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吉田 由香里*; 溝端 健亮*; 松村 彰彦*; 磯野 真由*; 八高 知子*; 中野 隆史*; 舟山 知夫; 小林 泰彦; 金井 達明*
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 81, 2015/03
日本の炭素線治療において臨床線量を決定するために用いられているclinical RBE (cRBE)はexperimental RBE (eRBE)にscaling factorをかけたものである。eRBEはhuman salivary gland(HSG)細胞を用いたコロニー形成法によりlinear-quadratic(LQ)モデルで得られた値および値から求められた各LETにおけるRBEが採用されており、これが全ての患者(すなわちすべての細胞および組織)における炭素線治療計画に反映されている。しかしながら、RBEは線量,線量率,細胞や組織の種類、エンドポイント、酸素化の程度などにより異なる。そこで、群馬大学重粒子線照射施設(GHMC)のLET 1380keV/m、および原子力機構TIARAのLET 108158keV/mの炭素線を用い、その線量分布を評価すると共に、ヒト正常皮膚細胞への照射を行い、得られたRBE値について過去のHSG細胞の結果と比較・解析した。
高橋 昭久*; 久保 誠*; Ma, H.*; 中川 彰子*; 吉田 由香里*; 磯野 真由*; 金井 達明*; 大野 達也*; 古澤 佳也*; 舟山 知夫; et al.
Radiation Research, 182(3), p.338 - 344, 2014/09
被引用回数:57 パーセンタイル:90.66(Biology)DNA二本鎖切断(DSB)は相同組換え(HR)と非相同末端結合(NHEJ)により修復される。重粒子線治療における放射線増感剤の標的候補を明らかにすることを目的とした。がん抑制遺伝子p53欠損マウス胚線維芽細胞由来の野生型細胞, HR修復欠損細胞, NHEJ修復欠損細胞,二重修復欠損細胞を用いた。各細胞にX線,炭素線,鉄線,ネオン線,アルゴン線を照射し、コロニー形成法で生存率を調べた。10%生存率線量値(D10値)を用いて、増感比は(野生型細胞のD10値)/(修復欠損細胞のD10値)の式で算出した。D10値はいずれの線質においても、野生型細胞HR修復欠損細胞NHEJ修復欠損細胞二重修復欠損細胞の順に低くなった。HR修復欠損による増感比はLET無関係に一定で約2であった。一方、NHEJ修復欠損の増感比はLETが高くなるに従い減少するものの、HR修復欠損よりも高い増感効果を示した。高LET放射線の高RBEの要因はNHEJ修復の抑制と誤修復であり、炭素線における増感剤の主要な標的候補はNHEJ修復であることが示唆された。
Mehnati, P.*; 森本 茂子*; 谷田貝 文夫*; 古澤 佳也*; 小林 泰彦; 和田 成一; 金井 達明*; 花岡 文雄*; 佐々木 弘*
Journal of Radiation Research, 46(3), p.343 - 350, 2005/09
被引用回数:31 パーセンタイル:63.87(Biology)イオン照射における生物学的効果比(RBE)はLET値とともに増加するが、非常に高いLET領域では逆に減少に転ずる。この現象を説明するため、ArあるいはFeイオンビームをCHO細胞に照射し、試料中に混在する非ヒット細胞の割合と、ヒット細胞が分裂を経ずに死に至る間期死の頻度に注目して、照射後の細胞群を長時間に渡って追跡観察した。全細胞中の約20%が非ヒットであり、約10%が照射後も生残し、約70%が分裂死又は間期死を示した。分裂死及び間期死のRBEはLET=200keV/mあたりではほぼ同じで、30%生残線量では死細胞の約10%が間期死の経路を辿る。この率はLETによって異なり、2000keV/mのFeイオンでは15%に達するがX線では3%以下であった。しかし、1%生残線量のFeイオンで照射された後も、67%が分裂死を示し、33%の間期死を凌駕していた。これらの結果から、間期死は高LET放射線被曝に特異的な細胞死の様相であり、細胞レベルのオーバーキル効果の現れではないことが示唆された。
