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小川 達彦; 岩元 洋介
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 549, p.165255_1 - 165255_4, 2024/04
原子欠陥は固体の照射効果を決定する重要な要素である。入射放射線やその二次粒子の撃力によって原子が弾き出されると、その標的物質の機械的・電気的。化学的性質が変化する。PHITSのDPAタリーのように、非弾性核反応断面積やラザフォード散乱断面積を元にした欠陥生成計算モデルは存在するが、巨視的な平均的欠陥密度の計算に用いられ、転移のように欠陥の空間的配置に影響される現象の計算には直接使えない問題があった。そこで本研究では、原子力機構が開発する汎用放射線輸送計算コードPHITSの飛跡構造解析コードITSARTを応用し、放射線による原子欠陥の空間的配置を計算した。ITSARTは原子の弾性散乱を含め、荷電粒子の反応をナノスケールで一個づつ計算することができるため、欠陥を生じるような反応を個として識別した計算が可能である。まず精度検証のためITSARTにより銅のDPA(Displacement Per Atom)を計算したところ、文献値と合致することが確認できた。同じ方法を用いて600MeVの陽子線に照射されたSiOで、欠陥の空間的配置を計算することに成功した。ユーザーはPHITSの出力を分子動力学モデルなどの後段の計算に送ることで、欠陥の更なる時間発展を計算することが可能になると期待される。
古田 稔将*; 魚住 祐介*; 山口 雄司; 岩元 洋介; 古場 裕介*; Velicheva, E.*; Kalinnikov, V.*; Tsamalaidze, Z.*; Evtoukhovitch, P.*
Journal of Nuclear Science and Technology, 61(2), p.230 - 236, 2024/02
230MeV/u粒子のAl標的入射実験によって粒子のフラグメンテーション反応による荷電粒子生成の研究を行った。Si検出器と結晶シンチレータからなるカウンターテレスコープを用いて、p, d, t, He、及びHe各粒子の生成二重微分断面積を放出角15-60について測定した。取得データをより低い入射エネルギーの測定データと比較し分析した結果、(1)前方角の高エネルギー領域では陽子と中性子の放出スペクトルが類似している、(2)低入射エネルギー実験と同様に粒子の分解で生じたtとHeの収量の比は1:2である、(3)Heと粒子の幅広いピークの分布は入射粒子と標的原子核との衝突過程によって説明できるという一般的な特徴を見出した。
岩元 洋介
核データニュース(インターネット), (137), p.54 - 61, 2024/02
2023年度の核データ研究会とPHITS研究会の合同研究会が、2023年11月1517日に東海村産業・情報プラザ「アイヴィル」で開催された。核データ研究会は、JENDL-1の発表の翌年1978年に当時の日本原子力研究所およびシグマ研究委員会の主催での開催に端を発する。2006年より日本原子力学会核データ部会の主催となり、JAEA、国内の大学、および他研究機関が年度毎に交代して開催する形式になっている。今年度は、原子力基礎工学研究センターが主体、著者が委員長として受け持つことになった。新たな取り組みとして、核データを基盤とするPHITSの研究会と合同開催を行うことにした。PHITS研究会は、例年PHITSユーザーと開発者が一同に集まり、PHITSを用いた放射線遮蔽・医療・宇宙分野等の応用研究に関する発表が行われる。相互の研究交流により、新たな研究視点が得られる良い機会となることを期待し、本合同研究会を企画した。研究会は、核データに関する講演14件、PHITSに関する講演12件、ポスター発表25件から構成された。本レポートでは、主に核データ研究会における講演について紹介する。
岩元 大樹; 明午 伸一郎; 佐藤 大樹; 岩元 洋介; 石 禎浩*; 上杉 智教*; 八島 浩*; 西尾 勝久; 杉原 健太*; elik, Y.*; et al.
