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平賀 晴弘*; 山口 泰男*; 丸山 龍治; 奥 隆之; 猪野 隆*
波紋, 28(3), p.144 - 149, 2018/08
サイエンスの様々な分野において偏極中性子散乱の果たす役割は益々増大しており、J-PARC MLFでの偏極中性子ビーム利用の高度化のため原子力機構等では偏極スーパーミラーやHeスピンフィルターの高性能化に関する研究開発を進めている。本稿では、当該分野に馴染みのないMLFユーザーや当該分野の初心者を対象とし、中性子ビーム偏極手法の基本的な原理や研究開発の現状について総説する。
井上 和子*; 山口 泰男*; 石井 慶信; 山内 宏樹; 宍戸 統悦*
Materials Science Forum, 539-543, p.3267 - 3272, 2007/00
室温付近にキュリー点と一致するマルテンサイト変態点を有するホイスラー型NiMnGa系合金について、単結晶のマルテンサイト変態過程に対する磁場効果を明らかにするために、8テスラまで磁場を印加して中性子回折実験を行った。その結果、マルテンサイト変態点近傍の温度において印加した磁場が、温度変化による変態と極めてよく似た効果をもたらすことを初めて見いだした。
深澤 裕; 星川 晃範; 山内 宏樹; 山口 泰男*; 井川 直樹; 石井 慶信
Physica B; Condensed Matter, 385-386(1), p.113 - 115, 2006/11
被引用回数:3 パーセンタイル:18.02(Physics, Condensed Matter)通常の氷であるIce Ihの水素原子は無秩序に配置しているが、低い温度で無限の時間を経過させると、水素原子の配置が秩序化した構造(Ice XI)へ変化すると予測されている。このIce XIの形成過程を調べるために、KOD等の水酸化物を含有させて変化に要する時間を短縮させた氷結晶の中性子回折を測定した。相転移点(76K)以下の特定の温度域(62-70K)において、氷の中性子回折が時間の経過に伴って変化する過程を観測した。また、回折プロファイルのリートベルド解析を行い、Ice XIへの相転移に伴う構造パラメーターの変化を温度と時間の関数として分析した。この分析結果に基づいて、さまざまな条件下(温度や不純物濃度等)におけるIce XIの発生と成長の過程の特徴について発表する。そして、無限の時間経過において、完全に水素原子が秩序化した構造の氷が自然界に存在しうるのかについての洞察を述べる。
深澤 裕; 星川 晃範; 山内 宏樹; 山口 泰男*; 石井 慶信
Journal of Crystal Growth, 282(1-2), p.251 - 259, 2005/08
被引用回数:19 パーセンタイル:81.09(Crystallography)水素(重水素)原子の配置が秩序化したIce XIと呼ばれる氷結晶の形成と成長過程を調べるために、KODを含有したDOの粉末氷中性子回折プロファイルを測定した。測定中、氷の温度は相転移点76Kより十分に低い57Kで約17時間維持し、さらに温度を上げて68Kで55時間程度アニールした。57Kで得られた中性子回折プロファイルは時間によらず一定で、水素(重水素)の配置が無秩序であるIce Ihの回折プロファイルと同じであった。一方、57Kから68Kに温度を上げることで回折プロファイルが変化することを発見した。そこで、68KにおけるIce XIの出現と成長の構造的証拠を得るために二相モデルを用いたリートベルド解析を実施した。その解析から、Ice XIは空間群Cmc21の構造を有していることがわかった。さらに、Ice XIの核が68Kで発生し、その質量比は時間の経過に伴って増加することが見いだされた。そして、Ice XIの核生成はKODを含有した氷の内部で数日間にわたって継続した。本研究により、未だ不明な点が多いIce XIの生成条件と成長過程の分析が初めて可能になった。
金子 耕士; 目時 直人; 大山 研司*; 小野寺 秀也*; 山口 泰男*
Journal of Magnetism and Magnetic Materials, 272-276(Suppl.), p.e375 - e376, 2004/05
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Materials Science, Multidisciplinary)正方晶RBCの特徴は、強い反強四極子相互作用の存在である。DyBC, HoBCの無磁場下で反強四極子(AFQ)秩序相、また反強磁性(AFM)秩序との共存相の存在が明らかとなった。TbBCでは、磁場下でDyBC, HoBCのAFQ+AFM共存相と酷似した物性が表れるが、無磁場下では=21.7Kの反強磁性体である。この反強磁性相では、帯磁率を初めとして、特異な物性が明らかとなっているが、その中の一つに(100)逆格子点近傍に現れる特異な散漫散乱の存在がある。この散漫散乱は、同じRBC化合物のうち、反強四極子秩序化合物HoBCと反強磁性体ErBC双方の中間相でも観測されているが、その起源を含めよく理解されていない。本講演では、AFQ相互作用の影響が現れる磁場下を初めとして、相図等TbBC全般の物性を紹介するとともに、無磁場下での散漫散乱に焦点を当てる。
田中 良和*; 稲見 俊哉; Lovesey, S. W.*; Knight, K. S.*; Yakhou, F.*; Mannix, D.*; 國分 淳*; 金澤 雅行*; 石田 興太郎*; 七尾 進*; et al.
