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伊勢 孝太郎; 佐々木 祥人; 天野 由記; 岩月 輝希; 南條 功*; 浅野 貴博*; 吉川 英樹
Geomicrobiology Journal, 34(6), p.489 - 499, 2017/07
被引用回数:4 パーセンタイル:14.31(Environmental Sciences)幌延深地層研究センターの250m水平坑道に掘られた09-V250-M02 and 09-V250-M03ボアホール中における微生物群集変化について調査を行った。09-V250-M02において、掘削直後に採取したサンプルについてクローンライブラリー解析を行ったところ、-Proteobacteriaが最も優占していた。-Proteobacteriaは硫化物を硫黄に酸化して増殖する独立栄養細菌であることが知られている。4年経過後の微生物群集は大きく変化し、OP9やChloroflexiなどの深海底において検出されることが多い種が優占していた。これらのことから、掘削直後には空気による酸化の影響が大きく見られたが、時間経過とともに微生物群集は深海底などで検出される微生物群集と似た構造と変化することが示された。
Hernsdorf, A. W.*; 天野 由記; 宮川 和也; 伊勢 孝太郎; 鈴木 庸平*; Anantharaman, K.*; Probst, A. J.*; Burstein, D.*; Thomas, B. C.*; Banfield, J. F.*
ISME Journal, 11, p.1915 - 1929, 2017/03
被引用回数:78 パーセンタイル:95.93(Ecology)地層処分システムにおける微生物影響の可能性を評価するために、北海道の幌延深地層研究センター地下施設を利用して、堆積岩地下の生態系における微生物群集構造と代謝機能について調査を行った。全体として、微生物生態系は多様な系統群からなる微生物種で構成されており、その多くはこれまで培養されていない生物門に属していることが示された。大部分の微生物種は、酸化型[NiFe]ヒドロゲナーゼあるいはフェレドキシンをベースとする代謝経路を可能にする電子分岐型[FeFe]ヒドロゲナーゼを介して水素代謝をおこなうことが明らかになった。水素代謝と関連して、多くの微生物が炭素,窒素,鉄および硫黄を代謝することが推定された。特に、ANME-2dというメタン酸化を行う古細菌として知られている未培養微生物が、鉄関連の代謝反応を行う可能性が示唆された。得られた結果から、幌延堆積岩環境における微生物群集の生態学的概念モデルを推定した。
Hug, L. A.*; Baker, B. J.*; Anantharaman, K.*; Brown, C. T.*; Probst, A. J.*; Castelle, C. J.*; Butterfield, C. N.*; Hernsdorf, A. W.*; 天野 由記; 伊勢 孝太郎; et al.
Nature Microbiology (Internet), 1(5), p.16048_1 - 16048_6, 2016/05
被引用回数:1110 パーセンタイル:99.97(Microbiology)生命の系統樹は生物学において最も重要な中心テーマの一つである。遺伝子調査によると、莫大な数のブランチの存在が示唆されているが、フルスケールに近い系統樹でさえわかりにくいのが現状である。本研究では、これまでに報告されてきた配列情報に加えて、新たに取得した未培養生物のゲノム情報を用いて、バクテリア,アーキア,真核生物を含む系統樹を更新した。系統樹の描写は、全体的な概容とそれぞれの主要な系統における多様性のスナップショットの両方について行った。その結果、バクテリアの多様化の優勢性が示され、培養されていない生物種の重要性とともに主要な放射構造においてそれらの生物種の重要な進化が集中している現象が強調された。
平野 伸一*; 長岡 亨*; 伊勢 孝太郎; 天野 由記; 松本 伯夫*
材料と環境, 64(12), p.535 - 539, 2015/12
本研究では、土壌環境微生物を対象として腐食ポテンシャルおよびそのメカニズムについて知見を得るために、一般的な湖沼底泥を植菌源として炭素鋼とともに培養を行った。その結果、いずれの培養条件でも炭素鋼を腐食、減損する活性が見られ、特に有機物添加・汽水培地において硫酸還元活性、メタン生成活性とともに高い腐食活性が得られた。土壌埋設設備への微生物の腐食影響を適切に評価するためには、硫酸還元菌, メタン生成菌などの相互作用を踏まえた評価が必要と考えられる。
