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論文

Universality and structural implications of the Boson peak in Proteins

中川 洋; 城地 保昌*; 北尾 彰朗*; 山室 修*; 片岡 幹雄*

Biophysical Journal, 117(2), p.229 - 238, 2019/07

 被引用回数:3 パーセンタイル:13.03(Biophysics)

蛋白質の柔らかさや固さは、環境に影響を受けるダイナミクスに反映される。蛋白質の低エネルギー振動スペクトルの特徴の一つである、ボソンピークは、低温や乾燥状態における蛋白質構造の固さの指標となる。この論文では、中性子非弾性散乱と分子シミュレーションによって、ボソンピークと体積についての水和,温度,圧力効果を調べた。水和,加圧,低温はボソンピークを高エネルギー側にシフトさせ、強度が小さくなり、またキャビティが小さくなった。しかし、このような効果は水和蛋白質にはあまり見られなかった。体積の減少は固さの増加を意味し、これがボソンピークシフトの起源である。ボソンピークはキャビティ体積で予測できる。この予測は、強い準弾性散乱のために実験的にはボソンピークが見分けられない場合に、非干渉性中性子散乱スペクトルにおける準弾性散乱の寄与を見積もるのに効果的である。

論文

Ligand-induced protein responses and mechanical signal propagation described by linear response theories

Yang, L.-W.*; 北尾 彰朗*; Huang, B.-C.*; 郷 信広*

Biophysical Journal, 107(6), p.1415 - 1425, 2014/09

 被引用回数:18 パーセンタイル:54.3(Biophysics)

In this study, a general linear response theory (LRT) is formulated to describe time-dependent and -independent protein conformational changes upon CO binding with myoglobin. Using the theory, we are able to monitor protein relaxation in two stages. The slower relaxation is found to occur from 4.4 to 81.2 picoseconds and the time constants characterized for a couple of aromatic residues agree with those observed by UV Resonance Raman (UVRR) spectrometry and time resolved X-ray crystallography. The faster "early responses", triggered as early as 400 femtoseconds, can be best described by the theory when impulse forces are used. The newly formulated theory describes the mechanical propagation following ligand-binding as a function of time, space and types of the perturbation forces. The "disseminators", defined as the residues that propagate signals throughout the molecule the fastest among all the residues in protein when perturbed, are found evolutionarily conserved and the mutations of which have been shown to largely change the CO rebinding kinetics in myoglobin.

論文

Enhanced resolution of molecular recognition to distinguish structurally similar molecules by different conformational responses of a protein upon ligand binding

樋口 真理子; 藤井 淳平*; 米谷 佳晃; 北尾 彰朗*; 郷 信広*

Journal of Structural Biology, 173(1), p.20 - 28, 2011/01

 被引用回数:2 パーセンタイル:6.15(Biochemistry & Molecular Biology)

ヌクレオシドdGTPと損傷したヌクレオシド8oxodGTPは構造が似ているが、修復酵素MutTは結合力の大きな差によって両者を区別している。本研究では分子動力学シミュレーションの手法を用いて、基質の小さな差を増幅し大きな結合力の差として認識する分子的な仕組みを解明した。MutTはdGMPとの結合時は基質周辺のループが開いている状態が安定だが、8oxodGMPとの結合時は基質周辺のループが閉じている状態が安定であることがわかった。このような結合構造の違いが結合力の大きな差を生み出していると考えられる。さらに、基質のH7とMutTの119番目の残基Asnをつなぐ水素結合が結合構造の違いに重要な役割を果たしていることがわかった。

論文

Hydration affects both harmonic and anharmonic nature of protein dynamics

中川 洋; 城地 保昌*; 北尾 彰朗*; 片岡 幹雄

Biophysical Journal, 95(6), p.2916 - 2923, 2008/09

 被引用回数:49 パーセンタイル:78.26(Biophysics)

