学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2011年5月


39000604
Re-evaluation of assay data of spent nuclear fuel obtained at Japan Atomic Energy Research Institute for validation of burnup calculation code systems
須山 賢也; 村崎 穣*; 大久保 清志; 中原 嘉則*; 内山 軍蔵
Annals of Nuclear Energy 38(5), p.930-941(2011) ; (JAEA-J 08818)
 核燃料サイクルや原子炉物理の研究にとって使用済燃料同位体組成データは不可欠である。日本原子力研究開発機構(JAEA)はPWRやBWR燃料のそれらのデータの取得を行っており、幾つかのそれらのデータは既に公刊され、使用済燃料同位体組成データベースSFCOMPOに登録され、計算コードやライブラリの国際的なベンチマークに使用されてきた。本論文では、日本のPWRである大飯1号及び大飯2号で照射された燃料に対する照射後試験データが示される。大飯2号のデータは既に公開されていたが、幾つかの重要な仕様データが未公開であったため、コードやライブラリのベンチマークには適していなかった。この論文では、大飯1号及び大飯2号のPIEデータの詳細をまとめるとともに、同位体組成の評価に必要なデータが詳細に述べられる。詳細な燃焼解析のためにPIEサンプルの燃焼度が再評価された。これらのPIEデータはSWAT2.1コードで解析され、その結果は実験値と良い一致を見せた。このことは、大飯1号及び大飯2号からのPIEデータは高い品質を有しており、燃焼計算コードシステムのベンチマークに適していることを示している。

39000605
Electron paramagnetic resonance study of unpaired electron species in thin films of pyrimidine bases induced by nitrogen and oxygen K-shell photoabsorption
岡 壽崇; 横谷 明徳; 藤井 健太郎
Applied Physics Letters 98(10), p.103701_1-103701_3(2011) ; (JAEA-J 08820)
 窒素及び酸素の内殻電子の励起・イオン化によって引き起こされるDNA核酸塩基変異の物理化学過程の解明のため、ピリミジン核酸塩基(チミン,シトシン)のEPR測定を行った。軟X線照射中のみ塩基上に誘起されるsingletな不対電子のg値は2.000であり、自由電子のそれ(2.0023)よりも低い値であることがわかった。また、EPR信号強度の窒素・酸素のK殻吸収端近傍の軟X線エネルギー依存性を調べたところ、シトシンのEPR強度は軟X線の吸収断面積から求めた強度よりも2倍以上大きかったが、チミンのそれはほとんど変わらなかったことから、シトシンはチミンと比べて内殻励起・イオン化による不対電子収率が高いことが示唆された。シトシンは内殻イオン化によって生成した正孔に加え、光電子やオージェ電子の付着の結果生じるアニオンラジカルを一緒に検出しているために不対電子収率が高くなると考えられる。シトシンはDNA塩基変異過程において、電子の一時貯蔵庫の役割を果たしていることが推測される。

39000606
Force constants of Cu crystals from diffuse neutron scattering measurement
佐久間 隆*; Mohapatra, S. R.*; 上原 寛之*; 酒井 竜太郎*; Xianglian*; 高橋 東之*; 井川 直樹; Basar, K.*
Atom Indonesia 36(3), p.121-124(2010) ; (JAEA-J 08821)
 10K及び300Kの銅の中性子回折測定を行い、原子熱変位における相関効果より中性子散漫散乱を解析した。300KにおけるDebye-Waller温度因子から求めた銅の第1,第2及び第3最近接原子間の力定数は各々5.58, 3.63 and 2.37eV/Å2である。この金属における相関効果と原子間距離の関係は結晶結合状態に依存しないことが明らかとなった。

39000607
Transient behaviour of 4.8g/cc silicide fuel, 1; Abnormal withdrawal of control rod during a start-up of JMTR
柳澤 和章
International Journal of Nuclear Energy Science and Technology 6(1), p.55-63(2011) ; (JAEA-J 08822)
 材料試験炉(JMTR)は、高濃縮から低濃縮炉心(20wt%以下)への変更のためにシリサイド燃料を装荷した。実験では、JMTR炉の起動時に制御棒の異常引抜が発生し毎秒0.35%反応度(Δk/k)が入ることを想定した。この実験値は、JMTR安全審査に使用したEUREKA2計算コード入力値の約2倍である。実験の結果、試験燃料板(4.8g/ccシリサイド燃料)は137度まで急速加熱された。一般的に焼き割れ破損はクエンチ時間tqが0.13秒以下及びクエンチ温度幅Tが94度以上という条件下で発生するが、供試試料ではクエンチ時間tqが0.11秒と短かったもののクエンチ温度幅が28度と小さく、このため、供試試料には焼き割れメカニズムに基づく破損発生がなかった。制御棒引き抜き事故に対するJMTRの安全余裕が確認された。

39000608
Giant spin Hall effect of Au films with Pt impurities; Surface-assisted skew scattering
Gu, B.; Ziman, T.*; Guo, G.-Y.*; 永長 直人; 前川 禎通
Journal of Applied Physics 109(7), p.070502_1-070502_3(2011) ; (JAEA-J 08823)
 表面で発生するスキュー散乱の効果を考えることにより、室温で巨大なスピンホール効果が現れることを理論的に示した。密度汎関数理論と量子モンテカルロ法を組合せ、さまざまな金の中におけるプラチナ不純物によるスピンホール効果を調べた。バルクの金ではスピンホール角は小さいにもかかわらず、金の(111)面において、スピンホール角が0.1よりも大きくなりうること、また金(001)面上では約半分に減少することを示した。この量子モンテカルロによる結果は、プラチナ不純物のスピン軌道相互作用が金の(001)面と(111)面において増大していることを示している。この現象は、プラチナの5dレベルは電荷ゆらぎによってフェルミレベルまで上昇するため、加えてバルクの金や金(001)面上においてはプラチナに対して1つのチャンネルだけであるが、金(111)面上では、2つのチャンネルが存在するために生じることを明らかにした。

39000609
Standard Gibbs free energies for transfer of actinyl ions at the aqueous/organic solution interface
北辻 章浩; 奥垣 智彦*; 糟野 潤*; 久保田 宏紀*; 前田 耕治*; 木村 貴海; 吉田 善行; 木原 壯林*
Journal of Chemical Thermodynamics 43(6), p.844-851(2011) ; (JAEA-J 08824)
 液々分配法とイオン移動ボルタンメトリーにより、5価及び6価アクチニルイオンの水相/有機相間移動標準ギブスエネルギーを決定した。ニトロベンゼン, 1,2-ジクロロエタン,ベンゾニトリル,アセトフェノン、及び2-ニトロフェニルオクチルエーテルを有機溶媒として用いた。有機溶媒の種類によらず、U(VI), Np(VI), Pu(VI)のイオン移動ギブスエネルギーはほぼ一致し、Mg(II)よりも少し大きい値であった。Np(V)のイオン移動ギブスエネルギーは他の一価イオンに比べて非常に大きな値を示した。アクチニルイオンのイオン移動ギブズエネルギーの溶媒に対する依存性は、プロトンイオンやMg(II)のそれと類似していた。3価及び4価アクチノイドイオンについてもイオン移動ギブスエネルギーの検討を行った。

39000610
Safety design requirements for safety systems and components of JSFR
久保 重信*; 島川 佳郎*; 山野 秀将; 小竹 庄司
Journal of Nuclear Science and Technology 48(4), p.547-555(2011) ; (JAEA-J 08825)
 JSFRの安全設計要件は、FaCTプロジェクトの開発目標及びJSFRの設計特長を考慮してまとめられた。この安全設計基準を次世代の世界標準とすべく、もんじゅ,CRBRP・PRISM・SPX・軽水炉の関連安全原則及び要件,IAEA基準,GIFの目標,INPROの基本原則なども考慮した。安全性及び信頼性の開発目標はFaCTのものをもとに設定されている。具体的には、将来の軽水炉及び関連の燃料サイクル施設と同等の安全性と信頼性が確保してある。これらの目標を達成するため、安全設計原則として深層防護思想が用いられている。安全設計要件の大まかな特長は次のとおりである。(1)信頼性の向上,(2)検査性・保全性の向上,(3)受動安全特長の導入,(4)運転員による作業の必要性の軽減,(5)設計基準外事象を考慮した設計,(6)崩壊炉心物質の容器内保持,(7)ナトリウム化学反応の防止及び緩和,(8)外部事象に対する設計。現在のシステムや機器の個別要件は、JSFRの基本設計概念を考慮してまとめられた。JSFRは炉心に混合酸化物燃料を使用し、ループ型で大出力の次世代発電所である。

39000611
Ion beam irradiation effects on resist materials
五輪 智子*; 高橋 朋宏*; 岡 壽崇; 村上 健*; 大島 明博*; 田川 精一*; 鷲尾 方一*
Journal of Photopolymer Science and Technology 23(3), p.399-404(2010) ; (JAEA-J 08826)
 6 MeV/u ion beams (Si14+, Ar18+, etc.) and 30 kV Ga+ focused ion beam (FIB) were irradiated to a chemical amplified deep-UV resist and electron beam resist. The resist sensitivities were correlated with the energy deposition of ion beams, we obtained clear patterns of the resists. In contrast, crosslinking reaction of resist polymer was induced by the FIB irradiation, positive-negative inversion took place.

39000612
Electronic structure of U(Ru1-xRhx)2Si2 studied by laser angle-resolved photoemission spectroscopy
吉田 力矢*; 中村 祥明*; 福井 仁紀*; 芳賀 芳範; 山本 悦嗣; 大貫 惇睦; 大川 万里生*; Shin, S.*; 平井 正明*; 村岡 祐治*; 横谷 尚睦*
Journal of Physics; Conference Series 273, p.012021_1-012021_4(2011) ; (JAEA-J 08827)
 Electronic structures of U(Ru1-xRhx)2Si2 is studied employing ultrahigh-resolution laser angle-resolved photoemission spectroscopy. A hole-like dispersive feature, which presumably has Rh d-band character, was observed.However, although a heavy quasiparticle band appears in the hidden-order state of URu2Si2 (x = 0), it was not observed for x = 0.03 over the temperature range studied.

