研究開発報告書類


JAERI-Research
2001年


290267
模擬雑固体廃棄物の溶融挙動と固化体の特性(受託研究)
中塩信行 ; 磯部元康 ; 涌井拓治* ; 岩田圭司* ; 木林辰行* ; 金沢勝雄 ; 福井寿樹 ; 大竹敦志* ; 中島幹雄 ; 平林孝圀*
JAERI-Research 2001-001; Feb.2001,19p.

 模擬雑固体廃棄物を,高周波誘導加熱とプラズマ加熱を併用するハイブリッド加熱方式及び導電性るつぼを用いる高周波誘導加熱方式の2つの溶融方式によって溶融し,雑固体廃棄物の溶融挙動を調べるとともに,溶融固化体の特性を評価した.製作した溶融固化体には強度を損なうような有害な空隙もなく,溶け残りなども見られず,ハイブリッド加熱方式で製作した溶融固化体の一部で見られたボイドの残存も,脱酸素剤を添加することにより低減できた.また,溶融固化体のスラグ層,金属層の化学成分分析,圧縮強度試験,比重測定の結果,溶融処理によって雑固体廃棄物を十分に均質化,安定化できるが溶融炉耐火材・るつぼ材の溶湯への溶け込み及び脱酸素剤が固化体中化学成分に影響を与える場合があることがわかった.一方,安定同位体トレーサーを用いて核種移行挙動を調べた結果,Coは金属層へ,Csはスラグ層に分布し,Csの残存率は加熱方式に影響を受けることがわかった.


290268
HTTR出力上昇試験における燃料及び核分裂生成物挙動の検討, 1; 15MWまでの結果
沢和弘 ; 飛田勉* ; 植田祥平 ; 鈴木修一* ; 角田淳弥 ; 関田健司 ; 青木和則* ; 大内弘
JAERI-Research 2001-002; Feb.2001,33p.

 高温工学試験研究炉(HTTR)の燃料に対する設計方針では,「初期破損率は0.2%以下」,「運転中の追加破損は十分許容しうる小さな値に制限する」と定めている.そのため,HTTRの運転中に破損率を定量的に評価する必要があり,1次冷却材中の放射能を測定する,原子炉保護設備の1次冷却材放射能計装,燃料破損検出装置(FFD),1次ヘリウムサンプリング設備を設けている.HTTRの出力上昇試験のうち15MWまでに取得したデータを用いて,燃料及び1次元冷却材中の核分裂生成物挙動の評価を行った.まず,1次冷却材中の核分裂生成物ガス濃度はすべて10-2Bq/cm3以下であった.また,1次冷却材中の88Kr濃度とFFD計数率はほぼ比例関係にあること,事前解析とサンプリングによる88Kr濃度の出力に対する傾向が合っていることがわかった.


290269
溶液燃料を用いたパルス炉SILENEの核特性評価
中島健
JAERI-Research 2001-003; Mar.2001,29p.

 溶液燃料を用いたパルス炉SILENEの核特性(静特性及び動特性)評価を行った.静特性評価では,SRAC95コードシステム及び核データライブラリJENDL-3.2の組み合わせによる核計算を実施し,臨界性,中性子束分布,βeff/λ比,反応度係数,液位反応度価値を求めた.この結果を用いて,SILENEの動特性解析に必要なパラメータを整備した.また,動特性評価では,Nordheim-Fuchsモデル及び反応度バランスモデルを用いて,動特性パラメータ(βeff/λ比,温度反応度係数)を評価するとともに,ピーク出力,エネルギー等の特性量評価の妥当性を検討し,モデルの適用範囲を明らかにした.


290342
深海調査船用原子炉DRX(Deep Sea Reactor X)炉心の核的検討
小田野直光 ; 石田紀久
JAERI-Research 2001-004; Mar.2001,36p.

 熱出力750kWの超小型原子炉DRX (Deep Sea Reactor X)は,深海科学調査船の動力源として用いられる一体型加圧炉である.DRXの炉心設計として,原子炉負荷率30%を仮定した場合に燃料無交換で4年間の炉心寿命を達成する炉心の核的検討を行った.燃料の235U濃縮度,反射体材質について検討し,8.3wt%の濃縮度で設計条件を満足できる炉心仕様を得た.特に,超小型炉においては中性子の漏れが大きくなるので,反射体の設計は濃縮度とともに炉心寿命を左右する重要な因子である.本設計では,反射体材質としてBe金属を使用することにした.また,燃料棒配列については,正方配列と三角配列の検討を行い,制御棒駆動装置の構造の観点から前者を採用した.また,種々の核的安全性にかかわるパラメータについて確認を行うとともに,反応度係数,出力分布等の核特性を評価し,設計条件を十分満足するものであることを明らかにした.


290343
微粒黒鉛の強度および破壊靱性に及ぼす粗粒含有の効果
高橋常夫* ; 石原正博 ; 馬場信一 ; 荒井長利 ; 林君夫 ; 小西隆志*
JAERI-Research 2001-005; Mar.2001,62p.

 微粒等方性黒鉛(平均粒径20μm)を基準試料とし粗粒含有率(平均粒径125μm)の異なる黒鉛材料を用いて曲げ強度試験及び破壊靱性試験を行い,粗粒含有率が強度及び靱性に与える影響を検討した.また,微細組織に基づく強度分布予測手法の曲げ試験結果への適用性を検討した.曲げ強度は,粗粒含有率0%と比較して含有率40%では平均曲げ強度の増加と強度のばらつきの減少が認められた.画像解析からもとめた気孔径分布の統計結果との関係においては,粗粒含有率の増加に伴う平均気孔間距離の増加及び大径気孔部分における気孔径分散と強度分散との正の相関関係が認められた.破壊靱性値に関しては,応力ひずみ線図の非線形応答開始点と最大荷重点における破壊靱性値の検討を行った.き裂進展開始荷重に基づく破壊靱性値は,粗粒黒鉛を含有することにより増加するものの含有率(20%,40%)による違いは認められず,低い含有率で破壊靱性値が飽和する傾向を示した.一方,最大荷重に基づく破壊靱性値は,粗粒黒鉛の含有率が増すにつれて増加し,含有率による違いが認められた.さらに,単軸応力状態下で提案されている気孔径分布を考慮した確率論的強度分布予測モデルを曲げ強度試験結果に適用し,実験結果をおおむね一致する結果を得た.


290344
A Study on radiation shielding and safety analysis for synchrotron radiation beamline
浅野芳裕
JAERI-Research 2001-006; Mar.2001,162p.

 第3世代放射光施設の放射光ビームラインに対する遮蔽設計手法と安全解析手法について開発研究を行った.本研究では,極端に大強度でそのほとんどのエネルギーが数100keV以下の放射光に対する遮蔽安全解析の研究とビームラインに混入してくる非常にエネルギーの高い(数GeV)放射線に対する挙動解析研究より構成される.放射光に関する遮蔽研究では,放射光ビームライン遮蔽計算コード「STAC8」を開発した.このコードは再生効果や放射光の直線偏光による散乱も考慮できる.本コードの妥当性を検証するために,このコードとモンテカルロ計算コードEGS4との比較計算及びビームラインハッチ内線量分布の比較実験を行い,良い一致を得た.また,開発したコード「STAC8」を用いてそれまで意識されなかったグランドシャインを解明するとともに,もっとも有効と思われる対策を提示した.SPring-8で発生するガス制動放射線を正確にシミュレーションするための計算条件を提示し,タングステン酸鉛シンチレーターを用いて,SPring-8のビームラインに混入してくるガス制動放射線を高精度で測定した.その結果,蓄積電子のビーム発散角やビームサイズなどの電子ビーム蓄積状態との関係を得た.ガス制動放射線によって発生する光中性子による線量を,準重陽子発生及びπ中間子発生領域まで考慮して評価した.また,このガス制動放射線に付随して発生する光中性子をハッチ外の位置でスペクトル計測し,得られた線量とモンテカルロ計算結果と比較検証した.本研究で整備されたガス制動放射線とそれに付随する光中性子の解析手法を用いて,レーザー電子光ビームラインで問題となる高エネルギー光子と付随する光中性子に対する遮蔽解析を実施した.これらの研究結果から,第3世代放射光施設の放射光ビームラインにおける遮蔽設計手法が確立され,すばやく正確にハッチからの漏洩線量が評価できるようになった.


