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沖田 英史; 田村 文彦; 山本 昌亘; 野村 昌弘; 島田 太平; Saha, P. K.; 吉井 正人*; 大森 千広*; 杉山 泰之*; 長谷川 豪志*; et al.
Journal of Physics; Conference Series, 2687(7), p.072005_1 - 072005_7, 2024/01
縦方向位相空間トモグラフィは、ビーム進行方向(縦方向)の位相空間分布を得るための有効な測定ツールである。J-PARCシンクロトロン(3GeVシンクロトロン及びメインリング)の大強度運転時の位相空間分布の測定には、空間電荷効果や集束力の非線形性等のビーム物理を考慮したトモグラフィが必要であった。本研究では、ビーム物理を考慮可能なハイブリッドアルゴリズムを採用したCERN's TomographyのJ-PARCシンクロトロンへの導入とベンチマークを実施した。ベンチマークの結果、J-PARCシンクロトロンの大強度運転条件における位相空間分布を高精度に測定可能であることを確認した。
田村 文彦; 沖田 英史; 發知 英明*; Saha, P. K.; 明午 伸一郎; 吉井 正人*; 大森 千広*; 山本 昌亘; 清矢 紀世美*; 杉山 泰之*; et al.
Proceedings of 20th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (インターネット), p.64 - 68, 2023/11
J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)は物質・生命科学実験施設(MLF)およびメインリング(MR)に大強度陽子ビーム供給を行っている。RCSのハーモニック数hは2で、通常は2つのバンチを加速している。MLFのいくつかの実験では1バンチでのビーム供給が好ましいが、この場合1つのRFバケツを空きバケツとして加速を行うため、ビーム強度は半分となってしまう。RCSのハーモニック数を1として加速できれば、1バンチあたりの強度は2倍となり、最大強度での1バンチビーム供が可能となる。一方MRは、バンチあたりの粒子数を設計より上げることができるならば、1バンチずつ8回の入射を行うことで現在の設計ビームパワー1.3MWを超える運転ができる可能性がある。本発表では、主にRCSでの縦方向シミュレーションによるh=1加速の検討について報告する。
山本 昌亘; 野村 昌弘; 沖田 英史; 島田 太平; 田村 文彦; 原 圭吾*; 長谷川 豪志*; 大森 千広*; 杉山 泰之*; 吉井 正人*
Progress of Theoretical and Experimental Physics (Internet), 2023(7), p.073G01_1 - 073G01_16, 2023/07
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Physics, Multidisciplinary)J-PARC 3GeVシンクロトロンでは、ビームの加速に金属磁性体を装荷した加速空胴を使用している。金属磁性体の広帯域特性を利用して、ビームを加速する周波数だけでなく、その高調波も増幅する多重高調波励振によってビームの安定加速を実現している。既設の空胴は真空管増幅器において、加速電場を発生させる絶縁ギャップの前後に個別に電圧を印加するプッシュプル励振となるよう設計されている。プッシュプル励振は、ビームを加速しない状態では高調波歪みを抑制でき、さらに空胴の長さを短くできる利点がある。しかし、大強度ビーム加速時にはビームが誘起する電圧によって多重高調波励振が歪められ、それを補正するために絶縁ギャップの前後にかかる陽極電圧振幅が深刻な不平衡を引き起こし、真空管の動作を制限してしまう。現状では、設計値である1MWビーム加速は達成できているが、より安定な運転を行う上では真空管の不平衡が問題となる。この問題を避けるため、シングルエンド励振の空胴を開発した。シングルエンド励振は本質的に不平衡が起こらず、さらに既設の空胴に対して遥かに少ない電力消費を達成できることが分かった。
沖田 英史; 田村 文彦; 山本 昌亘; 野村 昌弘; 島田 太平; 吉井 正人*; 大森 千広*; 杉山 泰之*; 長谷川 豪志*; 原 圭吾*; et al.