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 544, p.165107_1 - 165107_15, 2023/11
入射陽子エネルギー200MeV以下の中性子生成に関する二重微分断面積(DDX)データの不足は、加速器駆動核破砕システム(ADS)の研究開発などの技術応用における核破砕モデルの検証を妨げている。本研究では、このエネルギー領域におけるADS核破砕ターゲット材料のDDX実験データを取得し、解析予測との比較を通じて核破砕モデルに関する課題を明らかにすることを目的とした。実験は、京都大学のFFAG加速器を用いて行った。100MeV領域のPbとBiの陽子入射核反応に対するDDXを飛行時間法を用いて30から150の角度範囲で測定した。得られたDDXをモンテカルロ法に基づく種々の核破砕モデル及び評価済み核データライブラリによる計算結果と比較した。DDXの測定値と核破砕モデル及び評価済み核データライブラリに基づく解析値を比較した結果、CEM03.03モデルが実験値に最も近い一致を示した。さらに、100MeV領域における陽子入射中性子生成DDXの再現性向上のために対処すべき複数の課題を明らかにした。
岩元 洋介
核データニュース(インターネット), (136), p.7 - 13, 2023/10
原子炉、核融合及び加速器施設の構造材の照射損傷量の指標として、NRTモデル(Norgett, Robinson, Torrens model)で導出される原子あたりの弾き出し数(dpa: displacement per atom)が用いられる。一方、2018年にNordlundらから、分子動力学計算により導出された格子間原子と空孔からなる欠陥の非熱的な再結合補正(arc: athermal recombination correction)の研究成果が報告された。そこで著者らは、あらゆる放射線施設の材料の照射損傷量評価(NRT-dpaとarc-dpa)を可能にするため、粒子・重イオン輸送計算コードPHITSと核データライブラリJENDLを用いた、広いエネルギー範囲(eVTeV)の中性子、陽子、重イオン照射に対応する材料の照射損傷計算手法を開発した。また、計算手法の検証のため、極低温の照射装置を開発し、陽子照射に対するdpaに関連する弾き出し損傷断面積の測定を実施した。本成果について、2023年度日本原子力学会核データ部会と材料部会の合同企画セッションにおいて発表を行った。本レポートは発表内容について紹介を行う。
Kodeli, I. A.*; Fleming, M.*; Cabellos, O.*; Leal, L.*; Celik, Y.*; Ding, Y.*; Jansky, B.*; Neudecker, D.*; Novak, E.*; Simakov, S.*; et al.
EPJ Web of Conferences, 284, p.15002_1 - 15002_8, 2023/05
経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)において、放射線遮蔽積分ベンチマークアーカイブ及びデータベース(SINBAD)の利用促進とSINBAD評価活動への還元を目的として、国際核データ評価協力サブグループ47(WPEC SG47)「核データ検証のためのSINBADの利用」が2019年6月に立ち上がった。SINBADでは、核データ及び放射線輸送計算コードの検証と開発におけるニーズに合致した実験データベースの評価と保存を進めている。その中で、WPEC SG47の活動においては、SINBAD評価活動における核データの感度解析の利用、実験体系を再現する形状、放射線源、材料等のCAD情報のSINBADへの格納、OECD/NEAのソフトウェアGitLabを利用した様々な放射線輸送計算コードの入力ファイルの共有等について議論や提案が進められている。この活動中に約8例のベンチマーク実験データが核データの検証に利用され、今後、高崎量子応用研究所イオン照射研究施設(TIARA)で実施された中性子遮蔽実験を含む様々な実験データも核データの検証で利用される予定である。本発表では、WPEC SG47の活動の他、SINBADの核データ評価への利用例と評価活動計画について紹介する。
岩元 大樹; 中野 敬太; 明午 伸一郎; 佐藤 大樹; 岩元 洋介; 杉原 健太*; 西尾 勝久; 石 禎浩*; 上杉 智教*; 栗山 靖敏*; et al.
EPJ Web of Conferences, 284, p.01023_1 - 01023_4, 2023/05
加速器駆動システム(ADS)の核特性予測精度の向上と京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)におけるADS炉物理実験で用いる中性子源情報の取得を目的として、京都大学の固定磁場強集束(FFAG)加速器を用いた核データ測定実験プログラムを開始した。このプログラムの一環として、鉄,鉛及びビスマスに対する陽子入射二重微分中性子収量(TTNY)及び断面積(DDX)を測定した。測定では、真空チェンバ内に設置された標的試料に107MeVの陽子ビームを照射し、核反応によって標的から発生した粒子の信号を、小型の中性子検出器を用いて検出した。検出信号とFFAGキッカー電磁石の信号の時間差から飛行時間(TOF)を求め、ガンマ線の事象を波形弁別法によって除去して中性子事象をカウントすることで中性子のTOFスペクトルを求めた。得られた中性子のTOFスペクトルから、相対論的運動学によりTTNY及びDDXを求めた。実験で得られたTTNY及びDDXを、モンテカルロ輸送計算コードPHITSによる計算と比較し、PHITSに組み込まれた核反応モデル及び評価済み核データライブラリJENDL-4.0/HEの妥当性を検証するとともに、PHITSによる計算の予測精度を評価した。
渡辺 幸信*; 定松 大樹*; 荒木 祥平; 中野 敬太; 川瀬 頌一郎*; 金 政浩*; 岩元 洋介; 佐藤 大樹; 萩原 雅之*; 八島 浩*; et al.
