研究開発報告書類


JAERI-Research
2005年1月〜9月


330138
VICTORIA2.0コードを用いた燃料からの放射性物質放出に関するVEGA-1及び-3実験解析
日高昭秀* ; 工藤保 ; 木田美津子* ; 更田豊志
JAERI-Research 2005-001; Feb.2005,67p.

 シビアアクシデント時における燃料からの放射性物質の放出を調べるVEGA計画では,昇温中のFPの放出及び移行沈着を把握するため,それらを機構論的モデルに基づいて評価できるVICTORIA2.0コードを用いて実験解析を実施することにしている.本報では,同コードのVEGA実験解析への適用性を調べるため,試験後分析を全て終了しているVEGA-1及び-3実験について,Csを対象とした解析結果について記述する.VEGA-1実験のCs放出履歴から求めた結晶粒内拡散に関する相関式は,最高温度の異なるVEGA-3実験のCs放出割合を適切に再現した.この相関式をVICTORIA2.0コードに適用して実験装置配管内へのCs沈着分布を評価したところ,沈着量及びフィルタ捕集量を過少評価した.その原因は,同コードはFPを起源とするエアロゾルのみしか考慮しておらず,エアロゾル化を過小評価するためであった.そこで,FP以外の微粒子を凝縮核とした不均質核形成によるエアロゾル化と粒成長を考慮することにより,同コードはVEGA実験におけるCs沈着分布を適切に予測できることを示した.

330242
Corrosion behavior of austenitic and ferritic/martensitic steels in oxygen-saturated liquid Pb-Bi eutectic at 450℃ and 550℃
倉田有司 ; 二川正敏 ; 斎藤滋
JAERI-Research 2005-002; Feb.2005,37p.

 加速器駆動核変換システムの核破砕ターゲット及び冷却材として用いられる液体鉛ビスマス中の腐食挙動に及ぼす温度及び合金元素の影響を明らかにするため,450℃及び550℃の酸素飽和した液体鉛ビスマス中で,種々のオーステナイト及びフェライト/マルテンサイト鋼について,3000hの静的腐食試験を実施した.腐食深さを,内部酸化を含む酸化膜の厚さ,結晶粒界腐食深さ,形成したフェライト層の厚さの和と定義した.450℃での腐食深さは,フェライト/マルテンサイト鋼,オーステナイト鋼にかかわらず,鋼材中Cr量の増加とともに減少する.450℃では3つのオーステナイト鋼で,Ni及びCrの明らかな溶解は起こらなかった.フェライト/マルテンサイト鋼の腐食深さは,550℃でもCr量の増加とともに減少する.JPCA及び316ステンレス鋼のオーステナイト系ステンレス鋼の腐食深さは,550℃でのNiの溶解に起因するフェライト化によって,フェライト/マルテンサイト鋼より大きくなる.約5%のSiを含むオーステナイト系ステンレス鋼は,保護的なSi酸化膜が形成し,Ni及びCrの溶解を防ぐため,550℃で優れた耐食性を示す.


330243
Hydrogen permeation measurement of the reduced activation ferritic steel F82H by the vacuum thermo-balance method
吉田肇* ; 古作泰雄* ; 榎枝幹男 ; 阿部哲也 ; 秋場真人
JAERI-Research 2005-003; Mar.2005,13p.

 核融合炉におけるトリチウム漏洩量見積りの高精度化に資するため,低放射化フェライト鋼の水素透過速度を真空熱天秤法で測定した.本測定法では,水素ガスを封入した低放射化フェライト鋼F82H製の試料カプセルを用意し,試料カプセルを真空中で等温加熱して,試料カプセルを透過しカプセル表面から脱離する水素を以下の2つの独立した方法で測定する.すなわち,試料カプセルの正味の重量減少量と,試料カプセルからの水素脱離による排気ガス分析である.このような手法で測定の信頼性を増すことが可能である.本実験条件で,正味の重量減少量から求めた水素透過速度と排気ガス分析から求めた値の比は,1/4から1/1であった.本実験を通して,真空熱天秤法がF82Hの水素透過速度を評価するために有効な手段であることが示された.


330312
格子ボルツマン法による水平層状二相流の界面成長及び変形の数値解析
海老原健一
JAERI-Research 2005-004; Mar.2005,121p.

 本報告書は,まず,格子ガス法及び格子ボルツマン法の二相流体モデルの二相流シミュレーションへの適用妥当性及び有用性を検討した.その結果に基づき,格子ボルツマン法の二相流体モデルであるHCZモデルを,基本的かつ重要な二相流流動様式の1つである水平層状二相流のシミュレーションへ適用した.その結果,HCZモデルの界面は,Kelvin-Helmholtz不安定性を満足することが確認された.またTaitelとDuklerの理論的流動様式線図(T-D線図)の界面成長に関する曲線が再現された.さらに,幅が狭い流路では,流れの三次元性の影響が顕著となり,T-D線図が与える以上の低密度相のみかけ流速が界面成長に必要であることが明らかとなった.次に,より複雑な界面現象を伴う液滴発生のシミュレーションを行い,Ishii-Grolmesの実験相関式を,実験データの分布範囲において,再現できることがわかった.


