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岡部 晃大; Liu, Y.*; 大谷 将士*; 守屋 克洋; 柴田 崇統*; 地村 幹*; 平野 耕一郎; 小栗 英知; 金正 倫計
JPS Conference Proceedings (Internet), 33, p.011011_1 - 011011_6, 2021/03
J-PARC大強度陽子加速器では設計出力値である1MWビームパワーのビーム調整を行っている。線形加速器におけるMEBT(Medium Energy Beam Transport)1は低エネルギーでの大強度ビーム輸送系であり空間電荷力が支配的な状況でビームを輸送、及び、下流加速器であるDTLに整合したビームに成型する機能を持つため、J-PARC加速器の出力を安定化する上で最も重要な機器である。そこで、ビーム供給安定化向上のため、MEBT1より上流のイオン源やRFQ等の機器パラメータとMEBT1でのビームパラメータとの関連性を調査した。その結果、MEBT1に入射するビームの挙動は上流機器の設定パラメータと関連があり、その関係はイオン源の数値シミュレーション結果をもとにしたビーム力学理論から解釈できることが今回初めて判明した。さらに、本結果をもとにシミュレーションによる解析を行い、現状のMEBT1では下流側DTLとのビーム整合を行う上でビームモニターの数が不足しており、それらの設置個所を含めて再検討が必要なこと、バンチャー空洞の数を増やしてチョッパーシステム及びDTLとのビーム整合を両立可能な状態にすることによりさらなるビーム供給の安定化が見込めること、などの課題がはっきりと分かった。本発表にてそれらビーム実験結果を報告する。
北村 遼; 二ツ川 健太*; 林 直樹; 平野 耕一郎; 小坂 知史*; 宮尾 智章*; 守屋 克洋; 根本 康雄*; 小栗 英知
Proceedings of 16th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (インターネット), p.51 - 54, 2019/07
J-PARCリニアックにおいてピーク電流60mAを超える大強度Hビームを供給する場合、高周波四重極リニアック(RFQ)後のビーム輸送系における縦方向測定と調整はビームロスとエミッタンス増大の削減のために重要である。大強度3MeVのHビームのバンチ幅測定にはエネルギー損失が小さくかつ高温耐性のあるカーボンナノチューブ(CNT)ワイヤーを用いた新しいバンチシェイプモニター(BSM)が必要である。しかし二次電子を引き出すためCNTワイヤーに高圧印加すると、放電が電圧印加の妨げとなる。それゆえ安定したバンチ幅測定のためには放電を抑制する必要がある。エミッタとしてのCNTの特性を考慮してワイヤー長を短くしたところ、-10kV高圧がワイヤーに印加できた。本講演ではこのBSMの最新の開発状況と将来の展望を報告する。
北村 遼; 林 直樹; 平野 耕一郎; 近藤 恭弘; 守屋 克洋; 小栗 英知; 二ツ川 健太*; 宮尾 智章*; 大谷 将士*; 小坂 知史*; et al.
Proceedings of 10th International Particle Accelerator Conference (IPAC '19) (Internet), p.2543 - 2546, 2019/06
バンチシェイプモニター(BSM)は縦方向位相空間分布を測定するための重要な装置の一つである。例えば、J-PARCリニアックではタングステンワイヤーを用いたBSMが加速空洞間のバンチ形状を測定するためACSセクションに3台導入されている。しかしながら、このBSMではRFQとDTLセクション間のビーム輸送系における3MeVのHビームのバンチ形状を測定することは、ビーム中心部でワイヤーが断線してしまうために困難である。そこで3MeVのHビームのバンチ形状を測定できるよう、カーボンナノチューブワイヤー(CNT)を用いた新たなBSMを開発している。CNTワイヤーに-10kVの高圧を印加するには細心の注意を要する。ワイヤーからの放電を抑制しつつBSMを運転するためにいくつかの対策を実施した。この講演ではCNT-BSMの最新の開発状況と将来の展望を報告する。
柴田 雅博; 澤田 淳; 舘 幸男; 牧野 仁史; 若杉 圭一郎; 三ツ井 誠一郎; 北村 暁; 吉川 英樹; 小田 治恵; 石寺 孝充; et al.
