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松谷 悠佑; McMahon, S. J.*; Butterworth, K. T.*; 谷内 淑恵*; 嵯峨 涼*; 佐藤 達彦; Prise, K. M.*
Physics in Medicine & Biology, 68(9), p.095008_1 - 095008_12, 2023/04
被引用回数:0 パーセンタイル:68.8(Engineering, Biomedical)低酸素症は腫瘍の放射線抵抗性を誘導し、強度変調放射線治療後に悪性進行を招く可能性がある。また、照射野内外に位置する細胞間のシグナル効果が、低酸素下の放射線感受性に影響を与えることも近年わかってきた。しかし、低酸素下において誘導される細胞間シグナリングとその細胞応答メカニズムは完全には解明されていない。そこで本研究では、低酸素症下における細胞間シグナリングと細胞殺傷効果をモデリングし、不均一な放射線治療後の放射線感受性メカニズムの解明を行った。DNA損傷数から与えられた酸素増感効果比(OER)を使用し、照射野内外の細胞の放射線感受性を推定できる統合的な細胞応答モデル(IMKモデル)を開発した。その結果、細胞間シグナルを放出する細胞内ターゲットへのヒット確率は酸素濃度に依存する一方、放射線照射場の不均一性に依存しない共通のOERの使用により照射野内外の両方の放射線感受性を再現できることがわかった。これらの成果は、強度変調放射線治療による不均一被ばく下で発生する細胞間シグナリングのより正確な理解に貢献するものである。
松谷 悠佑; McMahon, S. J.*; Butterworth, K. T.*; 内城 信吾*; 奈良 一志*; 谷内 淑恵*; 嵯峨 涼*; 石川 正純*; 佐藤 達彦; 伊達 広行*; et al.
Physics in Medicine & Biology, 66(7), p.075014_1 - 075014_11, 2021/04
被引用回数:4 パーセンタイル:48.97(Engineering, Biomedical)腫瘍内の低酸素細胞は放射線抵抗性を示し、分割放射線療法の悪性進行を引き起こす。不均質な酸素条件下に存在する腫瘍に線量を付与させる場合、照射野内と照射野外の細胞間で伝達される細胞間シグナリングにより、両者の放射線感受性が変化することが知られている。しかしながら、強度変調照射下において低酸素症が放射線感受性へ与える影響については不明である。本研究では、2種類のがん細胞株(DU145とH1299)を使用して、低酸素症が、照射野内外の細胞に対する放射線感受性(DNA損傷と細胞死)へもたらす影響を研究した。細胞実験の結果から、低酸素症は照射野外の放射線感受性へ明らかに影響を与える一方、その低酸素症の影響の程度(酸素増感効果比)は照射野内細胞よりも小さいことがわかった。DNA損傷ならびに細胞死の両評価対象に対して、照射野外で低減される放射線感受性について一貫した傾向が示された。これらの成果は、強度変調放射線を活用して低酸素下の腫瘍を照射する際の治療計画時において、放射線誘発の細胞間シグナリングを考慮する重要性を示すものである。
松谷 悠佑; McMahon, S. J.*; Ghita, M.*; 吉井 勇治*; 佐藤 達彦; 伊達 広行*; Prise, K. M.*
Scientific Reports (Internet), 9(1), p.9483_1 - 9483_12, 2019/07
被引用回数:12 パーセンタイル:65.68(Multidisciplinary Sciences)放射線治療において、強度変調放射線場と複雑な線量伝達を使用して腫瘍へ高線量を処方する。しかしながら、それらを組み合わせた照射中の細胞応答は未だ明らかになっていない。そこで、強度変調放射線場が放射線感受性と照射中の回復に与える影響を解析した。先ず、培養細胞を含む培養フラスコの50%(半照射野)もしくは100%(全照射野)の面積に照射を行った。また、線量率と細胞間シグナルの両効果を考慮した細胞死を表現しうるモデルを構築した。その結果、(i)同吸収線量被ばく時の全照射野被ばくと比較し、半照射野被ばく時の照射野内細胞は高い生存率を示し、(ii)半照射野下におけるヒト正常皮膚線維芽細胞の亜致死損傷 回復の重要度が低減することが分かった。さらに、(iii)半照射野時の生存率の増加はレスキュー効果(修復の増加)ではなく防御効果(初期DNA損傷生成率の低減)に起因する知見を得た。これらの知見は、不均一被ばく後の照射細胞と非照射細胞に対する放射線感受性の新たな理解に貢献するものである。
Schuemann, J.*; McNamara, A. L.*; Warmenhoven, J. W.*; Henthorn, N. T.*; Kirkby, K.*; Merchant, M. J.*; Ingram, S.*; Paganetti, H.*; Held, K. D.*; Ramos-Mendez, J.*; et al.
