Low-energy auger- and photo-electron effects on the degradation of thymine by ultrasoft X-irradiation

超軟X線照射によって生じる低エネルギーオージェ電子あるいは光電子のチミン分解に及ぼす影響

赤松 憲; 藤井 健太郎; 横谷 明徳

Akamatsu, Ken; Fujii, Kentaro; Yokoya, Akinari

放射線エネルギーが生体分子に移動した場合、分子の励起や共有結合の切断を起こすことが知られている。吸収線量と突然変異等の関係についてはこれまで多くの情報の蓄積があるが、付与されたエネルギーと分子損傷の定量・定性関係についてはほとんど知られていない。これを明らかにすることにより線質による放射線影響の相違をさらに明確化できると考えられる。われわれはこれまでに放射光の分光により得られる単色軟X線を用いることでDNA構成分子の特定原子を選択的にK殻励起できることを示してきた。また単色軟X線により光電子やオージェ電子等の二次電子のエネルギーが決まるので、二次電子からのエネルギー付与と分子変化の特徴を抽出して調べることが可能である。本研究では上記目的のための最初のステップとして照射サンプルにチミンを選択した。光子には395, 407, 538eV単色光子及びCo線を用いた。分析はEPR法により行った。EPR分析では5-thymil radicalなどの安定ラジカルが同定された。生成したラジカルの種類は用いた光子間で明確な差はなかったが、定量的には違いが認められた。これらの相違はサンプル中に発生する全ラジカル種の密度の違いによるものと考えられる。本発表では生成したラジカル種の定性的性質についても詳細に報告する。

The productions of stable/unstable thymine radicals produced by monochromatic ultrasoft X (USX)- or Co -rays were studied using EPR spectroscopy. EPR experiment of thymine was performed using a newly developed X-band EPR device installed in a JAERI soft X-ray beamline (BL23SU) in SPring-8. The sample pellet was irradiated with USX photons at a microwave in a vacuum chamber. EPR measurements of a thymine powder pellet irradiated with USX around 500 eV at 77 K and RT. As a reference, Co g-irradiation to the pellet was also performed at RT. As the results, following three findings are obtained: (1) An unstable radical appearing only in situ USX-irradiation is observed. And the radical is clearly distinguished with other stable radicals remaining after irradiation. (2) The signal of the unstable radical is a strong singlet, which vanishes after irradiation immediately.