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永野 哲志; 佐藤 努*; 柳瀬 信之; 磯部 博志*; 大貫 敏彦; I.S.Williams*; M.Zaw*; T.E.Payne*; P.L.Airey*
JAERI-Research 99-024, 52 Pages, 1999/03
オーストラリア・クンガラウラン鉱床において、ウランは地下水によって流され、風化生成物である鉄鉱物に濃集し二次鉱床を形成している。本研究では、二次鉱床におけるウランの地球化学的挙動のタイムスケールを調べることを目的とし、風化生成物中におけるウラン系列核種の放射能比を高感度・高分解能イオンマイクロプローブ(SHRIMP)により測定した。その結果、鉄鉱物からは系が放射平衡に達していることを示唆する1に近い値を得た。この値は、もし鉄鉱物が閉じた系であったとすれば、ウランが保持されてから少なくともおよそ百万年程度の年月が経過したことを示すものである。
佐藤 努; 柳瀬 信之; I.S.Williams*; W.Compston*; M.Zaw*; T.E.Payne*; P.L.Airey*
Radiochimica Acta, 82, p.335 - 340, 1998/00
クンガラウラン鉱床の風化岩石中でのウラン系列核種の年代測定と再分配機構を調べるために、高分解能イオンプローブ(SHRIMPII)によるウラン同位体その場分析を行った。分析した風化岩石は、地下水によって流出したウランを多く保持している二次鉱床中心部の試料で、主に鉄鉱物、カオリナイト、石英からなる。分析は、それぞれの鉱物中の直径30ミクロンのスポット数か所において行われた。その結果、鉄鉱物中のU/U放射能比は、5段階抽出法(SE)で求めたものとほぼ一致するが、それと近接するカオリナイト・石英中の比は、SEよりも高い値を示した。これは、反跳によるThの鉄鉱物から隣接するカオリナイト・石英への移動によるものと結論づけた。SEから得たデータは間接的な証拠であるのに対して、SHRIMPによる測定は直接的なその場のデータであるので、本研究により初めて反跳の直接的な証拠が示されたことになる。
T.E.Payne*; 柳瀬 信之
Radiological Aspects of the Rehabilitation of Contaminated Sites, p.79 - 85, 1998/00
環境中のさまざまな鉱物相と放射性核種の共存関係を、各鉱物相を選択的に溶解する抽出法を用いて研究した。アリゲータ河地域の岩石試料について逐次抽出を行った結果、吸着相や鉄鉱物相に多く存在するウランが弁別可能であり、各鉱物相でUとUの非平衡が生じていることが明らかとなった。この選択的抽出法はウラン鉱山の環境修復の研究などにも応用可能である。しかしながら、抽出法を用いた研究を行う場合には、それのみでは不十分でありX線回折法、安定元素の測定、同位体交換法などの併用が必要であることが分かった。
佐藤 努; 村上 隆*; 柳瀬 信之; 磯部 博志; T.E.Payne*; P.L.Airey*
Environmental Science & Technology, 31(10), p.2854 - 2858, 1997/00
被引用回数:81 パーセンタイル:88.52(Engineering, Environmental)地下環境におけるウランの移動と遅延の機構を研究することは、ウランの探査、ウラン鉱山の環境管理、放射性廃棄物の処分などにとって重要である。地下水中のウランの鉄鉱物相による除去について多く研究されているが、亀裂充填、被覆(コーティング)、海流瘤塊(ノジュール)などの形態によるウランの取り込み量の違いの研究は少ない。クンガラウラン鉱床では、地下水によって運ばれるウランが鉄ノジュールに非常に濃縮されることが分かった。鉄ノジュールのウラン濃度はUOとして8重量パーセントと地下水より6桁も高く、他の形態の鉄鋼物におけるウラン濃度よりも1桁高い。鉄ノジュールの大きなウラン含有量から、クンガラでは鉄ノジュールがウランの固定に重要な役割をしていると考えられる。
柳瀬 信之; T.E.Payne*; 関根 敬一
Geochemical Journal, 29, p.31 - 54, 1995/00
被引用回数:23 パーセンタイル:46.66(Geochemistry & Geophysics)クンガラウラン鉱床中のウラン系列核種の移行挙動を研究するために、地下水中の核種濃度及び放射能比を求めた。深さ20m以浅の地下水のU/U比は1より小さく、30m以深では1より大きかった。Thはウランに比べ地下水中では非常に動きにくかった。Ra/U比から、RaはUに比べ風化帯(30m以浅)より非風化帯(30m以深)で動きやすかった。これは風化帯ではMnやFeを含む風化二次鉱物に、Raが共沈あるいは吸着されるためと考えられる。Rnは地下水中にUより3桁以上過剰に存在し、Pb/Rn比からはPbの地下水中での滞留時間約6日が推定できた。以上の結果から、クンガラウラン鉱床では、ウラン系列核種の非平衡は、酸化還元状況の反映である風化の度合い、溶解共沈吸着現象、及びアルファリコイル機構によって支配されていると考えられる。
柳瀬 信之; T.E.Payne*; 関根 敬一
Geochemical Journal, 29, p.1 - 29, 1995/00
被引用回数:25 パーセンタイル:49.47(Geochemistry & Geophysics)非常に風化した岩石-地下水系におけるウランの移行挙動を詳細に知るために、クンガラウラン鉱床の地下水の地球化学的研究を行った。クンガラ地下水の特徴は、中性のpH、酸化性、そして陽・陰イオンとしてMgと炭酸水素イオンが支配的なことである。鉱床中心では、ウラン濃度は周辺より3桁高かった。ウランの地下水中での化学形は、炭酸ウラニルイオンであると考えられる。得られた地球化学的データから、クンガラの地下水流は、上流の砂岩層に浸透した雨水が、鉱床に近接する断層を通して鉱床へ入り、鉱床中のウラン酸化物(ウラニナイト)を風化溶解し、鉱床から南東及び南方向へ流れていると考えられる。また、ウランの一部は、約100~150万年の間に鉱床の中心から約200m下流に移動していることが分った。