330313
低減速軽水炉用燃料被覆管の力学的特性評価,1(受託研究)
金子哲治* ; 塚谷一郎* ; 木内清
JAERI-Research 2005-005; Mar.2005,23p.

 低減速軽水炉の炉心は,高転換比と超高燃焼度を同時に達成するために,MOX燃料とUO2ブランケットの各ペレット領域を多段に積層した燃料要素から構成される.その燃料要素の設計では,長手方向におけるトランジェントな熱出力分布に起因した局所的変形挙動の評価が重要となることから,実炉で想定される燃料被覆管の温度分布及び応力分布の数値解析を行い,局所的な変形挙動の評価試験条件を選定した.それをもとに,燃料被覆管の熱変形挙動評価試験装置の温度分布制御等の再現試験を行い,最適な実験条件を選定した.併せて,被覆管の熱変形挙動で想定される疲労及びクリープ及び熱物性等の基礎データを取得して,燃料被覆管の多軸応力場における力学的特性評価に必要となる試験・解析条件を整えた.


330314
中性粒子入射装置用高出力負イオン源と加速器の開発研究
井上多加志
JAERI-Research 2005-006; Mar.2005,87p.

 国際熱核融合実験炉ITER用中性粒子入射装置(NBI)実現の1ステップとして,高出力の負イオン源と加速器を開発した.負イオン表面生成の理論的検討から,体積/表面積比を最大化して高密度水素原子生成を実現するカマボコ型負イオン源を開発した.さらに,高速電子(Te>1eV)による負イオン損失を抑制し,かつ水素原子の負イオン引き出し領域への拡散を妨げない「外部磁気フィルター」を装着し,低ガス圧力(0.3Pa)においてITERの要求性能を上回る高電流密度(300A/m2)のH-イオン生成を達成した.ITER加速器では放射線誘起伝導によりSF6等の絶縁ガスを使用できないため,真空絶縁技術の開発を行った.加速器運転中の圧力は0.02〜0.1Paとなることから,真空アーク放電並びにグロー放電の絶縁設計ガイドラインを策定し,真空絶縁加速器を設計した.加速管の沿面放電防止のために陰極接合点の電界を低減し,1MVを安定に保持できる真空絶縁のMeV級加速器を開発した.これまでに900keV, 80A/m2のH-イオン(全電流値:0.11A)を数百ショット加速することに成功し,ITER NBIの実現に向けた見通しを得た.


330244
Evaluation of RF properties by orifice design for IFMIF RFQ
前原直 ; 森山伸一 ; 三枝幹雄* ; 杉本昌義
JAERI-Research 2005-007; Mar.2005,11p.

 IFMIF(国際核融合材料中性子中性子照射施設)用RFQ(高周波四重極加速器)のためのオリフィスを設計及び製作し,低電力による高周波特性の評価を行った.その設計されたオリフィスは,RFQモックアップモジュールに取付け,四重極運転モードTE210に対する共振周波数及びキャビティ間の位相差を測定した.この結果,オリフィスのスリット方向をRFQ壁に流れる電流方向と同じにした条件では,高周波特性はオリフィスによる影響を受けないことが判明した.これらの設計されたコンダクタンスは,221から240liter/secであり,IFMIF RFQにおける4.1mのセントラルモジュールに4個のオリフィスを設けることにより,5×10-7[Pa]レベルの真空度を達成できる結論を得た.


330315
FCAにおける水冷却増殖炉模擬第1炉心(XXII-1(65V))における増殖指標の測定と解析(受託研究)
福島昌宏 ; 岡嶋成晃 ; 安藤真樹 ; 山根剛 ; 片岡理治*
JAERI-Research 2005-008; Mar.2005,57p.

