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新里 忠史; 佐々木 祥人; 渡辺 貴善; 雨宮 浩樹*
第31回社会地質学シンポジウム論文集, p.19 - 22, 2021/11
福島の山地森林における林床状況とセシウム137(Cs)流出量の関連を把握するため、除染地,未除染地および林野火災の延焼跡地において3年間の長期観測を実施した。除染や延焼により失われた林床被覆が回復するのに伴いCs流出量は減少し、除染地では除染直後の3.24%から0.61%へ、延焼跡地では延焼直後の2.79%から0.03%へと低下した。林床被覆が60%を超えると未除染地や非延焼地と同程度の流出量となり、林床被覆60%は、観測地における流出影響の閾値と考えられる。延焼跡地では林床被覆の回復に伴い、流出物の主体が土壌粒子からリター片に変化したことも、Cs流出量の低下に寄与した。山地森林の林床が本来有する土壌侵食に対する保護機能は、Cs流出抑制に効果的である。
新里 忠史; 渡辺 貴善
Global Environmental Research (Internet), 24(2), p.129 - 136, 2021/06
降雨期の福島県の森林において、土壌侵食に伴うセシウム137流出量の3年間にわたるモニタリングを除染地および未除染地において実施した。その結果、除染地でのセシウム137流出量は未除染地の10から14倍多いものの、除染地からのセシウム137流出率は林床被覆の回復に対応して3.24%から0.61%に減少した。林床被覆が60%以上に達すると、除染地でのセシウム137流出量は変動が小さくなり、流出率は未除染地と同レベルとなった。林床被覆の回復に伴うセシウム137流出量の減少は、雨滴衝撃に対する林床の保護効果の回復および流出物に含まれるセシウム137濃度の比較的高い土壌成分の割合が減少することによると考えられる。
長尾 郁弥; 新里 忠史; 佐々木 祥人; 伊藤 聡美; 渡辺 貴善; 土肥 輝美; 中西 貴宏; 佐久間 一幸; 萩原 大樹; 舟木 泰智; et al.
JAEA-Research 2020-007, 249 Pages, 2020/10
2011年3月11日に発生した太平洋三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波により、東京電力(現東京電力ホールディングス)福島第一原子力発電所の事故が発生し、その結果、環境中へ大量の放射性物質が放出された。この事故により放出された放射性核種は、その大部分が森林に沈着している。これに対し、面積が広大であり大量の除去土壌などが生じる、多面的な森林の機能が損なわれる可能性があるなどの問題があり、生活圏近傍を除き、汚染された森林の具体的な除染計画はない。そのため、未除染の森林から放射性セシウムが流出し、既に除染された生活圏に流入することで空間線量率が上がってしまうのではないか(外部被ばくに関する懸念)、森林から河川に流出した放射性セシウムが農林水産物に取り込まれることで被ばくするのではないか、規制基準値を超えて出荷できないのではないか(内部被ばくに関する懸念)などの懸念があり、避難住民の帰還や産業再開の妨げとなる可能性があった。日本原子力研究開発機構では、環境中に放出された放射性物質、特に放射性セシウムの移動挙動に関する「長期環境動態研究」を2012年11月より実施している。この目的は、自治体の施策立案を科学的側面から補助する、住民の環境安全に関する不安を低減し、帰還や産業再開を促進するといった点にある。本報告書は、原子力機構が福島県で実施した環境動態研究におけるこれまでの研究成果について取りまとめたものである。
吉村 和也; 渡辺 貴善; 操上 広志
Journal of Environmental Radioactivity, 217, p.106213_1 - 106213_6, 2020/06
被引用回数:5 パーセンタイル:25.07(Environmental Sciences)To obtain the important information and parameter for the measurement of Cs activity per unit area on paved ground, this study evaluated their vertical and horizontal distributions. This study showed that Cs was retained in extremely surface layer with mass depth less than 0.5 cm. This study also demonstrated the horizontal variations of Cs activity and the relation of the variation with grid size.
