研究開発報告書類


JAERI-Research
2002年


300454
OECD/NEA burnup credit criticality benchmarks phase IIIB; Burnup calculations of BWR fuel assemblies for storage and transport
奥野浩 ; 内藤俶孝* ; 須山賢也
JAERI-Research 2002-001; Feb.2002,181p.

 この報告書は,経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)の後援の下に燃焼度クレジット臨界安全専門家グループで実施されたベンチマーク問題フェーズIIIB の最終結果を示したものである.ベンチマーク問題では,BWR使用済燃料集合体モデルの原子個数密度に関する現行の計算コード及びデータ・ライブラリの組合せの予測能力を比較することを意図している.燃料集合体は,比出力25.6 MW/tHMで40 GWd/tHMまで燃焼,5年間冷却するものとした.ボイド率はチャンネルボックス内は一様で,燃焼中0,40,70%の一定値とした.7ヶ国,13機関から計16件の回答が提出された.計算されたアクチニド12核種,核分裂性核種20核種の原子個数密度は,平均値に対しておおむね±10%以内に収まった.しかし,幾つかの核種,特に155Eu及びガドリニウム同位体ではこの範囲を超えており,さらに検討を要する.ピンごとの燃焼度の傾向は参加者間でよく一致した.中性子無限増倍率k∞もボイド率0及び40%では互いによく一致したが,ボイド率70%では平均値から明らかに外れる結果があった.


310298
MOX粉体燃料の臨界事故の簡易評価
三好慶典 ; 山本俊弘 ; 中島健
JAERI-Research 2002-002; Mar.2003,30p.

 乾式のMOX燃料加工工程における臨界条件を評価するとともに仮想的な臨界事故時の総核分裂数の評価を簡易モデルに基づいて行った.本報告書では,MOX粉末の均一化混合を行うモデル容器を対象として,MOX粉末と減速材として作用する添加剤との混合物が臨界となり得る条件を調べた.臨界を超過する場合には,添加剤であるステアリン酸亜鉛が高温になって蒸散することによる減速材の消滅を臨界停止条件として,総核分裂数を評価した.また,簡易評価式を用いて初期パルス出力,初期パルスでの核分裂数,臨界停止までの総核分裂数の評価を行った結果,MOX粉末系では中性子寿命が短いために初期パルス出力は低濃縮ウラン溶液系よりも大きくなる.また,MOX粉末系での初期パルスでの核分裂数及び総核分裂数も,反応度温度係数が小さいことと密度が大きいことから低濃縮ウラン溶液系より大きくなることがわかった.


300455
ガドリニウムコンバータの中性子2次元検出型マイクロストリップガスチェンバーへの最適化
正岡聖 ; 中村龍也 ; 山岸秀志 ; 曽山和彦
JAERI-Research 2002-003; Feb.2002,22p.

 大強度陽子加速器計画における強力パルス中性子ビームを用いた散乱実験用の2次元中性子検出器(マイクロストリップガスチャンバー: MSGC)の開発が行われており,この検出器では,高い計数率・検出効率・位置分解能,動作安定,大面積化が求められている.本研究ではMSGCのコンバータとしてのガドリニウムの適正を検証した.まず0次元中性子検出器を用いた簡単な実験を行って検出効率を求めることによって,ガドリニウムコンバータの基本特性を調べた.さらにシミュレーションによって,MSCGでのキャピラリープレート配置に関する最適化を行った.その結果,コンバータとキャピラリープレートとの距離は短い方が有利であることがわかり,理論上はガドリニウムをMSGCのコンバータとして使用することが可能であることがわかった.


300456
Study on a new meteorological sampling scheme developed for the OSCAAR code system
Liu, X.* ; 富田賢一* ; 本間俊充
JAERI-Research 2002-004; Mar.2002,37p.

 確率論的安全評価のレベル3計算における重要なステップの一つに,気象シーケンスのサンプリングがある.従来,これは大気拡散評価に直線プルームモデルを用いたコードについて検討されており,OSCAARのような流跡線パフモデルのコードではより一層の検討が必要とされていた.本報告書では,OSCAARコードシステム用に人口分布を考慮に入れた新しい気象サンプリング法の開発について記した.新サンプリング法の開発に際しては,網羅していること,適切に層別化されていること,最適に配分されていること,実用的であることを基本原則とした.報告書には,新しいサンプリング手法の手順とその適用について議論がなされている.計算の結果,数少ない環境パラメータで気象シーケンスを最適に層別化することは極めて困難であるが,新手法は最も厳しい結果を生じる気象シーケンスを一つのグループの中に集約することができた.このグループに属するシーケンスの数は高々数十なので,確率論的事故影響コードシステムのさまざまな計算においても,この補累積分布関数の末端部分の計算値が比較的安定した結果となる.


300457
Reliability assessment of high energy particle induced radioactivity calculation code DCHAIN-SP 2001 by analysis of integral activation experiments with 14MeV neutrons
甲斐哲也 ; 前川藤夫 ; 春日井好己 ; 小迫和明* ; 高田弘 ; 池田裕二郎
JAERI-Research 2002-005; Mar.2002,65p.

 14-MeV中性子を用いた積分放射化実験解析を通して,高エネルギー粒子誘導放射能計算コードDCHAIN-SP 2001の信頼性評価を行った.解析を行った実験は,原研FNSのD-T中性子源を用いて行われた(1) 核融合炉材料の崩壊γ線測定実験,(2) 32種の核融合炉材料に対する崩壊熱測定実験,(3)水銀の積分放射化実験,の3件である.解析の結果,DCHAIN-SP 2001による計算は,(1)〜(3)の実験値をそれぞれ30%,20%,20%以内で予測することができた.Beteman方程式の解法アルゴリズム,及び20MeV以下の放射化断面積と付属の崩壊データについて適切であるという結論が得られた.