 高速炉臨界実験装置FCAに構築した水冷却増殖炉模擬第1炉心FCA-XXII-1(65V)において,水冷却増殖炉の重要な核特性である増殖指標の評価を目的として反応率比の測定及び解析を行った.劣化ウラン箔,濃縮ウラン箔を用いた箔放射化法により238U捕獲反応率対235U核分裂率(C8/F5)の測定を行い,また,絶対校正された核分裂計数管を用いて239Pu核分裂率対235U核分裂率(F9/F5)及び238U核分裂率対235U核分裂率(F8/F5)の測定を行った.箔や核分裂計数管の形状及び測定位置をMVPコードによりモデル化し,セル平均の反応率比を導出するための補正因子を算出した.これらの補正を考慮し,セル平均の反応率比は,F8/F5=0.0201±0.9%, F9/F5=0.759±1.2%及びC8/F5=0.0916±1.4%となった.以上の結果から,増殖指標はC8/F9=0.121±1.8%と求まった.解析はJENDL-3.2核データ・ライブラリーに基づくJFS-3-J3.2Rの70群定数セットを用いた.標準的な高速炉用セル計算コード及び,拡散計算コードにより,セル平均の反応率比を求めた.ただし,炉心中心の燃料セル計算に対しては,超詳細群セル計算コードPEACO-Xを用いた.反応率比F9/F5, F8/F5におけるC/E値はそれぞれ1.02及び1.03となり,計算値が実験値を若干過大評価する結果となった.また,C8/F5におけるC/E値は1.06となり,計算値が実験値を過大評価することを確認した.以上の解析から,増殖指標C8/F9のC/E値は1.03と求まり,計算値が実験値を若干過大評価する結果となった.


330316
医療照射中ホウ素濃度の推定法の検討とその誤差評価
柴田靖* ; 山本和喜 ; 松村明* ; 山本哲哉* ; 堀直彦 ; 岸敏明 ; 熊田博明 ; 阿久津博義* ; 安田貢* ; 中井啓* ; 能勢忠男* ; 村山洋二
JAERI-Research 2005-009; Mar.2005,41p.

 ホウ素中性子捕捉療法において腫瘍及び正常組織への照射線量を正確に評価するためには照射中性子束と血液中ホウ素濃度の測定が必須であるが,中性子照射中に患者からの直接の採血をすることは困難である.したがって,初回手術時に少量のホウ素化合物BSHを投与し,経時的に血液中ホウ素濃度を測定する低量投与試験を行い,照射当日の濃度予測を行った.また,低量投与試験が行えない場合,照射当日のホウ素濃度測定のみで照射中のホウ素濃度が精度よく予測できる方法についても,Two compartment Modelを用いた方法を検討した.BSH末梢静脈内点滴投与後の血液中ホウ素濃度が予測の95%信頼区間に入っていれば,照射中の予測値と実測値の誤差は6%程度であった.投与後6または9時間後の血液中ホウ素濃度が予測の95%信頼区間に入っていない場合は,比率補正することにより誤差を12%程度に抑えることができた.また,Two compartment Modelを用いた予測方法では,最適な評価値に対して±4.9%(標準偏差)の予測誤差で推定可能であった.これらの方法により,照射中の血液中ホウ素濃度は合理的に正確に予測可能であり,安全で効果的な治療を行うことができる.


330317
個別読み出し型二次元中性子ガス検出器の開発; 中性子ビームによる動作試験と検出システムの構築
田中浩基* ; 山岸秀志 ; 中村龍也 ; 曽山和彦 ; 相澤一也
JAERI-Research 2005-010; Apr.2005,16p.

 大強度パルス中性子源を用いた中性子散乱実験用次世代中性子検出器として個別読み出し型中性子ガス検出器の開発を行った.本検出システムでは分光器ごとに異なる要求性能(計数率,効率,n/γ比,位置分解能,大面積化等)に対して検出素子を適切に選択することで柔軟に対応することが可能である.検出素子としてMWPCを用いた場合の本システムの中性子検出器基礎特性及び二次元イメージングの性能試験を行った.ガス条件を5atm 30% C2H6(0.26atm 3He)としたときにガスゲイン450で長時間安定に動作し,中性子ビームサイズを考慮した位置分解能は陰極及びバックストリップの方向で1.4, 1.6mm(FWHM)であった.また検出素子の有感領域内における検出効率の均一性は最適アンプ閾値において良好であることを確認した.


330400
Analysis on non uniform flow in steam generator during steady state natural circulation cooling
Susyadi* ; 与能本泰介
JAERI-Research 2005-011; Jun.2005,64p.

 ROSA/LSTF実験で観測された蒸気発生器(SG)U字管群での非一様流動に着目しPWRにおける定常自然循環を検討した.RELAP5/MOD3コードを用いた解析では,SG挙動を,一次系を1本,又は,5本,又は,9本の平行流路で表し,実験に基づく境界条件を使用するSGモデルを用いて解析した.その結果,5ないし9本の平行流路を用いる場合,逆流,流入と排水,二相成層のような重要な非一様流動現象や,実験と同様な安定な出口流動を再現できることがわかった.しかし二次系への伝熱量は最大15%過小評価された.さらに,特に低圧条件において注意深く入口流量を設定する場合のみ安定な自然循環挙動が得られるなど,定常状態を確立するための問題が見いだされた.


330401
我が国の長期エネルギー需給シナリオに関する検討
佐藤治
JAERI-Research 2005-012; May 2005,32p.

