研究開発報告書類


JAERI-Tech
2004年


320322
大強度陽子加速器プロジェクト物質・生命科学実験施設機器技術設計書
物質・生命科学実験施設建設チーム
JAERI-Tech 2004-001 Part1
JAERI-Tech 2004-001 Part2
; Mar.2004,1171p.

 本報告書は,大強度陽子加速器計画(J-PARC)の物質生命科学実験施設(MLF)の機器製作の概念及び基本設計にかかわる平成14年度までの検討成果を技術設計書としてまとめたものである.第1章は,計画書に当たる建設の目的,目標,スケジュール,予算,体制についてまとめた.第2章以下に技術設計書に当たる,個々の機器の基本設計方針と検討内容を記述した.プロジェクトは日々新たな展開を見せ,本設計書段階からは相当詳細化され,あるいは,部分は変更されて製作設計として既に最終的な形として収束している機器もある.それらは,詳細技術設計書として近い将来,続報として報告する.


320254
柏崎刈羽原子力発電所3号機シュラウドサンプル(K3-H7a)に関する調査報告書(受託研究)
シュラウド・再循環系配管サンプル調査チーム
JAERI-Tech 2004-002; Feb.2004,58p.

 柏崎刈羽原子力発電所3号機において,シュラウド下部胴とシュラウドサポートリングの内側溶接部(H7a内側)近傍のシュラウドサポートリングにひび割れ(以下,き裂)が確認された.本調査は,東京電力(株)が日本核燃料開発(株)にて実施するき裂を含む材料サンプルの調査・評価に関して,原研が第三者機関として調査計画の段階から加わり,最終的に得られたデータを入手し,原研独自の調査報告書を作成することにより,調査の透明性を確保することを目的として実施した.本調査により,以下のことが明らかとなった.(1)ボートサンプルの表面においてグラインダー加工痕と機械加工痕が見られた.(2)き裂部の破面は,ほぼ全体が粒界割れであった.表面近傍において粒内割れと考えられる箇所が確認された.この箇所では,加工により形成されたと考えられる金属組織及び硬さの上昇が見られた.(3)溶接金属端から約3mmの範囲では,溶接の熱影響により表面近傍の硬さが低下していた.(4)結晶粒界の狭い範囲でわずかなCr濃度の低下が認められた.本調査の結果と,き裂付近に発生していたと考えられる溶接引張残留応力及び炉水中の溶存酸素濃度等を考慮すると,このき裂は応力腐食割れ(SCC)であり,材料の硬さと関係があると結論された.


320163
女川原子力発電所1号機再循環系配管サンプル(O1-PLR)に関する調査報告書(受託研究)
女川1号機再循環系配管サンプル調査実施チーム
JAERI-Tech 2004-003; Feb.2004,74p.

 本調査は,女川原子力発電所1号機原子炉再循環系配管を切断し採取したき裂を含む材料サンプルについて,日本原子力研究所東海研究所の照射後試験施設において各種の検査を実施し,き裂発生の原因究明に資する知見を取得することを目的として実施したものである.本調査の結果,以下のことが明らかとなった.(1)き裂は,管内表面の溶接部近傍に発生しており,深さは約5〜7mm程度であった.(2)き裂部破面のほぼ全体が粒界割れであるが,管内表面のき裂開口部には約100μm程度の粒内割れを含む部分が観察された.また,その部分には,加工により形成された金属組織及び硬さの上昇が見られ,き裂は硬さの最も高い部分の付近から発生していた.本調査の結果と,溶接によりき裂部付近で発生したと考えられる引張残留応力及び炉水中の溶存酸素濃度等を考慮すると,このき裂は,加工層を有する管内表面で応力腐食割れ(SCC)により発生後,SCCとして結晶粒界を経由して進展したと結論される.


320164
福島第一原子力発電所4号機シュラウドサンプル(1F4−H4)に関する調査報告書(受託研究)
シュラウド・再循環系配管サンプル調査チーム
JAERI-Tech 2004-004; Feb.2004,74p.

 東京電力(株)福島第一原子力発電所4号機(沸騰水型,定格出力78.4万kW)において,第12回定期検査(平成5年9月〜平成6年2月)の自主点検の際に,炉心シュラウド中間部胴H4溶接部にき裂が発見された.本研究は,東京電力(株)が日本核燃料開発(株)にて実施するき裂を含むSUS304Lの材料サンプルの調査・評価に関して,原研が第三者機関として加わり,最終的に得られた調査データを入手し,原研独自の調査報告書を作成することにより,調査の透明性を確保することを目的として実施した.本研究により,以下の結論が得られた.(1)観察したき裂のほぼ全体が粒界割れであった.き裂内部には腐食生成物が付着し,一部は粒内に成長していた.また,2次き裂の一部は溶接金属に達していた.(2)表面近傍のビッカース硬さは300程度に高くなっていた.また,照射による母材の硬化が認められた.(3)結晶粒界ではCr濃度の低下とNi及びSi濃度の増加が観察された.これら合金元素の濃度変化は照射により誘起された拡散,偏析過程により生じたものと考えられる.本研究の結果と,溶接によりき裂付近に発生していたと考えられる引張残留応力及び炉水中の溶存酸素濃度等を考慮すると,このき裂は応力腐食割れ(SCC)であると結論される.


320165
NUCEFにおけるウラン系臨界実験に関する分析の現状
芳賀孝久* ; 軍司一彦 ; 深谷洋行 ; 薗田暁 ; 坂爪克則 ; 境裕 ; 新妻泰 ; 冨樫喜博 ; 宮内正勝 ; 佐藤猛 ; 井上猛 ; 白橋浩一
JAERI-Tech 2004-005; Feb.2004,54p.

 燃料サイクル安全工学研究施設(NUCEF)の定常臨界実験装置(STACY)及び過渡臨界実験装置(TRACY)においては,硝酸ウラニル溶液を用いた臨界実験が実施されている.NUCEFの分析設備では,臨界実験,溶液燃料の調製,管理及び保障措置に必要な溶液燃料の分析を実施している.分析試料数は年間約300程度であり,分析項目は,ウラン濃度分析,遊離酸濃度分析,ウラン同位体組成分析,核分裂生成物(FP)核種濃度分析,リン酸トリブチル(TBP)濃度分析,不純物濃度分析等となっている.本報告書は,これまでのウラン系臨界実験に適応してきた分析方法と分析の品質管理についてまとめたものである.


320166
NUCEF分析業務報告書; 平成14年度
境裕 ; 軍司一彦 ; 芳賀孝久* ; 深谷洋行 ; 薗田暁 ; 坂爪克則 ; 圷英之 ; 新妻泰 ; 白橋浩一 ; 佐藤猛
JAERI-Tech 2004-006; Feb.2004,25p.

 燃料サイクル安全工学研究施設(NUCEF)の分析設備では,定常臨界実験装置(STACY),過渡臨界実験装置(TRACY)及び燃料調製設備の運転にあたって,溶液燃料(硝酸ウラニル溶液)に関する分析を実施している.平成14年度は,STACY及びTRACYにおける臨界実験前後の硝酸ウラニル溶液の性状分析,硝酸ウラニル溶液燃料調整のための分析を行うとともに,核燃料物質の計量管理のため計量槽に集めた硝酸ウラニル溶液の分析を行った.また,STACY用いたプルトニウム臨界実験に備えて,硝酸プルトニウム溶液燃料の調製条件を確認するための予備試験及びAm抽出分離試験が行われ,当該試験にかかわる分析を行った.平成14年度における総分析試料数は,275試料であった.本報告書は,平成14年度に実施した分析等の業務についてまとめたものである.


320255
生物照射用マイクロビーム装置の利用手引書
坂下哲哉 ; 横田裕一郎* ; 和田成一* ; 舟山知夫 ; 小林泰彦
JAERI-Tech 2004-007; Mar.2004,91p.

 マイクロビームシステムは,マイクロラジオサージャリ研究やバイスタンダー効果のような細胞間コミュニケーションの直接的な検証のための強力なツールである.生物照射を目的とした原研高崎のマイクロビームシステム(MiST-BA)は,数年前より開発が進められ,いくつかの事例で成果を挙げている.その中には,カイコ卵の発生運命予定図やバイスタンダー効果(細胞増殖の抑制,小核の誘導,その他)がある.このレポート(利用手引書)の目的は,現及び新規ユーザーのためにMiST-BAでの単純で簡単な生物照射の方法を提供することである.MiST-BAは,3つの部分から成る.(1)細胞の位置決め及びイメージ取り込みのためのオフライン顕微鏡コントロールシステム,(2)細胞への照準とマイクロビーム照射のためのオンライン顕微鏡システム,そして(3)正確な個数の重イオンを細胞照射するためのシャッター・コントロールシステム.このレポートでは,MiST-BAの概要,各々の部分の操作プロトコル,CHO-K1細胞,カイコ卵,及びタバコプロトプラスト細胞を使ったマイクロビーム照射実験の例,及びトラブル対処について述べる.


320256
先駆的超高熱除熱技術の開発と限界の実験的解明; 高速旋回流・多孔質内沸騰二相流・ミスト衝突噴流の三方向からの挑戦,原子力基礎研究H11-37(委託研究)
戸田三朗* ; 結城和久* ; 秋本肇
JAERI-Tech 2004-008; Mar.2004,58p.

 核融合炉の炉心プラズマ周辺に設置される第一壁,ダイバータ,リミターなどの機器は,プラズマから膨大な熱負荷を受けるため,高熱負荷を有効に除去するための技術が必要である.現状では最高で50MW/m2程度の限界熱流束値が報告されているが,今後の核融合炉の実用化を踏まえて飛躍的な限界熱流束値の向上が期待されている.そこで,筆者らは「多孔質体内相変化を利用した除熱」と「ミスト衝突噴流による除熱」の2つの定常除熱法を用いて限界熱流束値の極限に挑戦する実験を行い,次の成果を得た.多孔質体を用いた超高熱流束除去実験では,多孔質体がステンレス時に10MW/m2,ブロンズ時に34MW/m2,銅ファイバー時に71MW/m2の定常除熱を実証した.一方,ミスト衝突噴流による局所高熱流束除去実験では,ミストの液滴径や流速を最適化することにより,15MW/m2の除熱を達成した.


320257
高感度γ線検出のための機能性色素の開発,原子力基礎研究H12-007(委託研究)
時田澄男* ; 吉田勝
JAERI-Tech 2004-009; Mar.2004,37p.

 日本原子力研究所の公募研究「原子力基礎研究」として,「高感度γ線検出のための機能性色素の開発」と題して平成12年度から14年度にかけて行われた研究についてとりまとめた.色素材料の開発では,ベンゾジオキサンテン系色素を構造改変にすることにより放射線に高い感受性を示す検出系を見いだすことができた.また,酸発生による発色機構とは異なるまったく新しい色素前駆体の開発にも成功し,工業所有権の申請に至った.本研究では,さらに機能性色素のドシメトリーへの応用を,センサシステム系の構築により実現し,0.2Gy〜1kGyにわたる線形応答性を確認できた.


320258
共鳴レーザーアブレーションを用いた超高感度中性子ドジメトリー手法に関する基礎研究,原子力基礎研究H12-035(委託研究)
井口哲夫* ; 渡辺賢一* ; 河原林順* ; 瓜谷章* ; 榎田洋一* ; 渡部和男
JAERI-Tech 2004-010; Mar.2004,62p.

