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森 一広*; 奥村 良*; 吉野 泰史*; 金山 雅哉*; 佐藤 節夫*; 大場 洋次郎; 岩瀬 謙二*; 平賀 晴弘*; 日野 正裕*; 佐野 忠史*; et al.
JPS Conference Proceedings (Internet), 33, p.011093_1 - 011093_6, 2021/03
京都大学研究炉(KUR)のB-3ビームポートは、過去には単結晶回折計が設置されていたが、近年はユーザーが減少し、アクティビティが低下している状況にあった。そこで本研究グループでは、近年の中性子利用に関するニーズを再調査し、B-3ビームポートに新たに多目的小型中性子回折計(VCND)を構築した。VCNDは、1.0オングストロームの入射中性子波長を利用して6度から130度までの散乱角を測定でき、既に水素吸蔵合金の研究等への利用が開始されている。講演では、今後の改修計画等についても説明する。
森 一広*; 岩瀬 謙二*; 大場 洋次郎; 池田 一貴*; 大友 季哉*; 福永 俊晴*
Solid State Ionics, 344, p.115141_1 - 115141_10, 2020/01
被引用回数:3 パーセンタイル:38.55(Chemistry, Physical)(LiS)(SiS)は、高いイオン伝導度を持ち、容易に入手できるシリコンを骨格とすることから、全固体リチウムイオン電池の構成材料として有望視されている。本研究では、交流インピーダンス測定および放射光X線回折測定,飛行時間分析型中性子回折測定により、(LiS)(SiS)ガラスの構造と特性を調べた。その結果、SiS四面体を単位とする骨格構造と、Liイオンの伝導経路を可視化することができた。また、活性化エネルギーの低下によってLiイオンの伝導経路が容易に形成され、高いイオン伝導度が実現していることが示唆された。
佐藤 達彦; 岩元 洋介; 橋本 慎太郎; 小川 達彦; 古田 琢哉; 安部 晋一郎; 甲斐 健師; Tsai, P.-E.; 松田 規宏; 岩瀬 広*; et al.
Journal of Nuclear Science and Technology, 55(6), p.684 - 690, 2018/06
被引用回数:652 パーセンタイル:100(Nuclear Science & Technology)粒子・重イオン輸送計算コードPHITS Version 3.02を開発して公開した。核反応モデルや原子反応モデルを改良することにより、適応エネルギー範囲や精度を向上させた。また、計算効率を向上させる新しいタリーや、放射性同位元素を線源とする機能、医学物理分野にPHITSを応用する際に有用となるソフトウェアなど、様々なユーザーサポート機能を開発して、その利便性を大幅に向上させた。これらの改良により、PHITSは、加速器設計、放射線遮へい及び防護、医学物理、宇宙線研究など、幅広い分野で3000名以上のユーザーに利用されている。本論文では、2013年に公開したPHITS2.52以降に追加された新機能を中心に紹介する。
執行 信寛*; 岩瀬 広*; 岩元 洋介; 佐藤 達彦
日本原子力学会誌ATOMO, 60(5), p.294 - 298, 2018/05
加速器駆動未臨界炉システム(ADS)等の核設計における中性子生成や照射損傷量等の計算、放射線がん治療における二次粒子による被ばく線量等の計算において、実測データに基づき評価された20MeV以上の高エネルギー核データライブラリを用いた放射線輸送シミュレーションが重要な役割を果たす。また、実測データが計算コードに組み込まれている核反応モデルの精度検証や改良のために必要となる。本稿では重粒子線がん治療装置HIMACにおける中性子生成断面積、大阪大学核物理研究センターRCNPにおける遮蔽体中の中性子減衰及び京都大学原子炉実験所FFAG施設における照射損傷量の測定を紹介するとともに、国内で開発されている粒子・重イオン輸送計算コードPHITSの進展について概観する。
佐波 俊哉*; 西尾 勝久; 萩原 雅之*; 岩瀬 広*; 国枝 賢; 中村 詔司
JAEA-Conf 2017-001, 222 Pages, 2018/01
