透過型電子顕微鏡で調べた原子炉圧力容器鋼溶接熱影響部の転位ループ

Dislocation loop in HAZ of RPV steel studied by TEM

下平 昌樹 ; 河 侑成  ; 外山 健

Shimodaira, Masaki; Ha, Yoosung; Toyama, Takeshi

原子炉圧力容器(RPV)の構造健全性評価では、溶接熱影響部(HAZ)の脆化量は母材部に対して最適化された脆化予測式を用いて評価されている。本研究では、HAZに対して母材部の脆化予測式を適用することの妥当性確認の一環として、母材部とHAZの脆化メカニズムの相違の有無を調べることを目的とする。前回、脆化因子の一つである溶質原子クラスタに関しては、試験炉照射されたRPV鋼の母材部及びHAZ(クラッド下HAZ及び継手溶接HAZ)では顕著な違いがないことを報告した。その続報として、溶質原子クラスタ以外の主要な脆化因子の一つとして考えられている転位ループに関して、前回報告の試料を透過型電子顕微鏡で調べた結果を報告する。母材部及びいずれのHAZにおいても高照射量領域では転位ループが形成されていた。数密度は、いずれの試料でも10m以上であり顕著な差異は見られなかった。平均径は、試験片採取位置や照射量にかかわらずほぼ同一であった。前回報告の溶質原子クラスタの観察結果も合わせると、HAZの微細組織変化は母材部で代表できることを確認した。

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