研究開発報告書類


JAERI-Tech
2000年


280090
Solution exploration of plasma initiation and current ramp-up scenario in A-SSTR
A. R. Polevoi*・西尾敏・牛草健吉
JAERI-Tech 2000-001; Jan.2000,16p.

 中心ソレノイドコイルを排除した非誘導電流駆動方式による定常炉,改良型A-SSTRを対象に立ち上げシナリオの検討を実施した.主要な課題は初期プラズマの生成から500kA〜1MA(定常プラズマ電流の5〜10%)程度までプラズマ電流を立ち上げることの可否である.ソレノイドコイルを排除しても1Vsに満たない僅少の磁束供給は期待できることから,完全非誘導方式による場合と僅少の磁束供給が期待できる場合の両ケースについて立ち上げシナリオの検討を実施した.磁束供給を考慮する場合は4Vを0.1秒間プラズマに与え,3MWのECH予備電離・加熱の条件の下に10ms程度で放射損失バリヤーを乗り越えることが示された.一方,磁束供給がない場合でも初期プラズマの生成が可能であることが示された.この場合,外部から操作できるパラメータは加熱入力パワーのみであるため,立ち上げシナリオの構築は容易ではないが,輸送方程式と条件βpε<1の両方を満足する温度,密度及び電流を刻一刻設定することで初期プラズマの生成シナリオを構築した.この場合もECH予備電離・加熱のパワーは3MWである.双方とも,初期プラズマの生成からプラズマ電流2.0MA程度までECHによって立ち上げる場合の必要となる時間は約2000秒となった.中心ソレノイドコイルがなくてもプラズマの立ち上げは可能であることが示された.


280091
ITERトリチウムプラントの水素同位体分離システムのための深冷蒸留塔の構成とインベントリーに関する考察
岩井保則・山西敏彦・西正孝
JAERI-Tech 2000-002; Feb.2000,37p.

 ITER-FDRの定常状態プラズマオペレーション(燃焼時間10,000s,排気流量200Pam3/s)に対応した水素同位体分離システム(ISS: Isotope Separarion System)について,ISSに供給される三種類のフィード流(プラズマ排ガス,水処理システムの排ガス,中性粒子流量システムの排気ガス)の中の水処理システムからの水素流量を大幅に減少できるという見通しに基づき,設計の見直しを行った.本検討ではITERの段階的建設のシナリオも考慮して,四塔からなる独自の塔構成を提案した.最大冷媒容量はFDRのISS基本設計の44%と大幅に減少した.一方,最大トリチウムインベントリーについてはFDR-ISS基本設計と同等となったが,運転条件に対応したペレット用のトリチウム濃縮流の検討の進展によって,トリチウムインベントリー低減の可能性を見いだした.


280092
大強度陽子加速器計画
共同推進チーム
JAERI-Tech 2000-003; Feb.2000,99p.

 大強度陽子加速器を用いた科学技術の総合的展開を図るために,高エネルギー加速器研究機構(以下「機構」という.)と日本原子力研究所(以下「原研」という.)は,機構の大型ハドロン計画と原研の中性子科学研究計画を共同で推進することとした.本報告書は,機構と原研が策定した大型ハドロン計画と中性子科学研究計画の加速器及び実験施設を原研の東海研究所に建設するための統合計画の提案書である.最初英文で作成された提案書に若干の変更を加えて平成11年11月現在でまとめて日本語にした.


280093
タンデム型加速器質量分析装置の整備
水島俊彦・外川織彦・水谷義彦*・甲昭二*・山本忠利
JAERI-Tech 2000-004; Feb.2000,68p.

 海水の混合及び循環などの過程についてその機構を解明するため,タンデム型加速器質量分析装置(以下「タンデトロン」という.)を1997年4月むつ事業所大湊施設に設置した.タンデトロンは,おもに炭素の同位体比を測定するラインと質量数の重いヨウ素の同位体比を測定するラインから構成される.炭素ラインは,整備が終了して海水試料の測定を開始し,ヨウ素ラインは,重イオン検出器による測定精度の確認が終了している.本報告は,タンデトロンの整備状況についてまとめたものであり,これまでの調整状況,タンデトロンの概要,測定性能に関する試験,遮蔽性能に関する評価及び検査・問題点とその改善対策等について記述したものである.


280094
タンデム加速器に設置した照射用チェンバー及びRMS核分光実験用チェンバーの制御回路
荘司時雄・吉田忠
JAERI-Tech 2000-005; Feb.2000,37p.

 平成7年〜平成9年にタンデム加速器に設置した3台のチェンバーの制御回路を作成した.これらのチェンバーはタンデム加速器からのビームを利用して,照射及び核物理実験用に用いられている.実験目的に適合させるために,それぞれのチェンバーは試料の移動,交換,ビームの遮断,ビームの絞り,ファラデーカップの制御などの機構を有している.これらの制御回路は基本的に同じ回路方式を採用しており,一部のチェンバーにはパーソナルコンピューターによる制御機構をとり入れている.


280095
Assessment of buckling for vacuum vessel and back plate of RC-ITER(IAM-v2)
大森順次*・荒木政則
JAERI-Tech 2000-006; Feb.2000,15p.

 低コストITER(IAM-v2)の真空容器とバックプレートは,電磁力,地震荷重,熱荷重等の負荷を受けるので,これらの負荷に対して,構造の健全性を保つことが要求される.本報告書では,真空容器とバックプレートのインボード側壁に最も高い圧縮力が作用するトロイダルコイルの高速放電時の荷重に対し,弾性,塑性の座屈評価を行った.弾性の座屈評価では,限界圧力が塑性を生ずる圧力より十分大きいため,弾性範囲内では座屈は起こらない.バックプレートの支持脚についても座屈は生じない.また,塑性座屈については,形状の幾何学的なずれとして±10mmを考慮しても,座屈圧力は基準値以下である.したがって,真空容器とバックプレートについて座屈の問題はない.


280096
RELAP5コードによる水銀流動基礎実験装置の過渡解析,3; 水銀物性値を用いた過渡解析
木下秀孝・神永雅紀・日野竜太郎
JAERI-Tech 2000-007; Feb.2000,21p.

 核破砕ターゲットシステムにおける,水銀流動システム異常時の過渡挙動把握のため,水銀流動基礎実験装置の異常事象を想定した過渡解析を,水銀物性値を組み込んだRELAP5コードを用いて行った.実験での圧力データをもとに解析モデルを修正し,定常状態での圧力分布を再現できるようにして,強制流動喪失と冷却材流出を模擬した過渡解析を行った.強制流動喪失時には,機械式ポンプと電磁式ポンプの場合について検討したが,水銀の場合には,流動している水銀の慣性力が水に比べ大きく,ポンプの慣性力の違いによるポンプ停止後の流量低下特性に有意な差はないことを明らかにした.また,小口径破損による冷却材流出時には,急激な圧力変動が起きにくいことが明らかとなり,微小な圧力変動をもとにシステムの異常を検出する必要があることがわかった.


280097
中性子散乱施設用液体金属ターゲットの構造評価,2; ターゲット容器の動的応力解析
石倉修一*・粉川広行・勅使河原誠*・菊地賢司・二川正敏・神永雅紀・日野竜太郎
JAERI-Tech 2000-008; Feb.2000,80p.

 中性子散乱施設用液体金属ターゲットの開発における工学的課題を明らかにするために,加速器から5MWのパルス状陽子ビームが液体金属ターゲットに入射するときの動的応力のパラメータ解析を,NMTC/JAERIによる核破砕発熱計算結果をもとに,陽解法による衝撃解析コードABAQUS/Explicitを用いて行った.対象としたターゲット構造は半球殻先端を有する円筒形状ターゲットであり,ビーム窓単体の板厚方向温度分布による熱応力と応力波の挙動,及び水銀中の圧力波に対するターゲット容器の動的挙動を検討した.その結果,水銀中の圧力波によりターゲット容器に発生する応力は水銀の熱膨張圧力が直接ターゲットウィンドウに作用する応力で最大170MPa,水銀の熱膨張圧力が半径方向の応力波伝搬によりターゲット容器銅部に生じる応力で最大130MPaになることがわかった.これらの結果から,構造設計の最適化を進めれば,ターゲット容器の候補材料であるSS316の設計許容応力が300℃で120MPa(暫定値)程度であるという条件のもとに,強度設計が可能になる見通しを得た.


280165
HTTR出力上昇試験の制御特性試験計画
中川繁昭・齋藤賢司・本間史隆・橘幸男・國富一彦
JAERI-Tech 2000-009; Feb.2000,88p.

 高温工学試験研究炉(High Temperature engineering Test Reactor: HTTR)の出力上昇試験における制御特性試験は,出力上昇段階において初めて実施可能な加圧水温度制御系,原子炉入口温度制御系,原子炉出力制御及び原子炉出口温度制御系を対象とした試験である.これらの制御系に対して,定値制御特性及び外乱応答特性を明らかにするための試験計画を立案した.この試験によりHTTRの制御特性が明らかになるとともに,比例ゲイン及び積分時定数等の通常運転における制御定数が決定される.また,試験のため原子炉に人為的に外乱を与えることから,試験実施時の安全確保について必要な検討を実施した.本報告書は,HTTR出力上昇試験における制御特性試験の内容及び試験実施時の安全性について検討した結果をまとめたものである.検討の結果,制御特性試験を安全かつ効率的に実施できる見通しを得るとともに,試験対象の制御系について外乱に対する安定領域を明らかにすることができた.


280166
Results of preliminary experiments on tritium decontamination by UV irradiation
大矢恭久*・洲亘・大平茂・林巧・西正孝
JAERI-Tech 2000-010; Mar.2000,22p.

 核融合炉においてプラズマ対向機器等の保守・点検作業前にトリチウム除染を行うことは,作業者の被ばく防護や放射能汚染低減の観点から非常に重要である.現在,加熱法による除染手法が考案されているが,加熱できない材料や二重管になっている配管から効率的にメタン系の付着物を取り除く除染方法の開発が重要である.本報告では,日米核融合研究協力協定(附属書4)の下で実施予定のトカマク核融合試験炉トリチウム除染技術開発に向けて行った予備試験の結果について報告する.実験ではポリクロロビニル,ポリエチレンシート及びアセチレンプラズマでコーティングしたグラファイトの試料に紫外線を照射し,紫外線によるトリチウム除染の可能性につて検討した.その結果,紫外線照射が有望なトリチウム除染方法のひとつになる見通しを得た.


280167
Structural study of the cold moderator
麻生智一・神永雅紀・寺田敦彦*・石倉修一*・日野竜太郎
JAERI-Tech 2000-011; Feb.2000,23p.

 超臨界水素を用いる冷減速材は中性子強度やパルス性能などの中性子性能に直接影響する重要な機器である.冷減速材容器内における水素温度の上昇が中性子収率に影響するため,冷減速材容器の設計では再循環流や停滞流の発生などホットスポットの発生要因を抑制して円滑な流動を実現する必要がある.また,1.5MPa,20Kの超臨界水素条件の下で減速材容器の構造強度を維持する必要がある.冷減速材容器の簡易モデル試験体を用いて,入口噴流管による衝突噴流とその随伴流の流動パターンを水流動条件下で測定した結果,STAR-CDコードによる流動解析結果の流動パターンとよく一致した.また,冷減速材容器の薄肉構造における技術的な課題を明らかにするため,予備的な構造強度解析を行った結果,容器には112MPaの最大応力が生じることがわかった.


280218
研究所等廃棄物の埋設処分における安全評価上重要核種の選定,1; 主要放射性廃棄物発生施設別の核種組成比の評価
坂井章浩・吉森道郎・阿部昌義
JAERI-Tech 2000-012; Mar.2000,107p.