To understand the effect of hydration on protein dynamics, inelastic neutron scattering experiments were carried out on Staphylococcal nuclease samples at differing hydration levels: dehydrated, partially hydrated and hydrated. At cryogenic temperatures, hydration affected the collective motions with energies lower than 5 meV, while the high energy localized motions were independent of hydration. The prominent change was a shift of boson peak toward higher energy by hydration, suggesting hardening of harmonic potential at local minima on the energy landscape. The 240 K transition was observed only for the hydrated protein. Significant quasi-elastic scattering at 300 K was observed only for the hydrated sample, indicating that the origin of the transition is the motion activated by hydration water. The neutron scattering profile of the partially hydrated sample was quite similar to that of the hydrated sample at 100 and 200 K, while it was close to the dehydrated sample at 300 K, indicating that partial hydration is sufficient to affect the harmonic nature of protein dynamics, and that there is a threshold hydration level to activate the anharmonic motions. Thus, hydration water controls both the harmonic and anharmonic protein dynamics, by differing means.

論文

Hydration effect on low-frequency protein dynamics observed in simulated neutron scattering spectra

城地 保昌*; 中川 洋; 片岡 幹雄; 北尾 彰朗*

Biophysical Journal, 94(11), p.4435 - 4443, 2008/06

 被引用回数:24 パーセンタイル:53.62(Biophysics)

分子シミュレーションによる中性子散乱スペクトルの周波数依存性を調べることで蛋白質ダイナミクスの水和依存性を調べた。蛋白質のボソンピークは水和にかかわらず100Kで1$$sim$$4meVに観測されるが、水和によってピーク位置は高エネルギーシフトする。4meVよりも高エネルギーの蛋白質の振動はほぼ調和振動的である。1meVよりも低振動運動は揺らぎの大きさに大きく寄与し、ガラス性転移の起源に寄与する。300Kでは水和状態のボソンピークは準弾性散乱に埋もれるが、低い水和量ではボソンピークは観測される。ボソンピークは蛋白質ダイナミクスがエネルギーランドスケープのローカルミニマムにトラップされることで観測される。ボソンピークに寄与する蛋白質の運動は蛋白質全体に広がっている。近い将来高エネルギー分解能の装置が開発されれば、動的構造因子の微細構造が実験的に検出されると期待される。

論文

Hydration-dependent protein dynamics revealed by molecular dynamics simulation of crystalline Staphylococcal nuclease

城地 保昌*; 中川 洋; 片岡 幹雄; 北尾 彰朗*

Journal of Physical Chemistry B, 112(11), p.3522 - 3528, 2008/03

 被引用回数:10 パーセンタイル:25.44(Chemistry, Physical)

結晶状態の黄色ブドウ球菌由来核酸分解酵素の分子シミュレーションを低い水和量と高い水和量で行って、蛋白質ダイナミクスに対する水和効果を調べた。高い水和量では結晶の隙間に水を充填させた。低い水和量では結晶水のみを入れた。ガラス性転移は220Kの温度で両者で見られたが、高い水和量の方が転移はより顕著であった。残基ごとの揺らぎの解析からは、ループや末端領域に揺らぎの増加が見られた。これら領域は低い水和量では分子間の接触によって揺らぎは抑制されていた。高い水和量での水分子の揺らぎは低い水和量よりも一桁大きい。転移温度以上では高い水和量では水分子はバルク水のように振る舞い、蛋白質ダイナミクスの潤滑剤として働く。一方、低い水和量では水分子は蛋白質と水素結合を形成し、蛋白質の揺らぎの大きさと同程度になる。分子間相互作用と溶媒の運動性は蛋白質のガラス性転移を理解するのに重要である。

論文

Non-Gaussian behavior of elastic incoherent neutron scattering profiles of proteins studied by molecular dynamics simulation