Journal of Physics; Conference Series, 2420, p.012092_1 - 012092_6, 2023/01
J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)では、大強度陽子ビーム加速のために高周波加速装置を構成する8kWの駆動段半導体増幅器の出力増強が求められている。現在、窒化ガリウムを用いた6.4kW半導体増幅器を基本モジュールとする25kW半導体増幅器の開発を進めている。この開発の鍵となるのが、広い周波数帯域(およそ0.1-10MHz)を持ち、かつ25kWの高出力が可能な結合器の設計である。結合器の出力と周波数帯域は同軸ケーブルと磁性体コアからなる伝送線路トランスの設計に依存する。本研究では、同軸ケーブルと磁性体コアの特性を組み込んだ回路シミュレータモデルを構築し、これを用いて目標とする出力と周波数帯域を達成可能な伝送線路トランスの設計並びに結合器の回路設計を完了させた。本発表では、結合器の回路シミュレータモデルのセットアップとそれを用いた結合器の設計の詳細について報告する。
田村 文彦; 大森 千広*; 吉井 正人*; 冨澤 正人*; 外山 毅*; 杉山 泰之*; 長谷川 豪志*; 小林 愛音*; 沖田 英史
Proceedings of 19th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (インターネット), p.175 - 178, 2023/01
J-PARC主リングシンクロトロン(MR)は大強度陽子ビームをニュートリノ実験に供給している。高いピーク電流を持つ8つのビーム集団(バンチ)が速い取り出しによってMRから取り出され、したがってニュートリノビームも同様の時間構造を持つ。将来の実験では中間水チェレンコフ検出器(IWCD)が導入される予定であり、IWCDはピーク電流が低い時間構造を要求するため、MRの取り出し直前に、高周波によりバンチの分布を平坦化させるピーク電流低減手法を検討中である。ビームパワーの低下を抑えるためバンチ操作はできるだけ短期間で行わねばならず、また取り出しキッカー電磁石の立ち上がり期間のビーム損失を防ぐために、磁場が立ち上がる最終バンチと先頭バンチの間隔を保つ必要がある。これらの要求を満たすために、加速ハーモニック近傍のマルチハーモニックRF電圧を用いた非断熱的なバンチ操作が提案されている。この過程においてはMR全周の縦方向インピーダンスの影響が考えられるため、シミュレーションを行い、大強度ビームのバンチ操作の成立可能性についての議論を行う。
沖田 英史; 田村 文彦; 山本 昌亘; 野村 昌弘; 島田 太平; 吉井 正人*; 大森 千広*; 原 圭吾*; 長谷川 豪志*; 杉山 泰之*
Proceedings of 19th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (インターネット), p.262 - 266, 2023/01
J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)の大強度ビーム運転中の高周波加速(RF)空胴では、ビーム電流が誘起するウェイク電圧が発生する。RCSのRF空胴は広帯域であるため、ウェイク電圧には高い周波数成分が含まれる。現在のRF制御システムでは基本周波数の四倍までの高調波(四倍高調波)を検波しているが、四倍高調波よりも高い周波数成分(高次高調波)もビーム挙動に影響を与えている可能性が示唆されていた。本研究では、大強度ビーム運転中のRF空胴電圧を測定し、周波数解析から高次高調波の評価を行なった。加えて、ビームトラッキングシミュレーションを用いて高次高調波がビーム挙動に与える影響を評価した。本研究の結果、大強度ビーム運転中のRF空胴には複数の高次高調波が発生しており、加速後半において高次高調波がビーム電流分布を変形させることが分かった。
野村 昌弘; 沖田 英史; 島田 太平; 田村 文彦; 山本 昌亘; 杉山 泰之*; 長谷川 豪志*; 原 圭吾*; 大森 千広*; 吉井 正人*
Proceedings of 19th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (インターネット), p.215 - 217, 2023/01