290441
Technical feasibility study for the D-T neutron monitor using activation of flowing water
宇野喜智 ; 金子純一 ; 西谷健夫 ; 前川藤夫 ; 田中照也* ; 池田裕二郎 ; 竹内浩
JAERI-Research 2001-007; Mar.2001,42p.

 循環水の放射化を利用したD-T中性子モニターの技術的成立性に関する実験的研究をITER R&Dタスクとして行った.FNSのD-T中性子源を用いて,パルス中性子に対する時間分解能を調べたところ,10.7m/sの流速において50msの時間分解能が得られた.またITERのブランケット領域の中性場を模擬するためにステンレス綱/水体系内に水ループを挿入して,中性子束の測定精度の検証実験を行った.その結果,測定誤差は10%以下であり,ITER用中性子モニターとして利用可能であることを示した.


290345
ジルカロイ-4とMDAの機械特性に及ぼす水素吸収と中性子照射の影響(共同研究)
永瀬文久 ; 菅野光照* ; 小澤正明* ; 小松和志* ; 古田照夫*
JAERI-Research 2001-008; Mar.2001,61p.

 水素吸収及び中性子照射が軽水炉高燃焼度燃料被覆管の機械的特性に及ぼす影響に関し系統的な知見を得るために,さまざまな水素濃度を有するジルカロイ-4とMDA被覆管をJMTRにて照射し,引張試験を実施した.水素濃度範囲は10〜140wtppmとした.照射量は1.1〜3.6×1025n/m2(E>1MeV)であった.293及び633Kにおける試験により,水素濃度及び照射量に依存する機械特性の変化が調べられた.それらの変化は,ジルカロイ-4とMDAではほぼ同等であった.いずれの試験温度でも,800wtppm以上の水素濃度を有し照射された被覆管は,著しく小さな破断伸びを示すことがあった.このような破断伸びの著しい低下は,水素吸収量や照射量からは予想されない.本試験結果は,非常に高い水素濃度を有する照射被覆管において,水素吸収と照射の重畳的な影響を考慮する必要があることを示唆している.


290346
High temperature interaction between zircaloy-4 and stainless steel type 304
永瀬文久 ; 大友隆 ; 上塚寛
JAERI-Research 2001-009; Mar.2001,21p.

 軽水炉におけるシビアアクシデント時の燃料集合体溶融進展過程に関する基礎的な知見を取得するために,1273〜1573Kの温度範囲でジルカロイ-4とステンレス304鋼間の化学的な相互作用を調べた.接触界面に反応層が形成され,温度上昇及び時間の経過とともに成長した.SEM/EDX分析により,反応の主過程はZrリッチの共晶の生成であることが示された.材料の肉厚減少に関する反応速度を評価し,反応が一般に2乗則に従うことを明らかにした.各試験温度について反応速度定数を決定し,アレニウスタイプの反応速度式を求めた.


290347
岩石型燃料の反応度事故条件下における挙動
草ヶ谷和幸* ; 中村武彦 ; 吉永真希夫 ; 小此木一成* ; 上塚寛
JAERI-Research 2001-010; Mar.2001,44p.

 2種のジルコニア型岩石燃料の反応度事故条件下における挙動を原子炉安全性研究炉(NSRR)を用いたパルス照射実験により調べた.その結果,これらの燃料の破損しきいピーク燃料エンタルピ(単位燃料体積あたり)は,ともに10GJ/m3以上で,UO2燃料のそれと同等あるいはそれ以上であることがわかった.しかし,これらの破損形態はUO2燃料とは異なり,燃料ペレットの大半の溶融及びその破損開口部から冷却水中への放出が見られた.高温に達し強度の低下した被覆管が内圧により破裂したものと推察される.燃料の放出に伴う機械的エネルギーの発生は,本実験の範囲(12GJ/m3以下)では観測されなかった.


290442
改良リング引張試験における引張方法と試験片形状の最適化
北野剛司* ; 更田豊志 ; 笹島栄夫 ; 上塚寛
JAERI-Research 2001-011; Mar.2001,34p.

 円周方向荷重が作用する条件での被覆管の機械特性を適切に評価できるリング引張試験方法を確立するために,本研究では,有限要素法による試験片の弾塑性解析とゲージ部寸法形状を変化させた数種類の試験片を用いたリング引張試験を行い,引張方法及び試験片寸法形状について検討し,以下の結論を得た.二分割型のリング引張試験治具を用いる場合,試験片変形部(ゲージ部)を片方の治具(ハーフマンドレル)の頂部にセットし,かつ,ハーフマンドレルと試験片間の摩擦をテフロンテープにより低減することで,円周方向荷重に対する機械特性を正確に評価できる.PWR17×17タイプ被覆管の円周方向単軸応力下の機械特性を適切に評価できるリング試験片の寸法形状は平行部長さ3〜4mm,平行部幅2mm,リング幅5mm以上である.


290443
SPEEDIによる三宅島火山性ガスの大気拡散シミュレーション
永井晴康 ; 古野朗子 ; 寺田宏明 ; 梅山信昭 ; 山澤弘実 ; 茅野政道
JAERI-Research 2001-012; Mar.2001,28p.

 原研では,原子力事故時に放射性物質の大気拡散をリアルタイムで予測するために開発した計算システムSPEEDIとWSPEEDIを基盤に,さまざまな環境汚染に対応できるような環境中物質循環予測研究を推進している.今回,その一環として三宅島火山性ガスの広域拡散シミュレーションを行っている.2000年8月28日の関東西部での三宅島の火山性ガスによる異臭騒ぎ以降,現在まで,以下のような火山性ガスの広域拡散シミュレーションを行ってきた.(1)8月28日に火山性ガスが高濃度のまま関東地方西部に到達するメカニズムの解明と放出量の推定.(2)9月13日の東海,関西地域における異臭騒ぎでの火山ガスの到達メカニズムの解明.(3)東海,関東地区を対象に気象データ収集から図形出力まで自動化した定常的な拡散予測を継続.本報告は,上記の一連の活動をまとめたものである.


290348
Consistent evaluations of (n,2n) and (n,np) reaction excitation functions for some even-even isotopes using empirical systematics
Manokhin, V. N.* ; 小田野直光 ; 長谷川明
JAERI-Research 2001-013; Mar.2001,22p.

 (n,np)反応断面積のしきいエネルギーが(n,2n)反応断面積のしきいエネルギーよりも低い偶々核について,(n,1p)反応と(n,np)反応の両者の断面積の励起関数を矛盾なく評価するアプローチについて論じた.(n,2n)及び(n,np)反応断面積の励起関数の最大値の決定においては,Manokhinの系統式を用いるとともに,(n,2n)及び(n,np)反応のしきいエネルギーの差の質量依存性も考慮した.(n,2n)及び(n,np)反応の励起関数の計算には,Manokhinの系統式によって与えられる規格化された励起関数を用いた.いくつかの核種に対する(n,2n)及び(n,np)反応断面積の評価を行い,本研究における手法が妥当であることを明らかにした.


290349
プルトニウムリサイクルの経済性に関する分析
立松研二 ; 田中洋司* ; 佐藤治
JAERI-Research 2001-014; Mar.2001,25p.

 耐用年均等化発電原価計算法を用いて代表的なプルトニウム利用炉の発電原価を計算し,プルトニウムリサイクル利用の経済性について分析を行った.その結果,想定した前提条件の下で,プルトニウム利用炉の発電原価は,現行の地層ウランを用いた濃縮ウラン軽水炉に比べて割高であり,経済性を向上させるために以下の改善が必要であるとの所見を得た.FBRに関しては,建設費の削減及び燃焼度100GW/t以上を達成すること,全MOX炉及び低減速スペクトル炉(RMWR)に関しては,高燃焼度化による燃料装荷量の削減を行うことである.特に,RMWRに関しては燃焼度70GW/tの炉心が実現できれば,現行の濃縮ウラン軽水炉に近い経済性が期待できる.


290444
加速器核変換システム用核破砕ターゲットからの核破砕生成物の放射能と毒性評価
西原健司 ; 佐々敏信
JAERI-Research 2001-015; Mar.2001,33p.

