要件及び充足性確認結果をもとに崩壊熱除去にかかわるPSAの解析モデルを構築し、PSAを実施した。PSAはJSFRの定量的な安全レベルの把握及び安全設計の改善に役立った。

38001098
U-RANS simulation of unsteady eddy motion in pipe elbow at high reynolds number conditions
田中 正暁; 大島 宏之; 山野 秀将; 相澤 康介; 藤崎 竜也*
Proceedings of 2010 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '10) (CD-ROM) , p.1699-1708(2010) ; (JAEA-J 07750)
 ナトリウム冷却高速炉の大口径エルボ配管部における流動解析評価手法の構築を目的とし、実機ホットレグ配管を1/3縮尺で模擬した水流動試験における高Re数条件での実験条件を対象として、CFDコードのレイノルズ応力モデル(RSM)を用いた非定常解析(U-RANS)を行い、エルボ周辺で発生する非定常渦流れと圧力変動発生メカニズムについて明らかにするとともに、実機ホットレグ配管を対象とした解析を行い、URANSによる本解析手法の適用性について確認した。

38001099
Numerical investigation on melting characteristics of minuteness metal powders by laser welding
高瀬 和之; 菖蒲 敬久; 月森 和之; 村松 壽晴
Proceedings of 2010 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '10) (CD-ROM) , p.1725-1732(2010) ; (JAEA-J 07751)
 原子炉本体やその付帯設備等の健全性を確保する補修技術の確立を目的として、3次元微細加工が可能なレーザーを利用した金属材料溶接技術の開発が行われている。この開発の一環として、金属材料溶接技術の最適化を目指し、レーザー照射による金属材料の溶融凝固現象を数値シミュレーションによって定量評価する手法の開発を次世代部門と協力して行っている。本報では、平均径40ミクロンの超微細な金属パウダーがレーザー照射によって溶融する過程、並びにレーザー照射終了後に次第に凝固する過程を数値シミュレーションによって評価した結果を報告する。予測結果は共同研究者らが実施したレーザー溶接の実験結果の傾向をよく模擬しており、金属材料溶接シミュレーションの実現に向けて高い可能性を示すことができた。

38001100
Preparation of low O/M MOX pellets for fast reactors using carbothermic reduction
村上 龍敏; 加藤 正人; 鈴木 紀一; 宇野 弘樹*
Proceedings of 2010 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '10) (CD-ROM) , p.1859-1865(2010) ; (JAEA-J 07752)
 約3000ppmの炭素を含む脱脂後ペレットについて、焼結中、熱天秤と熱膨張計による測定を行い、焼結挙動を評価した。試験パラメータは、焼結雰囲気の水素/水分比とした。焼結雰囲気中の水素/水分比を減少させることに伴い、ペレットの到達O/Mと収縮率が増加した。この結果から、焼結雰囲気中の水素/水分比が高い場合には、炭素の熱還元反応によりO/M比が大幅に減少し、反面、焼結雰囲気中の水素/水分比がより低い場合には、雰囲気中の酸素ポテンシャルが高く保たれ、O/M比の低下が抑制されたものと考えられる。

38001101
Effects of H2/H2O ratio in the sintering atmosphere on the sintering behavior of MOX pellets
武内 健太郎; 加藤 正人; 砂押 剛雄*
Proceedings of 2010 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '10) (CD-ROM) , p.1866-1873(2010) ; (JAEA-J 07753)
 焼結雰囲気中のH2/H2O比をパラメータとして焼結中のMOXペレットのO/M変化と収縮率を測定し、焼結雰囲気中の酸素分圧が焼結挙動に与える影響を評価した。焼結中の試料のO/Mは焼結雰囲気中の酸素ポテンシャルと平衡となるO/Mに近づくように変化し、H2/H2O比が小さいほど試料のO/Mが高くなるとともに低温側で収縮が進む傾向を示した。試料の収縮速度は、1000∼1300℃と1400∼1600℃の2つの温度領域でピークを示し、H2/H2O比が小さな試料では、低温領域で収縮速度が大きくなった。この結果から、焼結中のO/Mが高い試料は低温領域で、O/Mの低い試料は高温領域で焼結過程がおもに進んでおり、両温度領域における焼結は異なったメカニズムで支配されているものと考えられる。H2/H2O比一定の雰囲気でMOXを焼結するとO/Mが変化しながら焼結が進み、H2/H2O比に依存して焼結特性が大きく変化することを確認した。