300604
BWR核熱不安定模擬試験装置THYNCの試験部オリフィス及びスペーサの流動抵抗
井口正 ; 浅香英明 ; 中村秀夫
JAERI-Research 2002-006; Mar.2002,152p.

 筆者らは,BWR炉心での核熱水力不安定性の機構を解明するために,THYNC実験を行っている.THYNC実験では,実炉の炉心流動を忠実に模擬すべく,試験部出口にオリフィス抵抗体を,試験部内に丸セル型スペーサを設置している.THYNC実験データの解析には,オリフィス抵抗体やスペーサの流動抵抗を知っておく必要がある.そこで,THYNC試験装置のオリフィス抵抗体及びスペーサの単相流時及び二相流時の流動抵抗を測定した.その結果を用いて,流動抵抗のパラメータ依存性を検討した.併せて,分離流などの基本的な二相流モデルの二相流増倍係数に対する適用性を検討した.その結果,以下のことがわかった.(1)単相流時の流動抵抗は,Re数の関数として,圧力,質量流束の影響を表現できる.また,流動抵抗の予測には,従来の予測法により,流動抵抗を精度よく予測できる.ただし,スペーサについては,流路占有率などの複雑な形状依存性があるため,流動抵抗の高精度の予測には,実験で実験定数を定める必要があった.(2)二相流増倍係数とクオリティの関係は,圧力2MPa〜7MPaでは線型関係とみなせる.二相流増倍係数とクオリティの関係は,圧力,形状に依存し,質量流束の影響は小さい.(3)オリフィス及びスペーサの二相流増倍係数は,分離流モデルで±20%の精度で予測できる.適用範囲は,圧力2MPa〜7MPa,質量流束133kg/m2s〜667kg/m2sである.一方,均質流モデルでは,実験定数を導入しないと高精度の予測はできない.形状に依存した実験定数を導入することにより,±20%の精度で予測できる.


300710
Irradiation effects on plasma diagnostic components, 2
西谷健夫 ; 四竈樹男* ; 杉江達夫 ; 河西敏 ; 石塚悦男 ; 河村弘 ; 角田恒巳 ; 八木敏明 ; 田中茂 ; 鳴井實* ; 深尾正之* ; 横尾典子* ; Reichle, R.* ; Snider, R.* ; 中山尚英* ; 曽根勇* ; 阿部充志* ; 山本新
JAERI-Research 2002-007; Mar.2002,149p.

 ITER工学R&Dの一環として計測機器要素の照射試験を核分裂中性子,γ線,14-MeV中性子を用いて実施した.14-MeV中性子及びCo-60γ線照射下におけるKU-1溶融石英の紫外域透過率を測定したところ,200-300nmの波長域に著しい透過損失が生じることがわかった.5種類のITER共通資料の光ファイバーをJMTR及びCo-60γ線で照射試験を行った.KS-4V,KU-H2G及びフッ素添加ファイバーは極めて高い耐放射線性を示し,ITERの真空容器外側付近まで導入できる見通しを得た.マイカ薄膜ボロメータを0.1dpaまでJMTRで照射した.第1照射サイクルの停止時にボロメータの断線が発生し,金を蒸着した抵抗体は,ITERにおいて問題であることを示した.磁気プローブもJMTRで照射試験を行った.磁気プローブに長時間デジタル積分器を接続したところ,1000sに対し,10-40 mVsのドリフトが観測されたが,照射誘起起電力ばかりでなく,積分器自体のドリフトによる発生したと考えられる.1000sの積分時間に対し,ドリフトを0.5 mVs以下に抑えうる,ITER仕様の磁気プロープをMIケーブルを用いて製作できる見通しが得られた.


300605
高性能燃料被覆管材質の研究; 平成11〜12年度(フェーズ1)報告書(共同研究)
木内清 ; 井岡郁夫 ; 橘勝美 ; 鈴木富男 ; 深谷清* ; 猪原康人* ; 神原正三 ; 黒田雄二* ; 宮本智司* ; 小倉一知*
JAERI-Research 2002-008; Mar.2002,63p.

 本研究は,平均燃焼度100GWd/tを目指したABWR用の超高燃焼度MOXを念頭にした「高性能燃料被覆管材質の研究」のフェーズ1である.フェーズ1は,平成10年度に実施した基礎調査結果を踏まえて,平成11年度と平成12年度の2年間にわたり実施した.フェーズ1では,現用Zr系合金の使用経験データを解析して,超高燃焼度化にかかわる長期耐久性の支配因子を摘出及び高性能被覆管の要求特性に照らして耐食合金間の相互比較,フェーズ2の中性子照射試験等の基礎評価試験用候補材の選定を行った.


300606
確率論的地震危険度評価に基づく設計用想定地震の設定法
廣瀬次郎* ; 村松健 ; 奥村俊彦* ; 瀧諭*
JAERI-Research 2002-009; Mar.2002,220p.

 本報告は,確率論的地震危険度評価に基づく設計用想定地震の設定法に関する研究成果をまとめたものである.近年地震に対する確率論的安全評価手法である地震PSAの評価項目の1つを構成している確率論的地震危険度解析を拡張し,将来サイトに影響を及ぼす可能性のある地震の諸元あるいは地震動を評価する手法が,米国NRCの研究や我が国石川,亀田の研究により開発されている.このようにして設定される地震を確率論的想定地震(PBSE)と呼ぶ.本研究は,PBSEの概念に基づき,その概念を定式化し国内サイトを対象とした設定法を検討することと,そのことを通じて耐震設計への有用性の見通しを得ることを目的としたものである.このため,(1)PBSEを設定するために必要な地震活動や地震動伝播特性等に関する評価手順の検討,(2)石川らの概念に基づくモデルサイトに対する想定地震設定に関する検討,(3)評価条件の不確実さに対する評価法の検討の計3項目に関する検討を行なった.成果として,石川らの概念に基づく設定法は,原子力プラントサイトを対象に,評価条件の設定に伴なう不確実さを考慮して耐震設計に用いるPBSEを設定するための評価技術として有用であることが示された.