 加速器駆動核変換システムにおいて,源となる中性子を生成する核破砕ターゲットとして,ナトリウム冷却型システムでは固体タングステンターゲットを,鉛−ビスマス液体合金冷却型システムでは鉛−ビスマス冷却材をそのままターゲットとして用いている.これらのターゲット,冷却材及び陽子ビーム窓から発生する核破砕生成物(SP)の収率,運転中及び冷却中の放射能,毒性を評価しておくことはシステムの運転あるいは使用済みターゲットの管理を検討するために必要である.今回,NMTC/JAERI97とCHAIN-SPを用いてこの評価を行った.燃焼計算システムABC-SCを用いて炉内中性子によるターゲットの放射化についても評価した.


290445
Premoderator optimization of decoupled hydrogen moderator
原田正英* ; 勅使河原誠 ; 甲斐哲也 ; 坂田英明* ; 渡辺昇* ; 池田裕二郎
JAERI-Research 2001-016; Mar.2001,32p.

 高性能な非結合型水素モデレータの設計のために,プリモデレータ,反射体材質の選択,ライナー長さの最適化に関する検討を行った.中性子工学計算には,NMTC/JAMコード及びMCNP-4Cコードを用いた.結果から,鉛反射体下では,デカップリングエネルギー,プレモデレータの形状及び厚さを調整することにより,ベリリウム反射体下でパルス特性を凌駕することが可能であることが示された.反射体材質の選択では,鉛反射体や水銀反射体では,プリモデレータの利用により,中性子強度が増加することやモデレータ内核発熱が軽減することが 示された.また,軽水プリモデレータを使用すると,パルステールが小さくなるが,重水プリモデレータを使用するとピーク強度が大きくなることも示された.中性子工学の観点から,最小のライナー長さが得られた.


290746
FCA XVII-1 における種々のサンプルを用いた238Uドップラー効果測定
安藤真樹 ; 岡嶋成晃 ; 大井川宏之
JAERI-Research 2001-017; Mar.2001,20p.

 組成・外径の異なる6種類の円筒形サンプルを用い,238U自己遮蔽効果を変化させたドップラー効果測定実験を行い,FCA解析手法の予測精度を評価した.実験は,800℃までのサンプル加熱反応度価値測定法により行った.解析では,PEA CO-Xコードにより求めたサンプルの実効断面積を用いドップラー効果を計算した.拡散理論に基づく解析の結果,金属ウラン及び二酸化ウランサンプルでは実験値と計算値はよく一致したが,背景断面積が大きく238U自己遮蔽効果が小さいサンプルについては,10%〜30%の過小評価となった.輸送計算によりこの過小評価は改善されたが,背景断面積が300barn以上であるサンプルに対しては,依然20%程度の過小評価であった.


290446
岩石型燃料照射試料の燃焼率測定
白数訓子 ; 山下利之 ; 金沢浩之 ; 木村康彦 ; 須藤健次 ; 間柄正明 ; 伊奈川潤 ; 河野信昭 ; 中原嘉則
JAERI-Research 2001-018; Mar.2001,23p.

 JRR-3Mにおいて照射された岩石型プルトニウム燃料の燃焼率を測定することを目的に,当該燃料試料の溶解並びに破壊分析を行った.模擬岩石型燃料試料を用いた溶解方法の検討を行い,ホットセル作業に適した燃料の溶解方法を確立した.本方法により照射済岩石型燃料試料の溶解を行い,試料の破壊分析に供した.分析では,同位体希釈,質量分析法でネオジムとプルトニウムの定量及び同位体組成を測定した.得られた結果より148Nd法を用いて燃焼率を算出した.また,トリア系燃料については,233Uを同様に定量した.


290447
Demonstration of quadrature arrangement using CsLiB6O10 crystals
桐山博光 ; 松岡伸一 ; 中野文彦* ; 山川考一
JAERI-Research 2001-019; Mar.2001,7p.

 高出力Nd: YAGレーザーの第二高調波光発生に対してCsLiB6O10(CLBO)結晶を用いた矩象波長変換方式の可能性について実験的に評価した.3.21Jの入射Nd:YAGレーザー光に対して2.25Jの第二高調波光発生光出力が繰り返し率10Hzで得られた.このときのパワー変換効率は70%以上に相当する.


290448
粒界腐食抑制型ステンレス鋼及び高Cr-W-Si系Ni基RW合金の硝酸溶液中の伝熱面腐食の抑制効果
土井正充 ; 木内清 ; 矢野昌也* ; 関山嘉雄*
JAERI-Research 2001-020; Mar.2001,17p.

 再処理施設の酸回収蒸発缶等を想定して,伝熱面腐食を支配する硝酸側環境因子の基礎解析を行った.現用鋼である,R-SUS3304ULCを用いて,溶液中のV濃度,熱流速の伝熱面腐食に与える影響を調べるとともに,金属組織制御により粒界腐食を抑制したステンレス鋼及び防食造膜元素を複合添加したNi基合金の耐食性についても調査した.


290449
高転換比BWR型低減速スペクトル炉の安全性および炉心改良の検討
大久保努 ; 竹田練三* ; 岩村公道
JAERI-Research 2001-021; Mar.2001,84p.

 現在原研で研究を実施している低減速スペクトル炉の設計の一つとして検討が進められている高転換比BWR型炉に関しては,炉心の長さが短くかつ炉心流量が小さいことから,炉心部での圧力損失が小さく自然循環が可能な設計となっていたことに着目し,経済性の向上を主な目的として,インターナルポンプを使用しない自然循環のシステムを前提として,インターナルポンプが占めていた空間を炉心部分として使用することとして,炉心出力を1,356MWeに増加させた設計が進められた.この炉心設計を受けてそれに対する安全性を検討するために,異常な過渡変化及び事故事象のうちの主要な事象に関して解析を実施するとともに安定性の検討も実施した.その結果,安全性の観点から問題となることがないとの結果が得られた.また,その炉心設計をベースとしてさらなる改良を検討し,これまで使用することとしていたY字型制御棒に代わって単純な構造の円柱型制御棒(外径60mm程度)を用いるとともに,集合体を大型化して体数を削減し経済性の向上を狙う設計の可能性を検討した.その結果,そのような炉心の設計が,これまでに設計されたY字型制御棒を使用した炉心と同様な炉心性能を有する範囲で成立可能であるとの結果が得られた.


290616
統合モデルにおける結合型モデレータの核特性
勅使河原誠 ; 明午伸一郎 ; 坂田英明* ; 甲斐哲也 ; 原田正英* ; 池田裕二郎 ; 渡辺昇*
JAERI-Research 2001-022; May 2001,33p.

 パルス核破砕中性子源開発の一環として,これまでのニュートロニクス検討及び工学的検討のもとに構築されたモデル(統合モデルと言う)を用いて,設計等に必要とされる結合型モデレータにおける核特性評価検討を行った.その結果として,次に示す有用な知見が得られた.主減速材である水素モデレータ内の総核発熱は入射陽子ビーム出力がMWあたり約420Wである.核発熱密度は最も高いところで約1W/cm3である.プレモデレータの核発熱は約9.2kW/MWで最も大きな寄与である.室温から100Kの範囲に渡ったプレモデレータの温度変化は,水素モデレータの中性子特性に影響しない.中性子透過の観点から,モデレータ容器材料として6000系及び7000系のアルミ合金が有望である.また,ビーム窓による陽子ビームの広がりは,モデレータの核発熱に影響しない.


290350
希ガス−酸素系の低温プラズマ励起反応に関する研究
小河浩晃* ; 木内清 ; 佐分利禎* ; 深谷清
JAERI-Research 2001-023; Mar.2001,21p.

 発電炉の酸化物燃料では,燃焼度とともに放射性元素のXeやKr等の希ガスが多量に生成し,燃料と被覆管のギャップ内に放出して,伝熱阻害を促進し,被覆管の健全性を低下させることが重要な課題となっている.また,それらのオフガス中の回収技術の開発も急務となっている.本研究では,重元素の放射性希ガスであるXeやKr等の燃料中の振る舞いや,廃棄物としての回収・固定化のための新技術の基礎検討として,これらのガスの重照射場における化学的反応性を量子線による励起効果の新しい観点から基礎検討した.重照射場において当該ガスが低温プラズマ化して化学反応性が活性化することを想定して,これまでに未解明で,実用的にも重要な希ガス−酸素系の反応性を解析した.試験装置として,RF励起型の低温プラズマ反応試験装置を整備して,重元素希ガス自身及び実用環境で想定される酸素との混合ガス系について,プラズマ励起反応の起こりやすさを評価して,重照射場における当該ガスの存在状態や反応性を検討した.


