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新井 栄揮; 玉田 太郎; 岡村 好子*; 一二三 恵美*; 宇田 泰三*; 黒木 良太
no journal, ,
インフルエンザウイルスの感染は、ウイルス表面の糖蛋白質・ヘマグルチニン(HA)が宿主細胞膜上のガングリオシドやシアル酸含有糖蛋白質受容体へ結合することで始まる。HAは非常に変異しやすく、これがインフルエンザ予防を困難にしている。われわれは、H1型(スペイン風邪,ソ連風邪)やH2型(アジア風邪)ウイルスにおけるHAのアミノ酸配列中に変異しない保存領域を見いだし、その領域に特異的に結合・分解するHA1-2モノクローナル抗体(HA1-2mAb)を開発した。この抗体は抗原を特異的に認識し分解する酵素活性を有しており、「抗体酵素」として新規医薬品・検査診断薬・バイオセンサ開発などへの応用を進めている。われわれはHA1-2mAbの触媒機構を明らかにするために、HA1-2mAb由来Fabと抗原ペプチドの複合体のX線結晶解析を行った。抗体をパパイン消化しFabを調製した後、抗原ペプチド(HAのアミノ酸配列保存領域を含み、18アミノ酸残基から成る)を混合して複合体を調製し、結晶を作製した。X線回折測定では最大分解能2.9, completeness 96.8%, R-merge 6.6%の回折データを取得した。このデータを用いて分子置換法による構造解析を行ったところ、(1)抗体酵素由来のFabは他のFabとほとんど同じ立体構造をとることや、(2)FabのH鎖とL鎖間のCDR領域付近にペプチドが存在することが確認された。現在触媒基の候補となるアミノ酸残基の同定を実施している。