39000613
Magnetization in the superconducting mixed state of the heavy-fermion compound UBe13
清水 悠晴*; 池田 陽一*; 若林 琢巳*; 天谷 健一*; 芳賀 芳範; 日高 宏之*; 柳澤 達也*; 網塚 浩*
Journal of Physics; Conference Series 273, p.012084_1-012084_4(2011) ; (JAEA-J 08828)
 Static dc magnetization measurements in the superconducting mixed state of a single crystal UBe13 were performed by means of a capacitance Faraday-force method down to 0.24 K. Below the upper critical field Bc2, not only a peak effect but also an additional broad anomaly have been observed in magnetization curves. We report superconducting phase diagram of UBe13 obtained by our magnetization measurements, including these anomalies.

39000614
Single crystal growth and physical properties of ternary uranium compounds UM2Al10 (M=Fe, Ru and Os)
菅井 孝志; 芳賀 芳範; 松田 達磨; 山本 悦嗣; 立岩 尚之; 本多 史憲*; 摂待 力生*; 大貫 惇睦
Journal of Physics; Conference Series 273, p.012122_1-012122_4(2011) ; (JAEA-J 08829)
 We investigated the ternary uranium compounds UM2Al10 (M = Fe, Ru and Os) with the orthorhombic YbFe2Al10-type crystal structure. URu2Al10 and UOs2Al10 are new compounds grown for the first time. These compounds show no ordering despite the Curie-Weiss behavior at high temperatures. The temperature dependence of the electrical resistivity, the specific heat and the magnetic susceptibility indicate that UM2Al10 (M = Fe, Ru and Os) has non-magnetic ground states.

39000615
Champion data comparison in nuclear research institutes in Europe, the U. S., and Japan
柳澤 和章; Cutler, D.*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 287(3), p.879-886(2011) ; (JAEA-J 08830)
 日本,米国及び欧州(仏,独)で活躍する優秀原子力研究機関(PNRI)を対象に、計量書誌学的な手法でチャンピオンデータ比較を実施した。ツールには、INIS(IAEA主管), ECD(DOE主管), WOS(トムソンロイター主管)及びSCOPUS(エルゼビア主管)を用いた。INISは原子力に関する研究論文をあまねく収集しているツールであり、追跡評価に適している。30年を超える蓄積研究論文数で11PNRI中のチャンピオンを探すと、INISではJAERIが1位となり、ECD, WOS及びSCOPUSではORNLが1位と認定される。WOSとSCOPUSは研究論文を主体的に収集するツールである。計量書誌学的分析で用いられたツールによる結果については、個々のデータベースに存在する異なった特性が、時として計量書誌学的には矛盾した結果を誘導することもあるので、特性を構成する種々の影響因子についてその背後に潜んでいるものを注意深く見極める必要がある。このことは、INIS, ECD, WOS及びSCOPUSをそれぞれ用いて、特に5年ごとのチャンピオンデータ比較をした場合、如実に観察される事実である。

39000616
High-pressure Raman spectroscopy of transition metal cyanides
守友 浩*; 松田 智行*; 渕側 良太*; 阿部 雄太; 上岡 隼人*
Journal of the Physical Society of Japan 80(2), p.024603_1-024603_5(2011) ; (JAEA-J 08832)
 Prussian blue lattice is known to show characteristic thermal response; coefficient(β ≡ da /dT ; a is lattice constant) of the thermal expansion changes the sign from positive to negative with increase in a. In order to comprehend the curious thermal response, we systematically investigated pressure-response of lattice for AxM2+[Fe3+(CN)6]yzH2O (A = Rb and Cs, M = Ni, Zn and Cd) by means of high-pressure Raman spectroscopy. We found that pressure coefficients (α ≡ d ħω /dP of the Raman shift(ħω) for the CN stretching modes are fairly suppressed in the M = Cd compounds. The suppression of α is interpreted in terms of the enhance rotational instability of the Fe(CN)6 octahedra in the large-a region.

39000617
1-MW pulsed spallation neutron source (JSNS) at J-PARC
二川 正敏; 前川 藤夫; 坂元 眞一
Neutron News 22(1), p.15-19(2011) ; (JAEA-J 08834)
 J-PARCの核破砕中性子源JSNSでは、2008年5月30日に初の中性子が観測され、同年12月には初のユーザーを迎えた。2010年時点の陽子ビーム出力は120kWであり、1MWに向けて上昇中である。試運転によって、中性子性能の点でわれわれの設計が妥当であることを確認することができた。しかし、低出力条件ながら、極低温水素システムの不安定性やある構成機器での予期せぬ高線量など予期せぬ事象に遭遇した。これらの事象を理解して解決するため、原因調査と改良を継続的に行った。1MW出力の線源に到達するため、水銀ターゲット系の圧力波抑制技術,陽子ビームプロファイル平坦化技術,低放射化デカップラ材料開発等、幾つかのR&D項目にわれわれは取り組んでいる。

39000618
Characteristics and control of the Type I edge localized mode in JT-60U
大山 直幸; 林 伸彦; 相羽 信行; 諫山 明彦; 浦野 創; 坂本 宜照; 鎌田 裕; 滝塚 知典; JT-60チーム
Nuclear Fusion 51(3), p.033009_1-033009_9(2011) ; (JAEA-J 08835)
 Type I ELMによる崩壊フェーズの前に温度・密度揺動が観測される。前兆振動の成長率はγ/ωA ∼ 10-3と評価された。トロイダル方向で異なる2か所で測定したECE信号の位相遅れと前兆振動の周波数から、トロイダルモード数nは8-10ないしは14-16と評価された。また、主要なnがELMごとに変化することがわかった。ペデスタルより内側の圧力勾配とペデスタル部の圧力勾配の比が大きくなると、ELMによるペデスタル部の電子温度の減少率が大きくなるとともに、崩壊領域が広くなることを確認した。強磁場側上部のプラズマに1.57MWの電子サイクロトロン波を入射することにより、ELM周波数が増加するとともに、規格化したELMエネルギー損失を33%低減することができた。

39000619
Efficient multi-keV X-ray generation from a high-Z target irradiated with a clean ultra-short laser pulse
Zhang, Z.*; 錦野 将元; 西村 博明*; 河内 哲哉; Pirozhkov, A. S.; 匂坂 明人; 織茂 聡; 小倉 浩一; 余語 覚文; 岡野 泰彬*; 大島 慎介*; 砂原 淳*; 藤岡 慎介*; 桐山 博光; 近藤 公伯; 下村 拓也; 金沢 修平
Optics Express 19(5), p.4560-4565(2011) ; (JAEA-J 08836)
 近年の超高強度レーザー技術の進展により、高輝度の単色X線パルスの発生が実現している。そこで高コントラスト超高強度フェムト秒レーザーパルスによるモリブデンと銀平板ターゲットを用いた高効率K殻特性X線発生実験を行った。Mo 17keVとAg 22keVのX線発生効率の絶対値の計測を行い、これまでの理論予測値と同じ程度の高効率でX線が発生していることを確認した。

39000620
Small jump of specific heat and small gap in iron pnictide superconductors
中井 宣之; 中村 博樹; 太田 幸宏; 永井 佑紀*; 林 伸彦*; 町田 昌彦
Physica C 470(Suppl.1), p.S368-S369(2010) ; (JAEA-J 08838)
 We demonstrate that a realistic multi-band model consistently explains the specific heat of typical iron-based superconductor. With density of states of each band obtained by first principle calculations, we evaluate multiple full-gap amplitudes from the angle resolved photoemission spectroscopy and successfully reproduce the specific heat. Consequently, it is found that the specific heat strongly depends density of states. In addition, the present calculations reveal that superconducting states of the iron-based pnictide are mainly characterized by two factors. One is an amplitude difference between large and small gaps, and the other is the distribution of their gap amplitudes.

39000621
Huge upper critical field in the superconductor with non-centrosymmetric crystal structure CeCoGe3
Méasson, M.-A.*; 村中 大志*; 松田 達磨; 河井 友也*; 芳賀 芳範; Knebel, G.*; 青木 大*; Lapertot, G.*; 本多 史憲*; 摂待 力生*; Brison, J. P.*; Flouquet, J.*; 清水 克哉*; 大貫 惇睦*
Physica C 470(Suppl.1), p.S536-S538(2010) ; (JAEA-J 08839)
 We report the upper critical field, Hc2, of the non-centrosymmetric compound CeCoGe3 by resistivity measurements under high pressure of 7.1 GPa, for H along c and a axis, and for a magnetic field up to 17T. Hc2 is very anisotropic, saturating at low temperature for H along the a axis and linear for H along the c axis. Very high Hc2(T) is observed for H along the c axis, with a huge value of the slope dHc2/dT = -47 ± 1.3 T/K, the highest ever reported if normalized to the superconducting temperature of 0.65 K. This is most probably related to a conjunction of a heavy fermionic state and the absence of the Pauli limitation. A fit of Hc2(T) shows that the curves for a and c axis can be reproduced with a moderate coupling Eliashberg theory.

39000622
Simulation study on the vortex penetration in the presence of the square antidot array
中井 宣之; 町田 昌彦
Physica C 470(20), p.1148-1150(2010) ; (JAEA-J 08840)
 On the basis of the time-dependent Ginzburg-Landau theory we perform numerical simulations to study vortex penetration in the presence of the square antidot array. Two types of vortex penetration are demonstrated as the simulation results. The field penetration pattern is dependent on the size of the antidots, which is a critical factor for the direction of the vortex penetration.

