研究開発報告書類


JAERI-Research
2004年


320162
がん治療医薬の開発を目指した放射性レニウムに関する研究,第2次報告; 製造・標識化合物の合成とその体内動態
アイソトープ専門部会
JAERI-Research 2004-001; Feb.2004,117p.

 本研究は,アイソトープ専門部会の放射性レニウムに関する研究グループ(原研及び協力研究機関)の下で行われたものであり,1998年3月の第1次報告(JAERI-Research 98-015)以降に得られた放射性レニウム186Re及び188Reの製造,放射性レニウムを用いた標識化合物の合成及びその標識化合物のマウス体内動態に関する成果をまとめたものである.放射性レニウムの製造に関して,原子炉を用いた186Re製造法の改良,加速器を用いた186W(d, 2n)186Re反応による無担体186Reの励起関数の測定及び186W/188Reジェネレータから得られる無担体186Reの濃縮法の検討を行った.次に,放射性レニウムの利用に関する研究の一環として,放射性レニウム標識化合物合成における穏和な条件の探索,腫瘍骨転移の疼痛治療に関する新規化合物の開発,放射性レニウム標識抗体・ペプチドにおける母体化合物となる有機レニウム化合物の開発,186Reを用いた放射免疫療法の効果に関して検討を行った.また,基礎的検討として,二官能性配位子として有用なMAG3, MAMAの188Re標識及び188Re標識アミノメチレンリン酸化合物のヒドロキシアパタイトへの吸着挙動に関する研究を行った.


320249
Neutronic study on seed-blanket type reduced-moderation water reactor fuel assembly
Afroza, S.* ; 久語輝彦 ; 嶋田昭一郎* ; 大久保努 ; 岩村公道
JAERI-Research 2004-002; Mar.2004,47p.

 高転換,負のボイド係数,高燃焼度の達成を目指すMOX燃料シード・ブランケット型燃料集合体によるPWR型低減速軽水炉の核的検討を行った.集合体燃焼計算結果から,シード燃料棒を内側15層(S15),ブランケット燃料棒を外側5層(B5)に配置したS15B5配列が推奨できる.集合体軸方向構成を最適化した結果,S15B5配列に対して,シード部高さ1000mm×2,内部ブランケット高さ150mm,軸ブランケット高さ400mm×2の構成が高転換を得るうえで最良である.本構成により,転換比1,炉心部平均燃焼度38GWd/tが達成された.さらに,シード部高さ500mm×2とすれば,炉心部平均燃焼度45GWd/tが達成可能であり,その場合,転換比は1よりわずかに小さい0.97となる.両構成ともボイド係数,燃料温度係数は負である.MOX燃料の代わりに金属燃料やトリウムを母材とする燃料(T-MOX:PuO2+ThO2)を使用した場合の検討を加えた.金属燃料では,転換比は向上するが,ボイド係数は悪化し,一方,T-MOXでは,ボイド係数は改善するが,転換比は減少する.


320250
IFMIFターゲット背面壁での中性子照射損傷を受けた低放射化フェライト鋼のトリチウム透過量評価
松廣健二郎* ; 安堂正己 ; 中村博雄 ; 竹内浩
JAERI-Research 2004-003; Mar.2004,12p.

 IFMIFターゲット背面壁の候補材である低放射化フェライト鋼(F82H鋼)におけるトリチウム透過量に与える中性子照射損傷の影響について評価を行った.その結果,照射損傷により実効拡散係数は10〜20%減少することが予想され,透過開始後数百秒までの範囲では照射損傷によりトリチウム透過量は10〜20%以上減少する.またIFMIFターゲット背面壁のF82H鋼における一日あたりのトリチウム透過量は1.3x10-11g/d(4.7x103Bq/d)であり,316ステンレス鋼を用いた場合に比べ約30倍であり,この量はIFMIFの主ループでのトリチウム透過量の約8%に相当する.


320316
軽水炉次世代燃料の炉物理ベンチマーク解析結果の検討
炉物理研究委員会
JAERI-Research 2004-004; Mar.2004,409p.