290351
微小押込み試験による超塑性変形セラミックスの機械的特性評価
柴田大受 ; 石原正博 ; 高橋常夫* ; 本橋嘉信* ; 林君夫
JAERI-Research 2001-024; Mar.2001,24p.

 高温工学試験研究炉(HTTR)を用いた高温工学に関する先端的基礎研究の一環として,超塑性セラミックス材料に関する高温照射試験研究が計画されている.本報告書では,代表的な超塑性セラミックスである正方晶ジルコニア多結晶体(TZP)について,超塑性加工後の試料の変形量と硬さ及びヤング率との関係を微小押し込み試験により評価した.さらに,結晶状態のSEM観察結果から,超塑性変形による微細組織の変化と機械期特性との関連について考案し,以下の結果を得た.(1)硬さ及びヤング率は超塑性変形量の増加に伴い低下し,今回の実験条件では,変形量30%で約1/2に,変形量150%で約1/4になった.(2)超塑性変形量の増加に伴い結晶粒が大きくなり,寸法にばらつきが生じた.(3)結晶粒径の増加が,超塑性変形に伴う硬さ及びヤング率の低下の一因と考えられることを解析的に示した.


290450
Activation cross section measurement at neutron energy from 13.3 to 14.9MeV using FNS facility
春日井好己 ; 池田裕二郎 ; 宇野喜智 ; 山本洋* ; 河出清*
JAERI-Research 2001-025; Mar.2001,74p.

 D-T中性子源FNSを用いて,エネルギーが13.4MeVから14.9MeVの中性子に対する60反応の放射化断面積を測定した.対象の反応は,(1)おもに希土類核を標的とする32反応,(2)短寿命核(半減期が1秒から20分の)を生成する19反応,(3)9つの(n,nα)反応,である.測定値と過去に報告された実験値及び評価値と比較した.また,(n,p)及び(n,α)反応については,既に提案されている経験式を用いた値と比較した.また,(n,nα)反応の系統性を議論した.


290451
劣化溶媒に対するブチルアミン洗浄剤の性能試験
亀井一成 ; 伊東芳紀* ; 宝徳忍 ; 朝倉俊英 ; 渡辺眞樹男 ; 峯尾英章 ; 内山軍蔵
JAERI-Research 2001-026; Mar.2001,27p.

 実燃料抽出で発生した劣化溶媒を用いて,ブチルアミン系化合物洗浄剤での溶媒洗浄試験を行った.溶媒洗浄にはグローブボックス内に設置した小型ミキサセトラを用い,洗浄工程は2種類の洗浄剤を用いて,各4段,計8段の工程とした.洗浄剤の種類またはPHを変化させたものを組み合わせ,条件を4条件として試験を行った.その結果,DBPはPH1.5以上で洗浄効果が確認された.また,全α及び全β線放出核種に関しても,洗浄効果が確認され,除染係数はα線放出核種が120〜1000で,β線放出核種が60〜100であった.


290452
溶液燃料過渡臨界事故時における放射性希ガスの放出挙動の検討(受託研究)
阿部仁 ; 田代信介 ; 小池忠雄 ; 岡川誠吾 ; 内山軍蔵
JAERI-Research 2001-027; Mar.2001,20p.

 溶液燃料過渡臨界事故時における放射性物質の施設内への閉じ込め効果を検討するため,NUCEFのTRACYを用いて,溶液燃料臨界事故時放射性物質閉じ込め試験を実施している.放射性希ガス核種は高い揮発性を有するため,ほかの非揮発性核種と比べると施設外へ放出されやすく,公衆の被曝線量評価の観点からは放射性希ガス核種の放出挙動に関する定量的なデータが重要となる.そこで放射性希ガスとして140Xeに着目し,気相への放出係数を考慮した評価モデルを用いることで,気相への放出割合を評価した.また,逆炉周期と放出係数との間に相関関係を見いだすことができ相関式を導出した.さらに,二重境膜説をもとに放出係数と放射線分解ガス気泡径の関係を検討し,その結果を用いて,逆炉周期と気液接触面積との定性的な相関関係を示すことができた.


290453
耐熱セラミックス複合材料の照射試験; 第1次予備照射試験(97M-13A)照射後試験中間報告
馬場信一 ; 鈴木世志夫* ; 高橋常夫* ; 石原正博 ; 林君夫 ; 斎藤保 ; 相沢静男 ; 斎藤隆 ; 関野甫
JAERI-Research 2001-028; Mar.2001,109p.

 原研では,高温工学試験研究炉(HTTR)を用いた先端的基礎研究の課題の1つである「耐熱セラミックス複合材料の照射損傷機構の研究」のため,材料試験炉(JMTR)を用いた予備照射試験を進めている.本報告は,このうちの最初のキャプセル(97M-13A)に装荷した試料について,これまでに行った照射後試験(PIE)の結果をまとめたものである.照射後試験は(1)寸法変化(2)熱膨張率(3)X線パラメータ(4)不純物放射能について測定した.黒鉛系及びSiC系複合材料の測定結果は,既存の文献データと同様の傾向を示した.SiC繊維強化及びSiC粒子分散強化複合材料については,モノリシック材料と同様に,温度モニター効果が観察された.


290617
セラミックス製スリーブを用いたアルミナパイプ同士の接合基礎実験
阿部哲也 ; 廣木成治 ; 丹澤貞光 ; 古作泰雄 ; 竹内久雄* ; 山川晃*
JAERI-Research 2001-029; May 2001,13p.

 収縮性アルミナスリーブと高融点ソルダーを用いてアルミナパイプ同士を接合するための基礎実験を行った.スリーブは,接合時に1%収縮するよう,高純度アルミナ粉末を1400℃で1次焼結して作成し,ソルダーは1400℃以上で液相を生成するアルミナ−カルシア系を選択し,アルミナと炭酸カルシウムの混合粉末をペースト化して作製した.パイプとスリーブの間にソルダーを介在させ,1500℃で加熱接合した結果,スリーブの収縮とソルダーによる接合界面の形成によって,金属溶接に匹敵する気密性を持ったパイプ接合体が得られた.


290618
High efficiency second-harmonic generation in multi-pass quadrature arrangement
桐山博光 ; 中野文彦* ; 山川考一
JAERI-Research 2001-030; May 2001,26p.

 極短パルス・超高ピーク出力チタンサファイアレーザーの効率向上のために,励起光源であるNd: YAGレーザーの第二高調波光を効率よく変換できる多重パス矩象波長変換方式を新たに考案した.非線形光学結晶にKTiOPO4(KTP)を用いた基礎実験において,76MW/cm2の低い入射レーザー光強度に対して80%以上の高い変換効率を得た.また,非線形光学結晶にCsLiB6O10(CLBO)を用いた高出力動作時において,3.27Jの入射Nd: YAGレーザー光に対して2.73Jの第二高調波光出力が繰り返し率10Hzで得られた.このときのエネルギー変換効率は83%に相当する.この波長変換方式の出力エネルギー特性,波長変換効率特性とそのスケール則に関して設計,並びに特性について議論する.


290619
Four-pass quadrature arrangement for highly efficient second-harmonic generation
桐山博光 ; 松岡伸一 ; 有澤孝
JAERI-Research 2001-031; May 2001,8p.

 Ti: sapphireレーザーに用いる励起光源のエネルギー利用効率の向上を目的としてNd: YAGレーザー光を効率よく第二高調波光に変換する方式を新たに考案した.KTP結晶を用いた基礎実験において,この方式を用いることにより,76MW/cm2の低い入射Nd: YAGレーザー光強度に対して80%の高い変換効率が得られた.607mJの入射Nd: YAGレーザー光に対して486mJの第二高調波出力光が10Hzの繰り返し率で得られた.


290620
瞬時計測型流路断面平均ボイド率計の開発; BWR条件への適用
井口正 ; 渡辺博典 ; 木村守* ; 安濃田良成
JAERI-Research 2001-032; May 2001,111p.