 2050年に至る我が国のエネルギー需給の動向と原子力エネルギー利用の将来的なポテンシャルについて検討を行った.この目的のため,今後の経済成長,エネルギー原単位改善,各種エネルギー源とエネルギー技術の価格と利用可能量等を設定した.次に,これらの前提条件に基づいて原子力エネルギー利用規模の異なる3ケースの長期エネルギーシナリオを作成し,その比較評価を通じて原子力エネルギー利用の役割を検討した.この検討の結果,原子力エネルギー利用の拡大は化石燃料の消費量を低減し,エネルギーセキュリティの向上と低コストでの二酸化炭素排出量の大幅な低減に貢献できる可能性を有することが示された.


330480
Proposal of new 235U nuclear data to improve keff biases on 235U enrichment and temperature for low enriched uranium fueled lattices moderated by light water
Wu, H.* ; 奥村啓介 ; 柴田恵一
JAERI-Research 2005-013; Jun.2005,31p.

 本研究では,低濃縮ウラン燃料体系におけるkeff過小評価の濃縮度依存性について検討した.ベンチマークテストは,プレリミナリ版のENDF/B-VIIとCENDL-3.1のウラン断面積を含むさまざまな評価済み核データファイルを使用して行った.また,微濃縮体系で最近のJENDLやENDF/Bのウラン断面積評価にみられる温度上昇に伴うkeffの過小評価についても検討を行った.235Uと238Uの核データの書き換え解析を通して,上記の両問題を解決する新しい235U核データ評価を提案する.新しい評価データのテストは,ICSBEPハンドブックの低濃縮または高濃縮の金属または溶液燃料を含む多様なウラン燃料体系で実施した.その結果,提案する新しい235Uとプレリミナリ版のENDF/B-VIIの238Uのデータを組合せると,多くのベンチマーク問題に非常に良い結果を与えることが判明した.


330402
Experimental study on secondary depressurization action for PWR vessel bottom small break LOCA with HPI failure and gas inflow (ROSA-V/LSTF test SB-PV-03)
鈴木光弘 ; 竹田武司 ; 浅香英明 ; 中村秀夫
JAERI-Research 2005-014; Jun.2005,170p.

 大型非定常試験装置(LSTF)を使用したROSA-V計画において,加圧水型原子炉(PWR)の小破断冷却材喪失事故(SBLOCA)模擬実験を実施し,高圧注入系(HPI)不作動時に重要なアクシデント・マネージメント(AM)策の炉心冷却効果を調べた.LSTFはウェスティングハウス社の4ループPWR(3423MWt)を実高,容積比1/48で模擬する装置である.この実験(SB-PV-03)では,PWRコールドレグ0.2%破断に相当する原子炉容器底部計装管10本破断を模擬し,HPIの不作動と蓄圧注入系(AIS)からの非凝縮性ガス流入を想定し,定率-55K/hでの2次系減圧と30分間の補助給水(AFW)作動を運転員のAM操作として実施した.その結果,これらのAM操作はAIS注入終了圧力1.6MPaまでは1次系減圧に効果的であったが,その後,非凝縮性ガスが流入したため減圧効果は低下した.このため低圧注入系(LPI)の作動開始が遅れ,破断口では水流出が継続していたので全炉心露出に至った.本報ではこれらの熱流動現象に加え,1次系保有水量の推移及びAM操作と関連づけた炉心加熱挙動,1・2次系間の熱伝達及び1次系ループへの非凝縮性ガス流入等に関する解析結果について述べる.


330592
An Irradiation experiment for qualification of insulating coating
中道勝* ; 河村弘
JAERI-Research 2005-015; Jun.2005,35p.

 本報告書は,核融合炉ブランケットにおける電気絶縁材としてのAl2O3皮膜の電気及び機械的特性の中性子照射による影響を調べたものであり,ITERの工学設計活動(EDA)の成果の一部である.ステンレス鋼SUS316L(N)-IG母材上のAl2O3皮膜の密着力を向上させるため,母材と皮膜間に2種類のアンダーコーティングを施工した.タイプ1試料は80Ni-20Cr合金に厚さ50μm,タイプ2試料は410ステンレス鋼(SS410)に厚さ150μmアンダーコーティング施工を行った.そして,Al2O3皮膜を最上コートとして厚さ200及び500μm施工した.これらの試料を,JMTRにおいて150℃及び250℃で3×1024/m-2(E>1MeV)まで照射した.衝撃エネルギ14kJ/m2で30000回まで衝撃を与えた機械的衝撃試験において,両タイプ試料のAl2O3皮膜は健全,かつ,電気抵抗は150℃及び250℃で1×1011Ω以上であり,本皮膜の性能はITER設計条件を越えるものであった.ITER設計値の200MPaを越える300MPaまでの圧縮試験においても,Al2O3皮膜の剥がれは観察されなかった.以上の結果により,両皮膜とも機械的衝撃及び圧縮に対して十分な抵抗性を有し,ITER設計基準を満足することを明らかにした.