池田 裕子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 武藤 泰子; 金井 達明*; 小林 泰彦
no journal, ,
本研究では、がん細胞におけるp53がん抑制遺伝子のステータスに着目し、異種細胞間共培養実験下においてコロニー形成能の低下を指標としたバイスタンダー効果誘導の有無を検出することを目的とした。異種細胞間バイスタンダー効果の検討には、正常細胞としてヒト胎児肺由来正常線維芽細胞株WI-38を、がん細胞としてヒト肺がん細胞株H1299の遺伝子改変株であるH1299/wtp53(正常p53タンパク質を発現),H1299/mp53(変異p53タンパク質を発現),H1299/null(欠損型)を使用した。炭素線照射(18.3MeV/u, LET=108keV/m; Dose=0.5Gy)又は線照射(Dose=0.5Gy)した細胞と、非照射細胞を非接触で6時間又は24時間共培養した後、非照射細胞を回収して、それぞれのコロニー形成率から生存率を算出した。これまでに、炭素線あるいは線照射したH1299/wtp53細胞と非照射のWI-38細胞を共培養したとき、WI-38細胞の生存率は低下しないことを見いだした。この結果から、照射したH1299/wtp53細胞はバイスタンダー因子を放出していない可能性が示唆された。
池田 裕子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 武藤 泰子; 金井 達明*; 小林 泰彦
no journal, ,
近年、放射線の効果は、照射細胞だけでなく、周辺の照射されていない細胞にも現れる、いわゆるバイスタンダー効果が報告されてきた。本研究では、重粒子線がん治療における腫瘍と正常組織間の応答を明らかにするため、異細胞種間共培養実験下におけるバイスタンダー効果を解析した。実験では、ヒト胎児肺由来正常線維芽細胞株WI-38と、ヒト肺がん細胞株H1299の遺伝子改変株であるH1299/wtp53(正常p53タンパク質を発現)を使用した。炭素線照射(LET=108keV/m, Dose=0.5Gy)又はCo-60 線照射(LET=0.2keV/m, Dose=0.5Gy)した細胞と、非照射細胞を非接触で6時間又は24時間共培養した後、非照射細胞を回収して、コロニー形成率から生存率を算出した。これまでに、炭素線あるいは線照射したH1299/wtp53細胞と非照射のWI-38細胞を共培養したとき、WI-38細胞の生存率が増加することを見いだした。この結果から、照射したH1299/wtp53細胞はバイスタンダー細胞の接着や増殖を促進する何らかのシグナル物質を放出している可能性が考えられた。
池田 裕子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 武藤 泰子; 金井 達明*; 小林 泰彦
no journal, ,
バイスタンダー効果は、照射を受けた細胞だけでなく、その周辺の非照射細胞にも細胞間シグナル伝達機構を介した放射線影響を引き起こす現象である。本研究は、照射がん細胞と非照射正常細胞の異細胞種間で、非接触で培地を共有する共培養実験下において、非照射正常細胞のコロニー形成能の変化を指標としたバイスタンダー効果誘導の有無を検出することを目的とした。実験では、正常細胞としてヒト胎児肺由来正常線維芽細胞株WI-38を、がん細胞としてヒト肺がん細胞株H1299の遺伝子改変株であるH1299/wt(正常p53タンパク質を発現)を用いた。炭素線照射(LET=108keV/m, Dose=0.5Gy)又はCo-線照射(LET=0.2keV/m, Dose=0.5Gy)した細胞と、非照射細胞を非接触で6時間又は24時間共培養した後、非照射細胞を回収して、コロニー形成率から生存率を算出した。これまでに、炭素線照射あるいはCo-線照射したH1299/wtと非照射のWI-38を共培養したとき、WI-38の生存率が照射24時間後に1020%増加することを見いだした。これらの結果から、照射したH1299/wtは細胞増殖や細胞接着を促進する何らかの因子を放出している可能性が示唆された。
池田 裕子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 武藤 泰子; 金井 達明*; 小林 泰彦
no journal, ,