2016年度核データ研究会は、2016年11月17-18日に、茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構にて開催された。本研究会は、日本原子力学会核データ部会が主催、高エネルギー加速器研究機構、日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究センターと原子力学会北関東支部が共催した。今回、チュートリアルとして「加速器の進化」を、講演・議論のセッションとして「ImPACTプログラム 核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な減容・資源化の概要」、「核データ測定を行う施設と実験」、「核データの測定から応用まで」、「中性子核データの測定と基礎・利用研究の進展」の4件を企画し実施した。さらに、ポスターセッションでは、実験、評価、ベンチマーク、応用など、幅広い研究内容について発表が行われた。参加者総数は65名で、それぞれの口頭発表及びポスター発表では活発な質疑応答が行われた。本報告集は、本研究会における口頭発表10件、ポスター21件の論文をまとめている。
吉富 寛; 萩原 雅之*; 古渡 意彦; 西野 翔; 佐波 俊哉*; 岩瀬 広*
Proceedings of 14th International Congress of the International Radiation Protection Association (IRPA-14), Vol.3 (Internet), p.1188 - 1195, 2017/11
放射線業務従事者の眼の水晶体や末端部の等価線量については、線量限度を超えていないことを確認するため、適切に評価される必要がある。さらに近年、眼の水晶体に係る線量限度引き下げがICRPにより勧告されたこと、高放射化物等の取り扱いによる末端部被ばくが懸念されることなどから、より妥当な評価が要求されている。これらの部位は体幹部から離れた位置にあることから、場の不均等性によって大きく影響を受けるが、原子力・学術分野で、その不均等性を判断するための仕組みが十分であるとは言えない。本研究では、計算と実験を組み合わせて、不均等性を判断する枠組みを提案した。新たに提案した不均等性を表す指標を数学ファントムを用いたモンテカルロ計算により求め、その妥当性をベンチマーク実験により検証した。さらに、線源条件などのパラメータを変化させたいくつかのケースについて不均等性を調べ、水晶体被ばくにおいて不均等性を判断する上で考慮すべき因子を明らかにした。一連の実験と計算により、本指標の有用性と信頼性を確認することができた。
岩元 洋介; 佐藤 達彦; 佐藤 大樹; 萩原 雅之*; 八島 浩*; 増田 明彦*; 松本 哲郎*; 岩瀬 広*; 嶋 達志*; 中村 尚司*
EPJ Web of Conferences, 153, p.08019_1 - 08019_3, 2017/09
被引用回数:0 パーセンタイル:0.03100-400MeVの準単色中性子照射場の開発のため、大阪大学核物理研究センター(RCNP)の100mトンネルにおいて、Li(p,n)反応から生成する中性子及び中性子場に混在する目的外放射線の線のエネルギースペクトルを測定した。飛行時間法を用いて3MeV以上の中性子エネルギースペクトルを測定し、放射線線量モニターDARWINの自動アンフォールディング機能を用いて0.1MeV以上の線エネルギースペクトルを測定した。中性子スペクトルについて、3MeV以上の中性子収量に対するピーク成分である単色中性子収量の比は0.38-0.48であった。また、入射陽子エネルギー200MeV以上において、崩壊に伴う70MeV程度の高エネルギー線を実測した。246MeVLi(p,n)反応について、70MeV近傍における中性子収量と線収量は同程度であった。一方、全エネルギー領域の中性子線量に対する線線量の比は0.014と、線の全体の線量に対する寄与は小さいことがわかった。
Theis, C.*; Carbonez, P.*; Feldbaumer, E.*; Forkel-Wirth, D.*; Jaegerhofer, L.*; Pangallo, M.*; Perrin, D.*; Urscheler, C.*; Roesler, S.*; Vincke, H.*; et al.
