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寺内 正己*; 今園 孝志; 小池 雅人
表面科学, 36(4), p.184 - 188, 2015/04
バルク試料の状態分析を目的とし、汎用走査型電子顕微鏡(SEM)への回折格子を用いた軟X線発光分光装置(SXES)の導入を行った。この分光装置は、透過型電子顕微鏡(TEM)での軟X線分光において実績のある、不等間隔溝回折格子を用いた斜入射平面結像型分光光学系を有している。マグネシウムのL発光(50eV)において、透過型電子顕微鏡での高分解能電子エネルギー損失分光法のエネルギー分解能に匹敵する0.13eVが得られる。バルク試料からのMg-L, Si-L, B-K, Ti-L発光の測定において、固体のバンド構造の特徴を示すスペクトル測定に成功した。
小池 雅人; 今園 孝志; 石野 雅彦
X線分析の進歩,46, p.159 - 166, 2015/03
放射光や軟X線レーザー光等の高輝度光源を利用した先端的な物性研究を推進するうえで18keV領域に現れる軽元素の吸収・発光・蛍光分析に適した高効率軟X線分光器の開発が必要とされている。従来の金の単層膜を積層した回折格子では金のM端(2.2keV)以上では、消衰係数が大きくなるため極端な斜入射で用いる必要があり、実用的な分光器を構成できない難点がありほとんど実用に至っていない。本報告では、単層膜の代わりに軟X線多層膜を積層することでこの壁を破るラミナー型回折格子の開発の現状と、その放射光用分光器への応用の可能性について述べる。
寺内 正己*; 高橋 秀之*; 飯田 信雄*; 村野 孝訓*; 小池 雅人; 今園 孝志; 小枝 勝*; 長野 哲也*; 笹井 浩行*; 大上 裕紀*; et al.
Microscopy and Microanalysis, 20(Suppl.3), p.682 - 683, 2014/08
電子顕微鏡(TEM及びEPMA)に取り付け可能な軟X線発光分光器(SXES)を開発した。これは4枚の不等間隔溝回折格子を備え、504000eVのエネルギー範囲を測定できる。これとTEMを組み合わせたTEM-SXES装置は、電子エネルギー損失分光器やエネルギー分散型分光器では計測困難な局所領域の価電子帯に関する情報を取得できる。SXES装置を材料開発・評価の現場へ広く普及させる観点から、試料の薄膜化を必要としないSEMにも搭載できるようにした。SEMはTEMに比して空間分解能で劣るもののプローブ電流量が大きい上、幅広い物質、特に、バルク物質を扱えるため汎用性が高い。本研究では、Al金属間化合物(AlAu, AlCo)のバルク試料からのAl-L発光測定において結晶構造の違いAl(FCC), AlAu(CaF), AlCo(CsCl)に起因するバンド構造の差異が反映されたスペクトルを得ることができた。このように、SEMによるSXES測定は、バルク試料に対して状態密度の顕微マッピング分析が可能な技術として有用であると考えられる。
高橋 秀之*; 飯田 信雄*; 村野 孝訓*; 寺内 正己*; 小池 雅人; 河内 哲哉; 今園 孝志; 長谷川 登; 小枝 勝*; 長野 哲也*; et al.
Microscopy and Microanalysis, 20(Suppl.3), p.684 - 685, 2014/08
電子プローブアナライザ(EMPA)としてX線エネルギー範囲が公称50210eVの新しい波長分散型軟X線発光分光計(SXES)を開発した。このEPMA-SXESは2枚の不等間隔溝回折格子を用いた平面結像型分光器で、従来の波長分散型分光器では困難であったパラレル計測が可能であり、そのエネルギー分解はAl-L端で約0.2eVと、光電子分光器や電子エネルギー損失分光器と比して同程度である。これらの特長から様々なバルク試料の化学結合状態について有意義な情報を得ることができる。本研究では、このEPMA-SXESを用いた実試料の測定を行い、リチウムイオン電池の負極及び金属リチウムからのLi-K発光スペクトルの比較、結合と結合に起因するキッシュ黒鉛からのC-K発光スペクトルの結晶方位依存性、3種類の希土類フッ化物(LaF, CeF, NdF)からのLa, Ce, NdのN発光スペクトルの比較について報告する。
寺内 正己*; 越谷 翔悟*; 佐藤 二美*; 高橋 秀之*; 飯田 信雄*; 村野 孝訓*; 小池 雅人; 今園 孝志; 小枝 勝*; 長野 哲也*; et al.