 研究所等廃棄物の処分における安全評価上の重要核種を選定するために,原研東海研の研究施設を原子炉施設,核燃料使用施設,RI使用施設に区分し,廃棄物発生記録等の調査,取扱試料等の燃焼・放射化計算調査,放射能測定データの調査を行い,廃棄物中の核種組成比を評価した.その結果,原子炉施設から発生する廃棄物は,冷却材中に含まれる核種が支配的であった.照射後試験施設から発生する試験燃料で汚染した廃棄物の各試験条件間における核種組成比の変動幅は比較的小さく,一方,試験材料で汚染した廃棄物における核種組成比の変動幅は材料が多種類であるため,比較的大きかった.また,RI使用施設の保有RIは82種類であった.これらの調査結果をもとにして,その3種類の研究施設から発生する各種廃棄物についてそれぞれの代表的な核種組成比を設定した.


280098
IFMIF international fusion materials irradiation facility conceptual design activity reduced cost report; A Supplement to the CDA by the IFMIF team
核融合中性子工学研究室
JAERI-Tech 2000-014; Feb.2000,192p.

 本報告書は,第28回核融合調整委員会(FPCC)での国際核融合材料照射施設(IFMIF)のコスト低減と段階的建設に関する答申に基づき,ユーザの要求を越える250mA(2MW/m2)以上への拡張性を考慮しない等の設計変更によるコスト低減と3段階の建設(50mA→125mA→250mA)によるコスト平準化を検討したものである.その結果,全建設費を概念設計時の797.2MICFから487.8MICFへと削減することを可能にし,第一段階コストを概念設計時の全コストの38%とし,建設期間でのコスト平準化を可能にした.ここで,1MICFは1996年での100万米国ドルに相当する.なお,本報告書内容は,2000年1月のIEA-FPCCに提出される予定である.今後,3年間で要素技術確証を実施し,さらに3年間の技術実証へ移行し,大電流ビーム及び液体リチウム流の連続運転等の実証を行い,IFMIF建設に備える予定である.


280169
シビアアクシデント時の強放射能核分裂生成物の挙動に関する研究
山脇道夫*・山口憲司*・小野双葉*・J. Huang*・原田雄平・日高昭秀・杉本純
JAERI-Tech 2000-015; Mar.2000,38p.

 軽水炉のシビアアクシデント時に破損燃料から放出された核分裂生成物(FP)は,その化学形に応じて大きく異なった移行・沈着挙動を示す.これは,その化学形に応じて蒸気圧が大きく変化し,ガス状またはエアロゾル状の形態となるからである.このため,シビアアクシデント時のソースタームを精度良く評価するにあたって,シビアアクシデント条件を模擬した水蒸気や水素を含む高温条件下でのFPの化学形及び蒸気圧を精度良く知る必要がある.Cs2U4O12の蒸発挙動をKnudsenセル付き質量分析法により1273から1573Kの範囲でD2O/D2雰囲気下で調べた.本実験の平均温度である1423Kにおいて,試料のCs(g)分圧は,真空下で1.97Paであり,酸素ポテンシャル測定値は-148.2kJ/molであった.D2(g)を導入すると,Cs(g)分圧は徐々に増加し,2.26Paに達した.また,D2O(g)+D2(g)を導入すると,Cs(g)分圧は1.56Paまで低下した.同様にCs2UO4,BaUO3,SrUO3の蒸発挙動を質量分析法により調べた.質量分析法で得られた実験結果は,シビアアクシデント時の環境状態に比べて狭い範囲である.そこで,計算機コードChemsageを用いて,高H2O/H2の湿潤条件や低H2O/H2の還元条件,2500Kまでの高温条件,1MPaまでの高圧条件などについて計算した.実験結果及び計算結果は,これらの環境条件が化合物の蒸発挙動に強く影響することを示した.本研究成果であるCs2U4O12,Cs2UO4,BaUO3,SrUO3の蒸気圧の温度依存式は,原研が実施する照射済燃料からのFP放出実験計画(VEGA)の実験結果を評価する際に利用する予定である.


280219
ROSA/LSTF experiment report for RUN SB-CL-24; Repeated core heatup phenomena during 0.5% cold leg break
鈴木光弘・安濃田良成
JAERI-Tech 2000-016; Mar.2000,173p. 

 本報告は大型非定常実験装置(LSTF)において実施した0.5%低温側配管破断LOCA実験結果をまとめ,2次系減圧操作の効果と炉心過熱事象が繰り返し発生する原因を明らかにしたものである.本実験(SB-CL-24)では,高圧注入系と蒸気発生器補助給水系が作動しない場合を想定し,蒸気発生器逃し弁開作動により1次系の減圧を促進した.この結果,蓄圧注入系が作動したが,低圧注入系の作動圧力(1.29MPa)まで1次系圧力が低下しないうちに2次系保有水が喪失して1次系は昇圧し,蓄圧注入系の停止後にボイルオフ状態で炉心の上半分が過熱状態になった.加圧器逃し弁等の1次系減圧操作で急減圧し,低圧注入系作動により炉心過熱状態は解消した.過渡条件下でループシールクリアリングは3回発生した.本報では,事故検出計装による炉心冷却不全事象の検出特性等についても詳細に評価した.


280220
NSRR高速炉燃料実験用ナトリウム取扱設備の開発,2; ナトリウム・カプセル
吉永真希夫・中村武彦・山崎利*
JAERI-Tech 2000-017; Mar.2000,59p.

 軽水炉の運転により生成されるプルトニウムの利用及びアメリシウム等の長半減期放射性物質の消滅処理の担い手として期待される高速炉の実用化にあたっては,軽水炉とは大きく異なる事故時燃料挙動等の解明及びこれに基づく安全評価指針類の整備が不可欠である.原研の原子炉安全性研究炉(NSRR)では,高速炉燃料をナトリウム冷却条件でパルス照射して,過渡出力事故時の燃料挙動を解明するためのナトリウム取り扱い整備として,(1)純化・充填及び試験部循環設備,(2)ナトリウム・カプセルの開発と製作・設置を行った.本報告書は,この内(2)ナトリウム・カプセルの試作品の開発及び製作について,その目的,概要,仕様,性能,運転結果等をまとめたものである.


280221
冷減速材内流動特性の研究,3; 扁平モデルの流動パターン測定と解析
麻生智一・神永雅紀・寺田敦彦*・日野竜太郎
JAERI-Tech 2000-018; Mar.2000,49p.

 原研で開発を進めているMW規模の核破砕ターゲットシステムにおいて,超臨界水素を用いる冷減速材は中性子強度やパルス性能などに直接影響する重要な機器である.特に冷減速材容器内における水素温度の上昇が中性子収率に影響するため,設計ではホットスポットの発生要因となる再循環流や停滞流の発生などを抑制して円滑な流動を実現する必要がある.冷減速材容器の概念設計に反映するため,容器を模擬した扁平モデル試験体を用いて,容器内の流動パターンを水流動条件下で測定した.その結果,衝突噴流に随伴する再循環流や流れの停滞域などの流動パターンを明らかにし,併行して実施したSTAR-CDコードによる流動解析は測定した流動パターンをよく再現した.この結果をもとに実機用冷減速材の熱流動解析を行い,液体水素の温度上昇を3K以内に抑制できることを確認した.


280222
NSRR高速炉燃料実験用ナトリウム取り扱い設備の開発,1; 純化・充填及び試験部循環設備
中村武彦・池田良和・谷内茂康・大河原正美・吉永真希夫・田苅子功・豊川俊次・片西昌司・傍島眞
JAERI-Tech 2000-019; Mar.2000,162p.

 軽水炉の運転により生成されるプルトニウムの利用及びアメリシウム等の長半減期放射性物質の消滅処理の担い手として期待される高速炉の実用化にあたっては,軽水炉とは大きく異なる事故時燃料挙動等の解明及びこれに基づく安全評価指針類の整備が不可欠である.原研の原子炉安全性研究炉(NSRR)では,高速炉燃料をナトリウム冷却条件でパルス照射して,過渡出力事故時の燃料挙動を解明するためのナトリウム取り扱い設備として,(1)純化・充填及び試験部循環設備,(2)試作ナトリウム・カプセルの開発と製作・設置を行った.本報告書は,この内,ナトリウムの純化運転等を行う(1)純化・充填及び試験部循環設備の開発及び製作・設置について,その目的,概要,仕様,性能,運転結果等をまとためものである.純化・充填設備はNSRR原子炉施設の一部であり,同設備により照射用カプセルへのナトリウムの注入が可能となった.また,試験部循環設備では,実験燃料を模擬としたヒーターピンを用いて伝熱特性試験や実験用計装の各種開発試験を行う.さらに,照射実験を実現するためには,パルス照射後の燃料やナトリウムで汚染されたカプセル等を取り扱う解体設備等を整備する必要がある.


280170
高温工学試験研究炉(HTTR)の1次上部遮へい体遮へい性能の温度効果
高田英治*・角田淳弥・沢和弘・多田恵子*
JAERI-Tech 2000-020; Mar.2000,65p.

 高温工学試験研究炉(HTTR)の原子炉容器上部には原子炉から燃料取扱フロアへの放射線を遮へいするための1次上部遮へい体が設けられている.原子炉運転中は遮へい体温度が上昇し,解析により定格出力時の1次上部遮へい体温度は75℃になると予測されている.そこで,遮へい体の温度に対するコンクリート中の含水量の変化,及び含水量の変化に対する燃料取り扱いフロアの線量当量率を評価し,さらに必要となる追加遮へい体の厚さを検討した.その結果,1次上部遮へい体温度が110℃以下であれば遮へい設計に用いた含水量(78kg/m3以上)が満足されること,また燃料取り扱いフロアの線量当量率は含水量が設計に用いた値の半分程度になるまでは著しく上昇しないことがわかった.


280171
光学素子評価用試験装置の設計・製作
清水雄一・依田修・貴家恒男*・寺岡有殿・横谷明徳・柳原美広*
JAERI-Tech 2000-021; Mar.2000,45p.

 現在,光量子科学研究センターにおいて,主として軟X線領域の光を発振するX線レーザーの研究開発が精力的に行われている.このレーザーの開発のためには,共振器ミラー用などに高性能な多層膜ミラーの光学素子が必要であり,これは軟X線に対する高い反射率や高強度パルスX線照射に対する耐熱性などが要求される.このための多層膜の反射率や表面損傷・粗さなどの特性値の評価は,使用波長領域の放射光X線を用いることによって可能であり,放射光施設のSPring-8などを利用して軟X線用多層膜の特性評価を行うことが重要である.この特性評価結果を製膜条件に反映させることにより多層膜光学素子の一層高性能を図ることができる.本報告は,このための標記試験装置を設計・製作し,SPring-8の原研専用軟X線ビームラインBL23SUに設置・調整した結果などを述べたものである.


280172
Thermal and chemical analysis of carbon dioxide reforming of methane using the out-of-pile test facility
Z. Huang*・大橋弘史・稲垣嘉之
JAERI-Tech 2000-022; Mar.2000,30p.

