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馬場 祐治; 寺岡 有殿; 佐々木 貞吉
Photon Factory Activity Report 1998, Part B, P. 92, 1997/11
内殻軌道のエネルギーシフト(化学シフト)を利用して、内殻電子励起により分子内の特定の結合部を選択的に切断できる例を見い出した。チオ硫酸ナトリウム(NaS
O
)の2つのイオウ原子には、形式電荷が-2の終端イオウ原子と形式電荷が+6の中心イオウ原子があり、これらの1s軌道のエネルギー差は7eVであった。Na
S
O
表面に照射する放射光のエネルギーを掃引し、脱離イオウ種を測定したところ、終端イオウの1s電子を共鳴励起するとS
が脱離するのに対し、中心イオウの1s共鳴励起では主にNa
が脱離した。このことから、内殻励起状態は励起される原子に局在し、その原子周辺の結合を選択的に切断することが明らかとなった。
馬場 祐治; 吉井 賢資; 佐々木 貞吉
Journal of Chemical Physics, 105(19), p.8858 - 8864, 1996/11
被引用回数:32 パーセンタイル:72.74(Chemistry, Physical)内殻電子励起の光化学反応により、分子内の特定の化学結合が選択的に切断される例として、ジメチルジスルフィド(CH-S-S-CH
)の低温凝縮層に、S 1s吸収端付近の放射光X線を照射し、表面から脱離するフラグメントイオンを測定した。S 1s電子をS-S結合部の
軌道へ共鳴励起すると(h
=2472.1eV)、主にS
及びCH
イオンが脱離するのに対し、S-C結合部の
軌道へ共鳴励起すると(h
=2473.4eV)、S-C結合が選択的に切断され、CH
イオンのみが脱離することがわかった。各エネルギーにおけるオージェ電子スペクトルの測定結果と併せて反応機構を考察し、このような選択的な化学結合の解裂は、反結合性
軌道へ励起された電子(スペクテータ電子)の局在性により、それぞれの結合が切れやすくなるためであると結論した。
馬場 祐治; 吉井 賢資; 佐々木 貞吉
Photon Factory Activity Report, (14), P. 426, 1996/00
銅単結晶表面に凝縮したジメチルジスルフィドに対し、放射光軟X線によりS1s共鳴励起を行うことによりS-S及びS-C結合部を選択的に切断できることを見出した。オージェ電子スペクトルの測定により、この選択的な結合切断は、S-S及びS-C結合部の反結合性
軌道に局在した電子(スペクテータ電子)の効果によることを明らかにした。