 短パルス・高繰り返し率で適切な出力強度の得られる波長可変レーザーを用いて,中性子ドジメトリーへ共鳴アブレーション(RLA)現象を効果的に活用するため,理論モデルにより最適条件,すなわち,高感度性と元素選択性の両立を図ることのできる条件を探索した.その結果,従来の低繰り返しレーザーと比べ,約100倍検出感度を改善できることを実証した.さらに,改良型RLA-質量分析システムにより,14MeVDT中性子照射を行った高純度Al試料中に生成された極微量長半減期核種Al-26を明瞭に検出することに成功し,本分析手法に基づく中性子ドジメトリー手法の実現可能性を示すことができた.


320167
柏崎刈羽原子力発電所1号機シュラウドサンプル(K1-H4)に関する調査報告書(受託研究)
シュラウド・再循環系配管サンプル調査チーム
JAERI-Tech 2004-011; Feb.2004,64p.

 東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所1号機では,第13回定期検査中に,原子力安全・保安院の指示でシュラウド溶接部の目視点検を実施し,原子炉圧力容器内のシュラウド中間部胴溶接部H4にひび割れが確認された.本調査は,東京電力(株)が日本核燃料開発(株)にて実施するき裂を含む材料サンプル調査・評価に関して,原研が第三者機関として調査計画の策定段階から加わり,調査中には随時試験データの評価や試験現場への立会を実施し,最終的に得られた調査データを入手し,原研独自の調査報告書を作成することにより,調査の透明性を確保することを目的として実施した.本調査の結果,溶接残留応力及び炉水中の溶存酸素濃度を考慮すると,き裂は,浅い加工層を有する表面で応力腐食割れ(SCC)により発生した後,SCCとして内部へ分岐しながら結晶粒界を経由して3次元的に成長し,き裂の一部は溶接金属内部へ進展していったと結論される.


320168
女川原子力発電所1号機シュラウドサンプル(O1-H2)に関する調査報告書(受託研究)
シュラウド・再循環系配管サンプル調査チーム
JAERI-Tech 2004-012; Feb.2004,62p.

 東北電力(株)女川原子力発電所1号機(沸騰水型)では,第15回定期検査の際に,炉心シュラウド中間部リングH2及び下部リングの溶接線近傍にき裂が確認された.本調査は,東北電力(株)が日本核燃料開発(株)にて実施するき裂を含む材料サンプルの調査・評価に関して,原研が第三者機関として加わり,最終的な調査データを入手し,原研独自の報告書を作成することにより,調査の透明性を確保することを目的として実施した.本調査により,以下のことが明らかになった.(1)中間部リングの外表面近傍には150〜250μm程度の深さまで硬化層が存在した.(2)き裂の内部には腐食生成物が付着しており,腐食が粒内へ進行した部位も見られた.(3)中間部リング外表面近傍から100μm程度の深さの領域では主として粒内割れが観察され,200μm程度の深さより内部の領域では,粒界割れが観察された.(4)結晶粒界には,熱鋭敏化材に見られるようなCr濃度の顕著な低下傾向がなかった.(5)中間部リング材料の化学組成は,JIS規格SUS304Lに相当する組成であった.本調査の結果と,溶接によりき裂部付近に発生していたと考えられる引張残留応力及び炉水中の溶存酸素濃度等を考慮すると,き裂は応力腐食割れ(SCC)であると結論される.


330318
SPring-8原研軟X線ビームライン用挿入光源ID23の位相駆動が誘起する軌道変動調査及び駆動方向によらない補正テーブルの作成
中谷健 ; 安居院あかね ; 吉越章隆 ; 松下智裕* ; 高雄勝* ; 竹内政雄* ; 青柳秀樹* ; 田中均*
JAERI-Tech 2004-013; Dec.2004,16p.

 SPring-8原研軟X線ビームライン用挿入光源ID23は位相駆動時に二つの特徴的な軌道変動を引き起こす.一つはID23の磁石列が持つ誤差磁場が位相駆動によって変動するために引き起こされるもので,もう一つは位相駆動用サーボモーターのノイズによるものである.これらの軌道変動を蓄積リングアーク部に置かれている3台の電子ビーム位置モニターを用いて測定した.磁石列の誤差磁場による変動データとID23の位相位置の関係から,位相駆動の方向によらない変動成分を補正する励磁テーブルを作成した.


320259
Safety demonstration test (SR-2/S2C-2/SF-1) plan using the HTTR (Contract research)
坂場成昭 ; 中川繁昭 ; 高松邦吉 ; 高田英治* ; 齋藤賢司 ; 古澤孝之 ; 栃尾大輔 ; 橘幸男 ; 伊与久達夫
JAERI-Tech 2004-014; Feb.2004,24p.

 高温ガス炉固有の安全性を定量的に実証し,また実用高温ガス炉及び第4世代原子炉(Generation IV)の候補の一つであるVHTRの研究開発に資するため,HTTR(高温工学試験研究炉)を用いた安全性実証試験が実施されている.本報は,2004年に計画している制御棒引抜き試験,循環機停止試験,流量部分喪失試験の試験内容,試験条件,事前解析結果等について述べたものである.事前解析の結果,炉心の負の反応度フィードバック特性により原子炉出力が低下し,原子炉が安定に所定の状態に落ち着くことが明らかとなった.


320666
福島第二原子力発電所2号機シュラウドサンプル(2F2-H3)に関する調査報告書(受託研究)
シュラウド・再循環系配管サンプル調査チーム ; 中島甫* ; 柴田勝之 ; 塚田隆 ; 鈴木雅秀 ; 木内清 ; 加治芳行 ; 菊地正彦 ; 上野文義 ; 中野純一 ; 三輪幸夫 ; 海老根典也 ; 西山裕孝 ; 本岡隆文 ; 加藤千明 ; 新谷文将
JAERI-Tech 2004-015; Mar.2004,114p.

 東京電力(株)福島第二原子力発電所2号機においては,原子力安全・保安院の指示によりシュラウド溶接部の目視点検を実施し,炉心シュラウド中間胴/中間部リング溶接線H3外面にひび割れを発見した.本調査は,東京電力(株)が日本核燃料開発(株)にて実施するき裂を含む材料サンプルの調査・評価に関して,原研が第三者機関として調査計画の策定段階から加わり,調査中には随時試験データの評価や試験現場への立会を実施し,最終的に得られた調査データを入手し原研独自の調査報告書を作成することにより,調査の透明性を確保することを目的として実施した.本調査の結果と溶接により発生する引張残留応力及び炉水中の比較的高い溶存酸素濃度を考慮すると,このき裂は応力腐食割れ(SCC)であると考えられる.応力腐食割れの発生原因については,さらに施工法の調査などを行い検討する必要がある.


320260
FCAにおける低減速軽水炉模擬炉心の無限増倍率の測定
小嶋健介 ; 岡嶋成晃 ; 山根剛 ; 安藤真樹 ; 片岡理治* ; 岩永宏平*
JAERI-Tech 2004-016; Mar.2004,38p.

 低減速軽水炉の重要な炉特性であるボイド係数の評価の一環として,FCA-XXII-1(65V)の炉心テスト領域の無限増倍率を測定した.4種類の小型核分裂計数管を用いて測定した軸方向・径方向の核分裂率分布からテスト領域の材料バックリングを求め,計算により得られた移動面積を用いて無限増倍率を評価した.その結果,同炉心テスト領域の無限増倍率は1.344±0.034となり,無限増倍率の計算値の測定値に対する比は1.008±0.026となった.また,測定精度の向上のための方策について検討した.


320261
SPring-8原研アンジュレータービームラインBL11XUの全反射ミラー装置の立ち上げ調整と特性評価
桐山幸治* ; 高橋正光 ; 塩飽秀啓
JAERI-Tech 2004-017; Mar.2004,39p.

 SPring-8/BL11XUでは放射光の集光と結晶による高調波を除去するために70cm長の全反射ミラーを導入した.SiO2を基盤とするこのミラーは,広いエネルギー領域で使用できるよう,上下2箇所にPtとRhのコーティングを施し,おおよそ6KeVから35KeV程度まで利用できる.BL11XU実験ハッチ3においてミラーの特性評価を行った結果,ミラーを利用したX線は,集光前の入射光に対して,約3倍の強度,3分の1の半値幅となり,高調波の除去も良好であった.ミラーを利用した放射光利用実験を円滑に進めるために,ミラーを正確かつ短時間に調整することが必要である.しかし,これまでに立ち上げ手順や操作手順が系統的にまとめられていないために,必ずしも効率の作業ができるとはいえなかった.そこで,BL11XUでは,作業手順を整理し,系統的なマニュアルを作成した.マニュアル化されたことによって,ミラーの使用経験・調整経験の少ない実験者であってもミラーを容易に使用・調整することが可能になった.


320262
ポイズン付き冷減速材容器の熱流動解析,1; ポイズン板配置の検討
佐藤博 ; 麻生智一 ; 粉川広行 ; 勅使河原誠 ; 日野竜太郎
JAERI-Tech 2004-018; Mar.2004,23p.

 日本原子力研究所と高エネルギー加速器研究機構が共同で建設を進めているMW級核破砕中性子源において,液体水素を用いる冷減速材は中性子強度やパルス特性などの中性子性能を規定する重要な機器である.減速材容器内の水素温度上昇は,中性子特性を敏感に変化させるため,ホットスポットの原因となる容器内の再循環流域や流れの停滞域の抑制が重要な設計要件となる.設置される3台の冷減速材のうちポイズン付き冷減速材は,容器内にポイズン板を置くため最も停滞域を生じやすい.そこで,基本となる容器内構造を提案し,汎用3次元熱流体解析コードSTAR-CDを用いて熱流動解析を行った.その結果,容器底部において,ポイズン板との間に5mm程度の隙間を設けることで再循環流域や流れの停滞域を抑制して,局所的な温度上昇を設計要求値以下に抑えられることを確認した.


320263
硝酸溶液中硝酸ヒドラジンの安全性試験
木田孝 ; 杉川進
JAERI-Tech 2004-019; Mar.2004,30p.

 再処理工程における硝酸ヒドラジンは,硝酸ヒドロキシルアミン(HAN)と同様に熱化学的に不安定な物質であることが知られている.このため,硝酸ヒドラジンの反応に関する基礎データを整備するために,圧力容器型反応熱量計等により硝酸ヒドラジンと硝酸の反応により発熱が開始する温度,発熱量,発熱開始温度に及ぼす不純物の影響,一定温度で長時間保持した場合の自己加速反応等を測定した.本報告書は試験で得られた硝酸ヒドラジンと硝酸の反応基礎データ及び再処理工程における硝酸ヒドラジンの安全取扱条件の評価についてまとめたものである.


320323
大強度陽子加速器施設(J-PARC)3GeV陽子ビーム輸送施設(3NBT)技術設計書
坂元眞一 ; 明午伸一郎 ; 今野力 ; 甲斐哲也 ; 春日井好己 ; 原田正英 ; 藤森寛* ; 金子直勝* ; 武藤豪* ; 小野武博* ; 東茂則* ; 大竹秀範*
JAERI-Tech 2004-020; Mar.2004,332p.

 日本原子力研究所と高エネルギー加速器研究機構が共同で建設する大強度陽子加速器施設(J-PARC)には,中性子ビーム及びミューオンビームを用いて,おもに物質科学,生命科学の研究が繰り広げられる物質・生命科学実験施設が建設される.この実験施設では,3GeVシンクロトロンで加速された大強度陽子ビームにより,中性子,ミューオンを生成する.3GeVシンクロトロンから物質・生命科学実験施設までの陽子ビームを効率よく輸送し,中性子生成標的,ミューオン標的へ的確にビーム照射を行う陽子ビーム輸送施設(3NBT)の設計全体をまとめる.


