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高原 省五; 飯本 武志*; 五十嵐 隆元*; 川端 方子*
保健物理(インターネット), 58(2), p.50 - 58, 2023/08
日本保健物理学会は、日本保健物理学会誌に掲載された福島第一原子力発電所(1F)事故に関連する論文から知見を得るため、ワーキンググループを立ち上げた。本論文は、リスクコミュニケーション、環境測定・モニタリング、放射線量測定・評価、放射線医学、放射性廃棄物の分野に分類されない47編の論文についてレビューを行った結果について述べたものである。レビューされた論文には、著者の立場や発表時期における社会的関心によって、様々な知見や問題点が存在する。これらの知見や問題意識と向き合い、「保健物理学とは何か」、「放射線防護とは何か」を慎重に考えることが、今後の保健物理学会の発展に重要である。
永井 泰樹*; 川端 方子*; 橋本 慎太郎; 塚田 和明; 橋本 和幸*; 本石 章司*; 佐伯 秀也*; 本村 新*; 湊 太志; 伊藤 正俊*
Journal of the Physical Society of Japan, 91(4), p.044201_1 - 044201_10, 2022/04
被引用回数:2 パーセンタイル:46.35(Physics, Multidisciplinary)近年、神経内分泌腫瘍を治療するための医療用RIとしてLuが注目されており、加速器施設で重陽子を濃縮Yb試料に照射し、高純度のLuを製造する方法が検討されている。ただし、Yb試料には様々な同位体が微量に含まれており、Lu以外のLu同位体が不純物として生成される。医療用として利用するLuは一定の純度が求められるため、定量的にLuの不純物を評価する手法が求められていた。本研究では、実験値を基に関与する全てのYb()Lu反応の断面積を決定し、粒子輸送計算コードPHITSと組み合わせることで、Yb試料が任意の組成比をもつ場合の各Lu同位体の生成量を推定する新しい手法を開発した。他に、天然組成のYb試料へ25MeV重陽子を照射した実験も行い、本手法の有効性を検証した。また、市販の濃縮Yb試料に照射した条件で計算を行い、重陽子のエネルギーを15MeVとすることで、純度99%以上のLu生成を達成できることを示した。開発した手法は、加速器を用いて高純度の医療用Luを製造する際、必要な濃縮Yb試料の同位体組成を議論する上で重要な役割を果たすものである。
川端 方子*; 本石 章司*; 太田 朗生*; 本村 新*; 佐伯 秀也*; 塚田 和明; 橋本 慎太郎; 岩本 信之; 永井 泰樹*; 橋本 和幸*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 330(3), p.913 - 922, 2021/12
被引用回数:7 パーセンタイル:72.21(Chemistry, Analytical)加速器中性子を利用し、将来有望な医療RIであるCu及びCuの大量合成に関して、実験に基づく生成量評価と臨床に必要な生成量のPHITSコード使用による評価、そして大量のターゲット物質からのCu同位体の分離精製手法開発を行った。実験では55.4gという大量の、天然亜鉛試料を利用し、加速器中性子の照射による生成率について定量的な評価を行った。また、同時に臨床的に必要な量のCu及びCuの製造の可能性について、それぞれ100gの濃縮ZnおよびZn試料に対して、40MeV、2mAの重陽子照射により発生する中性子を照射する数値シミュレーションを行い、その生成量を推定した。また、大量の天然亜鉛試料からCu及びCuを分離するために、熱分離と樹脂分離を組み合わせた分離方法を開発し、73%の分離効率と97%の亜鉛回収率が得られることを実証した。これらの結果、このような加速器中性子による生成と本分離手法の組み合わせで、臨床応用のために必要なCu及びCuの大規模生産を提供することができることがわかった。
塚田 和明; 永井 泰樹*; 橋本 慎太郎; 湊 太志; 川端 方子*; 初川 雄一*; 橋本 和幸*; 渡辺 智*; 佐伯 秀也*; 本石 章司*
Journal of the Physical Society of Japan, 89(3), p.034201_1 - 034201_7, 2020/03
被引用回数:2 パーセンタイル:22.16(Physics, Multidisciplinary)ポリエチレン遮へい中のZnOに、50MeV重陽子とBeによる()反応で生成した中性子を照射することで、Ga, Ga, Zn、並びにCuの特異な生成を実験的に確認した。特に、ポリエチレン遮へい内で得られた収率は、遮へいなしの実験と比較して、約20倍の収量を示した。一方、鉛遮へい内の金属Zn試料の照射におけるGa, Ga, Zn、並びにCuの収量と、ZnO及び金属Zn試料の照射におけるCu, Ni及びZnの収量は、遮へいによる影響はほとんど受けていない。この実験結果は、遮へい条件を調整することで、中性子反応に限らず陽子反応を含む多様で大量の放射性同位元素を、一度の照射で同時に合成できるという加速器中性子の注目すべき特性を示すものである。また、PHITSコードを利用した生成量予測を試み、本実験結果と比較することで、本生成量の特異性について評価した。