 著者らは,流路断面平均ボイド率を非定常計測する実用的なコンダクタンス型ボイド率計を開発した.本ボイド率計は,流路内の二相流ボイド率と二相流電気伝導度との相関関係を利用する.空気/水2相流による校正試験を行った結果によれば,ボイド率αは電流比I/I0(I0は,満水時の電流)を用いて,α=1-I/I0で近似できる.このボイド率計を,高温・高圧のBWR条件(290℃,7MPa)に適用し,その計測性能を調べた.その結果,電極部の耐熱性に改良の余地があるが,高温・高圧でもボイド率αはα=1-I/I0で近似できることがわかった.ただし,水の電気比抵抗の温度依存性を考慮する必要がある.このため,水の電気比抵抗の温度依存性を調べるとともに,温度補正式を導出した.また,本ボイド率計を規模の大きい試験装置に適用するときには,回路のキャパシタンスの影響が無視できなくなる.このため,この影響を抑制する方策を講じた.高温高圧条件下で流量133kg/m2s以下,2×2管群流路で,ボイド率0%〜70%では誤差10%以内でボイド率を測定できた.本ボイド率計は,原理的に流量の影響を受けない.このため,流量変動がある条件でのボイド率計測が可能である.


290621
A Study of fuel failure behavior in high burnup HTGR fuel; Analysis by STRESS3 and STAPLE codes
Martin, D. G.* ; 沢和弘 ; 植田祥平 ; 角田淳弥
JAERI-Research 2001-033; May 2001,19p.

 高温ガス炉燃料の安全設計においては,1次冷却材への放出量が許容値を超えないよう,核分裂生成物を被覆燃料粒子内に閉込めることが重要である.本報は,高燃焼度下における燃料挙動の研究のため,照射試験中の燃料挙動を英国のコードを用いて再現しようと試みた結果を示す.計算には,91F-1Aキャプセル及びHRB-22キャプセルで実施した照射試験結果を用いた.その結果,被覆層の破壊強度及び厚さを統計的に取り扱うと,破損挙動を再現できることがわかった.


290622
高温工学試験研究炉燃料の貯蔵及び再処理技術の検討
沢和弘 ; 藤川正剛 ; 吉牟田秀治* ; 加藤茂*
JAERI-Research 2001-034; May 2001,20p.

 日本初の高温ガス炉である高温工学試験研究炉(HTTR)の燃料は,燃料棒と六角柱黒鉛ブロックからなる.燃料棒中には被覆燃料粒子を分散した燃料コンパクトが収納されている.被覆燃料粒子は,低濃縮UO2を用いたTRISO被覆燃料である.被覆燃料粒子は核分裂生成物を長時間保持できると考えられており,HTTR燃料の長期保管又は廃棄中の核分裂生成物放出挙動を計算により検討した.一方,我が国の基本方針では使用済燃料はすべて再処理することとなっているため,HTTR燃料をPurex法で処理するための前処理工程のうち,黒鉛とCO2反応及びジェットグラインド法による前処理工程のレヴューを行うとともに,燃料の製造工程において実施した,燃焼−破砕−浸出法による燃料コンパクトからのウラン回収実績データの検討を行った.


290521
東海村臨界事故における重度被ばく患者に対する線量分布の詳細解析; 原研・放医研共同研究
遠藤章 ; 山口恭弘 ; 石榑信人*
JAERI-Research 2001-035; May 2001,83p.

  東海村のウラン加工施設において発生した臨界事故では,現場にいた3名の従業員が重度の放射線被ばくを受けた.このうち,沈殿槽にウラン溶液を投入する作業を行っていた2名は,中性子とγ線が混在する核分裂線源近傍において,著しく不均等に被ばくした.これらのことが,この2名の臨床症状に深く関係していたと推定されている.したがって,2名の重度被ばく患者に対しては,臨床症状との対比のために,部位ごとの中性子及びγ線による線量分布の情報が不可欠である.原研では,放医研との共同研究として,被ばく時の位置,姿勢を模擬した計算シミュレーションを実施し,重度被ばく患者の線量分布を詳細に解析した.本解析結果は,中性子及びγ線高線量被ばく時の人体影響の解明,その治療法等,学術面での研究の進歩のために利用されると期待される.


290747
FCA XX-1炉心におけるガス膨張機構(GEM)の反応度価値測定と解析(共同研究)
大井川宏之 ; 安藤真樹 ; 飯島進 ; 高木直行* ; 植松眞理マリアンヌ*
JAERI-Research 2001-036; Jun.2001,48p.

 大型高速炉の冷却材循環ポンプ停止時に負の反応度フィードバックを与えることを目的としたガス膨張機構(GEM)の模擬試験を高速炉臨界実験装置FCAにおいて実施した.炉外GEMと炉内GEMについて反応度効果を測定し,計算と比較して予測精度を検討した.炉外GEMでは,構造材である鉄の自己遮蔽効果を適切に評価する必要があることがわかった.決定論的手法では10〜20%の過大評価となるが,モンテカルロ法を用いると予測精度を10%以内に改善できることがわかった.炉内GEMでは,中性子ストリーミング効果を考慮できるようなセル均質化法を採用する必要があることがわかった.最小二乗法による成分別予測精度評価の結果,非漏洩成分は10〜20%の過大評価であるが,漏洩項は実験誤差の範囲内で実験と計算が一致することが明らかとなった.


290748
TRACY実験におけるフィードバック反応度の空間分布効果; 第1出力ピーク特性の評価
小原徹* ; 中島健 ; 三好慶典 ; 関本博*
JAERI-Research 2001-037; Jun.2001,60p.

 TRACY実験におけるフィードバック反応度の空間分布効果を検討するために,一点炉近似モデル及び空間依存動特性コードを用いて,第1出力ピーク特性の評価を行った.平垣出力分布を有する炉心の解析では,温度フィードバック反応度に重み1.5をかけることにより,温度分布の空間依存性を考慮した結果と同じ結果が得られた.核計算による温度分布の空間効果の評価及び空間依存動特性解析の結果,出力ピーク時には,温度フィードバックの空間効果が,フィードバックの無い状態の出力分布によって支配されており,この結果,温度フィードバック反応度の重みが1.5となることがわかった.


290842
Association of thymine glycol lesioned DNA with repair enzyme endonuclease III; Molecular dynamics study
Pinak, M.
JAERI-Research 2001-038; Jul.2001,30p.

 チミングリコール(TG)を持つDNAと修復酵素エンドヌクレアーゼIIIの複合体形成過程について,分子動力学計算を用いて調べた.修復酵素とTGを持つ30塩基対長のDNAが水溶液中に存在する系をモデル化し,2ナノ秒間のシミュレーションを行った.シミュレーション開始から約1ナノ秒後にDNAと修復酵素は複合体を形成し,シミュレーションが終了するまで安定な構造を保持した.酵素とDNAの結合領域において,グルタミン酸がリン酸結合のC3’分子から1.6オングストロームの位置まで近接していることがわかった.また,TGのある部分でDNAは折れ曲がったが,この変形により修復酵素が損傷部分に近づきやすくなると考えられる.さらに,静電エネルギーの変化も損傷認識過程において重要な寄与をしていることが確認された.TG損傷の近傍では水分子の密度が他の部分よりも高く,このために修復酵素が損傷のグリコシル結合に近づきやすくなること,また認識過程において水和水のはたらきが重要であることが示唆された.


290843
海中航行観測船用原子炉SCR炉心の核的検討
小田野直光 ; 石田紀久 ; 和田幸司* ; 今井洋*
JAERI-Research 2001-039; Jul.2001,59p.

 熱出力1250kWの超小型原子炉SCR(Submersible Compact Reactor)は,水深300m程度の中層域での科学調査船の動力源として用いられる一体型加圧炉である.SCRの炉心設計として,原子炉負荷率50%を仮定した場合に燃料無交換で10年間の長期炉心寿命を達成する炉心の核的検討を行った.燃料棒の配列,235U濃縮度,反射体材質について検討し,9.5wt%の濃縮度で設計条件を満足できる炉心仕様を得た.特に,超小型炉においては中性子の漏れが大きくなるので,反射体の設計は濃縮度とともに炉心寿命を左右する重要な因子である.本設計では,反射体材質としてBe金属を使用することにした.また,燃料棒配列については,正方配列と三角配列の検討を行い,炉心サイズを小さくすることのできる後者を採用した.また,種々の核的安全性に係わるパラメータについて確認を行うとともに,反応度係数,出力分布等の核特性を評価し,設計条件を十分満足するものであることを明らかにした.


