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川口 和弘*; 山本 春也; 吉川 正人; 高廣 克己*
Thin Solid Films, 562, p.648 - 652, 2014/07
被引用回数:4 パーセンタイル:19.55(Materials Science, Multidisciplinary)シクロヘキサンに代表される有機ハイドライドは、水素を可逆的に放出・吸蔵できることから水素の貯蔵・輸送媒体として有望視されている。しかし、揮発した有機ハイドライドは、可燃性ガスであることから、漏洩した有機ハイドライドを安全に検知するセンサーの開発が課題の一つとなっている。本研究では、配列した金ナノ粒子で発現する表面プラズモン共鳴吸収特性が表面吸着物により変化する現象を利用した有機ハイドライド検知材料の開発を目的に、スパッタリング法を用いて石英基板上に基板温度、蒸着量をパラメータに金ナノ粒子を形成し、シクロヘキサンに対するプラズモン共鳴吸収特性を調べた。その結果、成膜時の基板温度: 300C、蒸着量: 4.410atoms/cmで形成した金ナノ粒子がシクロヘキサンに対して高い検知性能を示し、室温で爆発限界(1.3vol%)以下の0.5vol%の検知が可能であることを見出した。
加藤 翔; 八巻 徹也; 山本 春也; 箱田 照幸; 川口 和弘; 小林 知洋*; 鈴木 晶大*; 寺井 隆幸*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 314, p.149 - 152, 2013/11
被引用回数:2 パーセンタイル:19.73(Instruments & Instrumentation)本研究では、イオン注入と電気化学エッチングを組合せて、グラッシーカーボン基板上に炭化タングステン(WC)のナノ微粒子を作製した。実験では、100keV Wをグラッシーカーボン基板に照射して注入試料を作製した後、水酸化ナトリウム水溶液中で注入試料の表面をアノード酸化によりエッチングした。試料の分析にはX線光電子分光(XPS), ラザフォード後方散乱分析(RBS), 透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた。XPS, RBSの結果から、試料中でWCが形成されていたことと、電気化学エッチングによってその高濃度導入面が表面に露出したことが確認できた。断面TEMによって直径約10nmのナノ微粒子が表層に存在している様子が観察された。
加藤 翔; 八巻 徹也; 山本 春也; 箱田 照幸; 川口 和弘; 小林 知洋*; 鈴木 晶大*; 寺井 隆幸*
Transactions of the Materials Research Society of Japan, 38(1), p.81 - 84, 2013/03
本研究では、タングステンイオンを未研磨のグラッシーカーボン基板に注入することによって、ナノ微粒子を作製した。注入イオンのエネルギーは100keV、フルエンスはからions/cmの範囲であった。試料の分析にはX線光電子分光,ラザフォード後方散乱分析,回転ディスク電極法による対流ボルタンメトリー,電界放出型電子顕微鏡を用いた。顕著なスパッタリング効果によって、注入イオン分布が変化するとともに、基板内へ導入可能なタングステン量は約ions/cmが上限であった。形成された微粒子はタングステンカーバイドであり、その直径は10nm程度で面内に一様に分布していた。
高廣 克己*; 水口 友貴*; 川口 和弘; 一色 俊之*; 西尾 弘司*; 笹瀬 雅人*; 山本 春也; 西山 文隆*
Applied Surface Science, 258(19), p.7322 - 7326, 2012/07