JAEA-Research 2014-030, 457 Pages, 2015/03
原子力機構(JAEA)がこれまで蓄積してきた技術やノウハウを、原子力発電環境整備機構(NUMO)が今後行う精密調査地区の選定等の処分事業に適用できるよう、実施主体の視点に沿って実用化を図っていくための具体的な考え方と進め方を策定すること等を目的として、2011年度よりJAEAとNUMOは以下の3つのテーマについて共同研究を進めている。(1)水理の観点からみた母岩の適性を評価する方法に関する検討: 水理地質構造モデル構築手法の事例調査に基づいて、得られた知見を評価ツリーとして整理し、モデルの不確実性やそれらの評価項目への影響等についての検討を行った。(2)シナリオの構築方法に関する検討: 状態設定手順を実務的な観点から、さらに見直すとともに、セメント影響とガラス溶解挙動について、知見の体系的な整理と不確実性の影響について解析的検討を行った。(3)核種移行パラメータの設定方法に関する検討: 母岩の分配係数を対象に、国内外の事例調査をもとに複数の設定手法を整理し、堆積岩及び花崗岩への適用を通じ妥当性や課題を確認した。溶解度について、溶解度制限固相の決定を含む設定手法を検討し、主要核種への適用を通じ妥当性や課題を確認した。
小嵐 淳; 守屋 耕一*; 安藤 麻里子; 松永 武; 藤田 博喜; 永岡 美佳
Scientific Reports (Internet), 2, p.1005_1 - 1005_5, 2012/12
被引用回数:40 パーセンタイル:70.65(Multidisciplinary Sciences)福島第一原子力発電所事故に伴って放出された放射性セシウムによる環境及び公衆への影響は、森林表層土壌における放射性セシウムの移動性に大きく依存する。われわれは、福島市内の森林表層土壌において、微生物及び非生物的吸着によって保持されている潜在的に移動性の高い放射性セシウムの量を調査した。土壌有機物や粘土粒子が多く、陽イオン交換容量の大きい土壌において、放射性セシウムの硫酸カリウム溶液による高い抽出率が見いだされた。一方、すべての土壌において微生物バイオマスの存在を確認したが、バイオマスを死滅させた後の抽出率の増加は見られなかった。これより、土壌微生物自体が、放射性セシウムを移動性の高い状態で保持することへの寄与は小さいことが明らかになった。
河野 恭彦; 荻野 晴之*; 吉富 寛; 藤原 慶子*; 守屋 耕一*
FBNews, (410), p.7 - 12, 2011/02
本稿では、(1)われわれ著者らが所属する日本保健物理学会若手研究会と学友会の紹介、(2)放射線審議会基本部会における国際放射線防護委員会2007年勧告の国内制度等への取り入れにかかわる検討の中から、「医療被ばく」,「緊急時被ばく(参考レベル)」,「女性の線量限度」,「健康診断」の4テーマを取り上げ、その提言の取りまとめにかかわる最新情報を要約するとともに基本部会の提言を踏まえたわれわれ若手の見解、そして(3)国際基本安全基準(BSS)について、現在までの改訂状況を踏まえつつ、BSSドラフト4.0に日本からの意見がどのように取り上げられてきたのかを、「ラドン被ばくにおける喫煙者の肺ガンリスクの相乗効果」,「計画被ばく状況が適用される自然起源の放射性物質からの被ばく」,「ラドンの参考レベルの表現」の3点からわれわれ若手の意見とともに述べさせていただく。今後次回の法令改訂時において、われわれも放射線防護の専門家の1人として、より積極的に法令改訂作業に関与していきたいと考える。
守屋 耕一*; 森泉 純*; 山澤 弘実*; 小嵐 淳; 安藤 麻里子
KURRI-KR-153, p.53 - 59, 2010/03
