フェライト鋼照射材料のシャルピー衝撃特性と破壊靭性の評価,2
Evaluation of charpy impact properties and fracture toughness for irradiated ferritic steels, 2
栗下 裕明*
Kurishita, Hiroaki*
SMIR-10において照射温度723K(450C),高速中性子照射量9.010の26乗n/m2乗(E0.1MeV)の照射を受けた2種類のフェライト鋼,すなわち動燃で開発されたPNC-FMS鋼の61FKと61FS,及び高速中性子照射量3.610の25乗n/m2乗(E>0.1MeV)の照射を受けた2種類のフェライト鋼,すなわちボイラー用材料として使用実績の豊富なASTM A213T9材とフェライトマルテンサイト鋼のNSCR9材について,計装化シャルピー衝撃試験を行って全吸収エネルギー,動的降伏荷重,動的最大荷重,脆性破壊開始荷重等を測定し,それらの値から延性脆性遷移温度(DBTT)と上部棚エネルギー(USE)を求めた。ここで,DBTTは,吸収エネルギーがUSEの1/2になる温度(DBTT1乗),動的降伏荷重と動的最大荷重が等しくなる温度(DBTT2乗),及び吸収エネルギーが2Jになる温度(フルサイズ試験片の10Jに対応,DBTT3乗)として求めた。61FKについては非照射材の測定も行った。用いた試験片はJIS-4号シャルピー試験片で,寸法が2mm10mm55mm,Vノッチが深さ2mm,開き角45度,ノッチ底半径0.25mmである。得られた主な結果を以下に記す。1)DBTTは,DBTT1乗DBTT2乗DBTT3乗であった。但し,F9SではDBTTが低いため,DBTT2乗とDBTT3乗を求めることができなかった。2)61FKの非照射材では,DBTT1乗が202K,USEが16.9Jであった。一方,この照射材では,DBTTが249K,USEが10.8Jであった。したがって,61FKでは照射によりDBTTが47K上昇し,USEが6.1J低下したことになる。3)61FSの照射材では,DBTTが207K,USEが17.0Jであった。61FSの非照射材のDBTTは160K,USEは20Jであったので,照射によりDBTTが47K上昇し,USEが3J低下したことになる。4)F9S照射材のDBTTは166K,USEは21.4Jであった。なお,この鋼種については非照射材のデータが入手できなかったため,照射脆化の評価は行っていない。5)NSCR9の照射材では,DBTTが208K,USEが16.2Jであった。この非照射材のDBTTは185K,USEは16Jであったので,照射によりDBTTは23K上昇したが、USEは全く低下しなかったことになる。6)以上の結果から、照射による脆化は、非照射材のデータの得られていないF9Sを除くと、61FSが最も少なく、61FKが最も大きかった。
None