 日本原子力研究所では,高温ガス炉,高温工学試験研究炉(HTTR)から供給される核熱(10MW,1178K)を利用し,天然ガス(主成分: メタン)の水蒸気改質反応により水素を製造する,HTTR水素製造システムを計画している.このため,HTTRとの接続の前に,安全性,制御性及び水蒸気改質システムの性能を明らかにすることを目的として,通電式加熱器を用いて中間熱交換器以降を模擬する,水素製造量に関して1/30スケール(100Nm3/h)の炉外技術開発試験を計画し,試験装置の建設を行っている.一酸化炭素と水素から成る合成ガスを製造する天然ガスの二酸化炭素改質反応(CO2改質)は,近年,温室ガスの低減技術として期待されており,炉外技術開発試験装置における試験の実施が検討されている.しかし,水蒸気改質のために設計された炉外技術開発試験装置を用いて,CO2改質を行うにあたり,熱・物質収支計算による改質器性能の事前解析が必要である.そこで,本研究では,CO2改質及び二酸化炭素と水蒸気を同時に供給し,CO2改質と水蒸気改質を同時に行う場合(CO2+H2O改質)について,数値解析による改質器性能解析を行い,圧力,温度,原料ガス組成等の転化率及び生成ガス組成に対する影響を明らかにした.数値解析の結果,設定した定格運転時(改質器入口He温度1153K)のCO2改質及びCO2+H2O改質のメタン転化率は,各々1085,1100Kにおける平衡転化率と等しい0.36,0.35であった.これらの結果より,炉外技術開発試験装置がCO2改質及びCO2+H2O改質にも使用可能であることを明らかにした.


280223
Steering of high energy negative ion beam and design of beam focusing/deflection compensation for JT-60U large negative ion source
井上多加志・宮本賢治・永瀬昭仁*・奥村義和・渡邊和弘
JAERI-Tech 2000-023; Mar.2000,27p.

 JT-60U大型負イオン源は45cm×110cmという大面積電極から大電流負イオンビームを生成する.一方,JT-60UのN-NBI入射ポート断面積は約60cm×50cmと狭小であり,ビーム損失を抑え高い効率で中性粒子ビームを入射するためには,加速管内での不整なビーム偏向を補正し,かつビームを集束する必要がある.本報告は電極孔変位(孔ズレ)によるビーム偏向について行った実験と設計検討の結果をまとめたものである.実験には3段階加速構造をもつ400keV負イオン源を用い,JT-60U N-NBIのフルパワー運転と同じパービアンスを保ってビーム偏向を行った.この結果電子抑制磁場によるビーム偏向の補正には電子抑制電極を,またビーム集束のために接地電極を変位させる,JT-60U大型負イオン源の電極孔パターンの設計を確定した.


280173
低減速PWR型炉心の熱水力的成立性の検討
吉田啓之・大貫晃・秋本肇
JAERI-Tech 2000-024; Mar.2000,31p.

 低減速スペクトル水冷却炉では従来よりも燃料棒間ギャップが狭く,発熱量の異なる領域を炉内に含む.本研究では,高転換比PWR型炉心(熱出力2900MWt,燃料棒間ギャップ1mm)についての熱水力解析を行い,成立性について検討を行った.本炉心ではシード及びブランケット燃料集合体の発熱量が大きく異なり,炉内で冷却材が沸騰する懸念があるため,各集合体にチャンネルボックスを設け流量を調整することにした.サブチャンネル解析コードCOBRA-IV-IとKfK限界熱流束相関式を用いて解析を行ったところ,ブランケット燃料集合体のみにチャンネルボックスを設けて流量を40%に制限し,シード燃料集合体への流量を増加させると,冷却材が沸騰することなく炉内の冷却が達成できることを確認した.


280224
FCA XIX-2炉心データによる炉定数調整, 平成11年度報告書(共同研究)
安藤真樹・飯島進・石川眞*・岩井武彦*
JAERI-Tech 2000-025; Mar.2000,45p.

 新型燃料を用いた高速炉の研究の一環として,窒化物燃料高速炉の核特性に対する計算精度評価を目的とした模擬実験をFCAを用いて行った.本研究では,窒化物燃料高速炉を模擬したXIX-2炉心において測定した臨界性に関するデータを炉定数調整に反映させ,実機窒化物燃料炉心の臨界性に関する設計精度を評価した.その結果,従来の統合炉定数に本実験結果を加えることにより,実機に対する設計精度が0.1%向上した.また,数MeV付近での14Nの捕獲断面積の不確かさが設計精度に大きく影響を及ぼすことがわかった.


280225
高温工学試験研究炉の1次上部遮へい体の昇温防止対策; 実機炉心における確認試験結果について
橘幸男・本谷浩二*・小嶋崇夫・竹田武司・江森恒一・猿田徹・伊与久達夫・國富一彦
JAERI-Tech 2000-026; Mar.2000,61p.

 高温工学試験研究炉において,非核加熱で1次ヘリウムガスを昇温する試験を実施中にスタンドパイプ内雰囲気及び1次上部遮へい体の温度が想定以上に上昇した.スタンドパイプ内構造物の一部構造変更後,温度は大幅に低下したが十分ではなかった.そこで,追加の昇温防止対策について検討し,確認試験により決定した.昇温防止対策を所定のスタンドパイプに設置した後,確認試験を再度実施し,昇温防止対策の効果について最終的に確認した.本報告は,再度実施した確認試験の結果及び昇温防止対策の効果についてまとめたものである.有限要素法解析の結果,定格条件での1次上部遮へい体最高温度は,確認試験と同条件で67℃,実機パージガス流量配分条件で75℃となり,1次上部遮へい体の設計温度88℃を満足できる見通しを得た.


280174
JRR-3Mシリサイド燃料炉心の特性試験
JRR-3管理課・研究炉利用課
JAERI-Tech 2000-027; Mar.2000,194p.

 アルミナイド燃料炉心を配したJRR-3Mは,平成2年3月22日の初臨界から平成11年9月5日まで運転され,それまでの積算熱出力量は,688,719.9MWHに達した.JRR-3Mは,今回,年間の使用済燃料の発生を抑制するためシリサイド燃料炉心に変更した.JRR-3Mにおいては,原子炉の安全確保を主眼とする炉物理試験を中心としたJRR-3Mシリサイド燃料炉心特性試験を平成11年9月から平成11年11月の期間に行った.本報告は,これらの特性試験により,シリサイド燃料炉心となったJRR-3Mが,以前のアルミナイド燃料炉心と同程度の性能を有していることが確認され,今後燃料の効率的利用と原子炉の安定運転達成の見通しが得られた結果について報告する.なお,JRR-3Mシリサイド燃料炉心特性試験の一環として行われたシリサイド燃料炉心の初臨界は,平成11年9月17日14時38分に達成した.


280175
冗長マニピュレータの特異姿勢の解析
渡辺光一
JAERI-Tech 2000-028; Mar.2000,42p.

 冗長マニピュレータの位置・姿勢の解析の中で,特異姿勢及び特異点回避の問題は重要な課題である.本報では,人間型モデルを基本とする計算コードを用いて,7自由度からなる腕機構の特異姿勢を回避する計算を行った.そして3次元プロットルーチンを使って,特異姿勢,特異点から回避したマニピュレータアームの挙動をうまく確認することができた.


280226
JMTRホットラボにおける遠隔操作による溶接技術の開発
清水道雄・岩松重美・高田文樹・相沢静男・川又一夫・大島邦男・土谷邦彦・山浦高幸・松井義典・岩井孝・星屋泰二・大岡紀一
JAERI-Tech 2000-029; Mar.2000,48p.

 JMTRホットラボでは,(1)照射済燃料棒にFPガス圧力計・中心温度測定用熱電対を溶接し計装する再計装技術,(2)照射済材料の溶接及び試験片加工技術,(3)60Co密封線源製作及び(4)照射施設で照射済の材料試料をキャプセルに封入して再度照射を行うためのリキャプセル作業等のカップリング照射技術に必要となる種々の溶接に関する技術開発を行った.これらの開発は,照射後試験に関連する周辺技術として極めて重要である.本報告では,おもに,照射済燃料への再計装技術の開発,照射済材料の溶接及び試験片加工技術の開発,60Co密封線源製作技術の開発,リキャプセル作業等の周溶接及び封孔溶接技術の開発において実施したセル内溶接技術の詳細について整理した.


280227
中性子ラジオグラフィによる照射済燃料・材料の非破壊試験法の開発; 適用可能性の調査・検討
安田良・西雅裕・仲田祐仁・松林政仁
JAERI-Tech 2000-030; Mar.2000,20p.

 本稿では,中性子ラジオグラフィによる照射済燃料の健全性評価を行うために,国内外における中性子ラジオグラフィ試験の現状及び使用を検討しているJRR-3M中性子ラジオグラフィ装置(TNRF)の撮影機器などを文献などにより調査し,試験実施の可能性を検討した.照射済燃料の中性子ラジオグラフィ試験は,国外,国内ともに減少傾向にあることを確認した.撮影機器に関しては,高放射性物質が使用可能な第一撮影室(TNRF1)においては,新規に設置して以来使用実績がないこと,中性子TVカメラや断層撮影などの高度撮影システムが設置されていないことを確認した.また,試験条件などの基準データを収集するコールド予備試験を行うことを確認した.


280283
高燃焼度燃料ペレット融点測定装置の開発
原田克也・西野泰治・三田尚亮・天野英俊
JAERI-Tech 2000-031; Mar.2000,27p.

 軽水炉技術の高度化計画に伴う燃料の高燃焼度化では,高燃焼度燃料の照射挙動を把握する必要がある.中でも燃料ペレットの融点等の熱物性値は通常時及び事故時の安全性評価の観点から,きわめて重要な熱物性値であり,これらのデータを取得する必要がある.このためホット試験室では,高燃焼時における燃料の照射挙動を詳細に調べるための各種照射後試験装置の開発を行ってきているが,そのひとつとして,サーマルアレスト法により照射済二酸化ウランの融点を求めるペレット融点測定装置を開発した.本報は,ペレット融点測定装置の概要,本装置の性能を報告するとともに,本装置の特性を確認するため,標準試料及び照射・未照射二酸化ウランを用いて実施した特性試験結果をまとめたものである.


280228
NUCEF分析業務報告書; 平成10年度
冨樫喜博・宮内正勝・園部保・新妻泰・中島隆幸・芳賀孝久*・田上隆広・深谷洋行・薗田暁・坂爪克則・岡崎修二*・高柳政二・佐藤猛
JAERI-Tech 2000-032; Mar.2000,25p.

 燃料サイクル安全工学研究施設NUCEFに設置された定常臨界実験装置(STACY)及び過渡臨界実験装置(TRACY)の運転にあたっては,燃料として用いるウラン硝酸溶液に関する分析が不可欠であり,平成10年度では,ウラン溶液燃料の調製のための分析並びにSTACY及びTRACYの臨界実験終了後のウラン溶液の性状分析を行った.さらに,核燃料物質の計量管理のため,ダンプ槽に貯蔵してあるウラン溶液の分析等を実施した.平成10年度における分析サンプル総数は297件に達した.本報告書は,平成10年度に実施した分析業務についてまとめたものである.


280229
Design of neutral beam injection power supplies for ITER
渡邊和弘・比嘉修*・川島秀一*・奥村義和・小野要一*・田中政信*
JAERI-Tech 2000-033; Mar.2000,72p.

 ITER用中性粒子入射装置(NBI)電源の設計を行った.本設計では負イオンビーム加速電源の制御部であるコンバータ,インバータシステムの回路設計のほか,加速電源機器の設計検討を実施した.さらに負イオン生成のためのアーク電源と負イオン引き出し電源の動作特性を回路解析コードで検討し,リップル性能や流入エネルギー制御機能が十分であることを確認した.これらの設計の結果,NBI電源に要求される性能を十分に満足できることを確認した.


280230
廃棄物非破壊分析装置の性能評価試験
前田行市・小笠原賢亮*・西沢市王
JAERI-Tech 2000-034; Mar.2000,86p.

 NUCEFで発生するα固体廃棄物を対象に廃棄物に含まれるプルトニウム量を把握するため「廃棄物NDA装置」を設置した.本装置は,比較的低密度のα固体廃棄物を対象としたパッシブγ線計測法で行うものである.α固体廃棄物は,レベル区分を把握する必要がある.このため,廃棄物容器毎に本装置の測定体系を決定する必要がある.この設定は,(1)密度−線減弱係数の設定,(2)廃棄物−検出器間距離の設定,(3)コリメータ開度の設定,(4)検量線作成の手順で実施した.測定体系の設定後,20分測定で,検出限界3σのプルトニウム量は,約8MBqとなり,圧分別の分別が実施できることがわかった.