佐々木 祥人; 浅野 貴博*; 伊勢 孝太郎; 佐藤 智文; 村上 裕晃; 雨宮 浩樹; 天野 由記; 岩月 輝希; 吉川 英樹
no journal, ,
これまでにさまざまな地域で深部地下の微生物についての研究が進められ、微生物相や微生物活動に関する情報が蓄積されつつある。微生物は、地下水水中の化学状態に影響するひとつの因子である。岩石表面は地下水中に比べ、鉱物や有機物が多く存在しており微生物反応の場としては好適環境であると考えられる。しかしながら、これまでの多くの研究は帯水相における水中の微生物相に関する報告であり、亀裂表面における付着微生物に関する報告は少ない。われわれは岩石表面と地下水中の微生物相を調べ、堆積岩表面に付着する微生物と浮遊している微生物相の違いを明らかにした。
伊勢 孝太郎; 南條 功; 雨宮 浩樹; 天野 由記; 岩月 輝希; 浅野 貴博*; 景山 幸二*; 佐々木 祥人; 吉川 英樹
no journal, ,
幌延深地層研究センター250m水平坑道の2本の井戸の掘削後における微生物群集と地下水の解析を行った。微生物群集解析は250m水平坑道で水平方向に掘った井戸V250-M02(以下M02)と垂直方向に掘ったV250-M03(以下M03)の2箇所において行った。M02ではおもに,、M03ではや, により構成されており、明らかに異なる菌相であった。同じ井戸において4か月後にはM02ではの割合が減少し、偏性嫌気性細菌であるなどのの割合が増加した。M03においても spp.などの硫酸還元細菌が減少し、やなどの割合が増加した。これらのことから、原位置において還元的環境へとシフトする際には微生物群集が変化し、その変化は時間的にも空間的にも依存することが示された。
吉川 英樹; 天野 由記; 佐々木 祥人; 伊藤 剛志*; 伊勢 孝太郎; 岩月 輝希
no journal, ,
140m地下坑道内で埋め戻し試験を実施し、坑道の埋め戻しに伴う酸化還元変化に関する微生物反応の寄与が示唆された。
伊勢 孝太郎; 伊藤 剛志; 天野 由記; 吉川 英樹
no journal, ,
COLFRAC-mrlは、2次元の亀裂の入った多孔質媒体中でのコロイドによって促進される溶質の移行を解析することが可能なコードである。本解析では、第2次とりまとめで天然バリアとして取り扱われている母岩部分の100mを対象とし、マトリックス拡散深さは0.1mとしていることから1000.2mの領域の中央に亀裂を通した平行平板中のバイオコロイドの移行を解析対象とした。亀裂中の地下水流速は保守的に第2次取りまとめの最大値である50m/yとし、亀裂の開口幅を1.1810mとした。また、地下水中の微生物量としては10 cells/L程度の微生物が存在しているものとした。これら微生物の亀裂中でのフィルトレーションは保守的に起こらないとした。微生物のKdとしては菌体への吸着に関する文献値から算出したものを基本ケースとして10倍, 1/10倍とした系にて感度解析を行った。これらの感度解析の結果、微生物が10程度に存在した場合に微生物による核種移行の促進される可能性が示された。
天野 由記; 佐々木 祥人; 南條 功*; 雨宮 浩樹; 水野 崇; 伊勢 孝太郎; 吉川 英樹
no journal, ,
地下環境における還元状態は、高レベル放射性廃棄物処分環境にとって非常に重要な条件である。しかしながら、地層処分のための地下施設建設時には、坑道周辺の酸化により鉱物と地下水の平衡状態が変化し、それに伴い微生物群集も影響を受けることが想定される。地下施設建設が周辺の地球化学状態変化に及ぼす影響を評価するための技術開発を目的として、地下施設建設過程における水理・地球化学・微生物学的特性についてモニタリングを実施した。その結果、周辺水圧の低下が確認されたが、塩分濃度についてはほとんど変化しないことが確認された。pHは時間の経過とともにわずかに上昇したが、酸化還元電位については還元状態のままほとんど変化が見られなかった。一方で、微生物群集組成については、初期には還元状態を好むFirmicutesおよびdelta-Proteobacteriaが優占していたが、時間の経過とともに比較的酸化還元ポテンシャルが高くても生息可能なbeta-Proteobacteriaが優占することが明らかになった。この結果は、坑道周辺が酸化の影響を受けているにもかかわらず、微生物の酸化還元反応により緩衝能力が機能し、還元状態が保持されていることを示唆している。
Lee, S.*; 谷口 智子*; 伊勢 孝太郎; 吉川 英樹
no journal, ,
