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金属人工格子ルネサンス

Renaissance of metallic superlattices

高梨 弘毅

Takanashi, Koki

金属人工格子とは、2種類以上の異なる金属をナノスケールで人工的に積層した物質である。金属人工格子の研究は1970年代後半から始まった。その後、垂直磁気異方性の発見(1985年)や巨大磁気抵抗効果(GMR)の発見(1988年)があり、1990年頃に隆盛を迎えた。GMRの発見がスピントロニクスの起源となっていることはよく知られている。1990年代は、GMRやトンネル磁気抵抗効果(TMR)に代表されるスピン依存伝導の研究が盛んになるが、一方で磁性半導体の研究も進み、20世紀から21世紀へ変わる頃、それらの分野は統合してスピントロニクスと呼ばれるようになった。2000年代には、スピントロニクスの基礎概念としてスピン流が注目されるようになり、スピンホール効果やスピンゼーベック効果などの新現象が続々と発見された。筆者らは、スピントロニクスに有用な材料として、規則合金に着目した。規則合金は、機能性の宝庫であるとともに、金属人工格子の積層構造の極限とも考えられる。最近10年くらいの傾向を見ると、スピントロニクスは新たな展開期を迎えている。スピン軌道相互作用を活用するスピンオービトロニクス、反強磁性体のメリットを生かす反強磁性スピントロニクス、熱との相関に着目するスピンカロリトロニクスなど、さまざまな分野がスピントロニクスから派生している。この流れの中で、金属人工格子という材料はあらためて注目される。界面の集合体である金属人工格子は、スピン軌道相互作用が人工的に増強された系と考えることができる。層間交換相互作用を利用すれば、変調周期や結合強度を人工的に制御した反強磁性体を作製できる。また、金属人工格子の構造的な異方性に着目すれば、電気伝導と熱伝導を独立に制御することができ、熱電変換の無次元性能指数ZTの向上も期待できる。以上のような観点から、筆者らは金属人工格子の研究に取り組んでおり、実際にPd/Co/Pt構造における垂直磁気異方性とスピン軌道トルクとの相関性の観測、Co/Cu-Ir/Co構造における反強磁性交換結合とスピン軌道トルクの観測、Co/Ir/Co構造における巨大な反対称交換結合の発見と磁化スイッチングへの応用、Ni/Pt人工格子における異常ネルンスト効果の増大の観測などの成果を得ている。

no abstracts in English

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