徳久 淳師; 城地 保昌*; 中川 洋; 北尾 彰朗*; 片岡 幹雄

Physical Review E, 75(4), p.041912_1 - 041912_8, 2007/05

 被引用回数:20 パーセンタイル:67.12(Physics, Fluids & Plasmas)

弾性非干渉性中性子散乱(EINS)では、散乱プロファイルの小角領域でガウス近似することで、揺らぎ幅の平均値である平均二乗変位(MSD)を見積もることがでる。一方、広角領域ではガウス近似からのずれ(非ガウス性)が観測される。非ガウス性には平均値以上の詳細な揺らぎ幅に関する情報が含まれており、非ガウス性に対しての解析法を確立することが望まれている。タンパク質ダイナミクスは非常に複雑で、非調和的であり、非等方的であり、かつ不均一である。そのため非ガウス性の起源に対して数種類の要因を考えることができる。非ガウス性の主要な起源を明らかにし、解析法を確立することを目的とした。核酸分解酵素であるStaphylococcal nucleaseの分子動力学計算から、EINSデータを再現した。非ガウス性を以下の3つの起源に分離し、非ガウス性を引き起こす種々の起源の寄与を見積もることに成功した。(1)揺らぎ幅の原子個々の不均一性の寄与(動的不均一性),(2)非等法性の寄与、及び(3)非調和性の寄与、に分離した。タンパク質全体では、さまざまなジャンプ距離を持つ原子が存在するため、非等方性及び非調和性の寄与は原子間で互いに打ち消し合い、EINSプロファイルへの寄与は結果的に小さくなることがわかった。つまり、非ガウス性の主要な起源は動的不均一性であり、タンパク質を試料としたEINS実験にあらわれる非ガウス性に対しては、動的不均一性の解析が適していることを明らかにした。

論文

Analysis of the function of a large-scale supra-biomolecule system by molecular dynamics simulation system, SCUBA (Simulation Codes for hUge Biomolecular Assembly)

石田 恒; 樋口 真理子; 米谷 佳晃*; 叶野 琢磨; 城地 保昌*; 北尾 彰朗*; 郷 信広

Annual Report of the Earth Simulator Center April 2005 - March 2006, p.237 - 240, 2007/01

地球シミュレータは従来にはない大規模生体超分子系の分子動力学シミュレーションを可能とする計算能力を持つ。そこで、われわれは数百万原子の生体超分子系を扱う大規模な分子動力学シミュレーションシステムSCUBA(旧名PABIOS)を開発している。SCUBAはPPM計算法,系のエネルギー,温度,圧力を一定に保つさまざまな時間積分アルゴリズム,系の原子分布異方性により引き起こされる並列化効率の悪化を防ぐための動的ロードバランスなど、最新のアルゴリズムを採用した計算性能に優れたシミュレーションシステムである。本年度は、約55万原子の系(RuvAB-Holliday分岐DNA)について分子動力学シミュレーションを実行した結果、地球シミュレータで360個のプロセッサを用いてもSCUBAはベクトル化率95%以上,並列化効率50%以上の優れた性能を達成することに成功した。そして、ホリデイジャンクションモデル(RuvA-Holliday分岐DNA)の長時間分子動力学シミュレーションを実行することで、Holliday分岐DNA結合タンパク質RuvAがDNAを組み換えるメカニズムを分子レベルで明らかにすることができた。

論文

Dynamical heterogeneity of protein dynamics studied by elastic incoherent neutron scattering and molecular simulations

中川 洋; 徳久 淳師*; 上久保 裕生*; 城地 保昌*; 北尾 彰朗*; 片岡 幹雄*

Materials Science & Engineering A, 442(1-2), p.356 - 360, 2006/12

 被引用回数:4 パーセンタイル:34.16(Nanoscience & Nanotechnology)

