研究開発報告書類


JAERI-Research
1998年


26181
Development of integrated containment and surveillance system for fast critical facility FCA;Portal and penetration monitors
向山武彦・小川弘伸・横田康弘*
JAERI-Research 98-001;Jan. 1998, 76p.

 日本原子力研究所の高速炉臨界実験施設FCAは,保障措置上非常に機微な金属ウランや金属プルトニウムを保有する.このために高頻度で直接検認する査察を実施しているが,国際原子力機関(IAEA)及び国(科学技術庁)と施設の3者に大きな負担となっている.査察に係わるマンパワーと被曝の増加及び実験に対する制約を,効果的・効率的に軽減することを目的として1979年に本システムの開発を開始した.本システムは,ポータル・モニタとペネトレーション・モニタの互いに補完する2つのモニタで構成されている.システムの開発は1988年に完了,引き続いて12ヶ月の現地認証試験を実施した.1990年1月のIAEA最終報告書は,保障措置上の目標を達成する査察機器として受諾した.ただし,データ真正性の担保手続きを条件とした.


26182
ISプロセス高効率化のための水素分離膜に関する研究;多孔質α-アルミナチューブを基膜とした製膜方法
G. Hwang*・小貫薫・清水三郎
JAERI-Research 98-002;Jan. 1998, 8p.

 ISプロセスの水素発生工程におけるヨウ化水素分解の高効率化のため,水素分離膜の製作技術の研究を行った.細孔径100nmと10nmのα-アルミナチューブを基膜として用い,TEOSを原料とする化学蒸着法(CVD)によりシリカを析出させる方法で水素分離膜を製膜した.製作した水素分離膜では,シリカにより細孔が緻密に閉塞され,ガスは活性化拡散機構により透過した.600℃における窒素に対する水素の選択性は,細孔径が100nmの基膜の場合5.2,細孔径が10nmの基膜の場合160を示した.


26183
Development of carbon/carbon composite control rod for HTTR, 2;Concept, specifications and mechanical test of materials
衛藤基邦・石山新太郎・深谷清・斎藤保・石原正博・塙悟史
JAERI-Research 98-003;Jan. 1998, 34p.

 HTTR用制御棒に炭素複合材料を適用することを目的として,制御棒の概念及び仕様の検討,候補材料の強度試験データの所得,及びボルト等の要素に自重によって発生する応力の評価を行った.本概念では制御棒は10個のユニットから成り,それらを炭素複合材料製M16ボルトで長手方向につなげる構造とした.引張,圧縮,曲げ,せん断等の機械的強度データを2種類の候補材料(アクロス社製AC250及び東洋炭素社製CX-270)について室温にて取得した.これらの強度データの平均値の1/3または1/5を暫定的設計強度とし,別途製作した外筒,M6ギルト,M8ボルト等の要素に発生する応力と比較したところ,安全率は,外筒の引張応力で66,M16ボルトの引張とせん断で各々8.8と8.5,端部支持用M8ボルトのせん断で2.43となり,機械的な健全性が明らかになった.


26184
HIP法により作製された分散強化銅/ステンレス鋼接合材の接合特性評価
金成守康*・秦野歳久・佐藤聡・古谷一幸・黒田敏公*・榎枝幹男・阿部哲也・高津英幸
JAERI-Research 98-004;Feb. 1998, 25p.

 3種類の接合温度(1253K,1303K,1323K)で作製されたHIP(高温静水圧法)接合材について,とくに接合界面近傍(数百μmの範囲)のSEM観察,EPMA分析,微小硬さ試験を行うことによりSS材に対するDS-Cu材の接合性を比較評価した.その結果,3種類の接合材の中で,1323Kの温度で接合したHIP材が,ボイドを生成しない,接合界面以外では著しい機械的性質の変化がない等,接合材の健全性確保の観点から,最も良好な接合特性を示した.


26185
再処理溶液系におけるTRU元素の原子価状態評価モデル
内山軍蔵・藤根幸雄・吉田善行・前田充・本山聡*
JAERI-Research 98-005;Feb. 1998, 20p.

 再処理溶液系にかけるTRU元素の原子価状態評価モデルを開発した.本モデルの基本式は(1)物質収支式,(2)酸化還元平衡式,(3)反応速度式,(4)電荷中性式の4式である.本モデルは酸化還元平衡(定常)状態あるいは非定常状態にある溶液系を計算対象としている.本モデルにより,高放射線下及び多成分系のために測定が困難なTRU元素等の原子価状態を,元素濃度,電極電位,硝酸濃度,酸化還元試薬濃度,温度などの比較的容易に測定が可能な溶液データをもとに推測することができる.


26273
受動的安全炉JPSRにおける冷却材均圧注入系の熱水力挙動に関する実験的検討
佐藤隆・渡辺博典・新谷文将・中嶋勝利・岩村公道・村尾良夫
JAERI-Research 98-006;Feb. 1998, 77p.

 概念設計研究を進めてきた受動的安全炉JPSRで採用を検討してきた受動的冷却材注入系としての冷却材均圧注入系の熱水力特性を把握するために実施した冷却材均圧注入実験の計測データを収録するとともに実験結果をまとめたものである.本実験に先立って実施した予備試験についてもまとめた.実験の結果,均圧管内の冷却材サブクール度が大きくなると注入遅れの生じること,CMT内を小さな領域に分割することにより水面下に形成される高温層の拡散を抑制できること,冷却材喪失流量と作動開始までの時間の関係は線形ではなく均圧管内の気液対向流により影響を受けること,差圧作動弁を用いた場合注入は断続的になることがわかった.なお,今回試作した差圧作動弁は想定どおりの作動特性が得られなかったが,この改善のための提案も行った.


26274
オーステナイトステンレス鋼の中性子照射誘起応力腐食割れに関する研究
塚田隆
JAERI-Research 98-007;Mar. 1998, 187p.

 炉内構造物の経年的な劣化・損傷機構の一つである,照射誘起応力腐食割れ(IASCC)に関する研究を行った.IASCCは現用発電炉の損傷要因であるだけでなく,放射線と腐食の作用が共存する系の共通問題である.本研究では,IASCCの発生と材料及び環境条件の関係を明らかにし,その発生機構の検討を目的とした.このため,2種類の異なる供試材:(1)研究炉JRR-3M及び材料試験炉JMTRで照射したモデルステンレス鋼,(2)米国オークリッジ研究炉ORRでスペクトル調整照射したステンレス鋼,(3)高速実験炉「常陽」燃料集合体のラッパー管ステンレス鋼を用いて,高温水中応力腐食割れ試験及び電気化学腐食試験等を実施した.その結果,IASCCに及ぼす添加合金元素の効果,照射・照射後試験温度の効果,材料の焼鈍・冷間加工の効果等について詳しい知見を得た.さらに,炉内構造物のIASCCに対処する方策を考察した.


26275
量子分子動力学シミュレーションコードの並列化
加藤香*・くぬぎ資彰・芝原正彦*・小竹進*
JAERI-Research 98-008;Feb. 1998, 25p.

 日本原子力研究所関西研究所では,物質における光熱変換機構を解析するために量子分子動力学コードを開発している.このコードをスカラー型超並列計算機Intel Paragon XP/S75とベクトル型並列計算機Fujitsu VPP300/12上で並列化した.粒子群を分割し各プロセッサユニットへ割り付けることにより,台数分の効果を両並列計算機で得た.スカラー型超並列計算機Intel Paragon XP/Sでは,各粒子の計算を構成する演算の分割を粒子群の分割に加えて行うことにより,量子分子動力学コードの高並列化を達成した.


26276
岩石型プルトニウム燃料軽水炉の核特性と事故時過渡特性
秋江拓志・安濃田良成・高野秀機・山口兆一*・菅生幸博*
JAERI-Research 98-009;Mar. 1998, 44p.

 余剰プルトニウムの処分を目的として,ジルコニア(ZrO2)あるいはトリア(ThO2)をベースとする,岩石型酸化物(ROX)燃料が検討されている.ROX燃料を装荷したPWRの安全解析の結果,ジルコニア型ROX(Zr-ROX)燃料炉心のドップラー反応度係数を大きくし,出力ピーキング係数を小さくする必要があることがわかった.これらの改善のため,Zr-ROX燃料にThO2,UO2あるいはEr2O3等を添加し,さらにGd2O3の添加量を減らす等の,組成の調整を試みた.その結果,UO2-Er2O3添加Zr-ROX燃料によりプルトニウム燃焼性能への影響を抑えて,UO2燃料PWR並みの過渡特性が達成できた.


26277
Finite beta and compressibility effects on stability of resistive modes in toroidal geometry
J-N. G. Leboeuf*・栗田源一
JAERI-Research 98-010;Mar. 1998, 15p.

 米国オーク・リッジ国立研究所で開発されたトロイダルMHDコードFARと日本原子力研究所で開発されたAEOLUSコードを使って,注意深く作られたベンチマーク用の分布とパラメータの平衡に対して計算された線形の抵抗性MHD安定性の結果を比較した.これらの分布は,トロイダル・モード数n=1のチアリング・モードに対して不安定な分布である.双方のコードによって計算された固有値と固有関数は,非常によく一致し,これらのモードに対して圧縮性の効果は弱いことが示された.FARコードとAEOLUSコードで計算された有限のプラズマ圧力の場合のテアリング・モードの成長率も良い一致を示した.有限ベータは,トロイダル・テアリング・モードに対して安定化の効果を持つこと,また圧縮性の効果は,有限ベータのテアリング・モードに対しても弱いことが示された.