Microscopy and Microanalysis, 20(3), p.692 - 697, 2014/06
被引用回数:34 パーセンタイル:90.97(Materials Science, Multidisciplinary)電子ビーム励起軟X線発光分光法(SXES)によりバルク材料の化学結合状態を評価するために回折格子分光器を走査型電子顕微鏡(SEM)に導入した。この分光器は、平面結像型不等間隔溝回折格子と、マルチチャンネルプレートに電荷結合素子カメラを組み合わせた検出器を搭載した斜入射平面結像光学系として設計した。マグネシウムL発光(50eV)において最高のエネルギー分解は0.13eVであることを確認した。これは、最近の専用の電子エネルギー損失分光装置に匹敵する。このSXES-SEM装置は、バルクMgおよびLiの純粋金属の状態密度を評価できる。SiウェハのSi-L発光、GaPウェハのP-L発光、及び金属間化合物AlCo, AlPd, AlPt及びAlAuのAl-L発光において明確なバンド構造効果を観察した。
今園 孝志
応用物理, 83(4), p.288 - 292, 2014/04
50eVから4000eVまでの幅広いエネルギー領域に渡る軟X線領域の発光スペクトルを高効率・高分解能で計測可能な軟X線平面結像型回折格子分光器を開発した。これを電子顕微鏡に搭載することで、リチウムイオン二次電池、太陽電池材料等の機能性物質におけるナノスケール空間領域の構造評価とその化学結合状態分析を同時に実現できる。本稿では本分光器の特徴を述べると共に、透過型電子顕微鏡や電子プローブマイクロアナライザに搭載して得られた測定例について紹介する。
寺内 正己*; 高橋 秀之*; 飯田 信雄*; 村野 孝訓*; 小池 雅人; 河内 哲哉; 今園 孝志; 長谷川 登; 小枝 勝*; 長野 哲也*; et al.
JAEA-Conf 2013-001, p.77 - 80, 2013/09
検出可能なエネルギー範囲を従来の60-1200eVから50-4000eVに拡張したTEM, EPMA/SEM向けの電子顕微鏡用軟X線発光分光(SXES)装置を開発してきた。電子顕微鏡への価電子分光法の導入は、物質科学だけでなく広く基礎科学に貢献する、EELSとEDSでは得ることのできない結合電子の有益な情報を提供する。50eVと4000eVまで検出エネルギーを広げるために、新しいラミナー型不等間隔溝(VLS)回折格子JS50XL(格子定数:1200lines/mm)とJS4000(同:2400lines/mm)をそれぞれ設計製作した。JS50XLとJS4000はAuと2000-3800eVの広いエネルギー領域をカバーするW/BCの新しい多層膜構造を持つ軟X線多層膜をそれぞれ蒸着した。JS50XLのエネルギー分解能は49.5eVのフェルミ端で0.2eVであった。また、金属リチウムのLi-Kの発光スペクトルにおいて鋭いフェルミ端を見ることができる。JS4000では3.8keVのTe-La発光で高いエネルギー分解能が確認され、全値半幅は27eVであった。このように、二つの新しいVLS回折格子の開発により検出エネルギー範囲の拡張に成功した。
高橋 秀之*; 飯田 信雄*; 村野 孝訓*; 小池 雅人; 河内 哲哉; 今園 孝志; 長谷川 登; 寺内 正己*; 小枝 勝*; 長野 哲也*; et al.
