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大久保 成彰; 藤村 由希; 友部 政勝*
Quantum Beam Science (Internet), 5(3), p.27_1 - 27_9, 2021/09
加速器駆動システム(ADS)において、核破砕ターゲットの隔壁であるビーム窓の材料は、過酷な条件下で重照射に晒される。ビーム窓材では、鉛ビスマス流れ環境下で高エネルギー中性子、あるいは陽子線照射により、弾き出し損傷と腐食とが同時に起こる。ADSで用いられる材料には、液体鉛ビスマス合金(LBE)内での液体金属脆化(LME)や液体金属腐食(LMC)に耐えるための共存性が必要である。本研究では、自己イオン照射した316Lに対して、照射後LBE中腐食試験によりLMC挙動を調べた。316L試料に対して、10.5MeVまで加速した鉄イオンを、450Cにて最大50dpaまで照射を行った。低酸素濃度のLBE中、450Cで腐食試験を行った結果、未照射部では、酸化皮膜は観察されずに局所腐食が見られた一方で、照射部は鉄/クロム系の酸化皮膜で覆われていた。また、高い酸素濃度のLBEの場合、未照射部は、鉄/クロム系酸化物の1層であった一方で、照射部は鉄酸化物と鉄/クロム系酸化物の2層酸化皮膜で覆われていた。316Lにおいて、自己イオン照射による残存空孔等の照射損傷が試料表面での鉄と酸素の拡散が促進されたことにより、酸化層の形成が促進したと考えられる。
大久保 成彰; 友部 政勝*; 石川 法人
no journal, ,
原子力分野で使用されるセラミックス機能材料に関して、高エネルギー重イオンを高線量まで照射し、表面の損傷形態を調べた。鉄鋼材料は水等の冷却材環境で長期間使用されると、表面が酸化する。そこで、原子力機構のタンデム加速器により、鉄の表面酸化物の一つであるFeOに、鉄イオンを高線量まで照射し、表面及び微細組織への照射影響を調べた。その結果、照射された表面は、波紋(リップル)とセル構造を呈した。照射イオンがほぼ貫通する試料厚さの場合、照射面と裏面の両面に波紋構造が観察された。また、量子科学技術研究開発機構高崎量子応用研究所のTIARA施設にて、約1/10のエネルギーにてNiイオンをCeOに照射した場合、表面のみにリップルとセル構造が観察され、これら表面形態は、照射角度や照射線量によって変化した。通常のスパッタリングは、keV程度の照射によって弾性衝突的に引き起こされ、表面形態はマクロには滑らかである。しかし、本研究でのリップル等はSEMレベルで観察され、高エネルギーの電子的エネルギー付与が、激しい表面スパッタリングを引き起こしたことを示す。また、断面TEM観察により、電子的エネルギー付与の高い表面では非晶質化が生じていることが鉄酸化物で初めて明らかになった。