EPJ Web of Conferences, 153, p.08018_1 - 08018_5, 2017/09
被引用回数:0 パーセンタイル:0.03欧州原子核研究機構(CERN)の放射線モニタとして、中性子、陽子、線等の様々な放射線に対して有感な空気入り電離箱PTW-34031(PMI)が使用されている。PMIの各放射線に対する応答関数の計算では、CERNが開発を支援している放射線輸送計算コードFLUKAが用いられている。本研究では、このうち高エネルギー中性子に対するPMIの応答関数の精度検証のため、大阪大学核物理研究センター(RCNP)のLi(p,n)反応を利用した準単色中性子照射場において、100-392MeVの準単色中性子に対するPMIの応答関数を測定した。その結果、200MeV以下の準単色中性子照射において、中性子エネルギースペクトルの測定値を線源としたFLUKAによる応答関数の計算値と実験値はよく一致しすることがわかった。一方、250及び392MeVの場合、中性子場にLi(p,n)反応から生成するの崩壊に伴う線が混在するため、中性子のみを線源とした計算値は実験値を過小評価することがわかった。
佐藤 達彦; 仁井田 浩二*; 岩元 洋介; 橋本 慎太郎; 小川 達彦; 古田 琢哉; 安部 晋一郎; 甲斐 健師; 松田 規宏; 奥村 啓介; et al.
EPJ Web of Conferences, 153, p.06008_1 - 06008_6, 2017/09
被引用回数:5 パーセンタイル:95.25粒子・重イオン輸送計算コードPHITSは、原子力機構を中心とする日本やヨーロッパの研究所が共同で開発しているモンテカルロ放射線輸送計算コードである。PHITSには、様々な物理モデルやデータライブラリが含まれており、ほぼ全ての放射線の挙動を1TeVまで解析可能である。現在、国内外2500名以上のユーザーが、加速器設計、放射線遮へい、放射線防護、医学物理、地球惑星科学など様々な分野で利用している。本発表では、PHITS2.52からPHITS2.82までの間に導入した新しい物理モデルや計算機能などを紹介する。
松本 哲郎*; 増田 明彦*; 西山 潤*; 岩瀬 広*; 岩元 洋介; 佐藤 大樹; 萩原 雅之*; 八島 浩*; 八島 浩*; 嶋 達志*; et al.
EPJ Web of Conferences, 153, p.08016_1 - 08016_3, 2017/09
被引用回数:0 パーセンタイル:61.28200MeV以上の準単色中性子に対するコンクリート及び鉄遮蔽体透過後の中性子エネルギースペクトルをボナー球スペクトルメータ(BSS)を用いて測定した。246及び389MeVの陽子-Li反応を用いて準単色中性子を生成し、コンクリート及び鉄遮蔽体の厚さを、それぞれ25-300cm及び10-100cmとした。100-387MeVのエネルギーを持つ準単色中性子を用いて実測したBSSの応答関数とアンフォールディングコードMAXEDを用いて、遮蔽体透過後の中性子エネルギースペクトルを導出した。その際、放射線輸送計算コードMCNPXを用いてBSSと遮蔽体の間の中性子多重散乱の効果を評価し、中性子エネルギースペクトルの補正を行った。その結果、エネルギースペクトルの実験値からコンクリート及び鉄遮蔽体の厚さに対する線量当量の変化を得ることができた。また、244MeVの中性子をコンクリートへ入射した場合、50cm以下の厚さにおいて線量当量に対する中性子多重散乱の影響が大きいことがわかった。
佐藤 達彦; 岩元 洋介; 橋本 慎太郎; 小川 達彦; 古田 琢哉; 安部 晋一郎; 甲斐 健師; 松田 規宏; 岩瀬 広*; 仁井田 浩二*
放射線, 43(2), p.55 - 58, 2017/05
粒子・重イオン輸送計算コードPHITSは、原子力機構が中心となって開発しているモンテカルロ放射線輸送計算コードである。PHITSには、様々な物理モデルやデータライブラリが含まれており、ほぼ全ての放射線の挙動を1TeVまで解析可能である。これまでに、放射線施設の設計、医学物理計算、放射線防護研究、宇宙線・地球惑星科学など、工学,医学,理学の様々な分野で国内外2,500名以上の研究者・技術者に利用され、現在もその応用範囲は拡がっている。本稿では、その最新版であるPHITS2.88の特徴をまとめる。
増田 明彦*; 松本 哲郎*; 岩元 洋介; 萩原 雅之*; 佐藤 大樹; 佐藤 達彦; 岩瀬 広*; 八島 浩*; 中根 佳弘; 西山 潤*; et al.