330677
高温融体中への水ジェットの貫入と直接接触沸騰に関する研究
柴本泰照
JAERI-Research 2005-016; Aug.2005,127p.

 高温の融体の表面に注がれる水の沸騰は,融体中に水が侵入することで伝熱面積が拡大することとあいまって,高効率の熱伝達を提供する.本研究は,融体中に水が強制注入される場合(冷却材注入モード)について,融体と水との間の力学的・熱的相互作用を支配する現象を解明し,将来の工業上の応用に資することを目的としている.同現象は冷却材注入モード以外の他の燃料−冷却材相互作用(FCI)の結果として生じることも指摘されており,FCI素過程の解明に資することも期待できる.本研究では,実験的なアプローチとして,高速度撮影中性子ラジオグラフィ並びに新たに開発したプローブを採用し,融体−水−蒸気混相流の可視化と計測を行った.このような手段によっても,実験的に得られる情報には依然として限界があるが,関連現象から得られる知見との比較を含め,実験データの詳細な分析を行った.その結果,本現象の特徴である高効率な熱伝達を安定に達成させる条件について,安定性を支配する因子を明らかにし,その成立条件を示すことに成功した.さらに,本現象のような流体自由表面の移動を伴う現象の解明に有用な,界面付近の速度場・圧力場を界面形状の時間変化から算出する方法を開発した.


330768
Coarse break-up of a stream of oxide and steel melt in a water pool (Contract research)
森山清史 ; 丸山結 ; 宇佐美力* ; 中村秀夫
JAERI-Research 2005-017; Aug.2005,173p.

 水プール中における融体ジェットの分裂は,軽水炉シビアアクシデント時における水蒸気爆発の粗混合過程及びデブリ冷却性に関連する重要な現象である.高温の酸化物及び鋼材の融体ジェットの水プール中における分裂挙動に関する実験を行った.目的は,ジェット分裂長さ及び分裂によって生じる融体液滴のサイズ分布,これらに対する融体物性の影響に関するデータを得ることである.また,融体ジェット分裂機構の検討に有用な,融体ジェットを取り巻く蒸気カラムの流れの強さや,これと融体液滴サイズの関係に関するデータの取得を試みた.実験では酸化ジルコニウム・酸化アルミニウム混合物とステンレス鋼の融体ジェット(水面で直径〜17mm,速度〜7.8m/s)を深さ2.1m又は0.6mで種々のサブクール度を持つ水プールに落下させた. 本実験の結果及び既存の実験データを用いた検討により,融体ジェット分裂長さ,融体ジェットが完全に分裂しない浅いプールの場合の分裂割合,及び,ジェット分裂によって生じる融体液滴サイズに関する相関式を得た.


330678
KRITZ-2臨界実験のベンチマーク解析
奥村啓介 ; 川崎憲二* ; 森貴正
JAERI-Research 2005-018; Aug.2005,64p.

 KRITZ-2臨界実験では,微濃縮UO2燃料または低Pu富化度のMOX燃料を装荷した3種類の炉心で,常温及び高温(約245℃)体系における臨界性と出力分布が測定されている.核データの検証のため,連続エネルギーモンテカルロコードMVPと4種類の核データライブラリ(JENDL-3.2, JENDL-3.3, JEF-2.2, ENDF/B-VI.8)を使用して,ベンチマーク解析を行った.その結果,出力分布に関しては,どの核データも実験値とよく一致したが,臨界性と等温温度係数に関しては,JENDL-3.2やJEF-2.2の結果の方が良好であり,より新しい核データ評価であるJENDL-3.3とENDF/B-VI.8の結果は,微濃縮UO2炉心の臨界性を過小評価し,等温温度係数を負側に過大評価する傾向が見られた.この原因を調べるため,無限格子計算による詳しい検討を行った結果,核データライブラリ間の差異は,1eV以下のU-235核分裂断面積の差異に起因していることが判明した.


330769
炭素の吸収端を含む波長4nm領域用多層膜反射鏡の開発
石野雅彦 ; 依田修* ; 小池雅人
JAERI-Research 2005-019; Sep.2005,13p.