塚田 和明; 永井 泰樹*; 橋本 和幸*; 川端 方子*; 湊 太志; 佐伯 秀也*; 本石 章司*; 伊藤 正俊*
Journal of the Physical Society of Japan, 87(4), p.043201_1 - 043201_5, 2018/04
被引用回数:10 パーセンタイル:60.27(Physics, Multidisciplinary)A neutron source from the C(d,n) reaction has a unique capability for producing medical radioisotopes like Mo with a minimum level of radioactive wastes. Precise data on the neutron flux are crucial to determine the best conditions for obtaining the maximum yield of Mo. The measured yield of Mo produced by the Mo(n,2n)Mo reaction from a large sample mass of MoO agrees well with the numerical result estimated by the latest neutron data, which are a factor of 2 larger than the other existing data. This result provides an important conclusion towards the domestic production of Mo; about 50% of the MoO sample mass with a single Mo in Japan would be met using a 100 g MoO sample mass with a single accelerator of 40 MeV, 2 mA deuteron beams.
湊 太志; 塚田 和明; 佐藤 望*; 渡辺 智*; 佐伯 秀也*; 川端 方子*; 橋本 慎太郎; 永井 泰樹*
Journal of the Physical Society of Japan, 86(11), p.114803_1 - 114803_6, 2017/11
被引用回数:9 パーセンタイル:56.98(Physics, Multidisciplinary)核診断に使われるTcの親核であるMoの生成量の測定と計算を行った。MoはMo(,)Mo反応によって作られ、中性子源はC(,)反応を用いた。中性子のエネルギー範囲は熱領域から約40MeVまでである。測定されたMoの生成量は、最新のC(,)反応の実験データおよびJENDL評価済み断面積を用いて予測された数値計算結果と一致していることが分かった。次に、経済的に適したMoの生成法を模索するため、Mo生成の条件を変えた新しい系統的な数値計算を実施した。考慮した条件は、MoOサンプルの質量、炭素標的とサンプル間の距離、重陽子ビームの半径、照射時間である。得られたMoの生成量より、一つの加速器でMoの日本の需要量の約30%を担うことができることが分かった。また、1日2回MoからTcを溶出することで、Moの需要量の約50%まで引き上げることが可能であることが分かった。
須郷 由美*; 橋本 和幸*; 川端 方子*; 佐伯 秀也*; 佐藤 俊一*; 塚田 和明; 永井 泰樹*
Journal of the Physical Society of Japan, 86(2), p.023201_1 - 023201_3, 2017/02
被引用回数:14 パーセンタイル:68.14(Physics, Multidisciplinary)Zn()Cu反応により合成したCuを利用し、結腸直腸の腫瘍を有するマウスにおけるCuClの生体内分布を初めて観測した。その結果、Cuの高い取り込みが、腫瘍ならびに銅代謝のための主要な器官である肝臓と腎臓で観察された。これは腫瘍に対するCuの蓄積を示す結果であり、CuClが癌放射線治療のための潜在的な放射性核種薬剤であることを示唆している。また、現状で入手可能な強い中性子を用いたZn()Cu反応を利用することでもたらされたCuの生成量の増加は、小動物を用いた治療効果について更なる研究の進展もまた約束するものである。
橋本 和幸; 永井 泰樹; 川端 方子; 佐藤 望*; 初川 雄一; 佐伯 秀也; 本石 章司*; 太田 雅之; 今野 力; 落合 謙太郎; et al.
