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松谷 悠佑; 甲斐 健師; 佐藤 達彦; Liamsuwan, T.*; 佐々木 恒平*; Nikjoo, H.*
Physics in Medicine & Biology, 66(6), p.06NT02_1 - 06NT02_11, 2021/03
被引用回数:17 パーセンタイル:90.49(Engineering, Biomedical)汎用放射線輸送計算コードPHITSは、広範なエネルギーの様々な粒子の物質中における挙動を模擬できる計算コードである。最新版PHITS version 3.20では、世界的に最もよく検証された飛跡構造計算コードの一つであるKURBUCのアルゴリズムに基づいて、一次イオン(陽子・炭素イオン)の挙動、二次粒子生成(1meV1MeVのエネルギーを有する電子)の計算を可能とするイオン飛跡構造計算モード(PHITS-KURBUCモード)を開発、実装した。本研究では、陽子及び炭素イオンの挙動に関して、PHITS-KURBUCモードで得られる飛程,動径線量,微視的エネルギー付与分布について、文献で報告される推奨値や実測値と比較することで検証した。この検証から、KURBUCコードのPHITSへの組み込みに成功したことを確認した。さらに、従来からPHITSで対象としていたより巨視的な空間領域の計算機能とPHITS-KURBUCによる微視的計算モードの相乗効果により、拡大ブラッグピークを用いた陽子線治療などの複雑な放射線場下における微視的エネルギー付与分布の詳細な計算が可能となった。本研究の成果は、放射線物理,放射線防護,医学物理,放射線生物学をはじめとした次世代の放射線研究手法の発展に貢献するものである。
渡辺 立子; Rahmanian, S.*; Nikjoo, H.*
Radiation Research, 183(5), p.525 - 540, 2015/05
被引用回数:69 パーセンタイル:94.84(Biology)電子線やイオン照射によりDNAに生成する塩基損傷のスペクトルの算出を目的として、モンテカルロトラック構造計算法を用いて、細胞模擬環境中で生じるDNA損傷シミュレーションを行った。鎖切断と塩基損傷からなるDNA損傷ペクトルを、100eV-100keVの電子線と軟X線、数種類のイオン(3.2MeV/u proton、0.74と2.4MeV/u He、29MeV/u N、950MeV/u Fe)照射の場合について計算した。計算により見積もられた塩基損傷の生成量は、LETによらずに、一本鎖切断と比べて2-4倍多くなった。また、損傷の空間分布の解析を行った結果、塩基損傷が、鎖切断から成る損傷サイトの複雑化に大きく寄与していることが明らかになった。これらのスペクトルデータは、塩基除去修復によるDNA損傷修復過程のモデル化と損傷修復効率の研究にとって有益なものである。
Nikjoo, H.*; Emifietzoglou, D.*; 渡辺 立子; 上原 周三*
Radiation Physics and Chemistry, 77(10-12), p.1270 - 1279, 2008/10
被引用回数:54 パーセンタイル:95.02(Chemistry, Physical)マイクロドジメトリーと飛跡構造シミュレーションは、理論的に放射線による生体分子損傷を吟味,理解するために用いられてきた。飛跡構造シミュレーションに基づくDNA損傷に関するわれわれの研究は、放射線の線量効果関係のメカニズム解釈の基盤となる、クラスター損傷の概念を提供してきた。さらに、われわれは、放射線生物学と医療の分野に、より正確な情報を提供するために、微視的な飛跡構造シミュレーションの精度の改良、及び細胞中でのDNAのより現実的なモデル化に努めている。本論文では、特に、放射線生物学上重要な低エネルギー電子と医療応用上重要な高エネルギー陽子線の飛跡構造計算,DNA損傷の複雑度の評価についての最近の研究について述べる。
渡邊 立子; Nikjoo, H.*
International Journal of Radiation Biology, 78(11), p.953 - 966, 2002/11
被引用回数:39 パーセンタイル:90.08(Biology)ブロモウラシルやヨードウラシルといったハロゲン化ピリミジン(HP)をDNAに導入すると、放射線照射に対する細胞致死の感受性が増加することがよく知られている。この原因として、HPの導入によるDNA鎖切断収率の増加と修復の阻害が提唱されている。本研究の目的は、DNA鎖切断収率の増加の程度、その原因、損傷の複雑さを調べることにより、DNA損傷と細胞致死を関連付けることである。このため、X線照射によるDNA鎖切断の生成過程のモデル化にモンテカルロ法を用い、DNA鎖切断の収率と損傷のスペクトルを計算した。HPによるDNA鎖切断増加のメカニズムとしては、水和電子とHPの反応,HPの電離・励起,HP以外の塩基からHPへの電子の移動を仮定した。この結果、仮定したすべての経路によって鎖切断が増加し、HPへの電子の移動が大きく収率の増加に寄与すること、HPの導入によって切断の複雑度が増すことが示された。さらに、DNA鎖切断と細胞致死のデータの比較により、DNA二本鎖切断の細胞致死への関与が支持された。
渡辺 立子; Nikjoo, H.*
no journal, ,
電離放射線は、DNAの数10塩基対以内に2つ以上の損傷が生じるようなクラスター損傷を形成すると考えられ、突然変異や細胞致死に対する重要性が示唆されているが、実体については長年不明であった。近年、塩基除去修復酵素を用いて塩基損傷を含むクラスター損傷の検出が行われるようになったが、この検出法には、損傷の複雑度が増加すると検出不可能になるという欠点がある。そこで、本研究では、放射線の飛跡構造及び飛跡に沿って生じるラジカルの生成・拡散の過程のシミュレーションを行い、細胞内環境条件下での塩基損傷を含むクラスター損傷の生成量を推測した。この結果、数10塩基対の範囲内に鎖切断,塩基損傷にかかわらず2つ以上の損傷がかたまって生じるようなタイプの損傷が全DNA損傷に占める割合は、高LET放射線の3.2MeVの粒子の場合には60%以上なのに対し、低LET放射線である100keVの電子線の場合には10%程度であると見積もられた。中でも3つ以上の損傷が生じるタイプは、100keV電子線では2%程度だったが、3.2MeVの粒子では45%に及んだ。以上のような結果は、実験で観測されている高LET放射線によるDNA損傷に対する塩基除去修復酵素による認識効率が、低LET放射線に比べて低下するという現象は、クラスター損傷の量の低下によるものではなく、損傷の複雑度が増すことによって修復酵素が認識できないタイプの損傷が増えていることを裏付けるものと考えている。
甲斐 健師; 佐藤 達彦; Liamsuwan, T.*; Nikjoo, H.*
no journal, ,
放射線と物質の相互作用研究において、PHITSのような汎用放射線輸送計算コードは、センチメートルスケールの複雑体系における線量評価と共に、ナノスケールの微視的空間領域で誘発される放射線作用を研究する分野への適用も期待されている。そのため、これまでの電子に加えて、陽子及び炭素イオンの微視的挙動及び分子レベルのエネルギー付与量(電離や電子的励起)を解析するため、飛跡構造計算機能を高度化して、PHITSへ実装した。PHITSはこれまで細胞レベルのエネルギー付与計算が限界であったが、高度化した飛跡構造計算機能を適用することで、分子レベルの放射線分解・反応が関与するDNA損傷の推定等への適用が期待される。