被引用回数:2 パーセンタイル:10.02(Chemistry, Physical)SiO等の誘電体中に埋め込まれた銀(Ag)等の金属ナノ粒子は、非線形な誘電特性を示すことから非線形光学素子への応用が期待されている。本研究では、イオン注入法を用いてSi基板を熱酸化して形成したSiO層(300nm)注入にAgイオン注入(加速電圧:350keV、照射量:0.37-1.210 ions/cm)を行い、透過電子顕微鏡法,ラザフォード後方散乱法等を用いて、注入後の試料の構造評価を行った。その結果、注入Agイオンの投影飛程に相当する深さ近傍に直径25-40nmの銀ナノ粒子が、SiO/Si界面には直径数nmの銀ナノ粒子が、それぞれ規則的に配列して形成されることがわかった。さらに、X線光電子分光,X線回折の測定結果から、これらのAgナノ粒子は、酸化及び硫化に対して耐性があり1.5年以上その構造が保たれることがわかった。
川口 和弘; 齋藤 正裕*; 高廣 克己*; 山本 春也; 吉川 正人
Plasmonics, 6(3), p.535 - 539, 2011/09
被引用回数:8 パーセンタイル:28.2(Chemistry, Physical)銀ナノ粒子の表面にガス分子が吸着し粒子近傍の誘電率が変化すると、銀ナノ粒子の局在型表面プラズモン共鳴(LSPR)によって生じる可視光領域の吸収ピークが変化する。この現象を漏洩ガスの光学的検知に応用し、ガスセンサーを作製しようとする試みが行われているが、センサー材料として応用するには、安定したLSPRを発現する銀ナノ粒子を再現性よく作製する技術が必要となる。このため銀ナノ粒子を着床させた透明基板を試料とし、作製手法と得られる吸収ピークの強度や位置との関連性が研究されているが、理論値と異なることが多く、その原因はよくわかっていない。筆者らは、銀ナノ粒子作製時に表面に付着するさまざまな付着物がその原因であると推定し、作製した銀ナノ粒子に表面洗浄法として知られているプラズマ処理を行い、吸収ピークの位置や強度の変化を調べた。その結果、プラズマ処理後吸収ピークの幅が狭くなり短波長側へとシフトして理論値に近づく傾向が認められた。さらに、プラズマ処理で銀ナノ粒子表面の炭素系付着物が減少することがラマン散乱分析からわかり、吸収ピークの実験値と理論値の違いは、銀ナノ粒子表面の炭素系付着物に影響することが示唆された。
箱田 照幸; 山本 春也; 川口 和弘; 八巻 徹也; 小林 知洋*; 吉川 正人
Applied Surface Science, 257(5), p.1556 - 1561, 2010/12
被引用回数:13 パーセンタイル:50.83(Chemistry, Physical)固体高分子形燃料電池の実用化にあたって克服しなければならない問題の一つに白金触媒の使用量の低減があり、特にカソードにおける酸素還元反応を促進する白金代替触媒の開発が重要課題の一つとなっている。これまでに、コバルトフタロシアニンを含む熱硬化性樹脂を焼成することにより調製した炭素材料が白金と同等の酸素還元活性を発現することが報告されていることから、本研究では、焼成過程を必要としない、パルスレーザー蒸着法を用いて窒素ドープ炭素材料を作製するとともに、その酸素還元活性を調べた。その結果、蒸着中の基板温度の上昇に伴い酸素還元活性が向上して、最大の600Cで0.66V(vs. NHV)の酸還元電位を有する試料の作製に成功した。また、作製試料の構造評価の結果、この酸素還元活性がグラファイト構造内のピリジン結合などに起因することを明らかにした。
八木 貴宏*; 三澤 毅*; Pyeon, C. H.*; 宇根崎 博信*; 代谷 誠治*; 川口 真一*; 岡嶋 成晃; 谷 和洋*
Proceedings of International Conference on the Physics of Reactors, Nuclear Power; A Sustainable Resource (PHYSOR 2008) (CD-ROM), 8 Pages, 2008/09