Journal of the Physical Society of Japan, 84(4), p.043202_1 - 043202_4, 2015/04
被引用回数:8 パーセンタイル:53(Physics, Multidisciplinary)The distribution of Tc-radiopharmaceutical in mouse was obtained with SPECT for the first time using Tc, which was separated by thermochromatography from Mo produced via the Mo(n,2n)Mo reaction with accelerator neutrons. The SPECT image was comparable with that obtained from a fission product Mo. Radionuclidic purity and radiochemical purity of the separated Tc and its aluminum concentration met the United States Pharmacopeia regulatory requirements for Tc from the fission product Mo. These results provide important evidence that Tc radiopharmaceutical formulated using the Mo can be a promising substitute for the fission product Mo. A current and forthcoming problem to ensure a reliable and constant supply of Mo in Japan can be partially mitigated.
川端 方子; 永井 泰樹; 橋本 和幸; 佐伯 秀也; 本石 章司*; 佐藤 望*; 太田 朗生*; 椎名 孝行*; 河内 幸正*
Journal of the Physical Society of Japan, 84(2), p.023201_1 - 023201_4, 2015/02
被引用回数:6 パーセンタイル:45.25(Physics, Multidisciplinary)医療用Tcは、溶融したMoOから熱分離によって分離できる。Mo/Tcジェネレーターを使用し、溶融MoOからのTc分離における、湿気を帯びた酸素ガスの影響を調査した。Moは、Mo(n,2n)Mo反応で生成した。乾燥酸素ガスと比較して、湿気を帯びた酸素ガス中では、Tcの分離速度、分離効率、回収効率全てにおいて、高い値を示すという新しい見解を得ることができた。本研究結果により、溶融MoOから、高品質なTcを高効率かつ安定的に製造するという課題へ向け、重要な進展を遂げた。また、湿気を帯びた酸素ガスと溶融MoOの相互作用について、新たな知見を与えるものである。
佐藤 望; 塚田 和明; 渡辺 智; 石岡 典子; 川端 方子; 佐伯 秀也; 永井 泰樹; 金 政浩*; 湊 太志; 岩本 信之; et al.
Journal of the Physical Society of Japan, 83(7), p.073201_1 - 073201_4, 2014/07
被引用回数:13 パーセンタイル:64.07(Physics, Multidisciplinary)本研究により、Zn(,)Cu反応で生成される医療用放射性同位体Cuは、従来法による製造と比較して放射核的純度が非常に高いことが初めて明らかになった。実験は原子力機構高崎研究所のイオン照射研究施設において行われ、中性子源としてエネルギー41MeVの重陽子ビームによるC(d,n)反応が用いられた。中性子照射後、高純度Ge検出器を用いて濃縮Zn試料の線測定を行い、その結果から核反応生成物の放射能を評価した。生成されたCuに対する不純物核種の量は非常に少ないため、ZnからCuを化学分離する過程の簡略化や、高価な濃縮Zn試料の再利用が期待される。この研究結果は、高純度Cu製造に最適な反応系としてZn(,)Cu反応を提案するものであり、Cuの製造法に関する長年の課題を解決できる可能性がある。
永井 泰樹; 川端 方子; 佐藤 望; 橋本 和幸; 佐伯 秀也; 本石 章司*
Journal of the Physical Society of Japan, 83(8), p.083201_1 - 083201_4, 2014/07
被引用回数:10 パーセンタイル:57.84(Physics, Multidisciplinary)High thermo-separation efficiencies of about 90% and 70% have been obtained for the first time for Tc from molten MoO samples containing Mo with thicknesses of 4.0 and 8.8 mm, respectively, by repeated milking tests. Mo was produced with Mo(,2)Mo by using neutrons from H(,)He. The thermo-separation efficiency was determined by measuring the 141 keV -ray yield of Tc within the molten MoO samples with a radiation detector as a function of the furnace temperature and time. The diffusion coefficients of Tc in the molten MoO samples were estimated in order to help understand the Tc release mechanism. The present result solves a long-standing problem of decreasing the separation efficiency of Tc from MoO while increasing the sample mass or repeating sublimation in thermo-separation, and will bring a major breakthrough to obtain high-quality Tc from MoO irradiated by accelerator-neutrons (protons) or reactor-neutrons.