中性子非干渉性弾性散乱と分子シミュレーションによって球状タンパク質の動的不均一性を調べた。中性子非干渉性弾性散乱のq依存性はガウス近似からのずれ、非ガウス性を示した。非調和性も非ガウス性に寄与するが、われわれは動的不均一性によって実際の散乱プロファイルの非ガウス性を説明することができた。分子シミュレーションにより、1meV程度の低いエネルギー分解能では非ガウス性はおもに動的不均一性に由来することを確認した。一方、非調和性の非ガウス性に対する寄与は10$$mu$$eV程度の高エネルギー分解能では無視できないが、それでも動的不均一性は非ガウス性の主な原因であった。

論文

Hydration-coupled protein boson peak measured by incoherent neutron scattering

中川 洋; 片岡 幹雄*; 城地 保昌*; 北尾 彰朗*; 柴田 薫; 徳久 淳師*; 筑紫 格*; 郷 信広

Physica B; Condensed Matter, 385-386(2), p.871 - 873, 2006/11

 被引用回数:13 パーセンタイル:52.05(Physics, Condensed Matter)

スタフィロコッカルヌクレアーゼを用いてタンパク質のボソンピークの水和との関連を調べた。ボソンピークは合成高分子,ガラス性物質,アモルファス物質に共通に見られるものであるが、その起源は十分には理解されていない。ボソンピークに寄与する運動は調和振動である。水和によりピークの位置は高周波数側にシフトし、振動の力学定数は増加した。このことはタンパクのエネルギー地形が変化したことを示す。タンパク質が水和することでエネルギー地形がより凸凹になり、極低温ではエネルギー極小に振動がトラップされる。タンパク質のボソンピークの起源はこのエネルギー地形の凹凸と関係しているかもしれない。

論文

Switch interactions control energy frustration and multiple flagellar filament structures

北尾 彰朗*; 米倉 功治*; 米倉 さおり*; Samatey, F.*; 今田 勝巳*; 難波 啓一*; 郷 信広

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 103(13), p.4894 - 4899, 2006/03

 被引用回数:45 パーセンタイル:63.3(Multidisciplinary Sciences)

細菌べん毛繊維は一種類の蛋白質フラジェリンが会合してできた生体超分子であり、細菌の運動はべん毛モーターのトルクによって誘起されるべん毛繊維の左巻き-右巻き超らせん構造転移によって制御される。われわれは、大規模分子動力学シミュレーションによってさまざまな実験データを満足する原子レベルの超らせん構造を構築するとともに、構造多型の分子メカニズムを解明することに成功した。超らせん構造構築のメカニズムには以下の3種類の相互作用が鍵となることがわかった。パーマネント相互作用はさまざまな超らせん構造において常に保たれる。スライディング相互作用は可変な疎水性及び親水性アミノ酸残基ペアの間で形成され、大きなエネルギー変化なしに蛋白質サブユニット間のずれを許容する。スイッチ相互作用の形成と解消はサブユニット間相互作用とサブユニット内相互作用をそれぞれ安定化する。われわれは構造多型の原因は両者の相互作用のフラストレーションであると結論付けた。超らせん構造間の転移は「変形=$$>$$緩和」機構によって起こる。すなわち、繊維構造は幾何学的に急速に変形させられ、その後相互作用を再構成しながら徐々にエネルギー的準安定状態へ緩和することを明らかにした。

論文

Development of molecular dynamics simulation system for large-scale supra-biomolecules, PABIOS (PArallel BIOmolecular Simulator)

石田 恒; 樋口 真理子; 米谷 佳晃*; 叶野 琢磨; 城地 保昌*; 北尾 彰朗*; 郷 信広

Annual Report of the Earth Simulator Center April 2004 - March 2005, p.241 - 246, 2005/12