Physical Review B, 69(2), p.024417_1 - 024417_11, 2004/01
被引用回数:36 パーセンタイル:79.64(Materials Science, Multidisciplinary)Dy L吸収端における電気四重極遷移による共鳴X線回折を用いて、DyBCの4四重極及び十六重極秩序の直接観測を行った。回折データは24.7KにおけるDyの点群の4/から2/への対称性の低下と時間に偶でA対称性を持ったDy多重極の秩序に伴う構造変化を示した。この温度以下では結晶構造は空間群4/で記述され、Dyイオンは4サイトを占める。この温度ではBとCからなる格子の変形が起こり、これは2/の2回軸に垂直なBC面のバックリングに等しい。Dyの低エネルギー状態のモデルを示し、比熱,われわれのX線回折データ,中性子回折による磁気秩序との関係を論じる。
大山 研司*; 金子 耕士; 鬼丸 孝博*; 東方 綾*; 石本 賢一*; 小野寺 秀也*; 山口 泰男*
Journal of the Physical Society of Japan, 72(12), p.3303 - 3304, 2003/12
被引用回数:6 パーセンタイル:43.05(Physics, Multidisciplinary)本研究では、反強磁性体CeBCの磁気構造を調べた。2.2Kにおける単結晶中性子回折実験の結果から、CeBCの磁気構造は、伝播ベクトル=( ') (=0.161, '=0.100)で表される長周期型の磁気構造であることを明らかにした。この結果から、CeBCの面内の結合が基本的に強磁性的であることがわかった。これは、一連のRBC化合物の内、長周期磁気構造を示すR=Tb, Ho, Erでは、どれも面内反強磁性結合となっていることと大きく異なっている。一方で、周期性に関しては、R=Ce, Tb, Ho, Erの間で系統性が見られる。CeBCでは長周期構造が実現している3者とは格子定数が大きく異なっていることから、他の化合物とは異なる環境下に置かれていると考えられる。
東方 綾*; 石本 賢一*; 今野 潤也*; 大山 研司*; 金子 耕士; 山口 泰男*; 小野寺 秀也*
Journal of the Physical Society of Japan, 72(12), p.3231 - 3236, 2003/12
被引用回数:1 パーセンタイル:12.87(Physics, Multidisciplinary)CeBCにおける磁気相関を明らかにする目的で、希釈系であるCeLuBC(0x0.31)について、比熱,dc及びac帯磁率から磁気的性質を調べた。Lu系の希釈により、磁気転移が一次から二次へと変化した。さらに希釈を進めていくと、=0.31ではスピングラス相が現れた。これは、Luによる希釈によって、競合していた反強磁性と強磁性の関係が壊れていくことに起因していると考えられる、これよりCeBCでは、強磁性と反強磁性相互作用がほぼ打ち消し合っている状態にあると考えられる。
井上 和子*; 堀川 武*; 中村 浩*; 新井 利章*; 皆川 宣明; 土屋 佳則*; 森井 幸生; 山口 泰男*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1, 37(10), p.5680 - 5686, 1998/10
被引用回数:2 パーセンタイル:13.55(Physics, Applied)直径8mmのS55C炭素鋼に繰返し応力を負荷した疲労材の内部ひずみ分布を測定し観察した。その結果、表面近傍に引張応力が集中していることが観察できた。この現象は以前から知られていることではあるが、この測定観察結果から、繰返し応力による材料破損は表面より進展することが言える。この測定は、非破壊により内部ひずみ、あるいは応力分布が測定できる中性子回折による測定である。装置は日本原子力研究所JRR-3M原子炉中性子導管に設置された日本初の残留応力解析用中性子回折装置(RESA)である。
S.Purwanto*; 大橋 正義*; 小野寺 秀也*; 森井 幸生; 舩橋 達; 山内 宏*; 山口 泰男*
Physica B; Condensed Matter, 213-214, p.318 - 320, 1995/00
被引用回数:3 パーセンタイル:25.67(Physics, Condensed Matter)高分解能中性子粉末回折法により、TbMnGeは4KTTt=95.3Kでフェリ磁性をTtT414Kで反強磁性を示すことが判明した。またTbMnSiでは、54.3KT64.5Kではこれより低温の相、高温の相、長周期構造構の共存状態にあることが判明した。この二つの物質の磁気秩序温度が高いことを考慮すると、Tb-Tb間の交換相互作用が大きすぎて、DyMnGeで観測されたTbモーメントがフラストレーション状態にある交換相互作用競合状態を作り出すことができないでいると示唆される。Tbの一部をYで置換した系についての実験から磁気秩序温度はより低温へと減少しており、交換相互作用競合状態が実現している可能性がある。
山口 泰男*; 安井 祐之*; 舩橋 達; 山田 玄彦*; 大橋 正義*; 金子 武次郎*
Physica B; Condensed Matter, 180-181, p.235 - 237, 1992/00
被引用回数:5 パーセンタイル:39.38(Physics, Condensed Matter)MnPtは483K以下の温度で、スピンが反平行に配列した反強磁性秩序が生じるが、415K以下では三角配置に転移する。これら2つの磁気相で、中性子非弾性散乱によって測定したスピン波の実験について報告する。三角配置では、波動ベクトルqが0のところで、2つの音響型スピン波を観測した。理論的には3つの分枝があるが、q=0で2つが縮退している。これらの対応から2つのモードの交換硬度定数を求めた。反平行配列では、音響型と光学型の2つの分枝があるが、エネルギーの低い音響型分枝だけが観測でき、これに対応する交換硬度定数を求めた。これらの結果から磁気相転移の機構等について論ずる。
梶谷 剛*; 北垣 康成*; 平賀 賢二*; 細谷 正一*; 福田 承生*; 山口 泰男*; 和田 信二*; 水貝 俊治*; 森井 幸生; 渕崎 員弘; et al.