39000623
First-principles-based s±-wave modeling for iron-based superconductors; Specific heat and nuclear magnetic relaxation rate
中井 宣之; 中村 博樹; 太田 幸宏; 永井 佑紀; 林 伸彦*; 町田 昌彦
Physical Review B 82(9), p.094501_1-094501_5(2010) ; (JAEA-J 08841)
 最近、発見された鉄砒素系超伝導体と呼ばれる物質群は、その超伝導転移温度が銅酸化物高温超伝導体に次いで高いため、超伝導の発現機構を調べる基礎研究だけでなく、応用研究も盛んに行われている。しかし、現時点で、この鉄砒素系超伝導体では、従来の理論だけで解決できない実験事実が非常に多く、異なるさまざまな結果の系統的理解に至っていない。そこで、この問題を解決するため、発表者らは、鉄砒素系超伝導体の第一原理計算に基づくs±波超伝導体模型を用い、比熱と核磁気緩和率の実験の再現を数値計算手法を使って行った。その結果、バンドごとに異なる超伝導ギャップの大きさを決め、それらの比を物質依存させることにより、比熱と核磁気緩和率の実験結果の再現に成功したほか、それらは光電子分光,磁場侵入長測定の実験結果とも矛盾しないことを明らかにした。また、本研究結果に基づくと、比熱,核磁気緩和率,磁場侵入長等の実験結果をよりよく再現するのは、非従来型であるs±波のマルチギャップ超伝導であると断定できることがわかった。なお、本研究は、科学技術振興機構からの受託研究課題「超伝導新奇応用のためのマルチスケール・マルチフィジックスシミュレーション基盤の構築」の下、行われた。

39000624
Superconducting gap function in the organic superconductor (TMTSF)2ClO4 with anion ordering; First-principles calculations and quasiclassical analysis for angle-resolved heat capacity
永井 佑紀; 中村 博樹; 町田 昌彦
Physical Review B 83(10), p.104523_1-104523_8(2011) ; (JAEA-J 08842)
 有機超伝導体(TMTSF)2ClO4は、擬一次元系という単純な物質でありながら、超伝導や磁性などが現れる興味深い物質であり、その超伝導機構は未だ解決されていない。本論文では、上記課題に対し、第一原理計算と現象論的手法を組合せた比熱実験解析手法を考案し、シミュレーションを行うことで磁場回転比熱測定実験結果の解析に成功したことを報告する。なお、上記課題の解決にあたり、低温でアニオンClO4が整列しているということを正しく考慮するため、実験で得られた格子構造のデータを用いると、正しく電子状態が推定可能となり解決への糸口となった。この成果は、有機超伝導体の超伝導機構解明へ一歩前進し、高温超伝導体等の他の多彩な超伝導体の超伝導機構解明への糸口になる一方、原子力材料一般の比熱等の熱物性予測にも貢献可能であり、広く適用可能である。

39000625
Numerical study on the spin Seebeck effect
大江 純一郎; 安立 裕人; 高橋 三郎; 前川 禎通
Physical Review B 83(11), p.115118_1-115118_5(2011) ; (JAEA-J 08843)
 熱勾配によって誘起される強磁性絶縁体中のスピン波について理論解析を行った。特に、非磁性端子によって観測されるスピン波スピン流の電気的シグナルを計算できる数値シミュレーション法を開発した。揺動散逸定理により温度勾配中の磁化の運動を再現し、計算によって得られたシグナルは実験と良い一致を示した。

39000626
Surface-assisted spin Hall effect in Au films with Pt impurities
Gu, B.; 管井 勇*; Ziman, T.*; Guo, G. Y.*; 永長 直人; 関 剛斎*; 高梨 弘毅; 前川 禎通
Physical Review Letters 105(21), p.216401_1-216401_4(2010) ; (JAEA-J 08844)
 We show, both experimentally and theoretically, a novel route to obtain giant room temperature spin Hall effect due to surface-assisted skew scattering. In the experiment, we report the spin Hall effect in Pt-doped Au films with different thicknesses tN. The giant spin Hall angle γS = 0.12 ± 0.04 is obtained for tN = 10 nm at room temperature, while it is much smaller for tN = 20 nm sample. Combined ab initio and quantum Monte Carlo calculations for the skew scattering due to a Pt impurity show γS ≌ 0.1 on the Au (111) surface, while it is small in bulk Au. The quantum Monte Carlo results show that the spin-orbit interaction of the Pt impurity on the Au (111) surface is enhanced, because the Pt 5d levels are lifted to the Fermi level due to the valence fluctuation. In addition, there are two spin-orbit interaction channels on the Au (111) surface, while only one in bulk Au.

39000627
Effects of mechanical rotation on spin currents
松尾 衛*; 家田 淳一; 齊藤 英治; 前川 禎通
Physical Review Letters 106(7), p.076601_1-076601_4(2011) ; (JAEA-J 08845)
 スピンと力学回転の結合を記述するため、一様回転系におけるパウリ-シュレーディンガー方程式を研究する。力学的回転による慣性の効果を含むスピン軌道相互作用の明示的な形式を示す。このスピン軌道相互作用の存在下で二次元面内の電子波束の運動方程式を導出する。その解は、異なる周波数を持つ二つのサイクロトロン運動の重ね合わせとなっており、力学回転による循環スピン流が生成される。

39000628
Neutron spectra measurements at JAEA MOX fuel facility
辻村 憲雄; 吉田 忠義; 佐川 直貴; 庄司 茂
Progress in Nuclear Science and Technology 1, p.154-157(2011) ; (JAEA-J 08846)
 The Nuclear Fuel Cycle Engineering Laboratories (NCL) of the Japan Atomic Energy Agency fabricates MOX fuels for FBRs Monju and Joyo in the Plutonium Fuel Production Facility (PFPF). The MOX pellet contains plutonium of 20-30w%; therefore neutron exposures to workers in the fabrication process are of concern for radiation protection. For a good knowledge on spectra, during the second reload-fuel production campaign for the Joyo reactor, neutron spectrum measurements were made at 20 locations representative of the PFPF using the Bonner multisphere spectrometer. The unfolding code SAND-II was used to determine the neutron spectrum from each set of count data. The unfolded results show that the range of average neutron energies for all locations is from 0.35 to 1.6 MeV; spectrum-averaged fluence-to-ambient dose equivalent conversion coefficients 100 to 340 pSv cm2.

39000629
New criticality accident alarm system detectors at the JAEA Tokai Reprocessing Plant
辻村 憲雄; 吉田 忠義
Progress in Nuclear Science and Technology 1, p.202-205(2011) ; (JAEA-J 08847)
 原子力機構核燃料サイクル工学研究所の再処理工場では、臨界警報装置を1984年から設置,運用している。高経年化のため、従来検出器に代わる新しい臨界警報装置用検出器を開発した。新しい検出器は、プラスチックシンチレータと、カドミウムを内張りしたポリエチレン減速材からなり、γ線だけでなく中性子にも感度を持つ。試作した検出器について、パルス炉で作動試験を実施し、満足な性能を確認した。市販用検出器について、現在、再処理工場において実証試験中であり、2009年10月から運転を開始する予定である。

39000630
Study on depth profile of heavy ion irradiation effects in poly(tetrafluoroethylene-co-ethylene)
五輪 智子*; 塩津 智之*; 裏川 達也*; 岡 壽崇; 村上 健*; 大島 明博*; 濱 義昌*; 鷲尾 方一*
Radiation Physics and Chemistry 80(2), p.264-267(2011) ; (JAEA-J 08848)
 高LET放射線である重粒子線をETFEに真空、及び大気中で照射した。ETFEに対する照射効果を重粒子線の進入深さの関数として評価した。重粒子線照射によって共役二重結合が生成し、その生成量分布はブラッグ曲線に非常によく似ていること、LETが高くなるほど、C=Cの二重結合の長さが長くなることがわかった。さらに、大気中照射においては、試料表面からの酸素分子の拡散により、C=O結合が増加することが明らかになった。

39000631
Changes to the chemical structure of isotactic-polypropylene induced by ion-beam irradiation
岡 壽崇; 大島 明博*; 本橋 良太*; 瀬戸 直人*; 渡邊 裕司*; 小林 亮二*; 斉藤 功樹*; 工藤 久明*; 村上 健*; 鷲尾 方一*; 濱 義昌*
Radiation Physics and Chemistry 80(2), p.278-280(2011) ; (JAEA-J 08849)
 アイソタクチックポリスチレンに種々のイオンビームを照射し、化学構造の変化を調べた。顕微赤外分光及び紫外可視分光の結果から、LETとフルエンスによって化学構造変化が大きく変化することが明らかになった。

39000632
Irradiation tests for the development of FBR in Joyo
前田 幸基; 伊藤 主税; 曽我 知則
Transactions of the American Nuclear Society 102(1), p.742-743(2010) ; (JAEA-J 08850)
 高速実験炉「常陽」は日本で最初に建設された高速増殖炉である。「常陽」は1977年の初臨界以来、順調に運転されてきており、1982年には照射試験用のMK-II炉心に改造され、高速原型炉「もんじゅ」や後続炉のための種々の照射試験が実施された。2003年には照射試験能力を向上させるため、より高性能なMK-III炉心への改造が行われ、MA含有MOX燃料の照射試験やODS鋼の照射試験等が行われた。これらの成果は、FaCTプロジェクトをはじめGEN-IV等の国際協力にも活用される。今後も「常陽」は世界でも数少ない高速中性子照射炉として高速増殖炉開発に貢献していく。