J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)では、機械学習の一種であるニューラルネットワークによる画像認識技術を用いることにより、ビームモニタで得た強度分布の画像から、前段のLinacからの入射ビームに関する情報が得られるようにしている。現状では、得られる情報の中で、入射ビームの運動量広がりについてはガウス分布の標準偏差として、また時間構造については強度が一定としてその時間幅として求められているが、これらの情報に関してはそれぞれの値としてではなく、運動量広がりと時間で表される位相空間上での強度分布として求められることが望まれる。そこで本研究では、ニューラルネットワークの出力を値から画像に変更し、位相空間上での強度分布の画像を学習させることにより、ニューラルネットワークの予測画像として位相空間上での強度分布が求められる様にした。その結果、シミュレーションによる画像を用いた検証ではあるが、ビームモニタで得た強度分布の画像から位相空間上での強度分布が求められることが確かめられた。
沖田 英史; 田村 文彦; 山本 昌亘; 野村 昌弘; 島田 太平; 吉井 正人*; 大森 千広*; 原 圭吾*; 長谷川 豪志*; 杉山 泰之*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A, 1041, p.167361_1 - 167361_7, 2022/10
被引用回数:1 パーセンタイル:33.4(Instruments & Instrumentation)J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)では、広帯域の高周波加速(RF)空胴を使用している。大強度ビーム運転中のRF電圧には、複数の周波数成分を持つウェイク電圧やRF電源の出力の歪みが含まれており、加速中のビームはこれらの影響を受ける。空胴ギャップ電圧モニタの測定値はウェイク電圧やRF電源の出力の歪みの情報を含んでいる。そこで、空胴ギャップ電圧モニタの測定値を用いた縦方向ビームトラッキングシミュレーションを開発した。空胴ギャップ電圧モニタの測定値をシミュレーションに反映するために、空胴ギャップ電圧モニタの周波数応答を整理した。開発した縦方向トラッキングシミュレーションは1MWビーム加速時のビーム挙動を非常に高い精度で再現することを確認した。
山本 風海; 金正 倫計; 林 直樹; Saha, P. K.; 田村 文彦; 山本 昌亘; 谷 教夫; 高柳 智弘; 神谷 潤一郎; 菖蒲田 義博; et al.
Journal of Nuclear Science and Technology, 59(9), p.1174 - 1205, 2022/09
被引用回数:6 パーセンタイル:84.97(Nuclear Science & Technology)J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)は、最大1MWの大強度ビームを25Hzという早い繰り返しで中性子実験及び下流の主リングシンクロトロンに供給することを目的に設計された。2007年の加速器調整運転開始以降、RCSではビーム試験を通じて加速器の設計性能が満たされているかの確認を進め、必要に応じてより安定に運転するための改善を行ってきた。その結果として、近年RCSは1MWのビーム出力で連続運転を行うことが可能となり、共用運転に向けた最後の課題の抽出と対策の検討が進められている。本論文ではRCSの設計方針と実際の性能、および改善点について議論する。
山本 昌亘; 野村 昌弘; 沖田 英史; 島田 太平; 田村 文彦; 原 圭吾*; 長谷川 豪志*; 大森 千広*; 杉山 泰之*; 吉井 正人*
Proceedings of 13th International Particle Accelerator Conference (IPAC 22) (Internet), p.1336 - 1338, 2022/06
J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)では、大強度ビーム加速時に大振幅のビーム負荷補償を行うために、真空管増幅器から大振幅の高周波電流を供給している。RCSでは四極真空管を使用しており、コントロールグリッドが正電圧に入る領域(ポジティブ・グリッド・バイアス)で使用している。この影響で、コントロールグリッドには陽極電流の一部が流れ込み、コントロールグリッド電圧波形を歪めたり、コントロールグリッドのDCバイアス電圧の急激な低下を招く影響が観測された。本発表では、電圧波形の歪みとDCバイアス電圧低下の測定結果を示し、対処可能な方法について述べる。
沖田 英史; 田村 文彦; 山本 昌亘; 野村 昌弘; 島田 太平; 吉井 正人*; 大森 千広*; 原 圭吾*; 長谷川 豪志*; 杉山 泰之*; et al.