永井 泰樹; 橋本 和幸; 初川 雄一; 佐伯 秀也; 本石 章司; 園田 望; 川端 方子; 原田 秀郎; 金 政浩*; 塚田 和明; et al.
Journal of the Physical Society of Japan, 82(6), p.064201_1 - 064201_7, 2013/06
被引用回数:43 パーセンタイル:85.02(Physics, Multidisciplinary)A new system proposed for the generation of radioisotopes with accelerator neutrons by deuterons (GRAND) is described by mainly discussing the production of Mo used for nuclear medicine diagnosis. A prototype facility of this system consists of a cyclotron to produce intense accelerator neutrons from the C(d,n) reaction with 40 MeV 2 mA deuteron beams, and a sublimation system to separate Tc from an irradiated MoO sample. About 9.7 TBq/week of Mo is produced by repeating irradiation on an enriched Mo sample (251g) with accelerator neutrons three times for two days. It meets about 10% of the Mo demand in Japan. The characteristic feature of the system lies in its capability to reliably produce a wide range of high-quality, carrier-free, carrier-added radioisotopes with a minimum level of radioactive wastes without using uranium. The system is compact in size, and easy to operate; therefore it could be used worldwide to produce radioisotopes for medical, research, and industrial applications.
塚田 和明; 佐藤 望; 渡辺 智; 石岡 典子; 初川 雄一; 橋本 和幸; 金 政浩*; 川端 方子; 佐伯 秀也; 永井 泰樹
no journal, ,
核医学用放射性同位体(RI)は、主に癌などに対する高感度の診断及び治療が可能であるため世界中で重用されている。我々は、診断用RIとしてMo-99を、治療用RIとしてY-90を、そして診断・治療の両方に対応できるRIとしての期待が高いCu-64及びCu-67を、安定稼働に定評がある加速器で得られる高速中性子を用いて合成することを目指して研究を行ってきた。本講演では、これら目的とするRIの生成に、40MeVの重陽子ビームを炭素あるいはBe標的に照射することで発生する高速中性子を利用し、実際に原子力機構高崎量子応用研究所AVFサイクロトロンにて上記RIの合成試験を行い、生成量の評価並びに副生成物に関する情報を得たので報告する。
川端 方子; 橋本 和幸; 佐伯 秀也; 佐藤 望*; 本石 章司*; 永井 泰樹
no journal, ,