本研究では、正常細胞とがん細胞で共培養実験を実施し、放射線誘発バイスタンダー効果がどのような影響を及ぼすのか網羅的に検出することを目的とした。実験には、正常細胞としてヒト胎児肺由来正常線維芽細胞株WI-38を、がん細胞としてヒト肺がん細胞株H1299/wtを用いた。炭素線照射(WI-38:0.13Gy, H1299/wt:0.5Gy)あるいはCo-線照射(0.5Gy)した細胞と、非照射の細胞を6時間又は24時間共培養した後、非照射細胞でコロニー形成を行い生存率の算出を行った。炭素線あるいはCo-線照射したH1299/wtと非照射のWI-38を異細胞種間共培養したとき、非照射WI-38の相対的な生存率が照射から24時間共培養することで約10%増加することを見いだした。一方で、炭素線照射したWI-38と非照射WI-38で同細胞種間共培養した場合には、非照射細胞の生存率は照射6時間及び24時間の共培養でともに約15%低下することがわかった。これは、重粒子線誘発バイスタンダー効果では、照射細胞の種類が異なるとその応答が大きく変化することを意味し、重粒子線がん治療を高度化するうえで重要な知見であると考えられた。
池田 裕子; 舟山 知夫; 横田 裕一郎; 金井 達明*; 小林 泰彦
no journal, ,
これまでに、ヒト肺がん細胞株H1299/wtと、ヒト胎児肺由来の正常繊維芽細胞株WI-38を用いた異細胞種間バイスタンダー効果の解析を、細胞増殖死を判断するコロニー形成能の変化に着目して実施してきた。その結果、重粒子線誘発バイスタンダー効果では、照射細胞の種類が異なるとその応答が変化することを見いだした。そこで本研究では、この現象に関与する細胞内/細胞間分子機構を解明するため、重イオンを細胞に狙って照射できる日本原子力研究開発機構の重イオンマイクロビーム照射装置を利用することにした。当該装置はバイスタンダー効果解析に有効なツールであり、ブロードビーム照射では明らかにできなかった機構の解明が可能となる。しかし、同細胞種間バイスタンダー効果に関するマイクロビームを用いた研究報告は多いものの、異細胞種間で重イオンマイクロビームを用いた報告はまだなく、解析実験系の確立が必要となる。現在、がん細胞と正常細胞を同一の照射容器に混在させ、その一部の細胞のみを重イオンマイクロビームで狙って照射するための実験系を構築中であり、そこから得られた知見と今後の展開について報告する。
池田 裕子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 武藤 泰子; 金井 達明*; 小林 泰彦
no journal, ,
本研究では、異細胞種間バイスタンダー効果の誘導を検証し、同細胞種間の場合と比較することで特有な現象をとらえ、重粒子線誘発バイスタンダー効果が治療に与える影響を明らかにすることを目的とした。実験では、正常細胞としてヒト胎児肺由来正常線維芽細胞株WI-38を、がん細胞としてヒト肺がん細胞株H1299/wtを用いた。炭素線照射(WI-38:0.13Gy, H1299/wt:0.5Gy)した細胞と、非照射の細胞を6時間又は24時間共培養した後、非照射細胞でコロニー形成を行い生存率を算出した。炭素線照射したWI-38と非照射WI-38を同細胞種間共培養した場合には、非照射細胞における相対的な生存率を経時的にみると、照射6時間及び24時間の共培養で約1015%低下することがわかった。一方で、炭素線照射したH1299/wtと非照射のWI-38を異細胞種間共培養したときには、非照射WI-38の相対的な生存率が照射から24時間共培養することで約10%増加することを見いだした。重粒子線によって誘発されたバイスタンダー効果は、照射細胞の種類が異なるとその応答が大きく変化するという知見が得られ、重粒子線がん治療に影響を与える可能性の一端をとらえたと考えている。
池田 裕子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 金井 達明*; 小林 泰彦
no journal, ,