Proceedings of 18th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (インターネット), p.840 - 844, 2021/10
J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)は、ビームの加速で使用する高周波として、周回周波数の2倍の周波数である基本波と、さらにその2倍の周波数の高調波(2倍高調波)の電圧を用いたデュアルハーモニック運転を行っている。加速ギャップに発生させる各高周波の電圧と位相の安定化にはマルチハーモニックベクトルフィードバック制御が採用されている。この制御のフィードバックに用いられる測定値には、各加速空胴の加速ギャップの1つに備え付けられたギャップ電圧モニタからの出力が使用されている。ビーム進行方向のビーム分布(バンチ形状)は各高調波の相対的な位相で変化するため、ギャップ電圧モニタの位相測定値の周波数応答を正確に把握することが重要となる。そこで、ギャップ電圧モニタの位相の周波数応答測定とこれを反映したビームシミュレーションを実施した結果、実際のビーム加速試験で測定されたバンチ形状をよく再現することを確認した。本発表では、周波数応答測定とビームシミュレーションについての詳細とギャップ電圧モニタ回路についての考察について報告する。
田村 文彦; 杉山 泰之*; 吉井 正人*; 山本 昌亘; 沖田 英史; 大森 千広*; 野村 昌弘; 島田 太平; 長谷川 豪志*; 原 圭吾*; et al.
Proceedings of 18th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (インターネット), p.170 - 174, 2021/10
J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)における大強度陽子ビームの安定な加速のためには高精度で安定な低電力高周波(LLRF)制御システムが不可欠である。RCSのLLRF制御システムは運転開始から10年以上大きな問題なく運転されてきたが、構成要素であるデジタル部品の陳腐化により維持することが困難となっていた。このため、2016年より次世代LLRF制御システムの開発を行い、2019年に次世代システムへの置き換えを完了した。RCSの広帯域金属磁性体空胴のビームローディングを補償するにはマルチハーモニックの補償システムが必要である。次世代システムではマルチハーモニックベクトルrf電圧制御フィードバックを採用することで、旧システムにおけるフィードフォワード法を用いた補償よりも安定な大強度ビーム加速を実現した。本発表では、次世代システムの概要、ビーム試験結果を示すとともに、更なる性能向上に向けた取り組みについて報告する。
野村 昌弘; 沖田 英史; 島田 太平; 田村 文彦; 山本 昌亘; 古澤 将司*; 杉山 泰之*; 長谷川 豪志*; 原 圭吾*; 大森 千広*; et al.
Proceedings of 18th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (インターネット), p.80 - 82, 2021/10
J-PARC 3GeVシンクロトロンでは画像認識技術を用いることにより、ビームモニタで得たビーム進行方向の強度分布の画像から中心運動量からのずれ量が得られるようになった。今後、この得られた値を加速器の制御に使用することを考えた場合には、得られた値が信頼できるかが重要となってくる。なぜなら、画像認識技術では、データ取得に失敗した画像からも何らかの間違った値が得られてしまうからである。得られた値が信頼できるかどうかは当然その画像で決まる。そこで、今回機械学習の一種であるオートエンコーダーによる異常診断の手法を画像の診断に適用することにより、画像から得られた値が信頼できるかを示す指標を得ることができた。
田村 文彦; 大森 千広*; 吉井 正人*; 杉山 泰之*
Proceedings of 12th International Particle Accelerator Conference (IPAC 21) (Internet), p.3023 - 3026, 2021/08
J-PARC MRは、ニュートリノ実験に大強度の陽子ビームを供給している。将来のニュートリノ実験では、新しい中間水チェレンコフ検出器(IWCD)が建設される予定であるが、IWCDが要求する低いピーク時間構造を実現するために、MRの加速終了後ビームを取り出すまでの間(フラットトップ)で高周波(RF)電圧の操作により進行方向のビーム集団(バンチ)のピーク電流を下げる検討が行われている。操作のためにフラットトップを延長する必要があり、繰り返し周期が長くなることによる出力ビームパワーの低下をできるだけ抑えるために、操作は短時間で行う必要がある。また、取り出しキッカーのためのバンチ間の間隔も確保しなければならない。我々は、マルチハーモニックRF電圧を用いた非断熱バンチ操作を提案している。加速ハーモニックの隣接のハーモニクスを用いることで、1バンチめを減速、8バンチめを加速することができる。一定時間後、RFの位相を反転させてバンチの進行方向分布の平坦化操作を行う。はじめに行った減速と加速により、キッカーのためのバンチ間隔は保たれる。本発表では、非断熱バンチ操作のコンセプトとビーム進行方向分布のシミュレーション結果を紹介する。
沖田 英史; 田村 文彦; 山本 昌亘; 野村 昌弘; 島田 太平; 吉井 正人*; 大森 千広*; 杉山 泰之*; 長谷川 豪志*; 原 圭吾*; et al.