 本報告書は,「軽水炉次世代燃料の炉物理」ワーキングパーティ(WP)の第2期活動(平成13-14年度)についてまとめたものである.次世代燃料とは,70GWd/t程度と現行の設計を大きく上回る燃焼度の増大を目指す燃料をいう.同WPでは,次世代燃料の核特性に対する計算精度の評価及び改善を目指したベンチマーク活動を行ってきた.第2期活動においては,国内外から提出された最終的なベンチマーク解析結果の比較に基づき,軽水炉次世代燃料に対する核特性予測精度の現状を確認するとともに,解析結果の差異要因を詳細に分析した.また,ベンチマークに使用されたコードによる照射後試験解析や臨界実験解析の結果をレビューし,ベンチマーク解析結果の差異を詰めるうえで必要な実験や今後の研究課題の抽出・提案を行った.


320317
Analysis of impurities in beryllium, affecting evaluation of the tritium breeding ratio
Verzilov, Y. M.* ; 落合謙太郎 ; 佐藤聡 ; 和田政行* ; 山内通則* ; 西谷健夫
JAERI-Research 2004-005; Mar.2004,30p.

 ほとんどの核融合炉の概念設計において,ブランケットにおける中性子増倍材としてベリリウムの利用が提案されている.その核融合炉のトリチウム増殖比やベリリウムの放射化と核変換の評価においてはベリリウムの詳細な化学組成が必要である.本報告ではトリチウム増殖比の評価に関連する詳細な不純物分析に特に注目した.ここでは2つの異なった方法で不純物を調べた.1つはICP質量分析法による一部の試料の分析であり,もう1つはパルス化中性子を用いたベリリウム体系の積分的分析である.特に後者は6Liによるトリチウム生成に対するベリリウム中の不純物の積分的効果の最も有効な分析法として提案した.D-T中性子のパルスをベリリウム体系に入射し,その後の熱中性子密度の時間変化を観測することにより積分的効果を評価した.本研究では構造材級ベリリウムを使用した.この不純物の影響は寄生的な中性子の吸収により実験で得られた6Liによるトリチウム生成の反応率を減少させる.核データセットJENDL-3.2を用いたMCNPモンテカルロ計算と実験値を比較した結果,測定された吸収断面積は製作会社の特性値から評価した値より約30%大きくなった.ベリリウム中のLi, B, Cd等の不純物はたとえ10ppm以下でも吸収断面積に影響する.


320251
大電力ジャイロトロンの定常運転のための電子ビーム電流制御
南龍太郎* ; 小林則幸* ; 坂本慶司 ; 春日井敦 ; 高橋幸司 ; 今井剛
JAERI-Research 2004-006; Mar.2004,17p.

 ITER用大電力ジャイロトロンの秒レベルの長パルス運転時には,5A/sの電子ビーム電流の減少が生じ,正常な発振条件のミスマッチに起因する発振モードの移行のため,パルス幅が制限された.この電流減少の物理機構について検討し,その改善のための方法について報告する.電子ビーム電流の定量的な評価は,電子銃部陰極における熱移動のモデルを考え,パワーバランス方程式を解くことにより行い,このモデルが,実験結果をよく説明できることを明らかにした.また,ジャイロトロンの安定高性能な運転を維持するために,ショット中に電子銃部のヒーター電圧を上げ,電子ビーム電流を補償する実験を行った.これにより,電子ビーム電流の減少が抑制され,連続運転に向けた発振の安定化への見通しが得られた.


320252
大電流線形誘導加速器の開発研究
前原直 ; Zheng, X.* ; 渡辺聡彦* ; 木代純逸* ; 高山健* ; 堀岡一彦* ; 小川雅生* ; 川崎温* ; 志甫諒
JAERI-Research 2004-007; Mar.2004,40p.

 大電流線形誘導加速器の開発として,1995年から2002年までの共同研究の成果と原研独自の研究成果を総括した.線形誘導加速器の要素開発として,東工大が行った強磁性体のファイメットコアについて,250kV-100nsの誘導電圧に対して1kHzの繰返し運転が可能であることが判明した.またKEKでは1MHzの高繰返パルスモジュレータの開発に成功した.電子ビーム加速実験では,原研が1MeV-1kAの低エミッタンス電子銃を設計し,2MeVまでの追加速に成功した.イオン加速では,東工大が120kV-200mAのCu+イオンの引出しに成功した.また線形誘導加速器の応用として,原研が2MeVにおいてXバンドFELの設計を行い,200MWのBWOに成功に基づき,コンパクトな発振系であるBWO-FELの概念設計を提案し,Xバンドにおいて500MW-800MWの大出力発振系の開発に目処がついた.またその他の線形誘導加速器を使った実験や計画について,MTX実験や高勾配加速器,誘導型シンクロトン,ニュトリノファクトリ計画を解説し,全体を総括した.