本研究では、ヒト胎児肺由来の正常繊維芽細胞株WI-38と、ヒト肺がん細胞株H1299/wtを用いた共培養実験を実施し、放射線誘発バイスタンダー効果がどのような影響を及ぼすのか網羅的に検出することを目的とした。実験では、炭素線照射(WI-38:0.13Gy, H1299/wt:0.5Gy)した細胞と、非照射の細胞を6時間又は24時間共培養した後、非照射細胞でコロニー形成を行い生存率の算出を行った。その結果、異細胞種を共培養することで非照射細胞におけるコロニー形成能が高まったとも考えられるが、照射したWI-38は細胞死の誘導などにかかわる因子を放出し、照射したH1299/wtp53が細胞増殖の促進などにかかわる因子を放出する可能性も示唆された。そこで、この現象に関与する分子機構を解明するため、原子力機構高崎量子応用研究所の重イオンマイクロビーム細胞照射装置を利用し、正常細胞とがん細胞の混在培養系に対して一部の細胞のみを狙って照射する実験系を構築中であり、そこから得られた知見について報告する。
池田 裕子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 金井 達明*; 小林 泰彦
no journal, ,
本研究では、共培養実験を用いたバイスタンダー効果の誘導を網羅的に検討し、重粒子線誘発バイスタンダー効果ががん治療に与える影響を明らかにすることを目的とした。実験には、ヒト胎児肺由来正常線維芽細胞株WI-38とヒト肺がん細胞H1299/wtを使用し、炭素線照射(WI-38:0.13Gy, H1299/wt:0.5Gy)した細胞と、非照射の細胞を6時間又は24時間共培養した後、非照射細胞でコロニー形成を行い生存率の算出を行った。これまでに、炭素線照射したWI-38と非照射WI-38で同細胞種間共培養した場合には非照射細胞における相対的な生存率は、照射6時間及び24時間の共培養で約10%から15%低下するのに対し、炭素線照射したH1299/wtと非照射のWI-38を異細胞種間共培養したときには、非照射WI-38の相対的な生存率が照射から24時間の共培養で約10%増加することを見いだした。これらの結果から、培養液経由の重粒子線誘発バイスタンダー効果は、異細胞種間において非照射細胞の相対的な生存率を高める可能性が示唆された。
池田 裕子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 金井 達明*; 小林 泰彦
no journal, ,
本研究では、ヒト胎児肺由来の正常線維芽細胞株WI-38と、ヒト肺がん細胞株H1299/wtを用いた共培養実験を実施し、放射線誘発バイスタンダー効果がそれぞれの細胞に及ぼす影響を網羅的に検出することを目的とした。実験では、炭素線照射(WI-38: 0.13Gy、H1299/wt: 0.5Gy)した細胞と、非照射の細胞を6時間又は24時間共培養した後、非照射細胞でコロニー形成を行い生存率の算出を行った。その結果、照射したWI-38と非照射のWI-38の共培養では非照射細胞の生存率が低下したが、照射したH1299/wtと非照射のWI-38の共培養では非照射細胞の生存率が増加する現象を見いだした。このことから、照射したWI-38は細胞死の誘導などにかかわる因子を放出し、照射したH1299/wtは細胞増殖の促進などにかかわる因子を放出する可能性が考えられた。そこで、この現象に関与する分子機構を解明するため、原子力機構高崎量子応用研究所の重イオンマイクロビーム細胞照射装置を利用し、正常細胞とがん細胞の混在培養系に対して一部の細胞のみを狙って照射する実験系を構築中であり、そこから得られた知見について報告する。
池田 裕子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 金井 達明*; 小林 泰彦
no journal, ,
本研究では、異細胞種間バイスタンダー効果に特有な現象を捉え、その分子機構を明らかにするためのマイクロビームを用いた新規実験系を確立することを目的とした。まず、共培養実験により、バイスタンダー効果が同一の細胞種間で培養液を介して働く場合には非照射細胞のコロニー形成能を低下させ、異なる細胞種間では非照射細胞のコロニー形成能を高めることを明らかにした。異細胞種間と同細胞種間ではバイスタンダー応答が異なることが示されたが、ブロードビームを用いた共培養実験では、照射細胞が培養液中に放出する細胞間情報伝達物質によって誘導されるバイスタンダー応答しか確認できない。そこで、隣接する細胞間ギャップジャンクション経由で誘導されるバイスタンダー応答を解析するため、マイクロビーム細胞照射実験を計画した。異細胞種間でマイクロビームを用いた報告は少なく、解析実験系の確立が必要となる。現在、がん細胞と正常細胞をコンフルエントな状態で同一の照射容器に混在させ、その一部の細胞のみを重イオンマイクロビームで狙って照射するための実験系を構築中である。これまでに得られた知見と今後の展開について報告する。