EPJ Web of Conferences, 284, p.01041_1 - 01041_4, 2023/05
医療用RIの製造や核融合材料の照射損傷、放射性廃棄物の核変換などの研究において重陽子加速器を用いた高強度中性子源が提案されている。そのような中性子源の設計には重陽子を様々な標的に照射した際の中性子生成データが必要である。しかし、重陽子入射中性子生成二重微分断面積などの実験データは十分でない。そこで本研究では、大阪大学核物理研究センター(RCNP)において幅広い原子番号の標的に対する200MeV重陽子入射中性子生成二重微分断面積の系統的な測定を実施した。200MeVの重陽子ビームをビームスウィンガーマグネット内の薄い標的に照射し、放出される中性子を大きさの異なるEJ301検出器(直径及び厚さが2inchと5inch)を7m、20mの位置にそれぞれ設置し、測定した。測定角度は0度から25度までの5角度とし、中性子エネルギーは飛行時間法で決定した。それぞれの測定データは入射エネルギーの半分あたりに特徴的な幅広なピークを示しており、ピークの収量は標的の質量数に従って単調に増加した。DEURACSとPHITSを用いた理論モデル計算との比較の結果、DEURACSの計算結果はPHITSのものよりも実験値に対してより良い一致を示した。加えて、得られたLi, Be, Cの結果を用いてJENDL/DEU-2020とTENDL-2017の核データライブラリのベンチマークを行った。
岩元 大樹; 中野 敬太; 明午 伸一郎; 佐藤 大樹; 岩元 洋介; 杉原 健太; 西尾 勝久; 石 禎浩*; 上杉 智教*; 栗山 靖敏*; et al.
Journal of Nuclear Science and Technology, 60(4), p.435 - 449, 2023/04
被引用回数:0 パーセンタイル:71.05(Nuclear Science & Technology)加速器駆動核変換システム(ADS)の研究開発及び京都大学臨界実験装置(KUCA)におけるADS未臨界炉物理の基礎研究を目的として、固定磁場強収束(FFAG)加速器を用いて107MeV陽子による鉄、鉛及びビスマス標的に対する二重微分中性子収量(TTNY)を測定した。TTNYは8個の中性子検出器(各検出器は小型のNE213液体有機シンチレータと光電子増倍管より構成される)からなる中性子検出器システムを用いて飛行時間法により得られたものである。測定で得られたTTNYを、粒子・重イオン輸送コードシステム(PHITS)に組み込まれたモンテカルロ法に基づく核破砕反応モデル(INCL4.6/GEM, Bertini/GEM, JQMD/GEM, JQMD/SMM/GEM)及び評価済み高エネルギー核データライブラリ(JENDL-4.0/HE)による計算結果と比較した。JENDL-4.0/HEを含む比較対象のモデルは、検出器角度5度における高エネルギーピークを再現しないなどの特徴的な不一致が見られた。測定で得られたTTNYとPHITSによって評価した20MeV以下のエネルギー及び角度積分中性子収率を比較した結果、INCL4.6/GEMがKUCAにおけるADS炉物理実験のモンテカルロ輸送シミュレーションに適していることが示された。
岩元 洋介; 津田 修一; 小川 達彦
Frontiers in Energy Research (Internet), 11, p.1085264_1 - 1085264_11, 2023/01
被引用回数:0 パーセンタイル:0.02(Energy & Fuels)本レビューでは、核融合,加速器駆動未臨界システム(ADS)等の先進的な原子炉システムにおける放射線遮へい設計の検証に有益な実験データの解説と、放射線輸送計算コードPHITSと核データライブラリJENDL-4.0/HEを用いた実験値の検証計算結果について報告する。関連する加速器施設の遮蔽に関する実験の多くは日本国内で実施されている。今回、(1)14MeV中性子を線源とした鉄遮蔽体内の中性子スペクトル、(2)14MeV中性子を線源とした様々な材料の球状パイルからの漏洩中性子スペクトル、(3)数十MeV中性子源による鉄及びコンクリート遮蔽体透過後の中性子スペクトル、(4)高エネルギー重イオン入射によるターゲットからの生成中性子スペクトル、及び(5)重イオン核反応生成粒子を線源としたコンクリート中の誘導放射能量について検討した結果、全体を通して実験値と計算値は概ね良く一致することがわかった。これらの実験データは、先進的な原子炉システムの遮蔽設計に用いられる他の放射線輸送計算コードや核データライブラリの検証に活用される。