伊藤 聡美; 佐々木 祥人; 新里 忠史; 渡辺 貴善; 三田地 勝昭*
KEK Proceedings 2019-2, p.132 - 137, 2019/11
東京電力ホールディングス福島第一原子力発電所の事故により、環境中に放出された放射性物質は現在、福島県内の森林,表層土壌に多く沈着している。この影響により、食用林産物は、福島県の一部地域で出荷制限されているものも存在する。新芽を食用とするウコギ科のコシアブラは広い地域で出荷が制限されている山菜である。本発表では、山菜採取の対象となりやすい若木を対象として土壌の放射性セシウム深度分布、コシアブラ若木の地上部(葉,樹幹)と地下部(根)における植物体量および、放射性セシウム量について調査した結果、土壌中の放射性セシウムが多く分布する深度0-10cmに根の90%以上が存在することが分かったため、これらの調査結果について報告する。
渡辺 貴善; 佐々木 祥人; 新里 忠史; 三田地 勝昭*; 伊藤 聡美
KEK Proceedings 2019-2, p.114 - 119, 2019/11
森林の除染作業では、森林の地面に堆積している落葉がすべて取り除かれて、土砂が露出した状態になる場合がある。その後、土砂が露出した地面が下草や落葉で覆われるようになると、雨による地面の侵食の大きさが変化し、放射性セシウムの流出量も変化すると考えられる。本件は、森林の除染後の放射性セシウムの流出と地面の被覆率の変化を調べたものである。除染された福島県内の落葉広葉樹林において、観測区画を設定し、除染後の3年間にかけて放射性セシウムの流出を観測した。観測の結果、沈着した放射性セシウムに対する流失した放射性セシウムの流出率は、年々減少していくことがわかった。対して、森林の地面の被覆率は年ごとに増加する傾向にあった。以上から、森林の除染後、下草や落葉による地面の被覆が増えるにつれて、放射性セシウムの流出率が低下していくことが確認された。
長尾 郁弥; 新里 忠史; 佐々木 祥人; 伊藤 聡美; 渡辺 貴善; 土肥 輝美; 中西 貴宏; 佐久間 一幸; 萩原 大樹; 舟木 泰智; et al.
JAEA-Research 2019-002, 235 Pages, 2019/08
2011年3月11日に発生した太平洋三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波により、東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生し、その結果、環境中へ大量の放射性物質が放出され、その大部分が森林に沈着している。これに対し、面積が広大であり大量の除去土壌等が生じる、多面的な森林の機能が損なわれる可能性があるなどの問題があり、生活圏近傍を除き、汚染された森林の具体的な除染計画はない。そのため、未除染の森林から放射性セシウムが流出し、既に除染された生活圏に流入することに対する懸念があり、避難住民の帰還や産業再開の妨げとなる可能性があった。原子力機構では、環境中に放出された放射性物質、特に放射性セシウムの移動挙動に関する「長期環境動態研究」を2012年11月より実施している。この目的は、自治体の施策立案を科学的側面から補助する、住民の環境安全に関する不安を低減し、帰還や産業再開を促進するといった点にある。本報告書は、原子力機構が福島県で実施した環境動態研究におけるこれまでの研究成果について取りまとめたものである。
渡辺 貴善; 大山 卓也; 石井 康雄; 新里 忠史; 阿部 寛信; 三田地 勝昭; 佐々木 祥人
KEK Proceedings 2017-6, p.122 - 126, 2017/11
土砂移動に伴う放射性セシウム流出量が最も高いと見込まれる地形の急峻な山地森林を対象として、治山ダムの土砂堆積量と土砂の放射性セシウム濃度を測定し放射性セシウムの森林からの流出量を算出した。治山ダムの堆積量の計測には3Dレーザースキャナーを用いることで、詳細な堆積物の変化を求めた。
佐々木 祥人; 石井 康雄; 阿部 寛信; 三田地 勝昭; 渡辺 貴善; 新里 忠史
The Horticulture Journal, 86(2), p.139 - 144, 2017/04