300854
Nuclear reactions in ultra-magnetized supernovae
Kondratyev, V. N.*
JAERI-Research 2002-010; Jun.2002,32p.

 超新星や中性子星に付随する超強磁場中での核反応を統計模型をもとに議論した.その結果γ線放出を伴う中性子捕獲過程については,磁場による準位密度の変化とγ遷移エネルギーの変化が主要なメカニズムとして効くことがわかった.さらに,超新星コアにおけるr-プロセス核の生成について検討した.


300770
JRR-4熱外中性子ビームのin vitro生物学的効果; フリービーム条件並びにファントム条件での測定(協力研究)
山本哲哉* ; 山本和喜 ; 松村明* ; 熊田博明 ; 岸敏明 ; 堀直彦 ; 鳥居義也 ; 堀口洋二 ; 能勢忠男*
JAERI-Research 2002-011; May 2002,56p.

 本研究では,JRR-4熱外中性子ビームに対する放射線生物学的評価によりその特性を明らかにし,熱外中性子ビームによる開頭BNCTに向けた課題と方向性について検討する.熱外中性子ビームについて,フリービーム条件と水ファントム条件での物理線量測定並びにin vitro生存率測定を行い,BNCTにおける各線量成分(速中性子線量,窒素線量,γ線量,ホウ素線量)とそれぞれの生物学的効果比(RBEneutron,RBEbeam,CBEboron)を算出し,混合中性子ビーム及び従来の熱中性子線主体の熱中性子ビームと比較した.ホウ素線量に対する生物学的効果比CBEboronでは,ホウ素化合物による違いも検討に加えた.フリービーム条件では,10B存在・非存在下の全ての細胞生存率測定において,同一物理線量に対して熱外中性子ビームで最も高い細胞致死効果を認めた.JRR-4熱外中性子ビーム,熱中性子ビームI,熱中性子ビームIIのそれぞれに対するビーム単独RBEbeam値は1.22±0.16,1.23±0.16,1.21±0.16,RBEneutron値は2.50±0.32,2.34±0.30,2.08±0.28,CBEboron値は3.99±0.24,3.04±0.19,1.43±0.08であった.本研究で示したRBEの実験的決定法は異なるBNCT臨床研究間の中性子ビーム比較に応用できる.


300855
高温工学試験研究炉(HTTR)初装荷燃料の先行高燃焼度照射試験 (共同研究)
沢和弘 ; 角田淳弥 ; 植田祥平 ; 高橋昌史* ; 飛田勉* ; 林君夫 ; 斎藤隆 ; 鈴木修一* ; 吉牟田秀治* ; 加藤茂*
JAERI-Research 2002-012; Jun.2002,39p.

 本報告書は,平成7年度から開始した原研と原燃工との共同研究「連続被覆法により製造した高温工学試験研究炉用燃料の照射健全性実証試験」の結果を示すものである.HTTR初装荷燃料は日本で初めて大量生産を行った高温ガス炉燃料であり,製造過程における品質管理に加え,照射健全性を確認するための照射試験を行った.照射はJMTRの94F-9Aスィープガスキャプセルで実施した.照射試料は初装荷燃料の製造ラインから抜取った.照射開始時の核分裂生成物ガスの放出率から,照射試料には製造時の貫通破損粒子が含まれていないことがわかった.また,HTTRの最高燃焼度3.6%FIMA,最高高速中性子照射量1.5×1025m-2,(E>0.18MeV)まで燃料は破損することなく,健全であった.さらに,これらの値の約2倍である燃焼度7.0%FIMA,高速中性子照射量3.1×1025m-2まで照射を継続したが,著しい追加破損は見られなかった.


300856
Evaluation of neutron-induced reactions on 236Pu for JENDL-3.3
岩本修 ; 中川庸雄
JAERI-Research 2002-013; Jul.2002,18p.

 10eVから20MeVの入射中性子に対する236Puの断面積と放出中性子の角度分布及びエネルギー分布を統計模型とチャンネル結合光学模型を用いて評価した.計算結果はENDF-6フォーマットに編集し評価済核データライブラリJENDL-3.3に格納した.10eVから30keVを非分離共鳴領域とし,断面積を再現する平均の共鳴パラメータを求めた.核分裂中性子のエネルギー分布を与えるMaxwell温度を計算した断面積を用いて系統式から推定した.


300857
確率論的安全評価手法GSRW-PSAによる地層処分システムの不確かさ解析; パラメータ不確かさ及び天然バリアの概念モデル不確かさの検討
武田聖司 ; 木村英雄
JAERI-Research 2002-014; Jul.2002,20p.

 地層処分の安全評価に伴う不確かさのうち,パラメータ不確かさとモデル不確かさに起因した影響評価を目的として,確率論的評価手法(GSRW-PSA)の開発を行った.不確かさの影響評価に先立ち,人工バリア及び天然バリア中の核種移行評価モデルに関して決定論的なベンチマーク計算を行い,評価コードの特性・適用性を明らかにした.次に,GSRW-PSAを用いて,HLW処分の重要核種であるCs-135及びSe-79を対象とした人工バリア及び天然バリアに関するパラメータ不確かさ解析を行った.さらに,天然バリアにおける地質媒体の概念化の違いとして,多孔質媒体と亀裂性媒体による近似モデルを想定し,概念化の違いによる影響の評価を実施した.


300921
癌治療を目的とした新規放射線増感剤の開発
赤松憲* ; 横谷明徳
JAERI-Research 2002-015; Aug.2002,30p.

