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岩本 昭
数理科学, (465), p.10 - 17, 2002/03
本解説記事は、雑誌「数理科学」における特集「物理定数のプロフィール」に掲載予定の依頼原稿である。ここで議論するのは、電弱相互作用や強い相互作用の強さが宇宙の加齢とともに変化する可能性を、原子核物理の観点から調べる試みである。この試みとして、長半減期の崩壊核種の検討やビッグバン時点や星の中での元素合成過程の検討があげられるが、その中でも最も高い精度での議論ができる、オクロ天然原子炉での核分裂生成物のデータを用いた方法を詳細に述べる。主としてSmアイソトープの解析を通して、オクロ原子炉が動いていた約20億年前の中性子共鳴準位のエネルギーが決定でき、それを用いてこの20億年間での電磁相互作用及び強い相互作用の強度変化を議論する。結論として、これら相互作用定数が現在の値から変わり得る上限値として、ほかのすべての方法によるものより小さい値を与えることを解説する。
藤井 保憲*; 岩本 昭; 深堀 智生; 大貫 敏彦; 中川 正幸; 日高 洋*; 大浦 泰嗣*; Mller, P.*
Nuclear Physics B, 573(1-2), p.377 - 401, 2000/05
被引用回数:191 パーセンタイル:97.61(Physics, Particles & Fields)20億年前に稼働していたガボン共和国オクロ地区での天然原子炉炉心でのサマリウムアイソトープの異常なアイソトープ比より、基本相互作用の結合定数の時間依存性を議論したSlyakhterの仕事を詳細に検討した。われわれは地中深くの汚染されていない最近得られたサンプルを注意深く選び、また炉心での温度の評価を注意して行った。その結果得られた結論は、Slyakhterが行った簡単な解析をほぼ再確認した。すなわち強い相互作用と電磁的相互作用の結合定数の時間依存性に関してその相対的な変化率は各々1年あたり10-10と10である。サマリウムのアイソトープ比より得られた結論を補強するため、外部からの汚染の影響を考慮しつつガドリウムのアイソトープについての評価を初めて行い、サマリウムと矛盾しない結論を得た。
大貫 敏彦; 磯部 博志; 日高 洋*
放射性廃棄物研究, 2(1-2), p.145 - 151, 1996/02
ナチュラルアナログ研究サイトとしては理想的なものの一つであると考えられているオクロウラン鉱床は、20億年もの長期間にわたって核分裂生成核種を保存してきた。核分裂生成核種を含む元素の同位体分析から、オクロ鉱床の原子炉としての性質、及び核分裂生成核種とTRUの挙動について検討されている。本報告では、最近得られた、核分裂生成核種、ウラン及びプルトニウムの移行挙動について紹介するとともに、地層処分の安全評価への適用について検討した。
磯部 博志; 大貫 敏彦; 村上 隆*; F.G.Lafaye*
Materials Research Society Symposium Proceedings, Vol.353, 0, p.1211 - 1218, 1995/00
アフリカ,ガボンのオクロ地域は、世界で唯一天然で核分裂連鎖反応が起こったウラン鉱床の存在で知られている。原子炉ゾーンのうちのいくつかは地表から浅い位置にあり、風化に伴う酸化を受けている。オクロ鉱床は核分裂生成物を含む核種の移行挙動を理解するために重要なナチュラルアナログ研究サイトである。今回、オクロの原子炉ゾーン2の試料について、酸化に伴う生成物とウランの分布の関係について調べた。原子炉炉心ゾーン近傍の主に雲母から成る層では、雲母中で独立した粒子状を示す物と、それらを横切る脈状の2種類の酸化鉄鉱物が観察された。これらには、結晶度、ウラン量などに違いが見られ、生成時の地下水組成などに違いがあったと思われる。また、酸化チタンや硫化鉄の周囲にもウラン鉱物が存在し、これらの鉱物による局部的な効果がウランの固定に影響を与えていることが観察された。