2011年3月に発生した福島第一原子力発電事故により飛散した放射性セシウムの栗に対する移行を明らかにするために、果実の各部位と葉のオートラジオグラフィと放射性セシウム濃度を調べた。栗の果実は、可食部である子葉と鬼皮の間に薄皮をもつ。果実における放射性セシウム濃度は、鬼皮、薄皮、子葉ともに約1.010Bq・kgで各部位においてほぼ同濃度であり、また葉もほぼ同濃度であった。さらに果実に寄生するクリシギゾウムシの幼虫の放射性セシウム濃度は、果実の可食部である子葉の約7分の一であることが示された。
佐々木 祥人; 阿部 寛信; 三田地 勝昭; 渡辺 貴善; 石井 康雄; 新里 忠史
Journal of Environmental Radioactivity, 161, p.58 - 65, 2016/09
被引用回数:16 パーセンタイル:43.99(Environmental Sciences)福島の森林に生育する栗の木から樹幹流中への放射性セシウムの移行について報告する。事故当時に存在していた木の樹皮表面には、放射性セシウムは不均一かつスポット状に分布していた。事故後に生じた新枝にはほぼ均一に存在していた。放射性セシウム濃度は、幹(直径2cm)、枝(直径5mm以下)、葉の順に低くなった。また、幹(直径2cm)においては、樹皮は、木部の約10倍の放射性セシウム濃度であった。樹幹流の溶存画分(0.45m以下)試験期間中のCs-137濃度は平均約10Bq/Lであり、pHは5.8でほぼ一定であった。樹幹流の溶存画分の電気伝導率は放射性セシウム濃度と強い正の相関がみられたことから、樹幹流中の電解質と放射性セシウムは同じ溶出機構であることが示唆された。樹幹流中の粒子画分(0.45m以上)の一部に放射性セシウムが強く付着している粒子が存在することが示された。
新里 忠史; 阿部 寛信; 三田地 勝昭; 佐々木 祥人; 石井 康雄; 渡辺 貴善
Journal of Environmental Radioactivity, 161, p.11 - 21, 2016/09
被引用回数:29 パーセンタイル:67.86(Environmental Sciences)東電福島第一原子力発電所の事故から2-3年経過後の福島県阿武隈山地の森林において、事故により放出された放射性セシウムの林床を基準とした流出及び入力量を推定した。放射性セシウムの流出入の観測は、落葉樹のコナラ林と常緑樹のスギ林に設置した観測区画において、表面洗食、林内雨、樹幹流、リターフォールを対象に実施した。その結果、福島県の降雨時期において、林床を基準とした放射性セシウムの入力量は、流出量と比較して4-50倍高い結果が得られた。これらの結果は、放射性セシウムはその著しく低い流出量のために森林内に留まる傾向にあることを示す。このため、森林における放射性セシウムの循環プロセスの理解が、放射性セシウムの濃度レベルの将来予測と森林に係る生活の再生における重要なであることを示す。
新里 忠史; 阿部 寛信; 渡辺 貴善; 安江 健一; 小田 好博; 佐藤 治夫
no journal, ,
福島県内に残存する事故由来放射性物質のうち、半減期が約30年と長いCs-137が現在の空間線量率を支配していることから、今後長期にわたり放射線による健康影響を注視する必要がある。そのためには、Cs-137の環境中での現在の空間分布とともに、数十年以上の長期間を対象に実際の移動プロセス及びフラックスを明らかにし、それに基づく今後のCs-137の時空間分布の予測と人への影響可能性の評価が求められる。原子力機構が福島県で実施しているCs-137の環境中移動調査・研究「福島長期環境動態研究プロジェクト」は、主たる未除染区域である森林・山地域から河川を経て生活圏・海域へと至るCs-137の移動挙動を明らかにし、その移動を考慮したCs-137濃度の評価や被ばく線量を尺度とした人への影響可能性の評価結果に基づく移動抑制等の対策の提案を目的としている。同プロジェクトの森林・山地域を対象としたこれまで調査により、Cs-137の移動プロセスにかかわるシステム要素を大まかに識別することができた。今後、現地で取得した植生,地形,土壌分布データや気象,表面流,土砂流亡等のモニタリング及び採取試料の分析等により、森林・山地域でのCs-137の移動シナリオ構築と移動プロセスのモデル化を進める予定である。
新里 忠史; 阿部 寛信; 渡辺 貴善; 佐藤 治夫; 安江 健一; 小田 好博
no journal, ,