 原子の放射線吸収断面積に着目した癌治療用新規放射線増感剤の探索・設計・合成を行い,その化学物質としての細胞毒性ならびにX線に対する放射線増感効果を調べた.評価にはヒト大腸癌細胞を用いた.PBBA誘導体(含臭素)は,増感効果は確認できなかったが,三ヨウ化安息香酸ナトリウムに関してはその効果が確認された.さらに膜損傷増強を目的とした,細胞膜局在性放射線増感剤(セチルFITC,セチル臭化FITC,セチルヨウ化FITC)では,これらすべての細胞膜集積性を確認した後,前者2つについて増感効果を評価した.その結果,両者とも同程度の増感作用が認められた.


301010
8オキソグアニン損傷DNAと修復酵素hOGG1複合体の分子動力学的シミュレーション
Pinak, M.
JAERI-Research 2002-016; Sep.2002,31p.

 突然変異を誘発するDNA酸化損傷 である8-oxoGについて,損傷DNAの単独存在下,及びヒト修復酵素オキソグアニングリコシレース1 (hOGG1)との共存下で分子動力学的シミュレーションを行い,DNA分子の構造変化とDNA-酵素複合体の形成に関わる動力学的過程の検討を行った.シミュレーションには,中心位に8-oxoG分子を挿入したB型DNAヌクレオチド鎖を用いた.DNAのみのシミュレーションでは,水素結合の切断によって部分的に構造が破壊されたB型DNAが観察され,8-oxoG挿入位から1塩基対分離れた相補鎖側のアデニンがDNA二重鎖からフリップアウトしていた.DNAと修復酵素hOGG1共存下のシミュレーションでは,分子動力学的シミュレーション開始後500psでDNA-酵素複合体が形成され,シミュレーションが終了する1ns後まで安定していた.アルギニン313のN末端は,8-oxoGを持つヌクレオチドのリン酸ジエステル結合に近接し,酵素のアミノ酸とDNA損傷との化学反応を可能にしている.8-oxoGの5'位のリン酸ジエステル結合は,アルギニン313のN末端に近接した位置に移動していた.さらに,DNAと酵素の近接箇所では水分子を介した水素結合が形成され,複合体の安定性を高めていた.


300922
高レベル廃液からのアクチニド分離プロセスの研究(共同研究)
森田泰治 ; 館盛勝一 ; 駒義和* ; 青嶋厚*
JAERI-Research 2002-017; Aug.2002,20p.

 本レポートは,核燃料サイクル開発機構(サイクル機構)と日本原子力研究所(原研)との間で,「高レベル廃液からのアクチニド分離プロセスの研究」のテーマのもと,平成10年9月より平成14年3月末までの3年半の間実施した共同研究の成果をまとめたものである.共同研究の目的は,サイクル機構で開発中のTRUEX/SETFICSプロセス及び原研で開発中のDIDPA抽出プロセスのそれぞれのアクチニド分離プロセスについて総合的な評価を行って,共通的な課題を摘出し,効率的なプロセス開発に資することにある.評価検討の結果,アクチニド分離の主工程は異なっていても,廃溶媒の処理やDTPA廃液の処理等の分離後の処理,溶媒リサイクル等の副次的な工程では多くの共通的な課題が存在することが明らかになった.工学実証規模に移すためには,これらの課題を解決するとともに,副次的な工程を含むプロセス全体について一貫した試験を実施することが必要であると結論した.さらに,プロセス全体について高い視点から評価すると,経済性向上と二次廃棄物発生量低減の2項目が重要であり,これらを念頭に置いたうえで,より合理的で効率的なアクチニド分離プロセス開発のため,今後も継続して研究開発を推進することが必要である.


310001
低減速スペクトル炉開発のための稠密格子体系PWR圧力条件での限界熱流束実験
新谷文将 ; 中塚亨 ; 頼経勉 ; 呉田昌俊 ; 吉田啓之 ; 石川信行 ; 佐藤隆 ; 渡辺博典 ; 大久保努 ; 岩村公道 ; 秋本肇
JAERI-Research 2002-018; Oct.2002,37p.

 燃料棒間ギャップ幅が1mm程度の稠密炉心を有する低減速スペクトル炉の成立性評価上重要な限界熱流束評価用基礎データの取得と限界熱流束評価手法の適用性の検討のため,7本バンドル,ギャップ幅1.5,1.0及び0.6mm,PWR圧力条件での基礎実験を実施した.実験の結果,質量流速及びサブクール度が大きいほど,質量流束が2,000kg/m2/s程度より小さな領域ではギャップ幅が広いほど限界熱流束は大きくなることがわかった.また,高クオリティ域でのCHFの発生等の実験結果から,液膜ドライアウト型のCHFの可能性が示唆された.KfK相関式を組み込んだサブチャンネル解析コードCOBRA-IV-Iを実験解析に適用した結果,解析で得られる限界熱流束は実験値より10%から60%低い値であった.このことから,本解析手法は,対象とした体系に対して大きな余裕をもって限界熱流束を評価できることがわかった.


310002
D-T中性子照射による低放射化フェライト鋼F82Hの放射化特性の実験的研究
寺田泰陽* ; 落合謙太郎* ; 佐藤聡 ; 和田政行* ; Klix, A.* ; 山内通則* ; 堀順一* ; 西谷健夫
JAERI-Research 2002-019; Oct.2002,70p.