池田 裕子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 小林 泰彦; 金井 達明*
no journal, ,
本研究では、異細胞種間バイスタンダー効果の分子機構を解明するとともに、重粒子線がん治療におけるバイスタンダー効果の影響の可能性を評価するため、正常細胞とがん細胞の細胞集団に炭素線ブロードビームを全体照射し、照射していない細胞集団と多孔性メンブレンを介して共培養することでバイスタンダー効果による非照射バイスタンダー細胞の生存率の変化を調べた。その結果、同一の細胞種間では炭素線誘発バイスタンダー効果によりバイスタンダー細胞のコロニー形成能が低下するが、異なる細胞種間ではコロニー形成能が高まり、異細胞種間と同細胞種間では培養液経由のバイスタンダー応答に大きな違いがあることが分かった。現在は、重イオンマイクロビームと異細胞種混在培養の手法を用いた新規の解析実験系を構築中である。
池田 裕子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 金井 達明*; 小林 泰彦
no journal, ,
本研究では、バイスタンダー効果が重粒子線がん治療に及ぼす影響を明らかにするため、細胞種の組合せを変えて炭素線誘発バイスタンダー効果の誘導を検討した。培養液経由のシグナル伝達によるバイスタンダー効果を検出するための共培養実験では、正常細胞としてヒト胎児肺由来正常線維芽細胞株WI-38を、がん細胞としてヒト肺がん細胞H1299/wtを使用した。炭素線ブロードビーム全体照射(LET=108keV/m, WI-38:0.13Gy, H1299/wt:0.5Gy)した細胞と、非照射細胞を非接触で6時間または24時間共培養した後、非照射細胞のみを回収してコロニー形成を行い、得られたコロニー形成率から生存率を算出して、同細胞種間と異細胞種間で結果を比較した。種々の組み合わせで共培養実験を実施したところ、炭素線誘発バイスタンダー効果が異なった細胞種に培養液を介して働く場合には、非照射細胞のコロニー形成能を高めることが示唆され、異細胞種間と同細胞種間では培養液経由のバイスタンダー応答に大きな違いが生じることが分かった。
池田 裕子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 金井 達明*; 中野 隆史*; 小林 泰彦
no journal, ,
本研究では、ヒト胎児肺由来の正常線維芽細胞株WI-38と、ヒト肺がん細胞H1299/wtを用いた。炭素線ブロードビーム照射(LET=108keV/m)した細胞と非照射細胞を非接触で共培養した後、コロニー形成実験を行い、非照射細胞の生存率を測定した。炭素線0.13Gy照射したWI-38と非照射H1299/wtを共培養すると、非照射がん細胞の相対的な生存率が、共培養開始から6時間および24時間後に約15%20%増加した。0.5Gy照射したWI-38を用いた場合では、非照射がん細胞の相対的な生存率が約10%15%低下することが分かった。また、Carboxy-PTIOを添加した培養液を用いた場合には、共培養開始から6時間および24時間後に、0.5Gy照射群において、非照射がん細胞の相対的な生存率が増加傾向を示した。この結果から、異細胞種間バイスタンダー効果では非照射細胞の生存率低下に、一酸化窒素ラジカルの媒介が関与する可能性が高いが、その一方で相対的な生存率を増加させるシグナルの関与も示唆された。
溝端 健亮*; 吉田 由香里*; 松村 彰彦*; 磯野 真由*; 八高 知子*; 安藤 興一*; 舟山 知夫; 大野 達也*; 中野 隆史*; 金井 達明*
no journal, ,
