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小泉 均*; 田口 光正; 小嶋 拓治; 市川 恒樹*
JAERI-Review 2003-033, TIARA Annual Report 2002, p.143 - 144, 2003/11
数平均分子量60,000のポリジメチルシロキサンに220MeV C,350MeV Ne、及び460MeV Arイオンビームをそれぞれ照射した。試料はイオンの飛程より十分厚くした。照射後の試料をヘキサンに溶解し、メンブレンフィルターでろ過し、不溶分の重量を測定した。ポリジメチルシロキサンの線照射ではゲル化線量以下においてゲルは生成せず、ゲル化線量以上から重量が急激に増加し、ゲル分率は1に近づく。一方、イオンビーム照射の場合は、イオンのそれぞれの飛跡に沿ってゲル細線が生成するため重量はフルエンスに比例する。ゲル細線一つあたりの収量はC,Ne,Arイオンそれぞれ1.1x10 g ion, 4.8x10 g ion,2.0x10 g ionとなる。ここでゲル細線を円筒であると仮定すると、その半径はそれぞれ1.1nm,4.8nm、 及び6.0nmであった。
小泉 均*; 市川 恒樹*; 田口 光正; 小林 泰彦; 南波 秀樹
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 206, p.1124 - 1127, 2003/05
被引用回数:8 パーセンタイル:50.24(Instruments & Instrumentation)アラニン,アジピン酸及びポリジメチルシロキサンについて重イオン照射効果を調べた。アラニン及びアジピン酸に線,220MeV C,350MeV Ne、及び175Mev Arイオンを照射したところ、生成したラジカルのG値は、この順で減少した。線照射の場合、これらラジカルのG値は高線量照射で減少する。トラック内の局所的な高線量領域が、重イオン照射でのG値の減少の原因と考えられる。一方、ポリジメチルシロキサンにおいては、この高線量領域においてゲル化が起こり、重イオン飛跡に沿った細線ができることが確認された。
小泉 均*; 田口 光正; 小林 泰彦; 市川 恒樹*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 179(4), p.530 - 535, 2001/09
被引用回数:7 パーセンタイル:48.68(Instruments & Instrumentation)TIARA施設AVFサイクロトロンによる460MeV,Arイオンを照射したポリジメチルシロキサンから、ヘキサンに不溶な成分がメンブランフィルターにより分離された。不溶物の質量は照射したイオン数に比例した。このことから、トラック内の高い線量領域でゲル化が起こり、個々のトラック内でゲル細線が生成したと考えられる。ゲル細線の質量は照射前のポチジメチルシロキサンの分子量(Mn)に比例し、ゲル細線の半径はMnの増加に伴い増大した。また、ゲル化線量はMnの増加に伴い低下した。ゲル細線の半径は低LET放射線照射時の架橋のG値から数nmと見積もられた。この値はゲル化線量とトラック内線量分布との関係から良く説明できる。
小泉 均*; 市川 恒樹*; 田口 光正
JAERI-Review 99-025, TIARA Annual Report 1998, p.93 - 94, 1999/10
イオンビームはその飛跡にそって高密度にエネルギー付与する。これまでの結果からイオントラック内では数十kGyから数MGyが局所的に照射された効果が引き起こされていることがわかった。この線量は、放射線架橋型高分子のゲル化線量に達している。イオントラック内の高線量の部分ではゲル化が起こり、イオントラックに沿ってゲルの曲線が生成する。この細線の形状からイオントラック内の化学反応に関する情報が得られるはずである。ポリジメチルシロキサンを脱気後6mのハーバーフォイル窓付きの金属製セルに入れ、窓を通して350MeV Ne,175MeV Ar,520MeV Krイオン照射した。照射後の試料をヘキサンに溶解し、メンブランフィルターでろ過した。ろ紙上に残ったものを洗浄後、ろ紙をヘキサンに浸し超音波洗浄器にかけることで不溶成分を分散させ、マイカ上に滴下した。不溶物は、原子間力顕微鏡及び走査電子顕微鏡で観察したところ、幅数十nmの不溶物が観測された。
小泉 均*; 田口 光正; 南波 秀樹; 市川 恒樹*; 吉田 宏*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 132, p.633 - 638, 1997/00
被引用回数:5 パーセンタイル:46.16(Instruments & Instrumentation)固体アジピン酸の線、175MeVAr,220MeVC,及び350MeVNeイオン照射によるラジカル生成をESR法によって測定した。イオン照射によるラジカル生成収率はクリティカルフルエンス(Arイオンの場合は510ions/cm,C及びNeイオンの場合は10ions/cm)以下では一定であった。一方、それ以上のフルエンス領域では、イオンフルエンスの増加にともない減少した。ラジカル生成のG値はそれぞれCイオンで5.6、Neイオンで2.3、Arイオンで0.65であった。アラニンと比べてアジピン酸ではより大きな線質効果が得られたが、これはラジカル生成における収率の線量依存性の違いによって説明される。
小泉 均*; 市川 恒樹*; 吉田 宏*; 南波 秀樹; 田口 光正; 小嶋 拓治
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 117, p.431 - 435, 1996/00