290844
波長可変レーザー励起用高平均出力Nd: YAGレーザーの熱特性評価
大場正規 ; 丸山庸一郎
JAERI-Research 2001-040; Aug.2001,24p.

  レーザーによる同位体分離の実現には,235Uを励起,電離するために高い平均出力の波長可変レーザーが必要である.このような波長可変レーザーを実現するためには,それを駆動するポンプレーザーが不可欠である.これまで分離波長可変レーザーのポンプレーザーとして銅蒸気レーザーが有望視され,その技術開発が行われてきた.しかし,近年の半導体レーザーの高性能化による固体レーザーの性能向上により,ポンプレーザーとしての固体レーザーの利用が分離エネルギー低減の観点から有望であると考えられるようになった.原研では,このような性能を満足するポンプレーザーとして半導体レーザーでポンピングされるジグザグスラブレーザーを選定し,その開発を進めてきた.しかし,レーザー媒質が吸収する光のみを発生できる半導体レーザーを利用しても,その一部は熱に変化し,この結果,結晶内に応力が発生し,熱複屈折や熱レンズなどの効果が生じ,出力の減少や光の質の低下をもたらす.このような効果は繰り返し数や平均出力が高くなるほど大きくなるため,これらの効果の抑制あるいは制御が重要な課題となっている.このためモデルを用いて発振繰り返し数2〜2.5kHzのNd: YAGレーザーの出力特性及び使用するレーザー結晶内の熱分布,熱歪み,復屈折効果などを計算した.この結果,最適設計を行うことにより,2kHz級の発振繰り返し数で,緑色光平均出力500W級のNd: YAGレーザーが実現可能であるとの見通しを得た.


290845
水素吸収被覆管の円周方向機械特性評価
北野剛司* ; 更田豊志 ; 上塚寛
JAERI-Research 2001-041 Aug.2001,24p.

 水素化物リム生成が被覆管の円周方向機械特性に与える影響を定量的に評価するために,人工的に水素化物リムを生成させた被覆管の改良リング引張試験を実施した.室温における試験の結果,水素化物リムは脆く,変形初期において亀裂が生じるため,破断歪みは水素化物リム厚さの増加とともに著しく減少することがわかった.一方,573Kにおける破断歪みは,リム部の水素化物密度にも依存し,比較的厚い水素化物リムが生成していても,その密度が低い場合は大きな値を示した.延性−脆性のしきいとなる水素化物密度があり,そのしきい密度が温度とともに大きくなるため,水素化物密度の小さいリムは延性を示し,その結果,比較的厚い水素化物リムが生成している場合でも破断歪みは大きくなると考えられる.


290939
Permeation behavior of deuterium implanted into beryllium
中村博文 ; 林巧 ; 大平茂 ; 西正孝
JAERI-Research 2001-042; Sep.2001,21p.

 国際熱核融合炉(ITER)の第1壁におけるトリチウム透過評価のための研究の一環として,ベリリウム中に打ち込まれた重水素のイオン注入透過挙動の測定を実施した.試料には焼鈍処理をしていない試料及び1173Kで焼鈍した試料の2種類を用いた.透過量は試料温度及び入射イオンフラックスをパラメータとして測定した.透過実験後のベリリウム試料の表面分析も行った.今回の透過実験の範囲(最高温度: 685K,検出感度: 1×1013原子/m2s)においては,透過は焼鈍処理を行った試料にのみ観測され,非焼鈍試料では観測されなかった.これは透過を阻害する試料内部欠陥の減少に起因することが推定された.イオン注入透過の定常挙動,過渡挙動及び表面分析を元に焼鈍ベリリウム中にイオン注入された重水素の透過の律則過程は,透過側表面に存在する酸化膜の影響を受けて表面再結合律速であると評価した.


291070
高燃焼度高温ガス炉用被覆燃料粒子の照射試験; 91F-1Aスィープガスキャプセル照射試験
沢和弘 ; 飛田勉* ; 高橋昌史* ; 斎藤隆 ; 飯村勝道 ; 横内猪一郎 ; 芹澤弘幸 ; 関野甫 ; 石川明義
JAERI-Research 2001-043; Sep.2001,52p.

 高温ガス炉の被覆燃料粒子は,高燃焼度条件下で被覆層内圧の上昇により破損に至る可能性がある.そのため,バッファ層の体積を大きくするとともに,SiC層を厚くするなどの対策により,内圧破損を防止する必要がある.この改良を行った被覆燃料粒子を約10%FIMAの高燃焼度まで照射した.照射は材料試験炉でスィープガスキャプセルを用いて行い,その後各種照射後試験を行った.その結果,照射初期には貫通破損粒子が無かったが,照射中に貫通破損が発生したことがわかった.照射後試験において,破損粒子を見つけだし,SEM及びEPMA観察を行った結果,内圧破損が生じた可能性が高いことがわかった.計算を行った結果,健全粒子は内圧には至らず,製造時SiC層破損粒子のPyC層の破損により,貫通破損に至った可能性があることがわかった.


291071
熱供給用超小型炉MR-1G炉心の核的検討
小田野直光 ; 石田紀久 ; 落合政昭
JAERI-Research 2001-044; Oct.2001,53p.

 MR-1Gは都市のオフィスビルへの熱供給のための熱出力1MWtの超小型原子炉である.MR-1Gの炉心設計として,原子炉負荷率44%を仮定した場合に燃料無交換で10年間の長期炉心寿命を達成する炉心の核的検討を行った.燃料棒配置,235U濃縮度について検討し,濃縮度を8.5wt%とすることで設計条件を満足できる炉心仕様を得た.種々の核的安全性にかかわるパラメータについて確認を行うとともに,反応度係数,出力分布等の核特性を評価し,設計条件を十分満足するものであることを明らかにした.また,受動的原子炉停止系に採用した反射体落下による炉停止性能の解析を行い,炉物理の観点から成立性を確認した.


300001
黒鉛の格子振動の温度依存性と比熱の解析(協力研究)
仁平猛* ; 岩田忠夫* ; 岩瀬彰宏
JAERI-Research 2001-045; Nov.2001,33p.

 KomatsuとNagamiyaによって提案された黒鉛の格子振動の半連続体モデルは,格子振動の分散関係を解析的に表すことに成功した唯一のもので,分散関係の表式には層面間距離c,弾性定数C11,C12,C13,C33,C44及びκがパラメータとして含まれている.ここで,cρκ2は層面の曲げの弾性定数,ρは密度である.われわれは,これらのパラメータを温度の関数として取り扱うことにより,この半連続体モデルを改良する.κ以外のパラメータには既知の実験データ及びそれらから導いた関係を用いる.κは,改良した半連続体モデルによる比熱の計算値を実験値に一致させることにより,温度の関数として求める.改良した半連続体モデルは,360K以下の広い温度範囲にわたって比熱の実験値をよく説明し,その温度範囲で熱伝導などの解析に用いることができる.κは温度上昇とともに著しく減少するが,これはout-of-planeモード振動のsofteningが起こることを示す.比熱の実験曲線の温度による2階微分は格子振動の振動数分布についての情報を与える.低温比熱の解析から,C44の室温の値は0.415×1011dyn/cm2であると確定される.


291072
軽水炉次世代燃料の炉物理に関するベンチマーク問題の提案及び解析結果
炉物理研究委員会
JAERI-Research 2001-046; Oct.2001,326p.

 日本原子力研究所炉物理研究委員会の下に設置された軽水炉次世代燃料の炉物理ワーキングパーティでは,軽水炉次世代燃料の核特性計算手法の精度を検討するために一連のベンチマーク問題の提案を行っている.次世代燃料とは,70GWd/t程度と現行の設計を大きく上回る燃焼度の増大を目指す燃料をいう.この結果,作成したベンチマーク問題の仕様は,235U濃縮度5wt%といった現行の設計限界を上回るものとなった.ワーキングパーティでは,ウランまたはMOX燃料を装荷したピンセル,PWR集合体,BWR集合体の計6つのベンチマーク問題を提案している.本報告書は,このベンチマーク問題の詳細仕様を示すとともに,ワーキングパーティメンバーの11機関が実施した予備解析の結果とその比較についても併せて述べる.