26278
レーザー光吸収法による電子ビーム加熱生成ウラン蒸気諸特性の計測
大場弘則・雨川和博・柴田猛順
JAERI-Research 98-011;Mar. 1998, 18p.

 原子法レーザーウラン濃縮における蒸発基礎データ取得試験の効率化を図るため,電子ビーム加熱で生成したウラン蒸気の諸特性値をレーザー光吸収法を用いて同時に測定する手法を考案した.ウラン蒸気中に複数のスリットを設け,レーザー光を浸透させて基底状態のウラン原子の吸収スペクトルを測定した.測定された吸収スペクトルから,蒸発角度分布,基底準位原子密度,蒸気速度及び蒸気流並進温度を求めた.その結果,一回のレーザー光の波長掃引でこれらの蒸気特性値が測定できるだけでなく,蒸発速度を高くすると蒸気流の垂直方向並進温度は流れ方向の並進温度に近づくという知見などが得られた.


26438
定常炉心試験装置の設計研究, 8;遮蔽・安全設計
宮直之・菊池満・牛草健吉・栗田源一・永島圭介・閨谷譲・飛田健次・豊島昇・正木圭・神永敦嗣・小栗滋*・北井達也*・栗山正明・山本巧・林巧・永見正幸
JAERI-Research 98-012;Mar. 1998, 222p.

 定常炉心試験装置(JT-60SU)の遮蔽・安全設計を行った.本装置では10年間のDD実験放電と2年間のDT実験の実施(オプション)を想定した.安全評価上の指針として,放射線障害防止法等に準拠した.予め定めた遮蔽設計の目標値を満たすように真空容器を含む本装置構造物の遮蔽構造の最適化案を検討し,現在のJT-60実験棟において充分安全に実験運転が可能なことを示した.DT実験では年間100gのトリチウムを使用する.トリチウム等の漏洩防止の観点から多重格納系を採用した.三次格納となる実験棟本体・組立室内にて,万一のトリチウム放出したときを想定した緊急時トリチウム除去設備の検討を行い,2週間後に人が立ち入れる濃度への低減が現実的な設備規模で可能なことを示した.


26279
Study on upgrading of oil palm wastes to animal feeds by radiation and fermentation processing
久米民和・松橋信平・伊藤均・橋本昭司・石垣功*・M. R. Awang*・M. Lebaijuri*・Z. Othman*・F. Ali*・W. B. W. Husain*・H. Hamdani*
JAERI-Research 98-013;Mar. 1998, 206p.

 放射線加工処理分野における原研とマレーシア原子力研究所(MINT)における二国間研究協力が1987年12月に調印され,「オイルパーム廃棄物の有効利用」に関する研究が10年間実施された.1987年〜1992年の第1期では,(1)汚染微生物の放射線殺菌,(2)照射した廃棄物の物理化学的性質,(3)有用菌の選択と発酵条件,(4)発酵産物の栄養価,(5)経済性評価について検討し,放射線殺菌とキノコ菌による発酵処理が有効であることを明らかにした.第2期(1992〜1997年)には,(1)パイロットプラントにおける飼料生産のフィジビリティ・スタディ及び,(2)生物活性物質の生産について検討し,本プロセス実用化のための基礎的知見を得た.本報告書は,オイルパーム廃棄物である空果房の放射線殺菌とキノコ菌による発酵処理を用いた飼料化プロセス実用化のための研究成果をまとめたものである.


26280
磁場中での細線電極イオン回収特性
足立肇・田村浩司・小倉浩一・柴田猛順
JAERI-Research 98-014;Mar. 1998, 20p.

 原子レーザー法同位体分離では,レーザー光で共鳴イオン化した目的同位体を電極に回収するが,電子ビーム偏向用磁場がイオン回収部にも印加される.短時間に効率よくイオンを回収する方法として先に提案した,アースまたは負電位の平行平板電極の中央に正電位の細線電極を用いた方法について磁場の影響を調べた.平行平板電極の中央に発生させた光電離イオンの両側電極での回収量のバランスは,150ガウス以下の磁場により若干変化するが,回収時間はほとんど変わらず磁場の影響は小さいことが実験の結果わかった.


26281
がん治療医薬の開発を目指した放射性レニウムに関する研究;製造・標識化合物の合成とその体内動態
アイソトープ研究委員会
JAERI-Research 98-015;Mar. 1998, 197p.

 本論文では,アイソトープの製造・標識専門部会の放射性レニウムに関する研究会の下で行われた放射性レニウム186Re及び188Reの製造,放射性レニウムを用いた標識化合物の合成及びその標識化合物のマウス体内動態について得られた成果をまとめた.まず,原子炉を用いた186Re,加速器を用いた無担体の186Re及び188W/188Reジェネレータによる無担体188Reの製造法を確立した.つぎに,放射性レニウムを用いた二リン酸誘導体DMSA,DTPA,DADS,アミノメチレンリン酸誘導体及びモノクローナル抗体の標識条件(pH,試薬濃度等)を検討し,最適標識条件を決定した.さらに,その標識化合物のマウス体内動態を調べ,臨床応用への可能性について検討した.


26282
高温工学試験研究炉運転中における燃料挙動の評価手法と予測結果
沢和弘・吉牟田秀治*・佐藤政四・齋藤賢司・飛田勉*
JAERI-Research 98-016;Mar. 1998, 34p.

 HTTRの燃料設計方針では多少の燃料破損は許容しており,「運転中の追加破損は十分許容しうる小さな値に制限する」と定めている.そのため,HTTRの運転に当たっては,破損率を定量的に推定し異常の有無を判断する必要がある.燃料粒子の被覆層は短半減期の希ガスをほぼ完全に閉じこめることができるため,短半減希ガスは,おもに貫通破損粒子及び燃料コンパクトマトリックス部の汚染ウランから放出される.HTTR初装荷燃料の製造時の露出ウラン率及びSiC層破損率の測定結果及びHTTRの運転条件に基づいて貫通破損率及び88Krの放出率を解析的に評価する方法を開発した.その結果,(1)運転中に製造時SiC層破損粒子の一部が内圧により貫通破損に至ること,(2)放出は汚染ウランからの寄与でほとんど決まり,運転に伴う貫通破損率の増加を考慮しても,末期の放出率が10-6を下回ることを予測した.


26283
天然バリア中におけるTRU核種の分配係数;コロイド状化学種のサイズの関与
田中忠夫・村岡進
JAERI-Research 98-017;Mar. 1998, 20p.

 堆積物試料(海岸砂,凝灰質砂,黒ボク土,黄色土,土色土,砂岩,凝灰岩)を対象として,237Np(V),238Pu(IV)及び241Am(III)のバッチ法による吸着実験を実施し,液相中に存在するコロイド状化学種のサイズ分布及び分配係数を測定した. 237Npの場合,すべての堆積物試料と平衡にある液相中にコロイド状化学種は存在せず,分配係数に地層によるフィルトレーションの効果を考慮する必要はないことがわかった.一方,241Amは液相中で0.45μmより大きな粒子として存在し,地層間隙にトラップされ固相成分とみなすことができた.238Puの場合,試料によって2nmから0.45μm以上のさまざまな大きさのコロイド状化学種の存在が認められた.この結果は,信頼性の高い238Puの分配係数を選定するためには,堆積物層間隙を移行可能なコロイドの大きさを把握することが不可欠であることを指摘するものである.


26284
段丘堆積層における237Np及び241Amの分配係数
田中忠夫・武部愼一・小川弘道・村岡進
JAERI-Research 98-018;Mar. 1998, 20p.

 六ヶ所村の段丘堆積層から採取した凝灰質砂,砂岩,凝灰岩を対象として,237Np(V)及び241Am(III)の吸着及び脱離実験を実施し,分配係数を測定するとともに吸着メカニズムについて検討した.237Npの分配係数は,pHが高くなるにしたがって増大する傾向を示したが,共存するNa及びCaイオン濃度の影響はみられなかった.237Npの試料への吸着は主として可逆的な吸着メカニズムに支配されているため,237Npの移行挙動は分配係数を適用した吸着モデルで予測可能であることを示した.241Amの分配係数は,pH7〜8で最大となった.また,Na及びCaイオン濃度が高くなるにしたがって減少した. 241Amの吸着は非可逆的な吸着メカニズムが支配的であり, 241Amの移行挙動を高い精度で予測するためには,非可逆的な反応を考慮した吸着モデルの適用が必要であることが示唆された.


26381
低温プラズマ駆動水素透過現象に関する研究
滝沢真之
JAERI-Research 98-019;Mar. 1998, 181p.