Proceedings of 12th International Particle Accelerator Conference (IPAC 21) (Internet), p.3020 - 3022, 2021/08
J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)では、ビームの加速に基本周波数(基本波)とその二倍の周波数(二倍高調波)を重畳した電圧を用いたデュアルハーモニック運転を行っている。デュアルハーモニック運転では、基本波のみの場合と比較し、加速中のビーム進行方向のビームの線密度分布の平坦度(バンチングファクタ)を大幅に改善することが可能で、大強度ビームの安定した加速に欠かせないものとなっている。従来の低電力高周波(LLRF)制御システムが2019年に更新されたことで、現在では基本波と二倍高調波に加えて高次の高調波の制御が可能となった。そこで、バンチングファクタの更なる改善を目的とし、従来のデュアルハーモニック運転に三倍高調波を加えたトリプルハーモニック運転について検討を行った。三倍高調波を用いることで、扁平なRFバケットを実現することができ、ビームシミュレーションの結果、バンチングファクタを最大で現状の約30%改善可能であることが示された。本発表では、トリプルハーモニック運転に関するビームシミュレーションの結果と関連する試験の結果について報告する。
山本 昌亘; 沖田 英史; 野村 昌弘; 島田 太平; 田村 文彦; 古澤 将司*; 原 圭吾*; 長谷川 豪志*; 大森 千広*; 杉山 泰之*; et al.
Proceedings of 12th International Particle Accelerator Conference (IPAC 21) (Internet), p.1884 - 1886, 2021/08
J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)では、ビームを加速する高周波電圧の発生に四極真空管を用いている。これまでのところ真空管の寿命を延ばすために、真空管に印加するフィラメント電圧を定格値よりも下げて使用している。2020年に初めて、60000時間運転したところで1本の真空管が寿命を迎えた。これは真空管メーカーが推奨(もしくは保障)する運転時間よりも長いことを意味しており、フィラメント電圧を下げることが有効であることを示唆している。しかし、フィラメント電圧を下げて使用すると、電子放出が減ることになる。大強度ビームを加速するときにはビームによって誘起される電圧(ウエイク電圧)を補償するため大振幅の陽極電流が必要となるが、フィラメントからの電子放出が少ないため、それを補おうとしてコントロールグリッド回路を駆動する半導体増幅器が出力不足になる現象が発生した。そこで、実際に印加しているフィラメント電圧の定格に対する割合を85%から95%にしたところ、同じビームパワーを加速するのに必要な半導体増幅器の出力を大幅に減少させることができた。本発表では、フィラメント電圧調整の観点から、真空管のパラメーター測定の結果について述べる。
田村 文彦; 杉山 泰之*; 吉井 正人*; 山本 昌亘; 沖田 英史; 大森 千広*; 野村 昌弘; 島田 太平; 長谷川 豪志*; 原 圭吾*; et al.
