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関川 卓也; 松谷 悠佑; Hwang, B.*; 石坂 優人*; 川井 弘之*; 大野 義章*; 佐藤 達彦; 甲斐 健師
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 548, p.165231_1 - 165231_6, 2024/03
被引用回数:0 パーセンタイル:0.44(Instruments & Instrumentation)放射線の人体に与える影響の主な原因として、遺伝情報を担うDNAの損傷が考えられている。しかし、DNAが放射線損傷によりどのような分子構造変化を示すかは十分理解されていない。DNAに放射線を照射すると様々な種類のDNA損傷が形成されることが報告されていることから、我々のグループではDNAが受ける損傷と放射線によって引き起こされる様々なパターンのイオン化の関係を調べてきた。これまでDNAを模した剛体モデルを用いた簡易な体系における解析を行っていたが、人体への影響を考える上で重要と考えられるDNAの分子構造変化を解析するためにはより詳細な計算を必要とする。そこで、本研究では分子構造に基づいて電子状態を議論できる第一原理計算ソフトウェアOpenMXを用いてDNAの分子構造変化を明らかにすることを試みた。具体的には、放射線により1電子及び2電子が電離した状況のDNAを仮定し、最安定構造、バンド分散、及び波動関数を計算した。発表では、粒子・重イオン輸送計算コードPHITSを用いて計算した放射線の線種及びエネルギーとDNAの分子構造変化の関係とともに議論する。また、放射線物理・固体物理の双方の観点から、放射線がもたらすDNAの基礎物性変化(DNA損傷の最初期過程に相当)について議論する。
田代 信介; 大野 卓也; 天野 祐希; 吉田 涼一朗; 渡邉 浩二*; 阿部 仁
Nuclear Technology, 208(10), p.1553 - 1561, 2022/10
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Nuclear Science & Technology)グローブボックス(GB)火災における放射性物質の閉じ込め安全性の評価に寄与するために、代表的なGBパネル材料であるポリメチルメタクリエート(PMMA)およびポリカーボネート(PC)の燃焼試験を比較的大型の試験装置を用いて行った。閉じ込め安全性を評価するための重要なデータとして、燃焼物質から発生した煤煙の放出割合と粒径分布を得た。さらに、煤煙負荷による高性能エア(HEPA)フィルタの差圧(P)の上昇も検討した。その結果、PCからの煤煙の放出割合はPMMAの場合よりも約7倍大きかった。さらに煤煙粒子の体積負荷の効果を考慮することにより、煤煙負荷体積量が低い領域における差圧の上昇挙動は、燃焼物質の種類によらず統一的に表現できる可能性を見出した。
田代 信介; 内山 軍蔵; 大野 卓也; 天野 祐希; 吉田 涼一朗; 阿部 仁
Nuclear Technology, 208(7), p.1205 - 1213, 2022/07
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Nuclear Science & Technology)再処理施設の溶媒火災事故時の高効率粒子除去エア(HEPA)フィルタの目詰り挙動を調べた。本研究では、30%リン酸トリブチル(TBP)/ドデカン混合溶媒ならびにドデカンの燃焼速度と国内の実施設の換気系で用いられている多風量型HEPAフィルタの差圧変化を測定した。この混合溶媒の燃焼の初期段階では主にドデカンが、後期段階では主にTBPが燃焼することを確認した。また、混合溶媒燃焼の後期ではHEPAフィルタの差圧の急激な増加が生じることが分かった。浮遊粒子の経時的な放出割合において、未燃の粒子成分(TBP, TBPの分解による劣化溶媒ならびに無機リン化合物(PO))の割合の経時的な増加がフィルタの急激な差圧増加に影響したものと考えられる。混合溶媒燃焼時にHEPAフィルタの急激な差圧増加に至る前までの、差圧とHEPAフィルタへの浮遊粒子の負荷重量の関係を表す実験式の導出を行った。