39000633
プルトニウム燃料第二開発室の廃止措置について
家村 圭輔; 中井 宏二; 綿引 政俊; 北村 哲浩; 鈴木 一敬; 青木 義一
デコミッショニング技報 (43), p.2-9(2011) ; (JAEA-J 08851)
 プルトニウム燃料第二開発室は、燃料製造施設としての役割を終了し、初期の目的を達成した。現在は、施設を廃止措置していくため、燃料製造等で発生したスクラップなどの施設内に残っている残存核燃料物質を有効活用するための処理作業等を進めている。一方、当該施設は高経年化により、建屋付帯設備や燃料製造工程設備グローブボックスの老朽化が進行しており、施設の保安レベルを維持させるため順次撤去可能な設備から撤去を行う必要がある。この際、解体廃棄物は廃棄体化処理施設が整備されるまで、施設内に保管廃棄し、その後払い出し、施設内に汚染がないことを確認して、最終的に建屋を解体する予定である。

39000634
ペレット仕上検査設備2号機の開発
鈴木 嘉浩*; 荒井 康*
FAPIG (182), p.9-14(2011) ; (JAEA-J 08852)
 我が国では、ウラン資源の有効利用に向けて高速炉や軽水炉によるプルトニウム利用の計画が進められている。これら原子炉に供するMOX燃料のうち、高速炉向けは1988年から日本原子力研究開発機構殿のMOX燃料製造施設で製造が開始され現在に至っており、軽水炉向けについては日本原燃殿MOX燃料工場での製造が決定し、2010年に建設が開始された。富士電機は、1990年代から高速炉向けMOX燃料の製造設備の設計・製作を手掛けてきており、2010年2月に日本原子力研究開発機構殿へ「ペレット仕上検査設備2号機」を納入している。本稿では、「ペレット仕上検査設備2号機」の設備概要を紹介する。

39000635
ITERトロイダル磁場コイルの製造技術開発
千田 豊; 中嶋 秀夫
FAPIG (182), p.15-20(2011) ; (JAEA-J 08853)
 ITER計画におけるトロイダル磁場(TF)コイルの調達に関して、日本は原子力機構を窓口として25%の導体,9個のコイル,19個のコイル構造物を担当しており、現在、導体製作の約20%が完了し、コイル及びコイル構造物については実規模試作をメーカーと協力して進めている。本報告ではこれらの進捗状況をまとめるとともにTFコイルの製作技術と技術開発状況について記述する。

39000636
日本原子力研究開発機構の新スーパーコンピュータシステム
清水 大志; 坂本 健作; 吉岡 祐二*
FAPIG (182), p.26-29(2011) ; (JAEA-J 08854)
 日本原子力研究開発機構(以下、「原子力機構」)では、計算科学を活用した原子力の研究開発を加速するため、平成22年3月に旧システム(総理論演算性能15.3TFlops)を刷新し、当時国内最大規模となる総理論演算性能200TFLOPSの大規模Linuxクラスタシステム(PRIMERGY BX900)と、総理論演算性能12TFlopsの次世代計算機プロトタイプ機(FX1)等からなるスーパーコンピュータシステム一式を導入、これらの運用を開始した。BX900は旺盛な計算需要に応えること、FX1は次世代スーパーコンピュータ(京コンピュータ)の利用に向けた原子力アプリケーションのチューニング環境を提供することを目的としている。本稿では、原子力機構が新たに導入した新スーパーコンピュータシステムの特徴や機能について紹介する。

39000637
欧州で進展する核変換技術の研究開発
大井川 宏之
原子力eye 57(3), p.52-56(2011) ; (JAEA-J 08856)
 高レベル放射性廃棄物の処分の負担軽減を目指す核変換技術のうち、加速器駆動システム(ADS)の研究開発が欧州において活発に進められている。2005年から2010年まで行われたEUROTRANSプロジェクトでは、ADSの設計と実験,燃材料,核データ等について幅広い研究開発が行われ、実験炉級ADSの設計が提示された。これを受け、ベルギーにおける実験炉級ADS計画であるMYRRHAプロジェクトが、2016年の着工を目指して本格化している。我が国ではJ-PARCの第2期計画である核変換実験施設計画があり、これとMYRRHAが連携して、核変換用ADSの実用化に向けた研究開発を先導することが重要である。

39000638
我が国の高速増殖炉研究開発の最前線
向 和夫
技術総合誌OHM 98(1), p.39-44(2011) ; (JAEA-J 08857)
 高速増殖炉(FBR)は、長期的エネルギー安定供給や環境負荷低減等の観点から次世代炉の本命である。その高速増殖炉の実用化を目指し、高速増殖炉サイクル実用化研究開発と高速増殖原型炉もんじゅ研究開発の2大プロジェクトを推進している。「もんじゅ」は、平成22年5月6日に運転再開を果たし、5月8日には臨界を達成して性能試験の第一段階である炉心確認試験を実施し、安全上の技術基準を満足していることが確認されるとともに、将来炉の炉心設計に有益なデータを取得した。今後の「もんじゅ」では、性能試験の次のステップである「40%出力プラント確認試験」に向けた準備を着実に行い、安全確保を最優先として、透明性を高め、性能試験を進めていくとともに、国内関係機関との連携の下、我が国の高速増殖炉サイクル実用化に向けて、FaCTプロジェクトを着実に推進していく。原子力機構は、エネルギー安定供給と環境問題を同時解決するために、国民の理解と信頼を得つつ、着実に原子力の研究開発を進めていくことに今後も努力していく。

39000639
JRR-3における中性子ラジオグラフィ装置の利用法
飯倉 寛
非破壊検査 60(2), p.93-97(2011) ; (JAEA-J 08858)
 特集「中性子による材料評価技術」の中で中性子イメージングに関する記事を担当した。本稿では原子力機構JRR-3に設置されている熱中性子ラジオグラフィ装置(TNRF)を利用するにあたり、装置や技術の基本情報や具体的な利用までの流れ、注意点などをわかりやすくまとめた。具体的な解説項目は、(1)TNRF装置に関する情報,(2)中性子マクロ断面積情報からのコントラスト評価,(3)中性子照射による試料放射化にかかわる注意点,(4)視野や空間分解能を含めた撮像システム,(5)基本的な画像処理,(6)撮像にかかわる時間,(7)液体や粉末を含む試料の撮像における注意点,(8)装置利用状況など、中性子利用未経験者にもわかりやすく潜在的ハードルを下げるような解説を行った。

39000640
治療用重粒子イオンビームの放射線化学反応
山下 真一
放射線化学(Internet) (90), p.11-16(2010) ; (JAEA-J 08860)
 放射線医学総合研究所のHIMAC(Heavy Ion Medical Accelerator in Chiba)から供給される高エネルギー重粒子線による水の放射線分解について、生成物収率とトラック構造・ダイナミクスとの相関という観点から調べてきた。捕捉剤による転換を利用することで、広い範囲のLETのイオンビームに対して水和電子・OHラジカル・過酸化水素といった主要生成物の収率を測定してきた。メチルビオローゲン(MV)-ギ酸水溶液系では、近似的に水分解ラジカルの収率の総和と見なせるMVカチオンラジカルの収率を測り、その時間挙動からトラック内ダイナミクスについても検討した。また、モンテカルロ計算による測定結果の再現や、蛍光プローブを利用した高感度OHラジカル検出手法の開発についても簡潔に触れる。

39000641
軟X線照射によるDNA損傷の光子エネルギーによる選択的な依存性
藤井 健太郎
放射線化学(Internet) (90), p.17-22(2010) ; (JAEA-J 08861)
 軟X線によって乾燥DNA中に生じる分子主鎖切断や酸化的塩基損傷の収量を電気泳動法によって検出した。塩基損傷の検出は、照射試料を塩基除去修復酵素で処理することによって塩基損傷を査切断に変換することで定量した。それぞれの収量は、軟X線のエネルギーに依存し、特に酸素K殻吸収によって鎖切断及び塩基損傷の収量に有意な増加が見られた。

39000642
日本におけるシステム放射線生物学(SRB)の胎動
坂下 哲哉; 鈴木 芳代; 大内 則幸; 伴 信彦*
放射線生物研究 45(4), p.379-395(2010) ; (JAEA-J 08862)
 近年、放射線防護と放射線影響の分野において、生命現象を「多種多様な構成要素からなる複雑な大規模システム」として捉える「システムバイオロジー(Systems Biology)」を用いて放射線影響の理解を試みる「システム放射線生物学(Systems Radiation Biology)」の研究及びプロジェクトが欧米を中心に進められている。また、日本においてもシステム放射線生物学への関心が高まりつつある。本解説では、システム放射線生物学とはそもそもどのような研究分野であり何を目指しているのか、将来自分たちの研究にどのように役立つものなのか等について、4人の研究者が異なる立場からオムニバス形式にて概説する。

39000643
がん診断・治療に向けた新しいRI標識薬剤の開発
渡邉 茂樹; 石岡 典子
放射線と産業 (129), p.27-31(2011) ; (JAEA-J 08863)
 「イオンビームを用いたバイオ・医療への応用研究の最前線」の特集において「がん診断・治療に向けた新しいRI標識薬剤の開発」と題して投稿する。本投稿内容は、これまでRI医療応用研究グループで進めてきた加速器又は原子炉を用いた新しいRIの製造法、及びこれらRIの標識薬剤の開発に関する最新成果について記述するものである。具体的には加速器を用いて製造した64Cu及び76Br、原子炉を用いて製造した177Luのそれぞれの製造法,標識薬剤合成、及びPET診断用薬剤(64Cu, 76Br)又は治療用薬剤(177Lu)としての評価に関する最新の研究内容を紹介する。