320264
機器保護用高速インターロックユニット試作機の性能試験
榊泰直 ; 中村直樹* ; 高橋博樹 ; 吉川博
JAERI-Tech 2004-021; Mar.2004,32p.

 大強度陽子加速器施設(J-PARC)では,大電力陽子ビームが加速されるために,そのパワーの強力さから,電磁石トラブルなどでビームが加速器自身と衝突するようなトラブルが発生すると,最速数μ秒以下でビームを停止させねば,加速器の材質表面に熱衝撃破壊を起こし,致命的な損傷を与えることが懸念される.われわれは,熱衝撃損傷を避けるために,機器保護用高速インターロックシステム用ユニットの試作機を製作し,その試験を行った.この報告書は,機器保護用インターロック用ユニットの試作機の性能試験結果について書かれたものである.


320265
機器保護用高速インターロックユニット試作機の設計
榊泰直 ; 中村直樹* ; 高橋博樹 ; 吉川博
JAERI-Tech 2004-022; Mar.2004,28p.

 大強度陽子加速器施設(J-PARC)は,ピーク電流50mAという陽子ビームを50GeVまで加速し,さまざまな実験施設で併用する設計となっている.このような大電力陽子ビームが加速されると,そのパワーの強力さから,電磁石トラブルなどでビームが加速器自身と衝突するようなトラブルが発生すると,加速器の材質表面に熱衝撃破壊を起こし,致命的な損傷を与えることが懸念される.この報告書は,J-PARCで発生が懸念される,ビームによる熱衝撃損傷を回避するために必要な「機器保護用インターロック」の設計及び,設計が反映された試作機について書かれたものである.


320266
ハルデン炉を利用した日本の燃料照射研究; ハルデン共同研究(2000-02年)の成果(共同研究)
ハルデン共同研究合同運営委員会
JAERI-Tech 2004-023; Mar.2004,38p.

 日本原子力研究所は国内の諸機関との間でノルウェー・ハルデン市にあるハルデン沸騰型重水原子炉(HBWR)を利用した複数の共同研究を行っている.これらの共同研究は,OECD/NEAハルデン原子炉計画(ハルデン計画)への原研の加盟期間の更新に合わせて,3年ごとに更新する共同研究契約に基づいて実施している.本報告書は,各共同研究について,その目的,内容及び2000年1月から2002年12月にわたる3年間の研究で得られた成果の概要をとりまとめたものである.今期3年間には,7件の共同研究を行った.このうち2件は契約期間内に研究を終了し,残り5件は次期期間(2003.1-2005.12)でも継続して研究を実施することとなった.研究の多くは軽水炉燃料の高燃焼度化に対応した改良燃料や被覆管の照射挙動研究及びプルサーマルの本格導入に備えたMOX燃料の照射挙動研究である.


320267
HTTRの1次ヘリウム循環機フィルタ交換
古澤孝之 ; 角田淳弥 ; 植田祥平 ; 根本隆弘 ; 小山直* ; 鎌田崇
JAERI-Tech 2004-024; Mar.2004,46p.

 HTTRの1次ヘリウム循環機は,原子炉冷却材であるヘリウムガスを循環させるための重要な機器であり,1次加圧水冷却器用に3台,中間熱交換器用に1台設置している.このヘリウム循環機の上流側には,ヘリウムガス中の微粒子等がヘリウム循環機の主軸を支持している軸受に混入するのを抑制するためにフィルタを設置している.このフィルタの出入口間の差圧が出力上昇試験中に次第に上昇してきた.ヘリウム循環機のフィルタ差圧の上昇は,原子炉運転に支障をきたす可能性がある.このため,新規にフィルタを製作し,フィルタ交換を行った.また,フィルタ交換の際に,外観確認及びフィルタの付着物を採取しその分析を行った.本報は,フィルタ交換及びフィルタ差圧上昇原因調査についてまとめたものである.


320268
加速器駆動未臨界炉に関する実験的基礎研究,原子力基礎研究Hl2-031(委託研究)
代谷誠治* ; 三澤毅* ; 宇根崎博信* ; 市原千尋* ; 小林圭二* ; 中村博* ; 秦和夫* ; 今西信嗣* ; 金澤哲* ; 森貴正
JAERI-Tech 2004-025; Mar.2004,93p.

 本研究では,京都大学原子炉実験所の将来計画に関連して,(1)高エネルギー中性子の物質透過実験,(2)京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)における加速器駆動未臨界炉(ADSR)模擬実験,(3)MCNP-Xコードによる京都大学原子炉(KUR)型ADSRの概念的核設計を行い,ADSR型の研究用中性子源の実現に資するとともに,ADSR一般の開発に向けた炉物理的課題を抽出することを目的とした.本研究を通じて,ADSRの基本的特性の概略を理論的,実験的に把握することができ,今後の研究を推進するうえで必要な基礎的知見が得られた.その知見をあえて一言で表現すれば,予想に違わず,ADSRの基本特性は未臨界炉の基本特性に大きく左右されるということである.今後,ADSRの実現に向けて,より詳細な研究を着実に積み上げることが必要と考えられるが,そのためには,(1)核データのより一層の精度向上,(2)未臨界度測定や高エネルギーから低エネルギー領域に及ぶ中性子束の絶対値測定などのADSRを対象とした炉物理実験手法の確立,(3)核破砕中性子発生挙動から遅発中性子挙動の取り扱いを含むADSR関連の解析ツールの整備が必要不可欠である.


320269
スイープガスライン閉止栓の開発
菊地泰二 ; 山田弘一* ; 齋藤隆 ; 中道勝 ; 土谷邦彦 ; 河村弘
JAERI-Tech 2004-026; Mar.2004,28p.

 トリチウム増殖材の照射試験は,照射試験後に内部のトリチウム増殖材を取り出し,各種照射後試験が実施される.照射試験体を切断する際には,トリチウム増殖材装荷部からはトリチウムガス再放出が考えられること,また,切断時にスイープガス配管内にカナル内の水が流れ込まないようにする必要があることなどから,スイープガス配管を閉止する必要がある.しかしながら,スイープガス配管の閉止に際しては,中性子照射の影響や非常に小さい装荷スペース及び高い密封性能に加えて,簡便な操作方法にする必要があること等の諸要求条件から,既存のバルブやプラグ等を用いることができない.そのため,上記条件に適合する閉止栓を検討する必要がある.本書では,照射試験体切断時にスイープガス配管を閉止するための閉止栓の開発及び実際の照射試験体切断における閉止栓の操作要領について報告する.


320270
Analysis of the TRIGA MARK-II benchmark IEU-COMP-THERM-003 with Monte Carlo code MVP
Mahmood, M. S.* ; 長家康展 ; 森貴正
JAERI-Tech 2004-027; Mar.2004,30p.

 ICSBEPハンドブックに掲載されているTRIGA Mark-II炉心のベンチーマーク実験を核データライブラリーJENDL-3.3, JENDL-3.2及びENDF/B-VI.8とモンテカルロコードMVPを用いて解析した.また,MVPコードとMCNPコードの比較のためにENDF/B-VI.6を用いたMCNPの計算も行った.炉心構成の異なる炉心132及び133についてMVPコード及びJENDL-3.3, JENDL-3.2, ENDF/B-VI.8を用いて得られたC/E値はそれぞれ0.999, 1.003, 0.998であった.MCNPコードを用いて得られたC/E値は炉心132と133についてともに0.998であった.すべての結果は実験値と実験誤差の範囲内で一致した.MVPとENDF/B-VI.8及びMCNPとENDF/B-VI.6を用いて得られた結果は炉心132については0.02%,炉心133については0.01%の差異しか見られなかった.


320271
ターゲット容器の構造強度及び寿命評価に関する技術資料
石倉修一* ; 二川正敏 ; 粉川広行 ; 明午伸一郎 ; 前川藤夫 ; 原田正英 ; 佐藤博 ; 羽賀勝洋 ; 池田裕二郎
JAERI-Tech 2004-028; Mar.2004,123p.

 本報告では,J-PARCの物質・生命科学実験施設に設置される核破砕中性子源水銀ターゲット容器について,これまでに実施してきた構造設計の考え方及び手順についてまとめた.基本的には,(1)ターゲット容器の構造設計では,(i)核分裂炉のような反応度事故が原理的に生じる可能性はないこと,(ii)永久構造物ではないことなどから,法規上は障防法を適用し,さらに,(2)安全かつ合理的な設計を行うために,原子力構造設計基準並みのJISB8270[圧力容器(基盤規格)]規格体系の第1種容器に準拠するものとし,「解析による設計法」を適用した設計応力により設計を決めることとした.また,付録には,ターゲット容器構造における最大荷重モードである圧力波の低減を目的として,陽子ビームプロファイルを変化させた場合に想定される種々の影響について検討した結果を述べた.


320272
CELVA-1Dを用いた火災事故時の煤煙による換気系フィルタの差圧解析
渡邊浩二 ; 田代信介 ; 阿部仁 ; 高田準一 ; 森田泰治
JAERI-Tech 2004-029; Mar.2004,48p.

 再処理施設等の核燃料施設の一部の建屋換気系には,換気系フィルタの一種として前置フィルタが用いられている.火災事故時には,この前置フィルタが大量の煤煙によって目詰まりし,差圧が上昇して破損することが考えられる.したがって,放射性物質の閉じ込め機能を維持する観点から,前置フィルタの差圧の時間変化を精度よく予測することは重要である.本研究では,粒径2μm以上の煤煙粒子に対する前置フィルタのDFにも粒径範囲0.7-2μmの煤煙粒子に対する実測DFから作成した粒径−前置フィルタのDFに関する実験式が適用できると仮定した.この仮定を用いたCELVA-1Dによる解析結果は,試験結果とよく一致した.


320324
使用済燃料の燃焼度分布を考慮した臨界安全評価; 各種燃焼度設定方法の検討,1(受託研究)
野村靖* ; 奥野浩 ; 三好慶典
JAERI-Tech 2004-030; Mar.2004,64p.

 はじめに,燃焼度クレジットを採り入れた臨界安全評価において用いられる,燃焼計算のための燃焼度設定法について,欧米各国が採用している上端部50cm平均燃焼度を比較評価する.次に,仮定された軸方向燃焼度分布の形状の違いにより発生する臨界計算の誤差,核種組成計算値補正因子適用により補償される燃焼計算に付随するバイアス誤差及び照射履歴入力パラメータの変動により生じる統計誤差を,欧州経済開発協力機構原子力エネルギー局(OECD/NEA)の燃焼度クレジット国際ベンチマークの輸送容器モデルにより評価する.この結果,これらの誤差導入に対して安全側の臨界解析結果が得られるような,与えられた燃焼度から等価的に減少させた燃焼度を設定する方法を提案する.最後に,これらの誤差影響を統合的に組み込んで導かれる「等価均一燃焼度」及び「等価初期濃縮度」について述べ,使用済燃料輸送容器仕様の違いにかかわらず用いられる可能性に触れる.


320325
Characteristics of a low energy and high flux compact plasma source and preliminary results in studying surface modification of tungsten irradiated by the source
Luo, G.* ; 洲亘 ; 中村博文 ; 大平茂 ; 林巧 ; 西正孝
JAERI-Tech 2004-031; Mar.2004,27p.