吉田 尚生; 大野 卓也; 吉田 涼一朗; 天野 祐希; 阿部 仁
JAEA-Research 2021-011, 12 Pages, 2022/01
再処理施設における高レベル濃縮廃液の蒸発乾固事故について、ルテニウム(Ru)の挙動が着目されている。Ruは四酸化ルテニウム(RuO)のような揮発性の化学種を形成し、硝酸、水または窒素酸化物を含む共存ガスと共に施設外へ放出される可能性があるためである。本研究では、蒸発乾固事故に対する安全性評価に資することを目的として、事故時の蒸気凝縮を模擬した、水溶液に対する気体状RuOの液相への移行挙動を実験的に測定した。その結果、RuOのガス吸収は液相中の亜硝酸(HNO)濃度の増加により促進されたことから、化学吸収を伴う物質移動であることが示唆された。HNOを用いない対照実験では、温度が低いほど液相中のRu吸収率は大であったのに対し、HNOを用いた実験では、温度が高いほどRu吸収率が高かった。これは化学吸収に関与する化学反応が高温で活性化されたためであると考察される。
大野 卓也; 田代 信介; 天野 祐希; 吉田 尚生; 吉田 涼一朗; 阿部 仁
PLOS ONE (Internet), 16(1), p.e0245303_1 - e0245303_16, 2021/01
被引用回数:2 パーセンタイル:11.76(Multidisciplinary Sciences)火災時に原子力施設から漏れる放射性物質の量を評価する際には、グローブボックスの閉じ込め機能がどのように失われるかを考慮する必要がある。その一環として、この研究では、炎からの入熱によるグローブボックス材料の重量減少とそれに伴う熱分解ガスの放出を一貫して評価するモデルの構築を試みた。材料の重量減少はグローブボックスの壁材の減肉を示唆しており、熱分解ガスの放出は延焼が発生する可能性を示唆する。本研究では研究対象をグローブボックスパネルとして使用されるポリメチルメタクリレート(PMMA)とした。PMMAの熱重量分析では、熱分解による重量減少を予測するアレニウス式に代入するパラメーターを決定した。ここでは、PMMAの熱分解挙動が3つのステージに区分され、それぞれ62kJ/mol, 250kJ/mol、および265kJ/molの活性化エネルギーが導出された。また、ガス組成の定量分析により、PMMAから放出される熱分解ガスの組成は100%メタクリル酸メチルとして近似できることが明らかになった。この結果は、メタクリル酸メチルの放出量を上述のアレニウス式により推定できることを示唆する。このようなガス放出量の推定モデルの妥当性を確認するために、密封容器試験を実施した。この試験では、封入した材料が熱分解していくに従い容器内のガス分子の数が増加していく様を、内圧の変化を測定することで観察した。観察されたガス分子の増加挙動はアレニウスの式から推定されたものと同様であり、我々のモデルの有効性を示した。さらに、比較のためにビスフェノールAポリカーボネート(PC)についても同様の試験を実行した。PCの場合、密封容器試験で観察されるガス分子の数はモデルによる推定値よりも多くなる傾向が見られた。
吉田 尚生; 天野 祐希; 大野 卓也; 吉田 涼一朗; 阿部 仁
JAEA-Research 2020-014, 33 Pages, 2020/12
使用済核燃料の再処理施設における高レベル濃縮廃液の蒸発乾固事故を考慮した場合、ルテニウムは揮発性の化合物を形成し、廃液中の放射性元素の中で比較的高い放出割合となりうる重要な元素である。本研究では、蒸発乾固事故に対する安全性評価に資することを目的として、気体状四酸化ルテニウム(RuO(g))の化学形変化挙動に与える窒素酸化物(NOx)の影響を実験的に評価した。その結果、RuO(g)の分解速度は一酸化窒素や二酸化窒素を添加しない場合よりも添加した場合の方が遅く、これらのNOxはRuO(g)を安定化することが明らかになった。また、安定化効果は二酸化窒素の方が高かった。
吉田 尚生; 大野 卓也; 吉田 涼一朗; 天野 祐希; 阿部 仁
Journal of Nuclear Science and Technology, 57(11), p.1256 - 1264, 2020/11