燃料板のギャップのような狭い空隙に中性子検出器を挿入して、リアル・タイムで高速中性子を測定するために、光ファイバーを用いた中性子検出器が開発されてきた。この検知器は、先端が中性子を検出する物質とZnS(Ag)のようなシンチレーターの混合体で覆われた光ファイバーから成る。高速中性子用の光ファイバー検出器には、中性子を検出する物質として、これまでThが利用されてきた。これは、Thが高速中性子と核分裂反応を起こすことを利用している。しかし、Thが核燃料物質であることから、その使用場所が限定されてしまう。そこで、本研究では、Thを利用しないで高速中性子を測定することができる新たな光ファイバー検出器を開発し、その検知器特性を調べた。検出器特性を調べるために、D-T中性子発生装置のターゲット近傍の高速中性子束分布及び高速炉臨界実験装置における高速中性子束分布測定を行い、放射化法による結果と比較した。その結果、ZnS(Ag)を用いた新たな光ファイバー検知器による高速中性子束分布測定結果は放射化法で測定した結果と一致し、ZnS(Ag)を用いた光ファイバー検知器が高速中性子測定に有効であることがわかった。
滑川 卓志; 川口 浩一; 小池 和宏; 原口 信吾; 石井 暁
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM), 6 Pages, 2005/10
実用化戦略調査研究における低除染TRU燃料製造システムについてプラント概念を構築し、システム評価を実施した。簡素化ペレット法は従来法の実績経験を有するため早期の実用化が期待される。ゲル化法は溶液及び顆粒として物質取扱するため微粉飛散が少ない利点がある一方、多量の工程廃液処理によるコスト増大が課題である。射出鋳造法は小規模施設での経済性に優れるが、TRU金属合金スラグ製造性の立証を要する。窒化物燃料に関しては、N-15回収再利用に関する技術開発が必要である。特に、被覆粒子燃料製造においては、コーティング及び集合体形成プロセスで更なる技術開発が求められている。
田中 健哉; 川口 浩一; 小池 和宏
GLOBAL2003, 0 Pages, 2003/00
FBRサイクル実用化戦略調査研究フェーズIIにおける燃料製造システムの概念設計研究では、セル内製造における信頼性及び保守補修性を有した主要機器の構造を検討してきた。先進湿式再処理対応の簡素化ペレット法及び振動充填法(スフェアパック)について、ピン製造工程における経済性及び放射性廃棄物発生量の観点からシステムの特徴を比較した。
桐原 和大*; 川口 建二*; 清水 禎樹*; 佐々木 毅*; 越崎 直人*; 木村 薫*; 山田 洋一; 山本 博之; 社本 真一
no journal, ,
同位体ボロンBは熱中性子に対して大きな吸収を示し、原子炉の遮蔽材や中性子検出器等に用いられる。今回われわれは、ボロンのナノ構造体であるBを濃縮したボロンナノベルト(BNB)を作製し、BNBの電気抵抗に及ぼす熱中性子線照射の影響を調べることにより、ナノスケールの放射線検出を試みた。BNBはレーザーアブレーション法で作製した。電子線リソグラフィーにより、BNB1本(厚さ20nm,幅150nm,長さ10m)の両端にNi/Au微細電極を加工した熱酸化Si基板を用意した。これを原子炉JRR-3Mにて、一定の電圧を印加しつつ中性子を照射し(線束10cms)、その際の電流変化を測定した。また、Cd板を介して中性子線を線に変換して照射する実験も行った。その結果、中性子照射と線照射のいずれの場合も同様に、照射時に数10分かけて伝導率が約18%上昇し、照射後は同じ時間で元の値に減衰した。熱中性子に対するBNB内部の核変換数に応じた変化でなく、線による電気抵抗変化を検出していると思われる。