森林生態系における炭素循環評価には、主要な炭素貯蔵庫でCO放出源である土壌有機物の評価が不可欠である。本研究では、土壌有機物を長期間培養してCO放出速度の変化を測定し、有機物無機化モデルにフィッティングすることで、土壌有機物を易・中・難分解性の3つに分けて評価した。結果より、土壌に存在する有機物のほとんどは1年以上残留する難分解性であり、表層に中分解性炭素がわずかに存在することが明らかとなった。分解により放出されるCOの安定同位体比(C)は、培養開始後1週間で急激に減少する易分解性炭素が有機物自体よりも高いC値を持ち、その後緩やかに分解される中分解性炭素は逆に有機物自体よりも低いC値を持つ経時変化を示した。これらの結果は、分解の基質である化合物が培養の経過に伴い変化していることを示唆しており、今後有機物分解過程の解明に炭素同位体を利用できる可能性を示すものである。
守屋 耕一; 森泉 純*; 山澤 弘実*; 飯田 孝夫*; 小嵐 淳; 安藤 麻里子
no journal, ,
土壌有機物分解過程と炭素同位体変化の関係を明らかにすることを目的として、2つの異なる森林土壌において、土壌有機物とその分解により生成するCOの安定炭素同位体比の測定を行った。結果として、下層の古い有機物ほどCの割合が高いこと、分解により放出されるCOは土壌有機物そのものよりもCの割合が高いこと、これらが植生の異なる森林で同様に見られる現象であることが明らかとなった。土壌有機物の安定炭素同位体比が、分解過程における同位体効果や、供給源である植物体を構成する有機化合物間の同位体比の相違により変化すると考えられる。
守屋 耕一*; 森泉 純*; 山澤 弘実*; 小嵐 淳; 安藤 麻里子
no journal, ,
土壌から大気へのCOフラックスを供給源ごとに分けて評価することは、森林内の炭素循環を理解するうえで重要である。供給源の一つである土壌有機物分解に由来したCOの炭素同位体比の推定方法を検討するため、土壌有機物(SOM)及び、一定温度で培養することで放出されたCO(SOMD-CO)の炭素同位体比の測定を行った。ごく表層を除いてSOMとSOMD-COの放射性炭素同位体比は異なり、特に深い層ではその差が大きくなった。これは、SOM全体よりも新しい炭素が分解に使用されていることを示す。また、培養の経過に伴いCO放出速度とその同位体比が大きく変化することが明らかとなった。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 石塚 成宏*; 角野 貴信*; 守屋 耕一*; 中西 貴宏
no journal, ,
地球温暖化により、土壌に貯留した炭素の放出の加速が危惧されているが、土壌の炭素貯留メカニズムの解明の遅れにより、その規模やタイミングは不明のままである。われわれは、日本国内の土壌特性や植生が異なる4つの森林サイトで土壌を採取し、化学分画とC同位体分析を組合せた手法により、土壌炭素を滞留時間の異なる炭素プールに分割した。森林サイトごとに、炭素貯留量のみならず、滞留時間の分布が大きく異なっていることを明らかにした。ターンオーバーが比較的長い(100-1000年)炭素の貯留量は、土壌の鉱物学的特性(特にAl-腐植複合体の形成)によって、ターンオーバーが速い(数十年程度)炭素の貯留量は、森林サイトの年間平均気温によって規定されている可能性を見いだし、土壌が将来の温暖化によって異なる応答を示すことを明らかにした。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 石塚 成宏*; 角野 貴信*; 守屋 耕一*; 中西 貴宏
no journal, ,
土壌は陸域生態系における最大の炭素貯蔵庫であり、絶えず大気と炭素の交換を行っているため、将来の気候変化により炭素の発生源・吸収源のどちらにもなりうる。土壌に蓄積する炭素がどのように振舞うかを予測するためには、土壌がどのくらい長く炭素を貯留しているかを定量的に明らかにする必要がある。われわれは、国内の4つの森林サイトから採取した土壌に対して、有機物の分画と放射性炭素分析を行い、土壌炭素の数年から数千年の滞留時間を推定し、土壌ごとに異なる滞留時間分布、すなわち異なる分解性を持つことを定量的に明らかにした。土壌の全炭素貯留量は、滞留時間が100年以上の炭素貯留量と正の相関がある一方、100年未満で代謝回転する炭素との間には相関性がないことを見いだした。この結果は、炭素貯留量が多い土壌が必ずしも高いCO放出ポテンシャルを有しているわけではないことを示唆している。
守屋 耕一*; 小嵐 淳; 安藤 麻里子; 森泉 純*; 山澤 弘実*; 平井 敬三*
