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北條 智彦*; Kumai, B.*; 小山 元道*; 秋山 英二*; 脇 裕之*; 齋藤 寛之*; 城 鮎美*; 安田 良*; 菖蒲 敬久; 長坂 明彦*
International Journal of Fracture, 224(2), p.253 - 260, 2020/08
被引用回数:13 パーセンタイル:67.91(Materials Science, Multidisciplinary)本研究では、超高強度変態誘起塑性ベイナイトフェライト鋼の水素脆化特性に及ぼす予ひずみの影響を自動車フレーム部品への応用に向けて調査した。具体的には、3から10%の引張予ひずみでは全伸びに比べて水素による機械的劣化を抑制したが、12から15%の予ひずみ試験片では、水素充填後に伸びを示さなかった。これは3から10%の予ひずみの有利な効果が、残留オーステナイトに関連する亀裂発生の抑制に起因していたためであり、事前に予ひずみが与えられたTRIP鋼では、水素チャージ前に保持されたオーステナイトの体積分率が減少され、それによって優先的な亀裂開始サイトと伝播経路の既存の確率を減少させたと考えられる。一方、12から15%などの高い予ひずみを与えると、加工硬化のために予ひずみが効果的に機能せず、その結果、水素脆化感受性が増加し、転位の増殖により水素含有量が大幅に増加したと考えられる。
木村 敦; 長澤 尚胤; 島田 明彦; 田口 光正
Radiation Physics and Chemistry, 124, p.130 - 134, 2016/07
被引用回数:8 パーセンタイル:65.1(Chemistry, Physical)天然多糖類は有用な資源循環型材料でありながら、溶媒に難溶であり反応性に乏しいため、放射線架橋を行うためには架橋剤の添加あるいは誘導化等の前処理を必要とした。我々はイオン液体を用いて天然多糖類の一種であるセルロースを溶液化し、放射線を照射することで新規ゲル材料の開発に成功した。本研究では、イオン液体中天然多糖類の架橋反応の挙動解明を目的として、セルロースの架橋反応を誘起する活性種およびゲルの化学構造を調べた。放射線照射によるセルロースゲルの収率は、含水率の増加に伴い増大することから、水添加に伴う放射線誘起活性種の増加により、架橋反応が促進したと考えられる。そこで、含水率の異なるイオン液体にOHラジカル捕捉剤であるフェノールを溶解して放射線照射を行った結果、フェノールのOH付加体の生成量が含水率の増加に伴い増加したことから、OHラジカルが架橋反応に寄与することが示唆された。また、XPSによるセルロースゲルの元素分析により、セルロースには含まれない窒素の存在を確認したことから、イオン液体が架橋反応に関与している可能性が考えられる。さらに、イオン液体にキチンを溶解し、放射線照射によりゲル材料を作製することに成功した。
菊間 博之*; 竹内 夕桐子*; 中村 俊介*; 杉本 雅樹; 長澤 尚胤; 島田 明彦; 箱田 照幸; 田口 光正
no journal, ,
福島第一原子力発電所の事故以降、シビアアクシデント対策として格納容器の破損防止対策が強化され、トップフランジのシール材であるエラストマーについて高温高放射線量下でも使用可能な材料が求められている。そこで、耐熱性・耐放射線性を有するエラストマーの開発指針を得ることを最終目的に、300Cの温度条件下で放射線を照射できる照射システムの開発を行うとともに、このシステムを用いた試作エラストマーの耐熱・耐放射線性の予備的評価を実施した。エラストマー試料を任意のガス雰囲気で封入でき、9.0MPaの耐圧を有するステンレス容器と、それを最高温度の300Cまでに加熱できる恒温槽からなる高温下放射線照射システムを開発した。ベースエラストマー2種類に耐熱、耐放射線性を向上させるための配合剤を複数検討した試作品を作製した。開発したシステムを用いて、照射前後の各試作品の試験片の破断強度、破断伸び、ならびに引張応力について比較検討した結果、300Cの温度、800kGyの線量条件下でも耐熱・耐放射線性を向上できるエラストマー材料作製の手がかりを得た。
長澤 尚胤; 木村 敦; 出崎 亮; 石井 保行; 山田 尚人; 江夏 昌志; 島田 明彦; 大久保 猛; 佐藤 隆博; 田口 光正
no journal, ,
近年、iPS細胞やES細胞技術によって患者自身の幹細胞を生体外で分化誘導して、治療に用いる再生医療が実現しつつある。細胞が増殖し、臓器形状を保持する足場材料としてハイドロゲルの利用が注目されている。細胞培養に影響を与えるゲル表面の微細な形状や化学的な特性を調べるために、生理的に無害である多糖類誘導体を原料として、プロトンビームによる分解・架橋反応を利用したゲル微細加工技術の開発を行った。ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の濃厚水溶液(30wt%)を調製し、TIARAのシングルエンド加速器からの2.5あるいは3MeVのプロトンビームを照射した。含水試験などから、ゲル構造体が形成していることが分かった。さらに、プロトンビームのスキャン形状を制御することにより、ラインアンドスペース等のゲル構造体を作製できる見通しを得た。
木村 敦; 長澤 尚胤; 島田 明彦; 田口 光正
no journal, ,
近年、難溶性の天然高分子を高濃度溶解する溶媒の一種として、イオン液体が注目されている。我々はイオン液体の分子設計や放射線の照射条件を制御することで、従来法では困難であった天然由来の多糖類であるセルロースのゲル材料を作製することに成功した。本研究では、作製したセルロースゲルの蛍光およびXPS分析を行うことで、架橋反応を促進する因子を明らかにし、ゲルの収率や特性の向上を目指している。極大波長395nm(励起波長323nm)の蛍光を発するイオン液体dibutyllimidazolium-acetateに20%のセルロースを溶解し、20kGyの線照射を行うことで、セルロースゲルを作製した。照射後のゲルを洗浄した後に、蛍光分析を行うと415nmに極大蛍光波長をもつスペクトルが得られた。このことから、放射線化学反応により構造の変化したイオン液体が、セルロースゲル中に含有していることが考えられる。さらに、XPSによるセルロースゲルの元素分析を行った結果、窒素の含有が確認された。以上より、イオン液体がセルロースの放射線架橋反応に関与していることが考えられる。