被引用回数:20 パーセンタイル:82.8(Instruments & Instrumentation)175MeVのAr、460MeVのAr、220MeVのCならびに350MeVのNeのイオンを固体アラニンに照射し、生成するラジカルをESRで調べた。ラジカルの収量(入射イオンあたりのラジカル数)は、臨界フルエンス(Ar:10、C:10、Ne:510イオン/cm)までは一定であり、それ以上ではイオンフルエンスの増加に伴って減少した。低フルエンスでの一定収率の値より求まるラジカル生成のG値は、LETの単純な関数ではなく、イオントラックの横方向の線量分布で説明できる。イオントラックの形を単純な円筒形と仮定することにより、G値からイオントラックの半径を見積もることができる。その値は8~25nmで、0.5~3MeVのHやHeのイオン照射・半径2~5nmよりも大きかった。線照射のアラニンからの線量-収率曲線の関係を用いて、円筒形トラックでシミュレーションして得られたフルエンス-収率曲線は、実験値とよく一致した。
山口 大輔; 小泉 智; 小島 均*; 磯山 亮*; 石渡 恭之*; 児玉 弘人*; 武田 久徳*; 蕗田 仁*; 高嶋 良行*
no journal, ,
樹脂の高機能化及び高付加価値化を図るために充填剤を混合し複合化した材料のナノ構造を中性子小角散乱により調べた。充填剤の分散状態をより正確に把握し、精密に制御するための構造評価の手法としてTEM, SEM, AFMなどの顕微鏡観察は非常に強力な手法であるが、顕微鏡法だけですべてが理解できるとは言い難い。顕微鏡法と相補性をなす構造評価法の一つとして中性子小角散乱法を用いた。本手法により、顕微鏡では捉え難い、3次元空間内における物体の連続性や大きさ等の分布に関する統計的知見を明らかにした。発表ではポリプロピレン樹脂中にタルクと酸化チタンの2種類の充填剤を分散させたナノコンポジット材料において、充填剤の濃度の違いによって、散乱強度の波数に対するベキ指数が顕著に変化することを見いだした一方で、充填剤の粒径の分布でもその散乱挙動をよく説明できることが明らかになったので、両方の解析の比較検討を行った。
小野田 忍; 山本 卓; 阿部 浩之; 花屋 博秋; 大島 武; 谷口 尚*; 寺地 徳之*; 渡邊 賢司*; 小泉 聡*; 神田 久生*; et al.
no journal, ,
量子情報素子や磁気センサーへの応用,超伝導キュービットとのハイブリッド系が注目されている窒素-空孔(NV)センターでは、電子スピンを持つ不純物窒素や欠陥による双極子場,C核スピンの双極子場,他のNVセンターの双極子場など、コヒーレンス時間を短くする要因をできるだけ排除して、最適の濃度あるいは配列を作成するエンジニアリングが求められる。窒素濃度,同位体濃度の異なる結晶にイオン照射や熱処理,高温電子線照射を行い、それぞれの応用に対して最適のものを求める試みを行った。熱処理を800から1200Cまで変化させてNVセンターやそれ以外の欠陥を調べた結果、1000Cの熱処理が最も優れていることを明らかにできた。また、マイクロビームとシングルイオンヒット技術を利用して、量子情報素子の最も基本的なNVセンターのペアを作成することに成功した。さらに、空孔が格子中を動き回るような高温(700C)の電子線照射を用いることにより、NVセンターの広い濃度領域(230ppm)に渡って、コヒーレンス時間が、残存する窒素の双極子場の搖動ではなく、NVセンター同士の双極子双極子相互作用で決まるような作成法に成功した。
粟飯原 はるか; 竹内 正行; 小泉 務; 村尾 綾子*; 三村 均*
no journal, ,
再処理工程内で発生し得る不溶解性残渣(スラッジ)について、工程の安定運転のためにその性状を把握する必要がある。高レベル廃液の析出物性状を調査するため、これまでにコールド条件でMo, Zr, Teを中心とした3, 5, 10元素を含む模擬廃液から析出した沈殿物の調査を行った。本件ではより実際の条件に近づけるため高レベル廃液に含まれる28元素系のコールド模擬溶液を用いて加熱試験を行い、析出したスラッジの詳細な分析から析出挙動や構成物についての評価を実施した。その結果28元素系では速やかに析出が進行した。また、加熱中の溶液濃度の減少及びXRD分析の結果から析出物の主要化合物は3, 5元素系と同様にモリブデン酸ジルコニウム(ZMH)であることが確認された。しかしFT-IRやラマン分光からはZMH以外の沈殿も示唆され、3, 5元素系に比べTeの析出割合の減少が見られた。析出物中のMoとZrの割合もZMHの比とは異なるため、3, 5元素系ではTeはZMHとともに析出し、28元素系では析出物中のZMHの割合が低下したことから併せてTeの析出割合も低下した可能性がある。
磯谷 順一*; 寺地 徳之*; 山本 卓*; 谷口 尚*; 渡邊 賢司*; 小泉 聡*; 小野田 忍; 阿部 浩之; 大島 武; 梅田 享英*; et al.
no journal, ,
炭化ケイ素(SiC)やダイヤモンドはパワー半導体素子としてだけでなく、単一欠陥を利用した量子ビットとしての応用も期待されている。本講演では、SiC及びダイヤモンド中の欠陥についてレビューする。特に、SiCに比べて量子ビット応用が進んでいるダイヤモンドについては、光検出磁気共鳴(ODMR)やフォトルミネッセンス(PL)測定から得られた最近の結果について述べる。ダイヤモンド中の窒素-空孔(NV)センターは、たった1個しかなくてもODMRやPLによって検出することが可能である。この特徴を活かして、本研究では、極低温下において光の波長を変えながらPLを測定し、NVセンター周囲の結晶格子の歪みを検出することに成功した。また、ODMRによってダイヤモンド中のNVとNVを区別して測定し、イオン注入によって形成されたNVセンターの生成収率を得ることにも成功した。以上のように、単一のNVセンターを検出できる特徴を利用し、ダイヤモンド結晶格子の状態を観察できることを示した。