 トカマクのプラズマ−表面相互作用を模擬する小型プラズマ源装置を製作した.この装置は,小型(全長1m)であるにもかかわらず,ITERダイバータの周辺プラズマに相当する低エネルギー(100eV以下)・高フラックス(約1022/m2/s)のプラズマビームを生成できる特徴を持つ装置である.本報告では,本装置の構成と特性,具体的にはフィラメント,アーク放電,磁場,バイアスなどによるプラズマビームへの影響について説明する.また,タングステンを試料として行った予備的な照射試験の結果についても報告する.焼結後熱圧延したタングステン試料片(0.1mm厚)に重水素イオンフラックス2×1021〜1×1022/m2/s,フルエンス4×1022〜1×1026/m2,エネルギー100eV前後のプラズマビームを照射させ,1×1023/m2以上のフルエンスで試料表面にブリスタの発生を観測した.


320326
Landsat-5-TMデータによる茨城県地域の土地被覆分類
林隆 ; 永井晴康 ; 山澤弘実*
JAERI-Tech 2004-032; Mar.2004,124p.

 Landsat-5-TMデータを用いて茨城県地域の地上被覆分類を行った.最尤法による分類では教師となるべきトレーニングエリアの設定が重要である.同じ分類区分のトレーニングエリアであってもそのヒストグラム分布は地点ごとに異なっており,そのため同じ分類区分に多くのトレーニングエリアを設定して分類した.さらに分類区分の面積が農林統計値に一致するようトレーニングエリアの調整を行った.分類結果を検証したところ1987年では85%が一致していた.


320327
照射済燃料ペレット内FPガス分析技術の開発
畠山祐一 ; 須藤健次 ; 金澤浩之
JAERI-Tech 2004-033; Mar.2004,29p.

 照射済燃料ペレット内に生成されたKr, Xe等のFPガスは,燃焼度とともに増加し,軽水炉燃料の熱的・機械的特性に大きな影響を与える.このため,軽水炉の高度化計画における燃料の健全性・安全性評価には,FPガス放出に関する基礎的データを蓄積することが重要である.日本原子力研究所・燃料試験施設では,照射済燃料棒のパンクチャー試験により,照射中に燃料棒プレナム部に蓄積したFPガスの測定を実施している.この結果から,FPガスのほとんどは燃料ペレット内に残存しており,より高い燃焼度あるいは事故時に残存しているFPガスが放出されることが予想される.よって照射済燃料からのFPガス放出挙動を調べるため,燃料を段階的に2300℃まで加熱しながら,放出されるFPガスをリアルタイムで測定するアウトガス分析装置(Out Gas Analyzer 以下;OGA)を開発した.


320328
高燃焼度燃料ペレット融点測定技術の開発; 微小試料の融点測定技術
原田克也 ; 仲田祐仁 ; 原田晃男 ; 二瓶康夫 ; 安田良 ; 西野泰治
JAERI-Tech 2004-034; Mar.2004,13p.

 燃料ペレットの微小領域における融点測定を目指し,既存のペレット融点測定装置を使用して少量の燃料ペレットで測定を可能とするために,燃料ペレットを封入するタングステンカプセルの改良及び試料の少量化に起因する不明瞭なサーマルアレストから融点を決定する方法の確立を行った.その結果,サーマルアレスト法による微小試料の融点測定が可能となり,照射済燃料ペレットの微小領域での融点測定に有効であることを確認した.本報は,ペレット融点測定装置を用いた微小試料の融点測定技術開発の概要を報告するとともに,タンタル[Ta],モリブデン[Mo],酸化ハフニウム[HfO2]及び未照射UO2ペレットを用いて実施した測定結果をまとめたものである.


320329
燃料被覆管の熱変形挙動評価試験技術の開発(受託研究)
金子哲治* ; 塚谷一郎* ; 木内清
JAERI-Tech 2004-035; Mar.2004,18p.

 低減速軽水炉用燃料は,高転換比と高燃焼度化を同時に達成するために,MOX燃料とUO2ブランケットの各ペレット燃料域の積層構造を有している.当該燃料棒は,現用ABWR燃料と比較して,長手方向における不均一な線出力密度分布に伴う熱応力が加わることが特徴である.そのためMOX燃料とUO2ブランケットに起因した異なる温度分布を持った被覆管の局所的変形挙動の評価が最も重要となる.そのような力学的特性評価試験法として,短尺の被覆管試験片を用いて,実用条件で想定される当該燃料棒の一段の積層部における2軸応力下での熱疲労挙動が再現できる力学的特性評価試験装置を設計した.本装置は,温度分布制御用加熱部,軸方向疲労要素負荷用低サイクル疲労制御部及び内圧疲労要素用の内圧負荷部から構成され,局所的な変形挙動が高精度で測定できる.また,本装置により,炉の起動停止や制御等の運転モードが関係した負荷変動,燃料棒の拘束条件,燃焼度に伴うFP内圧変化の試験を行うことが可能である.


320330
核融合炉ブランケット材料のための照射後試験施設に関する検討
山田弘一* ; 河村弘 ; 土谷邦彦 ; 石塚悦男 ; 内田宗範* ; 圷陽一 ; 本木良蔵 ; 渡辺渡 ; 平田省吾*
JAERI-Tech 2004-036; Mar.2004,138p.

 本報告書は,核融合炉ブランケット材料の照射後特性試験施設を設置するにあたり,施設概念を明らかにし,施設整備の第一段階である材料試験を行うための「トリチウム増殖関連材料実験設備」を焦点にして検討を行ったものである.核融合炉ブランケット研究開発を進めるために,37TBq(1000Ci)規模のトリチウムとγ線源を同時に有する試料の照射後試験を非密封で行える施設が必要である.そこで,本報告書では,合理的な照射後試験施設整備を進めるための検討の一環として,既存施設を有効利用して施設整備を行う場合を想定し,具体的に検討すべき項目やその内容についてのモデルケースをまとめた.具体的な既存施設としては,大洗研究所内に既存のRI利用開発棟施設を取り上げ,本施設への改造整備方法について検討を行った.


320406
HTTR自動停止(2003年5月21日発生)の原因調査結果
平戸洋次 ; 齋藤賢司 ; 近藤誠 ; 澤畑洋明 ; 茂木利広 ; 土山賢* ; 安任敏雄* ; 水島俊彦 ; 中澤利雄
JAERI-Tech 2004-037; Apr.2004,33p.

 HTTR(高温工学試験研究炉)は,並列運転モードでの運転経験の蓄積と安全性実証試験の実施を目的として,平成15年5月6日から平成15年6月18日までの予定で,原子炉の運転を行っていた.5月21日,原子炉出力約60%(約18MW)で原子炉の運転を行っていたところ,「1次加圧水冷却器ヘリウム流量低」スクラム信号により原子炉が自動停止した.原子炉自動停止の原因は,1次ヘリウム循環機Aが自動停止したことにより,1次加圧水冷却器のヘリウム流量が低下したためであった.調査の結果,1次ヘリウム循環機Aが自動停止した原因は,1次ヘリウム循環機Aの動力電源ラインにある遮断器の制御電源を監視している補助リレーが,常時励磁され発熱している他の電気部品と接近して設置され,使用温度の上限に近い温度条件下で使用されてきたために性能が劣化し,誤動作したためであることが明らかになった.


330982
大規模構造解析システム可視化環境整備; AVS/Expressを利用したADVENTUREシステムの可視化
宮崎 幹也*
JAERI-Tech 2004-038; Feb.2004,38p.

  今日、可視化と呼ばれるデータの視覚化作業が多くの研究分野で行われており、専門とするソフトウェアも多数存在している。これらのソフトウェアにおいては、一部の解析ソルバに対するインターフェースは用意されているが、実際には多くのシミュレーションで解析から可視化作業の途中に、可視化ソフトウェアに対応させるためのデータ変換などが必要となる。本報告書は、ITBLコミュニティソフトウェアとして整備を進めている大規模構造解析システムの利用者から要望の多い、ITBL計算機環境における可視化ソフトウェアであるAVS/Expressを用いたデータ可視化環境の整備について述べるものである。これによりITBL計算機上でのシミュレーション後の可視化環境としてITBL画像サーバを利用することが可能となる。また将来的に、ITBL/AVS環境に組み込むことでITBL環境におけるコミュニティー内でも利用可能となる。


320407
S-cube(Super Science Seminar)の記録と分析
磯貝健太郎* ; 安原裕子*
JAERI-Tech 2004-039; Apr.2004,44p.

 ITBL利用推進室では,平成14年10月30日(水)を第1回として,科学セミナー(S-cube: Super Science Seminar)を50回以上に渡り開催してきた.また,多くの大学・機関研究者にその講師を依頼し,中学生高校生が興味を持つようなセミナーを開催してきた.本報告書では,これまで開催してきたセミナーを紹介するとともに,セミナー開催におけるテーマに着目し,今後の運営において参加者を増加させるためにはどのような配慮が必要であるかについて述べる.


320484
FEM教育教材整備
山崎一郎*
JAERI-Tech 2004-040; Apr.2004,92p.

 IT技術を活用した仮想研究環境であるITBLの構築が進み,実際にITBLのハードウェアやネットワーク技術,そしてITBL基盤ソフトウェアが提供する基本ツール群を利用して,全国に散在するスーパーコンピュータが透過的に利用できるようになりつつある.これにより,組織的あるいは地理的制約を超え,いろいろな分野の先端的ソフトウェアや大規模データベースを利用することが可能となってきた.ITBL利用推進室では,従来よりITBLの利用・普及を目的に,共有化ソフトウェアやデータベースの整備,HPC技術の利用支援活動を実施してきた.また,先端科学・計算科学分野における人材養成の観点から,各種応用ソフトウェアのセミナー等を企画開催している.特にITBL共同利用センターにおいては,実際にITBL環境を利用して,バイオ関連やナノテクノロジー関連,そして流体・構造解析関連のセミナー等を実施している.今回,これらセミナーの中で,有限要素解析(FEM)に注目し,産業界や大学等の研究者,技術者を対象に,ITBL環境における大規模並列有限要素解析に移行する,あるいはチャレンジする足がかりとなるようFEMの教育教材整備を行ったので,ここにその内容を報告する.


320331
SPring-8 BL11XUにおける液体窒素冷却シリコン分光結晶の特性評価
戸澤一清* ; 桐山幸治* ; 三井隆也 ; 塩飽秀啓 ; 原見太幹
JAERI-Tech 2004-041; Mar.2004,27p.

 大型放射光施設SPring-8原研ビームラインBL11XUの分光結晶として,水冷ダイヤモンド結晶に換わり液体窒素冷却Si結晶を導入した.BL11XUでは6keVから70keVまでの広範囲のX線エネルギーを利用するために,Si(111)及びSi(311)の2個の結晶面を入射X線に垂直な水平軸(X軸)駆動ステージにより切り替えることのできるシステムを開発した.まず,結晶ホルダの組立などにより結晶に発生する歪みを見積もるために,結晶ホルダに結晶を組み込んだ状態における結晶性の評価をオフラインで行った.MoKα1線を用い二結晶平行配置で両結晶面の第二結晶についてX線の結晶面における入射位置を変化させてロッキングカーブ測定を行った.得られたロッキングカーブの半値幅はいずれもX線の入射位置に依存せず一様で,理論値とほぼ同等であり,結晶性が良いことがわかった.BL11XUにおいてアンジュレータ放射光を用いて強度測定及びロッキングカーブ測定を行った.その結果,いずれの結晶面もX線強度が増加し,熱負荷による影響が見られず,冷却性能も良好であることがわかった.