 低放射化フェライト鋼 F82Hは核融合炉の有力な構造材料である.核融合中性子源FNSを用いて,F82Hの放射化特性を得ることを目的として原型炉ブランケット模擬体系に対するD-T中性子照射試験を行い,F82Hシート,クロム箔,タングステン箔における放射性核種56Mn,54Mn,51Cr,187Wの生成反応率を測定した.併せて,評価済み核データJENDL-3.2とFENDL/E-2.0を用いてモンテカルロ輸送コードMCNPによる計算値との比較検討を行った.計算結果は,56Mn,54Mn,51Crともに10〜20%程度の精度で測定結果と一致した.しかし,タングステンに関しては,30〜40%の精度であることがわかった.また,タングステンの放射化断面積に使用する核データによって大きく計算結果が変わり,タングステンの中性子捕獲反応の共鳴領域における断面積評価に核データによって相違があることを示唆する結果となった.


301107
大口径CsLiB6O10結晶を用いたNd:ガラスレーザーの高効率・高エネルギー第二高調波発生
桐山博光 ; 井上典洋* ; 山川考一
JAERI-Research 2002-020; Sep.2002,13p.

 大口径CsLiB6O10(CLBO)結晶を用いて高エネルギーグリーンレーザー光の発生を初めて行った.34Jの入射1064-nm Nd:ガラスレーザー光に対して25Jの532-nmグリーン出力光が得られた.370MW/cm2の低い入射Nd:ガラスレーザー光強度に対して74%の高い変換効率が得られた.このグリーン出力エネルギーはCLBO結晶を用いて報告されている中で最も高い値である.


310003
溶融シリコンの水蒸気爆発に関する研究
森山清史 ; 丸山結* ; 中村秀夫
JAERI-Research 2002-021; Nov.2002,36p.

 シリコンは,軽水炉の炉心構成材料であるジルコニウムと同様に酸化し易い材料であり,また,半導体産業で溶融物が扱われるため,その水蒸気爆発挙動に関心がもたれている.そこで,シリコン溶融物の水蒸気爆発特性及び水蒸気爆発における酸化反応の影響について実験によって調べた.実験は水プールへ溶融物を投下する体系で行い,2回の実験でともに激しい自発的水蒸気爆発が発生した.エネルギー変換率は従来のテルミット溶融物による実験と比較して同等からやや大きい程度で4〜9%であり,溶融物の細粒化はこれまでの実験よりかなり進んでおり,デブリの質量中央径は65〜85μmであった.デブリ表面の酸化膜に関する分析により,5μm程度の厚さの酸化膜が認められ,シリコンの数%が酸化した可能性がある.


310091
ベイズ逆投影法によるCT画像再構成
春山満夫 ; 高瀬操* ; 岩崎信* ; 飛田浩*
JAERI-Research 2002-022; Dec.2002,91p.

 放射性廃棄物の非破壊測定技術開発の一環として,廃棄物ドラムの内部情報(物質性状)を把握できるCT法として,ベイズ逆投影法(Bayes Back Projection, BBP)による画像再構成プログラムを開発した.一般的なCT断面画像再構成手法として,フィルタ−補正逆投影法(Filtered Back Projection, FBP)が良く知られているが,今回報告する断面画像再構成手法は,ベイズ推定法をもととした逆問題解法をCT画像再構成問題に適用したものである.本手法は,測定回ごとの投影データを即座に断面画像に反映できる画像逐次改良型であるため,断面画像の修練をリアルタイムで見ることができるだけでなく,関心領域のみの画像再構成を行うことも可能な方法である.今回開発した再構成プログラムはX線XT用のものであるが,中性子イメージングや陽電子断層撮影(Positron Emission Tomography, PET)などの断面画像再構成にも適用することができ,利用範囲は広いものである.


310004
温度遷移による高燃焼度PWR燃料被覆管の機械特性変化
永瀬文久 ; 上塚寛
JAERI-Research 2002-023; Nov.2002,23p.

 軽水炉の異常過渡や事故時の燃料棒健全性を評価するための基礎データを得ることを目的に高燃焼度PWR燃料被覆管を673〜1173Kで0〜600s間加熱し,室温においてリング引張試験を実施した.試験の結果から,加熱温度と加熱時間に依存した被覆管強度と延性の変化が明らかになった.温度遷移による機械特性の変化は,主に,照射欠陥の回復,ジルカロイの再結晶,相変態,それらに伴う水素化物析出形態の変化に対応しているものと考えられる.また,未照射被覆管との比較により,高温においても短時間では照射の影響が消失しない可能性が示された.合わせて,高燃焼度PWR被覆管の半径方向水素濃度分布を測定し,被覆管外表面部で約2400wtppmという高濃度の水素を検出した.このような高濃度の水素集積は,高燃焼度PWR燃料被覆管の延性低下や加熱後の延性変化と密接に関連すると考えられる.


310005
三角柱形状拡散ノード法コードにおける収束加速法の適用性の検討
藤村統一郎* ; 奥村啓介
JAERI-Research 2002-024; Nov.2002,27p.

 低減速スペクトル炉等の6角形状の炉心を解析する拡散コードの原型版を開発し,その反復解法を高速化するため,さまざまな収束加速法の適用性について検討した.本3次元コードMOSRA-Prismは,6角形状の炉心を正3角柱に分割し,その中の中性子束分布を3次の多項式で近似する多項式展開ノード法に基づいている.多群拡散コードとしての反復解法は,通常の内側反復法と外側反復法を採用するが,内側反復に適応的加速法,外側反復に中性子源外挿法を適用し,その有効性を確認した.本報告書では,コードの数値解法の元となる多項式展開ノード法の定式化の概要を説明するとともに,さまざまなサンプル計算で得られた,収束加速法の局所的な効率及び全体的な効率について検討する.また,コード開発過程で新たに導出した真空境界条件の一般的な記述法についても述べる.


310006
放射線輸送計算によるJCO臨界事故時の線量当量率分布評価
坂本幸夫
JAERI-Research 2002-025; Nov.2002,34p.