291073
原子炉冷却系配管のクリープ挙動に関する解析的研究(委託研究)
宮崎則幸* ; 萩原世也* ; 茅野栄一* ; 丸山結* ; 橋本和一郎* ; 前田章雄*
JAERI-Research 2001-047; Oct.2001,35p.

 原子炉のシビアアクシデント時には,損傷炉心から流入する高温気体からの伝熱や核分裂生成物の崩壊熱によって原子炉冷却系配管が加熱されるが,内圧が高い場合には,高温での短時間クリープで配管が破損する可能性がある.このような配管の構造健全性評価のためには,従来ほとんど考慮されなかった第3期クリープ挙動をも考慮したクリープ構成式を用いて,精度の良い予測法を開発する必要がある.そのため,Kachanov-Ravotnovの等方性損傷理論を用いて第3期クリープ挙動を考慮したクリープ構成式を作成し,別途取得した実験データをもとに構成式の定数を決定するとともに,得られた構成式を用いて等温及び非等温の各クリープ条件で配管の局所有限要素法解析を行った.その結果,損傷変数によって内部損傷の定量評価が可能であり,特に,配管外壁から破損するという,円管を用いた配管高温負荷試験での結果を良く再現することができた.


291074
ARTISTプロセス; 使用済み核燃料の新規処理プロセス
館盛勝一
JAERI-Research 2001-048; Oct.2001,23p.

 使用済み核燃料(SF)の新しい化学処理プロセス: ARTISTプロセス,を提案した.ARTISTプロセスの主要概念は,SF中のアクチノイドをすべて回収し,それらをウラン(U)と超ウラン元素(TRU)混合物の二つのグループに分けて暫定貯蔵し,その資源価値を維持することである.そして地層処分をするのは核分裂生成物(FP)のみである.この簡素な化学処理プロセスの主要ステップは二つ; Uの選択的回収工程とTRUの総合抽出工程(これは核不拡散の要請と整合する),であり,将来的に運転するプルトニウム分離工程とソフトな窒素ドナーによるランタノイド除去工程,そしてオプションとしての長寿命FP分離工程なども含む.分離したU製品とTRU製品はそれぞれ仮焼・固化し将来の利用まで貯蔵する.抽出工程のほとんどで,CHON原則に合うアミド系抽出剤を用いる.本稿では,立体障害によりUのみを選択的に抽出する枝分かれモノアミドや,三座配位特性によりすべてのTRUを強力に抽出するジグリコールアミド抽出剤などの利用効果を説明して,ARTISTプロセスの技術的実現性を示した.


300002
ITER-FEATにおけるタングステン不純物の輸送解析
村上好樹* ; 天野恒雄* ; 清水勝宏 ; 嶋田道也 ; 小川雄一*
JAERI-Research 2001-049; Nov.2001,58p.

 1.5次元輸送コードTOTALに任意アスペクト比及び衝突周波数での不純物の新古典粒子束を計算できるコードNCLASSを結合し,ITER-FEATプラズマ中での高Z不純物の挙動を解析した.種々の密度分布に対して,タングステン原子分布及び線輻射パワーを評価した.密度分布が平坦で温度勾配による遮蔽が効果的な場合には全線輻射パワーはコロナ・モデルの1/2程度になることがわかった.核融合出力が700MW(Q=10)の場合,プラズマ性能を大きく劣化させることなくプラズマ境界でのタングステン密度7×1015/m3(電子密度の0.01%,Zettの増加が0.39)程度まで許容可能で,このときの線輻射パワーは約90MWになる.この値は制動放射等を含めると全加熱パワーの半分以上になり,ダイバータ部流入パワーが大幅に低下でき,ITER-FEATにおける高出力運転の可能性を示している.


300003
炭酸ガスレーザ干渉測定装置のための制御・データ処理システムの開発
千葉真一 ; 河野康則 ; 土屋勝彦 ; 井上昭*
JAERI-Research 2001-050; Nov.2001,59p.

 炭酸ガスレーザ干渉測定装置は,JT-60Uプラズマの中心部電子密度計測を目的として開発,運転されている.この装置の運転状態監視,JT-60Uの放電シーケンスに従った装置の制御,及び計測データの収集・高速処理・転送という統合的な機能を有する制御・データ処理システムを開発した.本システムは,主として2台のワークステーションを中心とするCAMACシステムから構成し,機能分担を明確にすることで高い信頼性を得ている.本システムにより,炭酸ガスレーザ干渉測定装置はJT-60U実験シーケンスに同期してデータ解析処理を速やかに行い電子密度データをルーチン的に提供することが可能となった.また,炭酸ガスレーザ干渉測定装置を用いた実時間密度帰還制御を行うための参照用実績密度信号についても,実時間処理機能により出力可能となった.


300004
ベクトル計算機を用いたCharacteristics法の高速計算
久語輝彦
JAERI-Research 2001-051; Nov.2001,39p.

 ベクトル計算機を用いて非均質中性子輸送計算法であるCharacteristics法の高速計算の研究を行った.ベクトル化手法としてOdd-Even Sweep(OES)及びIndependent Sequential Sweep(ISS)法を開発した.典型的な燃料集合体を対象として,両手法により集合体計算を行い,ベクトル計算の効果を調べた.その結果,両ベクトル化手法とも,ベクトル計算のスカラー計算に対する速度向上率15の高速演算を達成した.ISS法とOES法の比較という観点からは,最も時間を要する中性子伝播計算に要する計算時間に差がないこと,外部反復の収束性はISS法が優れていること,及びISS法の記憶容量はOES法の場合の1/5に節約できることがわかった.これらより,ISS法がベクトル化手法として優れていると結論付けられる.ベクトル計算においては,算術関数の代わりにテーブル内挿方式により指数関数を評価しても,全体では約20%の計算時間の節約にとどまる.粗メッシュリバランス法及びAitken加速法はともに有効であり,それらの組み合わせにより,収束に要する反復回数を1/4から1/5に低減できることを確認した.


300005
模擬可燃性廃棄物の燃焼に伴う放出ソースターム評価
阿部仁 ; 渡邊浩二* ; 田代信介 ; 高田準一 ; 内山軍蔵
JAERI-Research 2001-052; Nov.2001,18p.

 核燃料施設での火災事故事象を定量的に解析するためには,煤煙粒径分布や煤煙及びエネルギー放出速度等の放出ソースタームデータの整備が不可欠である.固体廃棄物や回収溶媒を模擬した模擬可燃性廃棄物を用いた燃焼試験を実施し,これら放出ソースタームの評価方法を検討した.模擬可燃性廃棄物としてゴム手袋と綿手袋が混在した場合,粒径が1μm以上の比較的大きな煤煙が綿手袋の炭化した残留物中に閉じ込められ,ゴム手袋のみの場合と比べて煤煙の放出率が低くなった.ゴム手袋の燃焼に伴う試験結果をもとに安全性解析コードCELVA-1Dを用いて上記ソースタームを評価した.CELVA-1D評価結果は事故解析ハンドブック(NUREG-1320)中で推奨されている計算パラメータを用いた計算結果とほぼ一致し,本試験でのCELVA-1Dを用いた放出ソースターム評価手法の妥当性が確認できた.


300131
自然循環方式小型舶用炉の船体動揺の影響及び流動安定性
頼経勉 ; 石田紀久
JAERI-Research 2001-053; Dec.2001,45p.

 原研では,海洋研究のニーズ調査をもとに海中調査船用超小型原子炉(DRX,SCR)の設計検討を行ってきた.これらは一次系には自己加圧,自然循環方式を採用しており,炉心出口の流体は,低クオリティの二相流であるため運転条件によっては密度波振動を発生する可能性がある.また,舶用炉特有の船体動揺があるため,一次系循環流は直接この影響を受ける.本原子炉の安定した運転を確保するため,船体動揺を模擬できるよう改良したRETRAN-02/GRAVコードを用いて,船体動揺時の影響及び本原子炉の流動安定性について解析的に調べた.この結果,船体動揺時においてもDRX及びSCRの安定な運転が可能であるということを確認するとともに,DRXにおいて流動不安定の原因となる自励振動の発生領域を得,定格運転状態は十分安定な領域にあることを確認した.