no journal, ,
土壌有機炭素は陸域で最大の炭素リザーバーであり、土壌有機炭素分解は大気中二酸化炭素濃度に大きな影響を与えることから、土壌有機物の分解特性を評価することは重要である。本研究では土壌培養とC分析を組合せ、三成分一次元モデルを用いることで、土壌有機物を滞留時間の異なる三成分に分別した。その結果、数週間の滞留時間を持つ成分は全炭素量の約1%であり、数年の滞留時間を持つ成分は全炭素量の30-50%を占めていることが明らかになった。また前者の成分は培養初期の炭素放出量に大きく寄与し、後者の成分は全培養期間を通し大きく寄与していた。最も滞留時間の長い成分は、全炭素量の50-70%を占めていたが炭素放出量への寄与は10%程度であった。この結果から、比較的速く分解されるこれらの成分の挙動を正確に評価することが、温暖化に対する土壌の応答を評価するうえで重要である。
安藤 麻里子; 小嵐 淳; 守屋 耕一; 中西 貴宏; 石塚 成宏*; 平井 敬三*
no journal, ,
土壌呼吸は陸域から大気へのCO放出の主要な経路である。地球温暖化による土壌呼吸の増加が懸念されることから、その正確な評価が求められている。アジアフラックス観測サイトの一つ(岩手県安比森林気象試験地、ブナ林)を対象として、土壌呼吸・土壌有機物・大気中COの炭素同位体比( Cと C)を測定した。得られた結果より土壌呼吸起源を評価し、土壌呼吸の季節及び空間変動要因を推定した。各土壌呼吸起源(リター分解,土壌有機物分解,根呼吸)の寄与率は異なる季節変動を示し、地温の上昇に対するCO放出速度の増加率は、土壌有機物分解が最も高く、次いで根呼吸であった。土壌呼吸速度と炭素同位体比の分布の関係から、春期はリター分解の増減が土壌呼吸の主要な変動要因であると考えられた。夏期には土壌有機物分解が空間変動に寄与することが示唆されたが、土壌呼吸速度の空間分布パターンは春期と夏期で同じであることから、その変動要因はリター量の空間分布に関連していると考えられる。
河野 恭彦; 荻野 晴之*; 藤原 慶子*; 守屋 耕一*; 藤通 有希*; 小池 裕也*
no journal, ,
日本保健物理学会では、若手研究会(以下、若手研)が1988年度に、学友会が2005年度にそれぞれ発足し、放射線安全に関する研究分野の若手や学生がさまざまな活動を通じて情報交換を行っている。2010年10月現在での会員数は、若手研が44名,学友会が24名である。本発表では、若手研と学友会の活動状況を報告するとともに、「放射線安全」にかかわる若手の交流が一層深まるよう働きかけていきたい。
守屋 耕一; 小嵐 淳; 安藤 麻里子; 森泉 純*; 山澤 弘実*; 石塚 成宏*
no journal, ,
土壌有機炭素(SOC)は陸域生態系の中で最大の炭素リザーバーであり、その分解によるCO放出は大気中CO濃度に大きく影響するため、SOCの分解プロセスを理解することは重要な課題である。本研究では、国内4地点の森林サイトで採取した土壌を実験室内にて異なる温度で培養することで、各土壌からのCO放出の温度変化に対する応答を調べた。その結果、SOC分解の温度応答性Q値(温度が10C上昇した際のCO放出率が何倍になるかという値)が培養の時間経過とともに3から4へ増加した。これは分解される基質の変化に伴ったものと考えられる。また土壌乾燥質量あたりのCO放出率と土壌乾燥質量あたりのSOC量の測定結果より、SOC分解の速さが土壌中のSOCの量によらないことが示唆された。
守屋 耕一; 小嵐 淳; 安藤 麻里子; 森泉 純*; 山澤 弘実*; 石塚 成宏*
no journal, ,
土壌有機炭素(SOC)は陸域生態系の中で最大の炭素リザーバーであり、その分解によるCO放出は大気中CO濃度に大きく影響するため、SOCの分解プロセスを理解することは重要な課題である。本研究では、国内4地点の森林サイトで採取した土壌を実験室内にて異なる温度で培養することで、各土壌からのCO放出の温度変化に対する応答を調べた。その結果、SOC分解の温度応答性Q値(温度が10C上昇した際のCO放出率が何倍になるかという値)が培養の時間経過とともに3から4へ増加した。これは分解される基質の変化に伴ったものと考えられる。また土壌乾燥質量あたりのSOC量や観測サイトの年平均気温の比較から、SOCの分解性と土壌中のSOCの量やその土壌が形成された地点の年平均気温との間に関連性は見いだせなかった。