38001102
An Indirect effect of green technology by Japanese LWRs
柳澤 和章; 長野 浩司*
Proceedings of 2010 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '10) (CD-ROM) , p.2140-2149(2010) ; (JAEA-J 07754)
 国家の経済と二酸化炭素取引に及ぼす温暖化防止技術によって生み出される間接効果に付き理解を深めるための研究を実施した。(1)2005年の時点で稼働中の我が国の軽水炉は54基であり、発電電気料金は発電端で16,466百万ドル、需要端で42,682百万ドルである。(2)原子力市場では、建設費用(2.0セント/kWh)は高いが燃料コスト(1.4セント/kWh)は安い。原発の導入は発電にかかわる燃料費の総額を低減しGDPを結果的に押し上げる。(3)軽水炉から放出される二酸化炭素(22g/kWh)は化石燃料使用の発電所から放出されるそれの1/23から1/44である。2004年における総発電電力量は8,651TWhである。石炭と石油を主たる二酸化炭素放出源と仮定すると、その放出量は7.43×108t-CO2となる。化石燃料以外の燃料により3.79×108t-CO2の二酸化炭素が排出抑制されるが、原発の寄与率はそのなかで57%と高い。二酸化炭素排出取引価格はt-CO2あたり開発途上国で18.5$、欧州共同体で27.7$であると仮定すると、我が国の原発による温暖化防止技術が生み出す間接効果は前者で3,993百万ドル、後者で5,989百万ドルとなる。

38001103
Comparative study on advanced fuel handling systems for JSFR
近澤 佳隆; 鵜沢 将行*; 臼井 伸一*; 戸澤 克弘*; 小竹 庄司
Proceedings of 2010 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '10) (CD-ROM) , p.10142_1-10142_9(2010) ; (JAEA-J 07755)
 A comparative study on the JSFR fuel handling system has been conducted. Construction cost, safety and operation were compared between the reference system with EVST and the evolutional system without EVST. The result shows that the advanced systems cannot provide clear advantages even they adapt innovative technologies.

38001104
Transverse beam matching and orbit corrections at J-PARC LINAC
佐甲 博之; 上野 彰; 大川 智宏*; 近藤 恭弘; 森下 卓俊; 池上 雅紀*; 秋川 藤志*
Proceedings of 24th International Linear Accelerator Conference (LINAC 2008) (CD-ROM) , p.260-262(2009) ; (JAEA-J 07759)
 J-PARCリニアックでの設計陽子ビームは大強度であるため、横方向の精密なビーム制御はビームロスを抑制するために非常に重要である。本論文では横マッチングと軌道補正の結果について報告する。ビーム電流5mAと30mAにおいて、非常によいマッチング性能(ミスマッチファクター5%以下)を達成した。また軌道補正により、リニアック全体で、水平・垂直方向ともに軌道変位1mm以内を達成した。

38001105
Unique features of the J-PARC linac and its performance; Lessons learnt
上野 彰
Proceedings of 24th International Linear Accelerator Conference (LINAC 2008) (CD-ROM) , p.343-347(2009) ; (JAEA-J 07760)
 J-PARC linacは、設計エネルギー及び第一期のピーク電流までの加速に成功した。本論文では、J-PARC linacで採用された以下の独創的方法と装置の特徴について説明及び結果報告を行う。磁場集束式低エネルギービーム輸送系を使用した表面生成が主たるCsを使用しないH-イオン源,J-PARC 30mA-RFQの設計と関連したマクロパルス形成方法,安定なワンショット運転方法,装置保護のためのビーム停止方法,RFQの運転パラメータと関連したRF-chopperシステム,下流のJ-PARC RCSへの一周入射,TRACE3DのPMQエレメント近似を使用した横方向運動の整合,高デューティ運転可能な小型DTQのコイル,DTL及びSDTLの高純度厚膜メッキ用PR電鋳,1台のクライストロンで電力供給を行うSDTL 2空洞の挙動。

38001106
LLRF control system of the J-PARC linac
Fang, Z.*; 穴見 昌三*; 道園 真一郎*; 山口 誠哉*; 小林 鉄也; 鈴木 浩幸
Proceedings of 24th International Linear Accelerator Conference (LINAC 2008) (CD-ROM) , p.1039-1041(2009) ; (JAEA-J 07761)
 J-PARCリニアックでは、1つのクライストロンで2台の加速空洞に電力を供給する。加速電界の振幅,位相はFPGAを用いたデジタルフィードバック制御システムによりコントロールされる。ビームローディンなしで振幅,位相それぞれ±0.1% and ±0.1度の安定性で、またビームローディングがあっても、それぞれ±0.3% and ±0.2度の安定性を達成している。また空洞共振周波数(チューナ)も本システムのDSPによって自動制御され、離調度±1度以内で正常に制御されている。またRFパルス波形の減衰から、空洞離調度及びQ値を計算し、運転中リアルタイムでそれらをPLC制御パネルに表示できるようにした。