原子力機構では2012年秋より、放射性セシウムの環境動態に関する現象論的移動モデルの確立及び除染エリアでの時間経過に伴う再汚染の評価に向け、山地森林からダムや河川などを通じて河口域に至る放射性セシウムの環境動態に関する調査研究を進めている。本報では、それらのうち、山地森林とその周辺における調査研究の概要と現状を報告する。山地森林における放射性セシウムの環境動態は、気象や植生,地形,土壌等の自然地理的要素とともに、除染活動等の人為的要素も関連する。そこで、それら自然地理的条件の異なる阿武隈山地の森林を対象として2つの調査地点を設定し、森林での主な物質移動プロセスと推定される表面流と土砂流亡に伴う放射性セシウムの移動に着目した調査及びモニタリングを2012年初冬より開始した。その結果、森林内の土壌は谷底で有機質黒色土壌、斜面と尾根で暗褐色土壌と赤褐色土壌の土壌層位が卓越し、地形との関連性が認められた。また、森林内での物質移動プロセスとして、リターに伴う移動、林道崖からの土砂移動、細根層との境界部と林床での水流に伴う移動が確認できた。さらに、未除染の森林から林外の除染エリアに渡る移動現象の観察と線量率測定から、林外への移動に関してリターに伴う移動が主なプロセスと推定された。今後、森林内外での放射性セシウムの移動現象を把握し、実際に生じている自然現象を考慮した移動プロセスのモデル化を進める予定である。
新里 忠史; 阿部 寛信; 渡辺 貴善; 佐藤 治夫; 安江 健一; 小田 好博
no journal, ,
福島県内に残存する事故由来放射性物質のうち、半減期が約30年と長いCs-137が現在の空間線量率を支配していることから、今後長期に渡り放射線による健康影響を注視する必要がある。そのためには、放射性セシウム(放射性Cs)の環境中における現在の空間分布とともに、数十年以上の長期間を対象として、主たる移動経路や移動にかかわる物理・化学過程といった移動プロセス及びフラックスを明らかにし、実際に生じている移動プロセスに立脚したモデル化と数値解析を通じた、放射性Csの時空間分布の予測及びそれらの予測結果に基づいた被ばく線量の予測評価が求められている。特に、現在、未除染域である山地森林は現時点における放射性Csの主な供給源と考えられることから、原子力機構では、山地森林から河川やダムなどを通じて河口域へと至る環境動態とともに、それら自然システムから人の生活圏へと至る環境動態に関する調査研究を2012年初冬より実施している。本報では、山地森林とその周辺における調査研究の概要と成果の現状について報告する。
阿部 寛信; 新里 忠史; 渡辺 貴善; 竹内 竜史; 安江 健一
no journal, ,
日本原子力研究開発機構(原子力機構)では、現在の主な未除染地域である森林等から河川・ダムを経て河口域へと到る放射性セシウムの沈着状況及びその時間的変遷を調査し、移行挙動を明らかにするとともに、移行挙動を考慮した汚染抑制対策を提案することを目的とした福島長期環境動態研究(F-TRACE Project)を実施している。同研究では、現在、福島県内の山地森林や河川,湖沼,河口等、各沈着場所に堆積している土壌や水中における放射性セシウムの環境動態を把握するための調査を実施している。本報では、福島県内の森林において実施している表層を流れる表面流とそれに伴って移動する浮遊土砂等の長期モニタリングの概要について報告する。
新里 忠史; 阿部 寛信; 渡辺 貴善; 安江 健一; 佐藤 治夫
no journal, ,
福島県内に残存する事故由来の放射性物質のうち、現在、空間線量率を支配しているのは放射性セシウムであり、Cs-137の半減期は約30年と長いことから、今後長期に渡り放射線による健康影響に注視する必要がある。一方で放射線による人への健康影響を減らすには、環境中における放射性セシウムの濃度を低下させるとともに、その汚染経路を取り除くか縮小させる必要がある。それには、放射性セシウムの移動挙動を明らかにし、現在の状態とともに将来の分布を予測することが必要である。原子力機構福島環境安全センターでは、数年から数十年以上の期間を対象として、実際に生じている移動プロセスに基づいたモデル化と数値解析により、現在から将来に渡る放射性セシウムの時空間分布を予測し、それら予測結果を踏まえた被ばく線量の予測評価にかかわる調査研究プロジェクトを実施している。同プロジェクトでは、現在の未除染域である山地森林が現時点における放射性セシウムの主な供給源と考えられることから、山地森林から河川やダム湖等を通じて河口域へと至る環境動態とともに、それら自然システムから人の生活圏へと至る環境動態に着目した調査を進めている。本報では同プロジェクトでの山地森林を対象とした放射性セシウムの移動挙動にかかわる調査研究の概要と現状を報告する。