国枝 賢; 山本 和喜; 今野 力; 岩元 洋介; 岩本 修; 若林 泰生*; 池田 裕二郎*
Journal of Neutron Research, 24(3-4), p.329 - 335, 2023/01
核データライブラリJENDL-5のためにBe(p,xn)反応二重微分断面積の評価を行った。本研究ではまず、理化学研究所で開発された若林関数を内挿法などを工夫してデータベース化し、MCNPやPHITSを用いて薄膜ターゲットに対する検証解析を実施した。それにより、JENDL-4.0/HEや米国のENDF/B-VIII.0と比べて良い予測を与えることを確認した。更に反応断面積の絶対値を若林関数オリジナル値から15%(測定データ間の差異の範囲内で)減少させることにより、更に核データとしての精度が高まることを確認した。以上の知見を投入した新たな核データライブラリJENDL-5を用いることにより、Be(p,xn)反応からの中性子スペクトルや収量を世界一の予測精度で計算することが可能である。
佐藤 達彦; 岩元 洋介; 橋本 慎太郎; 小川 達彦; 古田 琢哉; 安部 晋一郎; 甲斐 健師; 松谷 悠佑; 松田 規宏; 平田 悠歩; et al.
Journal of Nuclear Science and Technology, 9 Pages, 2023/00
放射線挙動解析コードPHITSは、モンテカルロ法に基づいてほぼ全ての放射線の挙動を解析することができる。その最新版であるPHITS version 3.31を開発し公開した。最新版では、高エネルギー核データに対する親和性や飛跡構造解析アルゴリズムなどが改良されている。また、PHIG-3DやRT-PHITSなど、パッケージに組み込まれた外部ソフトウェアも充実している。本論文では、2017年にリリースされたPHITS3.02以降に導入された新しい機能について説明する。
福田 竜生; 小畠 雅明; 菖蒲 敬久; 吉井 賢資; 神谷 潤一郎; 岩元 洋介; 牧野 高紘*; 山崎 雄一*; 大島 武*; 白井 康裕*; et al.
Journal of Applied Physics, 132(24), p.245102_1 - 245102_8, 2022/12
被引用回数:0 パーセンタイル:18.86(Physics, Applied)Ni/SiCショットキー接合による放射線から電気エネルギーへの変換を、特にAm (30keV)及びAm (60keV)の線に着目して調べた。変換効率は吸収量ベースで最大1.6%であった。SiCは比較的放射線耐性があることから、これは放射性廃棄物からの線エネルギーの再生に利用できる可能性を示している。また、高X線光電子分光(HAXPES)及び二次イオン質量分析法(SIMS)を組み合わせることで、接合界面にNi-Si化合物が生成されると効率が低下することも分かった。これは電気測定に加えてHAXPES及びSIMSの2つの手法を組み合わせて判明したことであり、今後のデバイス作成プロセスへのフィードバックが期待できる結果である。
岩元 洋介
JAEA-Conf 2022-001, p.97 - 102, 2022/11
宇宙環境では、陽子,中性子,重イオン等の放射線が機器の半導体に照射され、放射線によって引き起こされる原子変位が機器の電気的性能を低下させる。半導体の原子変位は、非電離エネルギー損失(NIEL)と粒子フルエンスの積分で表される変位損傷量(DDD)に比例する。本研究では、宇宙空間における様々な放射線に対する半導体のDDDを計算するため、粒子・重イオン輸送計算コードPHITSで、金属の原子あたりの弾き出し数(DPA)を導出する手法を活用したDDDの計算手法を開発した。この手法では、荷電粒子と標的との間のクーロン散乱断面積の計算、核反応の計算、中性子照射下における荷電粒子生成の計算等を含む。陽子,中性子、及び電子をシリコンに照射した条件で、PHITSによるNIELの計算結果は半導体のNIELを解析するためのウェブ計算機で得られた数値データと一致した。また、SiC, InAs, GaAs、及びGaNの半導体について、最近の分子動力学シミュレーションから得られた欠陥生成効率をPHITSに実装した。その結果、エネルギー10MeVの陽子照射の場合、解析対象とした半導体の中で、GaAsが変位損傷を最も受けやすく、SiCが変位損傷を最も受けにくいことがわかった。
岩元 大樹; 中野 敬太; 明午 伸一郎; 佐藤 大樹; 岩元 洋介; 石 禎浩*; 上杉 智教*; 栗山 靖敏*; 八島 浩*; 西尾 勝久; et al.