 炭素のK殻吸収端(波長:4.4nm)を含む波長4nm領域で機能する軟X線多層膜反射鏡の開発を行った.成膜材料として,重元素層にコバルト酸化物(Co3O4)及びクロム(Cr)を,軽元素層にシリコン酸化物(SiO2)及びスカンジウム(Sc)を選択し,Co3O4/SiO2多層膜,Co3O4/Sc多層膜,そしてCr/Sc多層膜をイオンビームスパッタ(IBS)法により成膜した.X線回折測定による構造評価から,Co3O4/Sc多層膜及びCr/Sc多層膜が反射鏡に適した安定した多層膜構造を有することがわかった.また,放射光を用いた波長4nm領域における軟X線反射率測定を行った結果,Cr/Sc多層膜が高い反射率を実現することがわかった.また,炭素のK殻吸収端よりも短波長側において反射率が大きく減少する原因が炭素のコンタミネーションであることを,電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)分析及び二次イオン質量分析(SIMS)によって確認した.


330770
冷却材喪失事故時の被覆管延性低下に及ぼす冷却時温度履歴の影響
宇田川豊 ; 永瀬文久 ; 更田豊志
JAERI-Research 2005-020; Sep.2005,40p.

 急冷開始温度及び急冷前の冷却速度がLOCA時の被覆管延性低下に及ぼす影響を調べることを目的とし,未照射PWR用17×17型ジルカロイ-4被覆管から切り出した試料を水蒸気中,1373及び1473Kで酸化し,ゆっくりと冷却(徐冷)してから急冷した.試験条件のうち,徐冷の速度を2〜7K/s,急冷開始温度を1073〜1373Kの範囲で変化させて複数の試験を行い,冷却条件の異なる試料を得た.酸化,急冷した試料に対しリング圧縮試験,ミクロ組織観察,ビッカース硬さ試験を実施した.急冷開始温度低下に伴い,金属層中に析出するα相の面積割合が大幅に増加し,被覆管の延性が明確に低下した.徐冷速度の減少に伴い,析出したα相の単位大きさ及び硬さの増大が生じたが,面積割合及び被覆管の延性はほとんど変化しなかった.析出α相は周りの金属層より硬く,また酸素濃度が高いことから,その延性は非常に低いと考えられる.したがって,析出α相の面積割合増大が,急冷開始温度低下に伴う延性低下促進の近因である.

330896
THALES-2コードによるBWR Mark-IIを対象としたレベル3PSAのための系統的なソースターム解析
石川 淳; 村松 健; 坂本 亨*
JAERI-Research 2005-021; Sep.2005,133p.

  原研では、Mark-II型格納容器を持つBWRを想定したモデルプラントを対象として、公衆のリスクを評価するレベル3PSAを実施している。その一環として、総合的シビアアクシデント解析コードTHALES-2を用いて、広範な事故シナリオを網羅したソースターム評価を行った。本評価より、(1)格納容器が過圧破損に至る全ての解析ケースで環境へのCsI及びCsOHの放出割合は、0.01から0.1の範囲にあり、格納容器ベントによる管理放出ケースは、過圧破損ケースより1オーダー小さく、D/Wスプレイ復旧ケースは、さらに2オーダー小さい結果であった。さらに、(2)格納容器が炉心溶融より前に破損するか否かによってソースタームに影響を及ぼす支配因子が異なること,(3)AM策の1つである格納容器ベント策は、圧力抑制プールを経由させることができれば、環境へ放出されるヨウ素及びセシウムの低減策として有効であること等の結果及び知見が得られた。

330771
反応度事故条件下におけるPCMI破損の駆動力及び破損限界に及ぼす被覆管水素脆化の影響
富安邦彦 ; 杉山智之 ; 中村武彦 ; 更田豊志
JAERI-Research 2005-022; Sep.2005,128p.

 高燃焼度燃料の反応度事故条件下におけるPCMI破損の駆動力を明らかにし,また破損限界に対する被覆管水素脆化の影響を検討するため,高燃焼度PWR燃料を模擬した未照射燃料棒を対象とする反応度事故模擬実験をNSRRにおいて実施した.未照射ペレットを用いることでPCMI駆動力をペレット熱膨張に限定し,あらかじめ水素を吸収させた被覆管を用いることにより,燃焼の進行に伴う被覆管の機械的性質劣化のうち水素脆化の影響を抽出した.計14回の実験を行い,7実験において被覆管が破損した.燃料過渡挙動及び破損形態の点で,高燃焼度PWR燃料と同様のPCMI破損が生じた.これは高燃焼度燃料のPCMI破損における駆動力はペレット熱膨張で説明でき,FPガスの寄与は小さいことを示す.破損しなかった燃料棒においても,被覆管外周部の水素化物析出層(水素化物リム)とその内側の金属層との境界でとどまる多数の径方向亀裂が生じていたことから,金属層の強度が破損限界に対して重要であることが示唆される.破損時燃料エンタルピは水素化物リム厚さとよい相関があり,リム厚さの増大に伴い低下する傾向を示した.