320408
HTTRの原子炉入口温度制御系の試験結果
齋藤賢司 ; 中川繁昭 ; 平戸洋次 ; 近藤誠 ; 澤畑洋明 ; 土山賢* ; 安任敏雄* ; 茂木利広 ; 水島俊彦 ; 中澤利雄
JAERI-Tech 2004-042; Apr.2004,26p.

 HTTRの原子炉制御系は,原子炉出力制御系,原子炉入口温度制御系及び1次冷却材流量制御系等から成り立っており,1次冷却材流量一定条件の下に,原子炉出力30MW,原子炉出入口冷却材温度850℃/395℃を達成している.本報告書は,原子炉制御系のうち,原子炉入口温度制御系について,HTTRの出力上昇試験において実施した制御特性試験の結果を示すものである.試験の結果,外乱に対して原子炉入口冷却材温度を安定に制御できる制御パラメータを選定することができた.また,選定した制御パラメータにより,原子炉入口温度制御系が定められた制御変動幅内での安定した温度一定運転ができること,及び原子炉運転中の外乱に対して,原子炉入口冷却材温度を発散させることなく,安定に追従できることを確認した.


320332
均一照射キャプセル開発のための試験報告
菊地泰二 ; 石川和義 ; 松井義典 ; 板橋行夫
JAERI-Tech 2004-043; Mar.2004,21p.

 JMTRにおける原子炉材料の照射試験は,常に高い精度の照射温度,中性子照射量及び中性子スペクトルを要求されている.一般的な要求は,JMTRの最良な照射孔を選ぶことで対応している.しかし,より正確に行うためには,特殊な機構を持ったキャプセルを製作する必要がある.反射領域の照射の場合,中性子照射量は,キャプセル部品の中性子減衰により,炉心側と反対側では20〜30%の差が生じる.この照射量の不均一を緩和するため,サイクル間で遠隔による試料容器を反転させる構造とした.期待する中性子スペクトル(高速中性子/熱中性子の比)を得るために,核計算コードによってカドミウムの厚さを計算した.カドミウムは熱中性子を吸収する材料である.そのため,試料容器外側に必要な厚さのカドミウムめっきを施した.本報告では,反転機構を設けた均一照射キャプセルについて,(1)各種基礎試験,(2)その結果及び(3)実際の照射試験の評価結果について報告する.


320485
福島第二原子力発電所3号機シュラウドサンプル(2F3-H6a)に関する調査報告書(受託研究)
福島第二3号機シュラウドサンプル調査実施チーム
JAERI-Tech 2004-044; May 2004,92p.

 本報告は,福島第二原子力発電所3号機炉心シュラウド下部リングH6a溶接部外側から採取したき裂を含む材料サンプル(東京原子力株式会社が平成13年度に実施した調査の際に日本核燃料開発株式会社に保管した試料の一部)について,日本原子力研究所が第三者機関として東海研究所の照射後試験施設(ホットラボ等)において各種の検査・評価を実施し,き裂発生の原因究明に資する知見を取得することにより,調査結果の透明性を確保することを目的として実施した.本調査の結果,以下のことが明らかとなった.(1)き裂は溶接金属から約3〜9mm離れた位置に3箇所観察され,最大深さは約8mmであった.(2)2箇所のき裂破面を観察した結果,き裂破面のほぼ全面が粒界割れであったが,き裂開口部には約300μm範囲に粒内割れが観察された.(3)表面から約500μm深さまで,最高Hv400を超える硬化層が形成されていた.また,溶接金属から約3mmまでの表面層には溶接熱影響による軟化が見られた.(4)き裂の内部には,開口部からき裂の先端までほぼ全体にわたり酸化物が観察され,その酸化物は主として鉄の酸化物であった.(5)合金中に主要元素濃度の揺らぎが見られたが,き裂との間に相関性は認められなかった.本調査の結果と,溶接によりき裂付近に発生していたと考えられる引張残留応力及び炉水の溶存酸素濃度等を考慮すると,き裂は炉心シュラウド下部リング外表面の加工層において主として粒内型の応力腐食割れ(SCC)により発生後,SCCとして結晶粒界を経由して進展したと結論される.


320409
HTTRを用いた安全性実証試験におけるヘリウム系機器の健全性評価,1(受託調査)
坂場成昭 ; 中川繁昭 ; 古澤孝之 ; 橘幸男
JAERI-Tech 2004-045; Apr.2004,67p.

 高温ガス炉固有の安全性を定量的に実証し,また第4世代原子炉(Generation IV)の候補の一つであるVHTRの研究開発に資するため,HTTR(高温工学試験研究炉)を用いた安全性実証試験が実施されている.安全性実証試験のうち,1次冷却材流量の低下を模擬した試験である循環機停止試験において,1次加圧水冷却器用ヘリウム循環機3台のうち1台あるいは2台が停止される試験が2002年から2005年に実施され,全3台を停止する試験が2006年以降に計画されている.本報は,安全性実証試験における循環機1台あるいは2台停止時の加圧水冷却器の構造健全性を確認するとともに,循環機3台停止時の1次系内の自然対流発生の可能性について,出力上昇試験中に実施されたスクラム試験の実測データをもとに検討した結果を示す.


320486
Ti(0001)表面における超音速酸素分子ビーム誘起初期酸化反応
小川修一* ; 高桑雄二* ; 石塚眞治* ; 水野善之* ; 頓田英機* ; 本間禎一* ; 寺岡有殿 ; 吉越章隆 ; 盛谷浩右* ; 鉢上隼介*
JAERI-Tech 2004-046; Jun.2004,25p.

 Ti(0001)表面の初期酸化過程を調べるために,SPring-8のBL23SUに設置されている表面化学実験ステーションの表面化学反応分析装置を用いて,酸素分子の初期吸着係数の並進運動エネルギー依存性を調べた.その結果,酸素分子の並進運動エネルギーが増加すると初期吸着係数は単調に低下していくことが明らかとなった.また初期吸着係数の酸素分子ビーム入射角度依存性を調べた.その結果,初期吸着係数は分子ビームの入射角度に依存せず一定であることがわかった.以上のことからTi(0001)表面への酸素分子の解離吸着過程はTrapping-mediated dissociative adsorption機構で進行すると結論される.


320487
HTTR出力上昇試験における遮へい性能検査結果
植田祥平 ; 高田英治* ; 角田淳弥 ; 清水厚志 ; 足利谷好信 ; 梅田政幸 ; 沢和弘
JAERI-Tech 2004-047; Jun.2004,87p.

 高温工学試験研究炉(High Temperature Engineering Test Reactor: HTTR)では,1次冷却材として遮へい能力のある水ではなくヘリウムガスを用いているため,遮へい設計においては中性子のストーリーミングに特に留意する必要がある.特に,原子炉圧力容器上部には,31本のスタンドパイプが1次上部遮へい体を貫通しており,原子炉上方向への中性子ストリーミングに留意する必要がある.本報はHTTRの出力上昇試験のうち,遮へい性能検査における測定点選定の考え方,測定方法及び30MW定格出力までの出力上昇試験における測定結果についてまとめた.試験の結果,通常人の立ち入る区画の線量当量率は,中性子線が検出限界以下,γ線がバックグラウンド相当であり,運転管理上問題がないことを確認した.また,スタンドパイプ室の中性子線量当量率は,定格運転時で約120μSv/hであり,設計値(約330mSv/h)及び予測値(約10mSv/h)を十分下回り,遮へい設計の保守性を確認した.一方,スタンドパイプ室の線量当量率変化は,予測通り原子炉出力に対して非線形的に上昇することを確認した.


320488
HTTR制御棒引抜き試験の動特性解析(受託研究)
高田英治* ; 中川繁昭 ; 高松邦吉 ; 島川聡司 ; 野尻直喜 ; 藤本望
JAERI-Tech 2004-048; Jun.2004,60p.

 高温ガス炉の固有の安全性を定量的に実証するため,高温工学試験研究炉(High Temperature Engineering Test Reactor: HTTR)において,反応度投入及び炉心除熱量減少を試験として実機の原子炉で生じさせる安全性実証試験を実施している.安全性実証試験の1つである制御棒引抜き試験について,1点炉近似モデルにより試験時の動特性解析を実施した.実測値と解析値の比較から,1点炉近似モデルが試験の結果を再現できることを確認した.また,添加反応度,温度係数,物性値等の各パラメータについて,制御棒引抜き事象に対する原子炉動特性への感度を明らかにした.


320489
柏崎刈羽原子力発電所1号機再循環系配管サンプル(K1-PLR)に関する調査報告書(受託研究)
シュラウド・再循環系配管サンプル調査チーム
JAERI-Tech 2004-049; Jun.2004,44p.

 柏崎刈羽原子力発電所1号機において,原子炉再循環系配管の溶接継手部にひび割れ(以下,き裂)が確認された.本調査は,東京電力(株)が日本核燃料開発(株)にて実施するき裂を含む材料サンプルの調査・評価に関して,原研が第三者機関として調査計画の策定段階から加わり,調査中に随時試験データの評価や試験現場への立会を実施し,最終的に得られた調査データを入手し原研独自の調査報告書を作成することにより,調査の透明性を確保することを目的として実施した.本調査により,以下のことが明らかとなった.(1)き裂は,管内表面の溶接部近傍に発生しており,深さは7mm程度であった.(2)き裂部破面のほぼ全体が粒界割れであった.(3)管内表面のき裂開口部には深さ100μm程度の範囲で粒内割れを含む部分があり,その部分には加工により形成された金属組織及び硬さの上昇が見られ,き裂は硬さの最も高い部分の付近で発生していた.(4)き裂近傍の結晶粒界近傍においてごくわずかにCr濃度が低下していた.本調査の結果と,溶接によりき裂部付近で発生したと考えられる引張残留応力及び炉水中の溶存酸素濃度等を考慮すると,このき裂は応力腐食割れ(SCC)であり,材料の硬さと関係があると結論される.


320605
放射性物質を含む酸性溶液からのCs分離法の検討及びICP-AESを用いた元素分析
金沢徹* ; 日高昭秀 ; 工藤保 ; 中村武彦* ; 更田豊志
JAERI-Tech 2004-050; Jun.2004,53p.

 シビアアクシデント時における燃料からの放射性物質放出を調べるVEGA実験では,放出量評価の一環として,実験後に装置配管を酸洗浄した溶液をγ線計測し,燃料からの放出量と装置内への沈着量のマスバランスを求めている.しかしながら,照射後数年間冷却した燃料を用いた場合,短半減期核種や微量元素の定量化が不可能である.そこで,これらの放出及び移行評価を目的として,誘導結合プラズマ原子発光分光分析(ICP-AES)を用いて酸洗液中の元素分析を実施することにしている.分析に際しては,装置の汚染防止及び被曝量低減の観点から,主なγ線源であるCsを事前に溶液から除去しておく必要がある.アンモニウムモリブドリン酸(AMP)を用いるイオン交換分離法について,分離試験を実施した結果,Csを99.9%以上分離できること,また,錯化剤を併用することによって,一旦分離されたSbも回収可能であることが明らかになった.また,AMP法でCs分離したVEGA-3実験の酸洗液を,ICP-AESにより試験的に元素分析した結果,U, Sr, Zrの定量化に成功した.今後,Cs分離法として沈殿分離法も併用しつつ,ICP-AESを用いて,放出,移行挙動を明らかにしてゆく予定である.