320604
受動的安全性を具備した低減速軽水炉に関する技術開発(受託研究)
岩村公道 ; 大久保努 ; 秋江拓志 ; 久語輝彦 ; 与能本泰介 ; 呉田昌俊 ; 石川信行 ; 長家康展 ; 新谷文将 ; 岡嶋成晃 ; 奥村啓介 ; 鈴木元衛 ; 峯尾英章 ; 中塚亨 ; 最首貞典* ; 壱岐貞俊* ; 菅野実* ; 山本一彦* ; 山内豊明* ; 松浦真* ; 竹田練三* ; 青山肇男* ; 石井佳彦* ; 守屋公三明* ; 松浦正義* ; 安藤浩二* ; 有冨正憲* ; 木倉宏成*
JAERI-Research 2004-008; Jun.2004,383p.

 本報告書は,日本原子力研究所,日本原子力発電,日立製作所,東京工業大学が財団法人エネルギー総合工学研究所からの委託を受けて平成12〜14年度に実施した革新的実用原子力技術開発提案公募事業「受動的安全性を具備した低減速軽水炉に関する技術開発」の成果をまとめたものである.本提案公募事業では,エネルギーの長期安定供給を確保するとともに,コスト競争力の強化,プルトニウムの有効利用,使用済燃料蓄積量の低減など,原子力発電及び核燃料サイクルが直面する課題の解決,及び安全性・経済性にかかわる技術の一層の向上を図るため,既に実用化している軽水炉技術を最大限に活用し,中性子の減速を抑制して転換比を上げることにより燃料の増殖,高燃焼度・長期サイクル運転,プルトニウムリサイクルが可能となる低減速軽水炉の開発を実施した. 炉心設計,プラントシステム設計とともに,熱流動成立性,炉物理的成立性,燃料の安全性,燃料サイクルの検討を実施し,実用化へ向けた成立性の見通しを得た.


320664
核融合施設及び原子力施設で作業するロボットのシステムインテグレーションに関する研究
岡潔
JAERI-Research 2004-009; Jul.2004,225p.

 現在のロボットは,アミューズメント,福祉,防災など,さまざまな分野への適用が要求されているが,実用的な環境条件下ではシステムとして成立しているロボットは少ない.それは,ロボットが単に要素技術の積み重ねで実現できるものではなく,ロボットを構成する各要素について吟味,調整,改善等の検討を通して,各要素間のバランスを保ちながらロボットシステム全体の中で最適化される必要があるためで,多数の要素から構成されるロボットのシステムインテグレーションは,実際に使用可能なロボットを実現するうえで最も重要な課題である.本報では,このシステムインテグレーションに関する課題を解決するために,核融合施設の保守や原子力施設の事故時の救済を行う代表的なロボットシステムについて,開発に必要不可欠となる手法や要素技術について述べる.特に,ロボットに与えられた環境条件や作業条件からの観点だけでなく,ロボットのシステムバランスからそのロボットに必要となる要素技術の再構築と最適化の観点をも考慮して,実用的なロボットシステムの実現に向けた手法を提案した.これらのシステムインテグレーションを考慮した手法の提案により,核融合装置の保守や原子力施設の事故時の救済に対して実環境下で作業が可能なロボットシステムの実用化の推進に貢献した.


320720
Global characteristics of zonal flows generated by ion temperature gradient driven turbulence in tokamak plasmas
宮戸直亮* ; 岸本泰明* ; Li, J.*
JAERI-Research 2004-010; Aug.2004,18p.