Physica C, 185-189, p.579 - 580, 1991/00
被引用回数:16 パーセンタイル:69.14(Physics, Applied)LaNiO(0≦y≦0.1)について10Kから900KにわたってX線および中性子線を使った結晶構造解析を行い、正方晶、斜方晶(1)、斜方晶(2)の相図を作成した。さらにLaNiOにおいて室温の斜方晶(1)で構造要素であるNiO八面体がbc面内(bca設定)で傾くことや、70K以下の斜方晶(2)で磁気散乱ピーク(011)が巾広くなることが判明した。
井上 和子*; 山口 泰男*; 石井 慶信; 山内 宏樹; 平賀 晴弘*
no journal, ,
ホイスラー型off-stoichiometric合金NiMnGaの単結晶について、磁場誘起マルテンサイト変態と温度下降による通常の熱弾性型マルテンサイト変態の様子を比較検討した。この合金は、293K付近に熱弾性型マルテンサイト変態点とキュリー点を合わせ持ち、マルテンサイト相(低温相)では強磁性,母相(高温相)では常磁性となっている。293K, 10Tまでの磁場下測定を日本原子力研究開発機構の三軸分光器TAS-2で、293K-130K、無磁場での温度変化測定をJRR-3ガイドホールの三軸分光器AKANEで行った。どちらの場合も母相であるcubic構造0,2,0周りの,,0逆格子面上で-scan を行った。293Kにおける10Tの磁場と、293Kよりも14K低い温度279Kは、ほぼ同じ散乱パターンが得られた。また、cubic 0,2,0のまわりに新しく現れた強いピークは、低温相orthorhombic構造の2,0,0及び0,0,2に対応することがわかった。さらに、orthorhombic構造の0,2,0ピークはcubic 0,2,0とほぼ同じ位置にある。これらの実験結果から、マルテンサイト変態に対する磁場の効果は、温度下降とほぼ同じ効果を持つことが明らかとなった。
目時 直人; 金子 耕士; 松田 雅昌; 平賀 晴弘*; 山口 泰男*; 大山 研司*; 山田 和芳*; 松浦 直人*; 廣田 和馬*; 佐藤 卓*
no journal, ,
JRR-3をJ-PARC/MLFと共存する新時代にふさわしい施設としてグレードアップする活動の中から、本講演ではJAEAが所有する三軸分光器の高度化と、JAEA,東北大学関係者,大阪大学及び東京大学物性研究所が共同で行っているCuモノクロメータの導入に関して報告する。TAS-1は充実した偏極アクセサリーに加えて、水平垂直集光大型PGモノクロメータ(30cm10cm)と2次元集光Cuモノクロメータの導入を予定している。東北大学金属材料研究所で育成されたCu単結晶を用いたモノクロメータをTAS-2で使用し、(200)反射を用いて実用的な強度で30meV以上の非弾性散乱実験が行えることを確認した。LTASは多重化アナライザを導入し、バナジウム非干渉性散乱の強度比で3-40程度まで測定効率を向上させ、偏極オプションの導入も加倉井らにより開始されている。
堤 健之*; 大山 研司*; 平賀 晴弘*; 山口 泰男*; 猪野 隆*; 奥 隆之; 坂口 佳史; 吉良 弘; 有本 靖*; 武田 全康; et al.
no journal, ,
J-PARCのようなパルス中性子での偏極中性子実験には白色中性子に対応したHeスピンフィルター法の実用化が必要であるが、さらに偏極させたビームのスピン制御デバイスも白色対応する必要がある。われわれは、偏極中性子での物性実験のために、J-PARCを見据え、白色対応スピンフリッパーの開発を進めている。ドラブキン型スピンフリッパーは逆向き電流を流した2つのコイルにより中心位置で零磁場領域を発生し、量子化軸を反転させることでスピンを制御する装置で、白色中性子に対応が可能である。しかし、問題点として、コイルの中心軸以外では動径方向の横磁場が必ず発生しており、これが偏極を乱す大きな要因となる。したがって、ビーム通過領域での横磁場をいかに抑えるかが実用上重要となる。そこでわれわれは、横磁場の影響を最小にするドラブキン型スピンフリッパーを開発する目的で、磁場分布のシミュレーションと実測を行った。発表ではそれらの結果をもとに、理想的なデバイスのパラメータについての考察、及び開発の進捗状況を述べる。