被引用回数:8 パーセンタイル:71.58(Nuclear Science & Technology)再処理施設における高レベル濃縮廃液の蒸発乾固事故では、ルテニウム(Ru)の挙動が重要視されている。これはRuが四酸化ルテニウム(RuO)等の揮発性化合物を生成し、硝酸(HNO),水(HO)等の共存ガスとともに環境中に放出される可能性があるためである。この事故事象の安全評価に資するため、気体状RuO(RuO(g))の分解・化学形変化挙動を、温度や共存ガスの組成をパラメータとした様々な条件下で実験的に評価した。結果として、RuO(g)は気相条件によって多様な挙動を示した。乾燥空気や水蒸気を用いた実験ではRuO(g)の分解が観察された。一方、HNOを含む混合ガスを用いた実験では、RuO(g)の分解はほとんど観測されず、化学形を保持した。
大野 卓也; 田代 信介; 天野 祐希; 吉田 涼一朗; 阿部 仁
Nuclear Technology, 206(1), p.40 - 47, 2020/01
被引用回数:2 パーセンタイル:24.28(Nuclear Science & Technology)再処理施設におけるセル内溶媒火災事故は、近年の日本の規制基準において注目されている事象である。本研究では、再処理施設の換気系を模した試験系でリン酸トリブチル/ドデカン混合溶媒を燃焼させ、発生したエアロゾルをHEPAフィルタに負荷させた。その結果、ドデカンが混合溶媒中から焼失した後にフィルタ差圧が急激に上昇する現象が確認された。我々は、この現象を急速目詰まりと呼び、ドデカン焼失に起因する現象であると考えている。急速目詰まりとドデカン焼失の関係を把握することは、再処理施設における規制基準の構築にとって有用であると思われる。また、エアロゾルの分析結果からは、急速目詰まりが生じている間に生成されたエアロゾルは、粒径が大きく、未燃溶媒成分に富んでいることが明らかになった。これらの結果より、急速目詰まりの原因は、未燃溶媒の放出又は未燃溶媒蒸気と煤煙の相互作用によるものであると考えられる。総じて、この研究が示唆するところによると、火災事故時においてはこれまで予想されてきたよりも急速に換気系フィルタの目詰まりが進行する可能性があるといえる。
吉田 尚生; 大野 卓也; 天野 祐希; 阿部 仁
Journal of Nuclear Science and Technology, 55(6), p.599 - 604, 2018/06
被引用回数:7 パーセンタイル:52.79(Nuclear Science & Technology)再処理施設における高レベル濃縮廃液の蒸発乾固事故の際に、気体状ルテニウム化合物が環境中へ放出される可能性がある。この事故事象の安全評価に資するために、気体状ルテニウム化合物(四酸化ルテニウム)の移行挙動およびLeak Path Factorを実験的に評価した。施設内の移行経路を模擬したルテニウム気相部移行試験装置および事故時の気相組成を模擬した硝酸含有水蒸気を用いて試験を行った。対照実験として、乾燥空気および水蒸気条件を用いた試験を行った。結果として、ルテニウムは乾燥空気および水蒸気雰囲気下では移行経路に沈着した一方、硝酸含有水蒸気雰囲気下では沈着することなく移行経路を通過した。これらの結果は、気体状ルテニウムの移行挙動が気相条件の影響を受けることを示唆している。
大野 卓也; 渡邊 浩二; 田代 信介; 天野 祐希; 阿部 仁
Proceedings of 25th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-25) (CD-ROM), 7 Pages, 2017/07
福島第一原子力発電所事故以降、重大事故に対する対応策が日本における原子力施設の認可要件として求められている。セル内溶媒火災は重大事故の一つとして定義された。溶媒が燃焼すると煤を含むエアロゾルが発生する。これらは、換気系HEPAフィルタを目詰まらせ、差圧の上昇によって破損を生じさせる可能性がある。さらに、火災は、HEPAフィルタを通過する揮発性を有するガス状の放射性物質を放出させる可能性もある。これらの現象は、施設が有する閉じ込め機能の健全性及び公衆の被ばくを評価する上で重要である。我々は、溶媒火災に伴う目詰まり挙動とエアロゾルの放出挙動及び揮発性物質の放出挙動に着目して検討を行ってきた。本報告では、最近の研究における試験データと評価結果を報告する。