Cu, Cuは特徴のある崩壊様式に加え、配位化学的にも万能という利点から、新しい放射性医薬品として注目を集めている。Cuは腫瘍に対する線のエネルギー及び飛程から比較的小さながん治療に適していると言われており、一方、CuはPET用診断薬としての期待が持たれている。この2核種についての製造方法は過去に研究されているが、副生成物RIの除去などの問題もあり、特にCuについては国内で臨床試験に必要な量を生産する方法が確立されていない。我々は、加速器で得られる中性子を用いて、Zn(n,x)Cu及びZn(n,p)Cu反応でCu, Cuを生成する方法を提案した。本法では、不要な副生成RIが少なく、短時間で行える同じ分離手法を用いて、2つの目的核種の分離が行えるという利点がある。講演では、本生成法とそれに続く化学分離について、一連の実験結果を紹介する。
永井 泰樹; 川端 方子; 佐藤 望*; 橋本 和幸; 佐伯 秀也; 本石 章司*; 初川 雄一; 太田 朗生; 椎名 孝行; 河内 幸正
no journal, ,
Moの娘核であるTcは医療診断に世界的に広く利用されている。日本では、約90万件の診断がTcを用い行われている。Moは主に高濃縮Uを用い研究用原子炉で製造されている。最近のMoの不足のため、色々な方法によるMoあるいはTcの代替製造法の提案が行われている。我々は、加速器で得られる中性子によるMo(n,2n)反応でMoを生成する方法を提案した。この生成法は、多量の高品質のMoを不要放射性生成物を微量にして生成できることを特徴とする。それは、Mo(n,2n)Mo反応断面積が、中性子エネルギーが11から18MeVで大きいこと、それに比べて、(n,He), (n,n'p)、そして(n,p)反応断面積が極めて小さいことによる。高強度の中性子を得ることは、近年の加速器及び標的技術の進展で可能である。この講演では、Mo(n,2n)反応で生成されるMoを用いて得られる高品質のTcに関する実験結果を紹介する。
橋本 和幸; 川端 方子; 佐伯 秀也; 塚田 和明; 佐藤 望*; 本石 章司*; 永井 泰樹; 渡辺 智; 石岡 典子
no journal, ,
Cu(半減期62時間)は、がん治療に適した線と画像診断に適した線を同時に放出するため、がん治療用核種として有望視されている。現状では、その製造方法として高エネルギー陽子(50-200MeV)によるZn(p,2p)Cu反応が最適と考えられているが、生成量が限られていることや副生成RIの多さ等の問題から、研究開発も限定的な状況である。そこで、従来法に代わる製造法として、C(d,n)反応による高速中性子を用いてZn(n,x)Cu反応(x=n'p, d)により製造したCuのZnターゲットからの分離・精製及び抗体標識に有用なモデル配位子であるDOTA, TETAへの標識を実施した。キレート樹脂+陰イオン交換樹脂2段カラム分離・精製法を用いてCuを単離した結果、不純物RIは検出されず、放射性核種純度の高いCu溶液が得られた。また、標識実験の結果、Cu-DOTAが99%以上、Cu-TETAが97%以上の収率で合成できた。以上の結果、C(d,n)反応による高速中性子を用いて、放射性核種純度及び化学的純度の高い無担体Cuを製造することに成功した。今後は、大量製造化の検討及び遠隔操作を可能にする装置等の開発を通じて、高純度Cu大量製造法の確立を目指す。
川端 方子; 橋本 和幸; 佐伯 秀也; 塚田 和明; 渡辺 智; 永井 泰樹
no journal, ,
Cuは、治療用放射性医薬品として将来性が高く注目されている。C(d,n)反応からの高速中性子を利用してZnOから製造すると、副生成RIが他の製造法に比べて非常に少なく、高純度のCuを単離できることを既に報告しているが、本研究では、新たに副生成RIのNiを分離し、より高純度のCu製造を目指した。結果、既報の分離法と同等の装置で時間的に大差なく、放射性核種純度の高いCuを得ることができた。
橋本 和幸; 川端 方子*; 佐伯 秀也*; 佐藤 俊一*; 塚田 和明; 渡辺 智; 永井 泰樹
no journal, ,
