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北里 宏平*; Milliken, R. E.*; 岩田 隆浩*; 安部 正真*; 大竹 真紀子*; 松浦 周二*; 高木 靖彦*; 中村 智樹*; 廣井 孝弘*; 松岡 萌*; et al.
Nature Astronomy (Internet), 5(3), p.246 - 250, 2021/03
被引用回数:43 パーセンタイル:96.93(Astronomy & Astrophysics)2019年4月「はやぶさ2」ミッションは、地球に近い炭素質の小惑星(162173)リュウグウの人工衝撃実験を成功させた。これは露出した地下物質を調査し、放射加熱の潜在的な影響をテストする機会を提供した。はやぶさ2の近赤外線分光器(NIRS3)によるリュウグウの地下物質の観測結果を報告する。発掘された材料の反射スペクトルは、表面で観測されたものと比較して、わずかに強くピークがシフトした水酸基(OH)の吸収を示す。これは、宇宙風化や放射加熱が最上部の表面で微妙なスペクトル変化を引き起こしたことを示している。ただし、このOH吸収の強度と形状は、表面と同様に、地下物質が300Cを超える加熱を経験したことを示している。一方、熱物理モデリングでは、軌道長半径が0.344AUに減少しても、推定される掘削深度1mでは放射加熱によって温度が200Cを超えて上昇しないことが示されている。これは、リュウグウ母天体が放射加熱と衝撃加熱のいずれか、もしくは両方により熱変化が発生したという仮説を裏付けている。
飯田 一樹*; 吉田 紘行*; 中尾 朗子*; Jeschke, H. O.*; Iqbal, Y.*; 中島 健次; 河村 聖子; 宗像 孝司*; 稲村 泰弘; 村井 直樹; et al.
Physical Review B, 101(22), p.220408_1 - 220408_6, 2020/06
被引用回数:22 パーセンタイル:80.38(Materials Science, Multidisciplinary)鉱物センテニアライトCaCu(OD)Cl 0.6DOの結晶構造と磁気構造をシンクロトロンX線回折と中性子回折測定に密度汎関数理論(DFT)と疑似フェルミオン汎関数繰り込み群(PFFRG)の計算を組み合わせることで調べた。CaCu(OD)Cl 0.6DOではCuイオンは反強磁性と幾何学的に完全なカゴメネットワークを形成する。CuとCaイオン間のサイト間無秩序は見つからなかった。CaCu(OD)Cl 0.6DOは=7.2K以下で磁気秩序を示し、負のベクトルスピンキラリティーを持つ=0の磁気構造が現れる。0.3Kでの秩序モーメントは0.58(2)Bに抑えられている。我々のDFT計算では、この系が量子臨界点の近くにあり、--カゴメ反強磁性体の優れた実現であることを示唆している。
北里 宏平*; Milliken, R. E.*; 岩田 隆浩*; 安部 正真*; 大竹 真紀子*; 松浦 周二*; 荒井 武彦*; 仲内 悠祐*; 中村 智樹*; 松岡 萌*; et al.
Science, 364(6437), p.272 - 275, 2019/04
被引用回数:259 パーセンタイル:99.73(Multidisciplinary Sciences)小惑星探査機はやぶさ2のターゲット天体であるリュウグウは、始原的な炭素質物質で構成されていると考えられている。はやぶさ2に搭載された近赤外分光計(NIRS3)によって、天体の表面組成を得た。天体全体の観測で、弱く細い吸収が2.72ミクロンに確認され、OHを含む鉱物の存在を示している。弱いOH吸収と低いアルベドは熱やショックによって変質を受けた炭素質コンドライトに似ている。OHバンドの位置はほとんど一定であり、衝撃片の集合によって形成されたリュウグウは組成的に均質であることを示している。
内田 俊介; 知見 康弘; 笠原 茂樹; 塙 悟史; 岡田 英俊*; 内藤 正則*; 小嶋 正義*; 木倉 宏成*; Lister, D. H.*
Nuclear Engineering and Design, 341, p.112 - 123, 2019/01
被引用回数:5 パーセンタイル:48.99(Nuclear Science & Technology)原子力プラントでは、リスク基準保全(RBM)にサポートされた信頼性基準保全(RCM)に基づくプラント信頼性向上策が採用されつつある。RBMは主要な材料に生じつつある欠陥をその進展過程で予測し、検査、保全を最適に組合せて実施されるものである。プラント全体にわたり、IGSCCを早期検出することにより、水化学制御などの適切な対応策の適用が可能となる。腐食環境とき裂進展の予測を組合せ、IGSCC決定因子である腐食電位、材料のSCC感受性、残留応力の不確実さが余寿命予測に及ぼす影響を定量的に評価した。結論として、(1)予測による重点検査箇所の効率的な選定、(2)検査による予測精度の向上、を結合させることによりプラントの信頼性向上に貢献できることを示した。
伊藤 由太*; Schury, P.*; 和田 道治*; 新井 郁也*; 羽場 宏光*; 平山 賀一*; 石澤 倫*; 加治 大哉*; 木村 創大*; 小浦 寛之; et al.