大野 卓也; 吉田 英一*; Metcalfe, R.*
Journal of Structural Geology, 87, p.81 - 94, 2016/06
被引用回数:4 パーセンタイル:14.04(Geosciences, Multidisciplinary)付加体の形成にともない割れ目充填鉱物が形成する。これらの鉱物は特定の地質学的環境のもとで形成したものであり、鉱物から付加時の環境を推定できる可能性がある。本研究では九州四万十帯の地下約140mから掘削されたボーリングコアに対し、地質学的観察および分析を実施した。その結果、鉱物の構造関係は、研究対象岩体の割れ目充填鉱物の形成時期が5つのステージに区分されることを示唆した。充填鉱物種の組み合わせから、岩体は深度数kmまで沈み込み、200300Cに到達したと推定される。その後、岩体が隆起すると、地表から地下80mまで達する酸性地表水の浸透が生じた。この酸性水により割れ目を充填する方解石が溶解することで、割れ目が現在の地下水の水みちとなったと考えられる。これらの知見は、充填鉱物が付加体地下環境の変遷を解析するための有用なツールとなることを示唆する。
半田 卓也; 江沼 康弘; 大野 幸彦*; 中村 裕樹*; 坂田 展康*; 串岡 清則*; 下地 邦幸*; 井上 智之*; 松本 岩男*
no journal, ,
ポンプ主軸の回転に伴ってポンプ主軸周りの液面が変動することについて、軸回転数や液面変動対策構造をパラメータとして流動解析を行い、液面変動状況とポンプ主軸に作用する流体力への影響を確認した。
江沼 康弘; 半田 卓也; 島崎 正則*; 大野 幸彦*; 吉田 和弘*; 早川 教*; 井上 智之*
no journal, ,
ポンプ主軸周りのカバーガス空間における自然対流について、熱遮蔽板とカバーガス対流防止板との隙間量等をパラメータとして周方向温度分布への影響評価を実施した。また、その結果を基にした対策構造改良案の効果を評価するとともに、軸変形による軸受との接触有無を確認した。
大野 卓也; 吉田 英一*
no journal, ,
地下水の水みちとなる透水性割れ目の性状と発達過程について、付加体堆積岩における研究事例は非常に少ない。地層処分において、将来付加体がサイトの候補岩種となることも考えられる。この背景のもと、本研究では九州南部に分布する四万十帯日向層群で掘削されたボーリングコアを調査し、割れ目充填鉱物および割れ目周辺母岩中の変質鉱物の薄片観察, SEM観察, XRD分析, WDX分析を行った。その結果、付加体中の割れ目の性状、透水性割れ目、炭酸塩鉱物による自己シーリングの様子が明らかとなった。本報告では、付加体岩石中のそれらの性状について報告する。
松村 大樹; 辻 卓也; 西畑 保雄; 日野 竜太郎; 谷口 昌司*; 竹中 啓恭*; 大野 瞳*; 喜多 知輝*; 田中 裕久*
no journal, ,
廃棄物長期保管容器内での可燃性ガスの濃度低減に用いる再結合触媒について、X線吸収分光(XAFS)法を用いて、水素再結合反応中のPd微粒子触媒の構造変化を「その場」時分割観測し、再結合反応の様式解明を目論んだ。また、実機環境を模擬した湿潤環境下における反応様式変化の観察も行った。酸化前処理を行った触媒に対して、水素・酸素混合ガス導入および引き続いての昇温過程における、連続XAFS測定にて得られたPd微粒子のPd-Pd配位数、その原子間距離、Q-massによって得られたガス成分の変化を導いた。乾燥条件下ではガス導入直後にPd-Pd配位数が増加し、室温で表面酸化膜状態まで触媒の還元反応が進行することが解った。一方湿潤条件下では、室温にて触媒試料の還元反応が進行せず、その後の昇温過程にて試料が還元することが見て取れた。水素・酸素の量の比較から、PdOの状態では触媒反応の進行が遅いことが理解され、湿潤環境下ではPdOの還元反応が遅れるがために、水素再結合反応が阻害されることが解った。湿潤環境が再結合触媒の反応・構造に与える影響を今後幅広く調べ、容器内における実条件下での再結合触媒反応の成立性を確認していきたい。
関川 卓也; Hwang, B.*; 石坂 優人*; 松谷 悠佑*; 川井 弘之*; 大野 義章*; 佐藤 達彦; 甲斐 健師
no journal, ,
