DNA二重鎖切断による染色体損傷の細胞周期依存性の数理モデル

Mathematical model of cell-cycle dependency of chromosomal aberration by DSB

大内 則幸

Ouchi, Noriyuki

細胞におけるDNAの収納構造であるクロマチン繊維は、細胞周期に依存してドラスティックにその構造を変化させる。放射線により生じたDNAの二重鎖切断の結果、クロマチン繊維が切断を生じるが、適切に修復されるか、あるいはされないかによって染色体異常が生じたり、あるいは突然変異が生成されてその後の生物影響へと進行していく。今回、溶液中の染色体の実験データをもとに弾性体の近似、及び統計力学的近似を用いて微分方程式でクロマチン繊維をモデル化して、溶液の場合や真空中などの条件でクロマチン繊維の構造変化や動態をシミュレーションした。またモデルに切断を作成して、その切断箇所の動的ダイナミクスを調べることで、その損傷の修復しやすさなどに関して調べた。その結果、切断のタイミングや溶液の粘性によっては、切断した箇所を繋ぐために修復酵素が到達する時間よりも数倍速く切断端が離れてしまうことがわかった。さらに細胞周期に依存した凝集状態の違いを考慮したモデルを用いて、切断端の動態との関係を調べた結果についても報告する。

Chromatin fiber is the container of DNA in Cell nucleus, its structure is changed drastically depending on the cell cycle, and make 10000 times condensed structure as known as chromosome at metaphase. Here we will show the simulation results of the mathematical model of chromosome/chromatin broken ends movement which will be produced by DSB, not only its dynamics but the dependency of cell cycle, and investigate the damage effectiveness on the whole system.