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渡邊 立子; 斎藤 公明
Radiation and Environmental Biophysics, 41(3), p.207 - 215, 2002/08
被引用回数:21 パーセンタイル:51.22(Biology)100eVから1MeVまでの単一エネルギーの電子線による水溶液中でのプラスミドDNAの鎖切断の誘発について、モンテカルロシミュレーションによって研究を行った。鎖切断生成のメカニズムとして水ラジカルによる間接作用のみに注目し、モデル化を行った。このモデルに基づき、DNAの一本鎖切断(SSB)と二本鎖切断(DSB)の線量効果関係をシミュレートし、それぞれの生成収率を計算した。この結果、SSBは線形,DSBは線形-二次の線量効果関係が得られた。DSBについては、線量効果関係が電子のエネルギーに大きく依存し、1keVの電子によるDSBの大部分は線形成分、すなわち単一事象によって生じることがわかった。また、SSBとDSBはそれぞれ1keVで最小値と最大値をとる逆のエネルギー依存性がみられ、1keVの電子のような放射線飛跡末端での間接作用による重篤なDNA損傷の生成しやすさが示唆された。これらの結果は、実験値をよく再現しており、本研究での鎖切断生成のメカニズムのモデルの妥当性を示すもので、生体への放射線作用に重要な役割を示すラジカルによる間接作用のDNA切断機構に関する理解が深まった。
横谷 明徳; Cunniffe, S. M. T.*; O'Neill, P.*
Journal of the American Chemical Society, 124(30), p.8859 - 8866, 2002/07
被引用回数:87 パーセンタイル:87.69(Chemistry, Multidisciplinary)線照射されたプラスミドDNAフィルム中のDNA鎖切断(SSb及びDSB)と塩基損傷の収率を、DNA単位長あたりの水和水量の関数として測定した。塩基損傷は、大腸菌由来の塩基除去修復酵素(NthとFpg)を作用させ、glycosyl活性及びAPlyace活性により生じるSSbとして検出した。水和水の制御は、相対湿度をコントロールしたチェンバー中に15時間,5に保持することで行った。得られたDNAのコンフォメーションは、アガロースゲル電気泳動により解析した。その結果、(1)鎖切断よりもむしろ塩基損傷の収率の方が、水和水の量に依存して増加すること。(2)OHラジカルは生成したとしても鎖切断には寄与しないこと(3)extraなDSBが水和水量とともに増加することから、クラスター化した損傷が、直接効果として生じることが、明らかにされた。
檜枝 光太郎*; 広野 泰亮*; 浅見 彰*; 鈴木 雅雄*; 古澤 佳也*; 前澤 博*; 宇佐美 徳子*; 横谷 明徳; 小林 克己*
International Journal of Radiation Biology, 70(4), p.437 - 445, 1996/10
被引用回数:48 パーセンタイル:95.39(Biology)単色化したシンクロトロン軟X線を用い、DNAの単鎖切断及び二重鎖切断の量子効率を調べた。試料には二鎖のプラスミド(pBR-322)環状DNAの乾燥試料を用いた。単色光源として、高エネルギー物理学研究所・フォトンファクトリーのBL-27を用いた。単鎖切断も二重鎖切断も、リンのK殻共鳴ピークで一番効率良く起こることがわかった。試料に対する吸収線量を、試料吸収スペクトルから計算し、フォトン吸収あたりの鎖切断効率を求めたところ、単鎖切断はエネルギー依存性がそれほど顕著でなかったのに対して、二重鎖切断はピーク波長で効良くおこることがわかった。細胞レベルでの致死・突然変異効率の増感は、この二重鎖切断によることが、これらの結果より推測された。