Physical Review Letters, 120(15), p.152501_1 - 152501_6, 2018/04
被引用回数:60 パーセンタイル:93.36(Physics, Multidisciplinary)冷たい核融合反応および熱い融合反応によって生成した変形閉殻中性子数152の近傍に位置する原子核Es, Fm、および超フェルミウム原子核Md, Noの質量の直接測定を、多反射時間飛行質量分析装置(MR-TOF)を用いて実施した。EsおよびMdの質量測定は世界で初めての成果である。さらにMdの質量を崩壊連鎖のアンカーポイントとして用いてBhおよびMtまでの重い原子核の質量を決定した。これらの新測定された質量を理論質量計算と比較し、巨視的・微視的模型の予測値と良い一致が見られることを示した。近接する3つの質量値から求められる経験的殻ギャップエネルギーを今回の質量値から求め、MdおよびLrに対する変形閉殻中性子数の存在を裏付ける結果を得た。
岡田 美智雄*; 津田 泰孝*; 岡 耕平*; 小島 一希*; Dio, W. A.*; 吉越 章隆; 笠井 秀明*
Scientific Reports (Internet), 6, p.31101_1 - 31101_8, 2016/08
被引用回数:28 パーセンタイル:73.49(Multidisciplinary Sciences)超熱酸素分子ビームを使ったCuAu(111), CuAu(111)およびAuCu(111)などのCu-Au合金表面酸化に関する実験および理論研究の結果を報告する。清浄(111)表面に対応する最表面層がAu偏析によって形成された。これが、バルク中へのさらなる酸化を抑制層として機能する。保護層中のAu濃度が高いほど、保護特性は優れていた。Cu-Au合金3種類のうちAuCu(111)が超熱酸素分子ビームの場合も含めて解離吸着に対して安定であった。以上の保護特性が300K以上の酸化に対して崩壊することを見出した。
末廣 祥一*; 杉本 純*; 日高 昭秀; 岡田 英俊*; 溝上 伸也*; 岡本 孝司*
Nuclear Engineering and Design, 286, p.163 - 174, 2015/05
被引用回数:15 パーセンタイル:77.56(Nuclear Science & Technology)日本原子力学会のシビアアクシデント評価委員会は、福島第一原子力発電所事故で得られた知見を踏まえ、事故を起こした原子炉におけるデブリの分布や現状を精度よく把握すること、また計算コードによるシビアアクシデントの予測能力を高度化する上で重要な事象を抽出することを目的として、熱水力とソースタームに係る重要度ランク表を作成した。そのうち、ソースタームに係る重要度ランク表(ST PIRT)については、事故進展に従って3つの時間区分と、格納容器内外など9つの区画に区分して専門家が議論と検討を重ね、摘出した68の現象に対して重要度の評価を行うことにより作成した。本報は、作成したソースターム重要度ランク表、及びそれぞれの区分で高い重要度と評価された事象について記載する。
Schury, P. H.*; 和田 道治*; 伊藤 由太*; Naimi, S.*; 園田 哲*; 三田 浩希*; 高峰 愛子*; 岡田 邦宏*; Wollnik, H.*; Chon, S.*; et al.
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 317(Part B), p.537 - 543, 2013/12
被引用回数:28 パーセンタイル:89.14(Instruments & Instrumentation)極短寿命の原子核の高精度質量測定を実現する目的のために、理化学研究所において多反射時間飛行法(MRTOF)による質量分析を実施した。とりわけ大きな興味の対象としているのはr過程元素合成や超ウラン原子核の質量測定である。このような原子核に対しては、MRTOFはこれまで伝統的に質量測定に使われてきたペニングトラップ法に比べてよりよいパフォーマンスを与えることができる。われわれはMRTOFが与える質量測定の相対精度がにまで達し、そして重く、短寿命な原子核に適用可能であることをいくつかの実例を示しながら紹介する。
守田 幸路*; Zhang, S.*; 越塚 誠一*; 飛田 吉春; 山野 秀将; 白川 典幸*; 井上 方夫*; 油江 宏明*; 内藤 正則*; 岡田 英俊*; et al.