 トカマクプラズマの閉じ込め改善には帯状流による乱流輸送の抑制が不可欠である.トカマクプラズマ中の帯状流の性質は安全係数により変わることが知られていたが,そのグローバルな変化と乱流との相互作用は調べられていなかった.グローバル電磁ランダウ流体コードを用いて,イオン系の乱流輸送を支配していると考えられるイオン温度勾配乱流とそれによって生成される帯状流との間の相互作用をプラズマ全体にわたって解析した.帯状流が静的な安全係数が低い領域では乱流は効果的に抑制される.一方,帯状流が振動する安全係数が高い領域では,帯状流のエネルギーがポロイダル非対称な圧力揺動を介して乱流に輸送されるため,乱流はあまり抑制されない.


320790
核融合プラズマ加熱電流駆動用大電力ミリ波帯高周波入射システムに関する研究
高橋幸司
JAERI-Research 2004-011; Sep.2004,125p.

 本論文は,核融合プラズマの高性能化に不可欠な大電力ミリ波帯高周波加熱電流駆動装置における入射システムに関する研究について述べたものである.まず,そのシステムの最適設計に反映させることを目的とし,コルゲート導波管を用いた全長60mの伝送システムを構築し,効率88%で世界初のMWレベルの伝送実証(0.82MW-2sec)に成功し,有効性を明確にした.また,偏波の最適化によるプラズマの高効率加熱を実証し,結合性能の最適化手法を開発した.大電力ミリ波帯高周波窓に関して,人工ダイアモンド窓の1MW-定常伝送性能,ITERレベルの耐中性子照射特性等を明らかにし,ダイアモンド窓が十分に使用可能であることを示した.核融合炉用先端可動型入射システムの構造設計及び解析,核解析を行い,ほぼ全ての機器の有効性を確認した.一方,システムの支持部に許容値(10MNm)を越える電磁力が作用することが判明し,重量低減,絶縁構造等の対策が必要であることを明らかにした.将来炉(発電実証炉)用として,角形コルゲート導波管と導波管の入口側に設置する可動ミラーから構成する遠隔駆動型入射システムの提案及びプロトタイプの製作を行い,周波数170GHzでほぼ設計通り±10°の放射角制御特性が得られ大電力で遠隔駆動型ミリ波帯高周波入射システムの原理実証に成功した.


320721
放射化金属廃棄物の分留特性の数値解析
赤岡克昭 ; 丸山庸一郎
JAERI-Research 2004-012; Aug.2004,12p.

 おもにステンレスから構成されるJPDR金属廃棄物を対象に0〜2500℃まで200℃/hで昇温する場合の分留特性の数値解析を行った.解析モデルはHenryの法則をLangmuirの式に適用しRunge-Kutta法を用いて解析した.その結果,152,154Eu及び14C, 94Nbは分留によって除去できることが示された.54Mn及び55Feについては,30年程度の冷却によって放射能をクリアランスレベル以下に低減できる.したがって,59,63Niと60Coをレーザーによって除去することにより,放射化金属の廃棄物量を1/100以下にできる可能性があることが明らかになった.


320791
HIP法を用いたF82H鋼製核融合炉第一壁のモデル製作及びその冶金的・機械的特性に関する研究
古谷一幸
JAERI-Research 2004-013; Sep.2004,165p.

 本研究の目的は,これまでのHIP接合に関する基礎研究成果をブランケットの構造体部分(第一壁)の製作に応用した場合の問題点を明らかにし,その対処法を提案することにある.主な成果は次の通り.(1)低放射化フェライト鋼F82Hによる第一壁の矩形冷却配管を,一般的な配管製造法(角ダイス引き抜き法及び角ロール成型法)により製造可能であることを実証した.(2)第一壁の部分実規模モックアップをHIP接合法により製作し,接合部の引張り特性が母材部と同等であることを明らかにするとともに,衝撃特性が大幅に劣化する問題を有していることを明らかにした.(3)靭性劣化の要因は,接合部における結晶粒の粗大化,脆性破壊,及びボイドの成長不足であることを明らかにするとともに,これらを生じさせる因子には,初期ギャップ,不適切な表面粗さ,初期ギャップに起因する元素の拡散不足,及び表面の汚れがあり,これら因子が靭性劣化に複合的に寄与していることを見いだした.(4)劣化した靭性を大幅に改善可能な再熱処理法を見いだすとともに,靭性劣化因子の排除により母材部と同等の靭性が得られることを実証した.(5)接合部の引張り特性はITERレベルの約2dpaまでは大きく劣化しないことを明らかにした.