桐原 和大*; 川口 建二*; 清水 禎樹*; 佐々木 毅*; 越崎 直人*; 木村 薫*; 山田 洋一; 山本 博之; 社本 真一
no journal, ,
われわれは、ボロンナノ構造体である単結晶ボロンナノベルト(BNB)を無触媒で作製し、ボロンの有する大きな熱中性子吸収断面積という特徴を活かし、他の半導体ナノワイヤでは実現不可能な、ナノスケール放射線センサの開発を目指している。熱酸化Si基板上に乗せた同位体濃縮BNB(B, 99%)の両端に電子線リソグラフィーで微細電極を加工した後、原子炉JRR-3で、一定の電圧を印加しながら、中性子(線束10cm s)照射時の電流変化を測定した。Cd板を介して中性子線を線に変換して照射する実験も行った。その結果、中性子照射と線照射のいずれの場合も同様に、照射時に約1時間かけて伝導率が約20%上昇し、照射後は同じ時間で元の値に減衰した。これらの結果は、線による電気抵抗変化を検出していると思われる。さらに、中性子核変換数を5桁増やした中性子照射(線束310cm s,照射時間6s)を、原子炉JRR-4で行った結果、BNBのコンダクタンスは、照射前より28倍大きくなった。この増加は中性子核反応によるものであり、キャリアの移動度の増加が支配的要因である可能性が、電界効果特性から示唆された。
桐原 和大*; 川口 建二*; 清水 禎樹*; 佐々木 毅*; 越崎 直人*; 木村 薫*; 山田 洋一; 山本 博之; 社本 真一
no journal, ,
ボロンナノ構造体である単結晶ボロンナノベルト(BNB)を無触媒で作製し、ボロンの有する大きな熱中性子吸収断面積という特徴を生かし、ほかの半導体ナノワイヤでは実現不可能な、ナノスケール放射線センサの開発を試みた。熱酸化Si基板上に乗せた同位体濃縮BNB(B, 99%)の両端に電子線リソグラフィーで微細電極を加工した後、原子炉JRR-3Mで、一定の電圧を印加しながら、中性子(線束10cms)照射時の電流変化を測定した。Cd板を介して中性子線を線に変換して照射する実験も行った。その結果、中性子照射と線照射のいずれの場合も同様に、照射時に約1時間かけて伝導率が約20%上昇し、照射後は同じ時間で元の値に減衰した。これらの結果は、線による電気抵抗変化を検出していると思われる。さらに、中性子核変換数を5桁増やした中性子照射(線束310cms,照射時間6s)を行った結果、BNBのコンダクタンスは、照射前より28倍大きくなった。この増加は中性子核反応によるものであり、キャリアの移動度の増加が支配的要因である可能性が、電界効果特性から示唆された。
高廣 克己*; 森本 圭一*; 安田 賢司*; 川口 和弘; 永田 晋二*; 山本 春也; 鳴海 一雅; 楢本 洋*
no journal, ,
基板上に蒸着した金属ナノ粒子は、バルク金属とは異なる電気的・磁気的・光学的特性を示すことから、ナノ粒子を用いた新たなデバイスの作製など応用が期待されている。本研究では、1keV Arイオン照射により高配向性熱分解グラファイト(HOPG)基板表面に欠陥を導入し、この欠陥が真空蒸着における金(Au)及び白金(Pt)のナノ粒子形成に及ぼす影響について調べた。X線光電子分光法により未照射及びAr照射したHOPG基板上に1010atoms/cmの蒸着量で形成されたAu及びPt粒子のサイズの評価した結果、Ar照射したHOPG基板上に、より微小なナノ粒子が形成されることが明らかになった。これは、イオン照射により導入された欠陥が蒸着粒子の核形成点になると考えられ、イオン照射が金属ナノ粒子のサイズ,形状制御に有効であることが示唆された。
川口 和弘; 吉村 公男; 山本 春也; 吉川 正人; 高廣 克己*
no journal, ,