 原子力施設の防災対策では,施設内外での放射線の線量当量率分布及びエネルギースペクトルの評価が必要であり,施設独自の建家構造を考慮した詳細解析には3次元放射線輸送計算コードが有用なツールとなる.平成11年9月30日に発生したJCOウラン加工工場の臨界事故解析を,モンテカルロ法の放射線輸送計算コードで行い,線量率分布及びエネルギースペクトルの信頼性,敷地外側での線量率分布に影響する因子を検討した.事故現場の転換試験棟を直接見通すことのできる事務棟2階会議室での実測値を再現し,「中性子計数率の時間変化パターン」に従った臨界状態の出力を満たす放射線輸送計算の条件を検討した.壁材及び天井材に用いられている軽量気泡コンクリートに水分量を0.15g・cm-3程度追加すれば,妥当な結果が得られることを見いだした.また,他のモニタリング位置に関してはファクター3の範囲内で実測値を再現できる値を得た.さらに,事故終息後のγ線の線量当量率評価から,臨界直後の変動の大きい期間の核分裂数とその後の事故終息までの変動の小さい期間の核分裂数の比率を評価し,「中性子計数率の時間変化パターン」と矛盾のないことを確認した.


310007
高温ガス炉用炭素繊維強化炭素複合材料の開発
曽我部敏明* ; 石原正博 ; 馬場信一 ; 小嶋崇夫 ; 橘幸男 ; 伊与久達夫 ; 星屋泰二 ; 平岡利治* ; 山地雅俊*
JAERI-Research 2002-026; Nov.2002,22p.

 高温工学に関する先端的基礎研究のうち,高温ガス炉技術の高度化のための原子炉要素技術の研究開発として炭素繊維強化炭素複合材料(C/C複合材料)製制御棒被覆管の研究開発を進めている.また,実用化に反映可能となる物性予測,評価に関する基礎的な研究を「耐熱セラミックス複合材料の照射損傷機構に関する予備試験」の一環として進めている.本報告は,これまで行ってきたC/C複合材料に関する研究開発についてまとめたものである.開発に当たっては,材料特性,構造物の製作可能性,安定供給性,コストなどを考慮し,C/C複合材料の試作・検討により有望な材料を開発した.材料特性としては,引張強さや曲げ強さ等の機械的強度が高いこと,破断ひずみが大きくかつ靭性が高いこと,中性子照射に対して寸法変化が少なく安定性が高いこと等を考慮している.その結果,炭素繊維としてポリアクリロニトリル系の平織りクロス,マトリックス材としてピッチを用い,さらに耐照射損傷性を高めるための特別な熱処理及び原子炉級に不純物を除去する高純度化を施した2次元炭素繊維強化炭素複合材料(2D-C/C複合材料)を開発した.


310008
不要RFの抑制によるジャイロトロンの高性能化
春日井敦 ; 坂本慶司 ; 林健一* ; 高橋幸司 ; 庄山裕章* ; 梶原健* ; 池田佳隆 ; 假家強* ; 満仲義加* ; 藤井常幸 ; 今井剛
JAERI-Research 2002-027; Nov.2002,57p.

 ジャイロトロン内に発生する不要RFは,ジャイロトロンの長パルス化あるいは高効率化等の性能向上を妨げている要因の1つである.ジャイロトロンの内部に発生する不要RFには,(1)ビームトンネルにおける寄生発振,(2)放射器における寄生発振,(3)ジャイロトロン内部の散乱RFがある.ビームトンネルにおける寄生発振は,ビームトンネルの表面に炭化珪素材を適用することで完全に抑制することができた.その結果,ジャイロトロンの空胴共振器における主モードの発振効率を従来の約20%から30%以上に改善でき,高効率動作の実現を達成した.放射器の寄生発振については,空胴共振器での発振効率を高めることで軽減できることを明らかにした.ジャイロトロン内部の高周波回路の回折損失に起因する散乱RFはジャイロトロン出力の10%以上あることが明らかとなったが,冷却の工夫及びDCブレークの材質の変更により,動作を制限する要因にはなっていない.以上のように,寄生発振を抑制したこと及び散乱RFを管外で処理し,散乱RFに起因する内部加熱に対する冷却の強化により1MW-10秒レベル(0.9MW-9.2秒)の長パルス動作が可能となった.


310009
Neutron and proton nuclear data evaluation for 235U and 238U at energies up to 250 MeV
Konobeyev, A. Y.* ; 深堀智生 ; 岩本修
JAERI-Research 2002-028; Dec.2002,69p.

 中間エネルギーにおけるウラン同位体235Uと238Uの核データ評価の基本的な内容を述べる.チャンネル結合光学モデルを使用し全断面積,反応断面積,散乱断面積の角度分布及び透過係数を求めた.励起原子核からの中性子と荷電粒子放出を直接,前平衡,蒸発モデルを用いて求めた.評価した中性子データは20MeV以下のデータのJENDL-3.3と合わせることにより,10-5eVから25MeVまでの全エネルギー領域でのデータセットが得られた.陽子データの評価は1から250MeVまで行った.


310010
Nuclear data evaluation for 238Pu, 239Pu, 240Pu, 241Pu and 242Pu irradiated by neutrons and protons at the energies up to 250 MeV
Konobeyev, A. Y.* ; 深堀智生 ; 岩本修
JAERI-Research 2002-029; Dec.2002,48p.

 質量数238から242までのプルトニウム同位体に対する核データの評価を行った.中性子データは20から250MeVまで評価を行い,20MeVでJENDL-3.3とつなげた.陽子データの評価は1から250MeVまで行った.チャンネル結合光学モデルを用い,弾性散乱,非弾性散乱の角度分布及び透過係数を求めた.前平衡過程の励起子モデルとHauser-Feshbachの統計モデルにより,励起原子核からの中性子及び荷電粒子の放出を求めた.本評価は250MeVまでのプルトニウム同位体に対する評価済ファイル作成として,初めてのものである.