320792
溶液表面での気泡の破裂に伴うミスト放出挙動評価モデルの検討
阿部仁 ; 田代信介 ; 森田泰治
JAERI-Research 2004-014; Sep.2004,19p.

 溶液燃料臨界事故時には,溶液表面での放射線分解ガス気泡の破裂によって,溶液燃料の一部がミストとして気相中に放出される.したがって放射性物質の放出挙動を評価するためには,ミストの放出挙動の定量的評価が重要である.そこで,ミスト放出挙動試験を実施するとともにミストの放出に関する評価モデルを作成した.ミスト放出挙動試験では,LiNO3水溶液中に微小な孔を開けた気泡発生管を介して窒素ガスを送り込むことで気泡を発生させ,溶液表面での気泡の大きさをビデオマイクロスコープシステムで計測した.ミストを溶液表面から決められた高さに設置したガラス繊維ろ紙に付着させ,付着したLi量を炎光分析によって同定し到達ミスト量を求めた.破裂直前の気泡は,浮力と気泡が溶液表面を持ち上げることで新たに形成した溶液面の張力がつりあっているものと仮定し,この溶液面部分が破裂によってミストとなり,気相中に放出されるものと考えることで,ミスト放出挙動評価モデルを作成した.放出されるミストの粒子径分布は対数正規分布に従うと仮定し,幾何平均径及び幾何標準偏差をパラメータとして試計算を行うとともにミスト放出挙動試験との比較検討を行った.その結果,鉛直上方向へのミストの到達量を大きな矛盾なく評価できることを示した.


320899
Integral experiments for verification of tritium production on the beryllium/lithium titanate blanket mock-up with a one-breeder layer
Verzilov, Y. M.* ; 佐藤聡 ; 中尾誠* ; 落合謙太郎 ; 和田政行* ; 西谷健夫
JAERI-Research 2004-015; Oct.2004,55p.

 原研が提案しているDEMO炉の水冷却固体増殖ブランケット概念に対する単一増殖層模擬体系を用いて第1回の一連の積分実験を実施した.第1回の一連の実験の模擬体系は提案している概念の範囲で,できるかぎり単純になるよう計画した.実験の主要目的は,入射中性子のスペクトルに影響され易い第1壁近傍の増殖層のトリチウム生成率をどれだけ正確に予測できるかを確認することと,チタン酸リチウム層内で急激に変化する熱中性子場において改善した実験手法を確認することである.模擬体系は,16mm厚のF82H,12mm厚のチタン酸リチウム及び200mm厚のベリリウム層から成っている.またアーマー材を模擬するためにタングステン層を第1層の前面に追加した.模擬体系は面積等価直径628mmの疑似円筒形状のSS316容器内に設置した.模擬体系に対する積分実験は中性子源反射体付きと無しのD-T中性子源で照射して実施した.本報告では実験結果の解析計算の詳細について述べる.


330241
サイクル機構−原研融合研究成果報告書; 照射環境における原子炉構造材料の劣化現象に関する研究(共同研究)
星屋泰二* ; 上野文義 ; 高屋茂* ; 永江勇二* ; 根本義之 ; 三輪幸夫 ; 青砥紀身* ; 塚田隆 ; 阿部康弘* ; 中村保雄* ; 近江正男 ; 齋藤順市 ; 清水道雄
JAERI-Research 2004-016; Oct.2004,53p.

 日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構は,平成15年度から,両機関の統合に向けた先行的取り組みとして,研究開発の効率的推進と相乗的発展を目指す「融合研究」を開始した.本研究は,原子炉構造材料分野における「融合研究」として,高速炉や軽水炉の照射環境における構造材料について,照射劣化機構の解明,劣化の早期検出及び評価方法の開発を目的とする.平成15年度は,本研究に用いる遠隔操作型磁化測定装置及び微少腐食量計測装置の設計及び開発を行った.耐放射線及び遠隔操作を考慮したこれらの装置により,照射後試料の劣化現象を高感度に検出することが可能となった.今後,両装置を用いて照射材を用いた材料劣化の研究を実施する.