Radiation Research, 191(1), p.76 - 93, 2019/01
被引用回数:45 パーセンタイル:94.61(Biology)DNA損傷には様々なタイプがあり、異なった生物学的効果を引き起こす。過去数10年間、放射線照射によるDNA損傷の生成やそれらが引き起こす生物効果のシミュレーションが行われてきたが、各研究者が独自のデータフォーマットを用いて解析していたため、相互比較を行うことができなかった。そこで、本論文では、新しい標準DNA損傷データフォーマットを提案し、モデル間の相互比較を可能とする。これにより、放射線照射によるDNA損傷のメカニズム解明や放射線影響シミュレーション研究の活性化を図る。
Shao, C.*; Prise, K. M.*; 古澤 佳也*; 小林 泰彦; 松本 英樹*
no journal, ,
放射線誘発バイスタンダー効果において、細胞間隙信号伝達(GJIC)が重要な役割を果たしていることがわかってきている。低線量の重イオンビームや高LET重イオンビームのヒト初代繊維芽細胞への照射により、GJICが8-Br-cAMPによって促進されるとき、非照射細胞における小核の誘発とG1期での停止が増加することを発見した。この増加はDMSOで抑制され、PMAやリンデンによって消失した。すなわちROSとGJICはコンフルエントな繊維芽細胞のバイスタンダー効果に寄与し、GJICは必須な役目をすることを示す。また、一酸化窒素やその誘導体TGF-beta1を含む幾つかの放射線誘発可溶因子は、バイスタンダーシグナル分子であり、非照射腫瘍細胞だけでなく近隣の繊維芽細胞でも染色体損傷を誘発することを明らかにした。
松谷 悠佑; McMahon, S.*; Ghita, M.*; 佐藤 達彦; 吉井 勇治*; 甲斐 健師; 伊達 広行*; Prise, K.*
no journal, ,
現在の放射線療法(例、IMRT, VMAT, サイバーナイフ等)で用いられる不均一照射下では、細胞間シグナル効果ならびに照射中のDNA修復が、細胞生存率の増加(放射線抵抗性)を誘導する重要な役割を果たす。しかしながら、不均一照射時に誘導される放射線抵抗性の根本的なメカニズムは未だ解明されていない。本研究では、不均一照射が放射線照射後の細胞生存率に与える影響を解明するため、細胞実験と開発した放射線感受性モデルを用いた解析により、DNA主鎖切断率と細胞生存率の関係を評価した。細胞実験においては、培養細胞を含む培養皿の50%の面積に対してX線照射(半照射)を行った。また、モデル開発においては、線量率効果と細胞間シグナル効果を考慮した細胞応答をモデル化した。実験との比較の結果、不均一照射が、照射細胞における初期のDNA損傷生成率を減少させ、細胞生存率の増加を誘導する一方、照射時間中の細胞回復効果(線量率効果)の重要性が低下する知見を得た。本研究により、不均一照射下では、初期の防御応答により、照射細胞において放射線抵抗性が誘導されることが示された。
松谷 悠佑; McMahon, S. J.*; 佐藤 達彦; Butterworth, K. T.*; 嵯峨 涼*; 伊達 広行*; Prise, K. M.*
no journal, ,
電離放射線は、DNA損傷とその後発の影響となる細胞死などの生物学的影響を引き起こす可能性がある。DNA損傷の中でも、一定の確率で細胞死を誘導する損傷としてDNA二本鎖切断(DSB)が知られる。これまでに、早期に発生するDSB数とその修復ダイナミクスが実験的に研究されてきたが、DSBと細胞死との関係を直接評価することは困難であった。この問題を解決するため、我々は照射後のDNA損傷応答と、酸素濃度や細胞間コミュニケーションなどの様々な生物学的要素を考慮したintegrated microdosimetric-kinetic (IMK) modelを開発してきた。このIMK modelを使用することで、多様な照射条件や細胞培養条件下で測定されたDSB数や生存率データの再現に成功した。本発表では、開発したIMKモデルの概要を紹介し、初期のDSB収量とその修復プロセスに焦点を当て、細胞間コミュニケーションと酸素効果に関する細胞応答メカニズムを解釈するための最新の推定結果を示す。今後、初期のDNA損傷収率を推定可能な放射線輸送計算コードPHITSとIMKモデルを組みわせた統合的な細胞応答予測パッケージを開発することで、多様な放射線照射条件に対して、初期のDNA損傷を出発点に細胞死や染色体異常などの後発の放射線影響の発生メカニズムの解明が期待できる。