310011
最尤法を用いた反応度と中性子源強度の決定
西原健司 ; 岩永宏平* ; 山根剛 ; 岡嶋成晃
JAERI-Research 2002-030; Dec.2002,63p.

 中性子源の存在する臨界実験装置において,定常状態から反応度を加えるなどして,他の定常状態に移行するような実験では,反応度と中性子源の変化が終息した後に中性子束が過渡変化している.この状態を解析して,その区間における反応度や中性子源強度,あるいはその両方を得る手法として,一般に逆動特性法(IK法)を用いることが出来る.しかし,従来の解法では測定された出力の誤差を考慮した,最も尤度の高い解を求めることや,得られた測定値の誤差を評価することができなかった.本研究では,最尤法を適応して,もっとも尤度の高い反応度と中性子源強度を決定し,その誤差を得る手法を開発した.また,FCAのロッドドロップ実験に対して本手法を適用し,手法の妥当性を確認した.


310187
Study of ultra-high gradient wakefield excitation by intense ultrashort laser pulses in plasma
小瀧秀行
JAERI-Research 2002-031; Dec.2002,88p.

 レーザープラズマ相互作用の非線形現象,高強度レーザーによるウェーク場励起及び高ピーク電流電子発生について調べた.自己集束をともなってのガスのイオン化によって,広い連続波長のブルーシフトが起こる.この通常ブルーシフトは,レーザー強度,プラズマ密度に依存する.しかし,レーザーのスペクトルが,レーザー強度やプラズマ密度に無関係に一定の波長にシフトする現象を発見した.この現象をわれわれは「異常ブルーシフト」と呼んだ.高強度レーザーはプラズマ中にウェーク場を励起する.2TW,50fsのレーザーにより励起したガスジェットプラズマ中のウェーク場の時間分解周波数干渉測定を行い,この測定に世界で初めて成功し,20GeV/mという高エネルギー加速のための高いウェーク場を測定できた.周波数干渉計によるポンプ−プローブシステムと異常ブルーシフトは,高エネルギー電子ビームのインジェクターとしてのオプティカルインジェクションに成り得る.1次元の粒子シミュレーションにより,高品質電子ビーム加速の結果を得,これによりレーザーウェーク場による,高品質高エネルギー電子加速の可能性を示すことができた.


310012
Nuclear data evaluation for 237Np, 241Am, 242gAm and 242mAm irradiated by neutrons and protons at energies up to 250MeV
Konobeyev, A. Y.* ; 深堀智生 ; 岩本修
JAERI-Research 2002-032; Dec.2002,36p.

 237Np,241Am,242gAm,242mAmに対する核データの評価を行った.中性子データは20から250MeVのエネルギー領域で評価し,20MeVでJENDL-3.3とつなげた.陽子データの評価は1から250MeVの範囲で行った.チャンネル結合光学モデルを用いて,弾性,非弾性散乱断面積の角度分布及び透過係数を求めた.前平衡過程の励起子モデルとHauser-Feshbachの統計モデルを使用し,励起原子核からの中性子及び荷電粒子の放出を求めた.本評価は250MeVまでの237Np及びアメリシウム同位体に対する評価済ファイル作成として,初めてのものである.


310299
Inferring Zeff spatial profile from background light in incoherent Thomson scattering diagnostic
内藤磨 ; 波多江仰紀
JAERI-Research 2002-033; Mar.2003,9p.

 トムソン散乱計測機器を用いて,電子温度分布,電子密度分布と同時にプラズマの有効荷電数(Zeff)分布を計測する方法について報告する.通常は正味の散乱光子数を求めるために散乱光からの差し引きだけに使われる背景光のデータは制動放射光の視野積分の情報を含んでいる.シミュレーションによる解析の結果,不純物線からの背景光への寄与が制動放射光の1割以下であれば,この背景光のデータを用いることにより十分な精度で有効荷電数分布を再構成できることを明らかにした.


310013
Adsorption mechanisms and models of 85Sr, 237Np, 238Pu and 241Am in loess media (Joint research)
田中忠夫 ; 向井雅之 ; 前田敏克 ; 松本潤子 ; 小川弘道 ; Li, S.* ; Wang, Z.* ; Wang, J.* ; Guo, Z.* ; Zhao, Y.*
JAERI-Research 2002-034; Dec.2002,20p.

 85Sr(II),237Np(V),238Pu(IV)及び 241Am(III)の黄土への吸着メカニズムと吸着モデルを吸着脱離実験結果に基づき検討した.85Sr及び237Npの分配係数は238Pu及び241Amより2〜3桁小さい値であった.分配係数が小さな85Sr及び237Npの黄土への吸着は,主にイオン交換によって支配されていた.一方,黄土に吸着した大部分の238Pu及び241Amは,鉄やマンガンの水酸化物・酸化物や腐植物質との選択的な化学結合によって支配されていた.得られた吸着脱離実験結果に基づき,黄土中における放射性核種の移行を解析する手法を確立するため,吸着の可逆性,反応速度等を考慮した吸着モデルを提案した.


310014
Re-evaluation of neutron nuclear data for 242mAm, 243Am, 99Tc and 140Ce
中川庸雄 ; 岩本修 ; 長谷川明
JAERI-Research 2002-035; Dec.2002,94p.

 重要マイナーアクチニド核種である242mAm及び243Amと核分裂生成物核種99Tc及び140Ceについて,JENDL-3.2に与えられている評価済核データを最近の測定データや評価済みデータと比較・検討を行った.その結果,データの問題点を抽出し,その改善を行った.242mAmと243AmについてはMaslov et al.による最近の評価値が優れていることがわかり,それをさらに改善して再評価値とした.99Tcと140Ceについては,共鳴パラメータや計算に使用する光学模型パラメータの改善などを行い,連続領域の断面積も再計算し,JENDL-3.2のデータを改善した.データは10-5eVから20MeVで与え,ENDF-6フォーマットで編集した.今回の結果は,JENDL-3.3に採用された.