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A, 849, p.94 - 101, 2017/03
被引用回数:0 パーセンタイル:10.71(Instruments & Instrumentation)大阪大学核物理研究センターRCNPの陽子-リチウム核反応を用いた高エネルギー準単色中性子場は、放射線測定器の特性試験や校正などに利用されている。この中性子場のエネルギースペクトルは、0度方向に放出される中性子によるピーク部とそれ以外の角度に放出される連続部からなる。このうち、各試験で対象とするエネルギーはピーク部であるが、われわれは、これまでに0度と他角度方向に設置した検出器応答から、連続部の寄与を差し引く二角度差分法を開発してきた。本研究では、高密度ポリエチレン(HDPE)減速材付属のボナー球検出器に対する本手法の適用性を、96-387MeVの準単色中性子を用いて調査した。その結果、様々な大きさのHDPEに対して本手法は適応可能であることを検証できた。一方で、小型のHDPEは、中性子場のコリメータ,壁等による低エネルギー散乱中性子に感度を有するため、二角度差分法の他に、検出器の設置角度毎に低エネルギー散乱中性子に対する検出器応答の補正が必要である等、本中性子場を利用するユーザーに対する有益な指針を示すことができた。
岩元 洋介; 佐藤 達彦; 仁井田 浩二*; 橋本 慎太郎; 小川 達彦; 古田 琢哉; 安部 晋一郎; 甲斐 健師; 松田 規宏; 岩瀬 広*; et al.
JAEA-Conf 2016-004, p.63 - 69, 2016/09
粒子・重イオン輸送計算コードシステムPHITSは、原子力機構を中心に、複数の国内外の研究機関の協力の下で開発が進められている。同コードは、様々な核反応モデルやデータライブラリにより、中性子・陽子・重イオン・電子・光子等のほとんどの種類の粒子の輸送を取り扱うことが可能で、ソースプログラム,実行ファイル,データライブラリといった全ての構成要素が一つのパッケージにまとめられて配布されている。現在、1800人を超える研究者等がPHITSユーザーとして登録されており、核技術、加速器施設の設計、医学物理といった様々な分野で利用している。本発表ではPHITSに組み込まれている物理モデルを簡単にまとめ、最新のミューオン核反応モデル、脱励起モデルEBITEMについて紹介する。また、IAEA-CRP「初期の放射線損傷断面積」の活動の下で行っている、PHITSを用いた材料のはじき出し断面積、はじき出し原子エネルギースペクトル、カーマの計算結果について紹介を行う。
岩元 洋介; 萩原 雅之*; 佐藤 大樹; 荒木 祥平*; 八島 浩*; 佐藤 達彦; 増田 明彦*; 松本 哲郎*; 中尾 徳晶*; 嶋 達志*; et al.
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A, 804, p.50 - 58, 2015/12
被引用回数:22 パーセンタイル:87.32(Instruments & Instrumentation)大阪大学核物理研究センター(RCNP)において、80, 100及び296MeVの陽子に対する準単色中性子のエネルギースペクトルを飛行時間法により測定した。中性子スペクトルは準単色中性子ピーク部と連続部からなり、ピーク収量は陽子エネルギー80389MeVにおいて、0.91.110(個/sr/C)の範囲であり、全体の収量に対するピーク収量の比は、0.380.48であった。この準単色中性子場を用いて、ビーム軸上(0度)に設置した中性子モニターのピーク部に対する周辺線量当量(応答)を測定するため、全体の応答から、0度と25度のスペクトルの連続部の応答が等しくなる定数kを決定し、この定数で規格化された25度に設置した連続部からなる中性子モニターの応答を差し引く手法を提案した。定数kは、陽子エネルギー80389MeVの範囲において、0.741.02であった。以上により、これまでの実験の成果と合わせて、RCNPで80389MeVの陽子をLiターゲットに入射させて生成する準単色中性子場の特性を示すデータを得ることができた。
佐藤 達彦; 仁井田 浩二*; 松田 規宏; 橋本 慎太郎; 岩元 洋介; 古田 琢哉; 野田 秀作; 小川 達彦; 岩瀬 広*; 中島 宏; et al.
