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下出 敦夫*; 荒木 康史
Physical Review B, 103(15), p.155202_1 - 155202_8, 2021/04
被引用回数:2 パーセンタイル:16.40(Materials Science, Multidisciplinary)軸性磁気効果(Axial magnetic effect: AME)は軸性磁場がエネルギー流を誘起する、異常輸送現象の一種である。本研究では軸性磁場を含む相対論的ウィルソンフェルミオン、及び捻れのあるディラック半金属の模型において、AMEを数値的に調べた。バルク中ではAMEにより有限のエネルギー流が得られ、特に前者の模型の低エネルギー領域においては、このエネルギー流は場の理論による導出と合致した。その一方、どちらの模型においても系全体で平均すると、エネルギー流は表面の寄与によりゼロとなることが明らかになった。軸性磁場はゼーマン磁場の空間変調として解釈されるため、空間変調したエネルギー磁化を誘起する。本研究で扱ったAMEによるエネルギー流は、このエネルギー磁化に対応した磁化エネルギー流として解釈でき、したがって輸送測定では検出できない成分であると理解される。
下出 敦夫*; 永井 佑紀
Physical Review B, 93(17), p.174517_1 - 174517_9, 2016/05
被引用回数:3 パーセンタイル:15.85(Materials Science, Multidisciplinary)銅酸化物高温超伝導体や鉄系高温超伝導体に代表される非従来型超伝導体は、様々な産業への応用が期待され世界中で盛んに研究されている。特に、スピン軌道相互作用の強い系における超伝導体はトポロジカル超伝導と呼ばれる特異な超伝導状態をとり、量子コンピュータの材料として着目されている。そこで本論文発表では、半導体の界面に形成されるトポロジカル超伝導状態の軌道角運動量の大きさについて調べた。その結果、系の軌道角運動量は系の端で電流が流れるか否かに強く依存することがわかり、デバイス作成における端の高精度なコントロールの重要性が示唆された。なお、上記課題の解決にあたり、波数空間実空間のそれぞれにおいて精度よく軌道角運動量を計算する手法を開発した。これらの結果は、超伝導体の基礎物性を明らかにするのみならず、良い特性を持つデバイス開発に資する成果であり、広く原子力分野の材料開発のためのシミュレーション基盤開発にも資する成果である。
下出 敦夫*; 永井 佑紀
Physical Review B, 92(2), p.024502_1 - 024502_7, 2015/07
被引用回数:10 パーセンタイル:41.72(Materials Science, Multidisciplinary)銅酸化物高温超伝導体や鉄系高温超伝導体に代表される非従来型超伝導体は、様々な産業への応用が期待され世界中で盛んに研究されている。特に、スピン軌道相互作用の強い系における超伝導体はトポロジカル超伝導とよばれる特異な超伝導状態をとり、量子コンピュータの材料として着目されている。そこで本論文発表では、ラシュバスピン軌道相互作用を持つトポロジカル超伝導体の軌道角運動量に着目し、その磁場依存性を調べた。その結果、系の軌道角運動量の大きさと不純部耐性の強さの間に強い関係があることを明らかにした。なお、上記課題の解決にあたり、波数空間実空間のそれぞれにおいて精度よく軌道角運動量を計算する手法を開発した。これらの結果は、超伝導体の基礎物性を明らかにするのみならず、良い特性を持つデバイス開発に資する成果であり、広く原子力分野の材料開発のためのシミュレーション基盤開発にも資する成果である。
下出 敦夫*; 荒木 康史
no journal, ,
Weyl fermionの古典的な作用はカイラル対称性をもつが、電磁場がある場合に理論を量子化すると破れてしまう。これはカイラル量子異常と呼ばれ、異常輸送現象を引き起こすといわれている。Weyl fermionは重イオン衝突実験で生成されるクォークグルーオンプラズマやWeyl半金属で実現しており、カイラル量子異常は高エネルギー物理のみならず物性物理においても重要な概念である。カイラル量子異常による異常輸送現象のひとつに、渦度によって電流が流れるカイラル渦効果というものがある。相対論的な系や対称性が高いカイラル点群に属する物性系は渦度があっても平衡状態にあるが、局所電流は非零であり、直観に反する。実はこの電流はすべて磁化電流であり、輸送実験では観測されないことを示すことができる。本講演では、軸性磁場によってエネルギー流が流れる軸性磁場効果について議論する。相対論的な系ではエネルギー流は運動量に等しいので、軸性磁場効果はカイラル渦効果と相反関係にある。物性系ではDirac/Weyl半金属をひねったり、磁化構造を設計したりすることで軸性磁場を実現することができるが、系は平衡状態にあるのでエネルギー流が流れるとは考えにくい。我々は相対論的なWilson fermionとDirac半金属CdAsをひねった模型を考えた。まず開放境界条件を課して対角化を行い、エネルギー流密度を計算したところ、バルク内部は非零であるが、表面の寄与によって平均的には0になることが見いだされた。一方で、軸性ゲージ場に含まれる座標をパラメタとみなして周期的境界条件を課し、エネルギー磁化および磁化エネルギー流を計算したところ、前述のバルク内部のエネルギー流密度とよく一致した。すなわち、軸性磁気効果によるエネルギー流はすべて磁化エネルギー流であり、輸送実験では観測されない。