280231
硝酸による再処理溶媒の急激熱分解の反応特性及び反応機構(受託研究)
宮田定次郎*・高田準一・井田正明*・中吉直隆*・小池忠雄・塚本導雄・渡邊浩二*・西尾軍治*
JAERI-Tech 2000-035; Mar.2000,64p.

 硝酸によるピューレックス溶媒(TBP,n-ドデカン)の熱分解の反応特性及び反応機構を明らかにするため,示差走査熱量計(DSC),加速速度熱量計(ARC)等の熱分析装置並びにガスクロマトグラフ(GS)及びガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)等の分析装置による各種検討を行った.その結果,ステンレス製の密封セルを用いた硝酸配位の30%TBP/70%ドデカン混合溶媒のDSC測定では,約170℃と約320℃に極大となる発熱ピークが得られ,前者は硝酸と溶媒及びTBPの脱アルキル化により生成した硝酸ブチルとの反応におもに起因し,後者は硝酸とドデカンとの反応により生成したニトロドデカン自身の熱分解に起因することなどを明らかにするとともに,ARCによる検討では,硝酸とTBPとの反応及び硝酸n-ブチル自身の熱分解の活性化エネルギーがそれぞれ123.2及び152.5kJ/molであることなどを明らかにした.また,得られた結果に基づき,本反応の反応機構を推論した.


280284
再処理溶媒と硝酸との熱分解反応に関わるエアロゾル発生試験(受託研究)
塚本導雄・高田準一・小池忠雄・渡邊浩二*・宮田定次郎*・西尾軍治*・村田幹生
JAERI-Tech 2000-036; Mar.2000,43p.

 再処理施設のセル換気系内において再処理溶媒(有機溶媒)と硝酸の異常化学反応に起因した爆発が起きた場合について,爆発規模とエアロゾル発生量の関係,及びセル換気系による放射性物質の閉じ込め効果を把握する試験を実施した.試験ではセル換気系実証試験装置のセル内に設置した反応容器に,純粋な溶媒並びにγ線照射により劣化した溶媒とCeを混合した硝酸とを充填・密封し,183℃まで加熱して爆発とエアロゾル発生を誘起させた.爆発により発生したCeエアロゾルは採取し,浮遊率や粒径分布を時間毎に測定した.さらに,質量濃度を実測してエアロゾルの沈降や沈着等による除去効果を調べた.その結果,噴出した溶媒ミストが急激燃焼を起こした場合,セル内に飛散するCeエアロゾルの初期(t=0)濃度は,3〜600[mg/m3]になることが判明した.しかしながら,爆発による温度上昇や圧力波の伝播は,セルやダクトで構成される換気系で十分に減衰するので,HEPAフィルタの健全性は確保され,セル換気系による放射性物質の閉じ込め効果は十分達成されることが確認できた.


280285
位置検出型核分裂計数管計測システムの性能検証試験
山岸秀志・池田裕二郎・伊藤浩・角田恒巳・中川正幸・岩村公道・田畑広明*・浦上正雄*
JAERI-Tech 2000-037; Mar.2000,12p.

 高γ線下で作動し,広計測レンジ及び高位置分解能を有した位置検出型核分裂計数管(PSFC)の開発を日本原子力発電株式会社との共同研究の下で進めている.PSFCの作動原理と性能を検証するため,ソレノイド電極構造のPSFC模擬体と計測用電子回路を試作した.これらを用いて,核分裂計数管電極に誘起されるような微小の疑似電流パルス信号により,PSFC計測システムのシミュレーションを行った.この結果,PSFCを用いた中性子束分布計測システムは,有効電極長が1000mmの長尺であるにもかかわらず7.5mm以下の極めて高い位置検出分解能を有すること,及び6桁以上の広い計測レンジが得られることを確認した.今後,PSFCを試作して中性子束分布計測性能を試験する予定である.


280232
HTTRの熱出力校正試験計画
中川繁昭・篠崎正幸・橘幸男・國富一彦
JAERI-Tech 2000-038; Mar.2000,39p.

 高温工学試験研究炉(High Temperature Engineering Test Reactor: HTTR)の特徴を考慮して,出力上昇試験における安全かつ効率的な熱出力校正試験計画を立案した.計画を定めるにあたっては,ヘリウム循環機の発生熱により1次冷却材温度を約213℃まで上昇させた確認試験(3)の測定結果より,熱出力評価に使用する測定量について定格運転時の予測値を予測し,出力上昇試験中の熱出力測定誤差を±2.0%以内に収める見通しを得た.本報告書は,HTTR出力上昇試験における熱出力校正試験の内容,熱出力測定の誤差評価及び確認試験(3)の予備測定結果についてまとめたものである.


280286
原子力船エンジニアリング・シミュレーション・システムの整備; 一体型炉シミュレータの開発
高橋照雄・島崎潤也・中沢利雄・藪内典明・福原彬文*・楠剛・落合政昭
JAERI-Tech 2000-039; Mar.2000,94p.

 原子力船研究開発室は,将来の原子力船動力源として軽量・コンパクトで安全性の高い出力100MWtの一体型炉MRXの設計研究を実施し,工学設計を完了した.本一体型炉の設計性能及び運転性能を確認するとともに,一体型炉の運転操作の自動化研究に使用するため,リアルタイムのエンジニアリングシミュレータを開発した.本シミュレータは,原子力船「むつ」の実験航海データにより精度検証された「むつ」シミュレータと同様のモデル化手法を用い開発した.事故事象等のプラント全体の挙動については,安全解析コードによる解析結果と照合し,整合していることを確認した.今後実機の運転結果あるいは実験結果との照合による検証が必要であるが,リアルタイムのエンジニアリングシミュレータとして利用可能である見通しが得られた.


280287
Instruments and accessories for neutron scattering research
石井慶信・森井幸生
JAERI-Tech 2000-040; Apr.2000,30p.

 本報告は中性子散乱研究に必要な装置及び補助機器の性能など技術的事項をまとめたものである.また,近年先端基礎研究センターで行った研究の一部をトピックスとして各装置ごとに添付した.


280356
熱中性子線照射場における検出器固定用ジグ材料の熱中性子散乱線の評価
清水滋・根本久*・黒沢浩二*・吉澤道夫
JAERI-Tech 2000-041; May 2000,31p.

 熱中性子線の放射線発生場において,基準フルエンス率の測定または放射線測定器の校正を行う場合には,検出器を指定する材料からの散乱線の影響が問題となる.本研究は,固定用ジグとして一般的に用いられる7種類の平板材料を用いて,各材料から発生する熱中性子散乱線の特性を実験及び計算により明らかにした.測定には,球形BF3比例計数管を用いた.熱中性子散乱線の評価は,材料の大きさ及び材料と検出器の距離を変化したときの散乱線フルエンス率を測定し,入射した一次線フルエンス率との比を散乱割合として求めた.さらに各材料の熱中性子断面積の計算を行い,巨視的断面積及び材料中の平均衝突回数と実験で得られた散乱割合との関係を考察した.この結果,熱中性子散乱線を低減できる材料の選定と使用条件を決定し,校正精度の向上が図れることになった.


290018
Development of ITER shielding blanket prototype mockup by HIP bonding
佐藤聡 ; 古谷一幸 ; 秦野歳久 ; 黒田敏公* ; 榎枝幹男 ; 高津英幸 ; 小原祥裕
JAERI-Tech 2000-042; Jul.2000,121p.

 ITER遮蔽ブランケットプロトタイプモデルの製作に成功した.製作したモデルは,第一壁と遮蔽体とが一体化されたモデルであり,高さ約0.9m,幅約1.7m,奥行き約0.4mである.第一壁は,SUS製円形冷却配管が内蔵されたDSCu製熱シング材で構成されている.遮蔽体ブロックは,SUS製鍛造ブロックを長尺ドリル孔加工及び10000トンプレスによる曲げ加工により製作した.第一壁のSUSとDSCu,SUSとSUS,DSCuとDSCu,及び第一壁と遮蔽体ブロックとを,HIP処理により接合することにより本プロトタイプモデルを製作した.またそれらの接合を1回のHIP処理により行った.本プロトタイプモデルの製作により,1回のHIP処理での同時接合及びITER遮蔽ブランケットの製作性を実証した.


280425
新データ処理設備実時間処理計算機(RTP)の開発および高性能化
坂田信也・小岩素直*・青柳哲雄*・松田俊明
JAERI-Tech 2000-043; Jul.2000,48p.

 JT-60立ち上げ当初,データ処理設備実時間処理計算機(RTP)としてミニコンピュータを中心としたシステムが構築されていた.しかし,システムの老朽化に伴い,保守することが困難な状態になりつつあった.一方,近年のUNIX系ワークステーションの性能向上は著しく,ソフトウェア,ハードウェアの保守の容易さ,及び機能の拡張性から,ミニコンピュータを中心としたシステムに変わる新システムとして,UNIX系ワークステーションを中心としたシステムを構築した.本報告書では,新データ処理設備実時間処理計算機(RTP)の概要,基本設計,及び近年の高速化改造について述べる.


280426
水銀流動基礎実験,2; 水銀循環用ギアポンプ特性
神永雅紀・木下秀孝・羽賀勝洋・日野竜太郎・中村文人*・大橋正久*
JAERI-Tech 2000-044; Jun.2000,25p.

 原研とKEKが共同で進めている大強度陽子加速器計画では,最高5MWのパルス状陽子ビームを水銀ターゲットに入射させ,核破砕反応により発生した大強度の中性子を生命・物質科学等の先端科学分野の研究に利用する予定である.水銀ターゲットシステムの水銀循環ポンプは,優れた循環性能と高い信頼性及び小型化が要求される.そこで,比較的低回転で高揚程が実現できる機械的ギアポンプに着目し,水銀を流体とした場合のギアポンプの特性を把握するために定格流量15L/minのギアポンプを試作してポンプ特性試験を実施した.試作したポンプは,定格回転数350rpmにおいて設計流量15L/minを上回る23.1L/minを達成し優れた循環性能を示した.ポンプ回転数に対する流量特性は,回転数にリニアに比例することから,回転数により流量が容易に制御できるとともに,回転数による流量の評価が可能である.


280427
多段積層ゴム・コイルばねタイプ3次元機器免震システムの特性試験および地震応答解析
堤英明*・山田博幸・蛯沢勝三・柴田勝之
JAERI-Tech 2000-045; Jul.2000,107p.

 免震技術は一般構造物と同様に原子炉機器の耐震設計においても,機器に作用する地震力を低減する有効な手段として期待されている.日本原子力研究所では,1991年より原子力機器の免震化に関する研究に着手し,機器免震の地震時における損傷頻度の評価手法及び評価コード(EBISA: Equipment Base Isolation System Analysis)を開発した.さらに,上記評価コードを高度化するために,1996年より機器免震システムの動的挙動を把握するとともに,有効性を検証するための確証試験を実施している.有効性確証試験では,特性の異なる2種類の3次元機器免震試験システムを製作し,それぞれの静的及び動的特性を静加力試験及び自由振動試験等で確認した.それらのうちの1台は,免震装置としてボールペアリング支承と空気ばねを用いたもので,現在大洗研究所内のテストベッドに設置し,自然地震動下で応答を観測しており,これまでに,いくつかの地震動により顕著な免震効果が確認されている.また,ほかの1台は,免震装置として多段積層ゴムとコイルばねを用いたもので,振動台試験により種々の大規模地震動に対する3次元的連成挙動と免震効果を確認した後,テストベッドに設置して地震応答を観測する予定である.本報告書は,多段積層ゴム及びコイルばねを用いた機器免震システムの仕様,静的及び動的特性,それらに基づいて作成した解析モデル,振動台試験の加振実験や加振性能を確認するために実施した予備振動台試験及び地震応答解析についてまとめたものである.