38001107
Pulse-by-pulse switching of beam loading compensation in J-PARC linac RF control
小林 鉄也; 千代 悦司; 鈴木 浩幸; 穴見 昌三*; Fang, Z.*; 道園 真一郎*; 山口 誠哉*
Proceedings of 24th International Linear Accelerator Conference (LINAC 2008) (CD-ROM) , p.1054-1056(2009) ; (JAEA-J 07762)
 J-PARCリニアックのLLRFでは、ビーム負荷補償のためのフィードフォーワード(FF)制御パラメータをパルスごとに(繰り返し25Hz又は50Hz)で切り替わる機能を新たに追加した。本システムでは加速電界制御のためFPGAを用いたデジタルフィードバック(FB)制御を行い、またビームローディングに対してはマクロビームパルス立ち上がりはFB制御だけでは追いつかないためFF制御を組合せている。ここでFF制御の位相・振幅はビーム電流に対して最適に設定することが重要である。一方J-PARCでは、リニアック後段の3GeVリングが「物質・生命科学実験施設」及び50GeVリングのどちらにビームを振り分けるかによって、リニアックのビーム電流(正確には中間パルスのデューティ)が変わるため、それぞれのビームの振り分けごとにFFの位相・振幅が切り替わる必要がある。そこでJ-PARCのタイミングシステムを利用し、別途入力するゲート幅に対応したプリセット値で切り換わる仕組みをFPGAプログラムに追加した。

38001108
Simple orchestration application framework to control "Burning Plasma Integrated Code"
立川 崇之; 中島 康平*; 手島 直哉; Kim, G.; 鈴木 喜雄; 武宮 博; 林 伸彦; 射場 克幸*
Proceedings of 3rd International Joint Conference on Computational Sciences and Optimization (CSO 2010) , p.322-326(2010) ; (JAEA-J 07763)
 We have developed the Simple Orchestration Application Framework (SOAF) on a grid infrastructure to control cooperative and multiple execution of simulation codes on remote computers from a client PC. SOAF enables researchers to generate a scenario of their executions by only describing a configuration file which includes the information of execution codes and file flows among them. SOAF does not need substantial modification of the simulation codes. We have applied SOAF to the "Burning Plasma Integrated Code" which consists of various plasma simulation codes which exist on distributed heterogeneous computers located in different sites. We succeeded in cooperative and concurrent execution of four plasma simulation codes without substantial modification.

38001109
Measurement of droplet quality of carryover from free surface using throttling calorimeter
玉井 秀定; 永吉 拓至; 上遠野 健一; 伊東 敬; 高瀬 和之
Proceedings of 7th International Conference on Multiphase Flow 2010 (ICMF 2010) (CD-ROM) , 7p.(2010) ; (JAEA-J 07764)
 自由液面気液分離方式を採用した革新的水冷却炉や中小型BWRにおいては、上部プレナム内自由液面から発生する液滴の特性(キャリーオーバー特性)の高精度予測が設計上解決すべき重要課題となっている。本研究では、液面下のボイド率分布や液面から発生した液滴の大きさなどを実験的に把握したうえで、液滴流量の機構論的な予測技術の開発を進めている。本論文では、これら測定項目のうち、高圧水蒸気二相流において絞り熱量計を用いて液滴クオリティを計測した結果を報告する。実験は、圧力1.5-2.5MPa,蒸気見かけ速度0.4-1.9m/sの条件において液面からの高さを変化させて実施した。その結果、絞り後の過熱蒸気の温度と湿り蒸気のクオリティの間に強い依存関係があることを確認した。また、測定したデータに基づいて液滴クオリティを予測できる改良モデルを構築し、実機評価を行った結果、自由液面気液分離方式を採用した自然循環軽水炉の設計が成立する見通しを得た。