39000644
中性子応力測定技術の最近の進歩
鈴木 裕士
検査技術 16(4), p.1-11(2011) ; (JAEA-J 08866)
 中性子応力測定技術は、原子間を標点間距離とする物理的なひずみ計測法であり、材料深部の応力・ひずみを非破壊・非接触で測定できる唯一の方法である。自動車部品をはじめとする各種機械部品,ピーニング・焼き入れなどの表面処理材のほか、溶接配管や突き合わせ溶接材といった各種溶接構造物などの残留応力測定に中性子回折法が用いられるなど、高性能,高信頼性,長寿命化を目指した製品開発や構造設計に大きく貢献している。一方で、材料特性をバルク平均として評価できる中性子回折法の特長を活かし、材料の変形挙動評価や集合組織測定、さらには転位密度などのミクロ組織因子の定量評価など、材料開発などにかかわるさまざまな材料工学研究なども行われている。本稿では、中性子応力測定原理及び中性子工学回折装置について解説するとともに、中性子回折法を利用した最近の研究例について紹介する。

39000645
世界の高速炉サイクル技術開発の動向,1; 加速する高速炉開発; 2020年に商用炉の運転開始
竹田 敏一*; 佐賀山 豊; 巽 良隆*
日本原子力学会誌 52(8), p.462-467(2010) ; (JAEA-J 08867)
 資源有効利用及び環境保全性の観点から近年高速炉の開発が各国で加速してきている。ロシアとインドでは商用炉の運転開始目標を2020年に定め、中国は2030年頃、日本,フランス,韓国は2040∼2050年の実用化をめざしている。その中でもインドと中国は、今世紀半ばまでに200GWeを超える高速炉を導入し原子力発電の主流とする国家戦略を打ち出すなど活発な動きが見られる。本発表では、IAEAが昨年12月に京都市と敦賀市で開催した国際会議(FR09)"International Conference on Fast Reactors and Related Fuel Cycles-Challenges and Opportunities"での議論を中心に、各国の高速炉とその燃料サイクル技術(高速炉サイクル技術)の開発動向と技術開発の現状、そして各国が有する重要課題についての3回連載の第1回として、開発主要国(ロシア,インド,中国,フランス,韓国,日本)及び国際機関についての最新の開発計画の動向について紹介する。

39000646
核鑑識技術の確立に向けて
久野 祐輔; 桜井 聡; 堀 雅人
日本原子力学会誌 53(4), p.263-267(2011) ; (JAEA-J 08868)
 近年、核兵器等によるテロリズムの脅威を未然に防ぐための国際的な取組みとして「核の鑑識(nuclear forensics)」がクローズアップされている。核物質等の不法取引や核・放射性物質を伴う破棄行為の際に押収又は採取された核燃料等を分析し、その出所,履歴,輸送経路,目的を特定するというものであり、不正取引や核テロを効果的に防止かつ抑止するうえで極めて重要な技術である。2010年4月の核セキュリティーサミットにおける合意に基づき、今後、我が国でも核鑑識技術の確立に向け取り組んでいくことが必要となった。本稿では、核鑑識技術の現状について国際的な取り組み状況を含め解説するとともに、今後、我が国として対応すべき核鑑識の技術開発及びこの分野における国際協力のありかたについて併せて考察する。

39000647
原子力の「平和利用」について
高川 定義
日本軍縮学会ニュースレター (7), p.5-7(2011) ; (JAEA-J 08869)
 原子力の「平和利用」なる言葉の用法及び類似の概念につき簡単に振り返る。「平和的利用」なる文言は幾つかの条約や法令の中で使用されている。原子力基本法は「平和の目的」との文言を用いており、「一般化の原則」に基づいて核兵器はもちろんのこと、自衛艦の推進力としての使用についても不可とする一方、在日米軍基地や自衛隊の基地で用いられている電力や軍関係の病院等で用いられる放射線機器については可としている。INFCIRC/153型協定が"non-peaceful activities"と規定する潜水艦等の推進力での使用は、アルゼンティン・ブラジル原子力平和利用協定では「平和利用」と明記されている。NPTも"nuclear weapons or other explosive devices"についての規制である。トラテロルコ条約は、"nuclear weapons"のみにつき規制しており核兵器の搬送手段等については規制から外している。また、「平和目的の核爆発」についても一定の条件の下で容認していた。なお、宇宙基本法では原子力基本法とは書きぶりが異なる。

39000648
Evaluation of graft adsorbent with N-methyl-D-glucamine for boron removal from groundwater
保科 宏行; 瀬古 典明; 植木 悠二; 玉田 正男; 弥富 洋介
日本イオン交換学会誌 21(3), p.153-156(2010) ; (JAEA-J 08870)
 The adsorbent was prepared by radiation induced graft polymerization of glycidyl methacrylate onto nonwoven polyethylene fabric in aqueous medium, and following chemical modification with N-methyl-D-glucamine. The adsorbents were packed into the column, 10 cm in internal diameter. The volume of adsorbent in column was 2,000 cm3. The column was set into the adsorption equipment which consisted of pump, pre-filters and a fraction collector. The groundwater was pumped up from neutralization tank and was 1.2 ppm of boron concentration. After removed of in/organic compound by pre-filters, the groundwater was pumped into the column at various flow rates. As a result, the bed volume (BV) at breakthrough point were 1,400 and 1,250 at space velocity (SV) 50 and 100 h-1, respectively. These values correspond to 0.7 and 0.5 mmol/g-adsorbent. However, the BV at breakthrough point significant decreased at SV 200 h-1. In the case of SV 100 h-1, the adsorption equipment with the graft adsorbent can treat to remove boron from 4,800 liters of groundwater a day.

39000649
Adsorption of metals by adsorbent containing hydroxamic acid groups synthesized by radiation induced graft polymerization
Phiriyatorn, S.*; 保科 宏行; 瀬古 典明; 玉田 正男
日本イオン交換学会誌 21(3), p.157-160(2010) ; (JAEA-J 08871)
 An adsorbent containing hydroxamic acid groups was synthesized by radiation-induced graft polymerization of methyl acrylate (MA) onto nonwoven fabric composed of polyethylene-coated polypropylene fiber. Graft polymerization was carried out in emulsified MA solution containing sodium dodecyl sulfate as an emulsifier in the presence of water. Conversion of the ester groups in the grafted MA moiety into the hydroxamic groups was performed by treatment with an alkaline solution of hydroxylamine. The adsorbent containing hydroxamic acid groups was investigated. The adsorbent (approximately 0.01g) can adsorb 99% of U, 99% of V, 97% of Cd, and 97% of Pb at pH, 5, 4, 7, and 6 respectively after contacted with 100 ml of 100 ppb metal solution for 24 hour. The breakthrough capacities were 1000, 1100, 5300, and 7600 bed volume for Cd, V, U, and Pb, respectively with 100 ppb metal solution at the space velocity of 200 h-1 . These values correspond to 0.006, 0.013, 0.014, and 0.022 mmol/g-adsorbent. The selectivity for metal ions of hydroxamic acid type adsorbent was Pb > U > V > Cd.

39000650
円筒胴体型マイクロ波推進機の推力発生モデル
小田 靖久; 坂本 慶司; 小紫 公也*
プラズマ応用科学 18(2), p.177-181(2010) ; (JAEA-J 08872)
 A thrust generation model of microwave beaming thruster was studied. The model was proposed based on shock wave propagation driven by atmospheric plasma on the analogy of a pulse detonation engine (PDE), because pressure histories measured in the thruster tube were resembling to those in a PDE. Furthermore, both the shock propagation speed and ionization front propagation speed were found to be nearly constant and identical in the tube when they propagated at a supersonic speed with a high microwave power density. Based on the model, thrust impulse was estimated from the pressure history. Estimated thrust showed a good agreement with the result of the flight experiment.

39000651
炉の構造を決める
飛田 健次
プラズマ・核融合学会誌 87(Suppl.), p.33-41(2011) ; (JAEA-J 08874)
 核融合炉設計のテキストの一部として、核融合炉の構成機器の役割を解説するとともに、システム全体として整合をとるための留意点を記述した。特に、(1)超伝導コイルに働く電磁力とのその支持の考え方,(2)ブランケット設計における構造強度,核特性,熱利用も含めた除熱の両立の重要性,(3)高ベータ化のための導体シェル構造と炉構造への反映,(4)高稼働率を実現するための保守概念の考え方に重点を置いた。

39000652
炉のシステム性能を決める
西谷 健夫; 飛田 健次
プラズマ・核融合学会誌 87(suppl.), p.62-68(2011) ; (JAEA-J 08875)
 ここでは炉の成立性にかかわる最低仕様を決めるものや寿命,効率などを取り上げた。運転に必要なトリチウムを自己生産できるかどうかの鍵を握るトリチウム増殖比(TBR)については、ブランケット領域の占める割合、いわゆる占積率について、幾何学的な占積率に加えて中性子工学的ファクターを議論した。寿命に関しては、超伝導コイルの照射損傷,アーマー材の損耗,ブランケット構造材料の照射損傷,トリチウム増殖材料の燃焼について議論した。

39000653
設計に取りかかる前に
飛田 健次
プラズマ・核融合学会誌 87(Suppl.1), p.23-24(2011) ; (JAEA-J 08876)
 核融合炉設計に関するテキストの一部として、核融合炉設計の考え方を述べた。これまでさまざまなプラズマ実験装置が建設され現在はITERが建設中であるが、これらの設計の蓄積で得られたものは装置学である。将来の核融合炉を設計するうえでは方法論の見直しが必要である。本稿では、核融合炉を、(1)プラズマ発生装置,(2)電磁構造機械,(3)核システム,(4)燃料生産システム,(5)熱利用システムという要素とみなし、それぞれの要素を上位機能(目的)と下位機能(手段)に分類し、これまでの核融合炉(装置)と将来の核融合炉とではその機能が大きく異なることを指摘した。