 磁場閉じ込め型核融合炉のプラズマ真空容器周辺部におけるスクレイプオフプラズマと炉壁の相互作用(PWI)の中では,水素が炉壁を拡散,透過して裏面側に放出される事象は,トリチウム漏洩の観点から特に重要な研究課題である.本研究は,水素がイオン化あるいは原子化されると透過流量が飛躍的に増大する現象(PDP)を多角的な視点から調べるため,水素原子・イオン,及び電子が混在する低温プラズマ環境下において,数種類の金属材料の試料膜を使用した水素透過実験を実施した.またプラズマから膜への水素入射量の評価を数値解析により行った.そして低温プラズマが駆動する水素透過現象の機構を明らかにし,モデルの形に整理した.さらに本研究でまとめたPDPモデルを基に水素透過ポンプシステムのシミュレーションを行い当該システムの模擬評価に適用できることを示した.


26285
表面電離法による希土類原子ビームの計測
田村浩司・足立肇・柴田猛順
JAERI-Research 98-020;Mar. 1998, 13p.

 表面電離を用いた小型原子ビーム検出器を試作し,さまざまな希土類元素(Ce,Nd,Sm,Dy,Yb)を用いて,その特性を調べた.いずれの元素においても原子ビーム量とイオン電流に比例領域があり,本検出器によるこれら希土類原子ビーム量測定が可能であることがわかった.Nd,Sm,Dy,Ybでは,蒸着速度100〜200Å/s以上のビーム量まで評価可能であった.Ceについては蒸着速度が30Å/sを越えると,イオン電流に飽和傾向が見られた.これはCeの蒸気圧が低いため,Ce原子がフィラメントから十分速く離脱せず,Ce原子のフィラメントへの被覆によるものと考えられる.このことから,計測できる原子ビーム量は,原子のフィラメントへの被覆により制限されることがわかった.


26382
HRB-22 capsule irradiation test for HTGR fuel;JAERI/USDOE collaborative irradiation test
湊和生・沢和弘・福田幸朔・C. A. Baldwin*・W. A. Gabbard*・O. F. Kimball*・C. M. Malone*・F. C. Montgomery*・B. F. Myers*・N. H. Packan*
JAERI-Research 98-021;Mar. 1998, 187p.

 日米高温ガス炉燃料共同照射試験として,日本の燃料コンパクトを米国オークリッジ国立研究所のHFIR炉で照射し,引き続き照射後試験を行った.本報告書では,(1)被覆燃料粒子を含む燃料コンパクトの照射前特性評価,(2)照射条件及び被覆粒子燃料の照射健全性の指標となる照射中の核分裂ガス放出,(3)外観検査,寸法検査,断面組織観察,及びγ線測定などの照射後試験,並びに(4)事故時条件における燃料の健全性及び核分裂生成物の放出挙動を調べるための照射済み燃料を用いた1600〜1800℃における事故時挙動試験について記述した.


26383
Multi-dimensional numerical analyses for the IFMIF target jet flows
井田瑞穂*・加藤義夫・中村秀夫
JAERI-Research 98-022;Mar. 1998, 46p.

 1995年2月に開始された国際核融合材料照射施設(IFMIF)設計活動の一環として,凹面壁に沿った液体リチウム(Li)ジェットの特性を,多次元熱流体解析コードFLOW-3Dで調べた.IFMIFは,低放射化,耐照射性核融合材料の試験,開発のため,Liターゲット内での重陽子-Li反応で,高エネルギ(約14MeV)の高中性子束照射場を供する.Liジェットは真空中を高速(≦20m/s)で流れ,重陽子ビームによる発熱(≦10MW)を除去する.絞りノズル出口付近の流れに関する流体解析により,流速分布の変遷を明確にした.凹面壁上ジェット内の静圧の影響を受けたノズル内圧力分布により,流れは表面付近では加速され,壁付近では減速された.その結果は水による模擬実験での測定値と一致した.さらに,ビーム照射領域端付近での3次元的対流による影響を,2次元計算で明確にした.自由表面での温度上昇は熱的不安定を起こさない程度に小であった.


26384
イオン交換分離/α線スペクトロメトリーによる回収ウラン中の微量アクチノイドの定量
河野信昭・渡部和男
JAERI-Research 98-023;Mar. 1998, 20p.

 イオン交換分離/α線スペクトロメトリーによる回収ウラン中の微量アクチノイド(232U,237Np,238Pu,239Pu+240Pu, 241Am及び244Cm)の定量法を確立した.模擬回収ウラン試料を硝酸-フッ化水素酸で分解した後,陰イオン交換分離法によりウラン,ネプツニウム,プルトニウム及びアメリシウム-キュリウムを相互分離した.テトラエチレングリコール分散-蒸発乾固法により測定線源を調製し,α線スペクトロメトリーによりアクチノイド核種を定量した.イオン交換分離法による回収率は,いずれの核種についても90%以上であった.


26385
The Fatigue strength of graphite and carbon materials for HTTR core components
衛藤基邦・荒井長利・小西隆志*
JAERI-Research 98-024;Mar. 1998, 58p.

 HTTR炉内構造用黒鉛及び炭素材料について室温における疲労試験を実施した.応力負荷条件は応力比R(=σ min/σ max)=-3,-1,0(PGX黒鉛),=-1,0(ASR-ORB炭素),及び=-1(IG-11黒鉛)とした.取得したデータをPriceの方法,対応応力法及びPTS線図法によって解析し,設計疲労曲線を得るのに最適の方法を検討した.IG-11黒鉛については980℃真空中で疲労試験を実施した.主要な結論は次のとおりである.設計疲労曲線を得るにはPriceの方法が最適である.疲労強度はR値が小さいほど小さくなる.Priceの方法によってPGXとASR-ORBについて設計疲労曲線を得た.980℃における疲労強度は負荷応力を室温真空中の平均引張強度で規格化すると,室温における強度とほぼ等しくなる.


26439
群分離法の開発:DIDPAの精製
渡邉雅之・森田泰治・久保田益充
JAERI-Research 98-025;Apr. 1998, 14p.

 現在開発中の4群群分離プロセスでは,高レベル廃液からジイソデシルリン酸(DIDPA)を用いて,超ウラン元素を溶媒抽出により分離することに成功している.溶媒抽出の際,DIDPAは,放射線分解や酸による加水分解などにより劣化する.主たる劣化生成物であるモノイソデシルリン酸(MIDPA)は,超ウラン元素の分離効率を低下させるため,除去する必要がある.従来,MIDPAの除去には,エチレングリコールを用いる溶媒抽出により行われてきたが,分相が良くないという問題があった.本研究では,分相が促進される方法として,アセトンまたはメタノールを添加する方法を検討した.さらに,新しい精製法としてメタノール,アセトン水溶液を用いる方法を考察し,エチレングリコールを用いる方法に匹敵する優れた方法であることを見い出した.


26440
群分離法の開発:バインダで造粒したチタン酸へのSrの吸着挙動
溝口研一*・山口五十夫・森田泰治・山岸功・藤原武・久保田益充
JAERI-Research 98-026;May. 1998, 29p.

 現在開発中である4群群分離プロセスのSr-Cs群分離工程では,Srをチタン酸で,Csをゼオライトで分離する.Srの分離について,粒形保持強度を上げるためにバインダで造粒したチタン酸を作製し,バインダによるSrの吸着挙動への影響を調べた.その結果,バインダで造粒することによってSrの分配係数(Kd)は小さくなり,吸着平衡に達するまでの時間も非常に長くなることが明らかになった.しかし,バインダで造粒したチタン酸を水洗により充分コンディショニングすることで,(1)Kdが100ml/gになるのに必要な時間が約半分となり,(2)攪拌開始から24時間後にはバインダで造粒していないチタン酸とほぼ同じKd値になり,(3)カラム試験における見かけの交換容量は約1meq/g以上となった.


26441
Ni-22Cr-18Fe-9Mo合金のクリープ曲線形状の変化とθ投影法の適用性
倉田有司・内海宏和*
JAERI-Research 98-027;May. 1998, 45p.

 高温ガス炉用に開発されたNi-22Cr-18Fe-9Mo合金の固溶化熱処理材,熱時効材について800及び1000℃の定荷重クリープ試験を実施し,得られたクリープ曲線に対してθ投影法の適用性を調べ,以下の結果を得た.(1)800℃のクリープ曲線は3次クリープ主体の曲線である.(2)固溶化熱処理材の1000℃のクリープ曲線は,初期に低いクリープ速度の領域を持つ不規則な形状の曲線である.この低いクリープ速度の領域は熱時効によって消失し,熱時効材の1000℃のクリープ曲線は正常型となる.(3)正常型のクリープ曲線は4つのθを用いるθ投影法によって近似でき,θパラメータの応力依存性が数式化される.(4)3次クリープ支配型の他の結果に対し,4つのθを用いるθ投影法をそのまま適用することはできない.これに対し,3次クリープ項のみのθ投影法を適用することにより,クリープ曲線の近似が行える.


26607
多チャンネル量子欠損理論によるGd原子のJ=1自動電離リドベルグ系列の解析
宮部昌文・大場正規・若井田育夫
JAERI-Research 98-028;Jul. 1998, 25p.

 共鳴電離分光法を用いてガドリニウムの自動電離リドベルグ系列を観測した.1価イオンの第1,第2励起状態に収束する系列をJ=0の中間準位から観測し,主量子数n=35付近に,共鳴ピークの左右非対称性が反転する特徴的な摂動構造を見出した.この摂動構造を位相シフト基底MQDT法によって解析し,リドベルグ状態,摂動準位,連続状態間の相互作用を決定した.この結果,摂動による電離スペクトルの変形によって,局所的に非常に強い自動電離遷移が生じる可能性があることを見出した.