38001110
Development of maintenance technology for rotating equipment; Condition based maintenance by shock pulse method
竹内 謙二; 算用子 裕孝; 福有 義裕; 伊波 慎一
Proceedings of 7th International Conference on NDE in relation to Structural Integrity for Nuclear and Pressurized Components (CD-ROM) , p.37-44(2010) ; (JAEA-J 07765)
 東海再処理施設では、放射性物質等を限定された区域に閉じ込めるための負圧維持に送排風機,高放射性廃液貯槽等の冷却にポンプが用いられており、施設の安全確保に重要な役割を果たしている。したがって、これらの回転機器は安定運転が求められており、回転機器の劣化状態を把握した状態監視保全により、信頼性を向上させる必要がある。東海再処理施設の回転機器の保全データを解析した結果、約90%が軸受の不具合による故障であり、軸受故障の主原因は潤滑不良によるものであることがわかった。このため、回転機器を安定的に運転するには、軸受の潤滑や損傷の状態を把握することが重要である。これまで、軸受状態の把握には振動法が用いられており、振動法は軸受の損傷や磨耗の状態を把握することができるが、油膜厚さによる軸受の定量的な潤滑管理は困難であった。このため、軸受の油膜厚さを定量的に測定できるショックパルス法(以下、SPMという)を用いることで、軸受の油膜厚さを測定し、軸受状態の把握を試みた。SPMは、軸受の動作時に発生する圧縮波が、軸受の潤滑状態,傷の有無によって変化することを利用したものであり、この圧縮波を測定することで、軸受の油膜厚さや劣化状態を診断する。SPMにより診断された油膜や劣化状態の情報は、集中監視装置へ伝送され、回転機器の軸受状態を遠隔監視できるようにした。この結果、軸受の油膜厚さに基づいた給油を行うことで、軸受内に油膜厚さを維持し、軸受の劣化の進行を軽減することにより、回転機器の信頼性を向上させ、回転機器の安定運転に寄与することができた。

38001111
Trial fabrication of beryllide using plasma sintering method
中道 勝; 柴山 環樹*; 蓼沼 克嘉*; 米原 和男
Proceedings of 9th IEA International Workshop on Beryllium Technology (BeWS-9) , p.40-43(2009) ; (JAEA-J 07766)
 Beryllium intermetallic compounds (beryllides) are the most promising advanced neutron multipliers. In this study, it reports on the preliminary results of beryllide synthetic using a plasma sintering method. The plasma sintering results in starting powder particle surface activation that enhances powder particle sinterability and reduces high temperature exposure. Trial fabrication test of TiAl intermetallic as an alternative material of beryllide was carried out using mixed with Ti and Al powder particles. The formations of TiAl and Ti3Al intermetallics were identified at 1223 K for 5 min under 34 MPa pressure using starting mixed powder particles of Ti and Al. From the result of this trial fabrication, it is assumed that the intermetallic compound as beryllide could be directly synthesized by the plasma sintering method from mixed powder particles of Be and Ti at a lower temperature than melting point. In this report, trial synthetic results of beryllide will be also present.

38001112
Validation of an accident consequence assessment code using field data
松原 武史*; 本間 俊充
Proceedings of International Conference on Environmental Radioactivity (Internet) , 5p.(2010) ; (JAEA-J 07767)
 環境影響評価に用いられる計算モデルの性能検証には、モデル予測結果と実測データの比較が最適である。確率論的事故影響評価コードOSCAARの陸域生態圏モデルは、IAEA等の国際協力計画におけるチェルノブイリデータを用いたシナリオによって妥当性検証がされてきた。本研究では、原子炉事故で主要な131Iの甲状腺への取り込みモデルの検証計算について報告する。

38001113
原子力発電所の設計と評価における地震安全の論理
大橋 弘忠*; 成宮 祥介*; 宮田 浩一*; 渡邉 憲夫
安全工学シンポジウム2010講演予稿集 , p.110-113(2010) ; (JAEA-J 07769)
 我が国では近年、幾つかの原子力発電所で設計想定を超える大きな地震動がもたらされたが、地震による被害は軽微なものであり、原子力発電所の安全は確保された。それにもかかわらず、国民の間では設計想定を少しでも超える地震動が発生すると原子力発電所の多くの設備が損傷するのではないかという懸念が拡がり、地震に対する原子力発電所の安全性を改めて見える形にしていくことが求められている。これを受けて、日本原子力学会原子力発電所地震安全特別専門委員会では、安全分科会において、地震に対する安全確保の基準,考え方,評価の方法など多方面からの再検討を行い、地震安全の論理を取りまとめたのでその概要を紹介する。