JAEA-Conf 2013-001, p.13 - 15, 2013/09
軟X線発光分光器における分析エネルギー範囲を拡張するため、50から200eVの低エネルギー用としてラミナー型不等間隔溝(VLS)回折格子JS50XL、2000から4000eVの高エネルギー用として多層膜VLS回折格子JS4000を新たに開発した。また、電池材料, 鋼及び合金, 電子デバイスなどのさまざまな分野に対応できる発光スペクトル計測のための商用アプリケーションソフトウェアも併せて開発した。講演では、JS50XL及びJS4000を同時に搭載可能な分光器を装着した商用機EPMAの概要と、リチウムイオン電池の充電状態によるLi-Kスペクトルの空間的, 時間的化学状態変化や、CdSe, ZnTe, InPからのKeV領域スペクトルの計測結果などについて述べる。この開発は、科学技術振興機構の産学共同シーズイノベーション化事業(育成ステージ)の共同開発のプロジェクトの一つ(ナノスケール軟X線発光分析システムの開発)として行われた。
今園 孝志; 小池 雅人; 河内 哲哉; 長谷川 登; 小枝 勝*; 長野 哲也*; 笹井 浩行*; 大上 裕紀*; 米澤 善央*; 倉本 智史*; et al.
Proceedings of SPIE, Vol.8848, p.884812_1 - 884812_14, 2013/09
被引用回数:7 パーセンタイル:94.03(Optics)産学における共同研究として、汎用電子顕微鏡に搭載することが可能な軟X線平面結像型分光器を開発した。本分光器の主な特徴は2つである。一つは、50200eV, 155350eV, 3002200eV, 20004000eVのそれぞれの領域に最適化した専用の不等間隔溝ホログラフィック回折格子を共通の分光器に搭載できるようにし、分光器ではなく回折格子の切り替えのみにより、504000eVの幅広いエネルギー領域をカバーできるようにしたことである。もう一つは、新たに考案した広帯域型W/BC多層膜を用いて一定入射角でも20004000eV領域の全域に渡って実用的な回折効率(約1%)を得られるようにしたことである。
高橋 秀之*; 飯田 信雄*; 村野 孝訓*; 寺内 正己*; 小池 雅人; 河内 哲哉; 今園 孝志; 長谷川 登; 小枝 勝*; 長野 哲也*; et al.
Microscopy and Microanalysis, 19(Suppl.2), p.1258 - 1259, 2013/08
軟X線発光分光学に資するために電子顕微鏡用に新開発の回折格子を搭載した分散型分光器(WD-SXES)を製作した。汎用電子プローブX線マイクロアナライザー(JEOL JXA-8100)用に2種類の回折格子とCCDを搭載したWD-SXESでは50-210eVのエネルギー範囲を測定できる。この分光器のエネルギー分解幅は約0.3eVで、これまでの分子累積膜(LB膜)を分散素子として用いる場合より、約1桁高いエネルギー分解が得られる。例えば、AlB合金のフェルミ端はバルクのAlに対して1.5eV高いエネルギーにあることが観測される。また、バルクのAlとAlB合金がミクロンオーダーの空間領域に混在する試料に対してエネルギー範囲72-73.5eVと73.5-75eVとの2つをマッピングした場合、エネルギー差がわずか1.5eVであるのにもかかわらずコントラストが反転し、それぞれの物質の分布をサブミクロンの空間分解で測定できた。このように、この装置は化学状態のマッピングに高い可能性を持つといえる。
寺内 正己*; 越谷 翔悟*; 佐藤 二美*; 高橋 秀之*; 飯田 信雄*; 村野 孝訓*; 小池 雅人; 今園 孝志; 小枝 勝*; 長野 哲也*; et al.