320606
HTTR水素製造システムの確率論的手法を用いた可燃性ガス漏えい頻度評価(受託研究)
清水明 ; 西原哲夫 ; 森山耕一*
JAERI-Tech 2004-051; Jun.2004,69p.

 日本原子力研究所の高温工学試験研究炉(HTTR)は核熱利用技術開発のためメタンの水蒸気改質による水素製造システムを接続することを計画している.本システムではこれまでの原子炉設備と異なり,原子炉に近接して大量の可燃性物質を取扱うため,これらの存在を考慮した安全設計を行う必要がある.本報告では,可燃性ガス漏えいの発生頻度について確率論的手法を用いて評価した結果を述べる.可燃性ガスを内包する機器,配管を系統別に区分し,安全設計で定めた緊急遮断弁の設置,可燃性ガス二重管化等の火災・爆発対策を勘案して,漏えいの発生頻度を計算した.火災・爆発の確率は漏えい確率と着火確率の積となるが,着火確率の評価は非常に困難であるために安全側に1として検討を進めた.このため,火災・爆発が防止できる安全目標については漏えい発生頻度を10-6/年以下に設定して,安全対策の妥当性を調べた.その結果,可燃性ガス配管の二重管化,計装配管の小口径化,漏えい検知器,漏えい遮断設備等が,火災・爆発の規模を小さくし,原子力プラントを災害から防護するうえで有効であることを確認した.


320607
核融合炉第一壁の健全性
栗原良一
JAERI-Tech 2004-052; Jul.2004,39p.

 核融合動力炉の設計において,コンパクトな炉で高い核融合出力を達成しようとすれば,プラズマから第一壁やダイバータ板上に数MW/m2の熱流束と高速中性子束が作用する.その場合,第一壁表面や材料中に微小き裂が発生する可能性は十分考えられる.微小き裂が疲労やクリープなどによって有意な寸法のき裂に成長した場合,第一壁の構造健全性は非常に低くなる.第一壁内をき裂が貫通すれば,核融合炉の安全性を脅かす要因の一つになりうる.本報では,このような使用環境にさらされるフェライト鋼またはSiC/SiC複合材料で製造した核融合炉第一壁が抱える構造健全性上の課題を整理した.


320667
大強度陽子加速器用負イオン源のフィラメント寿命試験
小栗英知 ; 滑川裕矢*
JAERI-Tech 2004-053; Jul.2004,35p.

 原研とKEKが共同で推進する大強度陽子加速器計画(J-PARC)では,物質科学,原子核物理,原子力工学の分野において最先端の研究を行うため,世界最高の陽子ビーム強度を持った加速器群を建設することを目指している.この加速器用の負水素イオン源には,ビーム電流60mA以上,エミッタンス0.20πmm・mrad以下,デューティーファクター2.5%のビーム引き出しが要求され,さらに連続500時間のビーム供給が必要とされる.原研ではこれまで,J-PARCで用いる負イオン源の研究開発を進めてきた.その結果,セシウム添加状態において負イオンビーム電流72mA,規格化RMSエミッタンス0.15πmm・mradのビーム引き出しに成功し,必要なイオン源の基本ビーム性能を達成した.今回は,本イオン源のメンテナンス頻度を決める要因の一つであるソースプラズマ生成用フィラメント陰極について,寿命試験を実施した.その結果,アークパワー30kW,デューティーファクター3%の典型的な運転条件で,フィラメントの寿命は258時間有ることを確認した.さらに,フィラメント電源とアーク電源の接続方法の変更やフィラメント形状の最適化により,寿命を800時間以上に延伸できる見通しを得た.


320722
J-PARC用LAN-PLC方式放射線モニタ規格
宮本幸博 ; 酒巻剛* ; 前川修* ; 中島宏
JAERI-Tech 2004-054; Aug.2004,72p.

 本報告書は,大強度陽子加速器施設(J-PARC)の放射線安全管理設備としてLAN-PLC方式放射線モニタを導入するにあたり機器仕様の標準化を図るため,その標準規格を大強度陽子加速器施設開発センターとしてまとめたものである.LAN-PLC方式放射線モニタは,現場に配置される検出端・測定系とPLCシステムにより構成される放射線監視盤をLANで接続する形態の放射線モニタリングシステムである.本規格を作成するにあたっては,従来規格の拡張及び国際標準規格への準拠という観点を重視した.本規格により,各構成機器について,互換性,保守性及び生産性の向上が期待される.


320723
黒鉛熱伝導率に関するアニーリング効果の予備検討及びアニーリングデータ測定試験方法の検討(受託研究)
角田淳弥 ; 中野正明* ; 辻延昌* ; 柴田大受 ; 石原正博
JAERI-Tech 2004-055; Aug.2004,25p.

 高温ガス炉の炉心構成要素や炉内構造物に用いられる黒鉛材は,運転中の中性子照射により熱伝導率が大きく低下するが,減圧事故等の事故時に高温に加熱されるとアニーリング効果によって熱伝導率の回復現象を生じることが知られている.このため,保守性の観点から現状の燃料最高温度評価では考慮していないこのアニーリング効果を定量的に考慮することにより,事故時の炉心温度挙動評価の高精度化が図られ,高温ガス炉機器の健全性評価手法の高度化を達成することが可能となる.そこで本研究では,高温ガス炉の炉心温度に及ぼす黒鉛熱伝導率に関するアニーリング効果の影響について解析的な検討を行い,アニーリング効果によって,減圧事故時の燃料最高温度の解析値が約70℃低くなることを示した.これにより炉心の温度挙動解析において,アニーリング効果を適切に考慮することが重要であることが明らかになった.また,HTTRの黒鉛構造物のアニーリング効果を定量的に評価するために必要な試験方法について検討し,アニーリングデータの取得試験計画を検討した.


320794
リモートモニター用高繰り返しNd:YAGレーザー共振器長制御システムの開発(共同研究)
丸山庸一郎 ; 久保村浩之* ; 笠松直史* ; 松岡伸一* ; 中野文彦* ; 菅博文*
JAERI-Tech 2004-056; Sep.2004,14p.

 リアルタイムモニター用高平均出力波長可変固体レーザーは,単一周波数で発振する高繰り返しNd:YAGレーザー(ポンプレーザー)の第二高調波によって駆動される.ポンプレーザーは単一周波数で発振する発振器とその増幅器より構成され,光の質は発振器の特性によって決定される.発振器を外部から周波数幅の狭いシーダー光を入射させて単一周波数発振させる場合,ポンプレーザー発振器の共振周波数をシーダーの発振周波数と一致させなければならない.このためポンプレーザー発振器の共振器長を長時間一定に維持するための制御システムを試作し,その制御特性を測定した.この結果,開発した制御システムは3時間以上にわたって共振器長を一定に制御でき,共振器長が変化した場合でも1ショットで単一周波数発振にフィードバックできることを確認した.発振器光のパルス時間幅は約36ns,波長1064nmの基本波を波長532nmの光に変換して測定したポンプレーザー発振器の周波数幅は116MHzであった.また,横モードはTEM00であった.さらに,制御時の発振器のパルスエネルギーは3mJで,増幅器への入力エネルギーとしては十分高い値であった.


320795
核熱利用システムによる水素及びDME製造の経済性評価,2
椎名保顕 ; 西原哲夫
JAERI-Tech 2004-057; Sep.2004,51p.

 本研究では,昨年(2002年)に引き続き水素とDMEに着目し,高温ガス炉の核熱をトータルに利用してそれらを製造するシステムを検討して経済性評価を行い,商用プラントで生産する場合との比較を行った.その結果,水素製造に関しては,高純度ガスを生産するPSAの段数を増やして回収率を高めること等により,商用プロセスと比べて高純度水素ガスの製造単価を約17%,また,間接法によるDMEの生産の場合にも高純度水素を回収する等の工夫を加えることにより,商用プロセスに比べて約17%安く生産できることが示された.しかし,DME生産に関しては産油国で生産する方が安価であり,現在のところ核熱を用いても国内で生産する経済的優位性はない.本評価から,天然ガスからの水素製造に関しては核熱を利用すると経済的であること,さらにCO2削減効果も併せると核熱の有効性はさらに高まることが示された.


320796
TRU廃棄物試験設備の概要
赤井政信 ; 伊藤信行* ; 山口徹治 ; 田中忠夫 ; 飯田芳久 ; 中山真一 ; 稲垣真吾*
JAERI-Tech 2004-058; Sep.2004,47p.

 TRU廃棄物試験設備は,放射性廃棄物処分の安全評価において必要とされる地中における超ウラン元素(TRU元素)等の挙動に関するデータを取得することを目的として,燃料サイクル安全工学研究施設のバックエンド研究施設内に設置した.本試験設備は,地下深部に特有である還元環境下でデータ取得試験を行うための不活性ガス循環型グローブボックスシステム,放射性核種と人工バリア材及び天然バリア材との化学的・地球化学的相互作用を調べる試験装置(バリア性能試験装置)を内蔵した大気雰囲気のグローブボックスシステム,及び各種分析装置から構成されている.本報告書は,本設備を構成する各装置の原理,構成,機能(測定例),安全設計,並びに本設備を用いた研究成果についてまとめたものである.


320902
J-PARC 物質・生命科学実験施設実験装置設置マニュアル,1
中性子施設開発グループ
JAERI-Tech 2004-059; Oct.2004,106p.

 原研-KEKの大強度陽子加速器計画(J-PARC)の主要施設の1つとして,物質・生命科学実験施設の建設が進められている.施設建家の東西に配置される第1,第2実験ホールにはさまざまな実験装置が設置され,施設から供給される中性子及びミュオンビームを利用して実験的研究が行われる予定である.本マニュアルは,2004年6月時点において,実験装置の設計及び設置にあたり必要な施設側の情報を提供するとともに,施設側と実験装置設置者側との取合い点をまとめたものである.


320797
JRR-3冷中性子源装置(CNS)の運転・管理
鈴木正年 ; 羽沢知也 ; 石崎洋一* ; 小原道士* ; 稲田勝利* ; 米川光則* ; 脇田広志*
JAERI-Tech 2004-060; Sep.2004,153p.

 JRR-3冷中性子源装置(以下「CNS」という)は,研究用原子炉JRR-3の改造計画に伴って,利用性能向上の目的から設置された.原子炉で発生する中性子を冷中性子に変換する方法として熱中性子の中にわずかに含まれている冷中性子を,フィルターを用いて選別,発生させる方法と,熱中性子を極低温の減速材中に通し,冷中性子に変換する方法とがある.CNSとしては,一般的に後者が採用されていて,極低温の減速材としてその多くが液体水素を用いるため,冷凍設備と組合された装置となっている.JRR-3のCNSも液体水素を冷減速材として採用している.CNSによって得られた冷中性子は,原子炉から中性子導管を介して中性子ビーム実験孔へと導き出され,中性子散乱のような中性子物理実験に使用されたり,物質内における原子や分子の動きを観測して,生体高分子などの動的挙動を調べる研究手段として利用されている.本記録は,1989年の運転開始から2004年3月まで,JRR-3の共同利用運転にあわせて実施したCNSの運転実績と主な技術的事項をまとめたものである.


320903
ワンススルー型微小試料密度測定装置の開発
小野澤淳 ; 串田輝雄 ; 金澤浩之
JAERI-Tech 2004-061; Nov.2004,39p.