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A, 999, p.165211_1 - 165211_11, 2021/05
被引用回数:5 パーセンタイル:65.59(Instruments & Instrumentation)低電力高周波(LLRF)制御システムは大強度陽子ビームの加速のために重要である。J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)のLLRF制御システムは、運転開始から10年以上大きな問題なく運転されてきたが、モジュールを構成するデジタル部品の陳腐化によって今後の維持は困難となった。このため、次世代LLRF制御システムを開発した。新システムの全てのLLRF機能について動作試験を行った。この論文では、特に重要な機能であるビーム進行方向の振動を抑制するRFの位相フィードバック、複数の周波数のRF電圧を同時に制御するベクトルRF電圧フィードバックの調整について、詳細な調整手法、調整結果について報告を行う。次世代LLRF制御システムにより、設計ビーム出力である1MW相当の強度のビームを従来機より安定に加速できるようになった。
山本 風海; 長谷川 和男; 金正 倫計; 小栗 英知; 林 直樹; 山崎 良雄; 内藤 富士雄*; 吉井 正人*; 外山 毅*
JPS Conference Proceedings (Internet), 33, p.011016_1 - 011016_7, 2021/03
J-PARC施設は量子ビームを用いた様々な科学実験を行うために建設された。施設はリニアック, 3GeVシンクロトロン(RCS),主リング(MR)の3つの加速器とRCSおよびMRからビームを受ける実験施設群で構成される。J-PARCは、物質生命科学実験施設(MLF)において中性子を用いたユーザー利用運転を2008年12月より開始し、東日本大震災やハドロン実験施設における放射能の管理区域外へのリーク、中性子ターゲットの破損などによる比較的長期の中断を挟みながらも現在まで10年以上運転を継続してきた。これまでの加速器の運転統計データから、特に大きなトラブルが無ければ、MLFの運転稼働率は90%程度、MRがビームを供給するハドロン実験およびニュートリノ実験は85%程度の稼働率が確保できていることを確認した。また、近年ではイオン源の寿命が延びたことでその保守日数が低減され、その分運転日数に余裕を持つことができるようになった。そのため、トラブル発生時にその予備日を運転に回すことができ、稼働率はさらに改善している。運転中の停止頻度も、2018年夏にリニアックのビームロスモニタの設定を見直すことで劇的に低減することができた。
田村 文彦; 山本 昌亘; 吉井 正人*; 杉山 泰之*; 發知 英明; Saha, P. K.; 吉本 政弘; 原田 寛之
JPS Conference Proceedings (Internet), 33, p.011021_1 - 011021_6, 2021/03
J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)ではビームのエネルギー広がりに由来するビームロスを避けるために、リニアック上流のビームチョッパーでビームの時間構造をRCSでの加速に適した幅に成形して入射している。チョッパーの動作のためのゲートパルスはRCSの加速高周波(RF)制御システムにより生成される。ディレイと幅を制御することで、RCSのRF電圧の適切な位相でビームを入射することができる。またJ-PARC独自の機能として、ビームの間引きがある。RCSではリニアックのビームをおよそ300周回連続で入射するが、連続ではなく間引いて入射することで、ビーム入射期間を変更することなく、強度を変更することができる。この機能を応用すると、1パルスだけ入射するようにパラメータを設定することで、非常に低いビーム強度で運転することもできる。この発表では、チョッパーゲートパルス生成の概要を示すとともに、自由度の高いゲートパルス生成を生かしたビーム調整結果について報告する。また、今後の機能向上についても議論する。
山本 昌亘; 古澤 将司*; 原 圭吾*; 長谷川 豪志*; 野村 昌弘; 大森 千広*; 島田 太平; 杉山 泰之*; 田村 文彦; 吉井 正人*
JPS Conference Proceedings (Internet), 33, p.011022_1 - 011022_6, 2021/03
J-PARCリング高周波システムではThales社製四極真空管TH589を使用し、2007年の運転開始以来長いものでは5万時間を超える運用を実現している。特に3GeVシンクロトロンにおいては、初期不良を除いてこれまで寿命を迎えた真空管は無い。TH589はトリウムタングステンを使用したフィラメントを用いており、トリウムの蒸発を抑えるために製作時に炭化を実施している。真空管の運用とともに脱炭化が進むため、フィラメントの抵抗値を測定すると徐々に下がっていくのが観測される。真空管メーカーからは、脱炭化を抑えるために定格電圧よりも低い値(10%)で運用することが推奨されている。しかし12年に及ぶ運用の経験で、電圧を低い値に固定していても抵抗値が下がるに従って電流値が増え、フィラメントの発熱が増えて脱炭化が促進されている様子が観測された。これはフィラメントの電圧だけに着目するのではなく、発熱を一定にする運用をすることが寿命を伸ばすためには必要であることを示唆しており、3GeVシンクロトロンにおいては定期的に電流値を下げる運用手法を確立した。