赤色顔料ベンガラの微生物劣化の可能性について検討するため、鳥取県良田中道遺跡の土壌を用いて鉄還元細菌を培養し、その細菌によるベンガラの還元実験を行なった。本実験で使用した試薬のベンガラの形態的特徴を調査し、埋蔵文化財のベンガラとの形態的特徴を比較した。その結果、遺跡土壌中に存在した微生物が鉄還元を行っていることが明らかになった。この成果は、地層処分システムにおける人工バリア中の金属に対する微生物影響を長期的な視点で評価する上で重要な知見になると考える。
長岡 亨*; 平野 伸一*; 松本 伯夫*; 天野 由記; 伊勢 孝太郎; 吉川 英樹
no journal, ,
地下微生物生態研究の進展により、地下数km以深における微生物の存在が明らかとなり、地層処分における微生物影響評価は重要な課題となっている。本研究では、地層処分研究開発に関する「第2次取りまとめ」以降に刊行された、国内外の主要な学術論文や報告書等の文献約200件を精査し、高レベル放射性廃棄物だけでなく、TRU併置や使用済み核燃料の直接処分も含め、地層処分システム性能に影響を及ぼす微生物要因に関する最新の知見を取りまとめた。
天野 由記; 伊勢 孝太郎; 寺島 元基; 佐々木 祥人; 雨宮 浩樹; 吉川 英樹
no journal, ,
天然バリア中の核種移行に関わる不確実性要因となりうる微生物影響評価の観点から、幌延地下施設を利用して地下環境における微生物群集の空間分布について調査を実施した。その結果、微生物分布は酸化還元状態や炭素源のような地球化学条件と密接に関連していることが示された。
伊勢 孝太郎; 天野 由記; 佐々木 祥人; 吉川 英樹
no journal, ,
地層処分システムでは放射性核種の溶解度を低く抑えるために、還元環境への復帰と維持が重要な要素となる。この還元環境への復帰には地質パラメータとともに、微生物反応が大きく影響する。本研究では幌延深地層研究センターの250m水平坑道のボアホール中の微生物を掘削直後から2年間にわたりクローンライブラリー解析を行った。掘削直後の微生物群集では-Proteobacteriaに属するクローンが65%を占め、これらは全て spp.であった。 spp.は硫化物を酸化し、二酸化炭素を炭素源として増殖する化学合成独立栄養細菌として知られている。2年後には未培養種であるJS1やWS6などの種が優占種となった。これらの種は深海底堆積物などの還元的な雰囲気で検出されることが多く、還元的な環境へとシフトしていることが示唆された。
天野 由記; 伊勢 孝太郎; 伊藤 剛志; 根本 一昭; 舘 幸男
no journal, ,
本研究では、幌延の地下施設内に形成されているバイオフィルムを対象として、その地球化学的、微生物学的特性研究を行った。バイオフィルム試料は、原位置の地球化学条件下において自然に形成されているものを用い、それらの重金属収着特性について評価を行った。その結果、バイオフィルム中には様々な重金属元素が高濃度で濃集しており、その元素濃度は地下水中のそれぞれの元素濃度と相関関係を示さなかったことから、バイオフィルムを構成している微生物の代謝活性の違いにより選択的に重金属元素を濃集していることが示唆された。バイオフィルム中の微生物群集組成について遺伝子解析を行った結果、Nitrospirae門、Candidate phylumとして知られているJS1やSM1、Proteobacteria門が優占することが示された。これらの微生物群集の代謝活性と重金属の収着特性に関するメカニズムについて今後評価を進めていく必要がある。
天野 由記; 佐々木 祥人; 伊勢 孝太郎; 岩月 輝希
no journal, ,
瑞浪URLの対象である花崗岩および幌延URLの対象である堆積岩の様々な深度から地下試料を採取して、深部地下に生息する微生物群集分布と現存量に関する調査研究を進めてきた。その結果、現存量や微生物サイズ分布の岩層への依存性を確認するとともに、16S rRNA遺伝子のクローンライブラリー解析や次世代シーケンス解析の結果から、その多くが未培養系統群に属する新規の微生物群集により構成されていることを明らかにしてきた。また、各種の代謝機能遺伝子の定量PCR解析や周辺の地球化学分析により、地下環境における微生物の代謝機能に関する評価も実施している。北海道北部の幌延地域に建設されている幌延URL周辺の地下水中には高濃度のメタンおよび二酸化炭素が溶存するとともに、水素および二酸化炭素を基質とするメタン生成菌が優先して存在することが明らかにされている。一方で、瑞浪URL周辺の微生物群集は、幌延サイトと比較すると現存量、サイズとも1オーダー以上も小さく、その群集組成も堆積岩系の幌延サイトとは全く異なるものであることが明らかにされてきた。本講演では、日本における2ヶ所の地下施設とその周辺のボーリング孔を利用した微生物学的調査に基づいて集積された微生物生態学的特性について紹介しつつ、地球化学特性データをもとに原位置環境で起こっている微生物の代謝活性について議論を展開する。