26528
プラズマ溶射によって形成されたアルミナ電気絶縁コーティング膜の繰り返し衝撃荷重に対する耐久性
金成守康*・阿部哲也・榎枝幹男・豊田真彦*・馬越俊光*・清水克祐*・森順二*・高津英幸
JAERI-Research 98-029;Jun. 1998, 23p.

 プラズマ溶射によってステンレス鋼基材上にNi-Cr中間層を介し形成されたアルミナ電気絶縁コーティング膜(アルミナ膜)の繰り返し衝撃荷重(638MPa)に対する電気絶縁耐久性(耐電圧1kV)を,アルミナ平端面の接触を伴う落錘試験を用いて評価した.繰り返し衝撃荷重に対するアルミナ膜の電気絶縁耐久性は,70,000回以上だった.絶縁破壊に至るまでのアルミナ膜の経時変化を調べるために,所定の回数だけ落錘試験を行った試料について,アルミナ膜表面及び断面のSEM観察を行った.その結果,アルミナ膜厚は,落錘試験開始時228μmであったが,衝撃回数に比例して直線的に減少し,その速度は2.43nm/回だった.絶縁破壊時のアルミナ膜厚は落錘試験開始時の約21%であり(約50μm),その断面はアルミナ膜とNi-Cr中間層との混在相を示していた.


26529
ディスプロシウム及びセリウムの電荷移行断面積
足立肇・田村浩司・岡崎哲治・柴田猛順
JAERI-Research 98-030;Jun. 1998, 29p.

 ディスプロシウム(Dy)及びセシウム(Ce)について,基底状態のイオンが中性原子と衝突する場合の対称電荷移行断面積を衝突エネルギーが200eV〜2keVの範囲で測定した.光共鳴電離法によるレーザーイオン源からのイオンビームを原子ビームに直交して照射し,電荷移行生成イオンと主ビームイオンの電流をそれぞれファラデーカップ検出器で測定して,それらの電荷量の比及び原子密度から電荷移行断面積を導出した.その結果,両者とも上記エネルギー範囲では断面積はほぼ一定で,Dyでは(1.82±0.14)×10-14cm2,Ceでは(0.88±0.12)×10-14cm2の値が得られた.これらの断面積の大きさの違いは,それらの原子及びイオンの電子配位を考慮して説明できる.


26530
Estimation of longitudinal and transverse dispersivities in the Twin Lake natural gradient tracer tests
武田聖司・G. L. Moltyaner*
JAERI-Research 98-031;Jun. 1998, 28p.

 カナダ原子力公社(AECL)チョークリバー研究所のTwin Lakeサイトにおいて,131Iを用いたフィールド規模のトレーサー試験が実施された.地下水及び核種移行パラメータである流速,縦方向及び横方向分散長を40m規模のTwin Lakeトレーサー試験から評価した.これは,Lake233サイト規模(東西600m,南北1400m)の3次元移行モデルに必要な移行パラメータを推定するためである.流速,縦方向分散長の算定のために,実測された破過曲線に対し1次元移流-分散方程式の解を統計的手法である時間的モーメントの2種類の方法を適用した.推定された移行パラメータに対するこれらの方法の適用性について議論した.また,横方向分散長は3次元移流-分散方程式の解を131Iの鉛直方向の濃度分布に適用することにより求めた.試験エリア内では透水性の異なる地層が確認され,透水性の違いが,分散長に及ぼす影響について報告した.また,推定された縦方向及び横方向分散長を40mまでの移行距離との相関についても議論した.


26531
Measurement and theoretical analysis of neutron-induced neutron-emission reactions of 6Li at 10 to 20MeV region
茨木正信*・馬場護*・松山成男*・千葉敏・戸ヶ崎康*・柴田恵一・岩本修・A. J. Koning*・G. M. Hale*・M. B. Chadwick*
JAERI-Research 98-032;Jun. 1998, 28p.

 入射中性子エネルギー11.5,14.1及び18.0MeVにおける6Liからの中性子放出反応の二重微分断面積を測定した.このデータ及び他の測定により得られたデータを基に,6Liの中性子全断面積と弾性散乱の角度分布を5MeVから数10MeVにわたるエネルギー領域で再現できる光学ポテンシャルを構築した.このポテンシャルは,DWBA理論による計算を通して,第一励起準位(励起エネルギー2.186MeV)への非弾性散乱の角度分布をも良く再現できることが分かった.次に,連続状態への遷移に伴う中性子スペクトルの解析を,終状態における相互作用模型をDWBA形式に拡張したモデルを用いて,中性子,重陽子とα粒子への3体崩壊において,重陽子とα粒子の相互作用が支配的であるという仮定の基に行った.この仮定及び模型は,Q-値範囲で-9MeVまでの低励起状態に対応する遷移の中性子スペクトル及び角度分布を良く記述できることが判明した.一方,入射中性子と6Li内のα粒子の準弾性散乱に対応するQ-値領域では計算値とデータの一致は良好ではなく,準弾性散乱の寄与ができない可能性が示唆された.


26608
Numerical simulation of runaway electron effect on plasma facing components
江里幸一郎*・鈴木哲・くぬぎ資彰*・秋場真人
JAERI-Research 98-033;Jul. 1998, 35p.

 逃走電子入射によりプラズマ対向機器(PFC)が受ける影響を解析的に評価した.本研究では,物質内の電子・光子輸送を取り扱うモンテカルロ法と熱解析を行う有限要素法からなる解析コード群を開発し,従来取り扱えなかった逃走電子入射時のPFC内の非定常温度解析を可能にした.本研究では,ITER/EDAにおける逃走電子入射条件を用いた.この条件下では,CFCアーマを持つダイバータ表面における逃走電子入射による損傷は発生しないと考えられるが,タングステンアーマを持つダイバータ及びベリリウムアーマを持つ第一壁ではそれぞれ,20,50MJ/m2程度の入射エネルギー密度で表面が溶融する可能性が本解析により示された.しかしながら,これらの逃走電子入射条件下では,従来懸念されていた熱シンクの溶融や冷却管のバーンアウトが発生しないと考えられる.


26609
ナトリウム原子,炭素原子の内殻電離X線発生法における超高速原子過程
森林健悟*・佐々木明・田島俊樹*
JAERI-Research 98-034;Jul. 1998, 37p.

 高輝度短パルスX線によって誘起される超高速内殻電離過程について考察する.炭素原子とナトリウム原子をターゲット原子としてX線レーザー利得の評価を行ったところターゲットとして用いる原子,及び,その原子の原子過程によってX線レーザーの波長,持続時間だけでなく,必要なX線の強度が決まることがわかった.さらに,必要なX線の強度は初期原子密度にも依存する.X線の輝度が大きくなると多重内殻電離がおこり,中空原子を形成する.この中空原子がX線レーザー源として十分に機能するだけでなく,高輝度X線観測にも重要な働きをする.さらに,X線観測とX線レーザーの新しい実験系の提案も行う.


26610
半導体レーザー励起高繰り返し,高平均出力Nd:YAGグリーンレーザーの発振特性の研究
大場正規・加藤政明・丸山庸一郎
JAERI-Research 98-035;Jul. 1998, 12p.

 銅蒸気レーザーに代わる原子法レーザー同位体分離用波長可変レーザーの励起光源として期待されている半導体レーザー励起高繰り返し・高平均出力固体グリーンレーザーを試作し,その発振特性を測定した.レーザーは,発振器及び3段の増幅器から構成され,1kHzの繰り返しで動作する.基本波の平均出力約95W,これをKTP結晶により波長変換することによって第2高調波として平均出力約50Wを得た.パルスの時間幅は共振器長に依存するが,共振器長100cmで基本波が50ns,これをグリーン光に変換したとき約40nsであり,波長可変レーザー励起光源として十分な値が得られた.電気入力に対するエネルギー効率はグリーン出力で約1.6%であり,銅蒸気レーザーの約0.5〜0.7%を上回る効率が得られた.


26611
ウラン原子の自動電離準位の大きな同位体シフトの観測
小倉浩一・柴田猛順
JAERI-Research 98-036;Jul. 1998, 15p.

 ウラン235を高い選択率でイオン化できる二波長二段階共鳴イオン化スキームを見い出した.このイオン化スキームの自動電離準位は大きな同位体シフト,0.51cm-1,を持つと同時にスペクトル幅が0.08cm-1で非常に狭い.ウラン235のイオン化の高い選択性は中間準位の同位体シフトだけでなく,自動電離準位の大きな同位体シフトと狭い線幅によるものであることがわかった.また,そのスキームの中間準位,23197cm-1,の寿命は,遅延法により215nsと求まった.


26612
Calculations of activation and radiation shielding of samples irradiated in dalat reactor using ORIGEN2 and QAD-CGGP2 codes
T. V. Hung*
JAERI-Research 98-037;Jul. 1998, 14p.