280495
実用高温ガス炉水素製造システムの検討
西原哲夫・羽田一彦・西村邦幸*
JAERI-Tech 2000-046; Jul.2000,54p.

 原研では高温ガス炉の核熱利用システムとして,天然ガスの水蒸気改質水素製造システムの技術開発を進めている.本システムが実用化される前提として,将来,大規模な水素需要の増加が不可欠である.そこで,21世紀中旬までのエネルギー需要を調査し,石油代替燃料の必要性を示すとともに,水素需要を予測し,水素エネルギーの必要性を明らかにした.また,高温ガス炉の熱利用システムとして,水素製造が最も適していることを明らかにし,実用システムの基本系統構成及び経済性について検討した.その結果,軽水炉の核熱費を仮定すれば,高温ガス炉水蒸気改質水素製造システムの水素製造単価は約13.5円/m3となる.


280546
低放射化Mn-Cr鋼の特性評価試験,2; 物理的特性及び時効特性
斎藤滋・深谷清・石山新太郎・佐藤育男*・楠橋幹雄* ・畠山剛*・高橋平七郎*・菊池満
JAERI-Tech 2000-047; Aug.2000,64p.

 現在,日本原子力研究所(以下原研)では,核融合炉の実現に向けて定常炉心試験装置(以下JT-60SU)の検討・評価作業を進めている.このJT-60SUの真空容器鋼としては,高強度,低放射化かつ非磁性であることが求められている.しかし既存の鋼種でそれらの要求を満たすものはないため,原研と(株)日本製鋼所は共同でNi,Coが無添加で低Mn型の低放射化非磁性鋼の開発を進めてきた.はじめに合金成分と製造行程の検討を行い,平成9年度までにVC9と名付けた鋼種が有望であるという結果を得た.平成10年度以降はこのVC9のJT-60SU真空容器鋼としての適性評価として,機械的特性・溶接性・耐食性・時効特性などさまざまな特性試験を行っている.本報告書はそれらの結果の中から物理的特性及び時効特性についてまとめたものである.


280620
大型放射光施設(SPring-8)の線型加速器制御システム
榊泰直・吉川博・伊藤雄一*・寺島靖志*
JAERI-Tech 2000-048; Sep.2000,63p.

 大型放射光施設線型加速器は,平成8年より順調に運転され,大きなトラブルもなくユーザー運転に対応している.この報告書は,その制御系開発方針及び,詳細,さらには運転時の性能まで述べられており,これらから得られた知見が,今後開発される加速器に活かされるようにまとめられている.


280621
雑固体溶融固化体製作装置の性能確認試験と溶融炉耐火れんがの耐食性試験(受託研究)
磯部元康・亀尾裕・中塩信行・涌井拓治*・岩田圭司*・木林辰行*・金沢勝雄・中島幹雄・平林孝圀*
JAERI-Tech 2000-049; Sep.2000,29p.

 低レベル放射性雑固体廃棄物を溶融し,溶融固化体を製作するための雑固体溶融固化体製作装置を製作した.導電性るつぼを用いる高周波誘導加熱方式及び高周波誘導加熱とプラズマ加熱を併用するハイブリッド加熱方式により,模擬雑固体廃棄物を溶融し,装置の性能確認を行った.本装置を用いて試作した溶融固化体は,強度を損なうような空隙もなく,溶融炉は雑固体溶融に十分な性能を有していることを確認した.また,溶融に伴って発生する放射性のダストや有害ガスの放出を抑制するための排ガス処理装置を十分に機能を果たしていることを確認した.さらに,二次廃棄物の低減のために,耐久性能の高い耐火材の選定試験を行った.各種耐火物の中から選定されたAl2O3-Cr2O3-ZrO2系耐れんがは,塩基度の低いスラグに対して耐食性がきわめて高いことを明らかにした.


280622
水銀ターゲットシステムにおけるソースタームの予備的評価
小林薫*・神永雅紀・羽賀勝洋・木下秀孝・麻生智一・粉川広行・日野竜太郎
JAERI-Tech 2000-050; Aug.2000,43p.

 水銀ターゲットシステムにおいて,重大事故であるギロチン配管破断によりターゲットトローリーメンテナンス室へ水銀が漏洩した場合のソースタームを解析し最大公衆被曝量を推定する.ソースタームとして,高い蒸気圧と放射能レベルを有する水銀,ヨウ素,臭素,希ガスを選定した.ソースタームの輸送量は水銀漏洩時の温度と蒸発率,そして放出時のフィルター効率や大気拡散率を考慮して解析した.漏洩水銀の温度変化はSTAR-CDコードで,蒸発速度は1次元強制対流条件で利用される物質伝達の相関式で推定した.安全裕度を十分に見込んだ条件における予備的な解析結果では,水銀,ヨウ素,臭素,希ガスに対する公衆被曝量の最大レベルは約6.3×10-2mSvであり,1年間に自然界から受ける1mSvよりも一桁以上小さい.


280623
Steering of H- ion beamlet by aperture displacement
井上多加志・鈴木靖生*・宮本賢治・奥村義和
JAERI-Tech 2000-051; Sep.2000,16p.

 核融合実験炉用中性粒子入射装置(NBI)では,大面積から発生する負イオンビームを集束するとともに,引き出し部での電子抑制磁場によるビーム偏向を補正することが必要となる.本報告は,上記ビーム集束と磁場偏向の補正を孔変位によるビーム偏向で行うための基礎研究結果をまとめたものである.4枚の電極からなる引き出し部・加速器内の電極孔を意図的に変位させることにより,エネルギー50keVまでのH-イオンビームを偏向した.電子抑制電極及び設置電極に孔変位を設けることにより良好な偏向特性が得られ,多孔大面積加速器から発生する負イオンビームの集束に適することが判明した.さらに孔変位によるビーム偏向が引き出し部内の磁場の方向に依存しないことを確認し,磁場によって偏向されたビームの軌道補正にも孔変位によるビーム偏向が適用可能であることを明らかにした.


280496
IFMIF international fusion materials irradiation facility key element technology phase task description
核融合中性子工学研究室
JAERI-Tech 2000-052; Aug.2000,110p.

 2000年から2002年までの国際核融合材料照射施設(IFMIF)要素技術確証期間(KEP)において実施されるタスクの実施計画書を作成,編集した.各タスクは,IFMIF国際チーム(欧,日,露,米)により実施される.KEPタスクとして,IFMIF国際チームはテストセル系で27件,ターゲット系で12件,加速器系で26件,設計統合で18件をこれまでに提起した.ロシアの本タスク実施計画書は,現時点では未完成なため本報計画書には掲載していない.KEP活動の進展に伴い,タスク項目と内容は,今後,追加または変更されうる.本タスク実施計画書に従い,KEPでの要素技術確証が実施される.その後,チェック&レビューを実施し,次の3年間の工学実証に移行し,建設に備える予定である.


280762
図形処理環境のパソコンへの移植整備
藤敏弘* ; 山崎和彦
JAERI-Tech 2000-053; Oct.2000,27p.

 従来,大型汎用計算機で処理されていた科学技術計算は,最近のワークステーション及びパソコンの高性能化・低価格化によって分散化が進み,ほとんどの処理はUNIXワークステーションやパソコンで処理できるようになってきた.今回,大型計算機のFortran環境で標準的に使用されている図形処理ライブラリ,PIFLIB,GGS,ARGUSについてのパソコンへの移植,及びパソコン版図形処理プログラムツールWINPIFの整備を行った.本報告では,これらの移植内容について記述する.


280763
定常的な中性子源の影響を受ける場合の逆動特性法による制御棒反応度価値測定手法の開発
竹内光男 ; 和田茂 ; 高橋広幸 ; 林和彦 ; 村山洋二
JAERI-Tech 2000-054; Sep.2000,51p.

 JRR-3M等の研究用原子炉においては,原子炉の内蔵する過剰反応等を定期的に測定し,制限値内であることを確認することなどにより,安全な運転を維持する運転管理を行っている.原子炉の内蔵する過剰反応度は,制御棒の反応度価値測定結果を用いて算出している.従来の制御棒反応度価値の測定は,炉周期法等により行っている.しかし,定常的な中性子源が存在する場合は,測定誤差が生ずることが考えられる.そこで,定常的な中性子源の影響を考慮した逆動特性法(IK法)による制御棒反応度価値の測定手法を新たに開発した.新たに開発した測定手法を用いることにより,従来手法に比較して測定精度を大きく改善できた.


280692
ホルミウム-166m線源の調製
岩本清吉・竹内紀男・小野間克行・根本正弘
JAERI-Tech 2000-055; Sep.2000,15p.

 現在,日本における標準測定機関である電子技術総合研究所では「トレーサビリティの確立」のための研究が進められ,放射能2次標準器として高気圧型電離箱システムの開発が行われている.このシステムに使用する基準線源として単純なβ崩壊でかつ化学的に安定な放射性核種であるホルミウムの酸化物が注目され検討対象となっている.アイソトープ開発室ではこのような背景を踏まえて今回,過去の技術開発をもとに電離箱用線源として化学的に安定な酸化ホルミウム線源の開発を行い成功した.


280624
建家表面汚染分布測定技術の開発(受託研究)
畠山睦夫・伊藤博邦・柳原敏
JAERI-Tech 2000-056; Sep.2000,38p.

 原子力施設の廃止措置において,作業の最終段階で必要となる建家床面の放射能汚染を測定する移動型放射能測定装置を開発した.本装置による汚染分布の測定は,45Co等から放出される放射能のうち,β線のみを弁別して定量するものである.また,検出器は,10cm×10cm単位のプラスチックシンチレーション検出素子を12体集合した構成とし,局所的な汚染も検出できるよう考案した.本装置による性能試験の結果より,検出限界値は,60秒の測定時間で約0.1Bq/cm2であり,埋設配管等からの外部放射線の影響の有無を把握できることがわかった.また,装置の測定能力は,測定モードにより異なるが,約4〜5m2/hであり,手動による全面測定の3倍以上の測定作業効率が得られた.


280764
低温プラズマ励起表面反応の評価試験装置の開発
佐分利禎* ; 小河浩晃* ; 上田哲志* ; 木内清
JAERI-Tech 2000-057; Oct.2000,23p.

 原子力プラントにおける強放射線場の腐食性溶液中で沸騰伝熱条件に置かれた材料の腐食や材質変化は,浸漬条件のそれらと比較して一桁以上大きく,従来の溶液化学的・電気化学的知見に基づいた解析や材料対策が適用できない.著者らは,この腐食機構として材料と沸騰状態にある気/液相界面において放射線分解や熱分解で生成した活性な酸素や水素による低温プラズマ励起型の動的平衡反応を想定した新モデルを提起している.本報告は,低温プラズマ励起による表面反応素過程を解析して実用環境の腐食機構を解明するために必要な基礎試験装置の開発に関するものである.開発した装置では,入射イオンや電子の制御や試料表面観察等が可能で,重量変化や透過速度測定による表面反応機構の解析を行う.併せて,表面反応の支配因子の解析条件や表面分析等による解析手法を評価・選定した.


290019
レーザートモグラフィー装置による光学素子の微少欠陥密度測定
福山裕康* ; 杉山僚
JAERI-Tech 2000-058; Nov.2000,33p.