330001
電離計数管の電極に誘導される誘導電荷
坂佐井馨
JAERI-Research 2004-017; Nov.2004,29p.

 グリーンの相反定理に基づき,電離計数管の電極間に点電荷がある場合,それによって電極に誘導される誘導電荷を解析的に導出した.電極の形状は平行平板及び円筒型を仮定した.平行平板型の場合,電荷分布はベッセル関数を含んだ積分で表され,円筒型は変形ベッセル関数を含んだ積分で表される.計数管の電流信号はその誘導電荷の時間微分で求められるため,これらの表式は計数管の電流信号を評価するのに有用である.


330050
Decomposition of p-nonylphenols in water by 60Co γ-ray irradiation
木村敦* ; 田口光正 ; 小嶋拓治 ; 平塚浩士* ; 南波秀樹
JAERI-Research 2004-018; Jan.2005,49p.

 毒性が高くかつ難分解性である内分泌撹乱化学物質は動物に対して悪影響を及ぼすといわれている.その一つであるp-ノニルフェノールは,プラスチック及び合成洗剤の原料に用いられ,広く水環境中に排出されている.60Co-γ線照射によって水分子から生成するOHラジカルは非常に高い酸化力を有し,オゾン等の他の処理法では分解が困難な化学物質の分解を可能とする.近年,このOHラジカルを用いた処理法は水環境の保全において非常に注目を集めている.本研究は,水中汚染化学物質の処理法の開発の一環として,γ線誘起OHラジカルによるp-ノニルフェノールの分解の機構解明を行った.p-ノニルフェノール,p-クレゾール及び4-エチルフェノールをOHラジカルによって酸化分解し,アルキル鎖の長さの違いによる分解機構の差異について考察した.


330051
輝尽性蛍光体SrBPO5:Eu2+を用いた中性子イメージングプレートの中性子イメージ特性
坂佐井馨 ; 片桐政樹 ; 中村龍也
JAERI-Research 2004-019; Dec.2004,33p.

 新しい中性子イメージングプレートの材料として,比較的軽元素から構成され,中性子コンバータであるホウ素(B)を母体に含むSrBPO5:Eu2+輝尽性蛍光体の中性子イメージ特性について調べた.本蛍光体は中性子照射に対して赤色レーザーを照射することによって約390nmの輝尽性蛍光を発し,市販のイメージングプレートと同じ励起波長及び蛍光波長を有するという大きな特徴を持つ.このため,本蛍光体をAlプレートに塗布したイメージングプレートを作成した.本イメージングプレートに中性子を照射し,市販のイメージングプレート用リーダを利用して,リチウムブロックで製作した被写体の中性子イメージを読み取る実験を行った.塗布するのに使用した接着剤は,ラッカー系,合成樹脂系,及びガラス系の3種類である.実験の結果,輝尽性蛍光強度は小さいものの,中性子イメージが取得できることが確認できた.また,位置分解能はリーダの読み取り精度を50μmとした場合,0.2mmであった.さらに位置分解能性能を向上させるためには,蛍光体粉末粒度の制御が肝要である.


330133
64×64チャンネル高位置分解能中性子イメージ検出器の検出特性
坂佐井馨 ; 片桐政樹 ; 松林政仁 ; Rhodes, N.* ; Schoonveld, E.*
JAERI-Research 2004-020; Dec.2004,19p.

 ZnS:Ag/6LiFシンチレータと波長シフトファイバを用いた背面読み取り法により位置検出を行う64×64チャンネル高位置分解能中性子イメージ検出器の検出特性を英国ラザフォードアップルトン研究所のISISにおいて測定した.その結果,ISISが実際に用いているApplied Scintillator Technology(AST)社製シンチレータを用いた場合,熱中性子に対して検出効率が24.5%であることがわかった.また,同時にγ線感度を60Co線源を用いて測定した結果,7×10-5counts/photonsであることがわかった.原研で開発したZnS:Agと6LiFとの比が1.5:1としたシンチレータでは熱中性子に対して検出効率が14.5%とISISのものに対して約60%であることがわかった.検出効率については,1-1, 1-2, 2-1,及び2-2コインシデンス法についてそれぞれ評価した.本検出器による中性子イメージ特性は,原研CNRF施設を用いて評価した.直径2mmの穴のあいたCdコリメータを用いて測定した結果,明瞭なビームイメージが得られることがわかった.2-2コインシデンス法を用いた場合には,検出効率は下がるものの位置分解能が改善されることを確認した.