Microscopy and Microanalysis, 19(Suppl.2), p.1278 - 1279, 2013/08
TEM,EPMA等の電子顕微鏡に搭載できる軟X線発光分光(SXES)装置を開発し、試験評価してきた。分光器は不等間隔溝(収差補正)回折格子を4枚(内1枚は多層膜回折格子)搭載し、検出器はマルチチャンネルプレート(MCP)とCCDを組合せたもので、測定可能エネルギー領域は50-4000eVである。このSXES分光器は電子エネルギー損失分光法(EELS)やエネルギー分散型X分析法(EDS)では不可能な、特定された試料領域での価電子(結合電子)のエネルギー状態の情報を提供するほか、元素や化合物の化学状態の同定が可能である。このSXES分光器をJEOL社製JSM-6480LV型走査型電子顕微鏡(SEM)に装着した。SEMではプローブ電流が大きくかつ照射体積も大きくなるため、測定時間はTEMに比較して約一桁短くなる。AlのL端でのエネルギー分解幅は0.16eVであり、TEM/EPMAの場合と同等の性能であった。LaBとアモルファスBのKスペクトル(2次光)の比較ではBの化学結合状態の差異がフェルミ端の強度差として明瞭に現れた。
寺内 正己*; 高橋 秀之*; 飯田 信雄*; 村野 孝訓*; 小池 雅人; 河内 哲哉; 今園 孝志; 長谷川 登; 小枝 勝*; 長野 哲也*; et al.
Microscopy, 62(3), p.391 - 395, 2013/06
被引用回数:11 パーセンタイル:59.48(Microscopy)電子顕微鏡における回折格子分光器の使用エネルギーの上限を拡張を狙って、新しい多層膜蒸着不等間隔溝回折格子、JS4000を製作し、試験した。回折格子は斜入射角1.35度で2-3.8keVの領域を測定できるように設計した。新しい多層膜構造を用いることにより同一の光学系の配置を用いて1.5keVから4keVの軟X線発光スペクトルの同時取得が可能となったことを示す。Te-L(3.8keV)発光線の半値全幅は27eVであった。エネルギー分散型X線分光器では分解できないSn-L(3444eV)とIn-L(3487eV)のピークが分離できた。
寺内 正己*; 高橋 秀之*; 飯田 信雄*; 村野 孝訓*; 小池 雅人; 河内 哲哉; 今園 孝志; 小枝 勝*; 長野 哲也*; 笹井 浩行*; et al.
JEOL News, 47(1), p.23 - 28, 2012/07
これまで透過型電子顕微鏡用に研究開発されてきた軟X線発光分光装置の分光エネルギー領域を拡張し、TEMだけでなくEPMA/SEMに搭載可能な軟X線発光分析システムの開発を行った。ここでは、50-200eV用に開発した回折格子JS50XLを用いた測定例として、単純金属のMg-L発光, Li-K発光, Al-L発光, Be-K発光を示す。これらのスペクトル強度分布は、価電子の状態密度分布とシャープなフェルミ端を明瞭に示した。また、半導体であるSiと金属であるTiSiのSi-L発光スペクトルの比較、及び、CaBとLaBのB-K発光スペクトルの比較を示す。
寺内 正己*; 高橋 秀之*; 飯田 信雄*; 村野 孝訓*; 小池 雅人; 河内 哲哉; 今園 孝志; 小枝 勝*; 長野 哲也*; 笹井 浩行*; et al.
Journal of Electron Microscopy, 61(1), p.1 - 8, 2012/02
被引用回数:32 パーセンタイル:86.54(Microscopy)エネルギー領域50-200eVでの超軟X線分光のための新しい回折格子(JS50XL)を設計,製作,評価した。回折格子とマルチチャンネルプレート(MCP)から構成される分光器を製作した。この分光器の低エネルギー端である49.5eVで0.15eVのエネルギー分解でMg-L発光の鋭いフェルミ端を観測した。Li-K発光スペクトルは金属Li,酸化表面金属Li,5%Li-Alで得られた。Al, AlN, MgAlOのAl-L発光スペクトル中で観測された相対エネルギーシフトは内殻電子結合エネルギー(化学シフト)とこれらの物質の禁止帯エネルギーで説明された。Si, SiC, SiO(石英)のSi-L発光、GaPとInPのP-L発光が示された。さらに、回折格子の低エネルギー限界を32eVになるよう傾けた結果、Mg-L発光の全強度分布が完璧に得られた。これらの超軟X線発光スペクトルは電子顕微鏡における新型軟X線発光分光(SXES)の低エネルギー領域への拡張が成功したことを示している。
寺内 正己*; 高橋 秀之*; 飯田 信雄*; 村野 孝訓*; 小池 雅人; 河内 哲哉; 今園 孝志; 小枝 勝*; 長野 哲也*; 笹井 浩行*; et al.