 大型結晶を開発するためには,結晶育成中に生じる内部の微少欠陥を測定・評価し,より高品質の結晶育成を行う技術開発が不可欠である.そこで,微少欠陥を非破壊で検知できるレーザートモグラフィー法の開発を行った.光学特性が異なるサンプルを精度良く測定するために,測定手法の最適化を行った.欠陥測定を行い,ガラス,YAG,Sapphire,Ti:sapphire結晶の欠陥密度は,各々2×1010,5×107,1×108,1×1010個/cm3となった.また,Ti: sapphire結晶について欠陥密度のドープ濃度依存性を測定した結果,濃度の増加とともに欠陥密度も増加する傾向を示すことがわかった.さらに,HEM法によって育成された結晶の欠陥密度は6.4×108個/cm3とほかの育成方法に比べて1桁以上小さい結果を得た.


290020
平成11年度におけるSTACYの運転記録; 平板型炉心タンクと10%濃縮硝酸ウラニル水溶液を用いた2ユニット中性子相互干渉体系の実験,1(受託研究)
小野寺清二 ; 曽野浩樹 ; 広瀬秀幸 ; 谷野秀一 ; 神永城太* ; 明前知樹* ; 村上清信 ; 桜庭耕一 ; 宮内正勝 ; 外池幸太郎 ; 三好慶典 ; 柳澤宏司 ; 大野秋男
JAERI-Tech 2000-059; Nov.2000,46p.

 NUCEF(燃料サイクル安全工学研究施設)のSTACY(定常臨界実験装置)では,平成11年度後半に2ユニット中性子相互干渉体系に関する新たな一連の実験を開始した.この実験では,2基の平板型炉心タンクと10%濃縮硝酸ウラニル水溶液を用い,計25回の運転を行った.実験では,2基の炉心タンク内の中性子相互干渉による反応度効果を評価するために,炉心タンク間の距離を変えて臨界液位等を測定した.本書は,これらの実験における運転記録として,燃料組成経時変化,並びに各運転ごとの反応度添加量,臨界量等の運転管理データをとりまとめたものである.燃料管理については,燃料貯槽液位及び燃料組成の変化傾向を定量的に把握できた.また,運転管理データのうち,実験時における液位反応度測定値は,800φ円筒炉心での結果から得られた臨界液位−液位反応度フィッティング式にほぼ一致した.


290021
核破砕ターゲットリモートハンドリング実証試験装置
神永雅紀 ; 佐々木忍 ; 羽賀勝洋 ; 麻生智一 ; 木下秀孝 ; 粉川広行 ; 秋元敦* ; 安達潤一*; 日野竜太郎
JAERI-Tech 2000-060; Nov.2000,37p.

 原研とKEKが共同で建設計画を進めている中性子散乱施設では,大強度陽子加速器から1MWのパルス状陽子ビームを水銀ターゲットに入射させ,核破砕反応により発生した中性子を生命・物質科学等の先端分野の研究に利用する計画である.水銀ターゲット容器は,陽子ビーム及び中性子による照射損傷等により数ヶ月間の運転ごとに交換が必要である.水銀ターゲット容器の交換では,容器が強く放射化しているため,リモートハンドリングによる取り扱いが必須となる.そこで,3次元シミュレーション解析を実施し,ターゲット容器の最適なリモートハンドリングによる交換作業手順とそれに必要な機器を定めた.本報では,リモートハンドリング機器の機能を実証するため計画した実規模ターゲットリモートハンドリング実証試験装置の仕様及び試験計画について述べる.


280765
原子炉環境水化学因子による応力腐植割れ抑制機構の研究,原子力基礎研究 H10-004(委託研究)
柴田俊夫* ; 春名匠* ; 藤本慎司* ; Zhang, S.*
JAERI-Tech 2000-061; Sep.2000,38p.

 原子炉高温高圧水環境におけるステンレス鋼の水化学因子による応力腐食割れ抑制の一般的法則の確立を目的として,高温高圧水環境対応型CCDカメラ付き低ひずみ速度応力腐食割れ試験装置を開発し,この装置を用いて鋭敏化304ステンレス鋼の応力腐食割れに及ぼす温度及びSO42-,B4O72-の影響を検討した.その結果,SO42-を含む水溶液中では,100℃から250℃まで温度を上昇させるとき裂発生時間が減少するが,150℃においてき裂発生頻度が最大値を示すことを見いだした.一方,B4O72-を含む水溶液中では,100℃から250℃にいずれの温度においてもゲージ部にき裂が発生せず,B4O72-はき裂の発生を抑制することが明らかになった.この応力腐食割れ発生に及ぼすアニオンの影響は,硬い柔らかい酸塩基則から得られるアニオンの硬さで整理できることが示唆される.


280693
核変換実験施設の概念検討,1; 核変換物理実験施設の概要
大井川宏之・池田裕二郎・佐々敏信・明午伸一郎・高野秀機・辻本和文・西原健司*
JAERI-Tech 2000-062; Sep.2000,64p.

 原研−KEK大強度陽子加速器計画の一環として,加速器駆動未臨界システム(ADS)を用いた核変換技術の開発を目的とした「核変換実験施設」の検討を行っている.同施設は「核変換物理実験施設」と「核変換工学実験施設」で構成される.このうち,核変換物理実験施設は,ADSの炉物理上の課題である「核破砕中性子源で駆動される高速未臨界体系の核特性評価」,「加速器駆動ハイブリッドシステムの運転制御性検証」及び「MA及びLLFPの核変換特性評価」を目的とした臨界実験施設である.本報告書は,核変換物理実験施設について,加速器施設から陽子ビームを導入する方法,装置の概略仕様,施設の安全性確保の考え方など,施設検討で最も重要な部分についての検討をまとめたものである.


290022
地震情報緊急伝達システムの研究開発の進捗
地震情報伝達研究特別チーム
JAERI-Tech 2000-063; Sep.2000,143p.

 阪神・淡路大震災の後,震災の経験をもとに大地震発生直後に正確かつ迅速な地震情報伝達の重要性が認識されている.この背景から原研では,科技庁の地震総合フロンティア研究の一環として「地震情報緊急伝達システム」の研究開発を進めている.本報告書は,平成11年度までの3年間の研究開発の進捗をまとめたものである.地震情報緊急伝達システムの開発では,最新の地震工学の知見を反映した震源・地震動パラメータの推定手法開発を行うとともに,この手法や最新の通信・情報伝達技術を反映したシステム造りをめざしている.これまでに,震源・地震動パラメータ推定手法とソフトウェア開発等主要部分を整備し,また,システムの適用性及び性能確認を行うため,原研東海研周辺の地盤データベース及び表層地盤増幅率関数データベース等の整備を終えている.さらに,インターネットを利用してホームページ及び電子メールにより地震情報の試験発信を行っている.


290023
欧州及び米国におけるホウ素中性子捕捉療法の実施状況に関する調査(委託研究)
研究炉利用課
JAERI-Tech 2000-064; Nov.2000,76p.

 本調査は欧州及び米国の医療照射の現状調査を実施したものである.調査内容は,悪性脳腫瘍に対するBNCTの実施状況,審査体制,照射計画,中性子発生装置,線量評価システム,加速器ベースのBNCT等について調査した.欧州は既にペッテンにおいてPhase 1 Studyが終了しており,フィンランドでも照射場の改良が終了し,まもなく臨床治療研究が開始されようとしていた.一方,米国では,BNL並びにMITの両グループにおいて,Phase 1 Studyがかなりの段階まで進んでおり,まもなくPhase 2 Studyへ移行するものと思われる.


290024
Study on natural convection heat transfer in a vertical enclosure of double coaxial cylinder; Cooling by natural circulation of air
Zhang, Y.* ; 武田哲明 ; 稲葉良知
JAERI-Tech 2000-065; Nov.2000,109p.

 HTTRの圧力容器−冷却パネル空間の熱伝達特性を調べるため,一面が加熱された同心二重円筒容器内の熱放射を伴う自然対流に関する実験を行った.実験では二重円筒の環状流路幅を基準としたRayleigh数を5.6×105<Rad<1.04×108に設定した.熱放射を伴う自然対流熱伝達率をRa数,容器のアスペクト比,及び加熱・冷却面温度の関数として求めた.本試験装置のNu数はNua= 0.225・Rad0.25(l/d)-0.25/1-5.442×10-3(T04-T14)0.191で近似することができた.また,熱流体解析コード(Fluent)を用いて数値解析を行った結果,装置各部の温度分布の解析結果は実験と一致し,熱移動現象を再現することかできた.


290025
ハルデン炉を利用した日本の燃料照射研究; ハルデン共同研究(1997-99年)の成果ハルデン共同研
究合同運営委員会
JAERI-Tech 2000-066; Nov.2000,60p.

 日本原子力研究所は国内の諸機関との間でノルウェー・ハルデン市にあるハルデン沸騰型重水原子炉(HBWR)を利用した複数の共同研究を行っている.これらの共同研究の多くは,OECD/NEAハルデン原子炉計画(ハルデン計画)への原研の加盟期間の更新に合わせて,3年毎に更新する二者間の共同研究契約に基づいて実施している.本報告書は各共同研究について,その目的・内容及び1997年1月から1999年12月にわたる3年間の研究で得られた成果の概要をとりまとめたものである.今期3年間には,9件の共同研究を行った.このうち2件は契約期間中に研究を終了し,残り7件は次期期間(2000.1-2002.12)でも継続して研究を実施することとなった.


290026
NSRR実験用水塊速度計; 特性及びデータ処理方法
杉山智之 ; 更田豊志
JAERI-Tech 2000-067; Nov.2000,29p.

 NSRRでは,反応度事故条件下における燃料挙動を明らかにするため,燃料のパルス照射試験を実施している.燃料が破損した場合に懸念される事象のひとつとして,原子炉容器内での機械的エネルギー発生が挙げられる.ここで,機械的エネルギーとは,燃料破損に伴い発生し得る水撃力及び衝撃圧力が持つエネルギーを意味しており,原子炉構造物の破損を引き起こし得るものである.よって,原子炉の安全性を評価するうえで,機械的エネルギー発生量は必要不可欠な情報である.NSRR実験では,水撃力による機械的エネルギー発生量を,燃料破損時に飛び上がる水塊の運動エネルギーとして評価している.その際,水塊の上昇速度を計測するために,浮き子式の水塊速度計を用いている.本報告書は,この水塊速度計の特性及びNSRR実験におけるデータ処理方法をまとめたものである.


290027
中性子散乱施設使用済ターゲット取扱・保管設備の概念検討
安達潤一* ; 神永雅紀 ; 佐々木忍 ; 日野竜太郎
JAERI-Tech 2000-068; Nov.2000,86p.

 中性子散乱施設の使用済ターゲット等は,高レベルに放射化し,かつ,高い崩壊熱を有するほか,内部に蒸発による外部汚染の可能性を有する水銀が残留しているため,遠隔で取り扱うとともに崩壊熱の冷却や水銀等の拡散防止等を考慮する必要がある.本報告書は,このような使用済ターゲット等の取り扱い・保管設備についてその設計方針・基準の策定を行うとともに設備の概念設計の結果をまとめたものである.放射線被曝防止,水銀汚染拡大防止,崩壊熱除去を考慮して設備の基本計画を立案するとともに取扱・保管フローダイヤグラムを作成した.また,主要機器である使用済みターゲットキャスク,ターゲット交換台車の基本構造について概念設計を行い,取り扱いが容易で信頼性等の高いキャスク等を提案した.さらに,設備の安全性確保の観点から放射線監視設備の基本仕様を定めた.


290085
中性子散乱施設用液体金属ターゲットの構造評価,3; パルス状陽子ビーム入射による偏平ターゲット容器の構造検討
石倉修一* ; 粉川広行 ; 神永雅紀 ; 日野竜太郎
JAERI-Tech 2000-069; Dec.2000,32p.