39000654
集束式重イオンマイクロビームの大気中ビームサイズの迅速評価方法の検討; CR-39のエッチング時間短縮、及び半自動画像処理
坂下 哲哉; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 柏木 啓次; 佐藤 隆博; 小林 泰彦
Radioisotopes 60(2), p.47-53(2011) ; (JAEA-J 08878)
 集束式重イオンマイクロビームの大気中でのビームサイズの迅速評価を目的として、固体飛跡検出器CR-39のエッチング時間の短縮, ImageJを用いたエッチピットの半自動画像処理、及びSRIMによるビームサイズの予測方法について検討した。その結果、従来の作業時間に対してエッチング時間,大気中ビームサイズの評価をそれぞれ1/12, 1/30まで短縮化することができた。さらに、ビームサイズの予測に成功した。本方法は将来の集束式重イオンマイクロビーム運用において十分な実用性を持つ優れた方法であることを確認した。

39000655
Development of inspection and repair technology for the micro cracks on heat exchanger tubes
西村 昭彦; 菖蒲 敬久; 岡 潔; 山口 智彦; 島田 幸洋; Mihalache, O.; 田川 明広; 山下 卓哉
レーザ加工学会誌 17(4), p.207-212(2010) ; (JAEA-J 08879)
 高速増殖炉の熱交換器伝熱管に発生する微小亀裂を検査し補修するため、複合型光ファイバスコープを用いたプローブ試作機を開発した。本プローブはレーザー加工ヘッドと渦電流探傷装置も構成品に加えられている。超短パルスレーザー蒸発は、材料表層の加工硬化層の除去に用いることができる。加えて、スポットレーザー溶接が微小亀裂の補修に用いられた。このプローブシステムは、熱交換器の寿命を延ばすことにより、安全かつ経済的な選択肢を高速増殖炉の保守保全に与えることができる。

39000656
第2回アジア専門図書館国際会議の概要
池田 貴儀
専門図書館 (246), p.61-66(2011) ; (JAEA-J 08880)
 米国専門図書館協会アジアン・チャプター主催による第2回アジア専門図書館国際会議(ICoASL 2011)が、2011年2月10∼12日にかけて国連大学で開催された。第2回となる今回は「ユーザーの信頼獲得をめざして; デジタル時代における専門図書館革新の重要性」というテーマのもと、グローバルな視点から知識の共有,スキルアップを目的にさまざまな報告が行われ、活発な議論がなされた。本稿ではこのICoASL 2011の概要について報告する。

39000657
核融合炉燃料システムにおける水素吸藏合金によるトリチウム貯蔵と計量
山西 敏彦; 林 巧; 河村 繕範
セラミックス 46(3), p.201-205(2011) ; (JAEA-J 08881)
 核融合炉燃料システムは、水素及び水同位体分離系,不純物除去系,トリチウム貯蔵系等から構成される。その中でも、燃料であるトリチウムを貯蔵・供給するトリチウム貯蔵系は重要な機能を果たす。トリチウムを貯蔵できる合金は何種類か知られているが、ITERでは、安全性,常温での平衡圧の低さから、ZrCo合金が用いられた。本報告は、このZrCo合金によるトリチウム貯蔵・計量ベッドの構造,その最新の研究開発成果を紹介するものである。また、不純物除去系で用いられている重要なセラミックス材料(トリチウム回収用セラミック水素導電体)について紹介する。

39000658
セラミックストリチウム増殖材による核融合炉燃料の製造
河村 繕範; 落合 謙太郎; 星野 毅
セラミックス 46(3), p.206-209(2011) ; (JAEA-J 08882)
 核融合炉では、核融合プラズマを囲むブランケットにセラミックストリチウム増殖材を配置することで、核融合中性子と増殖材中のリチウムの核反応により燃料であるトリチウムを製造する。しかし、トリチウム生成から放出・回収に至るまでの過程は完全には解明されていない。近年、日本原子力研究開発機構では、核融合中性子源(FNS)を用い、トリチウム生成から放出・回収までを追跡する実験を開始した。本稿では、セラミックストリチウム増殖材製造技術開発及び、増殖材を用いた最近の研究成果について紹介する。

39000659
Diffuse neutron scattering calculation of spinel structure of LiMn2O4
Basar, K.*; Xianglian*; 佐久間 隆*; 高橋 東之*; 阿部 修実*; 井川 直樹
AIP Conference Proceedings 1244 , p.129-135(2010) ; (JAEA-J 08883)
 室温におけるLiMn2O4の中性子散漫散乱実験を行い、Li-Li, Li-Mn, Mn-Mn, Mn-O及びO-O原子の熱変位に起因する散漫散乱の相関効果を解析した。その結果、LiMn2O4の散漫散乱の振動プロファイルはおもにO-O原子の熱変位によるものであることを明らかにした。

39000660
Application of Monte Carlo simulation and voxel models to internal dosimetry
木名瀬 栄; Mohammadi, A.; 高橋 聖
Applications of Monte Carlo Methods in Biology, Medicine and Other Fields of Science (Internet) , p.41-53(2011) ; (JAEA-J 08884)
 At the Japan Atomic Energy Agency (JAEA), several studies have been conducted on the use of voxel models for internal dosimetry. Specific absorbed fractions (SAFs) and S values have been evaluated for preclinical assessments of radiopharmaceuticals using human voxel models and a mouse voxel model. Computational calibration of in vivo measurement system has been also made using Japanese and Caucasian voxel models, the knee and torso voxel models. In addition, for radiation protection of the environment, absorbed fractions (AFs) have been evaluated using a frog voxel model. Each study has been made by using Monte Carlo simulations. These data by Monte Carlo simulations and voxel models could adequately reproduce those by measurements. Voxel models are significant tools for internal dosimetry since the models are anatomically realistic.

39000661
Positron annihilation in radiation chemistry
平出 哲也
Charged Particle and Photon Interactions with Matter; Recent Advances, Applications, and Interfaces , p.137-167(2010) ; (JAEA-J 08885)
 放射線化学研究においての陽電子利用には、幾つかの利点が存在する。そのひとつが陽電子消滅である。凝集系で陽電子は、そこに存在する電子のひとつと対消滅する。その寿命はおよそ100ピコ秒から10ナノ秒である。つまり、陽電子消滅はこの時間領域の反応に関する情報を与えてくれる。第二の利点は陽電子と電子の結合状態、ポジトロニウムを形成するということである。このポジトロニウム形成は、カチオンと自由電子の再結合に非常によく似ている。その結果、このポジトロニウム形成は非常に速い反応に関する情報を与えてくれる。これらの利点を活かして、多くの興味深い研究が行われてきた。ここでは、陽電子利用の実験手法の基礎と現在までに行われてきた研究例を紹介する。

39000662
Applications of ionizing radiation to environmental conservation
広田 耕一
Charged Particle and Photon Interactions with Matter; Recent Advances, Applications, and Interfaces , p.923-941(2010) ; (JAEA-J 08886)
 放射線は環境負荷物質の分解に有効な高度処理技術の1つであり、大気や水への直接照射により生成させた活性種を利用して環境負荷物質を処理することができる。大気に放射線を照射するとN2+, O, OHなどの化学種が生成するが、この中でOHは環境中の有害物質を効率的に酸化分解できる最も重要な活性種である。一方、水中の有機化合物の処理ではOHと水和電子が酸化反応の役割を担う。放射線による環境負荷物質の分解では、線源として電子線とγ線が利用されるが、放射線管理や運転の容易さ等の点で電子線の普及が進んでいる。本研究では、基礎的な実験結果を踏まえ、NOxとSO2,ダイオキシン類,染色廃液など環境負荷物質の処理パイロット試験及び実証試験の概要や成果について報告する。

39000663
Frontier in fusion research; Physics and fusion
菊池 満
Frontiers in Fusion Research; Physics and Fusion , 270p.(2011) ; (JAEA-J 08887)
 本書は、核融合とプラズマ閉じ込めの最新の物理原理を系統的に記述することを意図している。大学において、量子力学や解析力学の一般課程を学んだ学生は理解できるようにしてあり、将来の職場として興味を持つかもしれない。他分野の研究者におかれては、1958年以降、50年間に系統化されてきた磁場核融合の科学原理との共通性と違いを見いだしていただければ幸いである。

39000664
Characterisation of quadi-monoenergetic neutron energy spectra using 7Li(p,n) reactions at 246-389 MeV
岩元 洋介; 萩原 雅之*; 佐藤 大樹; 岩瀬 広*; 八島 浩*; 糸賀 俊朗*; 佐藤 達彦; 中根 佳弘; 中島 宏; 坂本 幸夫; 松本 哲郎*; 増田 明彦*; 西山 潤*; 民井 淳*; 畑中 吉治*; Theis, C.*; Feldbaumer, E.*; Jaegerhofer, L.*; Pioch, C.*; Mares, V.*; 中村 尚司*
Proceedings of 10th Meeting of the Task Force on Shielding Aspects of Accelerators, Targets and Irradiation Facilities (SATIF-10) , p.53-61(2011) ; (JAEA-J 08888)
 大阪大学核物理研究センター(RCNP)において、1cm厚さのリチウムターゲットへの陽子照射で得られる138, 243, 387MeVの準単色中性子を用いて、10cmから100cm厚さの鉄及び25cmから200cm厚さのコンクリートの遮蔽体に対して遮蔽実験を行い、透過後の中性子エネルギースペクトルを測定した。スペクトル測定には、直径及び厚さがともに12.7cm及び25.4cmの2種類の液体有機シンチレータNE213とボナーボール中性子スペクトルメータを用いた。また、NE213の応答関数と検出効率も測定した。ピーク部の中性子スペクトルの導出には飛行時間法(TOF)を用い、連続部の中性子スペクトルの導出にはアンフォールディング法を適用した。さらに、中性子源の0度から30度方向の中性子エネルギースペクトルもTOF法で測定した。138MeVの準単色中性子入射における遮蔽体透過後の中性子エネルギースペクトルの実験値は、PHITSによる計算結果をよく再現した。