 照射済み燃料に生じるスエリング(体積膨張)は,照射による核分裂生成物(FP)のペレット内への蓄積によって発生する.スエリング率は,照射中の中性子束密度に依存するため,ペレットの中心部と外周部ではその値が大きく異なる.これらを詳細に比較するためには,ペレットから採取した幾つかの微小試料(数mgから数十mg)の密度を正確に測定する必要があるが,原研・燃料試験施設における現有の放射性試料対応型密度測定装置では,微小試料の密度を高精度で測定するのは困難である.このような背景のもとに,高い放射能を有する微小な試料の密度を,遠隔操作によって高精度かつ容易に測定を可能とするワンススルー型微小試料密度測定装置を開発した.本開発では,φ3×1tmmの試料における密度値1%TD以下,標準偏差0.05以内を目標精度とした.形状,重量,密度の異なる金属標準試料及びセラミック標準試料を用いた種々の特性試験の結果において,当該装置に期待される十分な性能を有することが確認できた.また,可動部をモーター駆動することにより測定にかかわる一連の流れを自動化し,遠隔操作にて容易に密度測定が可能となった.今後,本装置をホットセル内に設置する予定である.


320904
高繰り返し軟X線レーザー開発用ドライバーレーザーの設計と要素性能の評価
越智義浩 ; 長谷川登 ; 鈴木庸氏 ; 助川鋼太* ; 河内哲哉 ; 岸本牧 ; 永島圭介
JAERI-Tech 2004-062; Nov.2004,32p.

 繰返し頻度0.1Hzで動作する軟X線レーザー装置のドライバーレーザーとして,高繰り返しチャープパルスレーザーシステムの設計を行った.前段増幅部としてパルスの制御性にすぐれた光パラメトリック増幅器(OPCPA)を用いた.主増幅部にはレーザーガラスを用いるため,優れた放熱効果にすぐれたジグザグスラブ型増幅器を用い,小さいビームサイズでマルチパス増幅させた後,ダブルパス増幅を行う二段階増幅を採用した.また,像転送系をシステム全体に組み込むことで増幅レーザー光の空間強度分布の均一化を図った.本報告では,各部分について試作器を製作して行った増幅特性評価の結果と,それをもとに決定したシステムの最終仕様について報告する.


320905
高温工学試験研究炉の出力上昇試験,高温試験運転; 試験方法及び結果の概要
高松邦吉 ; 中川繁昭 ; 坂場成昭 ; 高田英治* ; 栃尾大輔 ; 島川聡司 ; 野尻直喜 ; 後藤実 ; 柴田大受 ; 植田祥平 ; 足利谷好信
JAERI-Tech 2004-063; Oct.2004,61p.

 高温工学試験研究炉(High Temperature engineering Test Reactor: HTTR)は原子炉出力30MW,原子炉出口冷却材温度(定格運転850℃/高温試験運転950℃)の黒鉛減速ヘリウムガス冷却型の高温ガス炉である.HTTRでは高温試験運転として単独運転を2004年3月31日に開始し,4月19日に最大熱出力30MWの状態で1次冷却材原子炉出口温度950℃を達成した後,4月23日に使用前検査として冷却材飽和値確認検査を受検した.その後,徐々に出力を降下し,5月1日に原子炉を停止した.単独運転終了後,2次側の除熱性能の改善等を目的として炉容器冷却系熱交換器の洗浄等の作業を経て,並列運転を6月2日に開始し,6月24日に使用前検査として冷却材飽和値確認検査,放射性物質濃度の測定検査等を受検した.これにより,高温試験運転にかかわる原子炉の性能試験はすべて終了し,使用前検査合格証を受領した.高温ガス炉による原子炉出口冷却材温度950℃の達成は,今回HTTRが世界で初めて成功したものである.これにより,高温ガスタービンによる高効率発電が可能となるとともに,水を原料とした水素製造に十分な温度を達成したこととなり,原子力の非発電分野での利用の可能性が広がったことになる.本報は,高温試験運転の方法及び結果の概要を示したものである.


320906
難分析長寿命核種分析のための波長安定化レーザーの開発,1; リトロー型外部共振器半導体レーザーの製作
宮部昌文 ; 小田晃一* ; 大場正規 ; 加藤政明 ; 若井田育夫 ; 渡部和男
JAERI-Tech 2004-064; Oct.2004,33p.

 多くの難分析核種が含まれる放射性廃棄物の分析方法の開発は,廃棄物のクリアランスの制度化に向けて,今後重要になることが予想される.本研究では,こうした難分析核種の分析に多段階共鳴イオン化質量分析法を適用することを目指して,その光源となる波長可変,外部共振器半導体レーザーを設計,製作した.これに半導体の種類や内部構造が異なる,青紫,赤色,赤外の各半導体レーザー素子を組み込み,発振波長や出力パワーの動作電流や動作温度による変化など,レーザーを動作,制御するための基本的な発振特性を調べた.また,回折格子の回折効率や駆動電流の電流補償量などを調整して,安定した単一縦モード発振を得る方法を確立した.これにより,いずれのレーザー素子でも,約100GHzの範囲で,モードホップの無い連続波長掃引を実現した.また,製作したレーザーを用いてネオンやルビジウム,カルシウム原子のドップラーフリー分光を行い,レーザーの発振幅を評価したほか,同位体シフトや超微細構造分裂幅の測定により,本レーザーが分光分析に必要な性能を有することを確認した.


320907
難分析長寿命核種分析のための波長安定化レーザーの開発,2; ゼーマン効果と干渉縞による4台の半導体レーザーの同時ロックシステム
宮部昌文 ; 加藤政明 ; 大場正規 ; 若井田育夫 ; 渡部和男
JAERI-Tech 2004-065; Oct.2004,19p.

 原子力施設で発生する放射性廃棄物には,既存の方法では分析が困難な核種や,分析に長時間を要する核種が数多く存在する.こうした難分析核種の分析手法を開発することは,放射性廃棄物のクリアランス制度の運用に向けて,今後重要になると考えられる.われわれは,このような核種を半導体レーザーで多段階共鳴励起し,イオン化して質量分析する方法の開発を行っているが,半導体レーザーは安価で操作が容易な反面,発振波長が時々刻々変動し,そのままでは多段階励起光源として適さない欠点がある.そこで,本研究ではゼーマン効果を利用してルビジウム原子の吸収線に波長をロックさせた半導体レーザーを製作し,さらにこれを標準として,エタロン干渉計の干渉縞を利用して,多段階励起に用いる全半導体レーザーの波長を安定化させる光源システムを開発した.この光源を用いてカルシウム原子の3段階共鳴イオン化を行い,その性能を評価した.


330004
高速中性原子・分子ビーム装置の製作とそのビーム特性評価
鉢上隼介* ; 寺岡有殿
JAERI-Tech 2004-066; Nov.2004,69p.

 広い範囲の速度を持ち,化学的に活性な原子や分子のイオン及び中性粒子ビームを利用することによって,さまざまな材料表面での化学反応の研究を進展させることを目的として,高速中性原子・分子ビーム装置を製作した.本報告書では装置の詳細と,実際に発生させた酸素原子・分子のイオンビーム及び中性粒子ビームの特性について解説する.本装置はプラズマイオン源,静電レンズ系,質量選別器,電荷交換室から構成された超高真空装置である.加速エネルギーが8keVのとき全酸素イオン電流値は52マイクロアンペア,20eVのときでも17マイクロアンペアが得られている.また,質量分離も良好で,20eVのとき酸素分子イオンビームの電流値は11マイクロアンペア,酸素原子イオンビームでは5.5マイクロアンペアが得られた.イオンビームと酸素ガスとの電荷交換反応によって1平方センチメートルあたり毎秒10の12乗個程度のフラックス密度の中性原子・分子ビームが得られることがわかった.


330005
高品質メタンハイドレートの合成と評価
井川直樹 ; 石井慶信 ; 星川晃範* ; 山内宏樹 ; 下山智隆*
JAERI-Tech 2004-067; Nov.2004,23p.

 従来よりも微細な氷を用いることでメタンハイドレートを合成した.中性子回折実験及びメタンハイドレート分解実験によるメタンガス放出量の測定の結果,合成したメタンハイドレートが,実験精度以内で,不純物や未反応の氷を含まない高品質なものであることがわかった.なお,メタンハイドレートの中性子回折データを用いてRietveld解析を行い,さらにMEM解析を行った結果,メタンハイドレート中の各構成原子の散乱長に基づく各原子位置の密度分布を可視することができた.


330006
Structural analysis of support structure for ITER vacuum vessel
武田信和 ; 大森順次* ; 中平昌隆
JAERI-Tech 2004-068; Dec.2004,27p.

 ITER真空容器はトリチウムや放射化ダスト等の放射性物質を閉じ込める安全機器である.本報告では,真空容器支持脚について,真空容器下部ポートから支持する独立支持構造を提案する.この独立支持方式は2つの利点を持つ.一つは,真空容器とトロイダル磁場コイルとの大きな温度差による熱荷重が軽減される点であり,もう一点は,トロイダル磁場コイルが真空容器と独立であることにより,安全機器として分類される必要がない点である.この支持脚の健全性を評価するため,真空容器の詳細モデルを用いて応力解析を実施した.その結果,真空容器とトロイダル磁場コイルとの相対変位は,設計クリアランスの100mmに対して15mmに押さえられた.また,支持脚を含む真空容器の応力はASMEで定められた許容値以下に押さえられた.これらの評価によって,提案する独立支持構造が真空容器支持脚として成立することが確認された.


330007
ITERトカマク本体縮小試験体の振動パラメータ解析
中平昌隆 ; 武田信和 ; 浦田一宏*
JAERI-Tech 2004-069; Dec.2004,55p.

 本研究では,ITERコイル系振動試験体の振動特性試験を行う際に,ベースプレートに試験体の振動特性に影響を及ぼさず,かつ十分な剛性を与えるため,ベースプレートの板厚を現状の55mmから100mm, 150mm, 190mmへと増加させ4ケースの振動解析を実施し,この結果から,振動特性に影響を与えないベースプレートの改造案を検討した.系全体の1次モードで判断した場合,ベースプレート板厚を150mm超とすれば,剛体の場合の9割程度の剛性が得られることがわかった.そこで,板厚を増加させる方向で改造案を考え,板材の供給性,搬送可能性,溶接可能性から判断し,300mmが限界と考えられるので限界挙動を見るために,ベースプレート板厚を300mmとして再度解析を行った.この解析結果では,全体系の曲げ1次モードの固有値は,剛体の場合の97%にまでなった.ただし,ベースプレートをテストフロアに固定するボルト長が延長されたため,ボルトのねじれモードが発生した.総合的に判断し,150mmあるいは190mm程度で十分な剛性が得られており,これ以上板厚を増やす必要はないと結論した.


330008
放射線管理用試料集中計測システムの更新
川崎克也 ; 望月薫* ; 鈴木武彦 ; 木内伸幸
JAERI-Tech 2004-070; Dec.2004,50p.

 放射線管理用試料集中計測システムは,日本原子力研究所東海研究所の施設及び環境の放射線管理に必要な多種多数の試料について,測定及びデータ解析を集中的に行うものであり,1981年度から本格的な運用を開始し現在では年間2万件を超える測定に使われている.本システムの中枢をなすコンピュータは,機器の老朽化が進むとともに,メーカーサポートの終了が相次いだことから,安定な運用に支障が生じてきた.そこで,2003年度にコンピュータ関連機器の更新とシステムの再構築を行った.今回の更新では,コンピュータのハードウェア構成を,データサーバとパーソナルコンピュータの複合型のクライアントサーバーシステムとした.また,ソフトウェアには,試料情報登録用にイントラネットワークを利用したWeb方式を新たに導入し,さらに,依頼試料に対する進捗状況の確認及び結果の閲覧を,利用者自身のパーソナルコンピュータからオンラインで直接行える機能も新たに追加した.この結果,利用者の利便性をさらに広げることができた.