JAEA-Conf 2022-001, p.129 - 133, 2022/11
加速器駆動システム(ADS)の核特性予測精度の向上と京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)におけるADS炉物理実験で用いる中性子源情報の取得を目的として、京都大学の固定磁場強集束(FFAG)加速器を用いた核データ測定実験プログラムを開始した。このプログラムの一環として、鉄に対する陽子入射二重微分中性子収量(TTNY)及び断面積(DDX)を測定した。測定では、真空チェンバ内に設置された鉄標的に107MeVの陽子ビームを照射し、核反応によって標的から発生した粒子の信号を、小型の中性子検出器を用いて検出した。検出信号とFFAGキッカー電磁石の信号の時間差から飛行時間(TOF)を求め、ガンマ線の事象を波形弁別法によって除去して中性子事象をカウントすることで中性子のTOFスペクトルを求めた。得られた中性子のTOFスペクトルから、相対論的運動学により鉄標的に対するTTNY及びDDXを求めた。
岩元 洋介; 佐藤 達彦
PLOS ONE (Internet), 17(11), p.e0276364_1 - e0276364_16, 2022/11
被引用回数:1 パーセンタイル:33.72(Multidisciplinary Sciences)宇宙探査等の放射線環境下で使用される半導体デバイスの寿命を決定する指標として、非電離エネルギー損失から算出される変位損傷量(DDD)が利用されている。近年は、分子動力学シミュレーションから得られる材料の欠陥生成効率を考慮した、新しい指標の実効DDDが提案されている。そこで本研究では、粒子・重イオン輸送計算コードシステムPHITSにおいて、代表的な半導体材料である炭化ケイ素(SiC)、ヒ化インジウム(InAs)、ヒ化ガリウム(GaAs)、及び窒化ガリウム(GaN)に対して、従来のDDDと実効DDDを計算できる手法を開発した。その結果、ヒ素化合物であるInAs及びGaAsにおいて、アモルファス化により欠陥数が増える効果を含む実効DDDが従来のDDDよりも約2倍大きくなること、SiCにおいては欠陥の再結合によりその関係が逆転することがわかった。本計算手法とPHITSの宇宙線線源機能を活用することで、宇宙探査等の放射線環境下における半導体デバイスの放射線損傷評価が可能となる。
岩元 洋介; 橋本 慎太郎; 佐藤 達彦; 松田 規宏; 国枝 賢; elik, Y.*; 古立 直也*; 仁井田 浩二*
Journal of Nuclear Science and Technology, 59(5), p.665 - 675, 2022/05
被引用回数:3 パーセンタイル:73.26(Nuclear Science & Technology)粒子・重イオン輸送計算コードPHITSは、加速器施設の放射線遮蔽設計に広く利用されている。本研究では、NEA/NSCの遮蔽積分実験ベンチマーク・アーカイブデータベース(SINBAD)の中から、陽子加速器施設の中性子遮蔽実験に関するデータを用いて、最新のPHITSバージョン3.24の精度検証を行った。検証では、中性子源に用いる陽子入射核反応が(1)43及び68MeV陽子-リチウム、(2)52MeV陽子-炭素、(3)590MeV陽子-鉛、(4)500MeV陽子-タングステン、及び(5)800MeV陽子-タンタルの条件で、遮蔽体における中性子エネルギースペクトル及び反応率を計算した。その結果、PHITSの標準設定である核反応モデルINCL4.6を用いた計算結果は(1)及び(2)のケースの100MeV以下で実験値を再現しなかったが、高エネルギー核データライブラリJENDL-4.0/HEを用いた場合は全ケースで実験値を良く再現した。本検証により、陽子加速器施設における中性子遮蔽設計において、JENDL-4.0/HEを用いたPHITSの計算が有効であることが明らかになった。
中野 敬太; 岩元 大樹; 西原 健司; 明午 伸一郎; 菅原 隆徳; 岩元 洋介; 竹下 隼人*; 前川 藤夫
JAEA-Research 2021-018, 41 Pages, 2022/03