330002
RI・研究所等廃棄物のクリアランスレベル確認のための非破壊γ線測定要素技術の開発
堤正博 ; 大石哲也* ; 山外功太郎 ; 吉田真
JAERI-Research 2004-021; Dec.2004,43p.

 微弱放射線モニタリング技術の開発の一環として,RI・研究所等廃棄物に対するクリアランス確認測定システムの設計及び開発を行った.本研究では,非破壊γ線測定技術を高度化することにより,200リットルドラム缶やコンテナ中に含まれる放射性核種を定量することをねらった.しかしながら,RI使用施設や研究所から発生する廃棄物では,原子炉施設からの廃棄物とは異なり,多種多様な核種が対象となる,また核種の存在比も一定ではない,偏在した放射能分布を想定しなければならないなど,解決すべき課題が多い.これらに対処するために,それぞれの課題ごとに機能向上を図った,3つのγ線測定装置(ユニット)を開発した.開発した測定ユニットは,(1)核種同定型検出ユニット,(2)位置情報型検出ユニット,(3)高効率型検出ユニットである.本報告書では,クリアランスレベル確認測定に向けた全体の設計方針及び開発した個々のγ線測定ユニットの設計とその性能について考察する.


330052
Behavior of irradiated PWR fuel under simulated RIA conditions; Results of the NSRR tests GK-1 and GK-2
笹島栄夫 ; 杉山智之 ; 中村武彦* ; 更田豊志
JAERI-Research 2004-022; Dec.2004,113p.

 本報告書は,安全性試験研究炉(NSRR)において実施した反応度事故模擬実験,GK-1及びGK-2の結果についてまとめたものである.実験は,九州電力(株)玄海1号機で燃料燃焼度42.1MWd/kgUまで照射された14×14型PWR燃料に対して行った.計装を施した試験燃料棒を二重カプセルに装荷し,NSRRにおいて0.1MPa, 293Kの静止水冷却条件下でパルス照射実験を実施した.GK-1実験の発熱量は505J/g,燃料エンタルピは389J/g,GK-2実験の発熱量は490J/g,燃料エンタルピは377J/gに達した.被覆管表面ではDNBが生じ,最高温度はGK-1で589K,GK-2で569Kに達した.パルス照射後の被覆管径方向最大残留歪みはGK-1で2.7%,GK-2で1.2%となったが,燃料棒破損には至らなかった.パルス照射中の燃料棒内自由空間への核分裂ガス放出率はGK-1で11.7%,GK-2で7.0%であった.


330003
3段階共鳴イオン化分光法による40Caのイオン化ポテンシャルの高精度測定
宮部昌文 ; 大場正規 ; 加藤政明 ; 若井田育夫 ; 渡部和男
JAERI-Research 2004-023; Nov.2004,17p.

 単一モード連続発振の外部共振器半導体レーザーを用いた3段階共鳴イオン化分光法により,カルシウム40のイオン化ポテンシャルを高精度で決定した.基底状態のカルシウム原子を4snp(1P1)系列と4snf(1F3)系列のn=20-150の高リドベルグ状態に励起して,得られた準位エネルギーをリドベルグリッツの拡張公式で近似することにより,イオン化ポテンシャルを従来より1桁高い精度で49305.9240(20)cm-1と決定することができた.


330134
低減速軽水炉の導入効果と燃料リサイクル条件の影響
立松研二 ; 佐藤治
JAERI-Research 2004-024; Jan.2005,35p.