330772
原研−サイクル機構融合研究成果報告書; 照射環境における原子炉構造材料の劣化現象に関する研究
上野文義 ; 永江勇二* ; 根本義之 ; 三輪幸夫 ; 高屋茂* ; 星屋泰二* ; 塚田隆 ; 青砥紀身* ; 石井敏満 ; 近江正男 ; 清水道雄 ; 阿部康弘* ; 吉武庸光* ; 中村保雄* ; 山下卓哉*
JAERI-Research 2005-023; Sep.2005,132p.

 原研とサイクル機構は,平成15年度から研究開発の効率的推進と研究の相乗的発展を目指す「融合研究」を開始した.本研究は,「融合研究」の一つとして,高速炉や軽水炉環境などの照射環境において生じる構造材料の照射劣化現象を対象に,劣化機構の解明,早期検出及び評価方法の開発を目的とした.平成16〜17年度は,本研究に用いる照射材対応の遠隔操作型の微少腐食量計測装置,腐食試験装置及び漏えい磁束密度測定装置を整備し,SUS304の照射後及び非照射クリープ試験片や照射後高純度モデル材を共通試料とし,両手法を用いた劣化検出を試みるとともに,比較のための非照射劣化模擬試料を用い,基礎的なデータを取得した.これらの結果に基づき,本研究において提案した劣化評価法の適用性を検討した.

330897
電子ビーム蒸発部生成プラズマの磁場を横切る流れ
高柳 智弘*; 池畑 隆*; 真瀬 寛*; 大場 弘則; 柴田 猛順
JAERI-Research 2005-024; Sep.2005,14p.

  電子ビーム加熱蒸発時に発生する弱電離ガドリニウムプラズマ流を、鉄芯間の0〜±1.5kGの磁場に導き、プラズマの磁場中での挙動を調べた。磁場を強くしていくとプラズマは乱れが生じるとともに磁場を横切って流れる量が減少し、やがて検出されなくなった。プラズマが流れなくなる磁場の強さはプラズマ密度に依存せず、プラズマ流が磁場中を横切ることができるのはイオンのラーモア半径がプラズマ幅の2倍程度より大きいときであることがわかった。また、電子ビーム蒸発生成プラズマはその密度によらず一定強度の磁場を横切っては進めないことがわかったので、原子ビーム中のプラズマ除去はこれまでの除去電極への負電圧印加だけでなく、磁場によってもできると考えられる。

330898
シュウ酸ブチルアミン洗浄剤の劣化溶媒洗浄特性(融合研究)
今泉 浩文*; 伴 康俊; 佐藤 真人*; 朝倉 俊英; 森田 泰治
JAERI-Research 2005-025; Sep.2005,94p.

  使用済燃料の再処理において、溶解,分離・抽出後にて発生した劣化溶媒中のリン酸ジブチル(DBP)・金属イオンを洗浄する手法として、無塩で焼却処分,電気分解が可能なシュウ酸ブチルアミンを用いた洗浄試験を実施しその特性を把握した。試験では、模擬劣化溶媒を用いたコールド試験にて、洗浄特性及び洗浄挙動の把握を行い最適洗浄条件を摘出し、その洗浄条件をもとに、実劣化溶媒を用いた連続洗浄試験を実施した。コールド試験では、模擬劣化溶媒として30%TBP/70%nDDに約2000ppmのDBPと金属イオンとしてZrイオンを添加した溶媒を、同容積のpH,濃度を変えたシュウ酸ブチルアミン溶液と混合し、その洗浄効果を確認した。その結果、0.25M濃度でのシュウ酸ブチルアミン(pH2)で金属イオンを、0.25Mシュウ酸ブチルアミン(pH4)でDBPを洗浄する方法がもっとも効果的でありDBP, Zrイオン共約95%の洗浄効果を得られた。この洗浄条件をもとに、実劣化溶媒を使い小型ミキサーセトラを用いた連続洗浄試験を実施し、洗浄特性データを取得した。なお、本研究は、核燃料サイクル開発機構と原研との融合研究「高度化湿式再処理要素技術開発研究」の一環として実施したものである。  

330899
FCAを用いた軟スペクトル場における238Uドップラー効果の測定(共同研究)
安藤 真樹; 川崎 憲二*; 岡嶋 成晃; 福島 昌宏; 松浦 豊*; 金子 裕司*
JAERI-Research 2005-026; Sep.2005,39p.