加速器駆動核変換システム(ADS: Accelerator-Driven System)の構成要素の一つであるビーム窓の核特性を粒子・重イオン輸送計算コードPHITS及び誘導放射能解析コードDCHAIN-PHITSを用いて評価した。本研究では日本原子力研究開発機構が提案するADSの運転時にビーム窓内部に生成される水素やヘリウム等の量、高エネルギー粒子により引き起こされるビーム窓材の原子弾き出し数、ビーム窓内部の発熱量及び分布を導出した。また、中性子源標的及び冷却材として用いられる鉛ビスマス共晶合金(LBE)中の生成核種、発熱密度及び放射能分布を求めた。ビーム窓解析の結果、300日間のADSの運転によりビーム窓中に最大で約12500appmのH及び1800appmのHeの生成と62.1DPAの損傷が発生することが判明した。一方で、ビーム窓内の最大発熱量は374W/cmであった。LBEの解析では、BiやPoが崩壊熱及び放射能の支配的な核種であることが判明した。さらに、陽子ビームによるLBE中の発熱はビーム窓下流5cm付近が最大であり、945W/cmであることがわかった。
岩元 洋介; 吉田 誠*; 明午 伸一郎; 米原 克也*; 石田 卓*; 中野 敬太; 安部 晋一郎; 岩元 大樹; Spina, T.*; Ammigan, K.*; et al.
JAEA-Conf 2021-001, p.138 - 143, 2022/03
高エネルギー陽子加速器施設の照射材料の寿命評価において、粒子・重イオン輸送計算コードPHITS等が原子はじき出し数(dpa)の導出に利用されている。しかし、30GeVを超える高エネルギー領域において、コード検証に必要な弾き出し断面積の実験値は存在しない。そこで、超高エネルギー領域のコード検証のため、米国フェルミ国立加速器研究所(FNAL)における120GeV陽子ビームを用いた金属の弾き出し断面積測定を計画した。実験は2021年10月から2022年9月の期間に、FNALのテストビーム施設M03において実施予定である。これまで、直径250m及び長さ4cmのアルミニウム,銅,ニオブ、及びタングステンのワイヤーサンプルに焼鈍処理を施し、これらサンプルを付属したサンプルアセンブリの製作を行った。計画中の実験では、ギフォード・マクマフォン冷凍機によりサンプルを4K程度の極低温に冷却し、弾き出し断面積に関係する照射欠陥に伴うサンプルの電気抵抗増加を測定し、照射後に等温加熱試験を用いて、極低温下で蓄積されたサンプル中の欠陥の回復過程を測定する予定である。
松谷 悠佑; 楠本 多聞*; 谷内 淑恵*; 平田 悠歩; 三輪 美沙子*; 石川 正純*; 伊達 広行*; 岩元 洋介; 松山 成男*; 福永 久典*
AIP Advances (Internet), 12(2), p.025013_1 - 025013_9, 2022/02
被引用回数:2 パーセンタイル:51.2(Nanoscience & Nanotechnology)ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy: BNCT)は、腫瘍細胞選択的にホウ素薬剤を集積させ、Bと熱中性子の核反応から発生する線やLiイオンを利用して、腫瘍細胞に効率的に治療する放射線療法である。近年開発の進む加速器型(病院設置型)中性子源により、将来的に数多くの医療施設でBNCTが普及すると期待されている。加速器型中性子源で、BNCTに用いる熱外中性子はLi(p,n)Be反応により生成する。様々な種類の放射線や粒子の挙動を模擬できる放射線輸送計算コードPHITSでは、近年の改良により、日本国内の評価済み核データライブラリー(JENDL-4.0/HE)を使用してLi(p,n)Be反応からの中性子生成の推定が可能となった。本研究では、病院設置型BNCTの治療効果の評価へ向けて、PHITSで考慮されている中性子発生断面積や中性子エネルギー分布の基礎的検証を行った。さらに、熱中性子や反跳陽子の発生数 を試算し、BFガス計数管や固体飛跡検出器CR-39の測定値と比較した。その結果、これらの検証により、PHITSコードがLiターゲットを使用して加速器から生成された中性子を正確に予測できることを確認した。この成果は、PHITSコードが加速器型中性子場の正確な評価と加速器型BNCTの治療効果の予測に有用であることを示すものである。