 ダラット研究所原子炉(U-Al合金36%濃縮235U燃料)において照射されたTeO2及びMoO3サンプルに関して輸送用鉛容器の必要厚さを,ORIGEN2コード及びQAD-CGGP2コードで計算した.計算において,ORIGEN2内蔵のPWR型(低濃縮ウランUO2の燃料)断面積ライブラリーを用いた.計算結果を実験データと比較しやすいように計算条件はできる限りダラット研究所原子炉での実験条件に合わせた.計算値と実験値は上記の断面積データの仮定にもかかわらず,よい一致を示した.このことから,ORIGEN2コード及びQAD-CGGP2コード並びに,PWR型(低濃縮UO2の燃料)断面積ライブラリーを用いることに問題がないことが明らかとなり,今後のダラット研究所原子炉での他の照射サンプルについても放射能と必要な遮蔽の計算に利用できると考えられる.


26678
Actinide level density parameter systematics
V. M. Maslov*・Y. V. Porodzinskij*
JAERI-Research 98-038;Aug. 1998, 42p.

 アクチニド核種の中性子共鳴間隔の実験データを解析することにより,トリウムからカリフォルニウムまでの26核種の準位密度パラメータを求めた.求められたパラメータは元素ごとに系統性を示しており,評価のための理論計算には有益である.


26767
Review of JT-60U experimental results in 1997
JT-60チーム
JAERI-Research 98-039;Sep. 1998, 155p.

 ITERの物理R&D及び定常トカマク炉の先進運転に貢献すべく実験を行っているJT-60Uの1997年の成果をレビューする.新たに設けたW字型ダイバータ(排気付)による熱・粒子制御特性の改善,高性能プラズマの長時間維持,負イオン源中性粒子ビーム入射による非誘導電流駆動と高エネルギー粒子効果の研究等の新規性の高い研究開発結果に加えて,これらの成果を支えている主要な物理研究(輸送,安定性,原子/分子過程等)の進展を報告する.さらに,ディスラプション挙動の理解と制御,各種プラズマパラメータの帰還制御の成果を示すとともに,新たに設けた計測機器による研究の広がりについて報告する.


26679
Neutron data evaluation of 238U
V. M. Maslov*・Y. V. Porodzinskij*・長谷川明・柴田恵一
JAERI-Research 98-040;Aug. 1998, 64p.

 238Uの中性子核データの評価を共鳴領域より上のエネルギー範囲で行った.評価には,Hauser-Feshbach-Moldauer理論,チャンネル結合模型及び二山核分裂障壁模型等による理論計算が用いられた.非弾性散乱の直接過程成分の計算には,soft-rotator及びrigid-rotator模型が用いられている.全断面積,弾性・非弾性散乱断面積,中性子捕獲断面積,(n,2n),(n,3n),(n,4n)反応断面積,核分裂断面積及び放出中性子スペクトルの評価値が得られた.


26680
RF control at transient beamloading for high-duty-factor linacs
M. A. Chernogubovsky*・杉本昌義
JAERI-Research 98-041;Aug. 1998, 29p.

 高いデューティーでリニアックを運転する場合に大きな問題となるのは,過渡的なビーム負荷の下で如何に効率よく高周波の制御を行い,ビームロスを少なくするかという点である.そのような場合の高周波制御方式を確立するために,過渡的に負荷が変わるようなビームによる空洞の励振特性を解析することによって,制御の原理及び状態方程式を導いた.方向性選択結合の考えをIFMIF高周波システムに適用することで,システムの主要な特性を決定し,高周波制御パラメータの最適化を図った.IFMIF-RFQの加速チャンネルを最適化する試みの最初の結果が得られた.


26681
Steady-state and transient DNB analyses for JAERI passive safety reactor(JPSR) using COBRA-IV-I and RETRAN-02/Mod3 codes
大久保努・X. Jiang*・新谷文将・落合政昭
JAERI-Research 98-042;Aug. 1998, 49p.

 原研型受動安全炉(JPSR)の定常時及びポンプトリップ事象時の熱的な裕度を評価するため,COBRA-IV-I及びRETRAN-02/Mod3コードを用いた解析を実施した.定常時において,流体混合係数等のパラメータに関する感度解析を実施した.過渡解析に対しては,主冷却水ポンプの慣性等のパラメータに関する感度解析を実施した.計算結果によれば,定常時には大きな熱的裕度が有るが,ポンプトリップ時に対しては,炉心入口での流量低下が速いことにより,最小DNBRが非常に小さな値になる.この熱的裕度を増加させるためには,主冷却水ポンプの慣性を増加させる設計とすることが最も効果的であることを明らかにするとともに,本過渡変化における最小DNBRを増加させる方策に関する提案を行っている.


26768
軽水型原子炉配管の不安定破壊特性に関する研究
栗原良一
JAERI-Research 98-043;Aug. 1998, 106p.

 軽水炉原子炉配管の漏洩先行型破損(LBB:Leak Before Break)概念の成立性を実証するための試験研究として,特に,貫通に至らない表面き裂を配管内面周方向に想定した場合,過大荷重が作用しても,き裂が瞬時に伝播するような不安定破壊を起こさず,板厚方向にのみ伝播する安定破壊に至ることを実証することは重要である.日本原子力研究所で実施した配管不安定破壊試験は,このような背景のもとに計画されたものであり,表面き裂を有する配管試験体に単調増加荷重または繰り返し荷重を負荷することによって,配管が不安定破壊する条件を明らかにした.本論文では,配管不安定破壊を,外荷重を単調増加して内表面き裂を有する配管を破壊させる静的不安定破壊と,繰り返し荷重で配管を破壊させる動的不安定破壊に分けて検討した.


26769
Analysis on long-term strategy for radwaste management in China
H. Chen*
JAERI-Research 98-044;Aug. 1998, 47p.

 放射性廃棄物は環境保全に係わる世界的な課題を提示している.原子力開発利用計画を実施している大部分の諸国は,これまで放射性廃棄物管理のための独自の戦略を構築してきた.中国も固有の戦略を実施してきたが,原子力発電の開発利用によって新たな課題が発生しつつある.本稿は,中国における放射性廃棄物の長期管理に関する分析をとりまとめたものである.中国における既存の放射性廃棄物管理システムに関してまず説明した.次に,放射性廃棄物管理における二つの重要な課題,すなわち経済的及び社会的課題を分析するとともに,中国の放射性廃棄物管理に影響する将来的課題についても検討した.また,NEA諸国における廃棄物管理に関しても簡略にまとめた.この分析によれば,中国における既存の放射性廃棄物管理システムは包括的ではあるが,まだ完全なものではない.長期管理の方法に関して,経済的及び社会的課題の観点からの改善を必要としている.この既存システムを補完するため,長期管理のための資金システムを構築することが期待される.


26770
Estimation of covariances of 10B, 11B, 55Mn, 240Pu and 241Pu neutron nuclear data in JENDL-3.2
柴田恵一・中島豊*・村田徹*
JAERI-Research 98-045;Aug. 1998, 48p.

 JENDL-3.2に収納されている5核種の核データの共分散を推定した.対象となった核種は高速炉の核設計研究で重要な, 10B,11B,55Mn,240Pu及び241Puである.共分散が求められた物理量は,断面積,分離・非分離共鳴パラメータ及び弾性散乱における1次のルジャンドル展開係数である.共分散推定においては,JENDL-3.2の評価に用いられたのと同じ方法が用いられた.JENDL-3.2で与えられている反応断面積が実験値をもとに求められた場合は,最小自乗フィッティングコードGMAを用い共分散を推定した.一方,理論計算値の共分散はKALMANシステムにより計算した.ここで得られた共分散データはENDF-6フォーマットでファイル化され,JENDL特殊目的ファイルの1つであるJENDL-3.2共分散ファイルに収納される.


26771
群分離法の開発;小規模実験による4群群分離プロセスにおけるテクネチウム挙動の確認
森田泰治・溝口研一*・山口五十夫・藤原武・久保田益充
JAERI-Research 98-046;Aug. 1998, 18p.

 4群群分離プロセスにおけるTcの分離挙動について,これまで各工程個別に行ってきた研究の結果を,マクロ量のTcを加えた模擬高レベル廃液を用いてフラスコスケールの小規模実験により,プロセス全体を通して総合的に確認する試験を実施した.試験の結果は,これまでの各工程個別試験の結果によく一致した.例えば,Tc-白金族元素分離のための脱硝沈殿工程の試験では,マクロ量のTcに対してもTcの沈殿率として98.2%が得られ,また,この沈殿からのH2O2によるTc溶出試験では,1回の操作で84.6%の溶出率が得られた.本総合試験の成果をもとに,群分離プロセスからのTc製品の組成を推定し,混入元素の種類とその程度についても明らかにした.


26772
高燃焼度フルMOX-BWR炉心の核特性の検討
白川利久*・大久保努・落合政昭
JAERI-Research 98-047;Aug. 1998, 46p.