地球シミュレータは従来にはない大規模超分子系の分子動力学シミュレーションを可能とする計算能力を持つ。そこで、われわれは数百万原子のシステムを扱う大規模な分子シミュレーション(PABIOS)を開発している。PABIOSは空間分割法を用いており高い並列化効率を持つ。PABIOSは系のエネルギー,温度,圧力を一定に保つさまざまな時間積分アルゴリズム,原子結合長を固定することにより時間ステップの増大を可能とするSHAKE, RATTLEアルゴリズムなどの高精度アルゴリズムを採用した計算性能に優れたシミュレーションシステムである。今回、系の原子分布の異方性による並列化効率の悪化がおこらないように、動的ロードバランスを開発した。ホリデイ分岐DNAとDNA結合蛋白質RuvA4量体の複合体が水中に存在する系(全系16万6千原子)について分子動力学シミュレーションを実行した結果、地球シミュレータで120個のプロセッサを用いてもPABIOSはベクトル化率95%以上,並列化効率50%以上の優れた性能を達成することに成功した。そして計算速度も昨年度と比べて約2倍程度向上した。

論文

Protein boson peak originated from hydration-related multiple minima energy landscape

城地 保昌*; 北尾 彰朗*; 郷 信広

Journal of the American Chemical Society, 127(24), p.8705 - 8709, 2005/06

 被引用回数:27 パーセンタイル:61.19(Chemistry, Multidisciplinary)

ボゾンピークとは200K以下の生体高分子を含む多くのガラス状物質による非弾性中性子散乱やラマン散乱スペクトルの低振数領域に見られる幅の広いピークを指す。本論文では蛋白質のボゾンピークの起源に関する新しい描像を与える。分子動力学シミュレーションによれば、蛋白質分子のまわりの構造水分子は蛋白質のエネルギー地形の多極小性を一層際立たせ、これがボゾンピークの起源となっている。ピークは蛋白質分子が、水分子に由来するエネルギー極小構造に低温で束縛されることによって生じる。

論文

Development of molecular dynamics simulation system for large-scale supra-biomolecules, PABIOS (PArallel BIOmolecular Simulator)

石田 恒; 城地 保昌*; 樋口 真理子; 叶野 琢磨; 北尾 彰朗*; 郷 信広

Annual Report of the Earth Simulator Center April 2003 - March 2004, p.175 - 179, 2004/07

地球シミュレータは従来にはない大規模超分子系の分子動力学シミュレーションを可能とする計算能力を持つ。そこで、われわれは数百万原子のシステムを扱う大規模な分子シミュレーション(PABIOS)を開発している。PABIOSは空間分割法を用いており高い並列化効率を持つ。PABIOSは系のエネルギー,温度,圧力を一定に保つさまざまな時間積分アルゴリズム,原子結合長を固定することにより時間ステップの増大を可能とするSHAKE, RATTLEアルゴリズムなどの高精度アルゴリズムを採用した計算性能に優れたシミュレーションシステムである。ホリデイ分岐DNAとDNA結合蛋白質RuvA4量体の複合体が水中に存在する系(全系16万6千原子)について分子動力学シミュレーションを実行した結果、地球シミュレータで144個のプロセッサを用いてもPABIOSはベクトル化率95%以上,並列化効率50%以上の優れた性能を達成することに成功した。

論文

分子シミュレーションと中性子散乱による蛋白質のダイナミクス研究

北尾 彰朗

波紋, 12(2), p.80 - 83, 2002/04

分子シミュレーションと中性子散乱はどちらも原子レベルでの蛋白質立体構造のダイナミクスを明らかにするための重要な手法であり、両者を組み合わせることで蛋白質ダイナミクスの解明がさらに促進されると期待される。これまで分子シミュレーションから明らかになってきた蛋白質ダイナミクスの概観し、最近おこなっている非干渉性中性子非弾性散乱スペクトル計算について述べ、今後の中性子散乱実験の可能性について議論する。