日本の炭素線治療において臨床線量を決定するために用いられているclinical RBE(cRBE)はexperimental RBE(eRBE)にscaling factorをかけたものである。eRBEは過去にHSG細胞を用いたコロニー形成法により求められたRBEが採用されており、これが全ての患者および組織における炭素線治療計画に反映されている。本研究では異なる組織・異なる細胞種において従来のeRBEを用いることが妥当かどうかを検討した。NHDF細胞にX線または炭素線を照射しコロニーアッセイを行った。細胞生残率はLQモデルでフィットさせ、D10を求めてRBEを算出した。得られたそれぞれの値についてHSG細胞の結果と比較・解析した。その結果、NHDF細胞から得られたRBEはLET依存的に増加した。この傾向はHSG細胞の結果と一致しているが、それぞれのRBE値を比較するとNHDF細胞はHSG細胞よりも高かった。このことから、様々な組織に対する効果の評価にはそれぞれの組織毎にscaling factorを変える必要がある可能性が示唆された。
池田 裕子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 小林 泰彦; 金井 達明*
no journal, ,
バイスタンダー効果は、照射を受けた細胞から放出される細胞間情報伝達物質を介して、その周辺の非照射細胞にも放射線の効果が及ぶ現象である。これまで、同細胞種間でのバイスタンダー効果が調べられてきたが、生体内での影響を考慮するためには、異細胞種間でのバイスタンダー効果に着目する必要がある。そこで本研究では、培養液経由による炭素線誘発バイスタンダー効果を解析し、異細胞種間に特有な現象をとらえることを目的とした。正常細胞としてヒト胎児肺由来の正常線維芽細胞株WI-38を、がん細胞としてヒト肺がん細胞株H1299/wtを使用した。炭素線ブロードビーム(LET=108keV/m、Dose=0.13Gy、0.5Gy)で照射した細胞と、非照射細胞を非接触で6時間または24時間共培養した後、非照射細胞のみを回収してコロニー形成率から生存率を算出した。照射したWI-38細胞と非照射H1299/wt細胞の組み合わせでは、バイスタンダー効果の誘導が確認され、照射した線量に依存して異なる応答を示す可能性が示唆された。
池田 裕子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 金井 達明*; 中野 隆史*; 小林 泰彦
no journal, ,
本研究では、ヒト肺由来の正常線維芽細胞WI-38とヒト肺がん細胞H1299/wtを用いた。炭素線全体照射(LET=108kev/m)した細胞と非照射細胞を共培養し、コロニー形成実験によりバイスタンダー細胞の生存率を算出した。0.13Gy照射した正常細胞と6時間共培養した非照射がん細胞の生存率は、増加した。その一方で、0.5Gy照射した正常細胞との共培養では、非照射がん細胞の生存率が低下した。正常細胞へ照射した線量によってがん細胞に対するバイスタンダー効果の反応が変化することが分かった。さらに、0.5Gy照射した正常細胞の培養液にCarboxy-PTIOを添加すると、非照射がん細胞の生存率は増加傾向にあることが分かった。これらの結果から、バイスタンダー効果における生存率低下は、一酸化窒素ラジカルの媒介によって引き起こされることが示唆された。
池田 裕子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 金井 達明*; 中野 隆史*; 小林 泰彦
no journal, ,
これまでにわれわれは、正常細胞とがん細胞を同一の容器内で接触共培養できる系を確立してきた。その試料に対して、正常細胞とがん細胞の境界に沿って、がん細胞のみ、もしくは正常細胞のみを狙い照射することで、バイスタンダー効果を検出する。しかし、異細胞種間混在培養試料に対し陽子線マイクロビームを用いたバイスタンダー効果に関する研究報告はあるが、重イオンマイクロビームを用いた報告は少ない。そこで我々は、日本原子力研究開発機構の細胞照準照射技術を駆使し、ある一定の範囲のがん細胞(あるいは正常細胞)に対して自動で照射するパターン照射法を採用した。それによって、コンフルエントな状態のがん細胞領域(縦5mm)に対し、20mのアパチャーでコリメートした炭素イオンマイクロビーム(220MeV, LET=103keV/m)を照射範囲が重ならないように250ヶ所へ連続的に照射できた。現在、このようにして照射した試料について、免疫染色によるDNA損傷タンパク質53BP1や-H2AXのフォーカス数の比較により、DNA損傷修復を解析中であり、方法と得られた知見について報告する。