 運転サイクル3年程度,燃料交換頻度4バッチそして燃焼度100GWd/t以上を目指した全MOX高燃焼度BWR炉心の核的検討を行った.ベース炉心は,135万kWe級US版ABWRに9×9型燃料集合体を装荷して構成した.可燃性毒物ガドリニアの濃度を調製するとともに水棒の有無や被覆管直径変更により水対燃料体積比を変えて検討した.比較的高減速,中間減速と比較的定減速の燃料集合体について,2次元XY燃料集合体セル計算を汎用核計算コードシステムSRAC95で実施した.3ケースとも上記目標が達成可能と考えられる.比較的定減速の燃料集合体は,プルトニウム使用量は多くなるが,長期間燃焼により総発熱量は多くなる.加工費,使用済み燃料貯蔵費の観点からは有利と思われる.このケースについては,3次元XYZ炉心燃焼計算を同コードシステムで実施した.線出力密度が低く,全制御棒引き抜き運転が可能と思われる結果が得られた.


26773
極短パルスレーザー照射によるX線発生機構とその定量的評価
上島豊*・岸本泰明・佐々木明・森林健悟*・永島圭介・加道雅孝・匂坂明人*・田島俊樹*
JAERI-Research 98-048;Aug. 1998, 46p.

 相対論的高強度短パルスレーザーの実現により,その極めて強い電磁場とプラズマの電子との非線形相互作用過程から,高線量のX線を発生することができるようになった.高Z物質を媒質に用いた場合,複雑な過程を経て(分極,原子過程など)X線を発生するのに対して,相対論的高強度レーザーと低Z物質との相互作用では,極短パルスのラーマー放射と制動放射が主要なX線放射メカニズムとなる.我々は,これらのX線の強度,放射角度分布,光子エネルギースペクトラムを評価した.また,ラーマー放射の強度を増大させるために必要な媒質プラズマやレーザー照射の配置などの条件について考察を行った.特に,ラーマー放射は,その光子エネルギースペクトラムが連続で,かつ高エネルギーに極大値を持つため,中空原子型のX線レーザーや超高速診断光など,多くの応用の可能性を秘めた光源である.


26774
Design of ITER neutron monitor using micro fission chambers
西谷健夫・L. C. Johnson*・海老沢克之*・C. Walker*・安東俊郎・河西敏
JAERI-Research 98-049;Aug. 1998, 38p.

 マイクロフィッションチェンバー(小型の核分裂計数管)を使用したITER用中性子モニターの設計を行った.使用する核分裂物質としては,238Uは239Puの増殖により感度が増加してしまうため235Uを採用した.このマイクロフィッションチェンバーを遮蔽ブランケットとバックプレート(ブランケット支持板)の間,及びブランケットモジュールの間隙を一対として10ヶ所,さらにダイバータカセットのドームの下に1ヶ所配置した.ITERでは中性子モニターに対し7桁の測定レンジと1msの時間分解能が要求されているが,1つのチェンバに対し,パルス計数とキャンベルモードの回路系を併用することにより,これを実現できることを示した.またプラズマ位置変化の影響を中性子のモンテカルロ計算により評価した.


26844
二座配位抽出剤によるLn(III)抽出に及ぼすピクリン酸の協同効果
鈴木英哉*・長縄弘親・館盛勝一
JAERI-Research 98-050;Sep. 1998, 48p.

 本研究では,超ウラン元素の分離工程のための抽出剤として現在注目されているジアミド及びCMPOを用いたランタノイドの抽出系に,さらに疎水性の陰イオンを添加することによって得られる協同効果について,そのメカニズムの解明及び抽出能の増大などについて検討した.本研究で用いた抽出剤は,二座配位抽出剤であるジアミド(DA)(N,N′-dioctyl-N,N′-dimethyl-2-(3′-oxapentadecyl)-propane-1,3-diamide)及びCMPO(diphenyl-N,N-dibutyl carbamoyl methylene phosphine oxide)であり,また,疎水性の陰イオンとしてピクリン酸(HPic)(2,4,6-trinitrophenol)などを使用した.DA及びCMPOによるLn(III)の抽出系では,ピクリン酸の添加による協同効果により抽出が大幅に増大した.協同効果による抽出定数とDAのみによるEu(III)の抽出定数の値を比較すると,約6×1010倍の違いを示した.また,CMPOの場合では,約8×1010倍の違いを示した.


26845
アンモニアクラスターイオンの生成と分解
池添康正・鈴木和弥・中島幹雄・横山淳・白石浩二・大野新一*
JAERI-Research 98-051;Sep. 1998, 43p.

 アンモニアクラスターイオン(NH4+.nNH3)について,非経験的分子軌道法計算による解析及びコロナ放電-Jet expansion法による生成・分解実験を行った.分子軌道計算はGaussian94を用いて,最適構造,全電子エネルギー,基準振動の振動数を求めた.クラスター生成については,放電電流,ガス組成と圧力,ガス噴出細孔の径等のクラスターサイズ分布に対する効果を調べた.ガス噴出細孔部におけるクラスター成長はクラスターサイズn単位で1以下であった.クラスターの熱分解については,放電電流,細孔径,飛行時間,クラスターサイズによる分解速度の変化を調べた.実験結果をもとにして,クラスターによる分解速度の変化を調べた.実験結果から,クラスターの内部エネルギーの多寡に主たる寄与をする過程は,クラスター生成,分解反応であることを推論した.


26846
NSRR照射済燃料実験での発熱量評価;JMTR照射燃料
中村武彦・笹島栄夫・更田豊志・鈴木敏夫*・高橋正人*・細山田龍二*・石島清見
JAERI-Research 98-052;Sep. 1998, 55p.

 NSRRでは燃焼の進んだ燃料のパルス照射実験により,反応度事故時挙動を調べる実験を実施している.反応度事故の大きさの指標である発熱量は,パルス照射により生成されたFP量の測定により評価する.照射済燃料の場合は,定常照射中の燃焼により生成したFPが,パルス実験時の生成量に比べて桁違いに大きいため,測定は簡単でない.この最も重要な実験パラメータである発熱量を精度よく評価するため,短半減期FP Ba-140を化学分離後定量する手法を開発した.さらにNSRR炉心核計算により実験燃料と炉心出力のカップリング係数を求めた.本報告書では,これらの測定・解析手法及び結果を,実験燃料の燃焼度と発熱量について,JMTR予備照射燃料についてまとめた.実測と解析の比較検討の結果,信頼性の高い発熱量と残留核分裂性物質の関係が得られた.


26847
Irradiation effects on plasma diagnostic components
西谷健夫・飯田敏行*・池田裕二郎・石塚悦男・角田恒巳・河西敏・河村弘・森田洋右・長島章・中道勝・中沢哲也・野田健治・大山幸夫・佐川尚司・佐藤文信*・四竃樹男*・杉江達夫・八巻大樹・山本新
JAERI-Research 98-053;Oct. 1998, 105p.

 ITERをはじめとする核融合炉の計測装置の開発において最も重要な課題の一つは計測機器要素に対する放射線照射効果である.ITERの工学設計活動の一環として,セラミックス,窓材,光ファイバーといった基本要素及びボロメータ等の真空容器内計測センサーの照射試験を実施した.セラミックスに対しては,中性子による照射誘起伝導の測定を行った.光ファイバー,窓材及び反射鏡に対しては透過損失及び発光をγ線,14MeV中性子,原子炉中性子について測定した.またボロメータについては新たにセラミックス基板ボロメータを開発し, 60Co及びJMTRで照射試験を行った.磁気プローブについてはJMTRにおいて照射誘起起電力の測定を行った.


26848
Study on thermal-hydraulics during a PWR reflood phase
井口正
JAERI-Research 98-054;Oct. 1998, 216p.

 PWR大破断冷却水喪失事故時の再冠水期における炉心内の熱水力挙動は,流路が管群であることや水流速が極めて小さく停滞水条件に近いことなどのために,従来広い研究対象とされてきた2相流挙動と異質な面がある.このため,上記の熱水力挙動を構成する素現象のうちには,原子炉安全評価の観点から重要であるにもかかわらず,現象の理解が不十分で,かつ予測精度が充分ではないかまたは適切な予測モデルがないものがあり,事故時の状況を高精度に予測するのに対し障害となっている.そこで,著者は定量的予測を達成するうえで重要な素現象として,管群流路内のボイド率,再冠水現象に及ぼす炉心水平出力分布の影響,再冠水現象に及ぼす非常用炉心冷却水の複合注入の影響,複合注入型PWRの再冠水挙動に見られる炉心内循環流及び炉心2領域化現象を抽出し,これらの現象の解明と計算モデルの構築を行った.最終的には,代表的なPWR形式であるコールドレグ注入型PWR及び複合注入型PWRにおける再冠水挙動を充分な精度で予測する手法を確立した.以上の成果を原研で開発された再冠水現象解析コードREFLAに取り込み,予測精度の向上と適用性の拡大を実現した.


26849
2自由度制御系によるBWR原子炉出力振動時の炉出力低下法
石川信行・鈴木勝男
JAERI-Research 98-055;Sep. 1998, 31p.

 沸騰水型原子炉(BWR)の低流量・高出力の運転領域ではボイド反応度フィードバック効果のために炉出力振動が発生することが報告されている.この対策として,BWRには低流量・高出力状態になった際に,あらかじめ選択された制御棒を挿入して炉出力を低下させるシステム(SRI system)が導入されている.本報告ではそのような際に,原子炉出力を安全に低下させる方法として2自由度制御系を適用した原子炉出力制御法を提案する.設計した制御系により炉出力振動を抑制し,かつ所望の速さで炉出力低下が図れることを簡単な原子炉動特性モデルを用いた数値シミュレーションで確認した.