日本電子ニュース, 44, p.11 - 16, 2012/00
これまで透過型電子顕微鏡用に研究開発されてきた軟X線発光分光装置の分光エネルギー領域を拡張し、TEMだけでなくEPMA/SEMに搭載可能な軟X線発光分析システムの開発を行った。ここでは、50-200eV用に開発した回折格子JS50XLを用いた測定例として、単純金属のMg-L発光, Li-K発光, Al-L発光, Be-K発光を示す。これらのスペクトル強度分布は、価電子の状態密度分布とシャープなフェルミ端を明瞭に示した。また、半導体であるSiと金属であるTiSiのSi-L発光スペクトルの比較、及び、CaBとLaBのB-K発光スペクトルの比較を示す。
高橋 秀之*; 飯田 信雄*; 村野 孝訓*; 寺内 正己*; 小池 雅人; 河内 哲哉; 今園 孝志; 小枝 勝*; 長野 哲也*; 笹井 浩行*; et al.
日本電子ニュース, 44, p.50 - 54, 2012/00
これまで透過電子顕微鏡(TEM)用に開発されてきた軟X線分光器を電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)に搭載した。50-170eV程度までのエネルギー領域を同時に分光可能な不等間隔溝回折格子JS50XLを新たに開発し、背面照射型CCD検出器と組合せた。Al金属のAl-L発光では0.2eV以下の高いエネルギー分解能が得られ、明瞭なフェルミ端と電子状態密度を観察でき、微小領域での状態分析が可能となった。またX線カウントの照射電流に比例して高計数が得られるWDSの特長も有するため、EPMAの大照射電流の特長を生かし、従来のEPMAよりもさらに微量検出にも有効となった。微量ホウ素分析には不等間隔溝回折格子JS200N(分光エネルギー範囲: 70-210eV)を作製し、検量線定量法により、10ppmレベルの鉄鋼中超軽元素分析も可能となった。CCDの採用でパラレル検出が可能となり、試料上のピクセルごとにスペクトルを保存するスペクトルマップの取得も可能とした。この結果、マイクロメータレベルから10cm角程度の実試料に関して、化学結合状態を反映した分布をとらえることも可能となった。
今園 孝志; 倉本 智史*; 小池 雅人
Photon Factory Activity Report 2011, Part B, P. 416, 2012/00
透過型電子顕微鏡に搭載できる24keV領域用平面結像分光器を開発するために、一定入射角でも一様に高い回折効率を得ることができる新しい膜構造を持つワイドバンド多層膜回折格子を開発した。これまでのわれわれの研究において、マスタ回折格子にこの新しい膜構造を積層した新型多層膜回折格子の回折効率が測定エネルギー領域全域(2.14.0keV)において広帯域化していることを確かめた。今回、実用性・汎用性を鑑み、新たにマスタ回折格子を作製し、それのレプリカ回折格子に新しい膜構造を積層した多層膜回折格子の回折効率を測定した。測定は前回同様、PFの二結晶ビームラインBL-11Bに接続した自前の軟X線回折計を用いて行った。その結果、レプリカ回折格子の回折効率は高エネルギー側でマスタよりわずかに劣るものの、レプリカで回折効率の広帯域化に成功した。
高橋 秀之*; 飯田 信雄*; 村野 孝訓*; 寺内 正己*; 小池 雅人; 河内 哲哉; 今園 孝志; 長谷川 登; 小枝 勝*; 長野 哲也*; et al.