Nuclear Engineering and Design, 241(12), p.4672 - 4681, 2011/12
被引用回数:15 パーセンタイル:73.97(Nuclear Science & Technology)2005年から開始した研究プロジェクトでナトリウム冷却高速炉(SFR)の炉心損傷事故(CDA)の重点現象を詳細解析するためにMPS法に基づいたCOMPASSコードを開発している。その着目現象とは、燃料ピン破損・崩壊,溶融プール沸騰,融体固化・閉塞挙動,ダクト壁破損,低エネルギー崩壊炉心の運動,デブリベッド冷却性,金属燃料ピン破損を含んでいる。これらの主要現象に対して、COMPASSの検証研究が進められている。この論文では、幾つかの着目現象に対するCOMPASSによる詳細解析結果をまとめた。本結果は、COMPASSコードがSFRのCDAの重要現象を理解及び解明するのに有用であることを示している。
越塚 誠一*; 守田 幸路*; 有馬 立身*; 飛田 吉春; 山野 秀将; 伊藤 高啓*; 内藤 正則*; 白川 典幸*; 岡田 英俊*; 上原 靖*; et al.
Proceedings of 8th International Topical Meeting on Nuclear Thermal-Hydraulics, Operation and Safety (NUTHOS-8) (CD-ROM), 11 Pages, 2010/10
本論文では、COMPASSコード開発の2009年度成果を報告する。融体固化・閉塞形成,金属燃料の共晶反応,ダクト壁破損(熱流動解析),燃料ピン破損、及びダクト壁破損(構造解析)に関する検証計算が示される。位相計算,古典及び第一原理分子動力学研究は金属燃料とスティール及び制御棒材料とスティールの共晶反応の物性を調べるために用いられた。粒子法の基礎研究やSIMMER計算もまたCOMPASSコード開発に役立った。COMPASSは、SIMMERコードで用いられている実験相関式の基盤を明らかにするものと期待される。SIMMERとCOMPASSの結合はCDAの安全評価並びに炉心設計最適化に有効になるだろう。
田中 成岳*; 木村 仁*; Faried, A.*; 酒井 真*; 佐野 孝昭*; 猪瀬 崇徳*; 宗田 真*; 岡田 幸士*; 中島 政信*; 宮崎 達也*; et al.
Cancer Science, 101(6), p.1487 - 1492, 2010/06
被引用回数:12 パーセンタイル:31.77(Oncology)大気マイクロPIXEを用いて、食道ガン細胞株において、主要な化学療法薬であるシスプラチンの細胞内局在性を調べ、同細胞株のシスプラチンに対する感度を決定した。2種類のヒト食道扁平上皮癌(ESCC)細胞株(TE-2とTE-13)のシスプラチンに対する感受性は、MTT分析,フローサイトメトリ、及びDNA断片化分析を用いて確認した。これらの細胞試料に対して大気マイクロPIXE分析を行うとともに、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を用いて両細胞株における、「マルチ-ドラッグ」抵抗性タンパク質2(MRP2)のmRNA発現を評価した。この結果、TE-2セルはTE-13セルよりシスプラチンに敏感であることが明らかとなった。この研究結果は、大気マイクロPIXEが個別細胞のシスプラチン感受性を定量評価する方法として有効であることを示唆した。また、最終的には細胞膜の中のMRP2がESCC細胞のシスプラチン感受性を制御する重要な役割を担っているのではないかという推測に至った。
守田 幸路*; Zhang, S.*; 有馬 立身*; 越塚 誠一*; 飛田 吉春; 山野 秀将; 伊藤 高啓*; 白川 典幸*; 井上 方夫*; 油江 宏明*; et al.