26850
Cross sections for ion production in reactions of H+ with D2;Effects of vibrational and rotational excited states of D2
市原晃・岩本修・横山啓一
JAERI-Research 98-056;Sep. 1998, 22p.

 H+とD2の反応で生じるD2+,D+及びHD+イオン生成の断面積を,重心衝突エネルギーEcm=2.5-8.0eVの範囲内で,非経験的分子軌道計算で得られたH3+の3次元ポテンシャル面上でのトラジェクトリーサーフェスホッピング(TSH)法を用いることにより,評価した.反応物D2の初期状態が各イオン生成に与える影響を調べるために,D2の振動及び回転の量子数をv=0-3,j=1,5,10に設定して計算を行った.その結果,D2+イオンの生成は,D2の振動回転状態(v,j)が高くなるにしたがって著しく増大することがわかった.D2+生成の飛躍的な増大には,D2の振動励起が主要な役割を果たし,回転励起は補助的な効果を与えた.D2+生成と比較して,D2の振動状態がD+及びHD+イオンの生成に与える効果は一桁小さく,D2の回転状態に対する効果はほとんど無視しうる大きさであった.


26959
Calculation of neutron flux characteristics of dalat reactor using MCNP4A code
T. V. Hung*・坂本幸夫・安田秀志
JAERI-Research 98-057;Oct. 1998, 25p.

 Dalat炉の中性子束特性であるエネルギースペクトル,中性子束絶対値及び照射孔に沿った分布をMCNP4Aコードで計算した.すべての計算はパーソナルコンピュータで実施した.各ケースの計算時間は約2日であった.計算体系は500Wで運転される炉心を正確にモデル化した.中性子束及びスペクトルフィッティング因子αは5%以内で実験値と一致した.計算で得たエネルギースペクトルを用いてカドミウム比及び 197Auの実効断面積を計算した.この計算ではJENDL及びIRDF82の核データを用いた.計算結果の比較から,(1)カドミウム比は計算値/実験値で表した不一致がIRDF82の場合に1〜6%,JENDLの場合に4〜8%であり,(2)197Au(n,γ)198Au実効断面積はJENDLまたはIRDF82を用いてもほとんど同一の値を与えた.


26851
Development of partitioning method;Adsorption of cesium with mordenite in acidic media
L. Donnet*・森田泰治・山岸功・久保田益充
JAERI-Research 98-058;Oct. 1998, 63p.

 高レベル廃液の群分離における新分離スキームの可能性を探るため,モルデナイトによる0.5md/l硝酸等の酸性溶液からのセシウムの吸着分離について研究した.バッチ吸着実験において,調べた3種のモルデナイトはほぼ同様の挙動を示した.天然モルデナイトによる0.5md/l硝酸からのCsの吸着では,分配係数1150ml/g,飽和吸着量0.64mmol/gが得られた.天然モルデナイトを用いた元素混合溶液によるカラム吸着実験で,Csは選択的に吸着されることが示され,Cs以外ではモル比で約4%のRbがカラム中に残るのみであった.4md/l硝酸による溶離についても検討し,吸着されたCs及びRbは,カラムより定量的に溶離されることを明らかにした.


26852
高燃焼度フルMOX PWR炉心の核的検討
久語輝彦・嶋田昭一郎*・大久保努・落合政昭
JAERI-Research 98-059;Oct. 1998, 40p.

 将来型軽水炉の一つのオプションとして,高燃焼度フルMOX PWRの炉心概念の検討を進めている.燃料ピン間隔を13.8mmに広げることにより減速材対燃料体積比を2.6に増加させて,電気出力60万kW,平均取り出し燃焼度100GWd/tを達成する炉心を提案し,核的成立性について検討した.本炉心には,12%の核分裂性プルトニウム富化度を要した.B-10を40%濃縮したホウ酸水を使用すれば,ホウ素タンクの増強をせずに,燃焼反応度の制御は可能である.また,天然ボロンカーバイド(B4C)を使用した制御棒クラスターを集合体3体について1体を設置すれば,2%dk/kk′以上の炉停止余裕を確保することができる.減速材ボイド係数及び減速材温度係数は運転中は負であり,可燃性毒物等の使用は不可欠ではないが,Gd2O3及びEr2O3等の可燃性毒物の使用により,径方向ピーキング係数を約0.1低減できる.


26960
ウラン光電離スペクトルのシュタルク効果と定常電圧印加回収時の同位体分離
小倉浩一・柴田猛順
JAERI-Research 98-060;Nov. 1998, 11p.

 ウラン235を高い選択性でイオン化できる光イオン化スキームの自動電離準位は,電場でその線幅が広がらずシュタルク効果が非常に小さいことを明らかにした.このイオン化スキームを用いて,回収電極に定常電圧を印加したままで,レーザー同位体分離実験を行った.イオン量,同位体比ともレーザー照射直後にパルス電圧を印加した場合と,ほとんど同じであった.これより,シュタルク効果が小さく電場で線幅が広がらない自動電離準位を用いれば,パルス電圧を用いず,定常電圧でイオンを回収でき装置が簡単になることがわかった.


26961
板状セルにおける非等方中性子ストリーミング効果の輸送理論の適用
大井川宏之
JAERI-Research 98-061;Nov. 1998, 22p.

 板状セルに関して,セルの非均質性に起因する非等方中性子ストリーミング効果を輸送理論に取り入れるための手法を考案した.この手法は,均質化後の輸送方程式の漏洩演算子及び断面積に角度依存因子を乗じることにより,非均質セルの角度中性子束,角度依存反応率及び中性子漏洩率を均質体系の体系計算で保存するものである.簡単な2領域,エネルギー1群の計算で本手法の適用性を評価した結果,ブノアの異方性拡散係数を使った拡散計算では過大評価されるような非均質性の高いセルの中性子ストリーミング効果も精度良く計算できることがわかった.


26962
北西太平洋とその周辺海洋の放射性廃棄物投棄海域における海洋放射能調査;第2回日韓露共同海洋調査における原研の調査研究
外川織彦・北村敏勝*・水島俊彦・藪内典明・小林卓也
JAERI-Research 98-062;Oct. 1998, 50p.

 原研は,1995年8月15日から9月15日まで実施された第2回日韓露共同海洋調査に参加した.この調査の目的は,旧ソ連とロシアが北大西洋とその周辺海域へ投棄した放射性廃棄物,及び韓国と日本が過去に領海内へ試験的に投棄した放射性廃棄物による海洋の放射能汚染状況を調査することであった.原研が実施した船上簡易測定の結果,海水と海底土の試料中に検出された137Csの濃度は,北大西洋とその周辺海域で一般的に観測されるグローバル・フォールアウト起因のレベルと同程度であった.本報告書は,第2回日韓露共同海洋調査の概要,海洋調査における原研の調査研究,海洋放射能の測定結果を記述する.


26963
位置検出型核分裂計数管の特性インピーダンスの設計とソレノイド電極構造体の試作試験
山岸秀志・鈴木勝男・角田恒巳・伊藤浩
JAERI-Research 98-063;Nov. 1998, 21p.

 遅延線構造の位置検出型核分裂計数管(PSFC)を開発するため,それに必要なソレノイド電極構造体(SEST)の設計と電気的特性について検討を行った.設計では適切な特性インピーダンスと充分なパルス伝播時間が得られるように,SESTのインダクタンスとキャパシタンスの最適化を図った.PSFCの成立性を確認するため,外径22mm,電極長800mmのSESTの模擬体を試作し,その特性試験を実施した.特性試験では,試作したSESTのインダクタンス,キャパシタンス,抵抗,特性インピーダンス及びパルス遅延時間等を測定した.試験結果と設計値との照合を行い,設計法の妥当性を確認した.また,本測定実験により,PSFCのソレノイド電極構造の成立性を確認できた.


26964
室温における水素吸収ジルカロイ-4燃料被覆管の高速加圧バースト試験
永瀬文久・大友隆・上塚寛
JAERI-Research 98-064;Nov. 1998, 25p.

 高燃焼度軽水炉燃料棒のRIA条件下における破損挙動を調べるために,NSRRパルス照射時に生じるPCMIを模擬し被覆管を急速加圧できる装置を製作した.最初の実験として,室温で水素吸収Zry-4管に内圧を最大1.9MPa/msの高速で負荷するバースト試験を行った.その結果,水素吸収被覆管には,NSRR実験で見られた破損と酷似した軸方向に長い破損開口が生じた.さらに,破損挙動に及ぼす水素の影響が明瞭に観察された.円周方向の残留ひずみ量は,水素濃度が高いほど明確に低下した.また,水素化物を被覆外表面に偏析させた試料は,極めて小さなひずみ量で破裂し,破裂圧力も相対的に低かった.一方,加圧速度の及ぼす影響は比較的小さかった.NSRR実験等で見られたパルス照射時の高燃焼度燃料棒の破損が,被覆管の水素吸収と外面への水素化物偏析と深く関連していることが示された.


26965
レーザー誘起蛍光法によるウラン原子の超微細構造と同位体シフトの測定
赤岡克昭・大場正規・若井田育夫・有澤孝
JAERI-Research 98-065;Nov. 1998, 34p.