デオキシリボ核酸(DNA)はグアニン、シトシン、アデニン、チミンの多様な組み合わせによって生物の遺伝情報を担い、放射線生物影響は主にこのDNAの損傷に起因する。本研究ではDNA損傷が定着するまでの過渡的な分子構造変化を理論的に調べるため、第一原理計算ソフトウェアOpenMXを用いて、ホールを生成したDNAを標的として構造変化、化学反応を担う部位の挙動を解析した。その結果、ホールがDNAのグアニン分子にトラップされる事象を再現することを確認し、実験結果を再現することを明らかにするとともに、新たにDNA糖鎖が激しい分子揺らぎを示すことがわかった。本研究成果は、放射線生物影響の最初期過程の解明に貢献すると期待される。
土田 駿*; 広瀬 雄介*; 関川 卓也; 大野 義章*; 摂待 力生*
no journal, ,
励起子絶縁体は、結晶中で電子と正孔が結合し、それらが集団的に振る舞うことで結晶全体が絶縁体化する性質を有し、新規物性として注目され始めている。本研究では、励起子絶縁体の候補物質の一つであるが合成自体が困難で物性解明が進んでいないTaNiSeに着目し、まずキャリアドープを目的とした元素置換試料(Ta1-xMx)NiSe (M=Ti, Zr, Hf)の育成に成功した。さらにチタンをタンタルと置換した場合(M=Ti)において、組成比xが0.06未満の試料の電気抵抗率は半導体的であるが、x=0.06以上では高温相の電気抵抗率が金属的に振る舞うことを明らかにした。本研究で示した相転移は、励起子絶縁体を実現するための新たな知見となりうる。
関川 卓也; Hwang, B.*; 石坂 優人*; 松谷 悠佑; 川井 弘之*; 大野 義章*; 佐藤 達彦; 甲斐 健師
no journal, ,
デオキシリボ核酸(DNA)はグアニン、シトシン、アデニン、チミンの多様な組み合わせによって生物の遺伝情報を担い、放射線生物影響は主にこのDNAの損傷に起因する。本研究では重粒子・イオン輸送コードPHITSと第一原理計算ソフトウェアOpenMXを用いて、DNA損傷が定着するまでの過渡的な分子構造変化を理論的に調べた。その結果、DNAの化学反応部位が遺伝情報を担うグアニン・シトシンからDNA全体を支える糖鎖に移行すること、新たにDNA糖鎖が激しい分子揺らぎを示すことを明らかにした。本研究成果は、放射線生物影響の最初期過程の解明に貢献する。
関川 卓也; 松谷 悠佑; Hwang, B.*; 石坂 優人*; 川井 弘之*; 大野 義章*; 佐藤 達彦; 甲斐 健師
no journal, ,
デオキシリボ核酸(DNA)はグアニン、シトシン、アデニン、チミンの多様な組み合わせによって生物の遺伝情報を担い、放射線生物影響は主にこのDNAの損傷に起因する。本研究ではDNA損傷が定着するまでの過渡的な分子構造変化を理論的に調べるため、は放射線輸送計算コードParticle and Heavy Ion Transport code System (PHITS)を用いて放射線によって炭素線によって生成されるホールの数を計算し、第一原理計算ソフトウェアOpenMXを用いて、ホールを生成したDNAを標的として構造変化、化学反応を担う部位を計算した。その結果、少ないホール生成ではDNAのグアニン分子にトラップされる実験結果を再現し、大量のホール生成ではDNAの糖鎖分子とグアニン分子の混成軌道にトラップされる。本研究成果は、放射線生物影響の最初期過程の解明に貢献すると期待される。
川井 弘之*; 関川 卓也; 尾崎 泰助*; 古家 真之介*; 大野 義章*
no journal, ,
第一原理電子状態計算ソフトウェアOpenMXは密度汎関数理論に基づく計算コードであり、主に物質の最安定構造や電子状態を求める際に利用される。本研究では、OpenMXを、通常は画像処理に使われるGPU (Graphics Processing Unit)を用いて、計算を高速化する手法開発を試みた。DNAにおけるベンチマーク計算の結果、同数のCPUを用いた計算時間との比較で約の2分の1にまで短縮する高速化に成功した。そこで、これまでOpenMXを用いて調べてきたmodified-DNA(塩基対を構成する原子の一部を遷移金属や有機分子で置換したDNA)について、本研究で開発した手法を適用し、高速化の程度を検証した。得られたmodified-DNAの電子状態など、詳細は当日発表する。