330139
Research and development of remote maintenance equipment for ITER divertor maintenance
武田信和 ; 角舘聡 ; 中平昌隆
JAERI-Tech 2004-071; Feb.2005,85p.

 ITERのダイバータは,保守を容易にするために60個のカセットに分割されており,遠隔保守機器を用いて,90度ごとに設けられた保守ポートを経由して交換される.25トンのカセットは,強い放射線環境の下で,狭隘な空間内での搬送と2mm以下の精度での設置が要求されている.これらの要求に基づき,以下の設計及び試験を実施した.(1)限られた空間での大重量カセットの搬送にリンク機構を適用するための検討を行った.空間的制約と駆動力効率を考慮してリンク角度を最適化し,コンパクトな搬送用機構を設計した.試験の結果,2つの搬送用機構を用いて30トンの搬送に必要な持ち上げ力を達成した.(2)搬送用機構と同様にリンク角度を最適化し,コンパクトなリンク機構をカセットの固定に用いるための検討を行った.試験の結果,設置の際に,初期の位置誤差が5mmの状態から最終的な位置決め精度として0.03mmを達成した.これにより,要求性能である2mmの精度を満足した.(3)搬送装置の実規模試験体を用いて,光ファイバセンサ等によるセンサベース制御の試験を行った.試験の結果,光ファイバセンサを用いて,0.16mmの位置決め精度を達成し,十分な水準の精度を得た.また,仮想現実によって遠隔保守機器とダイバータ等を模擬したヒューマンマシンインタフェースを用いた試験も実施した.


330140
Dynamic analysis of ITER tokamak based on results of vibration test using scaled model
武田信和 ; 角舘聡 ; 中平昌隆
JAERI-Tech 2004-072; Jan.2005,43p.

 本研究では,トロイダル磁場コイルや真空容器等のITERの主要機器に用いられる板バネを用いた複雑な構造の支持構造体に関して,剛性の荷重方向依存性等の基礎的機械特性の取得を目的として,小規模試験体を用いた振動試験を行った.この試験結果に基づき,ITERの真空容器とトロイダル磁場コイルの支持構造について数値解析を実施して,支持脚の簡易モデル化を提案した.このモデルは,支持脚を強軸と弱軸の剛性を模擬する2本のバネ要素のみによってモデル化したバネモデルであり,実験結果に基づいて実際の構造を忠実に模擬したシェルモデルとよく一致し,バネモデルの有効性が検証された.提案したバネモデルを用いて,ITERの候補地である六ヶ所村における設計地震動に対する健全性を評価するため,真空容器とトロイダル磁場コイルの動解析を実施した.結果として,真空容器とトロイダル磁場コイルとの間の相対変位は8.6mmであり,設計要求である100mmを大きく下回り,地震時におけるITERトカマクの主要機器の健全性が確認された.


330141
ITERトカマクの耐震性評価にかかわる振動試験計画
武田信和 ; 中平昌隆
JAERI-Tech 2004-073; Jan.2005,59p.

 ITERトカマクは異なる運転温度の機器からなり,その温度差による熱変形を許容するために,支持脚に柔軟性を持たせている.このような構造上の特徴から,ITERトカマクは複雑な振動挙動を示すことが予想され,耐震設計においてはこの点について十分に考慮する必要がある.このような構造はこれまでに例がないため,耐震設計に用いる数値解析モデルを事前に実験により検証することが必要不可欠である.特に,支持構造については板バネとボルト等からなる複雑な構造体であり,その機械的特性の把握は重要である.本報告は,ITERトカマクの耐震設計に必要となる一連の振動試験計画について,その全体計画を示すものである.トカマク全体の振動特性を把握するための試験は,可能であれば実規模の試験体を用いて行うことが望ましいが,試験設備の制約から縮小試験体を用い,スケール則を適用して試験結果を解釈する.また,スケール則が適用できない現象である減衰特性については,支持脚の実規模試験体を用いて試験を実施する.さらに,真空容器縮小試験や支持脚小型縮小試験といった,その他の補完的な試験も合わせて計画されている.


330009
鋼材に付着した鉛ビスマスの洗浄技術の検討,1; 基礎試験
斎藤滋 ; 佐々敏信 ; 梅野誠* ; 倉田有司 ; 菊地賢司 ; 二川正敏
JAERI-Tech 2004-074; Dec.2004,41p.

 原子炉で使用した燃料中のマイナーアクチニド(MA)を短寿命の核種に核変換するシステムとして,加速器駆動システム(ADS)の開発が世界各国で進められている.ADSの核破砕ターゲット及び炉心冷却材には鉛ビスマスが検討されている.機器や照射試料に付着した鉛ビスマスを効率よく除去する技術は,被曝低減や交換部品の汚染低減と言った観点から重要な開発項目である.本研究の目的は,鉛ビスマスのさまざまな洗浄方式について洗浄能力・特徴を把握し,目的に応じた方式を提案するための基礎的な知見を得ることである.3種類の洗浄試験の結果,170℃でのシリコンオイル洗浄では細部の鉛ビスマスは除去しきれず,脱脂綿等で擦る必要があった.母材への影響はほとんど見られなかった.混酸(酢酸,過酸化水素,エタノール=1:1:1)洗浄では,浸すだけでほぼ完全に鉛ビスマスは除去されたが,シリコンオイルと比べ母材表面がやや黒ずんでいるように見られた.硝酸洗浄では,浸すだけでほぼ完全に鉛ビスマスは除去されたが,F82Hの母材表面が腐食された.


330142
放射線グラフト重合捕集材合成装置及びガス吸着材合成反応装置の製作と設置
瀬古典明 ; 武田隼人* ; 笠井昇 ; 玉田正男 ; 長谷川伸 ; 片貝秋雄 ; 須郷高信*
JAERI-Tech 2004-075; Jan.2005,51p.

 放射線グラフト重合技術を利用して合成した繊維状捕集材は,極低濃度の重金属や有害気体成分に対する選択吸着特性に優れている.液相グラフト重合反応によって不織布や織布などの基材に各種金属に対して選択性の高い官能基を導入するためのグラフト重合装置として捕集材合成反応装置を設置した.また,グラフト重合反応と洗浄工程を連続的に処理可能な装置としてガス吸着材合成反応装置を設置した.これら両装置は,グラフト重合の反応可能な酸素濃度までの制御を可能にし,定量的にグラフト物を得ることができた.槽内温度も反応に必要な温度範囲を満たした.連続処理の重要課題である基材の走行は1〜10m/minの範囲での運転を可能にしたことで,この面からもグラフト率の制御を可能なものにした.GMAのグラフト重合反応を行った結果,グラフト率は40〜70パーセントの範囲で制御できることを確認できた.


330055
有用金属捕集材実海域試験分別溶離試験装置の製作と設置
瀬古典明 ; 笠井昇 ; 玉田正男 ; 長谷川伸 ; 片貝秋雄 ; 須郷高信*
JAERI-Tech 2004-076; Jan.2005,78p.

 放射線グラフト重合法を応用した繊維状アミドキシム樹脂の実海域での有用希少金属捕集性能を評価するため,200kgの捕集材を浸漬する試験を1999年9月から開始した.分別溶離試験装置は本試験で実海域に浸漬した捕集材から有用金属を効率よく分別溶離回収する装置であり,むつ事業所内関根浜岸壁に設置した.本装置は海から引き上げた捕集材カセット(290×290×160mm)の前処理を行う前処理設備と有用金属を溶離回収する分別溶離設備から構成される.本報告ではこの分別溶離試験装置の設計,製作,設置について記載した.前処理では実海域から引き上げた捕集材カセットを洗浄し,付着した海洋生物や汚泥等の除去を行った.次いで,72個単位で捕集材カセットを溶離ユニット(1210×1210×H1460mm)に充填し,溶離液のリークがないよう不織布をパッキンとして隙間に充填した.分別溶離では溶離ユニットを分別溶離装置内に装填した後,低濃度塩酸溶液(0.01M)でのアルカリ,アルカリ土類金属の除去回収,次いで高濃度塩酸溶液(0.5M)で有用金属(特にウラン)の溶離回収を行った.


330143
ダブルターゲットX線レーザー用高安定ターゲット装置の開発
助川鋼太* ; 岸本牧 ; 加道雅孝
JAERI-Tech 2004-077; Jan.2005,21p.

 現在X線レーザー研究グループでは,ダブルターゲット方式を用いた高輝度・高空間コヒーレンスのX線レーザーの開発を行っている.ダブルターゲットX線レーザーは,X線干渉計測やX線スペックル計測などに応用される.ターゲットアライメント精度は,第1ターゲットから生成された種光を第2ターゲットに導入するために非常に重要である.要求アライメント精度を達成するためにターゲットアライメント装置の開発を行い,高精度及び高安定という点において新しいターゲットアライメント装置を設計,製作した.ターゲット位置の安定性に関して,真空引きのターゲット真空容器の歪みによるターゲット位置変動は±10μm以下,ポンプの振動によるターゲット位置変動は4μrad以下であり,高い安定度を得られることを確認した.また,ターゲットアライメント装置の分解能はそれぞれで並進方向で6μm,回転方向で20μrad,安定度は±12μm, ±40μradであることがわかった.


330144
NUCEF分析業務報告書; 平成15年度
清水香織 ; 軍司一彦* ; 芳賀孝久* ; 深谷洋行 ; 薗田暁 ; 坂爪克則 ; 境裕* ; 圷英之* ; 新妻泰* ; 井上猛 ; 白橋浩一
JAERI-Tech 2004-078; Feb.2005,27p.

 燃料サイクル安全工学研究施設(NUCEF)の分析設備では,定常臨界実験装置(STACY),過渡臨界実験装置(TRACY)及び燃料調製設備の運転にあたって,STACY及びTRACYの溶液燃料である硝酸ウラニル溶液に関する分析を実施している.平成15年度は,STACY及びTRACYにおける臨界実験前後の硝酸ウラニル溶液の性状分析,硝酸ウラニル溶液調製のための分析を行うとともに,核燃料物質の計量管理のための硝酸ウラニル溶液の分析も行った.また,STACYを用いたプルトニウム臨界実験に備えて,平成12年度より実施している硝酸プルトニウム溶液燃料の調製条件を確認するための予備試験のうち,第3回のウラン(U)/プルトニウム(Pu)抽出分離試験が実施されたほか,U/Pu抽出分離試験で発生した抽出廃液を処理するための予備実験も行われ,当該試験にかかわる分析を合わせて行った.平成15年度における総分析試料数は,156試料であった.本報告書は,平成15年度に実施した分析等の業務についてまとめたものである.


330145
Calculation of age-dependent dose conversion coefficients for radionuclides uniformly distributed in air
Tran, V. H.* ; 佐藤大樹 ; 高橋史明 ; 津田修一 ; 遠藤章 ; 斎藤公明 ; 山口恭弘
JAERI-Tech 2004-079; Feb.2005,37p.

 空気中に一様分布する光子放出核種からの外部被ばくに対し,年齢依存線量換算係数を計算した.6種類の年齢群の数学ファントム及びモンテカルロ放射線輸送コードMCNPを用いて,半無限の空気中線源からの照射による臓器及び組織線量を計算した.臓器線量は,10keVから5MeVまでの12種類の単一エネルギー線源に対して計算した.得られた臓器線量から各光子エネルギー及び年齢群に対する実効線量を算定し,これに基づき原子力施設の安全評価上重要とされる160核種に対する実効線量換算係数を計算した.換算係数は,単位濃度及び時間あたりの実効線量(Sv per Bq s m-3)で与えた.


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