金属ナノ粒子は、その量子効果によりバルクとは異なる物理的特性を示すが、その一つに局在型表面プラズモン共鳴(LSPR)がある。本研究は、金属ナノ粒子表面への水素化物の吸着によりLSPR吸収ピークが変化する現象を利用し、光学的に水素化物を検知するナノ材料の創製を目指している。今回は、金属ナノ粒子サイズや形に強く依存するLSPRの効率的発生を目指し、MeV領域のイオンビーム照射によるAgナノ粒子の形態制御の可能性を追求した。RFマグネトロンスパッタリング法により200CのSiO基板上にAgナノ粒子を蒸着形成した後、16MeV酸素イオンを照射し、原子間力顕微鏡(AFM)による表面観察を行った。その結果、照射量1.010cmでAgナノ粒子の粒径の増大(約20nm30nm)と、サイズ,形状の均一化が確認できた。また照射量が増えるとともにLSPR吸収ピークの低波長側へのシフトやピーク幅の減少も観測され、Agナノ粒子の形態及びその光学特性の制御がMeV領域のイオン照射によって可能であることがわかった。
山本 春也; 箱田 照幸; 川口 和弘; 八巻 徹也; 吉川 正人
no journal, ,
固体高分子形燃料電池の実用化にあたって克服しなければならない問題の一つに白金触媒の使用量の低減があり、特にカソード(正極)における酸素還元反応を促進する白金代替触媒の開発が重要課題の一つとなっている。最近になって、窒素などの異種元素を含むタマネギ状の層構造(ナノシェル構造)炭素材料が、白金と同等の酸素還元活性を発現することが明らかになり、次世代のカソード用の白金代替触媒として期待されるようになった。本研究は、三機関連携(原子力機構,理化学研究所,物質・材料研究機構)による燃料電池システム用キーマテリアル開発研究の一環として、パルスレーザ蒸着法によるナノシェル構造炭素材料の形成を目指し、コバルトと窒素を添加した炭素薄膜を作製した。窒素雰囲気中(窒素ガス圧:0.5Torr)で等方性黒鉛とコバルトを基板温度:600Cに保持したガラス状炭素基板に交互に蒸着し、電気化学測定により酸素還元活性を評価したところ、白金の酸化還元電位0.85V(vs. NHE)に対して、0.66V(vs. NHE)の酸素還元電位を示す薄膜試料の形成に成功した。発表では、作製した炭素薄膜の組成及び構造と酸素還元活性の関係について詳細に報告する。
川口 和弘; 高廣 克己*; 吉村 公男; 山本 春也; 吉川 正人
no journal, ,
金属ナノ粒子は、その量子効果によりバルクとは異なる物理的特性を示すが、その一つに局在型表面プラズモン共鳴(LSPR)がある。本研究は、金属ナノ粒子表面への水素化物の吸着により、LSPR吸収ピークが変化する現象を利用し、光学的に水素化物を検知するナノ材料の創製を目指している。そこで、金属ナノ粒子サイズや形に強く依存するLSPRの効率的発生を目指し、MeV領域のイオンビーム照射によるAgナノ粒子の形態制御の可能性を調べた。実験では、マグネトロンスパッタリング法により石英基板上にAgナノ粒子を蒸着形成した後、16MeV酸素イオンを照射し、原子間力顕微鏡による表面観察を行った。その結果、照射量: 110cmでAgナノ粒子径が約20nmから30nmへと増大するとともに、サイズ,形状の均一化が確認できた。また照射量が増えるとともにLSPR吸収ピークの低波長側へのシフトやピーク幅の減少も観測され、Agナノ粒子の形態及びその光学特性の制御がMeV領域のイオン照射によって可能であることがわかった。
川口 和弘; 高廣 克己*; 山本 春也; 箱田 照幸; 吉川 正人
no journal, ,