 MW規模の中性子散乱施設の核破砕中性子源となる液体金属(水銀)ターゲットの構造健全性を評価するために,5MWのパルス状陽子ビームが偏平形状ターゲット容器に入射するときの動的応力解析を行った.解析では,クロスフロー型ターゲットを簡素化した半円筒形状のウィンドウ部を有する偏平ターゲットを,衝撃解析コードLS-DYNAの解析モデルとして用いた.動的応力の原因となる圧力波は,ビームエネルギーが1.5GeV,3GeV,6GeVについて,矩形断面内の出力分布が一様な条件で得られた体積発熱計算結果を用いてLS-DYNAにより評価した.その結果,1.5GeV,5MWでビーム周波数が50Hzの場合に,SUS316Lのような一般のオーステナイトステンレス鋼の許容応力を大きく越える最大応力636MPaが発生することが明らかとなった.現在の陽子ビーム条件である3GeV,25Hzの場合には,降伏応力の高いフェライト系材料のF82Hを用いることにより2MWまでの陽子ビームに対応できる見通しを得た.このときの陽子ビームのパルス強度は,4MW,50Hzの陽子ビームのパルス強度に等しい.


290086
イメージングプレートによるJRR-2一次冷却系重水用アルミニウム配管中のトリチウム量の測定
本石章司 ; 小林勝利 ; 佐伯秀也*
JAERI-Tech 2000-070; Dec.2000,34p.

 JRR-2の廃止措置にあたり,一次冷却系重水の循環系統であった配管及び機器類に付着及び浸透しているトリチウム量の評価が重要となっている.アイソトープ開発室では,イメージングプレートを使用してAl配管中のトリチウム量と浸透深さを求める実験を行った.Al配管のトリチウム汚染面を除く部分にアクリル塗料を塗布し,1.5%(1.21M)フッ化水素酸溶液で汚染面の酸化被膜を一定時間(3分)溶解しイメージングプレートで測定した.その結果,トリチウムは深度方向に25μmまで浸透していることを確認した.また,その90%は7μm以内に分布していることを確認した.


280766
軽水炉使用済燃料の燃焼度クレジットに関する技術開発
中原嘉則 ; 須山賢也 ; 須崎武則
JAERI-Tech 2000-071; Oct.2000,381p.

 使用済燃料の貯蔵施設等の臨界安全設計における経済性向上を目的に,科学技術庁からの委託により燃焼度クレジット導入に関する技術開発「軽水炉使用済燃料臨界安全管理技術開発」を平成2年度から平成11年度まで実施した.本報告は,上記事業の成果をまとめたものである.本技術開発では,商用PWR/BWR燃料を使用した使用済燃料棒の軸方向ガンマスキャン測定,一部燃料資料の放射化学分析による核種組成の精密定量,及び集合体の未臨界実験を行い多くの実測データを取得した.また,これらの測定データを使用して燃焼/臨界計算コードの検証,γ線測定による燃焼度評価,及び貯蔵容器等の安全裕度を検討した.


290087
海水中有用金属捕集試験装置用ロープの疲労と評価
玉田正男 ; 笠井昇 ; 瀬古典明 ; 長谷川伸 ; 武田隼人* ; 片貝秋雄 ; 須郷高信
JAERI-Tech 2000-072; Dec.2000,40p.

 有用金属捕集材実海域試験装置のクッションブイ取付ロープの切断原因について検討し,その対策を記載した.クッションブイは捕集試験装置を固縛する枠ロープを海中2.5mの深さに保持する.全8個のクッションブイそれぞれに2本ずつ計16本あり,4か所でロープの切断が起きた.切断箇所のクッションブイについては,短い周期で水平方向の揺れや回転をすることが観察された.そのため,ロープの引っ張り疲労に加えて曲げ疲労を考慮し強度計算を行った結果,ほぼ切断に至ることがわかった.今まで用いていたポリエチレンロープに換えて,より曲げ疲労に対し優れた強度特性をもつナイロンロープを使用することとした.強度計算により,ナイロンロープの引っ張り及び曲げ疲労強度は2年間の試験期間中は切断の生じない十分な強度を有する.


290088
放射化分析支援システムの検証試験(協力研究)
笹島文雄 ; 澤幡浩之* ; 鬼沢孝治* ; 市村茂樹 ; 大友昭敏 ; 伊藤泰男* ; 高柳政二
JAERI-Tech 2000-073; Dec.2000,49p.

 放射化分析支援システムは,放射化分析の経験が少ない利用者でも,簡便で,かつ正確に分析試料の多元素同時分析を行えるように分析作業を支援するためのものである.本検証試験では,放射化分析支援システムの機能,使い易さ,分析の正確さ等についての確認を行った.検証試験の方法としては,JRR-3M PN-3設備に整備した照射装置,測定装置,自動試料交換装置,解析装置及びKo法に基づく解析ソフト「KAYZERO/SOLCOI」を用いて実施し,ゲルマニウム検出器の校正,照射場のパラメータの測定,及び3種類の環境標準試料の分析を行った.本システムによる分析においては,多元素同時分析により合計28元素を定量し,保証値を有する16元素を15%以内の正確さで分析することができたので,システムの紹介とこれらの結果について報告する.


280767
JCO臨界事故における原研の活動
JCO臨界事故調査支援原研タスクグループ
JAERI-Tech 2000-074; Sep.2000,216p.

 平成11年9月30日に発生したJCOウラン加工工場での臨界事故において,原研は,事故発生直後から,臨界の終息,地域住民の汚染検査,住民相談をはじめ,技術的な支援,協力活動に携わった.さらに,臨界終息後においても,科学技術庁の事故対策本部に協力して,臨界事故の原因究明や解析,周辺住民の被ばく線量評価等に関する作業を行うとともに,原子力安全委員会のウラン加工工場臨界事故調査委員会や健康管理検討委員会による事故調査及び周辺住民の健康管理にかかわる作業等,さまざまな協力を行ってきた.本報告書は,臨界停止措置,総核分裂数評価,環境モニタリング,線量評価,臨界動特性解析等といった,原研が行ってきた活動の記録をまとめたものである.


290178
ITER真空容器用SUS316L溶接継ぎ手の機械的特性,1; 未照射材試験
斎藤滋 ; 深谷清 ; 石山新太郎 ; 高橋弘行* ; 小泉興一
JAERI-Tech 2000-075; Jan.2001,98p.

 核融合炉実験炉(ITER)の真空容器は,炉心の中心構造体であり,トリチウム閉じ込めの第一壁として安全設計上最も重要な機器と位置づけられている.しかし二重壁という特殊な構造のため,健全性の評価に当たっては従来の規格・基準が適用できない部分がある.日本原子力研究所では,このような特殊な構造に適用できる設計の基準案の整備とそれを裏付ける技術データの取得作業を行っている.その中の一つに溶接継ぎ手の中性子照射効果があり,JMTRを用いた照射試験を行っているが,有効な照射データを得るためには,未照射材の試験を十分に行っておく必要がある.本報告書では,未照射のSUS316L溶接継ぎ手について金相や硬さ,フェライト分布などの組織観察と,引っ張り,シャルピー衝撃及び低サイクル疲労試験などの機械的特性試験を行い,それらの結果をまとめて報告する.


290179
格納容器(Safety Hull)一体型水銀ターゲット構造の検討
神永雅紀 ; 寺田敦彦* ; 羽賀勝洋 ; 木下秀孝 ; 石倉修一* ; 日野竜太郎
JAERI-Tech 2000-076; Jan.2001,70p.

 原研とKEKが共同で建設計画を進めている中性子散乱施設では,大強度陽子加速器から1MWのパルス状陽子ビームを水銀ターゲットに入射させ,核破砕反応により発生した中性子を生命・物質科学等の先端分野の研究に利用する計画である.核破砕水銀ターゲットシステム設計では,ビーム窓等の破損により水銀が漏洩する場合を想定して,その場合にも十分な安全性を確保できるように漏洩時の水銀を容易に回収可能な格納容器一体型構造の概念を提案した.水銀容器の内部構造は,熱流動解析結果に基づき定めた.格納容器はヘリウム容器/重水容器の二重容器により構成し,各容器外側に設けた容器補強剤であるリブを介して各容器を接続する構造とした.本容器構造の成立性については,内圧0.8MPaを付加した静的な構造強度解析により検討した.その結果,容器に生ずる静的な応力は,各容器の表面にリブによる補強を加えることによりSUS316Lの許容応力142.5MPa以下にできる見通しを得た.


290180
シミュレーションモニタリングシステムの開発
加藤克海* ; 渡辺正 ; 久米悦雄
JAERI-Tech 2000-077; Jan.2001,50p.

 計算科学技術推進センターでは,原子力分野における計算科学研究の一環として大規模数値シミュレーション技術に関する研究を行っており,シミュレーション結果の効率的な理解のための可視化並びに動画像処理技術の開発整備作業を進めている.本報告書では,シミュレーションの途中経過の実時間可視化,あるいは計算結果の連続可視化を行うためのシミュレーションモニタリングシステムの開発について記述する.シミュレーションモニタリングシステムは,汎用可視化ツールAVS5またはAVS/EXPRESSを使用しているため,さまざまな計算機環境での利用が可能である.


290181
Reduced cost design of liquid lithium target for International Fusion Material Irradiation Facility (IFMIF)
中村博雄 ; 井田瑞穂* ; 杉本昌義 ; 竹内浩 ; 湯谷順明*
JAERI-Tech 2000-078; Jan.2001,17p.

 国際核融合材料照射施設(IFMIF)は,核融合炉材料開発のために,十分な照射体積(500cm3)を有し,照射量200dpaまで照射可能な強力中性子束(2MW/m2)を発生可能な加速器中性子源である.このような中性子を発生させるために,最大エネルギー40MeV,最大電流250mAの重水素ビームを,最大流速20m/sの液体リチウム流ターゲットに入射させる.1995年から1998年までに実施された概念設計及び評価活動に続いて,1999年に低コスト化のための合理化設計実施し,当初のIFMIF計画の目的を損わずにコストを削減し,IFMIFの成立性を高めた.主な変更点は,液体リチウムターゲッの数を,2個から1個に削減したことである.2000年からは,要素技術確証フェーズを開始した.本報告書は,低コスト化合理化設計の内容と最近の要素技術確証活動の概要について述べた.


290182
中性子2次元検出型マイクロストリップガスカウンタ圧力容器の検討
山岸秀志 ; 金子純一
JAERI-Tech 2000-079; Jan.2001,9p.

 大強度陽子加速器の強力パルス中性子ビームを用いた中性子散乱実験のために,高速,超高位置分解能の2次元中性子検出器の開発が要求されている.このため,ヘリウム-3混合ガスを用いたマイクロストリップガスカウンタ(MSGC)の開発を進めている.MSGCには耐圧性及び密封性の高い圧力容器が必要であるが,高い検出効率と高い2次元位置分解能を達成するために,その中性子入射窓には中性子吸収及び散乱断面積の小さい材料を選択し,かつ可能な限り薄くする必要がある.最適な圧力容器構造を決めるため,3種類の中性子入射窓構造で圧力容器を設計し評価した.


290183
表面反応分析装置の製作とそのSi(001)表面の初期酸化過程分析への応用
寺岡有殿 ; 吉越章隆 ; 佐野睦*
JAERI-Tech 2000-080; Feb.2001,33p.

 SPring-8の原研軟X線ビームラインの実験ステーションとして表面反応分析装置を設計・製作した.本装置では固体表面と気体分子の表面反応における並進運動エネルギーの影響を研究することを目的とし,超音速分子線発生装置,電子エネルギー分析器,質量分析器を設置して,おもに放射光を用いた光電子分光実験と分子線散乱実験を可能とした.本装置を用いてO2分子によるSi(001)表面の初期酸化の分析を行った.理論的に予測されていたO2分子が解離吸着するときのエネルギー閾値が実験的に検証された.さらにSi-2pの光電子ピークの構造から並進運動エネルギーに依存して酸化数の大きなSi原子が形成されることが明らかとなった.分子線散乱の実験においても並進運動エネルギーが2eV以上のとき表面温度が700℃以上でSiO分子の生成速度が急激に増大する現象が発見された.