 低減速軽水炉の利用を含むさまざまな原子力発電と燃料サイクルの将来シナリオを定義し,天然ウラン消費量,使用済み燃料貯蔵量及び再処理設備規模などの核燃料サイクル諸量を定量的に分析した.その結果,以下の所見を得た.低減速軽水炉は正味転換比が1.0を超えれば天然ウランの消費量の際限ない増大に歯止めをかけることが可能である.しかし,FBRに比べて増殖性能が低いため,天然ウランの究極消費量が燃料リサイクルに関する条件により大きく変化する.転換比1.06の低減速軽水炉を用いた分析の結果から判断すると,濃縮ウラン軽水炉を2200年頃までに置換して天然ウラン積算消費量を低めの水準に抑制するためには,核燃料サイクルロスを含めた正味の転換比で1.04以上を実現することが望ましい.このためには,物質ロス率が1.0%及び0.2%の場合でそれぞれ燃料物質の炉外滞在時間を4年及び6年以内にすることが求められる.


330135
JENDLによる核種生成量予測精度の検討シグマ委員会・核燃料サイクル専門部会・核種生成量評価WG活動報告H13-H15年度
奥村啓介 ; 大木繁夫* ; 山本宗也* ; 松本英樹* ; 安藤良平* ; 辻本和文 ; 笹原昭博* ; 片倉純一 ; 松村哲夫* ; 青山卓史* ; 青山肇男* ; 金子俊幸* ; 小坂進矢* ; 須山賢也 ; 内藤俶孝*
JAERI-Research 2004-025; Jan.2005,154p.

 本報告書は,シグマ研究委員会・核燃料サイクル専門部会・核種生成量評価ワーキンググループ(WG)における平成13〜15年度の活動成果についてまとめたものである.同WGでは,軽水炉及び高速炉で照射されたUO2またはMOX燃料,及び高速炉で照射されたアクチノイド試料に対する照射後試験の解析を,JENDL-3.2, JENDL-3.3及びその他の海外の核データライブラリとORIGENコードやより詳細な解析コードを使用して行った.これらの結果から,核種生成量評価の予測精度の現状と問題点が論じられる.さらに,最新のJENDL-3.3に基づくORIGENコード用のPWR, BWR, FBR用の断面積ライブラリの作成,ORIGEN計算への中性子スペクトルインデックスの導入検討,及びORIGENユーザーへの核種生成量評価に対する期待精度のアンケート調査,といった活動の成果についても報告する.


330136
Criticality and doppler reactivity worth uncertainty due to resolved resonance parameter errors; Formula for sensitivity analysis
瑞慶覧篤* ; 中川庸雄 ; 柴田恵一 ; 石川眞* ; 日野哲士*
JAERI-Research 2004-026; Feb.2005,102p.

 実効増倍率(keff)等の反応度の不確かさは,無限希釈断面積と共鳴自己遮蔽因子の着目している共鳴パラメータの変化に対する感度係数を用いて評価することができる.本研究では,評価済核データファイルJENDL-3.2に格納されている分離共鳴パラメータの不確かさをBreit-Wigner多準位公式を用いて推定した.NR近似に基づく共鳴自己遮蔽因子を解析式で表し,実効増倍率keff,温度係数α,ドップラー反応度ρに対する共鳴パラメータの感度係数から反応度の不確かさを評価する手法を開発した.分離共鳴パラメータの不確かさによる反応度の最終的な不確かさを個々の共鳴レベルの寄与に対する不確かさをもとに,誤差伝播則で全共鳴レベルに対する値を評価した.予備的な評価によると, ナトリウム冷却大型高速炉のドップラー反応度の不確かさは,728Kで,約4%であった.


330137
Energy confinement and transport of H-mode plasmas in tokamak
浦野創
JAERI-Research 2004-027; Feb.2005,131p.

 Hモードプラズマのエネルギー閉じ込め特性のプラズマ密度依存性,プラズマ形状効果,不純物ガス導入の効果及びコアプラズマの熱流束の影響をそれぞれ解明した.また国際マルチマシンデータベースを用いて,JT-60UにおけるHモードの閉じ込め特性の他装置との比較を行った.高密度領域では,ペデスタル肩の温度の低下に伴って,コア部の温度勾配特性長を一定に保つように中心部温度が低下した.高三角度化及びアルゴン注入によるHモードについても,ペデスタル温度の上昇が炉心プラズマの閉じ込めを決定することがわかった.また炉心プラズマの熱流束が増加しても,温度勾配特性長を一定に保つように熱拡散係数が増大した.国際マルチマシンデータベースを用いた検討では,高三角度化が将来のトカマク炉において適した運転手法であることを示した.


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