ナノ粒子化した銀(Ag)に発現する局在型表面プラズモン共鳴(LSPR)吸収ピークは、Agナノ粒子表面への有機物の吸着によりその強度が変化するため、これを利用した揮発性有機物の光学的検知への応用が期待できる。しかし、LSPRの強さや共鳴波長は、ナノ粒子のサイズや形状に強く依存するため、ナノ粒子の形態を再現性よく制御する必要がある。本研究では、イオン照射による形態制御技術の開発を目的に、石英基板上に形成したAgナノ粒子(粒径:2030nm)に350keVに加速したAg及びNのイオン照射を行い、照射量に対するAgナノ粒子のLSPR吸収スペクトルの強度変化を光吸収測定法により調べた。また、原子間力顕微鏡による形状観察,ラマン分光法による表面吸着物の状態変化も合わせて実施した。その結果、イオン照射初期では、LSPR吸収ピークが長波長側にシフトしたが、照射量が増加すると短波長側にシフトした。イオン照射初期の長波長側へのLSPR吸収ピークのシフトは、ナノ粒子に付着していた非晶質炭素の減少に関係し、高照射量で起こる短波長側へのシフトは、ナノ粒子の粗大化に起因することがわかった。
山本 春也; 川口 和弘; 杉本 雅樹; 吉川 正人
no journal, ,
水素分子を解離するパラジウム,白金等の触媒を表面に堆積させた三酸化タングステン膜(WO)は、室温で水素を吸蔵し、水素タングステンブロンズ(HxWO)を形成することにより濃青色に着色する(水素ガスクロミズム)。このためWO膜は、色の変化によって漏洩水素を検知する光学式水素センサーへの応用が期待されている。しかし、WO膜の水素ガスクロミズムは、膜の組成,結晶構造などにより影響されることが知れており、特にWO膜の結晶構造,結晶性との関係が十分に理解されていない。本研究では、反応性スパッタリング法により非晶質膜,多結晶膜,結晶配向膜,エピタキシャル膜などの異なる構造のWO膜を作製する手法を開発するとともに、得られたWO膜の水素ガスクロミズムについて調べた。その結果、(010)に一軸結晶配向したWO膜で水素による高い着色性能が得られることがわかった。さらに、結晶配向WO膜は、成長方向に揃った柱状結晶から構成されていることから、WO膜の水素による着色は、膜の微細構造に強く依存することが示唆された。
箱田 照幸; 山本 春也; 川口 和弘; 八巻 徹也; 小林 知洋*; 吉川 正人
no journal, ,
固体高分子形燃料電池の実用化にあたって克服しなければならない問題の一つに白金触媒の使用量の低減があり、特にカソードにおける酸素還元反応を促進する白金代替触媒の開発が重要課題の一つとなっている。これまでに、コバルトフタロシアニンを含む熱硬化性樹脂を焼成することにより調製した炭素材料が白金と同等の酸素還元活性を発現することが報告されていることから、本研究では、焼成過程を必要としない、パルスレーザー蒸着法を用いて窒素ドープ炭素材料を作製するとともに、その酸素還元活性を調べた。その結果、蒸着中の基板温度に伴い酸素還元活性が向上して、最大の600Cで0.66V(vs NHE)の酸還元電位を有する試料の作製に成功した。また、作製試料の構造評価の結果、この酸素還元活性は、グラファイト構造内のピリジン結合などに起因することを明らかにした。
品川 晃祥*; Umenyi, A. V.*; 菊地 秀輔*; 相場 瑞基*; 稲田 和紀*; 三浦 健太*; 花泉 修*; 山本 春也; 川口 和弘; 吉川 正人
no journal, ,
Geをイオン注入したSiO基板は、紫外から青色のフォトルミネッセンスを示すことが知られている。そこで本研究では、Geをイオン注入したSiO基板をもとに新たな2次元フォトニック結晶導波路及びこれを組合せた発光素子の開発を進めている。原子力機構・TIARA施設の400kVイオン注入装置を用い、照射エネルギー:350keV,照射量:110ions/cmの条件下でSiO基板にGeイオンを注入し、窒素中で熱処理(900C)を行うとともに励起光源としてHe-Cdレーザ(波長325nm)を使用したフォトルミネッセンススペクトルを測定した。その結果、Ge波長400nm付近をピークとする紫外発光ピークが観測され、熱処理温度が高くなるに従いそのピーク強度は増加する傾向にあることを見いだした。これより光を伝播するコア領域の大きな2次元フォトニック結晶導波路の作製が可能であることがわかった。