Proceedings of 18th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-18) (CD-ROM), 9 Pages, 2010/05
2005年から開始した5年間の研究プロジェクトで、ナトリウム冷却高速炉の炉心損傷事故特有の現象を詳細解析するためにMPS法に基づいたCOMPASSコードを開発している。その特有の現象とは、(1)燃料ピン破損・崩壊,(2)溶融プール沸騰,(3)融体固化・閉塞挙動,(4)ダクト壁破損,(5)低エネルギー崩壊炉心の運動,(6)デブリベッド冷却性,(7)金属燃料ピン破損を含んでいる。これらの主要現象に対して、COMPASSの検証研究が進められている。この論文では、幾つかの特有現象に対するCOMPASSによる詳細解析結果をまとめた。
越塚 誠一*; 守田 幸路*; 有馬 立身*; Zhang, S.*; 飛田 吉春; 山野 秀将; 伊藤 高啓*; 内藤 正則*; 白川 典幸*; 岡田 英俊*; et al.
Proceedings of 13th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-13) (CD-ROM), 11 Pages, 2009/09
COMPASSコードにより溶融炉心物質の分散・固化が計算され、GEYSER実験データと比較された。溶融炉心物質が配管内面を固化しながら流れていった。溶融プール挙動について、固体スティール球が固体燃料により囲まれた体系であるCABRI-TPA2実験が解析された。スティール球の溶融と沸騰を引き起こすために出力が印加された。SCARABEE-BE+3試験もダクト壁破損の検証としてCOMPASSコードにより解析された。
越塚 誠一*; 守田 幸路*; 有馬 立身*; Zhang, S.*; 飛田 吉春; 山野 秀将; 伊藤 高啓*; 白川 典幸*; 内藤 正則*; 岡田 英俊*; et al.
Proceedings of 16th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-16) (CD-ROM), 6 Pages, 2008/10
ナトリウム冷却高速炉(SFR)における炉心損傷事故(CDA)のさまざまな複合現象に対して、COMPASSと名づけられたコンピューターコードを開発している。COMPASSコードは、Moving Particle Semi-implicit(MPS)手法という枠組みの中で、熱流動・構造・相変化を含むマルチフィジックス問題を解析するように設計されている。その開発プロジェクトが、2005年度から2009年度までの5年間で、6組織により実施されてきた。本論文では、2007年度におけるプロジェクトの成果が報告される。検証計画に従って、融体固化・閉塞形成,溶融プール沸騰,ダクト壁破損の3つの検証計算が行われた。また、COMPASSコード開発をサポートするため、数値計算手法の基礎研究,金属燃料の共晶反応に関する物質科学、及びSIMMER-IIIによる解析が行われた。
河裾 厚男; 児島 一聡; 吉川 正人; 伊藤 久義; 岡田 漱平; 一宮 彪彦*
Materials Science Forum, 363-365, p.445 - 447, 2001/05
われわれは、反射高速陽電子回折(RHEPD)に最適な陽電子ビームを開発することで、RHEPD回折図形とロッキング曲線の取得に初めて成功し、RHEPD特有の一次ブラッグ反射と全反射の効果を見いだすことができた。また、本手法を水素終端Si表面やSiC表面に適用することで、表面に残留する原子尺度の欠陥の存在を明示した。これより、高速陽電子の表面回折現象を実験的に証明するとともに、全反射領域におけるロッキング曲線が表面状態に非常に敏感であることを明確にできた。しかし、RHEPDの最も重要な応用である吸着構造の決定や表面デバイス温度の測定には至っていない。また、金属表面の陽電子反射率についても、数種の金属に対するデータは取得できたが、理論値との十分な比較を行えるほどには蓄積されていない。本講演では、さらに進んだ研究には何が必要か、高速陽電子と表面との相互作用では何が未解決であるかについて論述する。
大島 武; 安部 功二*; 伊藤 久義; 吉川 正人; 児島 一聡; 梨山 勇*; 岡田 漱平
Applied Physics A, 71(2), p.141 - 145, 2000/10
炭化ケイ素(SiC)への局所的不純物導入技術の確立のために、六方晶SiCにリン(P)の高温イオン注入を行い、注入量(P濃度: 110~510/cm)、注入温度(室温~1200)とキャリア(電子)濃度の関係を調べた。P濃度が110/cmの場合は、電子濃度は注入後の1400熱処理により全試料で同程度となり、注入温度に依存しない。P濃度が710/cmでは、注入温度が高いほど電子濃度が高まる。さらに高濃度の510/cmでは、800注入試料の電子濃度が最大となった。高濃度注入の場合、室温注入では結晶の損傷が大きく、高温での熱処理後も結晶が回復しないのに対し、高温注入では欠陥の発生が抑制されるので損傷の度合いが小さく、熱処理により結晶が回復して、結果的に電子濃度が高まると考えられる。