  軽水炉でのドップラー係数評価の信頼性向上に資することを目的とし、FCAを用いて軟スペクトル場(ウラン燃料及びMOX模擬燃料)において238Uのドップラー効果を測定した。MOX模擬燃料体系では、減速材ボイド率により中性子スペクトルを系統的に変化させた。測定には外径の異なるピン形状サンプルを用い800℃までのドップラー効果実験データを取得した。JENDL-3.2を用い、従来のFCA高速炉体系でのドップラー効果の実験解析に用いてきた標準的な解析手法により解析を実施した。その結果、予測精度の燃料組成やサンプル組成に対する依存性はなく、ほぼ全サンプルについて計算値は実験誤差の範囲内で実験値とほぼ一致した。中性子スペクトルを変化させたMOX模擬燃料体系については、予測精度のスペクトル依存性も見られなかった。

330773
JMTR照射用イナートマトリックス含有窒化物燃料ピンの製作
中島邦久 ; 岩井孝 ; 菊地啓修 ; 芹澤弘幸 ; 荒井康夫
JAERI-Research 2005-027; Sep.2005,42p.

 マイナーアクチノイド核変換用窒化物燃料の照射挙動把握に資するため,ZrNやTiNのようなイナート(不活性)マトリックスを含有し,マイナーアクチノイドをプルトニウムで模擬したJMTR照射試験用燃料ピンを製作した.本報告書では,燃料ペレットの製造と確性試験結果並びに燃料ピンの製作について記述する.イナートマトリックス含有窒化物燃料ピンの照射は,2002年5月から2004年11月まで計11サイクル行われ,無事に終了した.

330900
海洋放射能測定用検出器の運用とデータ解析手法に関する研究(共同研究)
伊藤 集通; 木下 正高*; 斎藤 実篤*; 町山 栄章*; 島 茂樹*; 賀佐 信一*; 外川 織彦; 岡野 眞治*
JAERI-Research 2005-028; Sep.2005,121p.

  本報告書は、日本原子力研究所(原研),海洋科学技術センター(JAMSTEC)及び(財)日本海洋科学振興財団(海洋財団)の3機関が、平成13年度から15年度に実施した共同研究「海洋放射能測定用検出器の運用とデータ解析手法に関する研究」の成果をまとめたものである。本研究では、海洋放射能測定用検出器を搭載した無人探査機等による現場放射能測定により、海洋における放射性核種の分布状況を明らかにすることを目的とする。併せて、測定データの効率的な処理,解析及び評価の手法について検討する。また、海洋に放出される放射性核種の分布状況を迅速に測定する簡易型海洋モニタリングシステムの整備に必要なデータを収集する。このため、本共同研究へ参加した各研究機関がこれまでに開発・整備した海洋放射能測定用検出器(原研:深海用小型電気冷却式Ge検出器,JAMSTEC:深海用NaI検出器,海洋財団:浅海用小型電気冷却式Ge検出器及び浅海用NaI検出器)を無人探査機等に搭載して、実海域において海洋試験を行い、海洋放射能の分布状況を調査した。また、異なる検出器及び異なる手法で測定・解析したデータを比較・検討した。

330901
SCCき裂先端における変形挙動のマルチスケール解析(受託研究)
加治 芳行; 三輪 幸夫; 塚田 隆; 早川 正夫*; 長島 伸夫*; 松岡 三郎*
JAERI-Research 2005-029; Sep.2005,156p.

  本報告書は、原子力安全基盤機構(JNES)のIGSCCプロジェクトにおいて得られるSCCき裂進展特性の妥当性をSCCメカニズムの観点から評価するために、CT試験片き裂先端の変形解析や組織観察をナノレベルまで踏み込んで詳細に調べ、ナノ,メゾ,マクロ領域での硬さを統一強度指標として採用し、必要な基礎データ(主として、マクロな塑性域の大きさとその中での粒内・粒界における結晶方位,歪み,転位等の組織データ)を取得することを目的として、実施したSCCき裂先端における変形挙動のマルチスケール解析に関する研究結果をまとめたものである。

330774
核融合装置二重壁真空容器設計の合理化と実用化に関する研究
中平昌隆
JAERI-Research 2005-030; Sep.2005,182p.

 ITERの真空容器は供用中非破壊検査が困難なため,全く新しい安全確保の考え方を構築する必要がある.また,二重壁構造の閉止溶接の裏側へのアクセスが不可能であるため,従来の構造技術基準では対応できない.さらに高さ10m以上の大型構造体であるが±5mm以下の高精度で製作する必要があり,複雑形状で大型なため合理的な溶接変形予測手法を構築する必要がある.本研究では,微小な水リークによる核融合反応停止という性質に着目し,トカマク型の核融合装置が反応停止にかかわる固有の安全性を有することを証明した.これにより,安全性を損なわず供用中非破壊検査が不要とする大幅な合理化の提案ができた.また,二重壁構造を合理的に構築する部分溶込みT字溶接継手を提案し,継手強度並びにすきま腐食感受性を定量的に把握し受容性を確認した.さらに,合理的な溶接変形予測手法を提案するとともに,実大での溶接試験結果と比較してその有効性を確認し,大型の複雑形状を持つ溶接構造物の溶接変形を簡易的に,かつ十分な精度で評価できる手法を提案した.


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