 クヌーセンセル型の原子ビーム発生装置と2台のCWリングレーザーを用いてウラン235の基底・準安定レベル,7本の選択励起レベル,7本の中間励起レベル間において26本の超微細構造スペクトルと同位体シフトを,レーザー誘起蛍光法により測定し,今までに測定されていない11組の超微細構造定数を含め,16組の超微細構造定数を決定するとともに,10個の同位体シフトを測定した.


27001
Research on radionuclide migration under subsurface geochemical conditions;JAERI/AECL phase II collaborative program year 1(Joint research)
天然バリア研究室
JAERI-Research 98-066;Nov. 1998, 62p.

 日加放射性廃棄物処分安全研究フェーズ2協力に基づき,放射性核種移行に関する研究計画を実施した.1993年度から5年計画で開始した本協定では,切り出し岩盤核種移行実験,地下水中における長寿命核種の化学形研究,同位体水文地質学的研究,及び地下水流解析モデルの開発を実施している.計画の初年度(第1計画年:1994年3月から1994年9月)は,切り出し岩盤核種移行試験のため,地下240mの実験坑道の壁面から実験用亀裂岩盤試料を取り出す準備を進めるとともに,地下水中における長寿命核種の化学形研究,同位体水文地質学的研究,及び地下水流解析モデルの開発における文献調査を行い,第2計算年以降の準備を進めた.


26966
イオンビームスパッタリング法によるNiC/Ti多層膜中性子スーパーミラーの作成とその特性
曽山和彦・鈴木正年・海老沢徹*
JAERI-Research 98-067;Oct. 1998, 61p.

 本研究は,Ni/Tiスーパーミラーの高反射率化を目的として,Ni膜にCを混入させることにより,Ni/Ti多層膜の界面粗さを低減させ,反射率を増加させるための多層膜作成技術の開発を目的としている.イオンビームスパッタリング法を用いて,C混入率を変化させたNiC薄膜及びNiC/Ti多層膜を作成し,X線回折法,X線光電子分析法,透過型電子線顕微鏡,中性子反射法,極微小電子線解析法によりその特性を調べた.その結果,C混入によるNi膜の微結晶化が確認されるとともに,最適C混入率が,Ni3C化合物の形成される約30%と推定された.そして,最適C混入率条件でニッケルの2倍の全反射臨界角を有するスーパーミラーを作成したところ,90%以上の高反射率スーパーミラーを作成することができた.


27002
Hybrid particle-in-cell(PIC) simulation of heat transfer and ionization balance in overdense plasmas irradiated by subpicosecond pulse lasers
A. Zhidkov*・佐々木明
JAERI-Research 98-068;Nov. 1998, 50p.

 クーロン散乱をランジュバン方程式を用いて計算する方法と,非局所熱平衡にあるプラズマの電離度を平均イオンモデルで計算する新手法に基づく,1次元ハイブリッドPICコードを開発した.急峻な温度勾配を持つプラズマ中の非局所熱伝導,オーバーデンスプラズマと強度1016 W/cm2程度のサブピコ秒レーザーとの相互作用の計算を行い,実験やフォッカープランクシミュレーションと比較し,本手法の有効性を検証した.短パルスレーザーの高密度プラズマによる,真空加熱(ブルネル過程),異常表皮効果,共鳴吸収等の効果を検討した.プラズマ中の衝突過程,イオン化が,吸収率と熱流に大きな影響を与えることを示した.計算結果は,実験で測定されたプラズマのスケール長に対する吸収率の挙動をよく再現した.


26967
電子ビーム加熱ウラン蒸発時の蒸発面温度分布測定
大場弘則・柴田猛順
JAERI-Research 98-069;Nov. 1998, 20p.

 電子ビーム加熱時のるつぼ内の表面温度分布を知ることは,原子レーザー法ウラン濃縮技術での蒸発過程を把握するうえで重要である.ウラン蒸発時のるつぼ内の表面温度分布を測定した.蒸発面を650nmの狭帯域透過フィルターを通してモノクロCCDカメラで撮像録画し,画像信号を画像処理装置に接続して分光輝度分布を表示させた.温度の絶対値はウラン凝固点または参照光源を基準に求めた.電子ビーム入力の増加に伴い最高温度は3000Kを越えること,飽和の傾向を示すことがわかった.また,測定温度は測定した蒸着速度をウラン飽和蒸気圧のデータを用いて推定した表面温度とほぼ一致することが確認できた.


27003
高温ガス炉燃料製造の高度技術の開発;被覆層破損率の低減化
湊和生・菊地啓修・飛田勉*・福田幸朔・吉牟田秀治*・鈴木信幸*・富本浩*・西村一久*・小田耕史*
JAERI-Research 98-070;Nov. 1998, 25p.

 高温ガス炉の安全性の確保・向上を目指して,被覆層破損率が極めて低い,高品質の燃料を製造するために,高温ガス炉燃料製造の高度技術の開発を行った.この報告書は,その成果の総まとめである.まず,被覆工程及び燃料コンパクト製造工程における被覆層の破損発生機構を解明した.その結果に基づいて,破損発生原因を取り除くために,被覆工程においては,粒子の流動状態を適切に制御するとともに,被覆工程の途中で粒子の取り出し・装荷を行わない連続被覆法を実用化した.燃料コンパクト製造工程においては,オーバーコートした粒子の成型温度及び成型速度を最適化した.これらの技術開発により,燃料の品質は飛躍的に向上した.


27004
ルーチェ法の最適化研究;中性子科学研究のための陽子蓄積リング荷電変換装置
鈴木康夫*
JAERI-Research 98-071;Dec. 1998, 35p.

 原研中性子科学研究用陽子蓄積リングのための新しい入射法(荷電変換法)として考察したルーチェ法について,その最適化研究を行った.ルーチェ(LUCE)法とはLaser and Undulator Charge Exchangeの略であり,磁場と光によるフォイル法に代わる新しい荷電変換法である.この論文では,荷電変換法のキーパラメーターとなるビームロス(非荷電変換率)を10-3とゆるめることにより,荷電変換後のビームの質の向上を図り,これによりすべての他の構成要素について最適化を図った.すなわち,まず,ニュートラライザー用アンジュレーター磁場の最適化(ビームの拡がりを最小化)を行い,それをベースにアイオナイザー用アンジュレーターの磁場分布について考察,レーザーの波長,出力,スペクトルの最適化,新しい光共振器の提案,さらに,それらに伴う光の吸収断面積,シュタルク効果の影響などについて詳細な評価検討を行い,技術的に現実性のある合理的設計とすることができた.


27105
青森県六ヶ所村沖における海洋放射能調査
山本忠利・郡司勝文・五十嵐延行*
JAERI-Research 98-072;Dec. 1998, 21p.

 青森県六ヶ所村沖の測点から海水試料を採取して,その中に含まれる放射性物質の濃度レベルを調査した.人工放射性核種として239,240Pu,90Sr,137Cs等が検出されたが,いずれも各測点の海水において放射能の違いは認められず,ほぼ均一に分布していた.六ヶ所村沖における他の機関による最近の観測データと比べて,同じくらいの放射能のデータが得られた.本報告は,平成8年度及び平成9年度に実施した放射能濃度の測定結果についてまとめたものである.


27106
ウランイオン衝撃によるウラン表面からの二次電子放出
田村浩司・岡崎哲治・足立肇・大場弘則・柴田猛順
JAERI-Research 98-073;Dec. 1998, 10p.

 ウランイオン衝撃によるウラン表面からの二次電子放出係数をイオン衝撃エネルギー300〜3000eVの範囲で測定した.ウラン表面はウラン原子の蒸着により作り,ウランイオンビームは共鳴イオン化法を用いたレーザーイオン源から引き出した.衝撃エネルギー約1000eV以下では,二次電子の放出はなかった.しきい値1000eV以上での二次電子放出係数は,イオン衝撃エネルギーのほぼ一次関数で増加し,3000eVの時0.12であった.


27190
Molecular dynamics simulations of deoxyribonucleic acids and repair enzyme T4 endonuclease V
M. Pinak*
JAERI-Research 98-074;Jan. 1999, 37p.

 チミンダイマーは,太陽光にも含まれる紫外線によって頻繁に生じるDNA損傷である.これが修復されなければ,細胞の突然変異や致死を招き,皮膚癌の原因にもなると考えられている.T4エンドヌクレアーゼVは,バクテリオファージT4由来のDNA修復酵素であり,チミンダイマーの修復過程における最初の反応を担う.分子動力学シミュレーションは,損傷のない12塩基対のDNA,損傷のない場合と塩基配列は同じだがチミンダイマーのあるDNA,修復酵素T4エンドヌクレアーゼV,の3つの分子についてそれぞれ1ナノ秒(ns)ずつ行った.これらのシミュレーション結果は,認識過程における静電作用の役割を調べるために解析された.この結果,酵素のアミノ酸の静電エネルギーは,約+15kcal/molの正の値であることがわかった.チミンダイマーの部分の静電エネルギーは約-9kcal/molであり,損傷のないDNAのチミンの部分での静電エネルギーがほぼ中性を示したのとは異なった.この違いは,静電エネルギーが,修復酵素がDNAをスキャンする過程において正確にチミンダイマーを認識するための重要な因子であることを示唆している.


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