Annals of Nuclear Energy, 82, p.110 - 115, 2015/08
被引用回数:27 パーセンタイル:93.57(Nuclear Science & Technology)原子力機構が中心となり日欧の複数機関が協力して汎用モンテカルロ粒子・重イオン輸送計算コードPHITSを開発している。PHITSは、幅広いエネルギー範囲のほぼすべての放射線の挙動を扱うことができ、そのすべてのコンポーネントは1つのパッケージにまとめられ、RIST, OECD/NEA Databank, RSICCを通じて全世界に配布されている。その結果、PHITSユーザー数は国内外で総計1,000名を超え、工学・理学・医学のさまざまな分野で利用されている。本論文では、PHITSの概要について紹介するとともに、イベントジェネレータモードやビーム輸送機能などPHITSに組み込まれた幾つかの重要な機能について解説する。
岩元 洋介; 佐藤 達彦; 仁井田 浩二*; 松田 規宏; 橋本 慎太郎; 古田 琢哉; 野田 秀作; 小川 達彦; 岩瀬 広*; 中島 宏; et al.
JAEA-Conf 2014-002, p.69 - 74, 2015/02
粒子・重イオン輸送計算コードシステムPHITSは、原子力機構を中心に、複数の国内外の研究機関の協力の下で開発が進められている。PHITSは、様々な核反応モデルやデータライブラリにより、中性子・陽子・重イオン・電子・光子等のほとんどの種類の粒子の輸送を取り扱うことができる。PHITSはFortran言語で記述されており、ソースプログラム、実行ファイル、データライブラリといった全ての構成要素が一つのパッケージにまとめられている。このパッケージは、国内へは高度情報科学技術研究機構、国外へは経済協力開発機構原子力機関のデータバンク、または米国放射線安全情報計算センターを通して、利用希望者へ配布されている。現在、1000人を超える研究者がPHITSユーザーとして登録されており、核技術、加速器施設の設計、医学物理といった様々な分野で利用している。本発表ではPHITSに組み込まれている物理モデルを簡単にまとめ、重要な機能のイベントジェネレータモード、データライブラリを用いた計算、適用例として材料の放射線損傷を計算するための機能を紹介する。また、PHITSのさらなる高度化に必要な核データコミュニティへの要望を示す。
Sihver, L.*; 小濱 洋央*; 飯田 圭*; 親松 和浩*; 橋本 慎太郎; 岩瀬 広*; 仁井田 浩二*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 334, p.34 - 39, 2014/09
被引用回数:18 パーセンタイル:84.35(Instruments & Instrumentation)物質中を通過する際の核反応の発生確率や生成するフラグメントの量は、核子-原子核および原子核-原子核間の全反応断面積により与えられる。そのため、加速器施設における遮へい設計や粒子線治療における線量評価等を目的とした粒子や重イオンの輸送計算においては、これらの全反応断面積を精度よく計算できるモデルが重要な役割を果たす。黒玉モデルは、原子核を完全に粒子を吸収する黒体と仮定し、陽子-原子核の散乱データからその半径を系統的に評価することで、様々な原子核の全反応断面積を計算するモデルである。しかし、この仮定は数100MeV/u以下のエネルギー領域では満たされず、実験データを再現しないという問題があった。本研究では、低エネルギー領域をTripathiらの半経験的モデルで与える"ハイブリッド黒玉モデル"を新たに開発した。このハイブリッド黒玉モデルにより、陽子-He、陽子-原子核、原子核-原子核間の全反応断面積を評価し、これらの反応の実験データとの比較を行った。その結果、他の従来モデルと比べて幅広いエネルギー領域で実験データの再現性が高くなり、粒子輸送計算で利用する全反応断面積モデルとして非常に有効であることがわかった。