38001114
地層処分対象放射性廃棄物の品質マネジメント∼地層処分において必要と考えられる高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の特性∼報告書
吉沼 明彦; 塩月 正雄
地層処分対象放射性廃棄物の品質マネジメント∼地層処分において必要と考えられる高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の特性∼報告書/日本原子力学会「地層処分対象放射性廃棄物の品質マネジメント」特別専門委員会 , 67p.(2010) ; (JAEA-J 07770)
 日本原燃との技術協力協定に基づく「環境保全技術協力に係る運営会議」において、原子力機構は日本原燃からガラス固化体を含む地層処分対象廃棄物の品質マネジメントの検討に必要な技術情報の提供にかかわる協力要請を受けた。本検討については、地層処分対象廃棄物の製造者,所有者,処分者等である日本原子力研究開発機構,日本原燃,電力会社,原子力発電環境整備機構による協議において情報を供給し、日本原子力学会の協力を得て検討を実施することとし、国内で製造される高レベルガラス固化体の地層処分にかかわる処分施設の設計,安全評価等を実施するうえで必要と考えられる高レベルガラス固化体の特性や、その特性の把握のために適切に録取されることが望ましい記録等について検討を行った。

38001115
ナトリウム冷却大型炉に適合する破損燃料位置検出器の開発; スリット部のサンプリング手法開発
相澤 康介; 藤田 薫; 上出 英樹; 笠原 直人
第15回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集 , p.229-230(2010) ; (JAEA-J 07772)
 ナトリウム冷却大型炉(JSFR)では、炉容器コンパクト化による経済性向上を図るため、スリット付き炉心上部機構(UIS)が採用されている。したがって、JSFRは破損燃料位置検出器のサンプリング管をスリット部の燃料集合体出口近傍に設置できず、サンプリング管をUIS内の適切な位置に配置する必要がある。UISのスリット周辺構造を1/5縮尺で模擬した水流動試験を実施して、UISの第1BP及び第2BPにサンプリング管を設けることで、スリット部の燃料集合体について目標のサンプリング性能が得られる結果を得た。

38001116
Na冷却高速炉における格納容器設計
加藤 篤志; 根岸 和生; 秋山 洋*; 久保 重信*
第15回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集 , p.231-232(2010) ; (JAEA-J 07773)
 Na冷却炉の格納容器(CV)として、2枚の鋼板間のコンクリートをスタッド等で結合させた鋼板コンクリート構造(SC構造)を採用し、工期の短縮と、鋼製部分の工場製作による品質の向上を図っている。実証試験及び設計にあたって、実機で想定されるCVの温度及び圧力条件を解析により評価した。解析では、設計基準シナリオにおける温度,圧力条件を評価するとともに、格納容器が閉じ込めの最終障壁であることを考慮し、その裕度を確認するための条件として、格納容器内での仮想的なNa燃焼を想定して温度・圧力条件を設定した。

38001117
改良二流体モデルによる原子炉熱設計手法の開発,1; 数値安定性向上のための改良
吉田 啓之; 細井 秀章; 鈴木 貴行*; 高瀬 和之
第15回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集 , p.273-276(2010) ; (JAEA-J 07774)
 原子力機構では数値解析を主体とした燃料集合体熱設計手法の確立を目指し、三次元二流体モデルと界面追跡法を組合せた改良二流体モデルを開発している。これまでの開発により、基本的な解析手法を構築したが、数値安定性が低いため、十分な解析結果を得ることができなかった。そこで、改良二流体モデルの数値安定性向上方法について検討を行い、圧力勾配の取り扱いと気泡及び液滴体積割合評価法に課題があることを確認した。そこで、課題解決にあたり、これらの課題についての改良を実施するとともに、改良を実施した改良二流体モデルを用いて適切な改良が実施されたことを確認するための解析を実施した。その結果、低い数値安定性のためにこれまで実施が困難であったボイド率が0及び1の2つの領域を含む解析や、乱流モデルを含む二相流モデルを用いた解析等が安定に実施できることを確認し、改良の有効性を示した。

38001118
改良二流体モデルによる原子炉熱設計手法の開発, 2; 中口径管に対する乱流拡散力モデルの適用性評価
細井 秀章*; 吉田 啓之
第15回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集 , p.277-278(2010) ; (JAEA-J 07775)
 原子炉内詳細沸騰二相流解析手法の確立を目指し、原子力機構では、二流体モデルに界面追跡法を組合せた改良二流体モデルを開発している。これまでに、分子拡散との類似性をもとに、現象のスケール及び時間の影響を考慮した乱流拡散力モデルを導出し、直径200mmの大口径管を用いた実験結果によりモデル定数を選定した。本報告では、開発したモデルを組込んだ改良三次元二流体モデル解析コードACE-3Dを直径38mmの中口径管に適用し、開発したモデルの適用性を評価した。その結果、定性的には、大口径管の場合と同等の解析が実施できること、及び、改良したモデルを組み込んだACE-3Dにより管径の影響を表現できることを確認した。しかし、特に管中心部での実験結果との定量的な相違があることから、今回の解析では考慮しなかった気泡誘起乱流の影響を中口径管においては解析に含める必要があることがわかった。