新里 忠史; 阿部 寛信; 渡辺 貴善; 石井 康雄; 佐々木 祥人
no journal, ,
本論では、福島県における山地域の谷頭部に分布する常緑針葉樹林及び落葉広葉樹林を対象として、東京電力福島第一原子力発電所事故により放出された放射性セシウムの森林土壌における深度分布を規定する主な要因について議論する。土壌試料は、山地の尾根,山地斜面及び谷底面において土壌サンプラー及びスクレーパープレートにてそれぞれ40cm及び20cm深度まで採取した。また、試料の採取地点の特徴を把握するため、土壌層位,植生調査及び地形測量を実施した。その結果、土壌の極表層部における放射性セシウムの濃度は、森林内の堆積及び侵食域の分布に関連しており、堆積域で高く侵食域で低い傾向にあった。加えて、放射性セシウム濃度の深度方向への減少率は、有機成分,粘土鉱物及び母岩由来の砕屑物などの土壌組成に関連していることが明らかとなった。このため、福島県の山地森林における放射性セシウムの環境動態を解明する際には、土壌種のみならず地形学的特徴も考慮する必要がある。
石井 康雄; 佐々木 祥人; 渡辺 貴善; 大山 卓也; 阿部 寛信; 新里 忠史; 佐藤 治夫
no journal, ,
原子力機構では、2012年11月から福島長期環境動態研究(F-TRACEプロジェクト)の一環として、福島県内における調査データに基づいて山地森林からダム、ため池や河川等を通じて河口域、更には沿岸域までの放射性セシウム(Cs-134, 137、以下、放射性Cs)の移動を予測するための研究を行っている。本研究では福島県内の川内村荻地区、川俣町山木屋地区に設置した森林観測プロットおよび浪江町大柿地区の砂防ダムにおいて、表面流出物質の特性および放射能分析について報告する。荻地区および山木屋地区の森林観測プロットにおける1m空間線量率はおよそ2-3Sv/hであり、一方、大柿地区の砂防ダムにおいてはおよそ10Sv/hであった。それぞれの地域で取得した土壌にはCs-134とCs-137が含まれており、放射性セシウム濃度はシルトや粘土質などの泥質物質において高かった。この傾向は河川敷やダム湖底の堆積物等と同様であった。
渡辺 貴善; 三田地 勝昭; 阿部 寛信; 新里 忠史
no journal, ,
東京電力福島第一原子力発電所事故により放出された放射性セシウムは、山林や市街地に降下した。日本原子力研究開発機構では「福島長期環境動態研究プロジェクト」(以下、F-TRACEプロジェクト)を2012年11月に開始し、現時点における放射性セシウムの分布状況とともに、森林域から流出する放射性セシウムが生活圏や河川,河口域へと移動する状況を明らかにし、それらを踏まえた放射性セシウムの空間的及び時間的な変化に係る将来予測と移動抑制対策の提案を目的とした研究を行っている。F-TRACEプロジェクトの森林調査では、川内村下川内地区と川俣町山木屋地区を調査地点に選定し、2012年12月から植生や土壌断面,空間線量率等の現地調査、採取した落ち葉と土壌に含まれる放射性セシウムの分析を進めている。本論では、放射性セシウムの移動現象に係る諸条件のうち森林内の土壌分布について、地中レーダ探査、貫入式土壌硬度計データ及び現地での土壌断面調査から推定される結果とともに、深度方向における放射性セシウム分布との関連性について報告する。
新里 忠史; 石井 康雄; 阿部 寛信; 渡辺 貴善; 佐々木 祥人
no journal, ,
東京電力福島第一原子力発電所から放出された放射性セシウムの環境動態に関する理解は、福島の環境回復における基盤情報を提供する。現時点における放射性セシウムの主な供給源は、除染活動がいまだ試験段階にある山地森林の分布域である。このため、山地森林から流出する放射性セシウムの移動現象と移動フラックス等に関する知見は、山地森林から河川を経て海域に至る放射性セシウムの環境動態を考慮した被ばく線量評価において極めて重要な位置を占める。本報告では、福島県東部の阿武隈山地における調査研究に基づき、山地森林における放射性セシウムの移動現象を規定する主要因について議論する。