X線分光法と計算科学による土壌中セシウムの評価

Evaluation of cesium in soil using X-ray spectroscopy and theoretical calculations

鈴木 知史 ; 加治 芳行  ; 矢板 毅

Suzuki, Chikashi; Kaji, Yoshiyuki; Yaita, Tsuyoshi

福島第一原子力発電所の事故により放出されたセシウム(Cs)の除染を進めるにあたり、除染の効率化や除染に伴う廃棄物の減容化を行う必要がある。このために土壌中のCsの存在状態を評価するため、Cs評価の基準となる化合物として塩化セシウム(CsCl)及びCsを含む土壌モデル物質を用いて、吸収端近傍X線吸収スペクトル(NEXAFS)による測定と、第一原理計算を用いた解析を実施した。Cs M NEXAFSの測定結果では、CsClには高エネルギー側に肩が見られ、一方、Csの吸着したバーミキュライトではCsClと異なり肩は見られなかった。Cs M NEXAFSの計算では、内殻空孔の影響をすべて取り入れた場合は、実験結果と比べて線幅が狭くピーク構造は再現されなかった。そこで、内殻空孔の影響を小さくしてNEXAFSの計算を実施したところ、実験結果と良い一致が得られた。このことから、Cs M NEXAFSにおいては、Csの内殻空孔のクーロン引力が遮蔽されている、あるいは、非占有領域において内殻空孔の影響による電子構造の緩和が十分でない可能性が示唆される。

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