38001119
改良TRAC-BF1コードによる直管型蒸気発生器の流動安定性評価手法の開発
中塚 亨; Liu, W.; 吉田 啓之; 高瀬 和之
第15回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集 , p.279-280(2010) ; (JAEA-J 07776)
 原子力機構では、TRAC-BF1をもとにFBRの直管型蒸気発生器の熱水力安定性を評価する手法を開発している。本報では、直管型蒸気発生器をVESSELコンポーネント及び並列複数チャンネルにより模擬するため、TRAC-BF1コードにNa物性値ルーチンを組み込むとともに、三次元VESSELコンポーネントに対して、単一のコンポーネントで一次側と二次側を表現するため、同一コンポーネント内で異なる流体を取り扱えるように改良した結果について報告する。直管型蒸気発生器を簡易的に模擬した体系で、過渡的に一次側と二次側の入口温度を変化させた解析を実施した結果、一次側と二次側でエネルギーバランスが保たれており、一次側がNaの場合においても、水の場合と同様に伝熱計算が行えることが示され、改良したTRAC-BF1コードが当初の計画通りに正常に機能すること、並びに解析した結果が妥当であることを確認した。

38001120
地震加速度に対する沸騰二相流挙動の影響評価
三澤 丈治; 吉田 啓之; 高瀬 和之
第15回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集 , p.287-288(2010) ; (JAEA-J 07777)
 地震発生時のBWR燃料集合体の健全性を正確に評価するためには、地震動によって沸騰二相流中に発生する変動が燃料棒被覆管等の構造材の温度分布に及ぼす影響を明らかにすることが必要である。このためには、地震動により発生する沸騰二相流中の変動挙動を詳細に把握できる解析手法が必要である。そこで、3次元二流体モデル解析コードACE-3Dに地震動の影響を考慮するための改良を行うことにより、地震時のBWR燃料集合体内沸騰二相流挙動を評価できる解析手法の開発を行っている。本報では、改良したACE-3Dを使用して、燃料集合体を簡略模擬した体系に対して地震加速度を付加した条件で沸騰二相流解析を実施し、加速度の周期や振動方向が沸騰二相流の挙動に及ぼす影響を評価した結果について報告する。一連の解析結果を詳細に評価し、次の結論を得た。(1)地震加速度の振動周期に応じて異なる時間遅れが発生する,(2)地震加速度付加時におけるボイド率の変動の予測において、地震加速度の振動周期に対する揚力と乱流拡散力の応答が大きな影響を持つ。

38001121
沸騰における伝熱面温度・熱流束の計測
Liu, W.; 高瀬 和之
第47回日本伝熱シンポジウム講演論文集 , p.445-446(2010) ; (JAEA-J 07778)
 沸騰メカニズムを把握するために、流れを乱す伝熱面上へのセンサーの設置が不要で、伝熱面温度・熱流束を同時計測できるシステムを開発した。本計測システムは、高速度で伝熱体内部温度を計測する一次系と、多チャンネルで計測される伝熱体内部温度データをもとに伝熱面温度と熱流束の変化を逆問題解析によって求める二次系から構成される。本研究では、逆問題解析を用いて現象の早い非定常沸騰サイクルを追従できるように、共同陽極を持つ微細熱電対群を導入することによって、伝熱面表面から数ミクロンの深さに温度計測用温度接点を配置することができた。本報では、開発したシステムを用いて、半無限体逆問題解析を適用して沸騰サイクルにおける気泡直下の伝熱面表面熱流束と表面温度を計測した。本開発の計測システムによって、大きな変形した気泡の形成に伴う伝熱面温度の低下や熱流束の上昇を計測できることがわかった。

38001122
新型転換炉「ふげん」の廃止措置活動の現状
尾崎 信治
原子力施設デコミッショニング技術講座(第22回) , p.53-88(2009) ; (JAEA-J 07779)
 原子炉廃止措置研究開発センター「ふげん」の廃止措置の現状について、(1)「ふげん」のあゆみとして建設から運転を経て廃止措置に移行した履歴,(2)廃止措置計画の概要では、廃止措置の対象施設,基本方針,期間中における主要作業,(3)廃止措置の現況と工事状況として、平成20年度の実績と平成21年度に計画している解体撤去工事及び汚染の除去工事の内容,(4)解体撤去物の取り扱いとして放射性廃棄物の処理方法,(5)原子炉解体技術開発,(6)地域との連携について紹介する。