岩元 洋介; 八島 浩*; 佐藤 大樹; 萩原 雅之*; 岩瀬 広*; 中村 尚司*; 嶋 達志*; 民井 淳*; 畑中 吉治*
IAEA-TECDOC-1743, Annex (CD-ROM), p.177 - 188, 2014/07
発表者等は、大阪大学核物理研究センター(RCNP)のサイクロトロン施設において、中高エネルギー範囲(100400MeV)のLi(p,n)反応を用いた準単色中性子照射場の開発と、中性子ビームを用いた断面積測定及び遮蔽実験を行った。準単色中性子のピーク強度は、入射陽子エネルギーによらず110個/sr/Cで、全中性子強度に対するピーク成分の比は0.40.5であることを明らかにした。また、開発した準単色中性子ビームを用いて、ビスマスの放射化断面積測定,中性子弾性散乱断面積測定及び遮蔽実験等を行い、それぞれ精度良い実験データを取得することに成功した。このように、RCNPの中性子照射場は、中高エネルギー範囲の中性子入射に対する核データ測定、遮蔽実験等に適している。
岩元 洋介; 萩原 雅之*; 岩瀬 広*; 八島 浩*; 佐藤 大樹; 松本 哲郎*; 増田 明彦*; Pioch, C.*; Mares, V.*; 嶋 達志*; et al.
Progress in Nuclear Science and Technology (Internet), 4, p.657 - 660, 2014/04
100MeVを超える高エネルギー準単色中性子照射場を開発するために、大阪大学核物理研究センター(RCNP)において、137, 200, 246, 389MeVのLi(p,n)反応から生成する、0から30の間の7角度における中性子エネルギースペクトルを、有機液体シンチレータNE213と飛行時間法を用いて測定した。0における中性子エネルギースペクトルは、単色成分と連続成分からなり、全体成分に対する単色成分の比率は0.40.5であった。また、角度が大きくなるにつれて、連続成分のスペクトル形状が大きく変化することがわかった。さらに、この照射場を利用し、放射線モニタの校正を行うにあたっては、連続成分の寄与を小さくするために、0と約22に放射線モニタを設置し、その応答の差をとる手法が最も良いことがわかった。
松本 哲郎*; 増田 明彦*; 西山 潤*; 原野 英樹*; 岩瀬 広*; 岩元 洋介; 萩原 雅之*; 佐藤 大樹; 八島 浩*; 中根 佳弘; et al.
Progress in Nuclear Science and Technology (Internet), 4, p.332 - 336, 2014/04
高エネルギー加速器施設における合理的な遮へい設計のためには、広い中性子エネルギー領域に渡った遮へい体透過後の中性子スペクトルに関する知見が必要がある。本研究では、減速型中性子検出器であるボナー球スペクトロメータ(BSS)を用いて、コンクリート及び鉄遮へい体を透過した中性子のエネルギースペクトルを数100MeVから熱領域まで測定した。測定では、大阪大学核物理研究センター(RCNP)において開発した246MeV及び389MeV準単色中性子ビームを、厚さ10cmから100cmの鉄、及び25cmから300cmのコンクリートに入射し、その後方で中性子を検出した。本研究で使用したBSSは、熱中性子に感度があるHe比例計数菅及び直径3から9.5インチのポリエチレン減速材に加え、高エネルギー中性子にも感度を持たせるため鉛と銅からなる減速層を追加している。中性子エネルギーは、アンフォールディング法に基づくMAXEDコードにより導出した。アンフォールディングの際の初期スペクトルには、有機シンチレータで測定したデータを採用した。これにより、核破砕反応による高エネルギー中性子成分から熱平衡ピークまでを含む幅広い中性子スペクトルを決定することができた。