Cu(半減期61.9時間)は、がん治療に適した線(平均エネルギー141keV)と画像診断に適した線(185keV等)を同時に放出するため、がん治療用核種として有望視され30年余にわたりその有効な生成法開発が模索されている。従来、Cuを製造するには、高エネルギー陽子を用いたZn(p,2p)Cuが最適であると考えられているが、生成量が限られていることや副生成RIの多さ等の問題から、研究開発も限定的な状況である。そこで我々は、従来法に代わる製造法として、加速器からの高速中性子を用いたCu製造法[Zn(n,x)Cu反応(x=n'p, d)]の開発を行っており、ターゲット物質であるZn(5g ZnO)からの基本分離法を確立した。本研究では、実用化を目指す次のステップとして、副生成RIであるNi(半減期2.52h)を新たに分離する高純度化手法及び大量製造化のためのZnO試料増量(基本分離法の5倍以上の試料量)に対応した分離・精製法を検討した。Ni分離手法の開発では、既報の基本分離法において、8M HClの追加使用及び陰イオン交換樹脂カラムのサイズアップを図ることにより、最終Cu溶液中のNi残量は検出限界以下であり、Ni分離手法を確立した。さらに、33g ZnO試料を用いた分離挙動を調べた結果、上記Ni分離を可能にした改良分離法により、CuとZnの分離は良好で、Cu最終溶液中に、Znは検出されず、より高純度のCuを製造する方法を確立した。
川端 方子*; 永井 泰樹; 橋本 和幸; 初川 雄一; 本石 章司*; 佐伯 秀也*; 佐藤 望*; 太田 朗生*; 椎名 孝行*; 河内 幸正*; et al.
no journal, ,
Tcは診断用RIとして広く利用されており、国内では年間約70万件、in vivo投与件数の過半数以上を占めている。原料となる親核種Moは現在海外の原子炉で製造されており、日本は長年海外からからの輸入に依存している。このMo供給が原子炉運転停止などの影響で今後不安定になる恐れがあり、諸外国をはじめ日本でも国内での製造が検討されている。我々は、加速器中性子を利用して、MoからMo(n,2n)Mo反応でMoを生成し、Tcを効率的に熱分離する方法を開発し、実用化を視野に入れた研究を進めてきた。厚さ3mm-18mmの溶融MoO試料を用いて複数回分離試験を実施した結果、連続して高い分離効率(70-95%)を得ることに成功した。また、水蒸気を加えることにより効率が約10%向上することが明らかになった。回収したTcの純度は高く、SPECT画像によるマウス骨分布を調べた結果、市販のTcと差がないことが確認された。今後、本研究で開発した熱分離装置の大型化によって、まず大量生産を目指し、国内での実用化を視野に入れた分離精製装置の開発を発展させたい。
橋本 和幸; 川端 方子*; 佐伯 秀也*; 佐藤 俊一*; 塚田 和明; 初川 雄一; 永井 泰樹; 渡辺 智; 石岡 典子
no journal, ,
Cu(半減期62時間)は、がん治療に適したベータ線(平均エネルギー141keV)と画像化に適した線(185keV)を同時に放出するため、がん治療用核種として有望視されている。しかし、大量に高品質のCuを製造する方法が限られているため、研究開発が限定的である。そこで我々は、AVFサイクロトロンにて重陽子ビームを炭素あるいはベリリウム標的に照射することで発生する高速中性子をZnOに照射することによりCuを製造する手法の開発を行っている。本研究では、動物実験が可能な放射能量のCuを製造するための分離手法の検討を行った。まず、ターゲット物質であるZnO増量(5g33g)に対応する分離手法の開発では、33g ZnO試料を用いた場合でも、既報の基本分離法を用いることにより、CuとZnの分離は良好であり、Cu最終溶液中に、Znは検出されなかった。また、濃縮ZnOターゲットの回収方法として、キレート樹脂カラムから溶出されるZn溶液を水酸化物沈殿法により分離回収する方法を検討した結果、回収したZnOには、標識を阻害する新たな不純物の混入は認められなかった。以上の結果、既存加速器を用いて動物実験が可能な数百MBqのCuを製造する手法の開発に目途が立った。