38001123
レーザー誘起プラズマ発光分光とアブレーション共鳴吸収分光法を組合せた次世代燃料の遠隔分析技術に関する基礎研究
若井田 育夫; 赤岡 克昭; 大場 正規; 丸山 庸一郎; 宮部 昌文; 音部 治幹; 仁木 秀明*
核物質管理学会(INMM)日本支部第30回年次大会論文集(CD-ROM) , 9p.(2010) ; (JAEA-J 07780)
 日本原子力研究開発機構では、次世代燃料の迅速、その場分析を目指し、組成・不純物分析にレーザー誘起プラズマ発光分光法(LIBS)を、同位体分析にアブレーション共鳴吸収分光法(AIRAS)を用いた遠隔分析法の基礎研究を実施している。スペクトルの複雑なランタノイドやウラン酸化物が母材の不純物分析では、観測遅延時間やガス圧力条件の最適化とスペクトルの逆畳み込み法により、感度の直線性と約100ppmの検出下限を得た。同位体分析では、波長を安定化した分光用波長可変半導体レーザー装置を開発し、減圧希ガス中で800MHzのスペクトル分解能を得る条件を見いだすことで、天然ウラン中の235Uの観測を実現した。これらの結果から、分析感度とその直線性,ウランでの測定実績が確認され、技術的には次世代燃料の保障措置分析に適用できる可能性のあることが示唆された。

38001124
減肉モニタリング用EMATの高温耐久試験結果
田川 明広; 藤木 一成
日本保全学会第6回学術講演会要旨集 , p.570-574(2009) ; (JAEA-J 07781)
 本研究は、EMATの高温耐久性試験結果である。これまでは、初期減磁の把握できる200℃,200時間の耐久性しか確認されていなかったが、本研究では、板厚10mmの試験片を用いて、200℃,2年間の耐久性を確認した。測定方法も2種類で測定し、パルスエコー法とパルスエコー共振法のどちらでも耐久性を有することを確認した。また、磁石ノイズを除去するフィルタも考慮した。

38001125
詳細二相流解析コードTPFITによる加速器駆動未臨界炉ウィンドウレスターゲットの数値解析
吉田 啓之; 鈴木 貴行*; 高瀬 和之
日本混相流学会年会講演会2010講演論文集 , p.344-345(2010) ; (JAEA-J 07783)
 加速器駆動未臨界炉では熱的に厳しいターゲット窓の利用を回避するため、冷却材-ガス間に形成した自由表面をターゲット境界として利用するウィンドウレスターゲットの採用が検討されている。この設計で必要な自由表面挙動を予測するため、原子力機構では、詳細二相流解析コードTPFITによる設計手法を開発している。本報告では、水-蒸気実験を模擬した解析をTPFITで行い、その適用性を評価した。その結果、TPFITにより、実験結果と定性的に一致する界面形状を再現できることを確認するとともに、ターゲット中心部に見られる再循環についても評価できることを確認した。

38001126
超臨界圧軽水冷却炉熱設計のための乱流熱伝達率予測手法の開発
中塚 亨; 三澤 丈治; 吉田 啓之; 高瀬 和之
日本混相流学会年会講演会2010講演論文集 , p.348-349(2010) ; (JAEA-J 07784)
 原子力機構では、超臨界圧軽水冷却炉の炉心熱設計精度の向上を目的として、ラージ・エディ・シミュレーションによる超臨界圧流体の乱流熱伝達率予測手法を開発している。本報では、九州大学で実施した超臨界圧フレオンを用いた円管内熱伝達試験データをもとに実験解析を行った結果について報告する。本研究の結果、超臨界圧流体の場合には、主流に比べて壁面近傍での物性値依存性が大きく、それが乱流構造に影響して、伝熱劣化の要因の一つになっていることが予測された。開発した手法により、超臨界圧流体の乱流熱伝達率の予測に目途が得られた。