300132
高燃焼度(41〜61GWd/tU)BWR燃料の反応度事故時挙動
中村武彦 ; 草ヶ谷和幸* ; 吉永真希夫 ; 上塚寛
JAERI-Research 2001-054; Dec.2001,49p.

 冷温起動時の反応度事故を模擬した条件で高燃焼度BWR燃料をパルス照射し,燃料の温度,変形,破損,FPガス放出挙動を調べた.本研究で用いた燃焼度56GWd/tUまでの国産BWR燃料では,被覆管の水素吸収量は約100ppm以下であり脆化が小さいため,ピーク燃料エンタルピ607J/g(145cal/g)までの実験条件の範囲ではペレット−被覆管機械的相互作用(PCMI)による被覆管の脆性的な割れ(PCMI破損)は生じなかった.さらに燃焼度の高い燃焼度61GWd/tUのBWR燃料では,水素吸収量が150ppmを超え,燃料エンタルピ260〜360J/g(62〜86cal/g)でPCMI破損が生じた.この高燃焼度BWR燃料の破損挙動は本実験により初めて見いだされたものである.また,照射後試験の結果,BWR燃料では水素化物分布が比較的ランダムに分布していたためPWR燃料に比べて低い水素吸収量で破損が生じたものと判断された.また,実験と解析コードによる計算結果の比較により,PCMI破損をもたらす被覆管の変形は主にペレットの熱膨張によってもたらされること,被覆管の温度が上昇した場合にはFPガスによる変形が顕著になることなどが明らかになった.


300133
シビアアクシデント条件下の照射済燃料からの放射性物質放出挙動; VEGA-1実験の結果
日高昭秀 ; 中村武彦 ; 工藤保 ; 上塚寛
JAERI-Research 2001-055; Dec.2001,48p.

 シビアアクシデント条件下における燃料からの放射性物質放出を調べるVEGA計画の第1回目実験であるVEGA-1を1999年9月に行った.試験燃料は,燃焼度47GWd/tUのPWR燃料ペレット2個(被覆管無し)であり,大気圧,He雰囲気条件で2773Kまで昇温した.Csは1650K以上で放出し始め,最終的な放出割合は約85%に達した.Ruの最終的な放出割合は4.7%,CeとEuのそれはゼロであった.実験後に行った研究燃料に対するミクロ組織観察では,FPガス放出に伴って生じたと考えられる直径数μmの気泡が多数観測された.Cs放出に関して既存の放出モデルを用いて評価した結果,燃料と被覆管の共晶反応が生じる高温域で計算は実験より過大となった.Cs放出データをUO2結晶粒内の拡散係数で整理すると,アレニウス型にほぼ従うことから,Cs放出は粒内拡散が律速であったと考えられる.


300134
Dynamic behavior of transport in normal and reversed shear plasmas with internal barriers in JT-60U
Neudatchin, S. V.* ; 滝塚知典 ; 白井浩 ; 藤田隆明 ; 諫山明彦 ; 鎌田裕 ; 小出芳彦 ; Dnestrovskij, Y. N.*
JAERI-Research 2001-056; Dec.2001,32p.

 JT-60U中の内部輸送障壁(ITB)を持つ正及び負磁気シアプラズマ中の速い時間スケールとゆっくりした時間スケールの時間発展を調べた.弱いITBにおいて時間的に急激で空間的に広がりのある変動が,電子とイオンの熱拡散係数χに生じる.強いITBを持つ負磁気シア(RS)プラズマ中では,χの変動はITBの足部近傍に局在化する.さまざまなRSプラズマにおいて,安全係数がほぼ最小になるところで熱流束の変動が最大となる.χの急変及び鋸歯的崩壊によって誘起される熱パルス伝搬を解析し,強いITB領域内ではχの値は小さく熱ピンチはないことを確かめた.また,ELMで引き起こされるH-L遷移時とその回後のL-H遷移時のχの急激変動は,RSプラズマの弱いITB領域より内側の負シア領域にわたって非局在的に起きる.


300282
Magnetization of neutron star matter and implications in physics of soft γ repeaters
Kondratyev, V. N.*
JAERI-Research 2001-057; Jan.2002,74p.

 熱力学的扱いにより中性子星物質の磁化を考察する.量子効果から核種の磁化に鋭い磁場依存性が生じることを示す.原子核間の磁気的結合を考慮する事でその異常が中性子星の殻での磁気輸送の異常な飛びを引き起こす.そのようなノイズの性質は,ソフトγリピーターのバーストの統計を説明するのに好都合である.


300283
Comparison of 235U fission cross sections in JENDL-3.3 and ENDF/B-VI
河野俊彦* ; Carlson, A. D.* ; 松延広幸* ; 中川庸雄 ; 柴田恵一 ; Talou, P.* ; Young, P. G.* ; Chadwick, M. B.*
JAERI-Research 2001-058; Jan.2002,28p.

 JENDL-3.3とENDF/B-VIの235U核分裂断面積の比較を,微分データと積分データの両方に対して行う.核分裂断面積と核分裂比のデータを,実験データと詳細に比較する.また,スペクトル平均断面積を計算し,実験値と比較する.用いたスペクトルは,235U即発核分裂中性子スペクトル,252Cf自発核分裂中性子スペクトル,9Be(d,xn)反応中性子スペクトルである.235U核分裂スペクトルによる平均断面積では,ENDF/B-VIの評価値が実験データを再現する.一方,252Cf自発核分裂と9BeBe(d,xn)反応の中性子スペクトルでは,JENDL-3.3の方がENDF/B-VIよりも良好な結果を与える.


300284
Improvement of evaluated neutron nuclear data for 237Np and 241Am
中川庸雄 ; 岩本修 ; 長谷川明
JAERI-Research 2001-059; Jan.2002,84p.

 マイナーアクチニド核種の中で特に重要な237Npと241Amについて,JENDL-3.2に与えられている評価済核データを最近の測定データや評価済データと比較・検討を行った.その結果,JENDL-3.2の問題点を抽出し,実験データや最近の評価値をもとにその改善を行った.両方の核種とも,共鳴パラメータ,断面積,角分布,エネルギー分布,核分裂あたりの放出中性子数,などが改良された.データは10-5eVから20MeVで与え,ENDF-6フォーマットで編集した.


300285
BWR定常ポストCHF試験結果; 限界熱流束及びポストCHF熱伝達率(受託研究)
井口正 ; 岩城智香子* ; 安濃田良成
JAERI-Research 2001-060; Feb.2002,91p.

 従来のポストCHF試験に比べて,2MPa〜18MPaの広い圧力範囲,33kg/m2s〜1651kg/m2sの広い流量範囲,過熱度500Kまでの広いヒータ温度範囲で,定常ポストCHF試験を行い,沸騰遷移領域,限界熱流束,ポストCHF熱伝達率に関するデータを得た.試験体は,BWR燃料と同径・同長のヒータによる4×4管群流路とした.試験の結果,沸騰遷移は複数のグリッドスペーサの直下で生成し,加熱量の増加とともに,沸騰遷移領域は下方に伸長することがわかった.グリッドスペーサー上方は核沸騰状態であるのに対し,グリッドスペーサ下方は膜沸騰状態になる.したがって,限界熱流速は,グリッドスペーサからの距離に影響される.グリッドスペーサ直上の限界熱流束は,同じ局所条件で比べるとグリッドスペーサ直下の限界熱流束の約1.15倍であった.ポストCHF熱伝達は,伝熱体の加熱度が十分大きければ,蒸気乱流熱伝達が支配的であり,単相流の熱伝達相関式が適用できる.加熱度が十分には大きくない場合,ポストCHF熱伝達率は,単相流の熱伝達相関式による予測値よりも大きくなる.ポストCHF熱伝達率を単相流の熱伝達相関式による予測値で規格化することにより,質量流束の影響を表現できる.ただし,圧力,過熱度,位置の影響を表現できない.試験結果によれば,ポストCHF熱伝達率に及ぼす圧力,過熱度,位置の影響は,ヒータ温度及び位置の関数で表現できた.ポストCHF熱伝達率は,グリッドスペーサ直下で最小であり,グリッドスペーサから上流に離れる程増加する.グリッドスペーサ1スパン区間で,ポストCHF熱伝達率は約30%増加した.


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