290272
多段式イオンチェンバーによる光子束の絶対値測定
佐野睦* ; 吉越章隆 ; 寺岡有殿 ; 斎藤則生* ; 鈴木功*
JAERI-Tech 2000-081; Feb.2001,21p.

 SPring-8のBL23SUにおいて多段式イオンチェンバーを用いた光子束の絶対値測定を行い,フォトダイオード及びAuによる結果と比較した.光子束の測定は光エネルギーが487,571,688,868,1078eVの5点に対して行った.イオンチェンバー内に導入するガスはアルゴンを用いた.それぞれの光エネルギーに対してガス圧を10-2Pa〜102Pa台まで変化させ光イオン電流を測定し,その結果を解析することにより光子束を求めた.得られた光子束はリングカレント100mAあたり2.07×1010〜3.13×1011(photons/s)となり,光エネルギーとともに増加する傾向を示した.フォトダイオードとの比較では571eV以下では両者の測定は誤差の範囲内で一致するがエネルギーが高くなるにつれて差が大きくなり,1078eVではイオンチェンバーに比べてフォトダイオードの方が33%小さい値を示した.


290184
中性子ラジオグラフィによる照射済燃料・材料の非破壊試験法の開発,2; 中性子ラジオグラフィによるジルカロイ被覆管における水素化物及び酸化膜の観察評価
安田良 ; 仲田祐仁 ; 松林政仁 ; 原田克也 ; 安藤均*
JAERI-Tech 2000-082; Feb.2001,38p.

 本報は,照射済燃料に対する中性子ラジオグラフィの開発に関する第二報であり,前報で述べた照射済燃料を模擬したジルカロイ被覆管におけるコールド予備試験の結果について報告する.試験は,被覆管の健全性に影響を及ぼす重要な組織である水素化物及び酸化膜をそれぞれ水素濃度及び膜厚を制御して形成したジルカロイ管を用いて,イメージングプレート及びCT法により撮影を行った.撮影後は,写真観察と画像解析処理により評価を行った.その結果,被覆管中の水素化物については,水素化物の形成領域が確認され,定性的な評価が可能であることがわかった.酸化膜形成管に関しては,酸化膜そのものの観察は困難であったが,形成処理条件による影響が画像上で確認された.


290185
プレートフィン型再生熱交換器フィン・プレート構造の強度解析
松井真吾* ; 武藤康 ; 椎名保顕
JAERI-Tech 2000-083; Jan.2001,107p.

 高温ガス炉から出る6MPa,850〜950℃の高圧,高温ヘリウムガスを用いたガスタービンサイクルにおいて,約50%の高い熱効率で発電を行うために,再生熱交換器としてプレートフィン型熱交換器を用いることが不可欠である.しかしこのような高圧,高温下で使用されたものはなく,また可能な限りコンパクト化を進めることが必要であることから,プレートフィン型熱交換器の強度解析及び評価の手法を確立することが必要である.本報告書では,内圧荷重に対するフィン・プレート構造のモデル化方法を検討し,フィン内部の応力状態及びその特徴を明らかにした.また各設計パラメータに対する強度特性を明らかにし,ここで対象とした設計条件の下では,最適なフィン傾斜角が76°近傍にあり,セパレートプレートの薄肉化の可能性があることも示した.


290273
CS model coil experiment log book
西島元* ; 杉本誠 ; 布谷嘉彦 ; 若林宏* ; 辻博史
JAERI-Tech 2000-084; Feb.2001,393p.

 世界最大の超電導パルス・コイルであるITER中心ソレノイド(CS)・モデル・コイル及びCSインサート・コイルの通電実験は2000年4月11日に開始され,同年8月18日に終了した.この間,実験番号は356を数え,収集したデータは20GBを超えた.本報告書は4ヶ月にわたる実験のログ(日誌)とそのリストを集めたデータベースである.


290274
2次元検出型マイクロストリップガスカウンタの中性子検出効率の計算評価
山岸秀志 ; 曽山和彦 ; 金子純一 ; 池田裕二郎
JAERI-Tech 2000-085; Feb.2001,21p.

 大強度加速器の強力パルス中性子ビームを用いた種々の中性子散乱実験のために,高速,超高位置分解能を有する2次元中性子検出器の開発が強く望まれている.このため,ヘリウム−3混合ガスを用いたマイクロストリップガスカウンタ(MSGC)の開発を進めている.MSGCには高い中性子検出効率が求められるが,これを実現するにはヘリウム-3混合ガスを高圧で封入する必要がある.この結果,MSGC圧力容器には厚い金属製の中性子ウィンドウが必要になって,中性子を減衰させ,検出効率を低下させる.電極間ギャップの拡大はより高い検出効率を与えるが,中性子エネルギー分解能及び高計数率性能を低下させる.高い検出効率のMSGCを開発するため,MSGC圧力容器構造,ウィンドウ材料,電極間ギャップ及びヘリウム−3混合ガス圧力の最適設計と検出効率の計算評価を行った.この結果,中性子エネルギー0.1〜25MeVの範囲において93%以上の高い検出効率が得られる見通しを得たので,MSGC圧力容器構造及び検出効率性能について報告する.


290275
ボールベアリング・空気ばねタイプ3次元機器免震試験システムの動的特性および地震応答性状
堤英明* ; 山田博幸 ; 森和成* ; 蛯沢勝三 ; 柴田勝之
JAERI-Tech 2000-086; Feb.2001,93p.

 日本原子力研究所では,1991年より原子力機器の免震技術を導入した場合の有効性評価に関する研究に着手し,機器免震の有効性評価手法及び評価コード(EBISA: Equipment Base Isolation System Analysis)を開発した.さらに,上記評価コードを高度化するために,1996年より機器免震試験システムの動的挙動を把握するとともに,有効性を検証するための確証試験を実施している.有効性確証試験では,特性の異なる2種類の3次元機器免震試験システムを製作し,特性試験によりそれぞれの動的特性と免震効果を検証している.上記試験システムの1台は,免震装置としてボールベアリングと空気ばねを用いたもので,現在大洗研究所敷地内のテストベッドに設置し,自然地震動下で応答を観測しており,これまでに,いくつかの地震動により顕著な免震効果を確認した.また,ほかの1つは,免震装置として多段積層ゴムとコイルばねを用いたもので,振動台試験により種々の大規模地震動に対する3次元的連成挙動と免震効果の検証を実施している.本報告書は,ボールベアリング・空気ばねタイプの3次元機器免震試験システムの設計仕様,特性試験及び自然地震動による応答観測から得られた動的特性,それらに基づいて作成した振動モデル及び免震要素の特性のばらつきを考慮した地震解析結果についてまとめたものである.


290276
東海ホットラボにおける高温工学試験研究炉用材料の照射後試験
木崎實 ; 本田順一 ; 宇佐美浩二 ; 大内朝男* ; 大枝悦郎 ; 松本征一郎
JAERI-Tech 2000-087; Feb.2001,50p.

 東海ホットラボでは,四半世紀以上にわたって高温工学試験研究炉用燃料・材料の研究開発のための照射後試験を実施してきており,被覆粒子燃料,アロイ800H,圧力容器鋼材等の開発や選定,安全審査・設計工事認可対応に有用なデータを提供してきた.本報は,HTGRからスタートして最終的にHTTRに至る開発に伴って実施してきた材料関連照射後試験の技術的変遷と試験成果をまとめたもので,高温引張試験,クリープ試験,シャルピー衝撃試験,弾塑性破壊靱性(JIC)試験,動的破壊靱性(KId)試験,スモールパンチ試験,電気化学的腐食試験等について開発整備してきた試験装置,遠隔操作技術,評価技術,及び,耐熱・耐圧材料の高温照射脆化の特徴,さらには,これら材料の研究開発やホットラボ技術の進展への寄与等を概説する.


290277
大強度陽子加速器計画におけるNME施設内3GeVビーム陽子ラインに関する検討
明午伸一郎
JAERI-Tech 2000-088; Feb.2001,32p.

 大強度陽子加速器計画の生命・物質科学実験施設を構成する短寿命核種実験施設(E),中間子実験施設(M),中性子散乱実験値施設(N)(合わせてNME施設と呼ぶ)における3GeV陽子ビーム輸送ラインのビームオプティクス,ビーム形状及びビームスピルについて検討を行った.ビームオプティクス及びビームスピルの計算は,TRANSPORT及びDECAY-TURTLEコードを用いて行った.TRANSPORTコードを用いた計算の結果,ビームラインは前長86mとなり,概念検討の施設の案に収まることがわかった.DECAY-TURTLEを用いたビーム形状及びビームスピルの計算の結果,ビームスピルは目標とする15%以下にできることがわかった.また,中性子ターゲットにおけるビーム形状も目標とする横13cm,縦5cmの一様にできることがわかった.以上の検討結果は,今後のNME施設内の詳細配置の基本設計として用いられる.


290278
OSL線量計の諸特性
鈴木朗史* ; 伊藤精
JAERI-Tech 2000-089; Feb.2001,30p.

 OSL線量測定法は,放射線を受けたある種の物質を可視光線で刺激することにより,放出された蛍光を検出することで被ばく線量を測定する方法である.これは,最近開発が進んだ個人被ばく線量測定法の1つで,今回,酸化アルミニウム素子を用いたOSL線量計の実用化を検証するため,基本的特性について試験を行った.この結果,OSL線量計はγ(X)線,β線の測定に対して,個人線量計として実用上十分な特性を有していることが確認できた.


290279
JFT-2Mにおける多チャンネルMSE測定装置
神谷健作* ; 三浦幸俊
JAERI-Tech 2000-090; Feb.2001,17p.

 運動シュタルク効果(Motional Stark Effect)を用いたプラズマ電流密度分布(内部ポロイダル磁場分布),及び径電場分布計測についてJFT-2M装置における加熱用水素中性粒子ビーム(電流方向,及び逆電流方向入射)を用いることで検討した.JFT-2MのP10ポートを利用することにより,2系統のビームを同時に,かつ接線方向の視線で見込むことができ,高空間分解能の計測が可能となる.さらにDual-MSEの手法を用いて径電場の寄与を分離し,精度良く磁場のピッチ角(γp=Tan-1(Bp/BT))と径電場が求められる.偏光角が0.1°の精度で測定できた場合,径電場はおよそ4.0[kV/m]程度の精度で求められることがわかった.


290280
HTTR出力上昇試験での臨界制御棒位置と温度係数; 中間報告
藤本望 ; 野尻直喜 ; 高田英治* ; 齋藤賢司 ; 小林正一 ; 澤畑洋明 ; 石仙繁
JAERI-Tech 2000-091; Mar.2001,49p.

 現在HTTRでは出力上昇試験を進めており,これまで50%出力を達成している.HTTRの出口温度は950℃と高いため,出力上昇の過程で炉心内の温度変化が大きい.このような炉心の解析精度の向上を目的として各出力での臨界制御棒位置及び温度係数について測定を行い,解析との比較を行った.解析は,熱流動解析コードと拡散計算のくり返しにより求めた炉内温度分布を用いて,モンテカルロ計算と拡散計算により行った.その結果,臨界制御帽位置はモンテカルロ計算により50mm以下の誤差で一致し,100%出力では2900mm程度になると予想された.温度係数は拡散計算の結果とよく一致した.今後,出力100%までの測定を行い,解析結果と比較することにより解析精度の向上を目指す.


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