38001127
300keV領域小型集束ガスイオンビーム形成装置の開発
石井 保行; 大久保 猛; 神谷 富裕
Proceedings of 12th Symposium on Accelerator and Related Technology for Application , p.65-68(2010) ; (JAEA-J 07785)
 A compact focused gaseous ion beam system with a maximum energy of 300 keV is being developed at Japan Atomic Energy Agency (JAEA). The compact system was designed so as to be installed in an ordinary experiment room. The system consists of a double acceleration lens and an acceleration tube. The double acceleration lens system was developed to form gaseous ion nanobeams with energy of several tens of keV previously at JAEA. In this study, the acceleration tube was newly developed as the third acceleration lens on the basis of calculation to optimize lens parameters; such as magnification, aberrations and focusing point. The beam size at the focusing point of the acceleration tube is expected to be 130 nm in diameter at energy of 300 keV on the basis of the previous study of the keV gaseous ion nanobeam forming by the double acceleration lens system.

38001128
IFMIF/EVEDA加速器制御系人員保護システム(PPS)の設計方針
小島 敏行; 高橋 博樹; 榊 泰直; 前原 直
Proceedings of 6th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (CD-ROM) , p.487-489(2010) ; (JAEA-J 07786)
 国際核融合材料照射施設に関する工学実証及び工学設計活動(IFMIF/EVEDA)におけるプロトタイプ加速器は、入射器(出力100keV),RFQ(出力5MeV),初段の超伝導ライナック(出力9MeV)からなり、加速器の定常運転を実証するため、9MeV/125mAと大強度のCW D+ビームを生成することが要求されている。D+を加速した場合、中性子発生による放射化が大きな課題であり、Personnel Protection System(PPS)として高い信頼性が求められる。IFMIF/EVEDAでのPPS開発は、これまでに開発と運用実績のあるJ-PARCのものをベースとし、各装置や機器とのインターロック信号は、LAN等の通信手段の経路を介さずに、独立した2系統のハードワイヤードによる信号経路での取合いを基本として構成する。さらに中枢となるプログラマブルロジックコントローラー(PLC)として欧州標準汎用品であるシーメンス社製SIMATICを採用して開発を行う。本発表では、IFMIF/EVEDA加速器PPSの設計方針を中心に報告する。

38001129
IFMIF/EVEDA加速器制御系の概要
高橋 博樹; 小島 敏行; 榊 泰直; 前原 直
Proceedings of 6th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (CD-ROM) , p.490-492(2010) ; (JAEA-J 07787)
 国際核融合材料照射施設(IFMIF)に関する工学実証及び工学設計活動(EVEDA)加速器は、9MeV/125mAのCW D+ビームを生成する。大強度でD+を加速することから、ビームロスによる放射化が大きな課題であり、この放射化を十分考慮し、信号伝送路の2重化などにより高い信頼性を確保したPersonnel Protection System (PPS)、数10μsecでインターロック信号を伝送しビームを高速で停止させるMachine Protection System(MPS)、コミッショニングにおける放射化を最小限にするパルス運転と最終的なCW運転の異なる2種類の運転を実現するTiming System(TS)などで構成される制御系の開発を進めている。本発表では、IFMIF/EVEDA加速器制御系の概要と、2010年1月からEUでの実施が予定されている、制御系と加速器サブシステムとの動作試験に向けた制御系の開発状況について報告する。

38001130
IFMIF/EVEDA原型加速器の進捗状況
神藤 勝啓; Vermare, C.*; 浅原 浩雄; 杉本 昌義; Garin, P.*; 前原 直; 高橋 博樹; 榊 泰直; 小島 敏行; 大平 茂; 菊地 孝行; 久保 隆司; 米本 和浩; 木村 晴行; 奥村 義和
Proceedings of 6th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (CD-ROM) , p.668-670(2010) ; (JAEA-J 07788)
 国際核融合材料照射施設(IFMIF)に関する工学実証及び工学設計活動(EVEDA)における原型加速器の2008年度の進捗について報告する。原型加速器のすべての加速器機器は、それぞれ設計が始まり、製作や個別試験についての計画を策定し、設計パラメータを決めてきた。個々の機器の進捗を分析し、IFMIF加速器の工学実証の計画を検討した結果、事業期間を2014年まで延長することが提案され、BA運営委員会で承認された。本発表では、各加速器機器の設計状況、欧州と日本が担当している加速器機器群と、日本が担当している六ヶ所村のIFMIF/EVEDA開発試験棟建屋のインターフェイスや現在までに提案されている工学実証試験での運転計画を報告する。

[ page top ]
JAEA > JAEA図書館 > JOPSS > 学会誌等掲載論文[バックナンバー] >  2010年8月
Copyright (C), Japan Atomic Energy Agency (JAEA)