口頭

MutTの基質結合に伴う構造変化と基質認識

樋口 真理子; 石田 恒; 北尾 彰朗*; 山縣 ゆり子*; 郷 信広

no journal, , 

放射線や紫外線あるいは細胞内での代謝活動によって生じる活性酸素はヌクレオチドを酸化させる。酸化したヌクレオチドはDNAに取り込まれると突然変異の原因となる。E. Coliから発見された蛋白質MutTは酸化したヌクレオチド8-oxo-dGTPを加水分解し8-oxo-dGMPとすることでDNAに取り込まれることを防いでいる。MutTは8-oxo-dGMPとdGMPを大きな結合力の差($$Delta$$$$Delta$$G=6.1kcal/mol)で識別する。しかし、8-oxo-dGMPとdGMPの構造の差は8位の酸素と水素、及び7位の窒素に水素が付加しているか否かでしかない。また、山縣らによりX線結晶構造解析を用いて解かれた8-oxo-dGMP-MutT構造を基質と結合していないMutTの構造と比較すると、おもに基質周りのループ部分が基質を囲むように大きく構造変化していることがわかる。これらのことより、基質によるMutTの構造変化と基質認識に関連があると予想できる。この関連を調べるため、上記の構造をもとに単体のMutT、それぞれの基質との複合体についてAMBER7を用いて分子動力学計算を行い比較した。dGMP-MutTは8oxo-dGMP-MutTの基質をdGMPに入れ替えたものを初期構造とした。その結果、8oxo-dGMP-MutTは基質周りのループが閉じたまま安定で、MutTの構造揺らぎも小さいが、dGMP-MutTでは、MutTの構造が基質と結合していない時の構造に近づき構造揺らぎが大きくなった。また、基質を囲むループが開いたこと、基質結合部位に位置する119Asnの側鎖が回転することにより、基質-MutT間の安定な水素結合の数が減少した。これらはdGMPとMutTの結合時にエントロピー及びエンタルピーの変化が小さいことと定性的に矛盾しない結果である。

口頭

Hydration dependent protein dynamics by incoherent neutron scattering

中川 洋; 城地 保昌*; 北尾 彰朗*; 柴田 薫; 徳久 淳師*; 郷 信広; 片岡 幹雄

no journal, , 

タンパク質のダイナミクスはその水和環境と強くカップルしている。タンパク質の動力学転移とボソンピークの水和との関係をスタフィロコッカルヌクレアーゼを用いて調べた。230K付近の動力学転移は水和タンパク質のみで観測される。タンパク質を動力学転移温度以下に下げると非調和的な運動が失われ、タンパク質の機能発現が抑制されることが示されている。動力学転移の水和量依存性を調べた。動力学転移は26%程度の高い水和量で観測された。過去の研究では約20%の水和量がタンパク質の機能に必要であるという報告がある。これは動力学転移がタンパク質の機能に重要であることを示している。一方、150K以下では低い水和量でもタンパク質の調和振動状態に影響を与えた。低温ではボソンピークが観測された。ボソンピークは合成高分子,ガラス,アモルファス物質などに共通して見られるが、その起源は十分には理解されていない。ピークに寄与する運動は調和振動である。水和するとピークの周波数は高振動にシフトし、低温での振動の力学定数は増加する。このことはタンパク質のエネルギー地形が変化したことを示す。タンパク質の水和はより凸凹したポテンシャル表面を作り出し、低温では振動運動はローカルミニマムにトラップされる。ボソンピークの起源はこの凸凹したエネルギー表面と関係があり、タンパク質の低振動モードの分布状態と関係している。