39000665
A Study on groundwater infiltration in the Horonobe area, northern Hokkaido, Japan
横田 秀晴; 山本 陽一; 前川 恵輔; 原 稔*
Proceedings of 13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM 2010) (CD-ROM) , 6p.(2010) ; (JAEA-J 08889)
 高レベル放射性廃棄物地層処分の安全性を評価するうえで、地層中における物質移動の駆動力となる地下水流動を理解することは不可欠であり、地下水流動解析においては地下水涵養量などの適切な境界条件の設定が必要となる。日本原子力研究開発機構では、北海道北部幌延地域において、堆積岩地域の地下水涵養の把握を目的にさまざまな水理学的調査・観測を行っている。しかし、地表付近における地下水の浸透については、気候変動等の外的影響を受けやすく、詳細を明らかにすることが難しい。そこで、本研究では、各種観測結果を組合せ、境界条件の一部となる浅部地下水流動系の検討を行った。幌延地域においては、HGW-1及び北進気象観測所の2か所で地中温度と土壌水分の観測が行われている。観測の結果、幌延地域では年間を通して地下への水の浸透と地下水涵養が生じていること、地表付近での水の浸透速度が深度により異なること、地表付近にゼロフラックス面が存在することが明らかとなった。今後は、ウェイングライシメータ,テンシオメータ,土壌水分計などの観測値を用いて、浅部地下への水の浸透量,中間流出量,地下水涵養量を定量的に議論する予定である。

39000666
Relationship between hypocentral distribution and geological structure in the Horonobe area, northern Hokkaido, Japan
常盤 哲也; 浅森 浩一; 平賀 正人*; 山田 治; 森谷 祐一*; 堀田 光*; 北村 至*; 横田 秀晴
Proceedings of 13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM 2010) (CD-ROM) , 6p.(2010) ; (JAEA-J 08890)
 地質環境の長期安定性を考えるうえで、地震・断層活動の特性を理解することが重要である。幌延地域は、北海道北部において地殻変動が活発な地域の一つと考えられている。そこで本研究では、北海道北部幌延地域における震源分布と地質構造の関係について検討を行った。震源分布の推定にあたっては、マルチプレット・クラスタリング解析手法を用いた。地震データは、2003年9月1日から2007年9月30日に観測された421イベントのデータを用いた。一方、地質構造は、反射法地震探査結果を用いたバランス断面図をもとに、三次元地質構造モデルを構築した。両者を比較した結果、深度の違いはあるが、震源は西から東に向かって深くなっていく分布や北北西-南南東方向に分布する傾向は、断層などの地質構造の形態の傾向と似通っていることがわかった。このことから、震源分布と地質構造とは相関関係があり、両者を比較することで、活動域の特定に関して有益な情報を得ることができると考えられる。

39000667
An Attempt to evaluate horizontal crustal movement by geodetic and geological approach in the Horonobe area, northern Hokkaido, Japan
常盤 哲也; 浅森 浩一; 新里 忠史; 野原 壯; 松浦 友紀*; 小坂 英輝*
Proceedings of 13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM 2010) (CD-ROM) , 7p.(2010) ; (JAEA-J 08891)
 地質環境の長期安定性を考えるうえで、地殻変動に関する情報を把握することは重要である。本研究では、幌延地域を事例として、GPSによる測地学的手法と地質断面を用いた地質学的手法による地殻の水平変位速度を推定するための検討を行った。その結果、両手法から求めた水平変位速度やその方向は類似していた。地層処分システムの長期挙動の予測では、その対象期間が万年オーダー以上となるため、一見地質学的手法が重要であると考えられる。しかし、今回の結果から、測地学的手法が長期の地殻変動を推定するうえで有益な情報を提供する可能性があることが明らかとなった。

39000668
Outline of research and development of thermal-hydraulics and safety of Japanese Supercritical Water Cooled Reactor (JSCWR) project
中塚 亨; 森 英夫*; 秋葉 美幸*; 江里 幸一郎; 安岡 誠*
Proceedings of 5th International Symposium on Supercritical Water-Cooled Reactors (ISSCWR-5) (CD-ROM) , 12p.(2011) ; (JAEA-J 08893)
 日本型超臨界圧水冷却炉(JSCWR)プロジェクトの伝熱流動分野における主要な目的は、炉心・燃料設計において燃料被覆管温度及び圧力損失の評価に必要な相関式を提供することである。本プロジェクトは、Phase Iとして平成20年から3年間の計画で開始された。伝熱流動分野には、東芝,九州大学,原子力機構が参加し、JSCWR開発に向けた研究を行い、次の成果を得た。(1)文献調査と過去の研究結果からデータベースを構築した。(2)円管に適用する最も適切な式をデータベースに基づき選定した。(3)LESを使って燃料集合体内で想定される伝熱劣化現象を高い精度で予測できることを明らかにした。

39000669
Simulation of concentrations of anthropogenic radionuclides in the Japan Sea
川村 英之; 伊藤 集通; 小林 卓也; 乙坂 重嘉; 広瀬 直毅*; 外川 織彦
Proceedings of Joint International Conference of 7th Supercomputing in Nuclear Application and the 3rd Monte Carlo (SNA + MC 2010) (USB Flash Drive) , 4p.(2010) ; (JAEA-J 08895)
 日本原子力研究開発機構は、1997年から2002年の間に日本海海洋調査を実施して、日本海における人工放射性核種濃度の分布を明らかにした。本研究の目的は、海洋大循環モデルを使用して数値実験を行い、日本海海洋調査で得られたさまざまな知見を確証することである。数値実験は、大気中核実験が主な起源である大気降下量を海面の境界条件とし、東シナ海の平均表層濃度を対馬海峡からの流入境界条件とした。モデル結果は、90Srと137Csの濃度に関して、観測結果とよく一致した。表層における90Srと137Csの濃度は、それぞれ1.0∼1.5Bq/m3と2.0∼2.5Bq/m3であり、表層から深層にかけてこれらの濃度は指数関数的に減少する。また、日本海全域における90Srと137Csの全存在量は、それぞれ1.34PBq(1PBq=1015Bq)と2.02PBqとなり、日本海海洋調査で得られた観測データによる見積もりとよく一致した。さらに、1945年から2000年における全存在量を計算して、1964年に90Srは4.86PBq、137Csは7.33PBqの最大値を示すことがわかった。

39000670
Precise observation of dynamic structural change of Pd particles under CO/NO catalytic reaction studied by dispersive X-ray absorption fine structure
松村 大樹
SPring-8 Research Frontiers 2009 , p.138-139(2010) ; (JAEA-J 08896)
 金属微粒子を微細化することは反応場を広げることに第一の意味合いがあるが、ナノサイズ独自の性質が現れることで新しい触媒反応への道を切り開く意味合いもある。本研究においては、分散型XAFS法の2つの利点、すなわち、高い相対精度と速いフレームレートを両方とも利用することで、アルミナ担体上のPd微粒子に対してCO/NO触媒反応中の「その場」かつ「実時間分割」観測を0.2Hzというレートにて行った。結果、COのゆっくりとした解離吸着のパスが存在することがわかり、それはCの固溶を伴いPd微粒子の膨張をもたらすということが判明した。このCはNOにより速やかに除去されることから、新たな触媒反応パスの発見であると考えられる。

39000671
ヨウ素分析のための銀媒体電解酸化法を用いた環境試料の前処理法の検討
桑原 潤
第12回AMSシンポジウム報告集 , p.112-115(2010) ; (JAEA-J 08897)
 環境試料中ヨウ素同位体比の分析において、食品などを前処理する場合、高温で試料を灰化しヨウ素を揮発させて回収する方法がよく用いられるが、試料の種類によっては、ヨウ素が十分に揮発せず灰化残留物中に一部残ってしまうような状況が生じてしまう。このため、十分に高い回収率を得る手法として、銀媒体電解酸化法を用いた湿式の試料灰化を試みた。この方法は、電気分解装置内で溶液中に銀(II)イオンを生成し、このイオンの酸化力を用いて試料の酸化分解を進行させるもので、銀は触媒的に作用する。乾燥コンブ1gを用いた灰化試験において、約5Vの通電条件で灰化したところ、24時間程度で灰化が完了した。この電解液をろ過し、一部を分取することで、安定ヨウ素濃度の決定が可能である。また、この電解液に還元剤として亜硫酸ナトリウムを加えることで、AMS測定のためのヨウ化銀沈殿を生成することができた。

39000672
原子力機構-東海タンデム加速器の現状
石崎 暢洋; 石井 哲朗; 阿部 信市; 花島 進; 長 明彦; 田山 豪一; 松田 誠; 仲野谷 孝充; 株本 裕史; 中村 暢彦; 沓掛 健一; 乙川 義憲; 遊津 拓洋; 月橋 芳廣
第23回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集 , p.13-16(2010) ; (JAEA-J 08898)
 2009年度のタンデム加速器の運転,整備及び利用状況について報告する。加速器の運転時間は約3600時間で例年より少ないが、これは年2回の定期整備以外にタンク開放を要する不具合が4回発生したためである。利用されたイオン種は20元素(25核種)で、多い順にH, O, C, Xe, Ni, N, Li, Arなどであり、ターミナルイオン源からCO2の加速試験も実施した。利用分野は、核物理,核化学,材料・物性,加速器開発などであった。カラムのショーティングロッドのナイロン製接続ネジが破断し、タンク外へ取り出せなくなる不具合が発生した。圧空ジャッキによるロッドの抜き差しの際に過大な力が加わり破断に至ったものと推定された。ロッドの接続部で放電や引っかかりが起こらない改良型ロッドを製作中である。電磁石のトラブルとして、12月にコイルの内部に微少な水漏れが発生し磁場が不安定になる現象が起きた。現在片側のコイルのみで運転中であり、新しいコイルを製作中である。また、別の電磁石電源で使用している水冷シャントの銅管にピンホールによる水漏れが発生した。これは冷却不要のDCCTに置き換えた。