河裾 厚男; 吉川 正人; 児島 一聡; 岡田 漱平; 一宮 彪彦*
Physical Review B, 61(3), p.2102 - 2106, 2000/01
被引用回数:13 パーセンタイル:57.68(Materials Science, Multidisciplinary)ウェット法にて作製した水素終端Si(111)表面について、高角度分解能でロッキング曲線を求めたところ、平坦な表面に対しては予想されない、特異なディップ曲線が、ロッキング曲線の陽電子全反射領域に見いだされた。種々の原子モデルを仮定し、理論計算を行ったところ、Si-H(モノハイドライド)表面上にSiH(トリハイドライド)分子が、付着した表面が、実験を最も良く再現することがわかった。通常、上記の水素終端Si(111)表面は、原子尺度で非常に平坦で、モノハイドライド相が圧倒的に多いと考えられており、実際STMの研究でも、そのことが確かめられていた。これに対し、RHEPDの結果は、SiH分子が、かなり残留することを示唆している。そのほか、理論的に予想されていた一波条件による回折スポットの消失が、実験的に確認された。
吉川 正人; 児島 一聡; 大島 武; 伊藤 久義; 岡田 漱平; 石田 夕起*
Materials Science Forum, 338-342, p.1129 - 1132, 2000/00
3C-SiC半導体を用いた金属-酸化膜-半導体(MOS)トランジスタを実用化するためには、その酸化膜と半導体の界面の電荷トラップ準位の低減が重要な課題となっている。そこでゲート酸化膜作製後に水蒸気中で酸化膜を熱処理することで、界面の電荷トラップが低減されるかどうかを調べた。その結果、3C-SiC MOS構造の界面に対しては、大きな変化が認められなかった。このことは6H-SiC MOS構造の水蒸気アニーリングの結果とは大きく異なった。このことから、界面構造の違いがMOS特性に大きな影響を与えていることがわかった。
児島 一聡; 吉川 正人; 大島 武; 伊藤 久義; 岡田 漱平
Materials Science Forum, 338-342, p.1239 - 1242, 2000/00
今回、p型3C-SiCについてAu/p-型3C-SiCショットキー接合を作製し、その特性について調べた。3C-SiCのショットキー接合に関して、n型については良好なショットキー特性が得られている。一方、p型については結晶性の劣化により良好なショットキー特性が得られていなかった。p型3C-SiCは縦型減圧CVD装置を用いて作製した。成長条件は、水素、シラン、プロパン流量がそれぞれ2.0slm,0.5sccm,0.52sccm,反応管内圧力100Torr、基板温度1300で行った。また、p型のドーパントとしてAlを成長中にドープした。この結晶を用いて、Auをショットキー電極としてAu/p型3C-SiCショットキー接合を形成し、その特性を調べた。電流-電圧特性を調べたところ、p型3C-SiCで初めて良好なショットキー特性が得られ、得られた最大の逆方向耐電圧は42Vであった。また、Au/p型3C-SiCショットキー接合の障壁高さを電流-電圧特性測定、キャパシタンス測定、XPS測定から見積もったところ、それぞれ1.120.12eV,1.110.16eV,1.400.15eVと見積もられた。これらの値はすでに見積もられているn型3C-SiCのAuショットキー障壁高さから予測される値と一致しており、このことからp型3C-SiCについてAuショットキー障壁高さを実験的に初めて求めることができた。
大島 武; 上殿 明良*; 伊藤 久義; 吉川 正人; 児島 一聡; 岡田 漱平; 梨山 勇; 阿部 功二*; 谷川 庄一郎*; Frank, T.*; et al.
Materials Science Forum, 338-342, p.857 - 860, 2000/00
シリコンカーバイドSiC中のイオン注入不純物の電気的活性化と結晶性の回復の関係を調べた。不純物としてはリンを用いて、高温イオン注入により6H-SiCへ導入した。注入温度は室温から1200Cの範囲として、リン濃度は510/cmとした。注入温度と電子濃度の関係を調べたところ800Cで注入した試料が最も電子濃度が高いことがわかった。陽電子消滅法により注入層の欠陥の注入後熱処理による回復を調べたところ、800C注入した試料の空孔型欠陥のサイズがほかのものに比べ小さく結晶性が良いことがわかった。したがって高濃度のイオン注入の場合は、800C程度の高温注入を行うことで、不純物の活性化率を向上させられると判断できる。