口頭

中性子散乱で見るタンパク質の低エネルギーダイナミクス

中川 洋; 城地 保昌*; 北尾 彰朗*; 柴田 薫; 郷 信広; 片岡 幹雄

no journal, , 

タンパク質のダイナミクスは水和による影響を強く受ける。われわれは、タンパク質のボソンピークや動力学転移の水和とのかかわりを非干渉性中性子弾性散乱によって調べている。まず弾性散乱強度のQ依存性から平均自乗変位の温度変化を求めた。150K以下の平均自乗変位は温度に対して比例して増加し、その傾きから調和的なポテンシャルの力の定数を求めたところ、力の定数は水和することで大きくなることが明らかになった。このことは調和ポテンシャルの形状がより鋭くなることを示している。また2$$sim$$4meV付近に観測されるボソンピークは水和することにより高振動側にシフトした。これらは、低振動モードのエネルギー地形の形状が水和によりroughnessになった結果生じたと考えている。一方、より広いエネルギー領域の非弾性散乱を測定したところ、2000cm$$^{-1}$$以上の分子基由来の振動スペクトルには水和による変化はほとんど観測されなかった。温度を上昇させると約240Kで水和試料に動力学転移が観測された。このとき弾性散乱ピークの周りに、準弾性散乱が顕著にみられた。このことは緩和的あるいは拡散的な低エネルギーダイナミクスが動力学転移に関与していることを示唆している。

口頭

中性子非弾性散乱によるタンパク質ダイナミクスの水和効果

中川 洋; 城地 保昌*; 北尾 彰朗*; 柴田 薫; 郷 信広; 片岡 幹雄

no journal, , 

タンパク質のダイナミクスは周りの水和環境に影響を受けることはよく知られている。本研究では、中性子非弾性散乱によりタンパク質ダイナミクスの特徴であるボソンピークや動力学転移が水和とどのようにかかわっているのかを調べた。極低温では3$$sim$$4meVにボソンピークが観測され、ピーク位置は水和により高エネルギー側へシフトすることがわかった。これは水素結合を介した水和水とタンパク質の相互作用によってタンパク質の低振動モードのエネルギー地形がより凸凹になったことに起因する。一方、水和量が約0.2(g water/g protein)以上で240K付近において動力学転移が観測された。なぜ動力学転移が水和依存的に生じるのかを調べるために、中性子散乱の同位体効果を利用して水和水のダイナミクスを直接観測した。タンパク質表面の水分子の特異的なダイナミクスが、タンパク質と水分子の界面に存在する水素結合ネットワークを介してタンパク質の振動モードと相互作用し、その結果動力学転移が生じると結論した。

口頭

Hydration related protein dynamics studied by incoherent neutron inelastic scattering

中川 洋; 城地 保昌*; 北尾 彰朗*; 柴田 薫; 郷 信広; 片岡 幹雄

no journal, , 

タンパク質のボソンピークや動力学転移の水和の効果を中性子非弾性散乱により調べた。極低温では3$$sim$$4meVにボソンピークが観測され、ピーク位置は水和により高エネルギー側へシフトすることがわかった。ボソンピーク近傍のスペクトルが示すタンパク質の低振動モードは調和振動的であり、ピークのシフトからそのばね定数は水和量が多いほど大きくなると言える。これは水素結合を介した水和水とタンパク質の相互作用によってタンパク質の低振動モードのエネルギー地形がより凸凹になったことに起因し、このことはシミュレーションからの理論的な予測(Y. Joti et al.,2005)と一致する。一方、水和量が約0.2(g water/g protein)以上で240K付近において動力学転移が観測された。なぜ動力学転移が水和依存的に生じるのかを調べるために、中性子散乱の同位体効果を利用して水和水のダイナミクスを直接観測した。その結果、転移温度以下の低温では水和量に関係なくタンパク質と水分子の揺らぎの大きさはほぼ同じであった。また転移が生じない低い水和量の場合では転移温度以上でもやはりタンパク質とほぼ同じであった。一方、動力学転移が生じる時には同時に水和水の揺らぎが大きくなっていることが明らかになった。高い水和量で生じるタンパク質表面の水分子の特異的なダイナミクスが、タンパク質と水分子の界面に存在する水素結合ネットワークを介してタンパク質の振動モードと相互作用し、その結果動力学転移が生じると考えている。

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