39000673
シンチレータを利用したMeV級プロトンビームのエミッタンス
横山 彰人; 石井 保行; 千葉 敦也; 宇野 定則; 上松 敬; 高山 輝充*; 北野 敏彦*
第23回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集 , p.147-150(2010) ; (JAEA-J 08899)
 原子力機構高崎量子応用研究所の3MVシングルエンド加速器のビームラインの一つに軽イオンマイクロビーム形成装置が設置されている。本装置による直径1μm程度のマイクロビームはPIXE(Particle Induced X-ray Emission)やPBW(Proton Beam Writing)などの分析や加工に利用可能であり、生物細胞内の微量元素分析や高アスペクト比の3次元微細加工技術の開発が行われている。近年、PIXE分析の空間分解能向上やPBWの加工精度向上の要求に伴い、十分なビーム量を有するナノビーム形成が望まれている。これをビームの高輝度化によって実現するために、イオン源から引き出されるビームのエミッタンスを、シンチレータを利用して測定する装置の開発を進めている。これまで使用してきたシンチレータであるSiO2は、ビーム照射によるダメージを受けやすいため、繰り返し使用することが困難であった。そこで照射によるダメージが小さいYAG:Ceを使用した結果、繰り返し照射を行っても良好な計測が可能となった。

39000674
世界の超電導核融合技術の開発動向
奥野 清; 高橋 良和; 小泉 徳潔; 中嶋 秀夫
平成23年電気学会全国大会講演論文集,5 , p.S1(34)-S1(37)(2011) ; (JAEA-J 08900)
 超伝導技術の発展の歴史と将来の展望を述べるとき、核融合研究との関係を抜きに語ることはできない。トカマクやヘリカルに代表される磁気閉じ込め核融合装置の開発は、超伝導マグネットの大型化や強磁場化、高性能化を推進し、さらに超伝導線材の量産化をもたらしてきた。21世紀最初の四半世紀にこの役割を担うのがITERである。ITERは2019年11月の運転開始、すなわち初プラズマ達成を目指し、欧州をホスト極としてフランスのカダラッシュで既に建設が開始されている。本体建設費の約1/4を占める超伝導マグネットの調達には、インドを除く6極が参加する。日本の国内実施機関である原子力機構は、これまでの開発実績が広く認められ、超伝導導体やトロイダル磁場コイルなどの主要部分を分担し、参加極中最大の貢献を行う。ITER参加各極は最高の超伝導技術をフルに活用して調達活動を実施しており、超伝導技術の分野に大きな進展をもたらすものと期待される。

39000675
大型照射後試験施設における統合保障措置への移行
宮地 紀子; 勝村 聡一郎; 川上 幸男
核物質管理学会(INMM)日本支部第31回年次大会論文集(CD-ROM) , 7p.(2010) ; (JAEA-J 08901)
 日本原子力研究開発機構(JAEA)大洗研究開発センター南地区(JNC-2サイト)の大型照射後試験施設である照射燃料集合体試験施設(FMF)は、高速実験炉「常陽」から照射済燃料集合体等を受入れて、照射後試験を行う施設である。試験を終えた切断片や燃料ピン等は、FMFから「常陽」使用済燃料貯蔵プールへ再び払出している。このFMFに対し、2010年12月から、より効率的,効果的な検認を実施するために、同じ照射済燃料を扱うFMFと「常陽」を1つのセクターとみなし、両施設間の燃料の受払いをFMFにて検認する統合保障措置を適用した。適用に際しては、受払いキャスクの動きを遠隔監視するシステムと、キャスク内容物を検認するための、次の要件を満足する検認システムを構築した。一つは検認中の査察官及びオペレータの被ばく量低減、もう一つは施設側輸送工程の遅延防止である。なおキャスク内容物検認には中性子検出法を導入した。これらにより、セクター全体として効率的・効果的な保障措置を実現した。

39000676
分散線源関係解析法(DSTA)を用いたグローブボックスクリーンアウト支援ツール(BCAT)の開発
中道 英男; Beddingfield, D. H.*; 中村 仁宣; 向 泰宣; 栗田 勉
核物質管理学会(INMM)日本支部第31回年次大会論文集(CD-ROM) , 9p.(2010) ; (JAEA-J 08902)
 分散線源関係解析法(DSTA)は、評価空間中における中性子を発生する物質の位置とその強度に関する情報が得られる。グローブボックス(GB)内のホールドアップの位置や量の特定のためにDSTA法が利用できることに着目し、MCNPX計算による線源と空間の関係を適用したグローブボックスクリーンアウト支援ツール(BCAT)を開発した。これをクリーンアウトに利用することで、MOX粉末の効率的な回収が可能となるほか、未測定在庫の減少、さらには作業員の被ばく低減も期待できる。BCATの実証のため、実際のGB周囲で中性子測定を実施した。その結果、経験的に想定されるホールドアップのより具体的な位置や量の特定のみならず、新たなホールドアップも発見することができた。この知見は効率的なクリーンアウト手法を提供するものであり、施設全体の計量管理の改善に寄与するものと考えられる。

39000677
衝撃解析ソフトによる詳細応答評価
西田 明美
構造物の耐衝撃設計ガイドラインに関するシンポジウム資料集 , p.105-112(2010) ; (JAEA-J 08903)
 原子力施設における構造物の衝撃現象把握を発端とし、さまざまな分野で衝撃現象を把握するための数値解析法の開発や研究が盛んに行われている。近年の計算機のめざましい発展に加えて、最近の計算工学,破壊力学等の発展により、複雑な衝撃現象の時刻歴応答解析が可能となってきている。本稿では、まず詳細解析の適用区分について述べる。次に、詳細解析に用いる数値解析法の概要と、衝撃解析ソフトの概要及び特徴を示す。その中で、詳細解析については、幾つかの解析上の留意点(空間の離散化と時間刻みの関係に留意する必要があること等)を述べる。最後に、衝撃解析ソフトを用いた詳細解析の事例を示す。これにより、原子力施設等の構造物設計時の耐衝撃性検証のためのガイドライン作成の一助とする。

39000678
Si1-xGex合金層における酸化誘起Ge濃縮過程; リアルタイム光電子分光による解明
小川 修一*; 穂積 英彬*; 吉越 章隆; 石塚 眞治*; 加賀 利瑛*; 寺岡 有殿; 高桑 雄二*
応用物理学会薄膜・表面物理分科会/シリコンテクノロジー分科会共催特別研究会アブストラクト集 , p.67-70(2011) ; (JAEA-J 08904)
 Si1-xGex合金層の酸化によって加速されるGe原子の濃縮速度について、放射光を用いたリアルタイム光電子分光によって調べた。Si1-xGex合金層はp型Si(001)基板上にGe蒸着で形成し、その合金層をラングミュア型吸着条件で酸化した。773Kでの酸化ではGe原子は酸化されず、SiO2層のみがSi1-xGex合金層上に形成された。さらに、GeO分子の脱離は起こらなかった。一方で、室温ではSi原子ばかりでなくGe原子も酸化された。この違いは点欠陥発生を伴う統合酸化モデルで説明できる。すなわち、773Kでは多くの欠陥がSi1-xGex合金層の酸化中に発生し、Ge原子がこれらの欠陥を通して拡散すると示唆される。

39000679
ダイナミックプロセスシミュレーション; ObjectDPSの原子力分野での利用
久保 真治; 田子 康弘*; 宮下 礼子*
プロセス産業向けシミュレーター集覧 , p.287-296(2010) ; (JAEA-J 08905)
 固有の閉サイクル性のため熱化学水素製造法プロセスによる安定した水素製造運転には困難が伴う。本稿は、商用プロセス産業向けシミュレーターを用いた熱化学水素製造法プロセスのコンピューターシミュレーシュンについて述べたものである。ダイナミックシミュレーションの原子力分野での利用に関し、プロセスの運転シミュレーションへの応用について述べた。高温ガス炉からの高温ヘリウムガスで加熱する閉サイクルプロセスを安定に駆動するため、硫酸蒸発分解量を調整し、水素発生量,酸素発生量及び原料水供給量の割合を水分解量論比に一致させることを狙いとした運転シミュレーションの結果について述べ、ヘリウムガスの温度変動を与えても化学量論的な水素及び酸素発生速度を維持できることを示した。

39000680
堆積物中のレアメタルの分布と近現代史
山崎 秀夫*; 吉川 周作*; 國分 陽子
レアメタル便覧, 3 , p.661-663(2010) ; (JAEA-J 08906)
 レアメタルに関する知識とデータは、現状では多方面に分散しており、参照するのにきわめて不便である。本書籍はレアメタル及びこれを含有する主な化合物,合金について、物理的,化学的性質,結晶構造,材料への応用,資源,分析,精錬,経済,備蓄を含む政策,環境・健康への影響など総合的に解説する便覧である。本発表はその中で、土壌や堆積物中の放射性核種の分布やその同位体比の解析から、物質の環境動態の近現代史の解明について解説する。鉛-210,セシウム-137を用いた年代測定法により琵琶湖堆積物の堆積年代を推定した例やプルトニウムの同位体比解析から長崎原爆により放出されたプルトニウムの環境中での分布等を明らかにした事例を紹介している。

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