310575
生物用非弾性散乱装置DYANAの概念設計
柴田薫 ; 田村格良* ; 曽山和彦 ; 新井正敏* ; 新村信雄
JAERI-Research 2002-036; Mar.2003,30p.

 生体高分子,生体物質及び関連するソフトマターの動的構造を研究することを主たる目的として計画,設計されている生物用非弾性散乱装置DYANAの最適化デザインの検討結果について述べる.本装置は,日本原子力研究所東海研究所において建設が進められている大強度陽子加速器施設プロジェクトのなかの物質・生命科学実験施設パルス中性子源に設置することが提案されている.DYANA分光器は逆転配置型結晶解析分光器でカバーするエネルギー・運動量範囲はそれぞれ数μeV〜数meV, 0.1Å-1〜数Å-1になる.これらの分光器の仕様により,蛋白質分子の運動を解析が可能になることが期待される.


310015
低温プラズマ存在下における被覆管材の水素透過挙動の評価
小河浩晃* ; 木内清
JAERI-Research 2002-037; Dec.2002,48p.

 革新的軽水炉燃料被覆管材の長期健全性にかかわる水素−金属相互作用に関する基礎検討として,原研開発材25Cr-35Ni系合金とNbライナー材,及び,比較材として従来被覆管仕様ステンレス鋼,現用軽水炉被覆管材ベース金属Zr,及びNiの5つの材料間の水素透過挙動の違いを,放射線励起効果の観点から基礎評価した.RF駆動型低温プラズマ源を用いた励起水素透過試験装置を整備して,同一水素分圧で低温プラズマと熱平衡の水素透過の温度依存性及び電場のバイアス効果等を解析した.低温プラズマ励起による水素透過の促進傾向が全材料の中低温領域に見られ,約530K以下の低温側の水素透過挙動は水素−欠陥相互作用に伴い変化した.NbはZrのような水素化物脆化を生じずに多量に水素が固溶出来る水素ゲッター材としての適性が確認された.電場効果では,電子引き込み条件に依存した水素透過能の増大傾向を示し,表面直上の低速電子励起効果の重要性が確認された.水素溶解の新モデルを構築して材料間の励起水素透過の促進傾向の違いを評価した.


310092
高速炉用炭・窒化物燃料の照射後試験; 燃料ピンの破壊試験(共同研究)
岩井孝 ; 中島邦久 ; 菊地啓修 ; 長島久雄 ; 木村康彦 ; 松井寛樹 ; 荒井康夫
JAERI-Research 2002-038; Jan.2003,69p.

 原研−サイクル機構共同研究として,ウラン・プルトニウム混合炭・窒化物燃料ピンを原研で作成し,高速実験炉「常陽」で照射試験を実施した.照射後試験のうちサイクル機構で実施した非破壊試験及び窒化物燃料ピンの破壊試験の結果については,既に報告されている.本報告書は,原研で実施した炭化物燃料及び窒化物燃料ピンの破壊試験の結果をまとめたものである.


310093
水素製造ISプロセスの熱効率の熱力学的評価
野村幹弘* ; 笠原清司 ; 小貫薫
JAERI-Research 2002-039; Jan.2003,24p.

 水素製造ISプロセスの熱効率を熱力学的視点で評価した.ISプロセスに限らず,熱を用いて水素を製造するプロセスの熱効率の上限はカルノー効率で得られる仕事量で制限されることを示した.高温熱源温度を1123K,熱源への返却温度733Kとすると,熱効率の上限は81.3%である.さらに,ISプロセスの最大熱効率を各反応,分離操作のG-T線図を書くことにより評価した.分離仕事を考慮しない場合のISプロセスの最大熱効率は78.2%となる.実際は,硫酸の濃縮操作及びHI水溶液の濃縮操作は温度によらずギブスエネルギーが常に正なので,仕事を投入する必要がある.分離操作は熱効率に大きな影響を与え,分離操作の有無により熱効率が53.5%から76.6%と23.1%変化した.また,正確な評価には精度ある熱力学データーが重要であり,今回の評価でブンゼン反応におけるヨウ素の添加の影響を調べる必要があることがわかった.


310094
リアルタイムレーザーモニター用高繰り返し波長可変固体レーザーの発振特性の研究
丸山庸一郎 ; 加藤政明
JAERI-Research 2002-040; Feb.2003,15p.

 大気中の微量有害物質を遠隔からリアルタイムで測定するための波長可変光源としては色素レーザーが使われている.しかし,色素レーザーは,構造が複雑で取り扱いが難しく,実用的なリアルタイム計測用光源とはなり得ない.このため,1個の結晶で広い波長域においてレーザー発振が可能な光パラメトリック発振器(OPO)を実用化光源として選定し,その高繰り返し化,高エネルギー化を目指して研究を行った.実験では,高繰り返し化の第一段階としてOPOにβ-Barium Borate(BBO)結晶を用い,これをNd:YAGレーザーの第二高調波でポンピングし,繰り返し数0.5kHzにおける発振特性,波長変換特性を測定した.この結果,OPO発振閾値でのポンプ光ピーク強度は,約16MW/cm2であった.OPOの最大平均出力としては,5.4Wを45%のエネルギー変換効率で達成した.また,ポンプ光の平均パワーを14Wまで増加させた場合のOPO出力は,依然増大傾向を示し,熱的な悪影響は観測されなかった.


[ page top ]
JAEA >  JAEA図書館 >  JOPSS >  研究開発報告書類[バックナンバー] >  JAERI-Research(2002年)
Copyright(C), Japan Atomic Energy Agency (JAEA)