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上平 雄基; 川村 英之; 小林 卓也; 内山 雄介*
no journal, ,
本研究では、米国で開発された領域海洋モデリングシステムROMSを用いて、2段階のネスティングにより福島県沖合を対象として、水平解像度を1キロメートルまで高解像度化することが可能なダウンスケーリングシステムを構築し、準中規模渦に伴う沿岸海洋力学過程を解析するとともに、それらが福島第一原子力発電所起源の放射性セシウムの輸送に与える影響を評価した。ダウンスケーリングに必要となる水温・塩分等の海洋物理場の初期・境界条件データには、気象庁気象研究所で開発された海洋データ同化システムMOVEで計算されたデータを使用した。表層渦運動エネルギーと密度の分散の空間分布には明確な対応が見られ、福島県沖合では傾圧不安定による渦生成が引き起こされることが分かった。また、原子力機構が開発した海水中物質移行予測モデルSEA-GEARNを用いて、福島第一原子力発電所から海洋中に放出された放射性核種の移行計算を実施した。その結果、放射性セシウム濃度は、沿岸では準中規模渦と陸棚波によって支配されるのに対して、沖合では中規模渦によって支配されていることが示唆された。さらに、福島県沖合では傾圧不安定によって引き起こされる乱流が、放射性セシウムの輸送に大きな影響を及ぼしていることが示された。