守屋 耕一; 小嵐 淳; 安藤 麻里子; 森泉 純*; 山澤 弘実*; 平井 敬三*
no journal, ,
土壌有機炭素(SOC)は陸域生態系の中で最大の炭素リザーバーであり、その分解によるCO放出は大気中CO濃度に大きく影響するため、SOCの分解プロセスを理解することは重要な課題である。本研究では、土壌の長期間培養と放射性炭素同位体分析を組合せることで、SOCを平均滞留時間(MRT)別に三つのプール(Active, Slow, Resistant)に分割した。その結果、MRTが1年未満のActiveプールは全SOCプールの1%程度、MRTが1年以上100年未満のSlowプールは20-50%であった。Slowプール及びResistantプールのMRTは土壌の深さとともに増加しており、土壌深部ほど分解抵抗性が高いことを示唆していた。しかしながら、SOC分解の温度感度はMRTの増加とともに増加していることが明らかになった。これらの結果は、土壌に存在する有機物は、その分解性に依存して温度感度が異なることを示しており、現在のSOC分解の様態は、将来の温暖化に伴って大きく変化することを示唆している。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 石塚 成宏*; 角野 貴信*; 守屋 耕一*; 中西 貴宏
no journal, ,
土壌有機物中の放射性炭素(C)は、放射壊変や過去の大気圏核実験による大気中濃度の増加とその後の減少を反映した分布を示すことから、土壌有機物の滞留時間(分解性の指標)を推定するトレーサーとして有用である。われわれは、国内の植生や土壌特性の異なる森林土壌のC同位体分析を通して土壌有機物の分解性を定量化し、土壌に貯留する炭素が将来の温暖化に伴ってどのように放出されうるかを解明しようと試みている。本発表では、土壌有機物の動態解明におけるCのトレーサー利用例及び得られた結果について紹介する。
守屋 耕一; 小嵐 淳; 安藤 麻里子; 石塚 成宏*; 森泉 純*; 山澤 弘実*
no journal, ,
土壌有機炭素(SOC)は陸域生態系の中で最大の炭素リザーバーであり、その分解によるCO放出は大気中CO濃度に大きく影響するため、SOCの分解プロセスを理解することは重要な課題である。本研究では、国内4地点の森林サイトで採取した土壌を実験室内にて異なる温度で培養し、各土壌のCO放出率,温度依存性,炭素同位体比の観点での基質変化及びそれらの相互関係を調べた。その結果、CO放出率と温度依存性には強い負の相関が認められた。炭素同位体比は、CO放出率と温度依存性がほぼ一定になった後も変化を続けていた。これはCO放出率及び温度依存性の変化は、安定炭素同位体比の観点で見た基質の変化のみに依存しているわけではないことを示唆している。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 石塚 成宏*; 角野 貴信*; 守屋 耕一; 中西 貴宏
no journal, ,
土壌に有機物として大量に貯留する炭素の、将来の気候・環境変化に伴う応答を正しく予測するために、土壌有機物の分解性と、それを規定するプロセスの解明が強く望まれている。土壌有機物中の放射性炭素(C)は、放射壊変や1950-60年代の大気圏核実験に伴う大気中濃度の変化を反映した分布を示すことから、土壌有機物の分解性を推定するトレーサーとして有用である。われわれは、国内の植生や土壌特性の異なる森林土壌に対して、有機物分画とC同位体分析を行うことで、土壌有機物の分解性を定量化し、土壌ごとに有機炭素の貯留量のみならず、その分解性が異なることを明らかにした。さらに、森林土壌表層における分解性の低い有機炭素の大きな蓄積は、土壌の鉱物学的要因によるものである一方、分解性の高い有機炭素の量はサイトの気候学的要因によって規定されている可能性を示した。