Proceedings of Microscopy and Microanalysis 2011 (Internet), 2 Pages, 2011/08
高エネルギー分解の軟X線分光は化合物の化学結合状態の有用な情報を与える。寺内らは最近透過型電子顕微鏡(TEM)に搭載する軟X線発光分光器(SXES)を開発し、Al-L発光スペクトルにおいて0.2eVのエネルギー分解を得た。この分光器のエネルギー範囲は60-1200eVである。この結果をさらに広いエネルギー領域に拡張し、特にLi-K発光スペクトルを検出するため、新たに50-200eVで高エネルギー分解を与える収差補正型回折格子を開発している。具体的にはLi-K(55eV), Al-L(70eV), Si-L(100eV), B-K(180eV)などと、C-K(279eV), N-K(392eV), O-K(525eV)などの高次光に対応する。この分光器はTEMだけでなくEPMAにも装着可能である。さらに、EPMAに装着したSXESではX線強度がプローブ電流に比例することを見いだした。このことはトレース物質の解析に非常に有用である。Li-K, Be-K, B-Kの場合、検出限界は数十ppmと評価された。応用例としてはボロントレース解析法が新規に開発された物質の定量的な評価法として有望である。
寺内 正己*; 高橋 秀之*; 飯田 信雄*; 村野 孝訓*; 小池 雅人; 河内 哲哉; 今園 孝志; 長谷川 登; 小枝 勝*; 長野 哲也*; et al.
Microscopy and Microanalysis, 17(Suppl.2), p.604 - 605, 2011/07
透過型電子顕微鏡(TEM)用の軟X線発光分光(SXES)装置を開発している。顕微鏡と組合せたSXESは各種の物質から成り立つ同一の微小領域の物理的性質や化学結合状態を示すものとして期待されている。これまでのTEM用のSXES装置は当初60-1200eVを検出できる(拡張版は2000eVまで)。物質科学への応用にはさらなる広領域化が必要である。そこで50-3800eVをカバーする電子顕微鏡用の新しいSXES装置開発を開始した。高エネルギーへの拡張では、金蒸着では2.2keVのM吸収端以上では著しく反射率が低下するため、新たに軟X線多層膜を蒸着した回折格子を開発した。主な仕様は格子定数:2400本/mm、蒸着物質:WとBC、膜周期:約5.6nm、膜周期数:20、斜入射角:1.35度である。このSXESをJEM2010型TEMに搭載した。検出器は背面照射型CCDを使用した。測定の結果、高強度のTe-L(3769eV) and L(4030eV)だけでなく、4つの微小な構造(Ll,L,L,L)が確認できた。このほか、Pt-M(2050eV)、Pd-M(2839eV)、In-L(3287eV)が観測され、新しい多層膜回折格子が2-4keVの領域で機能することを確認した。
今園 孝志; 小池 雅人
Photon Factory Activity Report 2010, Part B, P. 318, 2011/00
透過型電子顕微鏡に搭載できる24keV領域用平面結像分光器を開発するために、新しい膜構造を持つワイドバンド多層膜回折格子を開発した。一定入射角の場合、従来の多層膜回折格子はバンド幅が狭いために当該領域を波長走査するための機械駆動が不可欠であったが、本研究で開発した多層膜回折格子は一定入射角でも当該エネルギー領域において一様に高い回折効率を得ることができるように新しい膜構造を持たせている。この条件は、振動を可能な限り排除したい透過型電子顕微鏡に搭載するために有利である。今回われわれは、PFの二結晶ビームラインBL-11Bに接続した自前の軟X線回折計を用いて、マスタ回折格子に新しい膜構造を積層した多層膜回折格子の回折効率を測定した。その結果、測定エネルギー領域全域(2.14.0keV)において新型多層膜回折格子は一様に高い回折効率を示すことがわかった。